( ^ω^)ブーンは呪われたようです

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/23(木) 16:31:08.71 ID:6fY1zSrS0

第三話「コソ泥兄弟の誤算」


ブーンが地平線の先に消えた頃、村では人々がそれぞれの仕事に戻り始めていた。
そんな中、その二人は人の波に流される事なくそこに立ちすくんで何やら相談をしているよう。

(´<_` )「ときに兄者。この村にさりげなく潜入するところまでは完璧に出来たが、これからどうするんだ?
この村は何か財宝が眠っている匂いがするって言ったのは兄者だろう」

( ´_ゝ`)「そんな事を言ってもだな、弟者よ。ここまで何も無いとは思わなかった。
失敗だ。
しかし慌てることはない、えてしてこういう村は個人個人の家にたんまりと財産が隠されているものだ」

(´<_` )「そうなのか、流石兄者。じゃあたいていの者が畑に居る今がチャンスだな」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/23(木) 16:32:13.53 ID:6fY1zSrS0

(´・ω・`)「よし、じゃあ今のうちに侵入するぞ」

( ´_ゝ`)「よしきた。じゃあ弟者とお前は見張りを頼んだぞ」

(´・ω・`)b「分け前はちゃんと三人分だぜ」

( ´_ゝ`)「分かってるとも」

(´<_`;)「……………」

(´・ω・`)「どうしたんだ、弟者」

(´<_`;)そ「え……」

( ´_ゝ`)「弟者、呆けてるぞ」

(´<_`;)「え、いやあの……」

(´・ω・`)「よし、兄者よ。この家なんていいんじゃないか?」

( ´_ゝ`)「おお良い感じだ。でかしたぞ、えーと…」

(´・ω・`)「ショボンだ」

( ´_ゝ`)「そうかショボンか。」

(´・ω・`)「ここは僕が見張ってるから、弟者と一緒に行ってくるといい」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/23(木) 16:33:26.17 ID:6fY1zSrS0
( ´_ゝ`)「そうか、恩に着る」

(´<_`;)「あ、兄者…」

( ´_ゝ`)「行くぞ弟者」

突然話に割り込んできたショボンに警戒を寄せることもなく、兄者は無理矢理弟者を連れてショボンの指差した家に入って行った。
見る限りでは全く人の気配がない。
部屋の奥には典型的な形状の宝箱が置いてあった。
それを見た兄者はうれしそうに宝箱に近づき、腕を組んで立っていた弟者は兄者を呼び止めた。

( ´_ゝ`)「どういうことだ弟者。ここに来てまさかの裏切りでもするつもりか?」

(´<_`;)「違うよ兄者、ってか誰だよさっきから結構フレンドリーに話に割り込んで来てた奴は?」

( ´_ゝ`)「ショボンだって名乗ってただろう。聞こえなかったのか?」

(´<_`;)「そんな事を聞いてるんじゃないんだよ兄者、さっきの奴に俺たちが世を騒がせてる盗賊兄弟だって事、バレてるぜ!」

( ´_ゝ`)「そんなことはない。バレてるなら何故、俺たちが盗みに入るのを止めなかった?
逆にこの場所を勧めてくれたじゃないか。いい人なんだよ、ショボンは」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/23(木) 16:34:24.87 ID:6fY1zSrS0

(´<_`;)「んなわけないだろ!いいから早く逃げよう、ヤバイ匂いがするんだ」

( ´_ゝ`)「仕方ない、お前がそこまで言うならこの家の財宝を盗んでから逃げよう」

(´<_`;)「分かった。じゃあ早く回収しよう」

二人のコソ泥兄弟は鞄や服の間に入れられるだけ宝石や金貨を詰めて、ショボンが見張っている扉の反対から外に出ようと話し合った。
大幅に体重が増えた彼らはなるべく気配を消し、盗みに入った家から一歩兄者が足を踏み出した。
しかしなぜか二歩目の足がなかなか踏み出されることなく、兄者は立ち止まっている。
すぐ後ろにいた弟者は、何故兄者が立ち止まったのかが分からずに怪訝な顔で兄者の肩越しから前方を見る。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/23(木) 16:36:04.33 ID:6fY1zSrS0
(´・ω・`)ノシ「やあ」

兄者と弟者の前には、ショボンが立っていた。
そして少し離れたところにはいつ集まったのか村人全員が並んで、冷や汗を流す流石兄弟をじっと見ている。

(;´_ゝ`)「う……」

(´<_`;)「あ、兄者……」

(´・ω・`)「この毒薬はサービスだから、よかったらまず飲んで落ち着いてほしい」

(;´_ゝ`)「に……逃げるぞ弟者!」

(´<_`;)「うわあああああああああああああ」

(´・ω・`)「逃がさないよ、よし、みんな投擲開始!!」

泡をくって盗みに入った家に戻り、反対側の扉から逃げる流石兄弟。
村人は彼ら目掛けて石を思い切り投げつける。
この村のどこにこんなに石の貯蓄があったのだろうかと弟者が思うほど、石の攻撃は兄者と弟者の体力と気合を奪っていく。
必死に逃げ回る兄者の目に、村の出口を示す門が見えた。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/23(木) 16:37:01.80 ID:6fY1zSrS0

(#)_(#)「弟者!我らの希望がもうすぐそこに口を開いて待っている!もう少し頑張るんだ!」

(#)_(#)「まずい兄者、俺たちの区別が大変付きにくくなって――あだだだだだ」

弟者の背中に脳みそくらいの大きさの石がクリティカルヒット。
気が付けば二人の体は村の門を越え、草むらの中に投げ出されていた。
しかし石の追撃は止まず、村の人々が鍬などを用意し始めるのが見える。
その光景を目の当たりにした兄者は、顔面蒼白になりながらも腰の抜けた弟者の尻を引っ叩きながら更に遠くへと走った。

――――――――――――

(#)<_`;)「兄者……もういいだろ…」

何時間必死に走っただろうか、弟者がついに力尽きて地面に倒れこんだ。
そこでようやく兄者も自分の体力の限界をとうに越えていたことに気づいて弟者の隣に座り込んだ。
二人とも息も絶え絶えだ。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/23(木) 16:38:42.79 ID:6fY1zSrS0
(;´_ゝ`)「…今回は危なかったな……」

(´<_`;)「ああ、でも結構稼げたんじゃないか?」

何気なく弟者は、ポケットからはみ出ていた金貨をつまんで手のひらに乗せる。
兄者も、ニコニコと笑いながら今回の(一方的)死闘を思い出しつつ自分も盗んできた宝石を太陽の光に翳し、

(;´_ゝ`)「ああああああああああああああああああ!!!!!!!」

(´<_`;)「ああああああああああああああああああ!!!!!!!」

二人分の絶叫が辺りの空気を震わせた。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/23(木) 16:41:42.01 ID:6fY1zSrS0
―――――――――――――

その頃、コソ泥兄弟を撃退させた村の人々は満足そうに石を回収しながら村長に話しかけていた。

('、`*川「そういえば村長さん、結局金貨とかいろいろ盗られちゃったけど…いいんですか?」

(#)´・ω・`;)「うん、だってあれはニセモノだしね」

('、`*川「…………ニセモノ?」

(#)´・ω・`)「うん。まさか大切なものをあんな見つけやすい所に、あんなあからさまな箱に詰めて置いとかないでしょ?
あれは罠だよ、まさか引っかかる人がいるとは思わなかったけど…間抜けなコソ泥もいたもんだね」

('、`*川「……ていうことは先ほどの二人は…」

(#)´・ω・`)「なにも盗ってないのにフルボッコwwwwざまぁwwww」

('、`*川「……。……ざまぁwwwww」

――――――――――――――

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/23(木) 16:42:39.31 ID:6fY1zSrS0

結果、何も盗らずに体中いたる所にたんこぶや痣を作った流石兄弟。
悔しさに涙するも、今さら報復に戻る勇気も元気も無い訳で。
仕方なく二人は傷ついた体に鞭打って今日の寝床を確保する為、一本道を歩くことになった。
今日まとまった金が入ると思い込んで使い切り、残る金は弟者のヘソクリの金貨一枚のみ。
この道の先に町があるにしても、きっとそれは夜の帳が降りた頃だろう。
盗みに入るにはちょっとリスクが高い。
それにこんな金では二人宿に泊まるのは不可能だ。

必然的に、今日は野宿になるだろうな……。

弟者はそこまで考えてから憂鬱な気分になった。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/23(木) 16:44:32.26 ID:6fY1zSrS0
( ´_ゝ`)「弟者、少し急ごう。この辺りは日が暮れると狼が出ると聞いた覚えがある」

あ、これ死んだ。

歩く速度を速めた兄者の言葉を聞き、弟者は一人ひそかに死ぬ覚悟を決めた。

結局二人が町に辿り着いたのは、星が瞬き、月が闇を支配している時間。
民家の明かりはぽつぽつと消えて、談笑の声も聞こえない。
町の中心部にあった大きめの建物からは、煌々と明かりが漏れていた。恐らくそこが宿屋なのだろう。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/23(木) 16:45:34.78 ID:6fY1zSrS0

(´<_` )「兄者、金はないのか?」

( ´_ゝ`)「無いな」

(´<_` )「ならば仕方がない」

( ´_ゝ`)「今日は野宿だな」

(´<_` )「いいや、俺は宿に泊まらせてもらう」

( ´_ゝ`)「なんだとそれはどういうことだ金は一体どこにある」

(´<_`;)「おK、落ち着け兄者。俺はこんなこともあろうかと前々からへそくりを貯めていた。
そして、今日のたった今そのへそくりを使う時が来た。分かるな?」

( ´_ゝ`)「おいおい俺はどうなるんだ弟者よ」

(´<_` )「狼たちと共に眠るが良いさ」

(;´_ゝ`)「ちょwwww待てwww俺明日までに骸骨になっちゃうwwww」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/23(木) 16:46:36.91 ID:6fY1zSrS0

(´<_` )「世の中弱肉強食だぜ、兄者。その腰にぶら下がってる獲物振り回してりゃ狼だって寄ってこないさ」

( ´_ゝ`)「弟者、俺は今真面目な話をしてるんだぞ。下ネタは控えろ、空気を読め馬鹿者」

(´<_`;)「誰がんなモン振り回せっつったよ、真っ先に食い千切られろ」

( ´_ゝ`)「じゃあ何だ?お前はこの兄者を狼と一緒に過ごさせて自分は安全な室内で寝るというのか」

(´<_` )「金が無いんじゃ仕方がないだろう」

( ´_ゝ`)「よし良い事を考えたぞ。お前のその金と、今日俺が盗んできた宝石を交換しようではないか」

(´<_` )「冗談はよせ、兄者。そりゃあニセモノだろう」

( ´_ゝ`)「たとえニセモノだとしても、俺にはこの宝石が一級のダイヤモンドのように輝いて見える。苦労の甲斐があったというものだ」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/23(木) 16:47:23.07 ID:6fY1zSrS0

(´<_` )「そうか、じゃあ兄者はそのダイヤモンドの如き輝きを放つ宝石で宿に泊まればいい。俺は疲れたんだ、ふかふかのベッドで寝たい」

( ´_ゝ`)「しかしこの宝石は―――――」

静かな口論を繰り広げる流石兄弟。
村の入り口を照らしている松明が燃える中、真正面にいる弟者の後ろになにやら光る目が見えて急に兄者は口を噤んで後ずさりし始める。
たった今まで物凄い必死になりながら食い下がっていた兄者の様子がおかしいのに気づいた弟者は、少し嫌な汗をかいて兄者に詰め寄った。

(´<_`;)「な、何だよ兄者…何で後ずさりしてるんだ…」

(;´_ゝ`)「くぁwせdrftgyふじこlp;@:…あばばばばばばばばば」

Σ(´<_`;)「あ、兄者!?」

風のように走って行ってしまった兄者の背中を為す術なく見送った弟者。

――兄者をあそこまで震えあがらせた程の危険が自分のすぐ後ろに迫っている。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/23(木) 16:48:05.78 ID:6fY1zSrS0
その緊張が嫌でも頭の中に恐ろしい姿を描かせる。
少し強めの風が吹いた時、獣のような匂いが弟者の鼻腔をさした。
なんとなく獣特有の息遣いが聞こえるのも、きっと気のせいではないのだろう。
弟者は震える手で右腰に差した短剣を抜こうとした。
しかし、

Σ(´<_`;;)「阿波ばば馬場bぐぁr」

あまりの手の震えように、剣は弟者の手から離れて落ちてしまった。
後ろにいるであろう獣の息遣いは、もうすぐ近くから聞こえる。

これ以上余計な動きをして獣を刺激するな――

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/23(木) 16:49:07.03 ID:6fY1zSrS0

弟者の本能がそう警告を告げるが、無防備な背中を晒して何もせずに動くなというのは無理な話だ。
何もする気がなくとも、弟者の頭からつま先まで全身が震える。
汗が毛穴から吹き出す。
蛇に睨まれた蛙の心境が、今なら痛いほど分かった。

獣の気配が移動する。
いよいよ喰われる、と目を瞑っていた弟者の背後にいた獣は、いつしか弟者の正面にいた。

(´<_`;;)「hg火:うtおいp@Ieo」

よく分からないことを叫ぶ弟者。
今まで弟者に痛いほどの圧迫感を与えていた獣が、想像していたよりも大きい体だったからだ。
その悲鳴を合図に、獣は戦闘体勢に入った。
大きな体を低く屈めさせ、目は間違いなく弟者を射抜かんばかりに暗闇の中でも爛々と輝いて非力な生肉の塊を狙っているように見えた。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/23(木) 16:50:05.49 ID:6fY1zSrS0
万事休す。
兄者よ、呪い殺してやる。

弟者は本日二回目にして腰を抜かし、その場に尻餅をついた。
獣は弟者に向けて走り、思い切り跳躍する。

そして、絶叫が町にこだました。

―――――――――――――

(;´_ゝ`)「ああああ弟者…。俺を恨まないでくれ……悪気は無かったんだ…。そして同時に、勇気もなかったんだ…」

どこかの家の屋根の下。
そこに兄者は体育座りをして震えていた。
遠くから弟者の悲痛な断末魔が空気を裂いて聞こえてきたが、助けに行く度胸も勇気も体力ももう兄者にはなかった。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/23(木) 17:04:55.65 ID:6fY1zSrS0



―――――――――――


思い出せば、世を騒がせた流石兄弟はいつも二人で一つだった。
Xにiが付くように、ホームズにワトソンが付くように、兄者と弟者は二人で一つだった。
弟者が見張り、兄者が盗む。時にはその反対。
警備に見つかった時は、お互いに背中を預けて短剣を振るった。
案外うまくやっていけていたとも思う。

それが今、自分が逃げてしまったばかりに弟者が…。

( ´_ゝ`)「………………」

(;`_ゝ´)「う…うわああああああああああああ!!!!!!!弟者の仇いいいいいい!!」

兄者はすっかり力の抜けた足を引っ叩いて、短剣を抜いた。
先ほど弟者の断末魔が聞こえた方向に向けて走る。

そして、兄者が見たものはにわかには信じがたい光景だった。

( ´_ゝ`)「………………」

兄者の目の前には、弟者がいた。

大きな犬と笑いあっている、弟者がいた。

( ´_ゝ`)「…………楽しそうじゃないか」


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