ノパ听)と('A`)は部活動に勤しむようです

3 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 21:43:09.78 ID:XhmiprgbO

 波乱に終わった初日が終わり、既に今日はサバイバル二日目。

 だが所詮、学校非公認のバトルロワイヤル。
 参加者たちには今まで通りの勉学、部活という、学生の果たす義務が変わりなく存在している。
 そんな状況でも、決して教師たちには知られてはならないというルールは守られていた。

 参加者内、あるいは事情は知っている一般生徒たち。この中からうっかり口を滑らしてしまう者、悪意あって告げ口をする者もゼロとは言えないはず。

4 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 21:46:32.40 ID:XhmiprgbO

 しかし実際問題、二十四時間が経過した今も教師に不穏な動きは見られてはいない。

 それは生徒会と風紀委員たちの工作の賜物と言うのか。
 昨日は一日目にして既にかなりの戦闘が起こったはずだった。
 それによりあちこちにできたはずの校舎・公共物の損傷、これらも完璧に修復されている。

 見事の一言でしかない。

5 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 21:49:01.01 ID:XhmiprgbO

ノパ听)と('A`)は部活動に勤しむようです

第八話『薔薇の秘密』


6 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 21:53:48.97 ID:XhmiprgbO


从 ゚∀从「状況を整理しようか」


 ハインはそう言って小脇に抱えていた小さめのホワイトボードを、学食テーブルに叩きつける。
 テーブルをむっつりと囲むのはドクオ、ヒート、フサギコ。お馴染み――とはまだ言い難いが、日が浅くともそれなりに関り合いを持った者たち。
 現在早朝の始業前、ハインの半強制的な召集により彼らは無理矢理集められたのだ。
 どうやって調べたのか、各人に送られてきた彼女のメールにはVIP学園食堂に集合せよとの旨が記されていた。
 そして、今に至る。

从 ゚∀从「大本の話から行こう。オレはここにいる四人でチームを作りたい。ゲームを生き残り優勝するためのチームだ」

 ホワイトボードに書き込まれる、丸にイニシャルを記した簡単な絵。それら四つを、ハインはより大きな丸で囲う。

从 ゚∀从「賞金は山分けになる。本当言うともう一人くらい仲間が欲しい。だから一千万を五等分の二百万。悪くないはずだ。
 各人の目的としてだが、オレは金、ヒートは強敵との勝負、ドクオはヒートの優勝、フサギコは……手っ取り早く武喝道を終わらせたいってとこか」

8 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 21:58:27.63 ID:XhmiprgbO

ミ,,゚Д゚彡「まぁな」

ノパ听)「くどいけどさ、私はチーム組む気は――」

从 ゚∀从「ドクオ、お前はどうだ? この提案に文句はあるか?」

 意見するヒートを無視して、ハインは向かい合ったドクオに尋ねる。
 ドクオも今の流れで自分に質問してくるとは思わなかったらしい。少し戸惑いながらも返す。

('A`)「いや、まぁ……昨日の朝のこともあるし、いきなりお前の事を信用できないってところはあるけど、悪くはないと思う。
 憶測にすぎないけど、お前の言う通り『バッチイコール点数』説がマジなら一人よりチームの方が得のはずだ」

ノパ听)「そういうもんか? それにお前の言う通り、ハインは信用ならん! 最後に裏切って金を独り占めとかじゃねーの?」

从;゚∀从「ひでー言われようだな」

9 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 22:03:50.97 ID:XhmiprgbO

('A`)「確かにそれもある。でもお前は金に興味無いんだろ? それに俺ら男二人の目的は、優勝かタイムリミットまで生き残ることになってくる。
 俺も……多分フサギコも金はどっちでもいいはずだし。なら賞金は無視しても、勝ち易いって状況は少しでも作るべきだ」

ミ,,゚Д゚彡「うむ、ぶっちゃけるとそうだな。それに組めと言われるなら、日は浅いが顔見知りのお前らなら都合がいい。
 もう返した恩かもしれないが、一応昨日は助けてもらった身だしな。協力なら喜んでさせてもらう」

从 ゚∀从「なら金はオレが一人占めってことで! いいよな?」

ノパ听)「そーいうところが信用ならん!」

 わざとらしくはしゃぐハインを一喝する。

11 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 22:07:13.75 ID:XhmiprgbO

 チッと舌打ち、彼女はホワイトボードに別の書き込みを始めた。

从 ゚∀从「金のことはいい。それより考えろヒート。オレは確かに天才だ。万人が認める超天才美少女様なんだよ。
 しかしだ、悪いがチームを作る――なんて程度の作戦は『オレじゃなくても考え付く事』だろう」

ノパ听)「はぁ?」

 ヒートの鼻っ柱に突き付けられたボード。そこにはヒートたちを記した物とは別の大きな丸がある。
 相違点は名前が書かれていないだけ。その丸にもこちらと同じく小さな丸が数個囲まれている。
 ハッと息をのみ、納得したようにヒートは手を打った。

ノパ听)そ 「『別のチーム』!!」


14 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 22:11:07.06 ID:XhmiprgbO

从 ゚∀从「そう、そしてそんなチームには十中八九! 新聞部の広報に名を連ねているような強敵がいる」

ミ,,゚Д゚彡「わざわざチームを作って戦うんだ。雑魚ばっかじゃ意味が無い。少なくとも強い奴が『一人もいない』ってことはないはずだろう」

('A`)「それにチーム戦なんてすれば嫌でも目立つ。一人で勝ち進むよりずっと人の目に付きやすい。そしたらどーなると思う?」

ノハ*゚听)「目立つ! 目立つと強い奴が面白く思わなくなる! そしたらそいつが喧嘩しかけてくる!」

从 ゚∀从「利害一致――だな」

 パタンと、ホワイトボードが二つに折りたたまれた。

15 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 22:14:56.58 ID:XhmiprgbO

从 ゚∀从「もう一度聞こう。オレたちは互いの目的を達成するために、今ここでチームを結成する。異論はないな?」

 ドクオ、フサギコは静かにうなずいた。ヒートも強者との勝負を夢見てワクワクしているのか、興奮気味に首を振りまくる。
 四名の意思はここに結した。
 ハインはニヤリと微笑み、勢い良く飛び上がると、白衣とチェックスカートを棚引かせてテーブルに着地。

从*゚∀从「よし! ならリーダーを決めなきゃだな! アホにゃ任せらんねーよな? ならもちろん、オレに決ま――」

ノパ听)「「ドクオがいいと思う」」ミ゚Д゚,,彡

 ハインはバランスを崩し、裾を乱すのも忘れて卓上に頭から転倒した。

17 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 22:18:15.87 ID:XhmiprgbO

 当のドクオは素っ頓狂な表情を浮かべ、二人の推薦者たちの顔を交互に見比べた。
 どちらにも冗談の毛色など少しも見えない。

(;'A`)「俺かよ?」

从;゚∀从「ふふ、不満だ! なんでオレじゃない!? こんなビビりよりオレのが遥かに頭がいいのに!」

ノパ听)「だから信用ならん。私はドクオを信頼して組むことにするんだ。ドクオの言うこと以外聞く気ないからな!」

ミ,,゚Д゚彡「頭の良さだけで決めたらそりゃお前さんだが、リーダーはそんなもんじゃないだろう。
 あの『凶星』相手に一人で踏ん張った根性は認めるべきだ。ハインはまぁ……参謀とかでいいんじゃないか?」

从;゚∀从「ぬぐっ?! ……くっそぅ……!」

 ハインも、やはり自分が戦闘向きではないと言え、ショボンに一撃でやられたのは悔しかったのだろう。
 フサギコの言葉に手も足も出なくなったようで、不満いっぱいの顔を浮かべて胡坐をかく。

19 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 22:22:23.97 ID:XhmiprgbO

('A`)「いや、でもさ。本当に俺でいいのか? 確かに頭ならハインの方がいいし、実力的にも……」

ノパ听)「つべこべ言うな! 漢らしくドーンと構えてりゃいいんだよ! ドーンとな!」

('A`)「……全く参考にならん」

 不本意は不本意だろうが、ドクオもわざわざヒートとフサギコが推してくれたものを無下にはできない。
 とりあえずは、形だけでも自分がチームリーダーとなることに決めたのだった。

 残念ながら大反対を受け、絶賛不機嫌中なハインが胡坐のまま続ける。

从 ゚∀从「ったくよー、んじゃあリーダーはドクオですけど? 話は参謀のオレが進めるぞ、いいな?」

 一同、異論無しと顔を見合わせる。

从 -∀从「じゃあよ、さっきもこぼしたがもう一人くらい仲間が欲しい。もちろん強い奴の方がいい。
 ただし、『凶星』ショボンみてーにブッ飛んだ奴はダメだ! あんなのが一匹でもいると全体の連携が崩れる。
 こちらがコントロールできる程度の人格と実力を持った奴だ。お前らの知り合いにいると助かるんだが?」

22 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 22:26:45.35 ID:XhmiprgbO

 ハインが提案するのは五人目の仲間。

 確かに、現在ヒート・ドクオ・フサギコ。この三名が主力となる。ハインは自他ともに戦闘に不向きだと理解している。
 今のままでも、確かに不十分な戦力ではないだろうが、ハインも念を押しておきたかったのだろう。

 尋ねられた者たちは三者三様に思案に耽る。

ミ,,゚Д゚彡 (本当の所それほど知り合いがいないからな。料理部つながりの知り合いも女子ばっかりだし……)

('A`) (友達いないってのはこういう時に辛いもんだな。自分の交友関係の貧弱さが憎いよ……)

ノパ听)「知り合いにいるぞ、強くて人間ができている奴」


 一同、開いた口が塞がらないとはこのことだった。


23 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 22:31:19.18 ID:XhmiprgbO

 ハインが話し終わってから一分と経っていない。

('A`)「早っ!」

从;゚∀从「確かに早ぇーな! いや、そんなことはどうでもいい! 名前と学年、部活は!?」

ノパ听)「三年E組の素直クール、合気道部」

('A`)「げっ!」

 何故かドクオは露骨に嫌な顔をする。

ミ,,゚Д゚彡「お、名前だけなら聞いたことあるな。全国区レベルの大会にも顔を出していた人じゃないのか? 確か実家が道場とか……」

从 ゚∀从「知り合い――と言うより身内か?」

ノパ听)「おう、従姉妹のねーちゃん。何の因果か知らないけど同じ学校なんだよな。昔はよく遊んでもらったが、今じゃあんまり会わない」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/18(土) 22:36:56.92 ID:XhmiprgbO

('A`)「ヒート……その、クーは不味くないか。確かに強くて頭もいいし申し分ないが……」

 一人芳しくない様子を漂わせるドクオ。まるで隠した赤点のテストを見つけられた子供のように縮こまっている。

ノパ听)「なんだよお、じゃあ他に誰かいるのか?」

('A`)「……思いつく限りではいない」

从 ゚∀从「なら口出すなよボケ。よし決まりだ! 今日の放課後にでも会えるか? 早速話を付けたい」

ノパ听)「んーまー、真面目だから部活はしてるだろーし武道場行けば会えるかな。ちょうど今日は合気道・空手道のシフトだから」

 女二人はやいのやいのと素直クールの話題で盛り上がっていた。
 一方ドクオの意気消沈ぶりはちょっと深刻そうである。気を遣ってくれたのか、のっしりと肩を組みフサギコが尋ね始めた。

28 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 22:41:16.32 ID:XhmiprgbO

ミ,,゚Д゚彡「どうしたドクオ、元気ないぞ。聞いた感じ知り合いなんだろう? 見知らん他人よりいいじゃないか」

('A`)「いや確かにクーはヒートの従姉だし、俺も幼馴染で遊んでもらったことはあるけど……そういうのじゃなくて」

ミ,,゚Д゚彡「……もしかして、その頃に何かあって仲違いしているのか? 虐められていたとか」

('A`)「いやいや全然。そうじゃないんだ、むしろ逆っていうか……」

ミ,,゚Д゚彡「…………?」

 深い溜め息をつく。フサギコには彼の気持ちが上手く汲み取れなかった。
 確かに困っている様子だ。だがどうにもそわそわしているところもあるようで、一概に素直クールその人を嫌っている素振りでも無い。

ミ,,゚Д゚彡 (よく分からんな……)


 その後の、リーダーを置きっぱなしによるハインの一方的な決断により、放課後に素直クールを尋ねることが決定する。
 一同は忘れかけていた始業のチャイムと共に、一時解散とすることにした。


 「チーム……厄介な話を聞いちまった。キャプテンに伝言だ」


 聞き耳を立てていた間者に、誰一人気付くこと無く。

29 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 22:46:53.32 ID:XhmiprgbO

 * * * 


 ――ドクオ、おままごとしよう。わたしがおくさんで、ドクオがおっとだ。

 ――ドクオ、ウチでおえかきばかりじゃつまらない。いっしょにそとでおにごっこしよう。

 ――ドクオ、きょうはおとまりだからいっしょにおふろはいろう。おねえちゃんがせなかをながしてやる。

 ――ドクオ、いっしょのおふとんでねよう。ヒートにはないしょだぞ。

 ――ドクオ、ドクオ、ドクオ……。


('A`)「う、も、もういいよ、やめてくれよクー……うぅ……」


 パン、と小気味良い音が教室に木霊した。
 覚醒したドクオは後頭部の鈍い痛みに気付く。何事かと思いクルクルと辺りを見回せば、クラス中の者が自分を注視している。
 ヒートですら呆れ顔だ。いや、一番特筆すべきは傍らでヌッとそびえ立つ渋澤だろう。

  _、_
( ,_ノ` )「何をやめて欲しいのかは知らんが、これ以上頭をはっ叩かれたくなかったら居眠りせんことだな」

31 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 22:52:20.72 ID:XhmiprgbO

 彼はそう言うと、手に持った出席簿でドクオの頭を二三度小突く。
 そこでやっと気付いた。今は四時限目、渋澤教諭による現代国語の真っ最中。
 いつの間にか居眠りをしていたらしい。

(;'A`)「すすす、すみません!」

 ドッと教室が笑いに包まれた。穴があったら入りたい気分である。
 普段はむしろ居眠りをしているヒートを起こしてやる立場なのに、今ばっかりは晒し者の気分だった。
  _、_
( ,_ノ` )「普段真面目なお前にしては珍しい。だが居眠りはよくない。今日は素直だって起きているんだぞ」

ノハ;゚听)「私を引き合いに出すな!」


33 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 22:55:53.66 ID:XhmiprgbO

 ヒートの訴えに、またも教室は笑いの渦に飲み込まれる。ドクオは恥ずかしさに参ってしまい、そんな喧騒も耳に入らない。
 それを見かねてようやっと勘弁してくれたのか、渋澤は『静かに!』と皆を怒鳴り付けると教卓へと帰っていった。
 頃合いを見計らい、訝しげな表情をした幼馴染が隣から首を突っ込んでくる。

ノパ听)「随分、だらしないツラして眠ってたな。クー姉ぇの夢でも見てたのか、このスケベ」

('A`)「スケベも何も、子供の時の話なんだからそんな浮いた話じゃない――ていうか、お前だって俺とクーのこと分かってるだろ!」

ノパ听)「へー。やっぱクー姉ぇの夢見てたのか」

(;'A`)「……何だよ?」

ノハ--)「別に、何でも」

35 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:00:18.25 ID:XhmiprgbO

 ツーンとそっぽを向き、ヒートはまともに授業をする気もないのに黒板に視線を固定する。

('A`) (キャラちげー……。ハッキリ言えよ……)

 ドクオの方はサッパリ見てはくれない。
 敢えて追求するのも癪だと彼も観念し、居眠りで聞き逃した分の授業を取り返す作業に戻った。

ノパ听)「あ、そう言えばさ。チーム作ったのはいいけどチーム名とか決まってなくね?」

('A`)「そんなのいるのか?」

ノパ听)「私は『ヒート軍団』が素晴らしく合ってると思うな。これ以外考えられない」

('A`)「この上ないほどの自己主張ですね」

37 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:04:41.33 ID:XhmiprgbO

 * * *

 昼休み、学生たちの数少ない憩いの時間。

 フサギコは大きめのタッパー片手にのしのしと校舎を歩き回る。
 今日は学食でおばちゃんの手伝いを休んでいる。
 料理の腕を上げるために進んでヘルプに入っているのだが、おばちゃんも気を遣い、時間が余った且つ気が向いた時だけでいいと釘を刺されているのだ。
 ので、今日の彼は別件の用がある。

 歩き回って数分、程なくして目的の人物を彼は見つけた。

从 ゚∀从「ん……?」

ミ,,゚Д゚彡「よお、邪魔するぜ」

 人気のない屋上の段差に腰掛け、ノートパソコンにタイプをしながらチューブタイプの簡易食を啜っているハイン。
 彼女は身を屈めてドアをくぐってきたフサギコを一瞥した。

38 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:07:05.94 ID:XhmiprgbO

ミ,,゚Д゚彡「隣、いいかい?」

从 ゚∀从「屋上は公共の空間だからな」

ミ,,゚Д゚彡「そりゃどーも」

 フサギコがハインの隣に腰かけると、ずっしりした重みが起こす振動が彼女の臀部にも伝わる。
 思わず体が浮いてしまいそうだった。
 居住まいを整え、ハインはチューブを咥えるとノートパソコンに向かい直る。

ミ,,゚Д゚彡「なんだそれ、ゼリーか? 昼をそんなもんで済ましていたら体壊すぞ」

从 ゚∀从「これで充分腹は膨れるし、無駄なカロリーも少ない。足りない栄養素は錠剤で補うから問題ないんだよ」

ミ,,゚Д゚彡「錠剤って……無茶苦茶だな。ほら、さっき実習で肉じゃがを作ったんだ。余り物だしつまめよ」


39 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:10:07.28 ID:XhmiprgbO

 持ち歩いていたタッパーを開くと、中から食欲をそそる香りが漂った。
 ぎっしりと詰まった肉じゃがはまだ温かく、ほのかに湯気を上げている。
 ハインでも一口で食べられそうなサイズにカットされたジャガイモは、つやつやと黄色い素肌を輝かせていた。
 タッパーに取り付けられていた箸を添えると、健康的な白い歯を見せながらフサギコは笑う。

ミ,,^Д^彡「自分で言うのもなんだが美味いぞ。全部とは言わないから、少しでも味見してくれ」

从 ゚∀从「…………」

 ハインは差し出された容器をちらりと横目で見定め、ふいっとディスプレイへ意識を戻す。

ミ,,゚Д゚彡「なんだ、食べないのか?」

从 -∀从「…………なんだかな、察してくれよ。大きなお世話っていうかさ」

 鬱陶しそうに眉間に皺を寄せるハイン。
 それでも指の動きは正確そのもの。一定のリズムを崩さずにタイプし続けている。

43 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:13:16.02 ID:XhmiprgbO

从 ゚∀从「別にオレはお前らとお友達じゃないんだぜ? 損得勘定で手を組んだ一時的な付き合いなんだ。
 オレは武喝道に勝ち抜くためにお前らを利用するだけ。一緒に弁当をつつき合うような趣味ねーんだよ」

ミ;,,゚Д゚彡「え? あ……おぅ、そんなもんか?」

从 -∀从「それとも何か? 昨日のドクオの芝居で、『カレシカノジョー』なんて言っちまったからマジにしてんのかよ?
 まぁ、自分で言ってもオレ様は類稀なる美少女だから、そういう浮ついた気になるのも仕方ねーかもだけどよ」

ミ;,,゚Д゚彡「いやいや、誤解だ! 俺はそんな下心があったわけじゃ……」

从 ゚∀从「じゃあほっとけ。他人に食事管理されて喜ぶようなバカ女じゃねーんだよ」

 それっきり、ハインは作業に取り組み一言も発さない。
 フサギコもこのように突っ返されるとは考えてもみなかったのだろう。半ば茫然、しばらくして酷く落ち込む。

44 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:16:12.17 ID:XhmiprgbO

ミ,,゚Д゚彡「そうか、そうだな。余計なお世話だったのなら悪かった。……俺が食べるよ」

 大きな身体が幾分か小さくなってしまったかのようである。

从 -∀从 (ったく、ウゼー奴だ……)

 ハインは横目でチラチラと様子を窺っては、イラつきを鼻息に乗せて吐き出す。
 盛んに動いていた指も、既に止まっていた。

ミ,,゚Д゚彡「あー、むしろここにいると邪魔か? それなら消えるよ、すまなか――」

从 -∀从「……まねぎ」

 やれ残念と、フサギコが立ち上がろうとした時である。ハインはボソリと呟いた。

ミ,,゚Д゚彡「え?」

从*-∀从「……た、玉ねぎ嫌いなんだ。だから食べたくない。でもそれ以外だったら少しは食ってもいい」

46 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:19:15.26 ID:XhmiprgbO

ミ,,゚Д゚彡「……ぷっ」

从#゚∀从「なっ! 何笑ってんだこのタンカス! 人がせっかく食ってやろうっていうのに失礼だろうが!!」

ミ,,゚Д゚彡「いや、すまんかった。でも食えないなら仕方ないが、好き嫌いはよくないぞ?」

从 -∀从「それこそ大きなお世話なんだよ!」

 引っ手繰るようにしてハインはタッパーを受け取る。
 早速玉ねぎを避けジャガイモに箸をつけると、一口放り込む。
 
 途端に口へと広がるまろやかな風味。
 きつすぎないほのかな甘みに、ジャガイモのふっくらした柔らかさで頬が落ちそうになる。
 
从 ゚∀从「――これは……」

 普段、先のような簡単な栄養食や薬で食事を済ませているハインに、その一口は激震を走らせた。
 非効率だと遠ざけていた料理という物が、これほどの物とは気付かなかったのだ。


49 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:22:26.41 ID:XhmiprgbO

从 ゚∀从「……なかなか、美味いじゃねーか」

 言うつもりもない言葉が、ついついこぼれていた。

ミ,,゚Д゚彡「そうか! 美味いか! 良かった良かった、食べてもらえて」

从;゚∀从「うるせーな、ちょっと褒めたくらいで調子に乗ってんじゃねえよハゲ!」

 罵倒しつつも、ひょいひょいと箸を進めるハイン。
 どうやら口で言う割には、随分とフサギコの料理を気に入ったようであった。

52 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:25:13.39 ID:XhmiprgbO

 * * * 

 無理はするなと念を押したにもかかわらず、ハインは結局タッパーの中身を空っぽにしてしまった。
 玉ねぎが嫌いなどと言っていたのは、まるで大昔のことのようだ。
 体形はむしろ小柄なほうなのにだ。フサギコはその食欲に舌を巻くばかりであった。

从 ゚∀从「……飯くれたのには感謝してやってもいいが、何で付いてくる?」

 昼食を終え、おもむろに屋上を後にするハインを彼は追いかけた。
 ハインは教室に戻る気はないらしい。自分のクラスとは別方向、加えて校舎外へと悠々と出ていく。

ミ,,゚Д゚彡「別にいいだろ、付いて行ったって。それに、今一人になってお前が襲われると困る」

从 ゚∀从「ウゼー奴だよ、本当に」

ミ,,゚Д゚彡「それよりどこに向かっているんだ? 校舎の外れにまで来ているが……」

从 -∀从「……Conservatory」

ミ;,,゚Д゚彡「はぁ?」

 パソコンを小脇に抱えるハインは、まるで『そんなことも分からないのか』と言うように、フサギコに振り返る。

从 ゚∀从「温室だよ」


54 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:28:19.54 ID:XhmiprgbO

 程なくして到着した温室は、ちょっと大きめな小屋程度のサイズで、一面ガラス張りである。
 ズカズカと物怖じすることなく中へと侵入していくハインに釣られ、フサギコも頭を引っ掛けないよう扉をくぐった。
 中には色とりどりの草花や、樹木、一畳ほどだが畑のような物もある。外と比べるとほのかに暖かい。
 中心には白い猫足のテーブルと、イスが二足。上にあるティーカップには、まだ淹れたばかりらしい紅茶が湯気を上げている。

ミ,,゚Д゚彡「すごいな、小さいけど立派な温室だ。畑もあるし……お、エンドウか。煮物が美味いんだよ。
 随分と手もかかっているみたいだが、ここはハインが一人で世話してるのか?」

从 ゚∀从「オレが花を愛でる趣味なんて持ってるわけないだろ。知り合いがやってんだよ」

ミ,,゚Д゚彡「知り合い?」

 どこかで枝葉の擦れる爽やかな音がする。

从'ー'从「ふえぇ〜? ハインちゃん? どうしたの、そのおっきな人〜」

 奥から如雨露片手に女の子が駆け寄ってきた。

56 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:31:26.70 ID:XhmiprgbO

 栗色のショートカットで、大きめの目立つ赤いリボンをしている。
 パッと見、割とふくよかな体系だが着崩さず、きっちりとボタンも胸元まで留めている。その上にピンクのエプロンを着けていた。
 かなり使い込んでいるらしく、裾に土汚れがある年季物のエプロンだ。

从;ー;从「あうぅー、もしかして怖い人なのかな〜?」

从 ゚∀从「気にすんな渡辺、こいつはそう――オレの下僕って奴よ。噛み付かないから安心しな」

ミ;,,゚Д゚彡「嘘を教えるな!」

从'ー'从「なんだぁ、そうなんだ〜。えーっとゲボクさん? 私、渡辺っていいます。園芸部の部長さんです。
 ハインちゃんのお友達なんですよ。でもビックリ! ハインちゃんに男の人のお友達がいるなんて知りませんでした〜」

 ぽよぽよと人畜無害な笑顔を浮かべ、如雨露を片づけると渡辺はフサギコの手を取りぶんぶん握手をする。

58 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:34:32.52 ID:XhmiprgbO

ミ,,゚Д゚彡「や、これはどうも。って、俺はゲボクじゃなくてフサギコ――」

从'ー'从「わぁ〜、エプロンもおっきいですね〜! 私もしてるから、二人でエプロン仲間かなぁ〜♪」

ミ;,,゚Д゚彡「…………」

从 -∀从「気にすんな、渡辺はいっつもそんな調子だよ」

 ハインはいつの間にか椅子にふんぞり返り、断りもなく勝手に紅茶を飲み始めている。
 何とも勝手な奴だと、エプロンをしげしげと見分されながらフサギコは思った。

从'ー'从「フサギコ――さんは何か飲み物いります〜? ジュースとかがいいかな〜?」

ミ,,゚Д゚彡「いやいや、気にしないでくれ。どうかお構いなく」

从'ー'从「ふぇ〜、じゃあお紅茶にするね〜」

ミ;,,゚Д゚彡「…………」

60 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:37:39.72 ID:XhmiprgbO

从 ゚∀从「渡辺、こいつに茶を出すよりまず話があるから、ちょっと座れ」

 パタパタ駆け出そうとしていた渡辺を制止し、ハインは席へと促す。
 渡辺はまた『ふぇぇ〜』と洩らし、ハインの対面へと座ると自分の分の紅茶に口を付ける。

从 ゚∀从「渡辺、お前も武喝道のことは知ってると思うけどよ。バッチはまだ持っているか?」

从'ー'从「んー? うんうん、持ってるよ〜」

 渡辺は何が嬉しいのかヒマワリのようににこやかな笑顔を浮かべ、制服の内ポケットに付けたバッチを見せる。
 陽光を、園芸部の銀バッチが反射した。ハインも安堵の息を漏らす。

从 ゚∀从「そうか……それならいいんだ。でもこれからは気を付けてくれ。出来れば一週間、学校には来ない方がいい」

63 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:42:07.89 ID:XhmiprgbO

从;'ー'从「ふえぇ〜……そうなのぉ? 私、叩いたりとか怖いから武喝道は嫌だけど、学校休むのもなぁ……。
 お花にお水やらないといけないし、結構他にもやらなくっちゃいけないこともあるから……」

从 ゚∀从「水やりとか花の世話くらい、オレが代わりにやっといてやる。授業もたかが一週間くらい大丈夫だ。
 だからだな、頼むから学校には来ないでくれ! 今のここは色々とヤバいんだ。お前じゃ――」

ミ,,゚Д゚彡「おい、ハイン! さすがにいきなりすぎるだろう。渡辺さんも困っているぞ」

从#゚∀从「うっせぇ! こっちの気も知らねーで口挟むなよ! 渡辺は――」

从;ー;从「ふぇ……」

 今まで自分は何を見ていたのだろうか、とハインは自省の念にかられる。
 確かにあまりに彼女の要求は性急過ぎた。渡辺も驚いたのだろう。大きな瞳を涙に濡らしている。
 ごしごしと鼻の頭を擦ってはいるが、なかなか溢れ出るものは止まってくれない。

65 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:46:13.85 ID:XhmiprgbO

从;゚∀从「渡辺……」

ミ,,゚Д゚彡「渡辺さん、いきなりかもしれないけどハインも君のためを思って言ってくれているんだ。
 休む休まないは置いておいて、まずは涙を拭こう。それで、もう一度落ち着いてからこいつの話を聞いてやってくれ」

 フサギコは跪き、スンスンと鼻を鳴らす渡辺に言い聞かせる。
 普段の威厳ある低音の声とは打って違い、今の彼の声色は優しく、真綿のようにソフトなもの。
 渡辺も落ち着きを取り戻し始めたのか、うんうんと頷く。

从;ー;从「ご、ごめんなさい。ちょっとびっくりしちゃって、思わず泣いちゃった。ダメだね私……でも、大丈夫」

 エプロンで頬を擦ると土汚れが一筋走る。その上をクロスするように、また涙の線も一筋。

从 ゚∀从「渡辺……怒鳴ってごめん。でもお願いだ。今の学校は一昨日とは全く違う、戦場なんだ。
 無理矢理担ぎ出されちまった以上、身を守れないお前は隠れていた方が安全だ。わかってくれないか?」

67 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:49:07.42 ID:XhmiprgbO

从'ー'从「で、でもね、私怖いからすぐ降参してバッチを渡しちゃうし、そしたらもう武喝道とは関係なくなるんじゃないの?」

从;-∀从「それは……ダメなんだ。詳しくは分からないけど、バッチを失えばもっと良くないことが起きる」

 あれからハインが一人で調べた結果、撃破したシャーミン松中とマルタスニムは瀬川――彼ら二人も行方知れずとなっていた。
 ブーム、そして先のドクオの件と同じである。バッチを持たぬ参加者が拉致されるという、謎の事件。
 この事件は風紀委員と生徒会が裏で絡んでいる――そこまでは分かっているのに、証拠が無い。
 ドクオの襲われたという証言があっても、信じてくれる者たちは少ないだろう。
 この時ばっかりは、ハインの背筋にうすら寒いものが走った。
 今の学園には、武喝道とこの謎の事件の二つの恐怖がある。
 バッチを持っていれば武喝道に巻き込まれ、持っていなければ風紀委員に捕まってしまう。

 故に、彼女は渡辺を見捨ててはおけなかった。
 対処ができない以上、彼女を学園から遠ざける――それしか道が無い。

68 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:52:13.20 ID:XhmiprgbO

从'ー'从「……ごめんね、ハインちゃん。私やっぱりまだ気持ちがまとまらない」

从 ゚∀从「そうか……いや、急いでほしいけど今は仕方ない。また明日、話に来てもいいか?」

从'ー'从「うん……それと、ありがとう。私なんかのために、ハインちゃんに迷惑をかけて……」

从 -∀从「いいんだ、当たり前だろ。オレたちは友達なんだからな」

 傍らで静かに話へと耳を傾けていたフサギコは、ちょっとだけ驚く。
 ハインの口から他人に対して『友達』というワードが出るということ。先程の自身に対する態度とは全く違うものだった。

ミ,,゚Д゚彡 (友達……か。もしかして、こいつにとって本当の意味での友達と呼べる人は、彼女一人だけなんだろうか……)

 唯一の友だから、守らなければならない。
 ハインを必死に駆り立てるものは、偏に彼女との友情のためなのだろう。

70 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:55:17.42 ID:XhmiprgbO

 時間いっぱいまで渡辺が泣き止むのを待ち、二人は温室を後にする。
 五月の陽気を含んだ風が、一際強く吹き荒ぶ。
 まるで、これから起きるであろう波乱の前兆のようだ。

ミ,,゚Д゚彡「優しい子だ。あんな子まで巻き込むなんて、やはり生徒会はどうかしている」

从 -∀从「……オレはよ、IQ200の天才児としてこの学校に招かれた。無責任な大人どもの期待と羨望をいっぱいに浴びてよ」

ミ,,゚Д゚彡「突然どうした?」

从 -∀从「独り言だ、聞けよ」

ミ,,゚Д゚彡「…………」

从 -∀从「でもよ、そんな糞みたいな奴らの思惑通りになるのが癪に障った。オレの才能はオレだけの物、他人を喜ばすためのもんじゃないってな。
 だから研究活動も学会の発表も全部全部突っぱねた。そんで気ままに過ごした。周りの凡愚共はそういう態度が気に食わなかったんだろうな。
 頭が良いくせに、才能に溢れているくせに、特待生のくせにって。そんですぐに虐めにあったよ」

ミ,,゚Д゚彡「お前……」

71 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/18(土) 23:58:25.91 ID:XhmiprgbO

从 -∀从「上履き隠されて机に糊ぶちまけられて、鞄に泥突っ込まれて体操服を切り刻まれた。別に辛くはなかったが、より拍車がかかったよ。
 やっぱり他人なんて信用できないって思いにな。褒めそやして持ち上げても、突き放す時は何時だって突き放す。それがよく確認できた」

 それでも――と、彼女は静かに付け足す。

从 ゚∀从「渡辺は一人でどんどん尖っていったオレを受け入れてくれた。ボロボロにされた席で飯食ってたらよ、言ってきたんだよ。あいつ――」


 ――ねぇ、一緒にお茶を飲もうよ。お茶を一杯、誰かと一緒に飲んだら、きっと幸せな気持ちになれるよ。


从 ゚∀从「渡辺はダチだ。何にも変えられない、守らなくちゃならない。
 あいつはオレに居場所を与えてくれた。だから今度はあいつの居場所をオレが守る」

ミ,,゚Д゚彡「……温室か? 何かあるのか?」

72 名前: ◆b5QBMirrJE 投稿日:2009/04/19(日) 00:01:06.08 ID:QjRFU+dHO

从 -∀从「あそこは維持費がかかる。園芸部の部費だけじゃもうカツカツだ。まとまった金がいるんだよ」

ミ,,゚Д゚彡「お前が金に執着するのはそのせいか」

从 -∀从「言うなよ、あのバカどもには。お前は勝手に付いてきて話を聞いちまったから、仕方なく教えてやる」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ……わかった」

 頷くとフサギコはおもむろに腕を伸ばし、1メートル近い差のあるハインの肩にそれを掛ける。
 もちろん実際、思いっきり乗せれば重みが半端ではない。だから触れる程度に、そっとだった。

ミ,,゚Д゚彡「だが聞いちまった以上無視はできん。オレも手伝おう。この戦い、絶対に勝ち抜く」

从 ゚∀从「……当たり前だぜ、このお節介焼きヤローが。コキ使わせてもらうぞ?」

 ハインもそれを嫌がらず、フサギコの厚い胸板を一発叩く。
 二人は心なしか、初めて会った時よりも柔らかい表情を浮かべていた。

第八話・終


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