( ^ω^)彼らは携帯電話を武器に戦うようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:35:00.84 ID:VYiB5PA00


( ・∀・) ねえ、ブーン。覚えてる?

( ^ω^) お?



2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:36:07.92 ID:VYiB5PA00
高校からの帰宅途中。ブーンがいつも通り、幼馴染のモララーといっしょに帰路についていると、ふいにモララーが話しかけてきた。

( ・∀・) ちっちゃい頃さ、よくボクとブーンと他のみんなでヒーローごっこやったじゃない?

( ^ω^) お……そういえば

「なつかしいおー」と呟きながら、ブーンは記憶をたどっていく
幼い頃テレビでやっていた、巨大化して怪獣と戦うヒーロー番組。憧れていたみんなで、公園でやっていたごっこ遊び。
自分はいつもヒーロー役がやりたいとだだをこねて、みんなを困らせていたっけ。

( ^ω^) そういえば、モララーにはいっつも怪獣役をやらせてたお

「ごめんだお」と謝るブーンに、モララーは「そのことなんだけどね」と頬をかいた。

( ・∀・) あれさ、ボクからすすんでやってたんだよね

( ^ω^) お? そうだったのかお?

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:39:01.17 ID:VYiB5PA00
( ・∀・) うん、みんなやりたがらないからしかたなくって風を装ってたけどさ、実はボク、結構乗り気だったんだよね

( ^ω^) ほう?

( ・∀・) 怪獣ってさ、なんかロマンじゃない?

( ^ω^) まあ……わからなくはないお

自分だって男の子だ、大きくて格好いい怪獣にあこがれたりしたことも無くはない。
でもやっぱり、自分はそれをやっつけるヒーローのほうが好きだなとブーンは思った。

( ・∀・) 大きくて、人の力ではどうにもできない圧倒的な何かが、街も人も関係なく、火の海に変えていく……

楽しそうに話すモララー。自分の幼馴染は変わっていると、時々ブーンは思う。
成績優秀、スポーツ万能。人当たりもいい。
でも、たまにこういう変な話をしたりする。それも多分、自分だけに。どうも彼は自分以外の全ての人間と適度に距離を置いているという印象を受ける。
幼馴染であり、親友である彼のそんな一面が、ブーンは時々とても心配になる。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:39:49.28 ID:VYiB5PA00
( ・∀・) その圧倒的な破壊の前では、全ての人間が平等なんだ

( ^ω^) モララー?

モララーがふいに変な話を始めるのはいつものことだが、今日は何か様子が違う。他の人なら気付かないだろうそれを、幼馴染であるブーンは敏感に察知した。

( ・∀・) ブーン、ボクはきっと未だに憧れているんだよ。なりたいんだ、怪獣に

( ^ω^) ……

( ・∀・) どうしたらいいのかな、ボクは……

モララーは静かに空を見上げた。ブーンはかける言葉が見つからず、彼の横顔を眺めている。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:42:02.60 ID:VYiB5PA00
彼らが見上げる空の上。
大気圏のそのまた向こうの、宇宙と呼ばれる空間を、一隻の宇宙船が航行していた。
ちなみに地球のものではない。地球よりもはるかに優れた科学力をもった未知の惑星。彼らはそこから、この遠い惑星の近くにまでやってきたのだった。

「青い星か、きれいだな」

宇宙船の船長が静かに呟いた。

「大気の成分、問題なしです。私達と似たような知的生命体も存在しているようですが、着陸してみますか?」

「いや、その必要はあるまい。下手に他の知的生命体と接触すれば、戦闘になりかねんからな」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:43:05.29 ID:VYiB5PA00
そのとき、ふいに宇宙船内に警報が響き渡った。

「なんだ、攻撃か!?」

「いえ、なにかが宇宙船に衝突したようです!」

「隕石よりはるかに小さい……レーダーに直前まで反応が無かったのはこのせいか!」

「なんだこれは…!! この星の周りに集中して浮かんでいる!?」

「あの星のデータバンクにアクセスしてみます!!」

「わかりました……これは」

「どうした!? 何が分かったんだ!!」

「これはこの星の言葉で表すと『スペースデブリ』。つまり宇宙空間に捨てられた、ゴミです!!」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:44:12.59 ID:VYiB5PA00
「宇宙にゴミを捨てる…? この星の文化水準はそんなに低いのか!!」

憤る船長。そうしている間にも何千、何百というスペースデブリの群れが宇宙船に襲い掛かる。

「フォトンコンピューター制御装置損傷!! もうだめだ!!!」

宇宙では、どんなことが起こるかわからない。
だから、高い科学力をもった宇宙人が、さほど科学力の高くない星の住民達が出したゴミのせいで命をおとすというのも十分にありうることである。
そして、この宇宙船は爆散した。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:45:06.08 ID:VYiB5PA00





彼らは、知る由もない。
爆散した彼らの機体から、赤い電気のようなエネルギー体が、その星の住人が地球と呼ぶこの星に降り注いだことを

それは極東の、小さな島国のある市にふりそそぎ、そしてこれから始まる物語の引き金を引くことになるということを





18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:46:25.75 ID:VYiB5PA00





   ( ^ω^)彼らは携帯電話を武器に戦うようです
           第一話「携帯」






19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:47:11.79 ID:VYiB5PA00
モララーの家の前で彼と別れ、ブーンが一人で自分の家に帰ろうとしていたときのことだ。
ふいに彼の携帯電話に着信があった。
スライド式の携帯電話を開き、通話ボタンを押す。
画面には、ブーンの女友達の名前が表示されていた。

( ^ω^)】 おいーす、ツン。なんだお?

「あ、ぶ、ブーン。あのね、ちょっと用事があって」

( ^ω^)】 お?

なんだか様子がおかしい、彼女はいつも強気ではきはきと喋る。なのに今の彼女は妙にもじもじしていて、語気も弱い。
どうしたのだろう? とブーンは思った。

「こ、今度の日曜日なんだけどさ……」

( ^ω^)】 ……お?

そのときである

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:49:22.62 ID:VYiB5PA00

( ゚ω゚)】 なんだお、あれ?

突如空に現れた赤い点。
それはどんどんこちらに近づいて来る。

「え? どうしたの?ブーン」

携帯電話からは、ツンの声が響いている。
次の瞬間、ブーンの目の前で赤い光が弾けた。

(; ω ) ッ!!

どん、という雷鳴にも似た轟音。それと同時に携帯を持つ右手にすさまじい衝撃がはしった。
たまらず手から携帯電話を離す。閉じた瞼の裏に先程の赤い光がまだ残っている。
携帯電話がコンクリートの地面に落ちる音が、視界を奪われたブーンの耳に届いた。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:50:06.35 ID:VYiB5PA00

おそるおそる、目を開く。網膜にまだ赤い残光が残っているが、しばらくするとそれもなくなり、ブーンは携帯電話の落ちているであろう、地面に目をやる。

(;゚ω゚) な、なんだお? これ?

そこにあったのは見慣れたスライド式の、彼の黄色い携帯電話だった。
しかし、それは微量の赤い光を全体から放ち、さらにその表面を赤い電気のようなものがバチバチと音を立てながら蛇のように這っている。
さきほど空に現れた赤い『何か』がこの携帯に命中した。
ブーンがその仮説に行き着くまで、そう時間はかからなかった。

(;^ω^) ……

どうしたらいいのか全く分からず、ブーンはしばしの間呆然とその場に立ち尽くしていた。
ボーっと自分の地面に落ちた携帯電話を眺める少年。
端から見れば何をしているのか疑問に思われるだろう。
そうしてしばらく携帯を眺めていると、次第に携帯から発せられていた赤い光は薄くなっていった。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:50:53.39 ID:VYiB5PA00

おそるおそる、ブーンは足元の携帯に手を伸ばす。
そっとのばした指先が携帯の表面に触れた。
ひょっとして触った瞬間電気ショックが襲ってくるんじゃないかという心配も杞憂に終わり、ブーンは思い切って携帯を手に取る。

(;^ω^)=3 なんともないみたいだお

スライド式の携帯電話を開き、どうやらデータの損失などの異常がないことを確認したブーンは、ホッと溜息をついた。

(;^ω^) 一体なんだったんだお……?

ポケットに携帯をしまったブーンは、疑問に思いながらも帰路についた。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:52:32.64 ID:VYiB5PA00
「掃除、洗濯、子どもの相手。家事全般をこなします。ラウンジ社の人型ロボットTASHIRO―――」

家に帰ると、リビングで母がせんべい片手にテレビを見ていた。
あまりにもいつも通りのその風景に、ブーンはいくらか安堵を覚える。

J( 'ー`)し いいわねえ……TASIRO。家にも一台ほしいわあ……

( ^ω^) でも、車一台分くらいの値段するらしいお?

J( 'ー`)し あら、ブーン。帰ってたの

( ^ω^) ただいまだお

こちらに気付いた母親に帰宅の挨拶をすませると、ブーンは母の隣のソファーに腰を沈めた。

J( 'ー`)し 車一台ねえ……ローンを組めばなんとかなるかしら?

( ^ω^) あんまりこういうのに頼って楽をするのはよくないと思うお?

J( 'ー`)し 主婦もいろいろと大変なのよ

音を立ててせんべいを齧りながら、母は憂鬱そうに一言、そう言った。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:53:24.71 ID:VYiB5PA00

夕飯のあと、部屋に戻ったブーンはベットに寝転がってボーっと天井を眺めていた。
頭の中に浮かぶのは、帰り道で見たあの赤い光。

( ^ω^)(あれは一体……なんだったんだお?)

ちらりと枕元に置いた自分の携帯電話に目をやる。
あの赤い光の直撃を受けたであろうスライド式の黄色い携帯電話は、今のところ何の異常も無く、それがかえって不自然でブーンには不気味に思えた。

( ^ω^) ……

なんとなく自分の携帯を手にとり、何をするでもなく手でもてあそぶ。
そのとき

(;゚ω゚)て !!

突然響く、着信音。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:56:08.61 ID:VYiB5PA00

驚いたブーンの手から、携帯電話がベットの上に落ちる。

(;^ω^)(びっくりしたお〜)

落ちた携帯を拾い上げ、着信画面を見る。
着信画面には相手の名前は表示されていない。間違い電話か何かだろうか?
しかし、この電話番号には妙に見覚えがある気がする。

( ^ω^) はて、誰の番号だったかお……?

思い出せずにブーンは首を捻るが、まあいいやと、とりあえず電話に出ることにした。

( ^ω^)】 もしもし、誰だお?

ζ( ー *ζ あなたに、頼みたいことがあります

携帯から聞こえてくるのは聞き覚えのある女声。
そういえば、赤い光のことですっかり忘れていたが、自分はあの出来事の直前まで通話していたのだ。

( ^ω^)】 お、ツンかお? 昼間は急に切っちゃってごめんだお

ζ( ー *ζ ……

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:57:01.38 ID:VYiB5PA00

( ^ω^)】 お……?

喋らないまま黙ってしまう彼女。
そういえば、昼間ツンは気の強い彼女にしてはめずらしく、なにか話しにくそうにしていた。
なにか深刻な用件でもあるのだろうか?
ブーンがそう思って黙っていると、彼女はひとことだけ

ζ( ー *ζ お願いです、“私”を……“私たち”を再び一つに……

そう言って電話は切れてしまった。

( ^ω^) ? なんだったんだお?

もしかしたら電波の不具合か何かで切れてしまったのかもしれないと思い、着信履歴を確認する。

(;^ω^) お……?

着信履歴には、先程かかってきたはずの電話番号は表示されていなかった。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 20:58:01.55 ID:VYiB5PA00

昼間変な光を浴びたし、そのせいかとも思ったが、さらなる異常にブーンは気付いてしまった。

(; ω )(そうだお……さっきの番号、どこかで見たことがあると思ったら)

気付いたその事実がブーンにはとても信じられず、ブーンは携帯電話をいじってそれがただの思い過ごしであることを証明しようとする。

(;゚ω゚)(これは……!!)

表示されたのは、一つの電話番号。
先程の着信画面に表示されたのとまったく同じものだ。
そしてその番号でつながる携帯電話の持ち主は―――





(; ω ) これ……僕の番号じゃないかお……






35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 21:01:41.13 ID:VYiB5PA00

(  ω )

あんなことがあったせいか、昨日は一睡もできなかった。
気分転換に散歩にでも行こうと外に出る。
空には、雲がまばらにあるものの爽やかな青空が広がっていた。

早朝の涼やかな空気を肺一杯に吸い込むと、訳の分からないものに怯えていたブーンの心も、すこし平静をとりもどした。

( ^ω^)(そうだお、きっとただの勘違いだったんだお)

同じだった電話番号は、たまたま似ている番号からかかってきたというだけのこと。
着信履歴のほうは、ただのバグ。
月曜に会って、ツンに確かめてみれば……

『ζ( ー *ζ お願いです、“私”を……“私たち”を再び一つに……』

( ^ω^) ……

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 21:03:24.84 ID:VYiB5PA00

不意に脳裏に思い出される、彼女の声。
あれは……あの声の主は本当にツンだったのだろうか?
そんなことを考えながら、住宅街の中を歩いていたときだ

(; ω ) ……ッ!!




―――再び鳴る、着信音。




携帯から流れるのは、独特の響きをもつ、明るいポップス調の音楽。
まだ、ほとんどの人が起きていないであろうこの時間に、それは不気味なほどに大きくあたりに響く。
おそるおそる、携帯を取り出すと

(;^ω^) これは……

そこには昨日と同じ。まごうことなき自分の電話番号が表示されていた。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 21:04:22.24 ID:VYiB5PA00

何度も何度も、画面に表示された番号と、自分の脳内に記憶されている自分の携帯番号を照合してみるが、何度見直しても、それは間違いなく自分の携帯番号だった。

携帯の着信ボタンを押すべきかどうか、迷っているとふいに誰かの声が耳に届いた。

「ソレヲ、ワタシテクダサイ」

(;^ω^) お……?

顔を上げたブーンの目に映ったのは自分と同じくらいの背格好をした一体の人型。
ただし、それは人ではなかった。

〔○〕 ソレヲ、ワタシテクダサイ

そこにいたのはTASIRO―――ラウンジ社制の、凡庸人型ロボットだった。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 21:05:32.15 ID:VYiB5PA00

クリーム色の丸みをおびた細いボディ。
人間を模した形をしたその胴体には、TASIROに命令を入力するためのタッチパネルになる大きな緑色の“目”がついた頭が乗っている。

〔○〕 ソレヲ、ワタシテクダサイ

(;^ω^) ……

相変わらず無機質な電子音声で話しかけてくるTASIROを前に、ブーンはどうしていいのかわからず呆然とする。
普通、TASIROが自ら人間に話しかけてくるということはありえない。
TASIROには確かに喋る機能もついているが、それは人間の命令に応答するためのものであり、そもそもTASIROには自分でものを考えて話すというような高度な人工知能は搭載されていないはずだからだ。

〔○〕 ソレヲ、ワタシテクダサイ

(;^ω^)て ……お

そして、気付いたときにはもう手遅れだった。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 21:07:36.40 ID:VYiB5PA00

60キロほどあるはずの自分の体が、宙に浮く。
べつに突然超能力に目覚めたわけではない。

〔○〕 ソレヲ、ワタシテクダサイ

(; ω ) ……ッ!!

目の前のTASIROに、首をつかまれ宙吊りにされているのだ。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 21:09:11.64 ID:VYiB5PA00

徐々に、呼吸が困難になっていく。
まずい……このままでは死んでしまう……!!

(; ω )(そうだお、たしかTASIROは―――)

前に行った友達の家で見せてもらったことがある。
TASIROは顔のタッチパネルを操作することで電源を切ることができるのだ。
そうと決まれば話は早いと、目の前のTASIROの“目”に手をのばす。

(; ω ) ……っ!?

しかし、その手は目に届くことなく、ばち、という電気音にも似た音とともに遮られる。
正確には遮られたというより、なにかにはじかれたという表現のほうが正しいだろう。
手に走る衝撃の感覚、そのとき一瞬だが、ブーンは見た。
自分の手が、TASHIROにふれる直前で『赤い光』に遮られたのを。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 21:11:13.58 ID:VYiB5PA00

(; ω )(あの、赤い光……)

間違いない。
あれは昨日、自分の携帯電話に当たったのとまったく同じものだ。
一体どういうことだ?
あの光は一体なんだ?
自分は、ここで死んでしまうのか?
そう思い、ブーンが自分の意識を手放しかけたとき、自分の右手にある携帯電話から、未だにあの明るい、ポップス調のメロディーがながれ続けていることに気付いた。

(; ω )(いちかばちか……)

もう、相手が幽霊だろうがなんだろうが関係ない。
とにかくだれかに助けを求めなければ自分は死んでしまうのだから。
決心したブーンは着信ボタンを押し、耳に近づけた携帯に必死に助けを求める声を出そうとする。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 21:14:23.98 ID:VYiB5PA00

(; ω ) もし……たsけ……

ダメだ、声がもうでない。意識のほうも、もう限界だ
もう終わりだとあきらめようとした、そのとき

ζ( ー *ζ 私を、投げてください

(; ω ) お……?

投げる? 私? どういうことだ?

ζ( ー *ζ あなたの手元にある携帯電話、それをあれにむかって投げてください

理解するよりも早く、手が動いていた。
右手から放った携帯電話は、赤い光を放ちながら、普通では考えられないほどの速さで目の前の人型機械に飛んで行き、その情報処理の中枢たる“目”に突き刺さる。
突き刺さった携帯電話は一際大きく赤い光を放出し、そしてまたなんの変哲もない、もとの黄色いスライド式の携帯電話に戻った。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 21:17:47.07 ID:VYiB5PA00

(; ω ) ……けほっげほっ!!!

首からロボットの手が離れ、体が地面に開放される。
気道が自由を取り戻し、激しくむせた。
喉をさすりながら、立ったまま機能を停止したTASIROを見上げる。
さっきまで意識が遠のきかけていたせいか、目がやたらとチカチカしたが、なんとか立ち上がり、TASIROの“目”に突き刺さった携帯を引っこ抜く。
画面の表示は、未だに「通話中」となっていた。
それを耳にあてて訊ねる。

(; ω ) キミは……けほっけほっ……誰だお?

ζ( ー *ζ ……

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 21:21:57.54 ID:VYiB5PA00

通話相手は、しばらく黙っていたが、暫くたって口を開いた。

ζ( ー *ζ 私を、いえ、“私たち”を表現する言葉は、現在のこの星には存在しません

(;^ω^) ……お?

ζ( ー *ζ むりやりこの星の言葉で表現するなら「超エネルギー製高性能光子演算装置」

(;^ω^) ?

話し始めたと思ったら、自分にはさっぱり理解のできない内容でブーンは混乱する。
相手もそれを察したのだろう。
彼女は、今のブーンにとって一番理解しやすいであろう、自分の外見的性質を語ることで、ブーンに自分のことを理解させることにした。

ζ( ー *ζ そうですね、一番分かりやすく言うと私は―――

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 21:23:25.54 ID:VYiB5PA00










ζ(゚ー゚*ζ あなたの手元にある、その携帯電話です









49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 21:27:56.03 ID:VYiB5PA00





     ( ^ω^)彼らは携帯電話を武器に戦うようです
             第一話「携帯」
               おわり





52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/03(土) 21:41:20.82 ID:VYiB5PA00
     ―次回予告―

ζ(゚ー゚*ζ 確認したいのです、ブーンさんが私に“協力”してくださるのかどうか

( ・∀・) どうしたのさ、ボーっとしちゃって

ξ#--)ξ “誰かさん”って誰のことよ?

(;^ω^)】 おっおっ…まったくとんでもない世界に飛び込んじゃったもんだお





    第二話:「光剣」






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