(,,゚Д゚)オトギリソウの散る頃に”繭”のようです

6 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:26:30.72 ID:l+u4LYcKO

【登場人物紹介】

(,,゚Д゚)…木鼓 靖虎(ギコ ヤストラ)
・助っ人教師として矢峠村にやってきた大学二年生。矢峠村の隣にある矢継村の出身。通称ギコ。

椎名 ゆい(シイナ ユイ)
・ギコの恋人。現在は親戚の法事の手伝いの為に地方へ帰省している。

  _
( ゚∀゚)…長岡 ジョルジュ
・おっぱいおっぱいな高校一年生。祖父をドイツ人に持つ。しかしドイツ語は喋れない。

('A`)…欝田 独男(ウツタ ドクオ)
・ビバ☆不健康な高校三年生。ひょろ長で物静か。本気を出すと学生メンバー随一の駿足を叩き出す。ただし5秒しか持たない。

从'ー'从…渡辺 綾香(ワタナベ アヤカ)
・のほほんとした高校二年生。たぶん頭の中にはタンポポの綿毛が詰まっている。ちょっと広めのオデコが素敵。

7 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:27:23.58 ID:l+u4LYcKO

(゚、゚トソン…都村 園子(トムラ ソノコ)
・旧家出身の本物のお嬢様。高校三年生。知的な口調を裏切らない秀才娘。虫が弱点。通称トソン。

lw´‐ _‐ノv…素直 春(スナオ ハル)
・中学二年生。大胆不適な少女。鈴木と仲良し。タイ米に並々ならぬ敵意を抱いている。通称シュー。

/ ゚、。 /…鈴木 大尾(スズキ ダイオ)
・無表情ながらも可愛らしい少女……じゃなくて少年。スポーツに励んで男らしくなろうとするが、脅威的な運動音痴という壁の前に挫折。中学二年生。

8 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:30:00.10 ID:l+u4LYcKO
(,,゚Д゚)「…………」

(´・ω・`)「…………」

(゚Д゚,,)「…………」プイー

(´・ω・`)「なぜ、目を、逸らす」

(゚Д゚,,)「あんたが全裸だからだ」


(,,゚Д゚)オトギリソウの散る頃に”繭”のようです 〜その参〜



9 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:30:59.60 ID:l+u4LYcKO
突然だが質問をしたい。
貴方がひとりで夜道を歩いている最中に変態と出会ったとしよう。
その変態は田んぼに挟まれた土道のど真ん中で全裸になって仁王立ちしている。
貴方はどうしてもその道を通りたいのだが、道路は威風堂々の全裸漢が塞いでいるので通れない。
さあ、どうする?

ヽ(,,゚Д゚)ノ「いでよ。選択肢ウィンドウ」

ちなみにコレ。心理テストとかじゃなくてマジにどうするか、という問い掛けです。

10 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:31:47.11 ID:l+u4LYcKO

A.力付くでも通る
B.お願いして通る
C.諦めて引き返す

(,,゚Д゚)「じゃあ、Dの『ブチ殺してから通る』」

(´・ω・`)「おい待て。Dってなんだ。そんな選択肢はないぞ」

(,,゚Д゚)「五月蝿い。黙れ変態め。夕方辺りからどうにも辺りがイカ臭いと思ったら、手前の腐臭だったとはな。そこに直れ、踏み潰してやるから」

(´・ω・`)「ふざけるなよ。私は夕方から全裸になったのではない。朝から全裸だったのだ。その誤解を招く発言には強く遺憾の意を示すぞ」

(,,゚Д゚)「余計ダメじゃねぇか。なんだオッサン、自分の肢体にそんなに自信があるのか? それとも夏のフェーン現象で下半身だけでなく頭も腐ったか?
     言っておくけどな。貴様のセガレを超える大物なんざ昨今のジャパンには吐いて捨てるほどいるんだよ」

12 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:33:16.64 ID:l+u4LYcKO
(´・ω・`)「ほう。TOKYOには俺様を超える大物がいると言うのか」

(,,゚Д゚)「NAGOYAだ。都会って聞いてなんでも東京を想像すんなよ。あんかけスパに勝るモンが関東にあんのかコラ」

どうやら謎の全裸漢は俺の挑発に乗ったようだ。
自身の肉体を馬鹿にされたからか、それ俺を威嚇する為か、荒ぶる鷹のポーズをしながらこちらに迫って来る。
想像以上にキモかったので下段キックの射程範囲に入った所を回し蹴りし、田んぼに落としてやった。

(´・ω・`)「ぐ、やるな。だが俺様のフンドシはこの程度で汚れはせん」

(,,゚Д゚)「フンドシ? どこにもしてねーじゃねーか」

(´・ω・`)「してる。馬鹿には見えないフンドシ(と、毛布を売りに来たお婆ちゃんが言っていた)なのだ。
      天才のみが履くことが叶うというこれほどの商品……ジャパネット高田も見れば真っ青になるだろうな。ククククク」

(,,゚Д゚)「ジャパネット高田はお前の馬鹿っぷりに真っ青だよ。お前、AMAZONの『この商品を買った人はこんな物も買いました』リストをチェックするクチだろ」

13 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:34:25.50 ID:l+u4LYcKO
本当に面倒くさい奴だ。
百人集まれば一人や二人はイレギュラーが出るのは当然だが、こういった変態のくせに堂々としている輩が一番厄介だ。
奴の股間が眩しくて直視できない。

(´・ω・`)「いいか。俺は昔、何人かの黒人と風呂に入ったことがある」

(,,゚Д゚)「で、黒人達の下のデカさの前に敗北したってか」

(´・ω・`)「逆だ。俺様が湯場に入ってきた瞬間、奴らは全員タオルを腰に巻いたのさ」

う……それは凄い。

14 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:35:36.09 ID:l+u4LYcKO
(,,゚Д゚)「ふ、ふん。それがどうした。俺の友人にはもっと凄い奴がいるぞ」

(´・ω・`)「ほう」

(,,゚Д゚)「そいつはな。自分のせがれが巨大過ぎるあまりに……」

(´・ω・`)「…………」

(,,゚Д゚)「付き合った女全員にフラれた。『そんなモノを入れたら壊れる』とな。お陰でそいつは今でも童貞だ。
     奴が夜街を通れば風俗店は皆シャッターを降ろす」

(´・ω・`;)「…………」


(`;ω;´)『うわぁあああああああ! どうして……どうしてなんだ!? 大きい方が女の子は悦ぶんじゃないのかよ!!
      親父はポークビッツなのになんで俺だけ……DNAの糞ったれ! 間違っているのは世界のほうだろう!!』

16 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:39:48.66 ID:l+u4LYcKO
すまんシャキン。
またネタ代わりにお前の逸話を使ってしまった。
いつかお前を(性的な意味で)受け入れてくれる素敵な女性が現れるといいな。

しかし、なんと情けないことだろう。
股間をぶるんぶるんさせている変態野郎に俺は友人の武勇伝(?)を話すことしか出来ないのか。

(´・ω・`)「ふっ」

笑ってやがる。
『お前自身はどうなんだ』と言わんばかりの笑みを俺にぶつけている全裸漢。

ふざけるなよ。
確かに俺は人様に自慢できるようなマグナムは持っちゃいないが、あまりあるテクニックによって椎名を悦ばせている(はずだ)。
どれだけでかい武器を背負っていても、使い熟せなければ意味がない。

17 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:40:58.49 ID:l+u4LYcKO
(,,゚Д゚)「見せてやる。火繩銃でもテポドンを撃ち落とせるということを」

(´・ω・`)「ふっ。我が第二の皮を貫けるものなどないわ」

≡(#゚Д゚)「ただのホウケイだろうがああああ!!」

(´゜ω゚`)≡「鋼皮《イエロ》と呼べええええ!!」

从'ー'从「あれれ〜。ショボン先生とギコ先生がいるよ? こんばんわ〜」

(´・ω・`;)「先生……!?」

(;゚Д゚)「だと……!?」


―――――――――――
―――――――――
――――――


19 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:42:46.07 ID:l+u4LYcKO
  _
(*゚∀゚)「うっひゃっひゃっひゃっwwww初対面でそんなことをしあってたのかよお二方wwwww」

(,,-Д-)「う、五月蝿い。俺は日本国民の義務を遂行したまでだ。変態を駆逐するという義務をな!」

(゚、゚トソン「だからと言ってギコ先生までズボンを脱ぐ必要はあったのでしょうか。公然猥褻罪ですよ」

从'ー'从「どっちもたいして大きくなさそうだったけどね」

Σ('A`;)「!?」

20 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:44:02.59 ID:l+u4LYcKO
突然だが質問をしたい。
貴方がひとりで夜道を歩いている最中に変態と出会ったとしよう。
その変態は田んぼに挟まれた土道のど真ん中で全裸になって仁王立ちしている。
貴方はその変態が実が自分と同じ勤め先の教員だと知ってしまう。
さあ、どうする?

(´・ω・`)「Dの『尻穴を拡げて威嚇する』」

(,,゚Д゚)「まえまえから気付いていたことなんだが、あんたって本当は馬鹿だろ」

教師を聖職者だなんてよく言ったものだ。
下眉 和也(シタマユ カズヤ)。
この道十五年というベテラン教師が露出狂の変態魔人だと知ったら、生徒達はどう思うのだろう。
  _
( ゚∀゚)「先生、また全裸で走ってたのかよ。いい加減にしないとトソンにふみ潰されるぜ」

(´・ω・`)「うるせぇ。お前らだって母ちゃんの股から出て来た時は裸だったろうが。人類みな、生まれた時から裸なんだよ」

(゚、゚トソン「理屈になってません」

21 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:45:15.44 ID:l+u4LYcKO
从'ー'从「ショボン先生、お茶が入ったよ〜」

(´・ω・`)「酒はないのか」

('A`)「ないです」

……それなりに順応しているようだ。
村民会館の一室を借りての新人歓迎会は学校の生徒達と教師二人とで準備が進められている。
机を出したり。食べ物を並べたり。
俺も手伝おうと思って早めに来たのだが、主催者は座っていろと一蹴されてしまい、用意されたパイプ椅子に大人しく座る羽目となっている。

(´・ω・`)「渡辺〜。酒は?」

从'ー'从「モララー先生がショボン先生には一滴足りとも与えるなって言われてるよう」

(´・ω・`)「ちょっとだけでもいいだろう。なんなら、お前の下半身から出る愛液でがm(゚、゚トソン「先生、それ以上言ったら尻穴に一升瓶を突っ込みますよ」

22 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:47:12.15 ID:l+u4LYcKO
下眉 和也(シタマユ カズヤ)。三十代後半になるこの男は生徒達からはショボンというあだ名で親しまれているようだ。

生徒達からショボンと呼ばれているこの男。相当に手強い人格の持ち主のようだ。
兎に角、変態。
黙って立っていればガタイの良い筋肉男で通りそうなものだが、何せ口が悪い。
哀愁漂う下向きの眉毛がこの男の毒舌をいっそうシュールにさせている。
ただ、後腐れだとかそういった人間関係固有の確執には無頓着な人間らしく、あの決戦(?)でぶつかった俺にも今は普通に接してくれた。

(´・ω・`)「ギコ。熱くなって服を脱ごうとする辺り、お前ってちょっと変態だよな」

(,,゚Д゚)「あんたにゃ勝てないよ。ところでその手に持ってるカップ酒を頂こうか。どこから持ち込みやがった」

25 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:49:23.62 ID:l+u4LYcKO
まあ、こんなやり取りがショボンにとっては普通の部類なのだろう。
少なくとも生徒達からは(たぶん)愛されていることはよく分かった。

( ・∀・)「おや、もう準備はできてしまっているようだね」

(,,゚Д゚)「ん、あんたは……?」

( ・∀・)「互いに初見、かつ、垢抜けた青年の風貌からして君が木鼓 靖虎クンだね?」

(,,゚Д゚)「あ、じゃああんたが茂羅先生か」

( ・∀・)「正解。矢峠村の教師、茂羅 弘(モラ ヒロシ)だ。生徒達からはモララーなどと呼ばれているね」

26 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:51:54.30 ID:l+u4LYcKO
お菓子が詰まった大きな段ボール箱を抱えてやって来た男は、ショボンとは正反対の印象を受ける二人目の教師だった。

もの静かで理知的。モラトリアムに生きる少女達が黄色い声を上げそうな、大人の風格を宿している。
銀色の細長フレームの眼鏡も痩せ型の体格によく似合う。
要するにイイ男、というわけだ。

(,,゚Д゚)「俺以外のもう一人の助っ人はまだなんすかね」

( ・∀・)「実は先程、その助っ人から連絡があってね。ローカルラインでトラブルが起きて電車のダイヤが乱れているらしい。
       この村を通る最終バスには間に合ったとのことだから、もうじき着くだろう」

27 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:53:48.49 ID:l+u4LYcKO
从'ー'从「モララー先生。お腹空いた〜」

(・∀・ )「シューちゃん達が着くまで我慢してね。あっ、長岡クン! 勝手に封を開けちゃ駄目だよ」

lw´‐ _‐ノv「中学組到着。皆さんお揃いのようで」

/ ゚、。 /「ようで」

手に巨大なクラッカーをぶら下げたシューと鈴木が揃って会場に到着した。
学校は制服登校なので当然分からなかったのだが、シューは何やら服のセンスが光っているようだ。
ボーイッシュを基調とした服装は短パン姿の鈴木と合わせてよく似合っている。

( ・∀・)「よぉし。じゃあ主賓が一名欠けてしまっているけど、歓迎会を始めよう。皆、コップは持ったかな? ギコ君、スピーチを」

(´゚Д゚`)「え〜、名古屋から来たギコです。お前らI・NA・KA者はみんな死ね!!」

(#゚Д゚)「中途半端なモノマネをするな。そのマイクを寄越せ!」

28 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:55:38.07 ID:l+u4LYcKO
小さな壇上で誰も望んでいないパフォーマンスをする馬鹿からマイクを引ったくる。
昼間に顔合わせをしている連中が殆どなので、いまさら自己紹介というのも変だが、振られたからには何か気の利いた台詞を吐かねばなるまい。
下手な挨拶もそこそこに、乾杯の音頭をどう取ろうかと口を開きかけた時だった。

川;゚ -゚)「遅れた! 申し訳ない!!」

バタン、という音と共に女性が一人会場に駆け込んで来た。
よほど慌ててやって来たようで、ハアハアと肩を上下させながら「ようこそ」と微笑む茂羅に頭を下げている。

29 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:57:01.53 ID:l+u4LYcKO
  _
(*゚∀゚)「うっほwwww超美女www」

(゚、゚トソン「……あの人がもう一人の新しい先生でしょうか」

从'ー'从「綺麗な人だねぇ。きょにゅーだよう」

lw´‐ _‐ノv「また新参か。米の洗礼を与えてやらねばな。ダイオード君、後で手伝ってくれたまへ」

皆が好き勝手な感想を口にする中で、俺は唯一人、違う反応を示していた。
絶句、とでも言うのだろうか。開いた口が塞がらなかった。

俺は彼女に見覚えがあったのだ。

31 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 22:58:34.07 ID:l+u4LYcKO
腰まで伸びた黒髪。細く、長い両足。優しく、力強い黒瞳。
嗚呼、絶対に見間違える筈がない。
まさかこんな形で再開することになるとは露にも思わなかった。

三年前と少しも違わぬ姿の彼女は―――――――

(;゚Д゚)「クー…素直 空(スナオ クウ)」

川 ゚ -゚)「君は……ギコ……!?」

( ・∀・)「えっ。何? キミ達知り合いなの?」

互い、見つめ合う俺達を交互に見遣りながら茂羅は困ったようにハハハ、と笑った。


**** ****


川 ゚ -゚)「いやあ。こんな事があるものなんだな。私以外にも助っ人がいるとは聞いていたが、まさか君とはね」

(,,-Д-)「こっちだって驚いたさ。符逆さんめ……あの人、絶対に知ってて黙っていたに違いない。昔からちっとも変わらないぜ、あの人は」

川 ゚ -゚)「ふふ。ギコの方は少し変わったな」

(,,゚Д゚)「そ、そうか?」

33 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 23:01:39.28 ID:l+u4LYcKO
宴もたけなわ。
歓迎会主役の座をいつの間にか生徒達に奪われてしまった俺とクーは、会場の外に設けられたウッドテラスに避難していた。
窓越しの室内から聞こえるシューの特大クラッカーの爆音を耳に流しながら、液体が無くなったコップの氷をからからと転がす。

川 ゚ -゚)「ああ。私と付き合っていた頃より大分垢抜けた感じだな」

(,,゚Д゚)「…………」

素直は俺が高校時代に交際していた元恋人だ。
女性なら誰もが羨むプロポーションと170センチ強もある身長は生まれながらのモデル体型を有しており、周囲の男共は高嶺の花だと、ろくなアタックもせずに白旗を振っていた。

人のことは言えんが、皆甲斐性なしだったわけだ。
そんな甲斐性なしの野郎ばかりがいる学び屋で、恋病を患う乙女が自ら白馬の王子を捜しに発つのは時間の問題だったのだろう。

34 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 23:02:55.23 ID:l+u4LYcKO
川 ゚ -゚)「確か私の方から告白したんだっけ」

(,,゚Д゚)「おう。で、フッたのもお前だった」

川 ゚ -゚)「恋人としての相性はなかなか良い方だったと思うぞ。うん」

(,,゚Д゚)「じゃあ何で別れたんだよ」

川 ゚ -゚)「受け身過ぎたんだよ、ギコは。精神的な意味でな」

私達は上手く行き過ぎている。

こんな理由が別れの原因だなんて、他人が聞けばどう思うことか。
しかし一度恋愛に興味を無くしてしまったジュリエットに対し、
情けないロミオは木々から窓へ飛び移る勇気も持てず、結局は彼女が去っていく様を見守るしかなかった。

35 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 23:04:18.76 ID:l+u4LYcKO
川 ゚ -゚)「怨んでいるか。私のことを」

(,,゚Д゚)「まさか。あの後、いろいろと自分自身に思うこともあってな。クーの考えが少しだけ分かった気がしたよ。確かに俺は受動的過ぎた……かも」

川 ゚ -゚)「なあギコ。話が変わってしまうが、私は茂羅さんと縁があって今回の件を引き受けたんだ。
     ただ、この矢峠村に来るのは初めてでな。君はこの辺りの出身なんだろう?」

(,,゚Д゚)「この村の隣の矢継村だな。って言っても今じゃ水の底だが」

川 ゚ -゚)「そうか。良ければ案内してくれないか?」

36 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 23:06:57.12 ID:l+u4LYcKO
川 ゚ -゚)「まだ夜の八時だ。九時には歓迎会もお開きになるだろう。その後、学校まで連れて行ってくれ」

夜風が生暖かい。
少し、心拍数が上がった。

(,,゚Д゚)「なんだよ。デートのお誘いか?」

川 ゚ -゚)「いや。私のむこう数週間の住まいが学校の教員宿舎なんだ。場所が分からん」

(,,-Д-)「……分かった」

(´゚ω゚`)「ギコォオオオオオオ!! お酒が足りないよぉおおおおお!!」

(#゚Д゚)「うるせぇ! いい大人が大声を出すな! 酒臭っ! 茂羅さん、あんたこの人にアルコール呑ませのか!?」

(;・∀・)「い、いや。炭酸しか与えていない筈だが……」

38 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 23:09:04.71 ID:l+u4LYcKO
いよいよズボンのベルトをに手を伸ばし始めた残念眉毛に跳び蹴りを喰らわせ、宴は佳境へと入っていく。

炭酸飲料で酔っ払うショボン。
同僚の暴走を抑えようとする茂羅。
教師の暴走に巻き込まれてふき飛ぶ欝田。
やんやんやと悪乗りした野次を飛ばす長岡。

室内に打ち上げ花火を持ち込もうとするシュー。
それを手伝う鈴木。
野郎共の蛮行に呆れてため息をつく都村。
その傍らでくすくすと笑う渡辺。

俺は彼等と、そして今、俺の隣で一連の騒ぎを柔らかい眼差しで見つめているクーとこの夏を過ごすんだ。

39 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 23:11:02.79 ID:l+u4LYcKO

川 ゚ -゚)「なあ、ギコ」

(,,゚Д゚)「ん?」

川 ゚ー゚)「良い夏にしような」

(,,゚Д゚)「……!」

(*゚Д゚)「おう!」

地獄ともつかぬ、殺戮と憎悪の渦に巻き込まれていくとも知らずに。

40 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 23:12:35.78 ID:l+u4LYcKO

   **    **   **

Midnight Event...
⇒椎名 唯

(,,゚Д゚)】「もしもし。しぃか?」

『むごっ。ゲホゲホ……ん!』

(;゚Д゚)】「あ、食事中だったか」

『……よし、飲み込んだ。ゴメンゴメン。蕎麦が喉に詰まっちゃって』

(,,゚Д゚)】「ははは。しぃは何かあると口にある物を一気に飲み込もうとするよなあ。気持ちは分かるが、身体によくないぞ」

『いちおー、自覚してるんだけどね』

(,,゚Д゚)】「今日、学校の先生と生徒達が歓迎会開いてくれたんだよ。なかなか楽しかった」

41 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 23:13:52.58 ID:l+u4LYcKO
『アットホームな職場みたいだね。先生は何人いるんだっけ』

(,,゚Д゚)】「俺を入れて四人だな」

『へぇ。若い先生はギコ君だけかな?』

(,,゚Д゚)】「……いや、歳の近い人もいる……かな」

『ギコ君、女子生徒に手を出しちゃ駄目だよ。メアド公開禁止だからね』

(,,^Д^)】「手厳しいなww。大丈夫、しぃ以上の女の子なんてこの世には仲間由紀江ぐらいしかいないから」

『うう〜。もう少し髪質が良ければ私だって伸ばすのに……っていうか、今の台詞は恋人に言うモノじゃないよ!』

42 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 23:16:02.20 ID:l+u4LYcKO
(,,゚Д゚)】「ゴメンゴメン。ジョークだって(やはり、しぃにボケ耐性は皆無か……)」

『ん? なに?』

(;゚Д゚)「いや。こっちの話だ」

(,,゚Д゚)「そういえばさ。しぃはオトギリソウって知ってるか? 植物の名前なんだけど」

『オトギリ……さあ、聞いたことないけど。それがどうかしたの?』

σ(,,゚Д゚)「ん〜。いや、あの花には幻聴作用とかあるのかなあって思って」

『なんか意味深だね。ちょっと調べてみるよ』

(,,゚Д゚)】「おお、頼むよ。そっちは大丈夫なのか?」

43 名前: ◆LLLzw1dMIQ 投稿日:2009/09/06(日) 23:18:02.00 ID:l+u4LYcKO
『おばさんの調子が良くないみたい。暑さとかのせいもあるんだろうけど、やっぱり精神的な疲労が溜まっていたみたいで……』

(,,゚Д゚)】「長年連れ添ったパートナーがいなくなってしまったんだ。無理もないさ。しっかり守ってあげないと」

『うん。そのつもり』

(,,゚Д゚)】「じゃあ、もう遅いからこの辺で」

『うん。分かった。また明日電話してね。おやすみ』

(,,゚Д゚)】「おう、また明日な」

(,,-Д-)~゚「ふぁ……寝るか」


(,,゚Д゚)オトギリソウの散る頃に”繭”のようです 〜その参〜 完


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