( ^ω^)は選ばれたようです

23 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/08(水) 23:57:48.20 ID:NmN3bdp4O
案内された部屋はそれなりのもので、一人なら全く不自由なく過ごせる立派なものだった。

( ^ω^)『さて、ではそろそろ教えて欲しいお』

ζ(゚ー゚*ζ『そうですね。まずこの世界ですが、様々な世界のものが漂着する世界です』

(;^ω^)『え?』

ζ(゚ー゚*ζ『えーっと、簡単に言えば、異世界のものが流れつく平行世界とはまた違う世界ということです』

( ^ω^)『分かるような分からないような……』

彼女の説明もかなり分かりやすくしてくれてるのだろうが、どうも分かりにくい。

24 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/08(水) 23:59:52.76 ID:NmN3bdp4O
ζ(゚ー゚*ζ『うーん、説明が難しいですね。
      神隠しされたものが行き着く先の世界と言えば分かるでしょうか?』

( ^ω^)『あぁ、なるほど』

よく物がどこかにいったまま分からなくなるといったことがあった。
それの全てがそうという訳ではないが、きっとこの世界にきたものもあるのだろう。
多分そう言うことだ。

ζ(゚ー゚*ζ『まぁ、そんな感じです。
      この世界は全ての異世界の受け皿のようなものなので、果てというのは存在しないんですよ』

ここで、あの時の違和感が分かった。
あの森を抜けたときのあの違和感。
それは「地平線が直線」だったことだ。

25 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:01:11.78 ID:DhTXANzPO
( ^ω^)『なるほど……』

ζ(゚ー゚*ζ『といっても、本当に果てがあるかは謎ですけどね』

( ^ω^)『?』

思わず首を傾げた。
果てがあるか分からない?

ζ(゚ー゚*ζ『正確には果ての森を越えた人間はいないんですよ。
      あの中じゃ方向感覚が狂わされるんです』

( ^ω^)『果ての森って、あの僕がいた?』

ζ(゚ー゚*ζ『はい。かなり巨大な輪になっていて、その中で人間達は生活しています』

26 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:03:20.13 ID:DhTXANzPO
森に囲まれた世界か……。
想像出来ないけど、きっと事情なのだろう。

( ^ω^)『それに……』

その先にも見知らぬ大地があるかもしれないということだ……。
いや、待てよ。

( ^ω^)『川を伝って行くって方法は?』

ζ(゚ー゚*ζ『行ったという話は聞いた事ないですから、それも無理でしょう』

( ^ω^)『むむむ……じゃあ火災なんかは?』

ζ(゚ー゚*ζ『あの森の木は燃えないのでそれはないですね。
      まぁ、取りあえずは冒険者として各国を巡りましょう』

28 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:05:40.65 ID:DhTXANzPO
それからは本当に楽しかった。
気付けば新しい生活が始まる不安なんか何処かに吹き飛んでいた。
この世界の品々を物色する。
ただそれだけでも十二分に僕の心を踊らせた。

「いらっしゃーい! 今日も生きのいい川魚があるよー」

鰻のような魚を売ってるお店や、

「これを身につければあら不思議、異性にモテモテになるネックレスだよー」

うさん臭い装飾品店。
その他にも、小物を売ってるお店や、異世界のものだけを扱ってるというお店など、僕の目は飽きることはなかった。

(   )「……」

29 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:10:20.38 ID:DhTXANzPO
まずは、学ランという目立った外見を直すため、手頃な服を見繕い、次に軽い物を持ち運ぶためのポーチを選び、野営用の用具を買い、次に寄ったのは武具屋だった。

ζ(゚ー゚*ζ『街の外には野犬など猛獣の他に盗賊なんかもいますからねー、あって損はないでしょう』

らしいので、今いる訳だが、あるわあるわ。
剣や槍、杖に弓など大きくわけてもキリがない。
更に剣一つとっても種類は様々。
しかも店員の解説付きときた。
やはり本職だからか。
彼の武具に対する知識は半端なものではなかった。

30 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:11:18.77 ID:DhTXANzPO
( ´Д`)「あー、それはショテルですね。
      湾曲した刀身が特徴的で、敵の盾を回り込んで刺すといった使い方をしますよ」

( ´Д`)「そっちは機械剣ですよ。
      異世界の品で、柄を押しながら振れば、刀身中央が手裏剣状になって飛んでいきます。
      ただ扱いはかなり難しいですよ」

(;´Д`)「あぁ! それはむやみに触らないで!
      最悪自分の命を吸い取られますよ」

とまぁ、こんな感じで色々見ていた。
だが、どうもしっくりとくるものがない。
一度武器探しはやめて、先に防具の製作を頼む事にした。

31 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:12:59.27 ID:DhTXANzPO
オーダーメイドだが、次の日には出来上がるらしい。
流石は職人である。
とはいえ、僕は生まれてこの方鎧など着た事ない。
だから僕は、比較的楽に着こなせる軽鎧と小さい盾を頼む事にした。
肩当て、脛当て、あとは胸、腰など急所を守る程度のものだ。
これなら動き易く、またある程度は守りも出来るからだ。
そして、寸法を計り終えて戻ってきたときだった。
ある一振りの剣に目がいった。
手に取って見る。軽い。しかし重厚感はあった。

( ´Д`)「それですか? どうやらお客さんは見る目があるようで」

32 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:13:49.45 ID:DhTXANzPO
店員の言葉には耳を貸さず、柄にある銘をみた。

『∫Σ∨∃ ∝∫ΝΘ』

( ´Д`)「セイブキング。
      使い手を守るとされる異世界からの聖剣の一つですよ」

鞘から抜いてみる。
刀身は青空を少し薄めたような色をしていた。

ζ(゚ー゚*ζ『これは……確かに本物みたいですね。
      強い力を感じます』

( ^ω^)「これ……いくらになりますかお?」

(;´Д`)そ「え゙!? お客さん……それ、非売品ですし、高いんですよ?
       三十はしますって」

( ^ω^)「これでもかお?」
ζ(゚ー゚;ζ『ブーンさん!?』

黙って握らせた。魔法銀貨十枚である。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/09(木) 00:15:25.11 ID:DhTXANzPO
(  Д )「!!?」゚ ゚

( ´∀`)「い、いえ、十分でございます。へへ。毎度ありがとうございます」

突然卑屈になる店主。
どうやら武器は明日防具と一緒に渡してくれることになったが彼女は不満そうだった。

ζ(゚ー゚*ζ『確かにいい買い物でしたけど、それを買う必要は無かったですよ』

彼女の言葉を無視して、これからを考えた。あとはまず食料などの消耗品。
これは明日にでも十分だろう。それより今は、今までのものを運ぶための手段を考えないといけない。

( ^ω^)『いい移動手段はあるかお?』

ζ(゚ー゚*ζ『えーっと、やはり馬があればいいですけど、この地方はいい馬はあまりいないんですよ』

( ^ω^)『なるほど』

ζ(゚ー゚*ζ『けどないよりはマシですからね、取りあえず見に行ってみましょう』

34 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:16:18.52 ID:DhTXANzPO
いい馬がいないとは言うが、僕には目利きの能力なんてない。
したがって、どれがいいかは彼女に任せることにした。

ζ(゚ー゚*ζ「うーん、どれも小粒揃いですねー」

結果は以上の通りだ。
どれでもいいというので、初心者の僕にもいいように、大人しいものを買うことにした。

武具と馬。
これらは明日受け取りにいけばいいようなので、その後は自由に商店街を見てまわった。

(*^ω^)『ふー、今日は楽しかったお』

ζ(゚ー゚*ζ『それはよかったです』

宿に戻り一息つく。
もう完全に日は沈んでいた。
それにしても今日は本当に色々なことがあった。
いきなり森の中に飛ばされて、ツンそっくりの妖精に出会って、それから――

35 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:20:01.58 ID:DhTXANzPO
ξ )ξ「内藤?」

( ^ω^)「ツン?」

薄暗いから顔は見えないが、確信を持って言える。ツンだ。間違いない。

ξ )ξ「ごめんね。あんなことしちゃって」

泣いてるのか? 分からない。
けど、言い方がひどくしおらしかった。

( ^ω^)「あんなこと?
      ああ、僕がそっちから飛ばされたときのことなら気にしないでいいお」

ξ )ξ「本当に? よかった……もう会えなくなるけど、私の事、忘れないでね」

表情は分からない。
だが、嬉しそうにそう言うと、彼女は背を向けて遠ざかって行く。それが何故か寂しそうで、

(;^ω^)「!? どういうことだお? ツン! ちょっと待つお!」

追い掛けようにも彼女との差は一向に縮まらず、むしろ開いていった。
そして彼女は、闇へと消えていった。

(;^ω^)「ツン! ツーーーン!!!!」

36 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:21:42.56 ID:DhTXANzPO
ζ(゚ー゚*ζ『ブーンさん。起きてください』

( ^ω^)「お……?」

気付けば僕はベットに俯せになって寝てた。

ζ(゚ー゚*ζ『昨日は大変だったんですからね。
      いきなり倒れたと思ったら寝てるんですもん。
      まさか実体化してベットに運ぶなんて思いませんでしたよ』

(;^ω^)『いやー、申し訳ないお』

ζ(゚ー゚*ζ『この世界が珍しくても倒れるまではしゃがないでくださいね。まぁ、今回はよしとします』

しかし実体化してもらったのか。
たしか人前には出れなかったはず。
となると本当に悪いことをしたな。

ζ(゚ー゚*ζ『じゃあそろそろ行きましょうか』

( ^ω^)『お。了解だお』

37 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:23:01.56 ID:DhTXANzPO
朝日が眩しい。
今日も晴れてよかったとしみじみ思った。
取りあえず、まずは装備を貰うために武具屋に行った。

( ´Д`)「あ、いらっしゃいませー。ご依頼の品は出来上がってますよ。
      早速着ていきますか?」

一人じゃ満足に着ることさえ出来ないだろう。
ここは店員の言葉に従うことにした。

( ´Д`)「おー、お客さん、お似合いですよ」

お世辞を受けながら、僕は鏡の前に立った。

38 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:24:30.01 ID:DhTXANzPO
昨日まで学生服だったために、周囲の目が痛かったが、これならその心配もない。
それにこんなものを着るなんて少し前までは思わなかった。
だからだろうか、気分が高揚してるのが分かる。

( ´Д`)「それと、あとはこれをつけてくださいね」

そう言われ、渡されたのはベルトと外套。
だが、これは注文した覚えはない。

( ^ω^)「あの……これは?」

( ´Д`)「あぁ、それはこの店で買い物してくれた方へのサービスなんですよ」

なるほど、ならば合点がつく。
どちらも有り難くいただくことにした。

( ´Д`)「あとは、これですね」

受け取ったのは例の聖剣だ。
それをベルトにさして、外套を纏い、店を後にした。

39 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:26:34.20 ID:DhTXANzPO
次に馬の受け取りに向かった。
大人しいが力はあるらしい。
事実、全ての荷物を載せてもびくともせず、また、僕が手綱を引っ張ると、素直に従ってくれた。

( ^ω^)『なかなかいい子だお』

ζ(゚ー゚*ζ『そうですね。値段も安かったし、これもいい買い物でしたね』

( ^ω^)『じゃああとは食料なんかの調達だお』

ζ(^ー^*ζ『りょーかーい』

彼女のノリのいい声と共に、朝の商店街へと向かった。

40 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:27:42.60 ID:DhTXANzPO
食料はもちろん日持ちするものを選んだ。
当初は二人分買う予定だったが、彼女は食事を取らなくてもいいらしい。
精霊とは便利なものである。
ちなみに、買ったものは鉄板の干し肉と乾パン、その他固形食料などと言うものなどを買い込んだ。
多分だが、これなら一週間は持つだろう。

( ^ω^)『じゃあそろそろ行くかお?』

ζ(゚ー゚*ζ『そうですね。日が落ちない内に行ける場所まで行きたいですから』

そうして門を出た。
たった一日しかいなかったが、僕としては十分楽しかった。
それはきっと彼女も同じだろう。
僕はそう感じていた。

41 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:29:08.89 ID:DhTXANzPO
街を出て、しばらくするとまたもや森に辿り着いた。

( ^ω^)『これも果ての森かお?』

ζ(゚ー゚*ζ『いえ、ここは普通の森ですから、真っ直ぐ行けば迷うことはないですよ』

しかし普通の森とはいえ、中は鬱蒼としていた。
あまりこの道は使われていないのだろうか、ほとんど獣道といったレベルだ。
それに、動きやすい服装になったとはいえ、まだ着慣れていないのもあってか、僕の疲労が溜まるのも早かった。

( ´ω`)「ハー、ハー……」

ζ(゚ー゚;ζ『大丈夫ですか?』

ついには、彼女の声にも答える余裕すらなくなり、結局僕は、手頃な石を見つけて休憩を取ることにした。

42 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:31:02.36 ID:DhTXANzPO
「ねぇ、大丈夫?」

不意に声をかけられた。

(,,゚Д゚)「こら、しぃ。見知らぬ人の心配なんてすんなよ」

(*゚ー゚)「けど、このままは酷いよ」

見上げると、まだ小さい少女と、がっしりとした体格の男の二人組がいた。
どうやら先程の声は、女の子が僕を気遣ってくれたようだ。

(,,゚Д゚)「だいたいおまえはなぁ……ん?」

口やかましく女の子を責めていた男だったが、僕を見ると、怪訝そうな顔をした。

43 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:31:50.84 ID:DhTXANzPO
( ^ω^)「どうかしましたかお?」

(,,゚Д゚)「いや、どっかで見たなーと思ってな」

少し間が開いてから、彼は思い出したようだ。

(,,゚Д゚)「あぁ、あんた変わった服装してた兄ちゃんか」

( ^ω^)「え?」

(,,゚Д゚)「いや、どこかで見たと思ったんだ。
     まさか着替えてるとは思わなかったぜ」

そう言って彼は豪快に笑った。
今更だけど、やはり学ランは目立ってたよなぁ……。

44 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:33:34.81 ID:DhTXANzPO
僕が苦笑したときだった。

(,,゚Д゚)「ん、誰かいるな」

( ^ω^)「え?」

別段変わったことはないように感じた。
少なくとも僕はだが。

(*゚ー゚)「何人くらい?」

(,,゚Д゚)「……三、いや、多分だが四人だ」

それぞれ武器を取り出して身構えた。
男は穂先近くに三日月状の刃が付いた槍。
女の子は針のように細い剣だ。

僕も慌てて武器を構える。

(,,゚Д゚)「おい、お前は戦闘は初めてか?」

(;^ω^)「え! あ、はい」

(,,゚Д゚)「分かった! なら俺から離れるなよ!?」

45 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/09(木) 00:35:34.28 ID:DhTXANzPO
そして、彼の掛け声が、この戦闘の口火となった。

(,,゚Д゚)「行くぞ!!」



第四話――旅立ち――



第五話へ続く→


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