(,,゚Д゚)は居候な猫のようです

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:21:09.36 ID:D2pWh0W40
(´;ω;`)「うぅ……ひっく……」

(´;ω;`)「うわぁぁぁん!」

部屋でひとり、少年・ショボンは鼻水やら涙を垂れ流しながら泣きわめいていた。
その家の庭に一匹の猫。
たまたまいい芝生を生やした庭だったので、猫はポカポカした日差しを浴びながらこっくりこっくり居眠りをしていたのだが。

(´;ω;`)「ひぃ……ふぅぅ……」

(,,゚Д゚)「……」イライラ

(´;ω;`)「びええええん!」

(#゚Д゚)「……」ブチッ

おもむろに少年のいる部屋の開け放たれた窓に立つ猫。

(#゚Д゚)「おいこら小僧! いつまで泣いておるか!」

(´;ω;`)「!」

(´つω;`)ゴシゴシ

(;´・ω・`)「ね、ねこがしゃべってる……!」


   (´・ω・`)編

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:22:50.93 ID:D2pWh0W40
(#゚Д゚)「貴様のせいでおちおち昼寝もできんわゴルァ。男のくせにいつまでもウジウジと。アメ公風に言わせりゃ」

(,,゚ゝ゚)「ヘイボーイ! そんなんじゃあ将来いいフットボーラーにゃなれねぇぞ!?」

(#゚Д゚)「だ!」

(;´・ω・`)「??」

まだ小さいショボンには、はっきり言って猫が何を言っているのか分からなかった。
でも、なんとなくバカにされていることは分かったのだ。

(;´・ω・`)「で、でも猫は、ふ、ふっとぼーらーってのにはなれないんでしょ?」

(#゚Д゚)「あ? なんだt……」

(,,゚Д゚)「あぁ……うん、まぁ確かにな。なるほど、わしには無理だ」

(,,゚Д゚)「うんうんなるほど。まさか一介の小僧に一本とられるとはな、ふむふむ……」

ひどく人間的な仕草で前足をあごに当てながら納得する猫。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:24:01.94 ID:D2pWh0W40
涙でグシャグシャの顔で、窓際の方へ来るショボン。

(´・ω・`)「でてって!」

追い払うように手を振って、サッシに手をかけ窓を閉めようとする。

(;゚Д゚)「わっ、わっ」

バランスを崩し、慌てて部屋の畳に降り立つ猫。

(,,゚Д゚)「待て待て、落ち着け。実は宿を探していてな。ちょうどいいからここに居候させてくれんか」

(´・ω・`)「ずっとお外でおひるねしてればいいよ」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:24:50.64 ID:D2pWh0W40
(,,゚Д゚)「まぁそう言うな。袖振り合うも他生の縁というだろう」

(´・ω・`)「……なにそれ?」

(,,゚Д゚)「ちょっとした出会いでも前世の因縁から来ている、という意味だ」

(´・ω・`)「ますますわけわかんない」

(#゚Д゚)「ええい、ハナタレには十年早いわ!」

(´;ω;`)「う、うわぁぁぁん!」

ショボンが泣き出すと、猫は困ったように足をあたふたと動かし、目をしばたかせていた。

(;゚Д゚)「わ、わしが悪かった。だからさっさと泣き止め。お前男だろうが」

(´;ω;`)「ひっく……だんじょさべつはいけませんって、先生言ってたもん」

(#゚Д゚)「屁理屈を垂れるな!」

(´;ω;`)「う、うぎゃぁぁぁん!」

(;゚Д゚)「わっ、わっ」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:26:47.84 ID:D2pWh0W40
(´つω⊂`)「あぅ……ひっく」

やっと泣き止んだショボン。
猫は心なしかぐったりとしていて、畳にゴロンと転がっている。

(,,゚Д゚)「なんだかお前は……疲れるやつだな」

(´つω・`)「……じゃあでてってよ」

(,,゚Д゚)「出てけ出てけと。お前はさっきからそればっかりだな。何か嫌なことでもあったか?」

(´・ω・`)「あったから泣いてるんじゃない」

(,,゚Д゚)「ごもっとも。じゃあ小僧が泣いている訳が聞きたいな。わしはお喋りが大好きだ」

(´・ω・`)「……」

ショボンは鼻水を一つすすり、膝を抱えて黙り込んでしまった。
訳を話せと言っても、ショボンはこのこと誰にも知られたくないと思っていたし、黙っていた方が安全だと考えていたのだ。

(´・ω・`)「いわないもん」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:28:30.90 ID:D2pWh0W40
だからそう答えた。
猫はつまらなさそうに二、三回畳を転がり、流し目にショボンを見てくる。

(,,゚Д゚)「考えに窮して解決するにもしきれず、ただ泣くしかない、そういったところだろうが、しかし困ったな。その肝心な悩みを打ち明けてくれんとは。わしも力になれるやもしれんというに」

(´・ω・`)「ほっといてよ。ねこにはカンケーないもん」

(,,゚Д゚)「十中八九わしには関係ないことだろうな。だがどうだ。関係者ならお前はその悩みを打ち明けられるというのか?」

(´・ω・`)「……」

説教させると長くなりそうだなぁ、この猫。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:30:48.76 ID:D2pWh0W40
(,,゚Д゚)「そうだな……」

(,,゚Д゚)「例えば、一人の人間が悩みを誰にも打ち明けられず、自分の中だけに留めていたとしよう」

(,,゚Д゚)「ある人間はその悩みを独自に解決し、正しく前を向いていく。ところがある人間はその悩みを解決しきれず、自分の中で殺してしまうのだ」

(,,゚Д゚)「前者はよほど強い人間か、あるいは悩みがその程度のものだったか。それは時々だろうな。だがしかし、こと日本人というのは後者の場合が多いんだ。わしがこの目で何人も見てきているんだから、間違いない」

(,,゚Д゚)「後者は始末が悪い。人によっては最後に間違った選択をしてしまう。他人を傷つけてしまったり、人間不信に陥ったり、笑顔を失ってしまったり、死を選んでしまったり」

(,,゚Д゚)「おっと、小僧には話が少々重かったかな?」

(´・ω・`)「……」

(,,゚Д゚)「ところが、これにはいい解決法があるのだぞ、小僧」

(´・ω・`)「?」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:31:49.06 ID:D2pWh0W40
(,,゚Д゚)「誰かにそれを話してみろ。悩みを打ち明けて苦しさを半分こするんだ。打ち明けたとしても相手はうまく悩みを解決してあげられないかもしれない。だがそれでいいんだ」

(,,゚Д゚)「解決できなかったときの苦しさも、半分こ」

結局、最初に言っていた『悩みを聞かせてくれ』ということだった。
本当に回りくどい猫だ。
しかし幼いショボンにそこまで反抗的な思考が生まれるはずもなく、純粋に、ちょっとだけ話してみようかな、そう考え始めていた。

(´・ω・`)「うそを……ついた」

(,,゚Д゚)「ほう」

(´;ω;`)「とってもゆるされない、うそ」

涙を抑えられなかった。
もう、抑えようとも思っていなかったのかもしれない。
ショボンの胸の中は、懺悔と後悔との気持ちでいっぱいだった。
それから猫は一言も口を挟まず、黙って僕の話に耳を傾けていた。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:35:21.88 ID:D2pWh0W40
――昨日、ある駄菓子屋

/ ,' 3「……zzz」

(´・ω・`)「……」

駄菓子屋のお爺ちゃんはショボンが入店したときからずっと居眠りをしていた。

ショボンは財布の中を見た。
二十円。
そして視線は棚のチョコレート菓子に。
五十円。

ショボンの目当てはチョコではない。付属のシールだ。
それがショボンのクラスで、いや、全国の小学校で大ブームで、社会現象すら巻き起こしていたのだ。

しかし、あと三十円。
あと三十円あれば買えるのに。

/ ,' 3「……zzz」

(;´・ω・`)(……い、いける)

さっとぎこちない手つきでチョコレート菓子をポケットに入れるショボン。

キョロキョロと辺りを見回し、急いで駄菓子屋を後にした。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:38:06.61 ID:D2pWh0W40
――自宅

早速、居間でチョコレート菓子を開封するショボン。

(*´・ω・`)「わぁ」

シールはキラキラのホログラムを使った絵柄で、ショボンは思わずガッツポーズをしていた。

(*´・ω・`)「やったっ」

「それ、買ってきたの?」

突然、後ろから声をかけられ、心臓が止まりそうになる。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:40:50.94 ID:D2pWh0W40
(;´・ω・`)「お、おかあさん」

J(´・ω・`)し「シールのチョコ欲しいけどお小遣いないから頂戴って、この前言ってたじゃない」

(;´・ω・`)「あぅ」

(;´・ω・`)「……ほんとはあったんだよ。よくみたら……あった」

J(´・ω・`)し「……」

我ながら下手な嘘だなと思うショボン。
ショボンの母はなにか考え込むように目を伏せ、やがて表情を和らげて言った。

J(´・ω・`)し「そう……疑ってごめんなさい」

(;´・ω・`)「!」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:42:22.15 ID:D2pWh0W40
母の優しげな言葉に、ショボンは愕然とする。
うそをつくことでこれほどまでに罪悪感を感じたのは、これが初めてだ。
まるで極悪人になったような気分。
いい過ぎだと思うかも知れないが、純然な子供心にはそれほどの衝撃なのだ。

J(´・ω・`)し「夕飯できてるわよ。早く食べちゃいなさい」

気づくと時間は過ぎ、母は何事もなく夕飯を急かしてきていた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:44:39.87 ID:D2pWh0W40
泣きじゃくりながら話したので、ショボンの喉はカラカラだった。

(´;ω;`)「ボクって、サイテーだ」

(,,゚Д゚)「……誰しも」

(,,゚Д゚)「何かしら過ちを犯して生きていくものだが」

(,,゚Д゚)「それを誰かに懺悔するというのは、そうそう出来ることではないよ」

(,,゚Д゚)「お前は誇っていい、小僧」

(´;ω;`)「……!」

悪い事をした後は叱られる。
そういう方程式がショボンにあったから、猫の慈しみを含んだ温厚な口調は予想外だった。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:47:15.87 ID:D2pWh0W40
(´;ω;`)「それだけじゃ、なんにも変わらないじゃない。ボクは、ボクはどうすればいいの……」

(,,゚Д゚)「どうすべきかは、もう判っているんだろう」

どきり。

(´;ω;`)「……」

胸が痛む。
どうすべきかなんて、実はもう知っていたんだ。
でもそれが今のショボンにできるかどうか……。

(,,゚Д゚)「母親に告白しよう。自分のしてしまったこと。うそをついたこと」

(,,゚Д゚)「罪を懺悔できるだけの勇気がお前にはあったんだ。できないことはないと思うが……」

(,,゚Д゚)「ふふん、やはり泣き虫ハナタレ小僧には無理か」

(´つω;`)「くっ」

(#´・ω・`)「いえるもん、ゼッタイ。でも」

(´・ω・`)「まだ、うまくいえないかも」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:48:28.57 ID:D2pWh0W40
(,,゚Д゚)「そうか」

猫は再び目を瞑り、身体を丸め、気持ちよさそうに一つ欠伸をする。

(,,゚Д゚)「じゃあ小僧の勇気が出るまで、ここに居座るとするかな。とりあえず腹が減った。何か食べさせてくれ」

猫は生意気にそう言うが、ショボンにとってはこの上なく心強く見えた。

(*´・ω・`)「ありがとね」

そう言って猫を一撫でするショボン。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:49:37.90 ID:D2pWh0W40
――翌日

(;´・ω・`)「おかあさん、おはなしがあるの」

J(´・ω・`)し「うん? どうしたんだい、ショボン」

(;´・ω・`)「じつは……」

ショボンは母に全てを打ち明けた。
ショボンは覚悟していた。

叱られる。
罰を与えられる。
母に、この上なく失望されるのだ。

恐くて恐くて、ショボンはまた泣き出してしまった。

J(´・ω・`)し「そう……」

J(´・ω・`)し「……本当はね、お母さん知ってたのよ」

(´;ω;`)「!」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:51:58.35 ID:D2pWh0W40
(´;ω;`)「うー、ごめんなさい……」

J(´・ω・`)し「待ってたわ、あなたが正直に言うの」

J(´・ω・`)し「さぁ駄菓子屋のお爺ちゃんに、謝ってきましょう」

そう言って優しく微笑むショボンの母。
母は全て見抜いて、それでショボンが正直に言うのを静かに待っていたのだ。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:54:16.66 ID:D2pWh0W40
(,,゚Д゚)「そうか……。いい母親を持ったな、小僧」

猫は初めに現れた窓際に立ち、そう漏らした。
その顔はどこか晴れ晴れとしていた。

(,,゚Д゚)「あーあ、もう白状しおって。もう少し時間がかかると思っていたんだがな」

(´・ω・`)「もっとここにいてよ、ねこ」

(,,゚Д゚)「そういう訳にはいかん。お前の母親にわしが見つかったら、また色々と困らせるんじゃないか?」

(,,゚Д゚)「ま、あの母親のことだから『捨ててきなさい』とは言わんだろうがなぁ」

多分猫はショボンの家があまり裕福ではないことに、薄々気づいていたのだろう。
もっとも、喋る猫なんて金銭以前の問題だろうけど。

(,,゚Д゚)「それに、わしは同じ所に五日以上居座らんポリシーだからな」

(,,゚Д゚)「このままオチもつけずにだらだら邪魔してしていると、うっかり日が経ってしまいかねん」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:55:21.58 ID:D2pWh0W40
ショボンは別れの瞬間に、またも泣き出したい気持ちに駆られる。
でもショボンは今回のことで多くのことを学んだ。
泣いてもどうにもならないこともある。
それだって、学んだ。

下を向き、ショボンは涙を必死に堪えた。
生意気な猫に、またハナタレだとか泣き虫だとか言われないためにも。

(,,゚Д゚)「ともかく、小僧」

(´・ω・`)「……?」

(,,゚Д゚)「お前の見せたその勇気、素晴らしかったぞ」

(,,゚Д゚)b「ぐっじょぶだ」

可愛らしく前足を上げる猫。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 23:59:13.18 ID:D2pWh0W40
(´;ω;`)「うっ」

(,,゚Д゚)b「泣くな! こういうときは笑うんだぞ!」

(´つω;`)「な、ないてないもん!」

(*´・ω・`)bグッ

それを見た猫は満足したように窓から降り立ち、垣根の先に消えていった。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/31(金) 00:00:16.04 ID:GgrqgHJC0



   (´・ω・`)編おわり




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