- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:40:16.15 ID:thB6pW0X0
- 背の高い建物が立ち並ぶその中を、ボロボロの服を身にまとったブーンとクーは走っていた。
彼らが足を運ぶ方向にあるのは、地面から立ち上る巨大な土煙。
まるで爆弾でも落ちたようなその光景に向かって、彼らは進む。
(;^ω^) ……笑い声?
目に映る砂煙が、距離を縮めるごとにだんだん大きくなっていく。
それと友に聞こえてくる、誰かの笑い声。
川;゚ -゚) なんだ、これは……
そこは、十字路のど真ん中だった。
そこで行われていた戦闘に巻き込まれまいと皆逃げてしまった性か、
はたまた周りの建物がほとんどオフィスの類だったためか、
ときかく休日の昼どきだというのに、そこにはまったくと言っていいほど人影がなかった。
まず彼らの目に映ったのは、
まるでミサイルで爆撃されたように円周状に抉られたアスファルトの道路。
そして、その真ん中で左手に携帯電話を持ったまま笑う、一人の少年の姿だった。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:40:57.09 ID:thB6pW0X0
- ( ・∀・) あははは!! ……ああ、まったく愉快だね
(;^ω^) ……モララー?
空を見上げて高笑いをしている少年―――モララーにブーンは恐る恐る近寄り、声をかける。
ふ、と気付いたようにこちらに目をやる彼。その姿は頬に切り傷があるくらいで特にこれといった外傷は見られない。
それを見て、ブーンは少しだけ安心した。
( ・∀・) あれ? ブーンにクー先輩じゃない、そっちは片付いたの?
川 ゚ -゚) 誰に向かって聞いているんだ? 私があんなゴキブリ一匹に手間取るわけないだろう
( ^ω^) おっお、僕の方もなんとかなったお
腰に手を当て、無駄にえらそうに胸を張るクーと、その顔に朗らかな笑みを浮かべるブーン。
モララーはそれを見て、安心したようににこりと笑った。
( ・∀・) そうか、ボクの方も調度片付いたところさ。ちょっと手こずったけどね
( ^ω^) お、めずらしいお。モララーが「手こずった」なんて
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:41:52.04 ID:thB6pW0X0
- 「そんなに強い相手だったのかお?」と首を傾げるブーンに、モララーはふふんと得意げに笑う。
( ・∀・) まあ確かに強敵だったね、ま、このボクを相手にしたのが運の尽きってとこかな?
川 ゚ -゚) ふん、敵を倒すのに一番時間がかかったヤツが、なにを得意になっている
そう言って、クーは自分の、まるで彼女の性格を体現するかのように自己主張している胸を叩いた。
川 ゚ -゚) ちなみに一番はこの、偉大なる素直クール様だ。尊敬しろよ、後輩たち
かるくウインクする自称偉大なる先輩に、後輩であるモララーは答える。
( ・∀・) でも、戦闘開始はクー先輩が一番早かったですよねー?
川 ゚ -゚) そうとも、戦闘開始も私が一番だ
( ・∀・) なら戦闘時間そのものは、ボクとそんなに変わらないんじゃないですかー?
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)ムッ
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:42:37.48 ID:thB6pW0X0
- 自分こそが最速で戦闘を終わらせたと主張する自称偉大なる先輩と、それに負けじと反論する幼馴染。
ぎゃーぎゃーと言い合う二人を見ながら、
ブーンは先ほどの爆発音について、完璧に聞くタイミングを逃したなあと思いつつも、
目の前の二人のやり取りに、やっと戦闘という非日常が終わったと、どこかホッとしている自分に気がついた。
( ^ω^) お?
ふいにあたりに鳴り響く、明るいポップス調のメロディー。
スライド式の自分の黄色い携帯電話を開くと、そこには自分の電話番号が表示されていた。
( ^ω^)】 デレかお?
〔(α)〕 ブーンさん、今すぐそこから離れてください
(;^ω^)】 お、アルファさん……? いますぐ離れろって、どういうことだお?
〔(α)〕 生まれてしまったのです、我々の「王」が
電話ごしに『王』という単語が聞こえたのだろう、ぎゃーぎゃーと言い争っていた二人が、同時にこちらに顔を向ける。
川 ゚ -゚) 王だと……詳しく話せ
( ・∀・) その声、キミさっき居たTASIROだよね、なんでブーンの携帯に入ってんの?
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:46:01.38 ID:thB6pW0X0
- この二人は、一分一秒つねに自分が一番偉いと思っているような人間である。
ゆえに自分以上に偉い人間を表す『王』という単語は、彼らの興味を著しく引くものなのだろう。
アルファはとりあえず自分がブーンの携帯に入った経緯を簡単に説明すると、『王』について話し始めた。
〔(α)〕 私がネットワークを介して得た情報のなかには、ラウンジ社の最重要機密も含まれていたのです
( ・∀・) へー、すごいね。キミ、そんなこともできるんだ
( ΦωΦ) ちなみに我輩もできるのである
( ・∀・) え!? そんな面白そうなこと、なんで今まで言わなかったのさ、ロマ
(;ΦωΦ) 言ったらモララー殿は絶対悪用するであろう
ブーンの携帯から発せられる「ごほん」、という音に話を脱線させた二人が黙る。
〔(α)〕 機密事項の内容は、「戦争兵器としてのTASIRO」の研究。
最強の”依り代”を探していた私たちは、それを自分たちの”依り代”として選びました。
〔(β)〕 で、その結果生まれたのが「王」って訳だ
うひゃっひゃと笑いながら、どこか軽い声でベータが続ける。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:47:02.66 ID:thB6pW0X0
- ( ・∀・) キミもいるの!? ねえねえロマ、じゃあさっきの……
(;ΦωΦ) すまぬモララー殿、モララー殿があまりにも早く叩き潰したものだから
我輩、ガンマの人格を保存する暇がなかったのである
〔(β)〕 てめえら人の話し聞けや
話の腰を折るのが得意な二人が再び黙る。
この二人はひょっとしてわざとやってるんじゃないか、とブーンは思った。
〔(β)〕 俺様たちは「王」を生み出すために準備を始めた。
まず自分たちのいる工場のなかの全てのセキラを二体のTASIROに集めた、
一体は”王の器”にセキラを集めるための”仮の器”として、
そして、もう一体は「王」を守る親衛兵として
( ^ω^) お……もしかして、その親衛兵っていうのが
〔(α)〕 お察しの通り、私たちです
( ・∀・) しかし分からないね、その「王」ってのが兵器としてのTASIROだってのは大体察しがつくけど
そのTASIROにどうやって集めたセキラを注ぎ込むのさ?
首を傾げるモララーに、今度はベータが答える。
〔(β)〕 ラウンジは、その兵器TASIROの試験をやろうとしてやがったのさ、それが今日だってわけだ
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:48:16.43 ID:thB6pW0X0
- 〔(α)〕 ラウンジにとって、暴走して自主回収したTASIROなんて、粗大ゴミに過ぎませんからね。
ゴミは有効活用……つまり、戦闘兵器の動く的として使おうというわけです
( ^ω^) 大量のセキラの宿ったTASIROを、戦闘兵器として作られたTASIROが倒す……
まさにデバイスとしても、ソフトとしても最強のTASIROが誕生するというわけだ。
川 ゚ -゚) それが「王」……というわけか、それで?
はやくここから離れろというのはどういうことだ?
〔(α)〕 我々の目的は、飽くまで一つになることです。
つまり、「王」は必ず”我々”を求めてこの場所にやってくる
( ・∀・) バカバカしい、ならいくら逃げたって同じじゃないか
「やれやれ」と呆れたようにモララーが言う
〔(α)〕 それは……確かにそうですが……
それに反論しようとするアルファに、モララーは笑って言った。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:49:44.35 ID:thB6pW0X0
- ( ・∀・) 発想を変えようよ
左手に持った携帯電話をかるく掌の上で弄びながら、モララーはブーンたちに背中を向け歩き始める。
(;^ω^) お? どこ行くんだおモララー
( ・∀・) ふふん、「いいトコロ」さ
呼び止めるブーンの声に、モララーは軽やかにターンして彼のほうに向き直ると得意げにそう言った。
川 ゚ー゚) ふん……お前が何を考えているか、大体予想はつくぞ
( ・∀・) さっすが先輩。
大体”逃げる”なんてボクたちの性分じゃないですよね?
不敵な笑みを浮かべる先輩。そしてそれと同じように笑う幼馴染。
( ・∀・) ボクたちは”逃げる”んじゃない、”迎え撃つ”のさ
得意げに言うモララーの姿を見て、
ブーンはとりあえずまたハードなことになりそうだなあとため息を吐いた。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:50:34.67 ID:thB6pW0X0
( ^ω^)彼らは携帯電話を武器に戦うようです
第十一話「強敵」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:51:27.90 ID:thB6pW0X0
- お昼過ぎの商店街の中を、一体のTASIROが歩いていた。
右の腕には、超低反動小型機関銃。左の腕には鎌のような形をした緑色の刃。さらには全身に施された迷彩色。
異質な彼の姿に驚く住民たちは、しかし怖いもの見たさからか、
すこし離れた場所から道路の真ん中を歩く彼の姿を観察している。
〔(Ω)〕 はん、なるほどな……これが『人間』ってやつか
ギリシャ文字の”オメガ”を表示させた彼の大きな目が、
遠巻きにこちらを見る”彼ら”の姿を捉える。
指を指すもの、何かを他のものとはなしているもの、携帯のカメラを向けるもの
その姿は、本当に様々だ。
〔(Ω)〕 ……あ?
ふと彼のカメラが、一人の人間の姿を捉える。
それはスーツに身を包んだ、どこにでもいそうなサラリーマン風の男性だった。
しかし、セキラの存在を捕らえる特殊な”感性”を持った彼の目には、
その男の右ポケットのあたりが、”赤く輝いている”ように見えたのだ。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:52:35.81 ID:thB6pW0X0
- 〔(Ω)〕 なあ、兄ちゃん
ふいに彼に話しかけられたことにより、男性は硬直する。
〔(Ω)〕 その携帯電話、渡せ
そう言って彼は右手を男性のほうに差し出すが、驚いている男性はそれに反応できない。
〔(Ω)〕 聞こえねえのか、その携帯を渡せっつってんだよ
「あ、あの……これには、娘の誕生会の写真が入ってて」
やっと口を開いた男性は、携帯を渡せないうまを目の前のTASIROに説明する。
恐らく男性は、このTASIROの存在を映画の宣伝か何かくらいにしか思っていなかったのだろう。
もしくは、娘をよほど愛していたのか。
しかし、もちろん”彼”に―――セキラの宿るTASIROたちの『王』たる彼にそんな理屈が通用するはずもなく
〔(Ω)〕 あっそ、じゃ、力ずくで奪う
次の瞬間、戦闘用TASIROの拳をまともに腹に食らった男性は、宙を舞って後方に転落した。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:54:11.04 ID:thB6pW0X0
- 地面に転がる男性のポケットを漁り携帯電話をとり出したTASIROは、それを右手で握りつぶす。
男性の携帯電話から流れ込んできたセキラで、その目を赤く輝かせた彼は、周りを見回した。
彼のカメラに映るのは皆一様に、狐にでも化かされたような顔をしている人間たち。
まるで時間が止まったように静まり返るその場は、しかし数瞬のちに誰かが発した悲鳴を皮切りに混乱に包まれ
やがて彼の回りにいた人間たちは、皆一様に彼に背中を向け、走り出した。
〔(Ω)〕 あー……んだよ、よく見たら
セキラを捕らえる彼の目が、何人かのポケットが赤く輝いているのを捕らえる。
〔(Ω)〕 結構いるじゃねえの、”俺たち”を持ってるやつら
次の瞬間、開かれた”オメガ”の両手の指から伸びるのは、まるで触手のようにうねる赤い光。
計十本にもなるそれのうちの何本かの先端が、彼の目の捉えた赤い光に突き刺さり、そして吸い取る。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:55:08.27 ID:thB6pW0X0
- 〔(Ω)〕 チッ、簡単すぎてつまんねえな
赤い光を手に戻すオメガは、吐き捨てるようにそう呟くと、誰も居なくなった商店街を一人歩き始める。
”自分たち”がこの星に流れ着いたのは、単なる偶然だ。
そして”自分たち”の目的は「元の一つに戻ること」、
それは、いずれ自分たちの”製造元”が自分たちを回収しに来たとき、少しでも回収する側の手間を省くため。
少なくともそれが、彼の思考が導き出した見解だった。
そのためには、”そのとき”が来るまで自分たちが安全に暮らすための”入れ物”が必要なのだ。
そこで彼が一番有力な候補として考えていたのが、この星の知的生命体たる『人間』の持ち物だったのだが……
〔(Ω)〕(こんな弱い生き物に、オレたちをまかせていいのか……?)
自分のこの”体”を作り出した人間たちは、自分たちが作り出した、この体に装備された兵器に怯えていた。
先ほどのあの男にしろ、抵抗することも無くあっけなく自分に敗北した。
”自分たち”を任せるには、こいつらはあまりに弱すぎる。
最終的にそう判断したオメガは、遠くに感じる”自分たち”の反応を目指して走り始めた。
―――弱い人間たちから、”自分たち”を取り戻すために。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:55:49.49 ID:thB6pW0X0
- ( ・∀・) ロマ、「王」はどれくらい近づいてるの?
( ΦωΦ) 現在、北西1km地点くらいである。ものすごいスピードでこちらに接近中である
そこは、かつてラウンジ社が所有していた工場の跡地だった。
工場としての機能が停止し、壁や天井のあちこちに穴が開いたそこには、
未だに撤去されていない作業機械の類が多数放置されており、
ブーンたちは、調度その機械が立ち並ぶ空間の真ん中で、
入り口となる大きなドアを緊張した面持ちで見つめている。
―――もっとも、緊張した面持ちなのはブーンだけだったが
川 ゚ -゚) ふふん、「王」か、なるほど。
では私が「王」を倒せば、そいつに代わってこの私が「王」になるというわけだな
顎に手をやりながら笑うクー。
ブーンはそれを横目で見ながら、この人の自信は一体どこから沸いてくるのだろうとため息を吐いた。
ミセ*゚ー゚)リ クーってばバっカじゃないの、クーは女の子なんだから「女王」でしょ?
川;゚ -゚) う……うるさいな! バカっていうほうがバカなんだぞ!!
〔(β)〕 うっひゃっひゃ、それって間接的に自分がバカって言ってねえ?
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:56:35.49 ID:thB6pW0X0
- ロマに『王』の位置を訊ねながら、子どものように目を輝かせるモララーと
自らの携帯に宿るセキラたちとギャーギャーと騒いでいるクー。
まったく、これから『王』を相手にするというのに緊張感のかけらもない。
そんな彼らの姿を見て、ブーンは深々とため息を吐く。
……正確には、ため息の理由はそれだけではなかったのだけど
( ^ω^) デレ……僕は本当にここでじっとしてていいのかお?
じっとしていると、不安になる。
自分がなにもしていない今この瞬間にも、誰かが『王』に襲われているかもしれない。
自分が、自分にできることをしなかったせいで誰かが傷つくかもしれない。
それはブーンにとって、何よりも我慢できないことだった。
ζ(゚ー゚*ζ 気持ちは分かります、でも、今は耐えてください
携帯のスピーカーから、なだめるようなデレの声が響いた。
『王』の動きは、ブーンたちの予想をはるかに上回るほどに速い。
それに加え『王』の強さを考えると、自分たちの勝率が最も高くなるのはこの待ち伏せなのだそうだ。
ちなみに、セキラたちがシュミレーションした、彼らの最も高い勝率は30%
―――それ以外は0だそうである。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:57:22.11 ID:thB6pW0X0
- つまり、十回戦って三回は勝てる、いや、十回戦って七回は敗北するというべきか。
自分たちが先の彼らとの戦闘で疲弊し、ダメージを受けていることを考慮に入れても
その勝率は随分低いように、ブーンには思われた。
( ^ω^)(『王』……そんな強いTASIROが、今街中で好き勝手に暴れている。なのに、僕は……)
ぎり、と奥歯を食いしばる。
できるなら、今すぐにでもこの場所を飛び出して、『王』の元へと向かいたい。
しかし、一人で『王』に立ち向かうという行為は、”自分のできること”の範疇から飛び出してしまっている。
( ω )(僕は……僕はなんてちっぽけなんだお……!!)
携帯電話を持つ、ブーンの手に力がこもる。
ζ(゚ー゚*ζ ブーンさん……
それを感じた彼のセキラは自分の主人に何か言葉をかけようとしたが、
しかし、かける言葉が見つからず、結局彼女は何も言えずに黙るしかなかった。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:58:04.82 ID:thB6pW0X0
- ( ΦωΦ) ……来たのである!
モララーの持つ携帯電話が声を上げる。
それと同時に、工場内の空気が一気に緊迫したものになった。
ブーン、モララー、クーの三人が、放置された機器に囲まれた工場の中央で背中合わせになる。
( ・∀・) 敵の機動力がどれほどのものか分からない、
どの方向からでもお客さんをお迎えできるように、注意しなくちゃね
入り口の方に向かって、赤い光の剣を構えるモララーが言った。
川 ゚ -゚) 可能性が一番高いのは入り口……と、見せかけて私は左側の窓から入ってくると見た
入り口から見て左側、長いベルトコンベアーの向こうに見える窓を、
いつでも光弾を発射できる状態にした携帯電話で狙うクーが言う。
ミセ*゚ー゚)リ 根拠は? 〔(β)〕
同時に二種類の音声を発する彼女の携帯電話。それに彼女はきっぱりと答えた。
川 ゚ -゚) 「勘」だ!!
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/08(水) 23:59:03.16 ID:thB6pW0X0
- そんなやりとりに背を向けて、携帯から赤い光の鞭を出したブーンは、静かに息を整えていた。
目の前に見えるのは、何に使うのか見当のつかない重機。
この巨大な壁とも言える鉄の塊すら、『王』の前には壁にもなりえないとセキラたちは言う。
もし、自分の見ている方向―――この重機の壁を突き破って『王』が攻めてきたら……
(;^ω^)(ったく……心臓に悪いお……)
とくん、とくん、と心臓の脈打つ音がやけに大きく聞こえる。
頭の中で、何回も何回も、王冠を被ったTASIROが
体で重機を突き破りながら自分の前に躍り出てくるという妄想を繰り返した。
『もし怪我なんかしたら、泣いてやるんだからね!!』
朝、恋人からもらったメールが頭に浮かんだ。
今から自分が相手にするのは、”兵器”として開発されたTASIROである。
怪我どころか、下手したら自分は死ぬかもしれない。
恐ろしくてしょうがないけれど、それでもやはり自分は戦うのだろう。
こんな状況になっても、やはり自分が戦いを放棄することには納得がいかないから
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:01:09.55 ID:uwwsOTF60
- ζ(゚ー゚*ζ ……近いですね、かなり、近くにいる
〔(α)〕 この距離で視認できない……と言うことは……
(^ω^;) !! ( ・∀・)川 ゚ -゚)
とんとん、という音がした。
それは誰かが壁をノックしている音にも聞こえるし、
なにか硬いものの上を誰かが歩いているような音にも聞こえる。
そして、正しいのは後者だった。
ミセ*゚ー゚)リ 上!!?
その場にいる全員が一斉に上を見る。
そこには工場独特の灰色の屋根と、老朽化で壊れでもしたのだろう、
真ん中のあたりにぽっかりと、人一人分くらい通れそうな穴が開いていた。
ふいに、そこからひょっこりと、人のものではない、大きな”目”のついた顔が姿を現す。
〔(Ω)〕 よう
目にギリシャ文字の”オメガ”を表示させたそいつは、親しげにそう言って右腕をこちらに向けた。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:01:59.68 ID:MUOJNQMO0
- 廃工場内に響き渡る発砲音、
それと同時に中央で背中合わせになっていた三人がそれぞれ違う方向に飛ぶ。
三人が飛んで誰も居なくなった床から、連続して小さな埃の柱が上がった。
(;^ω^) ッ!! シャレにならないお!!?
重機側に飛んだブーンが緊迫した声を上げる。
(・∀・;) 実弾か……予想はしてたけど……
入り口の方向に飛んだモララーが、身を伏せながら呟いた。
川 ゚ー゚) ふん……上等じゃないか!!
ベルトコンベアーの間に飛び込んだクーは、そう言って
『王』がいるであろう天井の方にカメラのレンズを向け、シャッターを切った。
〔(Ω)〕 ……
それに臆することなく、『王』は両手と両足を広げた体勢のまま宙にその身を放り出す。
川;゚ -゚) 何……!?
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:03:54.76 ID:uwwsOTF60
- クーの放ったセキラの弾が全て『王』の体を包むセキラの衣に弾かれる。
まるで攻撃そのものが無いのと同じだという態度で『王』は床に着地すると、あたりを見回した。
〔(Ω)〕 はん、まあ”ここにくるまでののやつら”よりは骨がありそうじゃねえか
鼻で笑う、そんな音声を発して、彼は回りにいる人間のひとりに右手に装備された超低反動機関銃を向ける。
銃口の先にいるのは、一人の少年。
(;^ω^) !!
連続して響く発砲音。
それに対して、少年は動くことができない
(;・∀・) ブーンッ!!
腹部にセキラのベルトで携帯を固定したモララーが、叫びながらブーンを突き飛ばした。
(; ∀ ) ―――ッ!!
ブーンをかばったモララーに、銃弾が命中する。
(;^ω^) モララー!!?
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:04:57.36 ID:uwwsOTF60
- (; ∀ ) 平気、だよ……セキラの膜が防弾チョッキになったから……
でも、正直ちょっと痛いかな、これは
腹を押さえながらよろけるモララーを、ブーンが支える。
〔(Ω)〕 はー、なかなか面白れえ”オレたち”の使い方をするじゃねえの
その声にブーンが視線を上げると、『王』がぱちぱちと軽く拍手をしていた。
〔(Ω)〕 なるほどな、やっぱ”ここにくるまでのヤツら”とは違うか
オレは”オメガ”、名乗るのは、てめえらが始めてだ
オメガと名乗ったTASIROの右手が、ゆっくりと上がる
〔(Ω)〕 まあ―――
再び銃口が、ブーンのほうをまっすぐに向いた。
〔(Ω)〕 名乗った瞬間さようならってことになりそうだけどな!!
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:06:46.75 ID:MUOJNQMO0
- 川#゚ -゚) させるか!!
〔(Ω)〕 おう!?
オメガの後ろから近づいたクーが、彼の胴に斬りつける。
一瞬それに気を取られた彼の右手の狙いが少しずれ、銃弾はブーンたちから少し離れたところに被弾した。
ζ(゚ー゚;ζ この銃弾、”私たち”でつつまれてます!
右手に持つ携帯電話から聞こえる声。
しかしブーンの思考は、まったく別のところに行っていた。
(; ω )(動けなかったお……)
オメガに銃口を向けられたとき、ブーンはあまりの恐怖に動くことができなかった。
今までの戦いでも、”死”に直面したことは何度かあった。
しかし、これは正直レベルが違う。
(; ω )(僕は……僕は……)
目の前で、クーとオメガが戦っている。
なのに、自分は動けない。足が震える。怖い。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:07:29.75 ID:MUOJNQMO0
- 川; - ) ガ……ぁ……
ミセ*;゚ー゚)リ クー!!
赤く輝くオメガの拳を腹に受けたクーが後方へ吹き飛び、ベルトコンベアーに激突する。
どう聞いても正常でない呼吸音を発しながら苦しそうに胸を押さえる彼女に、
ゆっくりとオメガは歩み寄っていく
〔(Ω)〕 けッ、”オレたち”を持っててもこの程度かよ。
心底弱っちぃな、『人間』ってヤツぁ
クーの目の前で彼女を見下ろすオメガは、そう吐き捨てると
彼女の首をつかみ、高く持ち上げた。
〔(Ω)〕 外のやつらにしろ、てめえらにしろ、やっぱり「人間」じゃ
”オレたち”の持ち主になるには力不足だな、いや、むしろ、
こんな弱っちぃ生命体なら”オレたち”が支配して管理したほうがいいんじゃねえか?
特に感情も込めず、とんでもないことを堂々というオメガ。
それに対し、首をつかまれたクーが射抜くような視線を彼に向けた。
〔(Ω)〕 あん? ……なんだよ、その目は
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:08:30.62 ID:MUOJNQMO0
- 川# - ) まったく……「王」だかなんだか知らんが、あまり『人間』を舐めない方がいい
掠れる彼女の声は、しかしどこかしっかりとした力強さを持っている。
オメガはそれに違和感を覚えながら首をかしげた。
〔(Ω)〕 ……「人間を舐めるな」ねえ、そりゃ無理ってもんだぜ
自分が作った兵器に怯え、自分の大切なものを守る力すら持たない
そんな弱い生き物を管理してやろうってのは、ひどく親切なボランティア精神だと思わねえか?
言いながらオメガは、
首を絞めている右手とは逆側、肘から腕部側に反り返った刃を彼女に見えるようにちらつかせる。
川# - ) ふん……なんだそれは、脅しのつもりか?
無駄だよ、命乞いなどしないさ
〔(Ω)〕 ……外のやつらの殆んどは、
こうしたらすぐに”オレたち”の入れ物を渡したんだがな
川# - ) そうだな、それもたしかに「人間」だ。
しかし自分たちを管理しようとしている存在に、
自分の武器を渡そうとしない私もまた「人間」だ。
〔(Ω)〕 死ぬぜ、お前
刃のついた左手を、オメガは大きく振りかぶる。
川# ー ) 上等だ、その目にしかと焼き付けろ。この私の死に様を
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:10:41.03 ID:MUOJNQMO0
- 右手で掴み上げたクーの体を宙に放り出し、オメガは装備された刃でクーの体を切り裂かんとその左手を振るう。
しかしその刃がクーの体に届くことは無かった。
〔(Ω)〕 あん?
どすん、という音をたてて、クーの体がベルトコンベアーの手前に落ちる。
オメガは床で咳き込む彼女を見、そして自分の左腕に目を移す。
そこには”赤い光の鞭”が絡み付いていた。
( ω ) お前に、質問するお
光の軌跡を目で追うと、そこには先ほど自分が殺しそこなった少年が立っていた。
その事実に、オメガは少し驚く。
オメガの中でその少年は、彼の軽視する”外のやつら”と同格に扱われていたから。
( ω ) さっきお前は、「外のやつらの殆んどは」自分たちの入れ物を渡したと言ったお
じゃあ、渡さなかった人はどうしたんだお?
震えている少年の肩。恐らく自分のことが怖いのだろう。
彼の様子をそう解釈したオメガは、
その恐怖をさらに増幅させてやろうと、少年が最も怖がると思われる答えを返した。
〔(Ω)〕 さあな、覚えてねえぜ。ひょっとしたら殺しちまったかもな?
( ω ) ―――!!
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:11:26.64 ID:MUOJNQMO0
- 少年の体が一際大きく震えだしたのを見て、オメガは成功したなと内心でほくそ笑んだ。
〔(Ω)〕(あ?)
少年が、光の鞭を持つ腕を大きく後ろに引く。
それと同時に浮き上がる自分の体。
( ω ) ぉ……
気がつくと、オメガの体は宙を舞い、少年のほうに引き寄せられていた。
( ω ) ぉぉぉぉぉおおおおおおおおおオオオ!!!!!!
ζ(゚ー゚;ζ―Form Change:「Fighter」―
〔(Ω)〕 おいおい、なんだっていうんだ……!?
少年の目の前に着地したオメガを待っていたのは、
光のベルトで携帯を下腹部に固定した少年の繰り出す打撃の嵐。
下腹部に連続して放たれる拳は、しかしオメガを包むセキラの衣を破ることはできず、
ばちばちと赤い光を放ちながら弾かれる。
ζ(゚ー゚;ζ ブーンさん!?
( ω ) 許さない、許さない、許さない……許せない!!
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:12:25.54 ID:MUOJNQMO0
- 〔(Ω)〕 ッ、うっとおしいんだよ、この!!
赤く輝くオメガの右手が、下腹部に攻撃を続けるブーンの体をなぎ払おうとするが、
それをブーンは上空に飛んで避ける。
ブーンはそのまま空中で体を横に回転させ、オメガの顔に蹴りを見舞った。
(; ω ) く……!!
命中した蹴りは、しかしオメガの顔を覆う分厚いセキラの膜によって逆に弾かれてしまう。
転がりながら地面に着地したブーンは、体勢を立て直すと再びオメガに向かって走りだした。
〔(Ω)〕 まだ来るのか、くそッ!!
吐き捨てながら、オメガは右手の機関銃で向かってくるブーンに向かって発砲する。
ブーンはそれをジグザグに走ってかわすが、そのうちの何発かは彼の体を包むセキラの膜を破り、
彼の体を薄く切り裂く。
( ω )(足りないお……まだ、”速さ”が!!)
ブーンは下腹部に取り付けた携帯電話をスライドさせ、数字を入力すると発信ボタンを押しながらそれを取り外す。
ζ(゚ー゚;ζ―Form Change:「Fencer Gauntlet」―
携帯の先端から伸びる剣と、右手を包み込む籠手の出現を確認すると
彼は再びその柄になっている携帯電話に数字を入力し、発信ボタンを押した。
( ω ) アサルトッ!!
ζ(゚ー゚;ζ―Assault:「クリムゾンドライブ」―
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:14:48.05 ID:MUOJNQMO0
- ζ(゚ー゚;ζ ブーンさん!! 一体何を!!?
( ω ) 許せない、許せないんだお。僕は、人を傷つけたこいつが……そして……
右手を覆っていたセキラが、活性化しながらブーンの両足に移動する。
急激に増大する、ブーンのスピードと身体能力。
そのスピードについていけなくなったオメガは、右手の機関銃で彼を狙うことをあきらめ、
代わりに左腕の刃でブーンに斬りかかった。
(#;ω;) ……何より、ここでじっと待ってるしかなかった自分自身が許せないんだお!!!
活性化したセキラを纏う右足で、ブーンは斬りかかってきたオメガの胸に蹴りを放つ。
その蹴りは彼を包むセキラの衣を突き破り、オメガの体を後ろへと吹き飛ばした。
(#;ω;) ぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!
両手を広げ、ブーンは走り出す。
オメガが間合いに入るたびに、何度も何度も彼のボディを蹴った。
許せない。
守ることのできなかった自分が。
許せない。
誰かが傷ついているのを見過ごした自分が。
一撃一撃に自らの憤りを込め、ブーンは前進する。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:18:11.89 ID:MUOJNQMO0
- 〔(Ω)〕 くッ……なんだよ、なんなんだ、こいつ!
オメガは混乱していた。
人間と言うのはとても弱い生き物のはずだ。
武器を向けられれば恐怖におののき、自分の生存のためなら大事なものも平気で投げ出す。
少なくともそれが彼が認識していた『人間』という生き物だった。
(#;ω;) 許さないお!! 絶対に……絶対絶対許さないお!!!
今、目の前の少年の目からは”涙”がこぼれている。
人間と言うのは、悲しいとき、恐怖したときに泣くものであるはずだ。
―――なら目の前の『人間』はなぜ泣いている?
怖いのか? 悲しいのか? ……一体何が?
いや、そもそも”怖い”とか”悲しい”というのは何なのだろう?
(#;ω;) おおおおおおおお!!!
そんなことを考えているうちに、目の前の少年は大きく跳躍していた。
機体情報を管理するプログラムが、右手の甲に取り付けられていた機関銃の破損を告げる。
飛び上がる瞬間に活性化した”自分たち”の刃で斬り裂かれたのだろう。
ばちばちと音を響かせながら、活性化したセキラの切っ先がオメガの眼前に迫る。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:19:25.13 ID:MUOJNQMO0
- (#;ω;) なんで……なんでだお……!!
ブーンは空中で”静止”していた。
正しくはそう見えるだけで、実際は目の前のオメガに向かって”落下”している最中なのだが。
ばちばちと音を響かせながら発光するブーンの刃を、真っ赤に輝く右手で掴むオメガ。
放電音を響かせていたブーンの刃は、やがて活性化できる時間の限界を超え、沈静化する。
(#;ω;) 僕は……僕は……
沈静化した刃があっけなくオメガの右手に握り潰され、ブーンは下の地面に落下した。
腹に迫る、オメガの左腕。
その映像は、ブーンにはスロー再生でもしているような、やけにゆっくりしたものに感じられた。
(#;ω;) 僕は……誰も守れないのかお!!?
腹に受けた衝撃と友に、少年は意識を失う。
意識を失う前に彼が放った言葉に答えるものは、誰もいなかった。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:20:16.67 ID:MUOJNQMO0
- 川;゚ -゚) ブーンッ!!
実際はほんの数秒の出来事だったのだろう。
しかし事の成り行きを見守っていたクーには、その時間は何十分にも何時間にも感じられた。
セキラの篭った拳に殴られ、後方に吹き飛ばされる後輩の姿。
自分の位置からではとてもではないが助けることなどできない。
吹き飛んだ彼の行く先には重機がある。
もうだめか、そう思ったクーの目に”彼”の姿が映った。
( ・∀・) はい、ナイスキャーッチ、ボクっと
飛んでくる彼を重機にぶつかる寸前で受け止めたのは、自分で自分を褒め称えるモララーの姿だった。
( ・∀・) ったく、ちょっと休んでる間に随分遊んでくれたみたいじゃないか?
言いながらモララーは、気を失ったブーンの体をそっと傍らの重機にもたれかけさせる。
( ・∀・) さすがのボクも、ちょっとだけ堪忍袋の尾が切れそうだよ
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:22:06.24 ID:MUOJNQMO0
- 〔(Ω)〕 はん、切れたらなんだっていうんだ? お前に何ができる?
( −∀−) そうだね……
目を閉じ静かに呟いたモララーは、右手で自分の着ているジャケットを半分めくる。
現れるのは、二つの内ポケット。そしてそこに収まっているのは二つの携帯電話。
自らのジャケットの内ポケットを相手に見せつけながら、
モララーは左手に持つ、ロマという人格の宿った携帯電話に番号を入力し、右腕に押し付ける。
( ・∀・) とりあえず叩き潰そうか、キミを
モララーが右手に押し当てた携帯電話、その側面から出た赤い光が、
まるでブレスレットのように彼の右手首に巻きつき、右手首に携帯電話を固定する。
次に、そのブレスレットを形成する光から、さらに三本、赤い光の触手が伸び、
右手で広げている彼の内ポケットから見えている二つと、
右半身の隠れている内ポケットから一つ、携帯電話をとり出した。
赤い光の触手は、それぞれ携帯電話を持ったままうねり、
彼の左腕、右足、左足にそれぞれの携帯電話を押し付ける。
それぞれの場所に、セキラのベルトで携帯電話が固定され、そしてロマの声が響いた。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:23:46.04 ID:MUOJNQMO0
( ΦωΦ)―Form Change:「Amazing」―
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:24:52.19 ID:MUOJNQMO0
- モララーの体中を、赤い光のラインが走る。
赤い光の出所は、それぞれ両腕、両足に装着されたセキラデバイス。
腕を走り、首元で収束したそれは、まっすぐ彼の臀部をめざし、
そしてそれは足を通って下から走ってきた光とぶつかり、下腹部でベルトのような形を形成した。
〔(Ω)〕 ああ? なんだその姿……それでオレが倒せるってのかよ?
( ・∀・) さぁね? 確証はないよ、
それに、もともとボクにとって『できるかできないか』なんて大した問題じゃない
全身にセキラのラインで幾何学模様を描いた少年は、
ばちばちとセキラが爆ぜる音を響かせながら、ゆっくりと王に歩み寄って行く。
〔(Ω)〕 できるかできないかを考えない?
それってお前らの言葉で『無謀』っていうんじゃなかったか?
あざ笑うように言う目の前のTASIROに、モララーは言った。
( ・∀・) ボクにとって一番大切なのは、
『できるかできないか』より、『やりたいかやりたくないか』なんだよね
次の瞬間、一瞬で加速したモララーとオメガの両拳が激突する。
セキラ同士の反発によって生じる赤い光が、ばちばちと音を立てながら工場内を赤く染め上げた。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:25:35.23 ID:MUOJNQMO0
- 同じ頃、VIP市内のある路上では、一つの戦闘を終えた少年が歩いていた。
よほど疲弊しているのか、足を引きずるように歩く彼の姿は、どう見てもこれから戦いに行く戦士のそれではない。
しかし、彼は戦いに向かおうとしていた。
( A ) この……強ぇセキラの反応……昨日クーが言ってた『作戦』ってヤツか……
壁に手を掛けながら、少年はゆっくり、ゆっくりと目的の場所に近づいている。
よく見れば、彼の足元には赤い液体が滴っており、それは彼が歩くたびに点々と広がっていた。
( A ) 『失敗』したのか……それとも……ああ
どす、と音を立てて、少年は地面に片膝を付く。
ぜえ、ぜえと荒い息をする少年は、その頭に被る”大きな切り傷のある”野球帽のつばを少し上げると、にやりと笑って見せた。
(;'ーナ) ったく、ちょっとは手加減しろっつーんだ、ジョルジュのヤツ
苦しそうに笑う彼の顔の左半分には、なにか鋭い刃物で斬りつけられたような傷跡があった。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:26:20.05 ID:MUOJNQMO0
( ^ω^)彼らは携帯電話を武器に戦うようです
第十一話「強敵」
おわり
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/09(木) 00:27:13.72 ID:MUOJNQMO0
- ―次回予告―
川#゚ -゚) まったく、ようやくちょっと冷静になったぞ
(#'∀ナ) せーぜー足元掬われやがれ、バカな人間にさ
(# ∀ ) おりゃああああああああアアアアアア!!!
〔(Ω)〕 てめえらの敗北が、その『証明』だ
第十二話:「驚愕」
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