- 37 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:53:40.33 ID:PQRUUQYfO
- (; ω )「……っ」
変化は突然だった。
まず僕の目の前から彼女が消え、瞬く間にいつもの住宅街が音もなく粒子として霧散し、やがては僕の体の感覚も無くなった。
『ようこそブーン』
「! ――!」
不意に聞こえた声。
それに答えようとしたが全く声が出ない。
『私達はあなたを歓迎します』
『この先の世界はゲームではありませんので、命を粗末にされないように』
『それでは』
そして僕の意識も闇へと消えた。
第二話――異界の地――
- 38 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:54:37.96 ID:PQRUUQYfO
- 目を開ければそこは日の光も差さぬ薄暗い森の中だった。
下敷きになってる雑草も、立ち上がれば膝ほどまで生い茂り、上からは聞き慣れぬ鳥の歌が響いている。
「あ! やっときましたねー」
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンさん……ですよね?」
(;^ω^)「お? ……おわっ!」
声の主を見て驚いた。
そこには顔から背丈から、ツンそっくりの女の子がいた。
ただ一つを除いて。
ζ(^ー^*ζ「あなたのパートナーとなったフェアリーのデレです。
よろしくお願いしますね」
そう笑顔で挨拶する彼女には、立派な羽がついていた。
- 39 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:55:18.71 ID:PQRUUQYfO
- (;^ω^)「え? フェアリー?
……あ、いや、こちらこsじゃなくて、ここどこですかお? それにブーンって?」
ζ(^ー^*ζ「そんな矢継ぎ早にされても困りますよw」
(;^ω^)「あ、申し訳ないですお」
ζ(゚ー゚*ζ「取りあえずフェアリーとは見ての通り私みたいな羽の生えた種族ですね」
( ^ω^)「お、なるほど」
ζ(゚ー゚*ζ「それで、私のパートナーがブーンさんという名前なんです」
- 40 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:56:35.10 ID:PQRUUQYfO
- ζ(^ー^*ζ「あ。その腕輪……あなたはやはりブーンさんですね」
( ^ω^)「え?」
いつ着けたのだろう、見れば確かに僕の左手にそれはある。
細めの輪に、蔦が絡まったようなデザインが施され、デザインの中央には五百円玉ほどの大きさの四つ葉の形をした窪みがあった。
それは言われるまで気付かないほど軽く、僕のために作られたみたいに腕にしっくりとしていた。
ζ(゚ー゚*ζ「それはパートナーの証ですよ。
証は基本的に自身とパートナーの物しか見えないんです」
そう言う彼女の右手首にも全く同じものを身につけていた。
- 42 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:59:21.32 ID:PQRUUQYfO
- ( ^ω^)「へぇー……」
まだ疑問は多かったが、結構な時間が経ったからか、最初に比べ多少落ち着いてきた。
ζ(゚ー゚*ζ「それで、ここは何処かと言う質問ですが、ここは果ての森といいます」
果ての森とはまた奇妙な名だ。
というか聞いた事ない。
( ^ω^)「果ての森? ……何処の国ですかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「ここはヴィップ国の領内ですよ」
(;^ω^)「……何大陸の何処辺りの国ですかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「どこ辺りと言われても、ヴィップは名目上は島国ですよ」
- 43 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 22:00:51.14 ID:PQRUUQYfO
- んな島国なんて知らない。
……まさかと思った。
(;^ω^)「地球って知ってます?」
ζ(゚ー゚*ζ「チキュウ? なんですそれ?」
ああ、夢か。
はは、きっとまだ保健室で寝てるんだな?
全く、無駄にリアル過ぎる夢だ。
見るもの全てが生々しくて困る。
(#)^ω^)「やっぱ痛い……」
ζ(゚ー゚;ζ「ど、どうしました?」
(#)^ω^)「いや……自分に喝をいれただけですお」
ζ(゚ー゚;ζ「は、はぁ……」
- 44 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 22:01:31.62 ID:PQRUUQYfO
- 苦笑する彼女を余所に、僕は今の状況を少しづつだが理解していた。
まず頬の痛みが、これは現実だと証明している。
そりゃ風を肌に感じたり、制服越しに触る草花の感覚はあったけどさ……。
夢で登録したんだから別に夢のままでよかったのに。
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンさん。
取りあえず、ここを出ませんか?」
( ^ω^)「把握ですお」
考えることはまだあったが、彼女の言う通りここを出るのが賢明だろう。
僕は彼女について行くことにした。
- 45 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 22:03:02.85 ID:PQRUUQYfO
- 一時間は過ぎただろうか。
本来ならもっと早く行けるであろう道も、色々あったために随分と遅れてしまった。
ζ(^ー^*ζ「あ、銀貨はっけーん! ラッキー」
(;^ω^)「ちょwwwwなんでこんな森の中に銀貨が積みあがる程あるんすかww」
ζ(゚ー゚*ζ「あっ! 見てください。あそこに太ったヘビいますよ」
( ^ω^)「wwんなアホn」
( ゚ω゚)「ツチノコ……だと……」
- 46 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 22:04:00.52 ID:PQRUUQYfO
- ようやく森を抜け少し瞬いたが、それ以上の光景に僕は呆然とした。
眼前に広がるは地平線まで続く広大な草原。
向かって右側の遠くに、幅の広い河が流ている。
そしてその側に河を跨ぐようにある巨大な建造物が見えた。
間違い無く地球にはない光景。
そして、ここには地球にはない何か違和感があった。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ? どうしました?」
( ^ω^)「いや、何か変な感じが……う〜ん」
ζ(゚ー゚*ζ「?」
( ^ω^)「いや、気にしないで大丈夫ですお。
それで、近くに街とかあります?」
ζ(゚ー゚*ζ「ええと、あの河に見えるものが雪と水の街シベリアです」
- 47 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 22:05:59.15 ID:PQRUUQYfO
- そう言って指差す先は例の建造物。
あれは街だったのか。
それにしても……
( ^ω^)「シベリア……」
僕の世界でもある名だ。
どういう事だろう……ただの偶然か?
ζ(゚ー゚*ζ「取りあえずはあそこで一泊して、しばらくの目標を決めましょうか」
(;^ω^)「え?」
ζ(゚ー゚*ζ「あれ? 何か変な事言いました?」
- 48 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 22:07:32.94 ID:PQRUUQYfO
- (;^ω^)「目標も何も僕は帰りたいですお」
ζ(゚ー゚;ζ「あちゃー」
彼女のその苦笑いは、僕にとって最悪な事態を簡単に連想できた。
(;^ω^)「まさか……」
ζ(゚ー゚;ζ「ちょっと帰り方は分からないですね……」
(;^ω^)「えぇ!?」
ζ(゚ー゚*ζ「あっ、けど何とかなるかもしれないですよ」
( ^ω^)「え? 本当ですかお?」
その質問に、彼女はまずは早く街に行きましょう、そう言って元気よく歩き出した。
( ^ω^)「え? また歩き?」
僕らの目指す先は、まだ僕の手より小さかったからだ。
第二話――異界の地――
完
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