- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:02:22.35 ID:VxiUPxWD0
- ニューソク市内、とあるビルの裏手の袋小路で、今二人の少年が相対していた。
一人は、赤く輝く光の刃の飛び出す携帯電話を持ったブーン。
そして、もう一人は野球帽を被った中学生ぐらいの少年だ。
('A`) 俺はドクオってんだ。あんたは?
下腹部に黒いゲーム機を接着させるという奇妙な格好の少年は、突然自己紹介を始めた。
(;^ω^) お……内藤ホライゾンだお。ブーンでいいお
('A`) ブーンか、うん、覚えた。じゃあまずはブーンに俺について、大体のことを軽く説明しとこうか
(;^ω^) お……?
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:03:40.32 ID:VxiUPxWD0
('A`) まず、俺がこれをなんと呼んでいるのか
そういってドクオは、自らの下腹部にゲーム機を接着させている、その赤い光を指差す。
('A`) あんたがなんて呼んでるのかは知らないが、俺は『これ』を“セキラ”って呼んでる
(;^ω^) “せきら”……?
('A`) そう、赤くて電気っぽいだろ? でも“赤電”じゃなんか格好悪いから“赤雷”。ちぢめて“セキラ”だ
なんでそんなことをいきなり自分に説明しだしたのか、そもそも彼は何者なのか?
いろいろ聞きたいことはあったが、その一方でブーンは「なるほど」と納得する。
自分はあの赤い光を“彼女たち”と呼んでいた。でもよくよく考えれば長ったらしくて呼びづらい。呼びにくいのならこの少年のように短くて呼びやすい名前をつけてしまえばよかったのだ。
いい機会だし、自分もこれから“彼女たち”のことを“セキラ”と呼ぶことにしよう。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:04:44.74 ID:VxiUPxWD0
(;^ω^) おっお、それは分かったお
「でもなんでキミは僕にそんなことを教えてくれたんだお?」と聞くブーンにドクオはにやりと笑う。
('A`) さっきも言ったろ? 俺はこれからあんたに戦いを教えてやるんだ
「そのためには専門用語的なものも理解してもらわないとな」と、ドクオは続ける。
( ^ω^) おっお、なるほ……お?
ふと頭に浮かんだ疑問。「戦いを教える」と彼は言っていたが、一体どうやって……? そもそも彼はなぜ今、彼の言うところの“セキラ”を装備しているのだろう?
('A`) まずは、あんたの実力が知りたい
ふと、目の前にいたドクオの姿が消える
(;゚ω゚) お!?
('A`) まずは、小手しらべだ
振り向いた先には、こちらに放たれたドクオの拳が待っていた。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:07:22.19 ID:VxiUPxWD0
( ^ω^)彼らは携帯電話を武器に戦うようです
第四話「赤雷」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:08:12.21 ID:VxiUPxWD0
顔前に迫るドクオの拳。
ブーンは思わずそれを赤い光の剣で防御する。
(;^ω^)(しまった……!!)
この赤い光の剣はTASIROの鉄の体すらも切り裂いてしまうほどの斬れ味をもっているのだ。
人間の拳なんて、いとも簡単に斬れてしまうだろう。
そしてそれに気付いたときには、すでにドクオの拳はブーンの剣にあたっていた。
(;―ω―) ――ッ!!!!
予測される結果に、思わず目を瞑るブーン。
しかしその耳に届いたのは、刃物が肉を切り裂く音とドクオの悲鳴ではなく、TASIROに斬りつけたときと同じ、ばちばちという放電音だった。
(;^ω^) お……?
('A`) 安心しなよ、あんたの心配してるようなことにはならねえさ
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:09:34.62 ID:VxiUPxWD0
目を開けるとそこには、ドクオの拳とブーンの剣がぶつかり合っていた。
もちろん、ドクオの拳に傷はない。
しかし、どうして―――
ζ(゚ー゚*ζ ブーンさん
(;^ω^) お。デレ、どうしたお?
突然話しかけてくるデレ。
それを見たドクオは感心したように「へぇ」と呟く
('A`) さっきから思ってたけど、喋るんだな、その“セキラデバイス”。あ、これはセキラの宿ってるもののことな
「しかも可愛い女の子ボイス……うらやましい」と続けるドクオ。
その目が本当に羨ましそうで、ブーンはなんだか怖かった。
ζ(゚ー゚*ζ その人の体、“私たち”の膜で覆われています
( ^ω^) お、つまりこの前のTASIROと同じってことかお?
「そういうことですね」と返すデレにブーンは納得する。
普通の人の拳なら、セキラでできたこの剣であっさり切り裂かれてしまうだろうが、セキラの膜で覆われているというなら話は別だ。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:11:02.95 ID:VxiUPxWD0
違うものに宿っている“彼女たち”同士は反発しあう。
目の前の少年流にいうなら「違う“セキラデバイス”に宿っているセキラは反発しあう」というところだろうか?
この数日間でブーンが理解した、セキラの性質である。
('A`) のんびり話してる場合じゃないぜっと!
(;^ω^) お!!
右足からのハイキックがブーンの顎に襲い掛かる。
間一髪バックステップで避けたブーンは、考える。
自分は彼のどこを攻撃するべきなのだろうか?
('A`) 本当はもうちょっと手加減するつもりだったけ、ど!!
左拳でのフックがブーンの右頬をかすめた。
('A`) 可愛いおにゃのこボイスのデバイスなんでうらやましいか、ら!!
再び右足からのハイキック。
ブーンは左手でそれを防御。後方に吹っ飛ばされ、転がる。
('A`) ちょっとキツめで!!!
(;゚ω゚) ――ッ!!
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:14:30.90 ID:VxiUPxWD0
地面に転がるブーンに襲い掛かるのは、ドクオの“踵落とし”。
それを右側に転がりならよける。
さきほどまでブーンの顔があった場所に、穴があいた。
無論、地面はコンクリートで舗装されている。
(;^ω^) ちょwww「ちょっとキツめ」ってレベルじゃねーお!!
('A`) もんどーむよう!!!
今度は右と左、それぞれの拳から交互にパンチが飛んでくる。
それを避けならがら、ブーンは考える。
彼を相手に、自分はどう戦うべきか? と。
('A`) そらそらそらそらそらァ!!!!
相手は生身の人間だ、TASIROのように腕や足を斬り落とすなんてまねはできない。
そんなことをできる神経は持ち合わせていないし、したくない。
なら、どうするべきか? どうすればこの戦闘は終わる?
ドクオを連撃を避けながらそんなことを考えていたとき、ふと、ブーンの目にあるものが映りこんできた。
( ^ω^)(あれだお!!)
ブーンの目線の先には、ドクオのセキラが宿る、黒いゲーム機の姿。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:16:07.57 ID:VxiUPxWD0
- 止まることを知らないドクオの連撃。
かわし続けながら、ブーンは一瞬の隙をついて彼の右側に回りこんだ。
( ^ω^) おっ!!
そしてそのまま、ドクオの下腹部に装着されている黒いゲーム機に向けて突きを放つ。
('A`) おっと
ドクオはそれを拳ではじくと、バックステップで間合いを開いた。
('A`) うん、正解だ
( ^ω^) お……?
感心したように頷くドクオにブーンが首をかしげていると、ドクオは少し微笑みながら説明を始めた。
('A`) セキラを使う相手との戦いで最も有効なのは、相手のセキラデバイスを壊すことだ
('A`) そうすれば相手のセキラは失われて、戦えなくなるからな
「それに瞬時に気付いたあんたはやっぱりセンスがいいよ」とドクオは微笑んだ。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:21:15.80 ID:VxiUPxWD0
('A`) ただ、やっぱり戦い方にちょっとクセがあるな、あんた、その剣は我流かい?
( ^ω^) おっお、そうだお
「何せ喧嘩なんてさっぱりしたことがなかったから」と言うと、ドクオは「やっぱりな」と頷く。
('A`) 今はTASIRO相手だからそれでもいいけど、この先セキラを使う人間相手になると、それじゃちょっとキツいかもな
(;^ω^) お……?
('A`) あんたも知ってんだろ? セキラは最も強いデバイスを求めてるんだ
そう言われてなんとなくドクオの言いたいことを察したブーンに、ドクオが続ける
('A`) この先、人間同士で争いが起こらないとも限らないんだぜ?
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:22:39.84 ID:VxiUPxWD0
(;^ω^) お……
セキラを持った人間同士の争い。それは一体どんなものになるのだろう?
少なくとも、愉快なものでないことは確かだ。
でも、とブーンは考える。
では、何故目の前の少年は……
( ^ω^) ドクオくん……だったかお? ちょっと聞きたいことがあるお
('A`) ん、あぁ、ドクオでいいよ。あんたの方が年上だろ。で、何?
( ^ω^) じゃあドクオ、君はそこまで分かっていて、なんで僕に戦い方を教えてくれるんだお?
ドクオはセキラを持った人間同士が争うことになるかもしれないと分かっている。
ということは、彼自身、その争いに身を投じることを決めているのではないだろうか?
見たところ、自分の実力は彼より下だ。「戦い方を教える」と言われている以上それは間違いないだろう。
なら、何故彼は実力が下の自分に対して「戦いを教える」なんて面倒臭いことをしているのだろうか?
相手が自分より弱いなら、その相手からセキラを奪ってしまえばいい。
その方が手っ取り早いはずなのに
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:24:37.40 ID:VxiUPxWD0
('A`) なんでって……その戦いで死人が出たりしたらいやだろ?
(;^ω^) お……?
一瞬、彼の言っている意味がよく理解できなくて、ブーンは首をかしげる。
('A`) もしセキラを持った人々の戦いが始まるとするよな? そうしたら、弱い人間と強い人間がでてくる
('A`) 人と人とが戦えば、当然怪我をする人や、最悪死ぬこともある。これはTASIROとの戦いでも同じだ
「つまり」と言ってドクオは続ける。
('A`) 俺はあんたに戦いを教えながら、同時にあんたを試してもいるんだよ
('A`) 戦いを教えてみて、強くなりそうだったらほっとくし、弱ければ余計な怪我をする前にセキラを奪う
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:25:46.65 ID:VxiUPxWD0
( ^ω^) その人間が、後々君の脅威になるとしても……かお?
('A`) ああ
「ま、最終的に勝つのは俺だし」と笑う少年。
少々自信過剰という気もするが、どうやら悪い人間ではなさそうだ。
なるべく争いの被害に会う人が出ないように、人に戦いを教え、選別する。
つまりは人を守るために
('A`) そうだ、ブーン。あんたに聞いておきたいことがあった
( ^ω^) お?
('A`) そもそも、あんたは何で戦ってるんだ?
(;^ω^) お……?
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:28:07.80 ID:VxiUPxWD0
なぜ戦うのかと訊ねられて、ブーンはなぜそんなことを聞くのか疑問に思いながらも答える。
( ^ω^) 僕が戦わないと、傷つく人が出るかもしれないからだお
「なるほどな」と相槌を打ちながら、ドクオは静かに頷くと
('A`) でも、それはあんたじゃなくてもいいだろう?
(;^ω^) お?
('A`) 俺もいるし、俺が知る限りではあと何人か、似たようなことをしてるやつらもいる
('A`) それが分かった今、あんたが戦う理由はないんじゃないか?
(;^ω^) お……
確かにそうかもしれない。もともと喧嘩は大嫌いなのだ。
それにTASIROだけならともかく、これからは人間とも戦うかもしれないという。
もう自分はこの少年にセキラを渡して、戦いから退いてもいいのではないだろうか?
ζ(゚ー゚*ζ ブーンさん……
不安そうなデレの声。
彼女には悪いが、やはり自分はこの戦いから退くべきなのかもしれない。
でも、そう思うのに
( ^ω^)(なんなんだお……この胸のわだかまりは……)
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:32:41.17 ID:VxiUPxWD0
言葉につまるブーンに、ドクオは軽く溜息をついた。
('A`) 迷ってるみたいだな。まあいいさ
言いながら、ドクオは下腹部のゲーム機のキーを叩いて何かを入力し始める。
('A`) 少なくとも、この先の戦いは中途半端な覚悟じゃ勝ち残れない
最後にスタートボタンを押したドクオが、真っ直ぐにブーンの目を見た。
('A`) あんたに戦う気が無いなら、この場で俺にセキラを渡してくれ
「そして、もし戦う気があるなら……」とドクオは続ける
('A`) 力ずくで、守ってみせな!!!
「―Get Set……―」
ゲーム機から聞こえる無機質な合成音声。そして、ドクオは叫んだ
('A`) アサルトッ!!!!
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:33:30.02 ID:VxiUPxWD0
―Assault:「ライダーキック」―
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:34:51.40 ID:VxiUPxWD0
(;^ω^) お!?
ゲーム画面に表示される英文。それと同時に、ドクオがこちらに向かって走り始める。
('A`) うぉぉおおおおおおお!!!!
一歩、また一歩、踏み出すたびに彼の右足に赤い光がばちばちと放電音を響かせながら集まっていく
そしてそれが臨界点にまで達したとき、ドクオは地を蹴り宙を舞った。
(#'A`) おりゃああああああ!!!!
空中から放たれるのは、大量のセキラが込められた右足の飛び蹴り。
ばちばちという放電音と、赤い電光をなびかせながら、それは真っ直ぐブーンに向かって近づき、そして、激突した。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:39:17.84 ID:VxiUPxWD0
(;^ω^) ―――ッ!!!
とっさに剣でドクオの蹴りを受け止める。
ばちばちという放電音が耳に痛い。目の前が、セキラ同士が反発し発生する赤い光で一杯になる。
「受け止めきれるか?」そんな疑問が浮かぶほど、その蹴りの威力は凄まじかった。
そして、ドクオの蹴りのあまりの威力の前に、ついにブーンが持つ光の剣が折れる。
(; ω ) ―――!!!
受け止めていた剣の刃がなくなり、ドクオの蹴りがブーンの胸に直撃する。
地面に転がるブーン。
(; ω ) か……は……
肺にうまく空気がはいらない。
視界がぐるぐると回っている。
胸にじわじわと襲い来る激痛。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:42:18.99 ID:VxiUPxWD0
('A`) これが「アサルト」だ。セキラの動きをコントロールし、活性化させる
曖昧な視界のなかにぼんやりと映るドクオの姿。
「まぁその分、発動したあとしばらくセキラが沈静化するって弱点があるけどな」とドクオは続ける
('A`) さて、立ちなよブーン。それとも諦めてセキラを俺に渡すかい?
(; ω ) は……ぁ……
ようやく肺に入ってくる空気に、少し安堵感を覚えながらブーンは思う。
自分は喧嘩が嫌いだ、痛い思いをするのも嫌いだ。
なのに何故、自分はこんな痛い思いまでして戦いに身を置いているのだろう?
そうだ、わざわざ自分が戦うことはないではないか。目の前の少年のような強い人間もいる。
争いごとなんて、そんな人たちにまかせて、自分はただ普段の平和な日常に戻ってもいいではないか
でも、そう思うのに……
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:44:04.97 ID:VxiUPxWD0
(; ω ) ……
('A`) なんだよ、本当にもう終わりか?
黙ったまま立ちあがらないブーンを見て、「センスいいと思ってたんだけどな」と残念そうにドクオが呟く。
(; ω )(僕は……僕は……)
ドクオが近づいてくる。
一歩一歩、おそらくは自分の持つセキラを奪うために。
このままでいいのか? なぜかそんな言葉がずっと頭の中を埋め尽くしている。
そして、その言葉に対して頭の中に浮かぶ答えは一つだった。
( ^ω^)(いいわけないお!!)
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:46:24.90 ID:VxiUPxWD0
- ('A`) お
よろよろと立ち上がるブーンに、気付いたドクオが立ち止まる。
ブーンは彼を睨みつけると、言った。
( ^ω^) キミはさっき、僕になんで戦うのか聞いたお? 答えてやるお
まだ胸に痛みが残っているため、声はかすれていたが、それも気にせずブーンは続ける。
( ^ω^) 僕が戦う理由は、さっき言った通り「僕が戦わないと傷つく人が出るかもしれないから」だお
('A`) だから、それはあんたじゃなくても……
( ^ω^) だめだお!!
突然の大声に、ドクオがたじろぐ。
ブーンは携帯電話のボタンを押しながら、続ける。
( ^ω^) 僕は、TASIROたちが人を襲う理由を知ってるお。自分が何をすれば、それを未然に防げるのかも知ってるお
( ^ω^) それを知っていながら、危ないからってそれを他人まかせにするなんて、僕にはできないお
そう言ってブーンは携帯電話の発信ボタンを押した。
( ^ω^) 僕は……自分にできることをやるお!
ζ(゚ー゚*ζ―Form Change:「Fighter」―
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:48:16.03 ID:VxiUPxWD0
('A`) へぇ……なかなか筋が通ってるじゃん?
デレの声と友にブーンが自分の携帯を下腹部に押し付ける。
転瞬、赤い光のベルトが彼の腰を一周し、携帯電話を彼の下腹部に固定した。
それと同時にドクオに向かって駆け出すブーン。
('A`) 嫌いじゃないぜ!! そういうの!!!
(#^ω^) おおおおおおお!!!!!
ぶつかり合う、二人の拳。
赤い電気がびりびりと辺りに飛び散る。
( ^ω^)(戦い方が……わかる?)
ブーンの中では一つの不思議な変化が起こっていた。
ブーンには子どものころから今まで、喧嘩の経験など全くと言っていいほどに無い。
なのになぜかわかるのだ。
どこに拳を出せばいいか。どのように蹴りを放てばいいのか。
それらの速度や威力も、普段の自分とは比べ物にならない。
そういえば、ドクオは、先程踵落としでコンクリートの地面に穴を開けていた。
なるほど、これがこの形態でのセキラの能力か
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:51:21.36 ID:VxiUPxWD0
ζ(゚ー゚*ζ 古今東西の格闘技のデータを、ネット上から集めてブーンさんの脳内に送っていますからね。そんじょそこらの人間では相手にならないと思いますよ
( ^ω^) それは心強い、お!!
まずは右足からのハイキック。しかしそれはドクオの左手によって阻まれ、かわりに飛んできた右の拳が、ブーンの腹をとらえる。
(; ω ) ぐッ……!!
('A`) そらよ!!
続いて襲い掛かってくるのは、ドクオの左足からの回し蹴り。
吹き飛ばされたブーンが地面に転がる。
(; ω ) か…は……
('A`) あんたがなんでそのフォームを選んだのかは知らねえけどさあ、俺はTASIROと戦い始めてから、ずっとこのフォームで戦ってきたんだぜ?
こちらに近づいてくるドクオに立ち上がりざまにアッパーを食らわせようとする。
しかしその手は簡単に受け止められ、そのまま手をつかまれたブーンは再び地面に
転がされた。
('A`) 経験の差ってもんがあらァな。そこらへん考慮にいれなかったのがあんたのミスだ。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:52:36.57 ID:VxiUPxWD0
地面に転がりながら、ドクオの言葉を聞いてブーンは考える。
自分がドクオに勝つ方法。
剣では“技術”がたりないし、この形態では“経験”が足りない。
そのどちらも補う方法があるとすれば……
('A`) ん?
立ち上がりながら自分の下腹部から携帯電話を取り外したブーンを見て、ドクオが不思議そうな表情を浮かべる。
('A`) どうした、まさかギブアップか?
( ^ω^) まさか……むしろその逆だお
自分の思いついた武器のことを考えながら、ブーンは再び携帯電話に番号を入力した。
( ^ω^) いくお……デレ!!
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:53:28.75 ID:VxiUPxWD0
ζ(゚ー゚*ζ―Form Change:「Fencer Gauntlet」―
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:56:20.21 ID:VxiUPxWD0
('A`) なんだ、また剣か……?
デレの声と友にブーンの携帯から出現したのは、赤い光の刃。
( ^ω^) そうだお、でもただの剣じゃないお
('A`) ?
よく分からないという顔をしているドクオに向かって、ブーンが駆け出す
(#^ω^) 普通の剣とどう違うのか、戦ってみればすぐにわかるお!!!
('A`) おもしれえ!! どう違うのか見せてもらおうか!!
ブーンが放った縦一閃の斬りを、ドクオは両手をクロスさせて防御する。
(#^ω^) おおおおおおお!!!!!
('A`) お……!?
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 21:57:36.35 ID:VxiUPxWD0
続いて繰り出される、連続した剣撃。
それを両腕でうまくいなしながら、ドクオはその顔に戸惑いの表情を浮かべる。
('A`)(なんだ、こいつ……さっきまでと全然動きが違うぞ!?)
手首のひねり、腕の動かし方ひとつみてもさっきまでの素人丸出しの動きとはまるで違う。
剣撃の威力もさっきまでとは比べ物にならない。
なんだ、一体こいつの何が変わったというんだ!?
('A`)(まさか……!!)
ふと、ブーンの剣を持つ右手に目をやる。
('A`)(なるほど……そういうことか!!)
想像通りのその光景に、ドクオは思わずニヤリとした。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 22:02:23.96 ID:VxiUPxWD0
(;^ω^)(笑ってる!?)
不意にドクオの顔に浮かんだ笑みを見て、ブーンの顔から冷や汗が流れる。
正直なところ、これは自分の最後の手なのだ。
まさかこれすら打ち破る手段が、彼にはあるというのか?
( ^ω^)(だとしても……ッ!!)
それでもこれが今の自分にできる精一杯の手である以上、やり通すしかない。
(#^ω^) おおおおおおお!!!!!
ブーンの手にある剣。
いや、正確にはそれは“剣だけ”ではない。
携帯電話から伸びるのは光の刃と、それとまったく逆方向、ブーンの右腕に伸びる赤い光。
それはセキラでできた、赤い光の籠手だった。
セキラを籠手にまわしているため、先程よりは刃部分の攻撃・防御力が劣るものの、右腕を蛇のように這うセキラが脳に戦い方の情報を送り、それと同時に右腕の強化も行っているため、技術力、身体能力が友に上昇している。
また、右手をセキラの籠手で覆ったことにより、相手のセキラによる攻撃に対する防御範囲も広い。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 22:03:49.17 ID:VxiUPxWD0
相手に対して自分が劣る技術力を補い、少しでも勝機を見出すため、必死に考えたこの手段。
これが破られれば、自分にはもう手はない。
だからこそ、負けるわけにはいかなかった。
(#^ω^) おおおおおお!!!!
('A`#) はああああああ!!!!
何度も何度もぶつかり合う、お互いの拳と剣。
攻撃がくれば払いのけ、反撃に移り
防御されれば、即座に次の攻撃に移る。
しばらくそういった打ち合いが続けられ、そしてその一瞬が訪れた。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 22:09:22.16 ID:VxiUPxWD0
('A`;) ち……ッ!!
地面の小石に足でもとられたのだろう。
ふいにフラつく、ドクオの足。その一瞬をブーンは見逃さなかった。
(#^ω^) これで……終わりだおおおおおおお!!!!
渾身の力で放たれるブーンの突き。狙う先は、ドクオの下腹部に装着された黒いゲーム機。
これが最後のチャンスだ。絶対にはずさない……!!
('∀`) ま……合格だな
(;^ω^) ……!?
ふいに呟きながらこちらに笑顔を向けるドクオ。
なんだ!? 絶体絶命のこの状況でなぜこの少年は笑っている!?
(;^ω^) お……
自分が突き刺そうとしている黒いゲーム機
「―Get Set……―」
そこに表示されていた文字を見て、ブーンは全てを理解した。
('A`) アサルトッ!!
―――決定的な自分の敗北を。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 22:10:17.78 ID:VxiUPxWD0
―Assault:「インパクトフィールド」―
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 22:11:41.54 ID:VxiUPxWD0
( ω )
目の前が赤い光で一杯になる。
最後の一瞬。ドクオが自分が立つ地面に思い切り足を踏み込んだのが見え、そして気付けばブーンはコンクリートの地面に仰向けになって倒れていた。
('A`) いやー、一瞬ヒヤッとさせられる場面が何度かあったぜ
( ω ) ……
ぼーっと暗く染まった空を眺めていると、足元のほうからドクオの声が聞こえる。
('A`) とにかくあんた、合格だよ。セキラを奪うことはしない
なにか紙を破く音がして、自分の顔の上に一枚の紙がひらひらと落ちてきた。
「それ、連絡先な。なんかあったら呼んでくれや」とドクオの声。
('A`) さっきのアサルト、連続で出したからそんなに威力は高くなかっただろ?
( ω ) お……
('A`) でも、痛いんだよな?
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 22:13:57.82 ID:VxiUPxWD0
携帯電話を握る右手に、思わず力がこもる。
('A`) その痛みを忘れないことだ
「次はもっといい戦いをしようぜ」それだけ聞こえて、足音が遠ざかっていった。
ζ(゚ー゚*ζ ブーンさん……?
デレの声がする携帯電話。それを耳に近づける。
( ω )】 デレ……僕、負けたお……
むりやりひねり出した声は、どこか掠れていて、格好悪かったけど、でも喋らずには居られなかった。
そんな自分の声に対し、デレは慰めるでもなく
ζ(゚ー゚*ζ そうですね、あなたは敗北しました
ただ、真実を述べた。
( ω )】 ……ははは、デレはきっついお
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 22:14:58.52 ID:VxiUPxWD0
ふと、自分の目から流れる暖かい液体に気付き、ブーンはそれをぬぐう。
( ω )】 負けるって、こんなにくやしいことだったのかお……
ζ(゚ー゚*ζ ……
呟いて、思わず漏れそうになる嗚咽を、奥歯でかみ殺す。
少しだけ深く息を吸って、呼吸を整えた。
( ω )】 デレ
ζ(゚ー゚*ζ はい
( ω )】 次は、負けないお……!!
ζ(゚ー゚*ζ ……はい!
とっくに暗くなった空が、涙で滲む。
これは家に帰ったら、母親にどうしてこんなにおそくなったのか問い詰められるだろうな。
そんなことを思いながら、ブーンは苦笑した。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 22:16:05.66 ID:VxiUPxWD0
( ^ω^)彼らは携帯電話を武器に戦うようです
第四話「赤雷」
おわり
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/17(土) 22:17:10.32 ID:VxiUPxWD0
- ―次回予告―
ξ///)ξ あ、は? え? ええええ?
ζ(゚、゚*ζ いつまでうだうだと言ってるつもりですか!!
(#^ω^) アサルトッ!!
「やあ、危なかったねブーン」
第五話:「逢引」
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