- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 00:37:23.91 ID:kvhUwik0O
- プロローグ
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 00:39:04.99 ID:kvhUwik0O
- ぼんやり薄暗い部屋。
その中で唯一の光源のテレビが部屋の一角を照らしていた。
最近もっぱら話題の事件。
『vip市女児連続殺害事件』
どのチャンネルのニュースもこの事件を取り上げている。
「今日の夕方ごろ、vip市内の女子小学生が殺害されているのが発見されました。遺体は損傷が激しく、身元の確認とともに犯人の特定を……」
話し続けるニュースキャスターを咎めるように、男の声が部屋に響く。
「まただ…また、やってしまった……」
「でも……楽しかったなぁ……」
「次……そうだ、次で最後にしよう……次で……」
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 00:41:35.55 ID:kvhUwik0O
- 第1話「繰り返される最後」
静かな教室に授業の終わりを告げる鐘の音が鳴り響いた。
l从・∀・ノ!リ人「きゅうっしょっく、なっのじゃー♪」
それとほぼ同時に、エプロンに着替えた1人の少女が勢いよく教室を飛び出していく。ここはvip小学校。
今から給食が始まるところだった。
(;*゚ー゚)「い、妹者ちゃん、ちょっと待ってよ〜」
l从・∀・ノ!リ人「しぃ、遅いのじゃー!」
(;*゚ー゚)「妹者ちゃんが早すぎるんだよー!」
妹者は、恐るべきスピードでクラス全員分のカレーを食器に注ぎ、配膳し終える。
l从・∀・ノ!リ人「先生! 早く早くなのじゃ!」
(;´∀`)「い、いただきますモナー」
「いただきまーす!」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 00:51:08.10 ID:kvhUwik0O
- (*゚ー゚)「そういえば、例の事件があったのって隣り町らしいよ」
クラスメイトのしぃは牛乳パックにストローを挿しながら言った。
妹者は小皿を食べ終えカレーをご飯にかけている。
l从・∀・ノ!リ人「例の事件って何なのじゃ?」
( ´∀`)「女児連続殺害事件だモナ。まったく酷い事件だモナ……警察も早く犯人を捕まえて欲しいモナ」
担任のモナーは無表情に言った。
しぃは、それに頷いた。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 00:54:04.30 ID:kvhUwik0O
- (*゚ー゚)「妹者ちゃん知らなかったの?」
l从・∀・ノ!リ人「妹者はアニメしか見てないのじゃー」
(;゚ー゚)「そっか……」
( ´∀`)「ちゃんとニュースも見ないとダメモナー」
表情を緩ませながらモナーは言った。
妹者は上の空で、手付かずだった牛乳を一気に飲み干し、手を合わせた。
l从・∀・ノ!リ人「ご馳走さまなのじゃー!」
(;´∀`)「はやっ!?」(゚ー゚;)
l从*・∀・ノ!リ人「……げふっ」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 01:04:41.42 ID:kvhUwik0O
- そして、この日は下校の時間になった。
妹者は靴を履き替え、2階の教室の窓辺にモナーを見つけて大きな声で言った。
l从・∀・ノ!リ人「先生、さよならなのじゃー」
ぶんぶんと千切れんばかりに手を振る妹者と対称的に、恥ずかしそうに手を振るしぃ。
( ´∀`)「はい、さよならモナー、気をつけて帰るモナよー!」
モナーは駆け足で下校していく2人に笑顔で挨拶を返した。
途中でつまずく妹者だったが、その勢いのまま更に加速していく。
しぃは慌ててそれを追った。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 01:06:10.37 ID:kvhUwik0O
- ( ´∀`)「……本当に気をつけるモナよ」
何の変哲もない平和な日常。
それが壊れていくのは突然で……
しかし、必然だった。
('A`)「………」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 01:07:47.12 ID:kvhUwik0O
- 帰り道、しぃは珍しく妹者を寄り道に誘った。
(*゚ー゚)「妹者ちゃん、公園行かない……?」
l从・∀・ノ!リ人「?」
(*゚ー゚)「ちょっと、相談があるんだ」
l从・∀・ノ!リ人「構わないのじゃ」
近くにある公園に着いた2人はブランコに座った。
(*゚ー゚)「実は、うちのお母さん……再婚するらしいんだ」
l从・∀・ノ!リ人「再婚なのじゃ?」
(*゚ー゚)「うん……相手は警察の人でね……この間、お母さんとその人と一緒にご飯食べたんだ」
l从・∀・ノ!「しぃは……その人の事、好きじゃないのじゃ?」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 01:10:44.50 ID:kvhUwik0O
- (*゚ー゚)「うぅん……そうじゃないの……すごくいい人そうだった……でも、前のお父さんみたいに……」
しぃは誰にも父親の話しをしたことはない。
しぃにとっては、二度と思い出したくない過去だったからだ。
事情は知らないが、何かを察した妹者はしぃを元気づけようといつもの調子で言った。
l从・∀・ノ!リ人「大丈夫なのじゃ! その人も、しぃの事が好きになるのじゃ! きっと仲良しになるのじゃ!」
(*゚ー゚)「妹者ちゃん……そうだね、ありがとう!」
l从・∀・ノ!リ人「どういたしましてなのじゃ! そろそろ暗くなってきたから帰るのじゃ! また明日なのじゃー!」
(*゚ー゚)「うん、バイバイ!」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 01:14:26.70 ID:kvhUwik0O
- ーーーー
妹者ちゃんは、ブランコから飛び降りると走って帰っていった。
妹者ちゃんの家も色々大変なはずなのに、妹者ちゃんはいつも元気ですごいな、と思う。
(*゚ー゚)「ふーっ……」
妹者ちゃんに話したら少し気が楽になった気がする。
(*゚ー゚)「仲良く……できるよね」
辺りは暗く人気がない。
例の事件が隣り町であったことを思い出した。
まあ、私の家はすぐ近くだし大丈夫だろう。
だけど、妹者ちゃんの家はここから少し離れている。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 01:18:38.73 ID:kvhUwik0O
- 妹者ちゃんは、身長は小さいけど、長い髪に大きなリボンがとても似合っている。
女の私から見ても可愛いと思うから、ちょっと心配になってくる。
こんな時間まで付き合わせて悪かったな。
今日は見たいアニメがあるって言ってたし……。
そうだ。明日、お詫びに妹者ちゃんの好きな飴玉を持って行こう。
それで、先生に見つからないように2人で隠れて食べよう。
飴を食べて、「美味しいのじゃ!」と、微笑む妹者ちゃんの顔が浮かんだ。
想像した笑顔につられて思わず私も微笑む。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 01:24:15.38 ID:kvhUwik0O
- そろそろ本格的に暗くなってきた。
妹者ちゃんのおかげで元気も出たし、そろそろ帰ろう。
今日の晩ご飯は何かな。
そんな事を考えながら、私はブランコを降りて家への道を歩きだした。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 01:27:33.55 ID:kvhUwik0O
- ーーーー
急げ急げ急げ急げ!!
しぃが元気になったのは良かったが、このままでは間に合わないかもしれない。
家までの道を猛スピードで走りながら頭の中で計算する。
後15分くらいで毎週欠かさず見ていたアニメの最終回が始まる。
ここから家までは歩いて大体25分というところだ。
間に合うだろうか?
いや、間に合わせてみせる。
日頃クラスのみんなや先生から「台風みたいだ」と言われている私なら間に合うはずだ。
台風は風。
風は速い。
うん、絶対間に合うはずだ。
最終回を見逃すわけにはいかない。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 01:32:03.79 ID:kvhUwik0O
- そんなことを考えながら走っていると、前方で男がキョロキョロと辺りを見回している。
それに気付き、走るスピードを緩めながら観察していると、その男と目があった。
こちらに気付いた男はニヤリと笑う。
背筋が凍る笑みだった。
足が止まる。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 01:36:37.64 ID:kvhUwik0O
- 給食のときのしぃの言葉を思い出した。
殺人事件が隣り町であった、と。
更に、先生の言葉も思い出した。
犯人はまだ捕まっていない、と。
一種の思考停止状態に陥った私に、男は満面の笑みで近付いてくる。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 01:39:24.21 ID:kvhUwik0O
- 先程までなら、風よりも速く走れると思っていた私の足は、地球の重力が5倍になったかのように動かない。
(-_-)「ちょうど良かった…」
男はどんどん近付いてくる。
(-_-)「お嬢ちゃん……」
男が懐に手を入れた。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/03(月) 01:57:32.16 ID:kvhUwik0O
- 今にも腰が抜けそうだった。
一瞬が永遠にも感じられた。
我慢できずに目をぎゅっと瞑る。
想像していた衝撃は……来ない。
恐る恐る、目を開けると見えたのはメモ用紙に書かれた地図。
l从;・∀・ノ!リ人「……ふぇ?」
(*-_-)「ここに行きたいんだけど……分かるかな?」
男はメモ帳を持った手をこちらに突き出している。
どっと汗が噴き出した瞬間、
「いやあぁぁぁあぁぁぁ!!!」
悲鳴が聞こえた。
第1話終わり
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