- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 14:59:56.06 ID:AwizuSAiO
- 『幸せは唐突にやってくる』
誰の言葉だったろうか。
そして俺は幸せを手に入れることができた。
だが俺は知っていた。
幸せとは唐突に逃げていくことも……。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 15:03:33.99 ID:AwizuSAiO
〜('A`)は拾い子のようです〜
第四話『明るい日常、そして綻び』
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 15:05:33.84 ID:AwizuSAiO
- ('A`)「ただいまー」
( ゚∀゚)「おードクオ、お帰りー」
ジョルジュさんはいつも俺を笑顔で迎えてくれる。
あれから二週間、茂羅組のことなんて忘れてしまうほど、俺はこの生活に馴染んでいた。
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 15:08:52.41 ID:AwizuSAiO
- 大学生のジョルジュさんは、9月いっぱいは夏休みらしく、昼間は家を空け、俺が学校から帰ると必ず家にいる。
俺が帰宅した後、ジョルジュさんと保育園にミセリちゃんを迎えに行き、それから一緒に夕飯を食べる。
夕飯を食べた後は、三人で風呂に入り、俺はミセリちゃんと遊んだり宿題をこなしたりする。
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 15:12:26.94 ID:AwizuSAiO
- 学校どうやって手続きしたのか、ここにきて二日で近くの私立小学校に通わせてもらっている。
『公立は手続きが面倒だからな。私立だったら理事長の許可さえ降りればなんとかなる』と、ジョルジュさんは言っていた。
どういう方法で理事長の許可をとったのか、教師達は俺を一目置いている。
まぁ深くは考えないようにしよう。
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 15:15:52.22 ID:AwizuSAiO
- 今まではろくに勉強しないボンクラだったが、ここまで手を焼いてもらってるので、成績が悪いのは申し訳ない。
なので、ジョルジュさんの言う通り、宿題だけは一生懸命こなすようにしている。
ちなみに、化粧品関係の会社に勤めているハインさんは帰りが遅く、いつも9時くらいに帰宅している。
ジョルジュさん曰く『安月給だが頑張っている』らしく、ハインが帰ってきたきた際には必ず『お疲れ様』と言うようにしている。
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 15:19:58.65 ID:AwizuSAiO
- ('A`)「そういやハインさん、ハインさんってジョルジュさんより年上なんすよね」
从 ゚∀从 「あぁ、アイツより5つ上だ」
('A`)「マジすか? 全然そうは見えないっすね……」
从 ^∀从「ははっ、褒めてもなにもでねーぞ?」
言っておくが、この言葉は本心である。
ジョルジュさんが21なので、ハインさんは26ということになるが、それよりずっと若く見える。ていうかスタイルやばい。
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 15:25:39.74 ID:AwizuSAiO
- ハインさんは、どこか男勝りな性格で、サバサバとしている。
人が気にしてることを容赦なくついてくるが、面倒見もよく、流石一児の母なのだと実感させられる。
ジョルジュさんもまた、俺を甘やかすことはなく、だが優しく接してくれる。
……まるで本当の家族のように。
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 15:31:32.76 ID:AwizuSAiO
- ('A`) (なに考えてんだ俺……)
あくまで俺は茂羅組の組員になっただけ。
だからジョルジュさん達は俺を一人前にしようとしてくれている……、ただそれだけのことだ。
甘い考えを持ってはいけない。
今までも何度か里親に引き取られたが、結局捨てられた。
甘えてはいけないのだ……。
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 15:36:04.11 ID:AwizuSAiO
- ミセ*゚―゚)リ
自分を見失いそうになると、必ずミセリちゃんを見るようにしている。
ミセリちゃんは、正真正銘二人の娘。
ミセリちゃんは可愛らしいし、本当に愛されている。
言うなれば、ミセリちゃんは"本物"で、俺は"偽物"なのだ。
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 15:41:37.90 ID:AwizuSAiO
- ミセリちゃんを見ると、それを再確認することができる。
そのおかげで気持ちに踏ん切りをつけることができるのだ。
だが、そう思えば思うほど、ミセリちゃんに嫉妬してしまう。
……我ながらおかしな考えだ。
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 15:45:52.47 ID:AwizuSAiO
- そう一思いに耽っていると、二人の声で現実に引き戻された。
( ゚∀゚)「もうすぐミセリの誕生日だな。なにか欲しいものあるか?」
ミセ*゚―゚)リ「うん! ちょこれーと!」
( ゚∀゚)「それは駄目だ」
ミセ*゚―゚)リ「うーん……、じゃああいしゅ!」
( ゚∀゚)「お菓子は駄目だぞー」
, _,
ミセ*゚ぺ)リ「むー、ぱぱのけちー」
なんと微笑ましい光景だろうか。
そんな親子二人を、ちょっと遠目に見ていた。
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 15:52:09.07 ID:AwizuSAiO
- ( ゚∀゚)「なー、ドクオはなにがいいと思う?」
('A`)「へ?」
ボーッとしていたため、不意をつかれた。
( ゚∀゚)「ミセリの誕生日プレゼント、なにがいいかな」
('A`)「あー、絵本とかでいいんじゃないすか?」
(;゚∀゚)「ば、それ禁句!」
('A`)「え?」
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 15:56:14.36 ID:AwizuSAiO
- なにかいけないことを言っただろうか。
そう思っていると、ミセリちゃんはトテトテと走り出し、両手一杯に絵本を持ってきた。
ミセ*^―^)リ「ぱぱ、えほんよんで!」
(;-∀-)「うっわー……。ミセリ、ドクオ兄ちゃんが読んでくれるみたいだぞ」
ミセ*゚∀゚)リ「ほんとぉ!?」
(;'A`)「ちょ、俺すか!?」
(;゚∀゚)「自分で撒いた種だ。……がんばれ」
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 16:02:31.10 ID:AwizuSAiO
- それだけを言い残すと、ジョルジュさんはそそくさと自分の寝室へと逃げていった。
ミセ*^―^)リ「ドクオおにいちゃん、はい!」
ミセリちゃんはそう言うと、たくさんの絵本を手渡した。
……この純粋無垢な笑顔を壊したくない。
なので、
('∀`)「おう、ドクオ兄ちゃんに任せとけ!」
こんなかんじに了承したのだった。
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 16:08:12.46 ID:AwizuSAiO
- 甘かった……。
ただひたすら甘かった……。
絵本を読むくらいたいしたことない、その考えがいけなかったのだ。
( A )「…………」
(;゚∀゚)「……ご愁傷様」
( A )「モウダメボ」
- 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 16:15:12.73 ID:AwizuSAiO
- あれから一時間、ストーリーがほぼ皆無な絵本を、延々と読まされるはめになったのだ。
特に、熊のような動物が何度も何度も『いない、いない、ばぁ』をしている絵本など、窓から放り投げてやろうかと思ったほどだ。
('A`;)「絵本読むのって大変なんすね……」
(;゚∀゚)「俺も最初は甘く見ていたよ……」
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 16:18:04.18 ID:AwizuSAiO
- (;-∀-)「ミセリは生粋の絵本大好きっ娘なんだよなぁ……。読んだことあるのを何度も読まされるなんてのは軽い拷問だ……」
('A`;)「……絵本、やめましょうか」
(;゚∀゚)「俺も同意見だ」
しかし、それならなにをプレゼントしよう。
二人はまた悩み始めた。
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 16:23:13.12 ID:AwizuSAiO
- その時俺に電流走る……!
('A`)「お姫様セットってどうすか?」
( ゚∀゚)「なんだそりゃ。初めて聞くが」
('A`)「お着替えセットみたいなもんす。王冠とか、靴とか付いてるヤツ」
そう、二週間前、ジョルジュさんと買い物をした時見つけたのだ。
俺は男だから基本的にそういうのには興味はないが、頭の隅に残っていたようだ。
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 16:28:54.43 ID:AwizuSAiO
- ( ゚∀゚)「……ドクオGJ」
('A`*)「でしょ? 絶対ミセリちゃんに似合うと思いますよ」
( ゚∀゚)「想像しただけで鼻血が出そうだな……。ドクオナイス、マジナイス」
('A`*)「じゃあそれで決まりっすね。楽しみっすよ、フヒヒ」
(#゚∀゚)「ちょ、てめぇ! 言っとくけどミセリに手ぇ出したら簀巻きにすっからな!」
('A`#)「ば、んなわけないでしょ! ていうかアンタ俺みたいなガキになにムキになってんの!?」
(#゚∀゚)「あぁ!? やんのか!?」
('A`#)「ハッ、上等っすよ!」
从#゚∀从「てめぇらうっせーんだよ! ミセリが寝れねーじゃねーか!」
(;゚∀゚)「正直スマンカッタ」
('A`;)「申シ訳アリマセンデシタ」
- 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 16:34:34.86 ID:AwizuSAiO
- そんなこんなで、ミセリちゃんの誕生日まであと二日に迫っていた。
友達達と遊んでいたのでいつの間にか6時になっている。
(;'A`)「ヤバッ、急がないと……」
近道をしようと、普段はあまり通らない公園を抜けることにした。
すると、突然誰かに腕を掴まれた。
(;'A`)「あだっ!」
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 16:38:45.49 ID:AwizuSAiO
- 見上げると、とても自慢できるような仕事をしてそうな男三人が立っていた。
その中でも、リーダー格のような男が、俺の腕を掴みながらドスの利いた光景で言ってきた。
ミ,,゚д゚彡「お前、最近長岡の家を出入りしているガキだな?」
('A`;)「は……?」
長岡とは、ジョルジュさんのことだろう。
男は、有無を言わせず話しを続けた。
ミ,,゚д゚彡「いいか、明日だ。明日、この時間に長岡んとこのガキを連れて来い」
つまり、ミセリちゃんを?
ミ,,゚д゚彡「もし連れて来なかったりしてみろ。一家まとめて、……あの世行きだ」
('A`;)「は? ちょ……」
それだけ言うと、その三人組どこかへ消えてしまった。
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/23(水) 16:42:20.70 ID:AwizuSAiO
- ('A`)「幻、か……?」
意味がわからない。
というより頭が追い付かない。
もしかしたら幻かもしれない。
そう考えもした。
だが、そうじゃないことを、腕に残された赤い痣が物語っていた……。
第四話・終
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