( ^ω^)ブーンは呪われたようです

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:34:44.87 ID:OTI1XIeyO

第五話「精霊と妖精」

あの化け物が現れてから、今まで和やかに進んでいたはずの旅路が一瞬にして嫌な緊張を伴うものになってしまったとブーンは感じていた。
道の脇に生い茂る草むらがカサカサと音を立てれば、三人は一気に戦闘体勢に入る。
緊迫した三つの視線の先に現れるのがウサギや狐だった時の安堵は言葉にしがたく、出てきたモノがあの化け物だった時の恐怖はしばらく慣れそうにない。
実際に、西に向かうにつれて化け物の数は格段に増えて来ている。

物音がしたら確実に化け物が現れる、という状況になった頃―――

その白い森は三人の目に映った。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:36:47.15 ID:OTI1XIeyO
(∪ ^w^)「おっ!兄者に弟者!あの森に寄っていいかお?」
( ´_ゝ`)「カリフラワーみたいな森だな」
(´<_` )「別にいいが、何かあるのか?」
(∪ ^w^)「妖精だか精霊がいるって村長さんにきいt「ぐえっ」
急にブーンが言葉を切った。
兄者も弟者もブーンも、嫌な汗をかいて誰も何も言わない。
(∪;^w^;)「お…………」
ブーンがそっと前足を移動させた。
移動させた足の下には、小さな少女が仰向けに転がっていた。
(∪ ^w^)「」
( ´_ゝ`)m9「あーあ、ブーン殺したー」
m9(´<_` )「あーあ、ブーン殺人者ー」
(∪;^w^)「おおおおおお!!!ご、ごめんお!大丈夫かお!?」
動かない少女の体を、ブーンは鼻でつつく。
反応はない。
兄者と弟者も囃し立てるのを止め、ブーンの横で少女を見下ろした。
(∪;^w^)「お…。や、ヤバイお…」
( ´_ゝ`)「幼女!」
(´<_` )「…にしちゃ、ちょっと色々と小さすぎないか?」
弟者はそっと少女をつまみ上げる。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:37:35.11 ID:OTI1XIeyO
灰色のボサボサの髪、黒いワンピース、身長はどう見ても30センチ無い。
それに何より三人の目を釘付けにしたのは、背中から生えている二枚の羽だった。

( ´_ゝ`)「最近のコスプレって進んでる!」

(´<_` )「違うだろ。まぁ、人間ではないし…。妖精か精霊なんだろうな。」

(∪;^w^)「この子何でこんなとこで寝てたんだお?」

从;‐∀从「う……」

図ったかのようなタイミングで目を開けた少女。
自分がどういう状況に置かれているか、理解出来ないようで彼女はキョロキョロと辺りを見回し、

从 ゜∀从「うお!!」

ようやくつまみ上げられている事に気づいたらしく、少女はじたばたと暴れだした。
しっちゃかめっちゃかに暴れる少女の視線にブーンが映る。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[やりづらい] 投稿日:2009/07/27(月) 17:38:21.61 ID:OTI1XIeyO
从;゚∀从「うわああああ犬!!!?離せええ!ちょっ離せっつってんだろ!!」

(´<_`;)「…………」

(*´_ゝ`)「ちっさいなぁー、君名前は?どっから来たの?何でこんなところに倒れてたの?」

从 ゚∀从「名前!?テメーらみたいな不審者に教える訳ないだろ!てか何なんだよお前ら!早く離せ!さもないと『風』呼ぶぞ!!」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:41:03.90 ID:OTI1XIeyO
(∪ ^w^)「僕は犬じゃなk」

从;゚∀从「へっ!もう遅ぇよ、すぐに『風』はお前らに牙を剥くぜ!ごしゅーしょーさま!」

少女の低い声。それと同時に吹いた強風。
立っていられないほどの風に、ブーン達を襲う石や砂の雨。
弟者は思わず少女を離し、甲高い笑い声を残して少女は風の中に消えてしまった。
強風に喘ぐこと数分。
あの強い風は突然ぱったりと止み、何事もなかったかのように辺りには優しい風が草を撫でるように吹く。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:41:50.14 ID:OTI1XIeyO
(∪;^w(#)「な…何だったんだお?!」

(#)_ゝ`)「あの幼女、奇異な術を使うぞ!弟者もブーンも気をつけろ!」

(´<_(#)「それはもう少し早く言ってほしかったって感じだな。それよりブーン、あの森に行くんだろ?」

(∪ ^w^)「お!」

大きくブーンが肯定し、三人は遠目から見たカリフラワーのような白い森に向かって歩き始める。
そして気づく異変。

( ´_ゝ`)「祭りでもやってんのかね」

(´<_` )「……」

(∪ ^w^)「……」

明らかに祭りの喧騒には聞こえない、悲鳴や怒号。
それと、獰猛な猛獣らしき声。
森の外周を囲っている白い木々の間を縫って、時折煙が吐き出される。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:42:37.40 ID:OTI1XIeyO
(´<_` )「出来れば入らないという選択をしたい」

(∪ ^w^)「お…」

( ´_ゝ`)「さっきの幼女いないかな」

なんとなく森に足を踏み入れづらい空気の中、何も感じていないのか兄者は森の中に続く細い道を先陣きって歩いていく。
頼もしいのではなく、好奇心とさっきの少女に対する不純な気持ちからの行動なのはもうブーンも弟者も分かりきっている。
残された二人は、ため息をついてからゆっくりと兄者の後を追った。

(´<_` )「凄いな、妖精と精霊の戦いか」

白い木に隠れた三人が目の当たりにしたのは、異種間の戦い。
弟者の言うとおり、妖精と精霊の戦争ということで間違いないだろう。


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:44:41.52 ID:OTI1XIeyO
両者とも一歩も引けをとらない状況。
三人の目の前で、真っ白な髪の少女が右腕を前に差し出した。
身長や髪の色からして、彼女は精霊だろう。
彼女の視線の先では、足を怪我した妖精の少年が必死に逃げようと土を掴んでいる。
まっすぐ伸びていた精霊の右腕は赤い光に覆われ、その光は遠目から見ても分かるくらいに熱気を帯びていた。
右腕を覆う光が一層強くなった途端、精霊の少女は右腕を軽く振る。
少女から剥がれた光は妖精の少年に一直線に向かい、その体を舐めた。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:45:36.99 ID:OTI1XIeyO
「ああああああ!!!」

光に全身を覆われた妖精の少年は、耳を塞ぎたくなるような絶叫をあげて辺りを転がりまわる。
風に乗って、焦げ臭い匂いが辺りに充満した。
少年が転がりまわる度に黒く焦げ、崩れていく四肢。
撒き散らされる赤黒い血。

(´<_`;)「……」

( ´_ゝ`)「エグい」

(∪;^w^)「何で戦ってるんだお…」

( ´_ゝ`)「さあ…。でも話し合って解決しなかったからこういう方法で解決しようとしてるんだろ?」

(∪;^w^)「でも…」

( ´_ゝ`)「それに関しちゃ俺たちにはどうすることも出来んさ」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:46:37.33 ID:OTI1XIeyO
お互いに本気なんだ。
兄者はそう締めてから、漂ってくる血の匂いや悲鳴に耐え切れず吐いてしまっていた弟者の背中を擦ってやっていた。
ブーンは一人、納得出来ないといった様子で眼前に今も広がり続ける地獄絵図を見て――――

(∪ w )「わおおおおおおおおおおおおん!!!!」

出せるだけの声を腹から出して、思い切り吼えた。

( ゜_ゝ゜)「」

( ゜<_゜ )「」

絶句した流石兄弟。
突然戦いの手を止めた妖精と精霊。

( ゜д゜ )

(∪ ^w^)「こっち見んな」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:47:29.11 ID:OTI1XIeyO
(;´_ゝ`)「おいおいブーン何やってんだよ、あいつらの標的がこっちに向いたらどうすr」

兄者の言葉にかぶさるように森の中で立て続けに聞こえる悲鳴。
それも、恐怖の念がありありと滲み出ている本当の悲鳴。
がさがさと辺りから葉を揺らす音と共に、さきほどまで本気で殺し合いをしていた妖精と精霊は蜘蛛の子を散らしたように逃げ回る。
何が起きたのか分からないブーンたちは為す術もなくただ立っていることしかできなかった。

(∪;^w^)「まさかここまで効果的だとは思わなかったお…」

(´<_` )「止めようとしたのか」

( ´_ゝ`)「それよりどうするんだ、誰もいなくなっちゃったぞ」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:48:20.87 ID:OTI1XIeyO
辺りには、もう妖精だか精霊だか判別不能なまでに破壊された遺体が転がっているだけ。
生き物の姿は見受けられない。
なんか大変な事をしてしまったのでは、という思いを抱えてブーンは森の中心へと歩き出す。
その後を、ちぎれた腕や足を踏まないように気をつけながら続く兄者と弟者。
地面に吸収しきれなかった血の海が、歩く度にピチャピチャと音を立てる。
8本分の足音が静かな森に響いた。

―――――――

(´<_` )「なんか今声が聞こえなかったか?」

森の中心を目指し、歩くこと数分。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:49:09.60 ID:OTI1XIeyO
不意に弟者が足を止めて生き物の気配を訴えた。
その問いかけに答える代わりに、足を止めて耳を済ませるブーンと兄者。

(∪ ^w^)「聞こえるお」

( ´_ゝ`)「聞こえるな」

逃げていない人がいるのだろうか。
ブーン達は、森の中心から進路を変えて声の聞こえた方面に向かう。
途中、木の根に足を取られた兄者がすっころんだり、
兄者の影を敵だと勘違いしたブーンが思いきり兄者に噛み付いたりとハプニングが起こったが、
それでもなんとか三人は声が聞こえる地点の近くまでたどり着いた。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:50:05.76 ID:OTI1XIeyO
それは比較的木が少なく開けた場所。そこで彼女たちは未だに戦いを続けていた。
灰色の髪に、黒いワンピース。背中に羽の生えた―――

(∪ ^w^)「さっきの子だお…」

( ´_ゝ`)「あっ、幼女だ!」

(´<_` )「なんかやばくないか?」

――――『風』を呼ぶ。

ブーンが踏み潰し、弟者がつまみあげ、そう言った少女が今、ブーン達の前でボロボロになりながら戦っていた。
相手は少年。
精霊だろう、10歳の人間と同じくらいの身長の彼も少女に負けないくらいにボロボロで、ほとんど互角の戦いを今の今まで繰り広げていたと思われる。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:50:53.68 ID:OTI1XIeyO
从;゚∀从「テメーやるじゃねーか…」

(;,,゜Д゜)「お前もな…ゴルァ」

満身創痍になってまで戦いを止めない、妖精と精霊の種族の違う二人。
そして、冗談は絶対に通じない本気の殺し合い。
まだ顔に幼さの残る少年少女のその表情はなんとなく滑稽で、
だからこそ声を掛ける隙がなくて、ブーンはどうすることも出来ないまま異種族の戦いをただ見ていた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[これで半角になったか] 投稿日:2009/07/27(月) 17:53:53.70 ID:OTI1XIeyO
从;゚∀从「『風』!」

(,,゚Д゚)「『水』!」

少女の手が天に伸び、ブーン達の鼻先を風の刀が薙いだ。
木を抉りながら風の刀は精霊の少年を猛スピードで貫こうと牙を剥く。
しかし少年もただ黙ってやられはしない。
近くにあった泉の水を操って風の攻撃を防ぎ、風の攻撃が止んだと同時に水の塊を少女に向けて放った。
少しだけ焦ったような顔をする少女。
しかし、彼女はまだ片手に残しておいた風の塊を投げるような動作を伴って、水の塊に向かわせる。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:55:23.76 ID:OTI1XIeyO
妖精と精霊のちょうど中心辺りで風と水の塊はぶつかり、大きな音を立ててぶつかり、破裂。

从;゚∀从「うわっ!!」

(;,,゚Д゚)「あだっ!!」

二つの力は混ざり合い、破裂と同時に広範囲にわたって色んなものを抉った。
一番近くにいた少女と少年もその力を思いきりかぶるわけで。

从;-∀从「う……」
(;,,-Д゚)「いでででで……」

もろに自分達の攻撃を浴びた二人は、もう立ち上がることも出来ないほどに満身創痍。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:56:32.16 ID:OTI1XIeyO
妖精の少女は歯を食い縛りながらなんとか立ち上がろうと土を掴んだ。

精霊の少年は歯を食い縛りながらなんとか立ち上がろうと拳を作った。
そして、

从;-∀从「……」

(;,,-Д-)「……」

全く同じタイミングで二人は力尽きて動かなくなった。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:57:45.87 ID:OTI1XIeyO
(∪;^w^)「あ!どうするおどうするお二人とも死んじゃったお!!」

(´<_` )「ブーン落ち着け、二人とも気絶しただけだ」

( ´_ゝ`)「むふふふふ幼女を救出する俺…幼女に感謝される俺…」

(∪ ^w^)(´<_` )「(こいつ……)」

警戒しながらブーンは慎重に妖精と精霊に近づく。

力尽きて倒れたからには突然目を覚まして攻撃を受けることはないだろうが、いつ彼らの仲間が来るか分からない。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:58:38.66 ID:OTI1XIeyO
いつでもすぐに逃げられるように心の準備をし、ブーンはそっと精霊の少年の近くまで寄ってしばらく様子を見てからふさふさした尻尾で彼の頬を撫でた。

反応はない。

少し安心し、ブーンは兄者と弟者を呼んで手当ての手伝いをしてもらうことにした。

( ´_ゝ`)「それにしても凄まじい攻撃力だったな、弟者」

(´<_`#)「(あの精霊のガキめ俺でさえまだあの尻尾に触れてすらいないというのにあいつほっぺにもふもふしてもらうとは一体どういうことだ少し話し合いが必要だな)」

(∪ ^w^)「色々聞きたい事があるお、こんなところで死なれたら困るお!」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 17:59:31.37 ID:OTI1XIeyO
簡易テントの中、それぞれ全くかみ合わない思考を繰り広げながら3人は妖精と精霊の回復を待つ。

その間一度も彼らの仲間が襲撃してくることもなく、至って平和な時間が流れていった。

ただし、血の匂いと死体に群がる虫には辟易したが。

結局、彼らが目を覚ましたのは太陽が地平線に沈む直前だった。

从 ゜∀从「!」

(,,゜Д゜)「!」

打ち合わせしておいたかのような奇跡的なタイミングで同時に目を覚ました二人は、困惑したように辺りを見渡した。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:00:24.80 ID:OTI1XIeyO
二人が目を覚ましたのに気づいたブーンは嬉しそうに尻尾を振りながら、夕食の肉の大きさについて熾烈な争いを繰り広げていた兄弟を呼ぶ。

(∪ ^w^)「二人とも、体の方は大丈夫かお?」

(´<_` )「一日中介抱してたブーンに感謝しろよ、あんたら」

从; ゚∀从「うわっ犬!!また来やがったなてめーら!」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:01:33.29 ID:OTI1XIeyO
(,,゚Д゚)「やべぇ、ここは一旦退避!」

包帯に覆われた体を起こして逃げようとした妖精と精霊。
しかし、どちらもそれは叶わなかった。

なぜか。

(#´_ゝ`)「助けた礼くらいは言ってってもいいんじゃないのか、少年たちよ」

(´<_`#)「色々聞きたいこともあるしな」

言い負かされて不機嫌な兄者と、勝ったけど尻尾についてまだ根に持っていた弟者が妖精たちの首根っこを掴んで離さなかったから。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:02:37.45 ID:OTI1XIeyO
不機嫌な兄弟をよそに、ブーンは暢気に一度尻尾を揺らした。

――――――――――――

从(#)∀从「すんませんありがとうございましたあなたたちは命の恩人です」

(###)Д゚)「あのままだったら俺達死んでましたぶっちゃけ今も死にそうだけど」

少し欠けた月がぼんやりと浮かぶ夜の半ば。
白い森の中にあるテントの外で、ブーン達は妖精と精霊を囲むようにして座っていた。
ただし、この二人は顔を突き合わせるとすぐに殺し合いを続けようとするから少し距離を離して。

ぱちぱちと火が爆ぜる音をBGMに、ブーンは満身創痍な二人に質問する。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:03:20.72 ID:OTI1XIeyO
(∪;^w^)「まず君達の名前を教えてほしいお。ちなみに僕はブーン。この二人は兄者と弟者だお!」

从 ゚∀从「オレはハイン、この森に住む妖精だ」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:05:03.31 ID:OTI1XIeyO
(,,゚Д゚)「俺はギコだゴルァ!ここから南にある小さな森に住んでる精霊だ!」

従順に答えるハインとギコ。
ブーンはそれぞれの名前を確認するように復唱し、質問を続ける。

(∪ ^w^)「何で殺し合いしてたんだお?精霊と妖精は仲が悪いのかお?」

その質問に、ハインとギコは首を振った。
特に仲が悪いわけではないらしい。

从 ゚∀从「オレたちは、こいつらに突然襲われたんだ!」

ハインはギコを指差した。

(,,゚Д゚)「馬鹿言うんじゃねぇ!テメーらが襲って来たんだろうが!」

(∪;^w^)「お、落ち着くお!」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:05:49.82 ID:OTI1XIeyO
今にもお互いに殴り合いを始めそうな雰囲気を察した弟者が立ち上がる。
その表情は微笑んでいるように見えて、実はかなりイラついているというのがありありと伺える。

何事もなかったかのように正座するハインとギコ。そして何故か兄者。

気を取り直し、ブーンは質問を再開した。

なんとか聞きだした話によれば、
早朝、精霊の森に妖精を名乗る誰かが訪れて目に付いた者全てを惨殺していった。
命からがら逃げ出した精霊は復讐を心に決め、妖精の森に生き残った者全員で向かう。
一方同じ時間、妖精たちも「自分は精霊だ」と名乗った誰かに虐殺されて精霊に復讐を誓っていた。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:06:58.08 ID:OTI1XIeyO
「復讐」という同じ想いを抱えた敵同士が相対すれば、戦いが起きるのは必然。
話し合いなんて無駄なこと。
戦場となった妖精の森は、瞬く間に色んなものの血で赤く染まっていった。

らしい。

ちなみに何故ハインが妖精の森から少し離れたところで気を失っていたのかというと、戦いの際起きた爆風に飛ばされたからなのだとか。

それを聞いたギコは腹を抱えて笑い転げ、ハインはむっとした表情でそれをスルー。
話を聞いたブーンは首を捻った。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:08:14.34 ID:OTI1XIeyO
(∪ ^w^)「誰がお互いの森で虐殺したのか分らないのかお?」

从 ゚∀从(,,゚Д゚)「「そんなことする奴はうちの種族にいるわけねぇ!」」

綺麗に重なったふたつの声。

(,,゚Д゚)「おおかた妖精が俺らを罠にハメようと何かしたに違いねぇ!卑怯な奴らだ!」

从 ゚∀从「オレらがそんな無駄な事するかよ!罠に陥れようとしたのはお前らじゃねぇのか!?」

口喧嘩を始めるギコとハイン。
収拾がつかなくなりそうなので、ブーンは弟者に目配せした。
その意を汲み取った弟者は静かに立ち上がると、

(´<_` )「落ち着け」

二人の頭を引っ叩いた。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:09:11.39 ID:OTI1XIeyO
从#);∀从「ちくしょう、誰だよ…」

(#),,;Д;)「何でこんなことに……」

(∪;^w^)「それを探すのが二人のやるべき事だお、泣いてる暇なんてないんだお!僕たちも協力するから、手伝ってくれお!」

从 ゚∀从「……。…分かった。オレもぐずぐずしてる暇なんてねぇもんな!仲間を疑うなんてしたくねぇけど、仕方ねえ!」

(,,゚Д゚)「…そうしないと解決しねぇか…。分った、俺も手伝うぜブーン!」

ようやく二人を宥め、復讐心を犯人探しに向けることが出来た。
ブーンは人知れず安堵のため息をついた。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:10:29.46 ID:OTI1XIeyO
(∪ ^w^)「まず、精霊の森に現れた『妖精』はどんな人だったんだお?」

(,,゚Д゚)「黒かった!」

(∪ ^w^)「何が?」

(,,゚Д゚)「皮膚が!多分女だったと思う。皮膚は黒くて、髪は凄く長い銀髪だった。目がやけにでかくて、口はなかったけど喋ったぞ」

(∪ ^w^)「喋った?」

(,,゚Д゚)「俺はよく聞こえなかったんだ、そいつから離れたところにいたから。でも、『それが力になる』とだけははっきり聞こえた。

この森に住む妖精とは違う姿形だったけど、妖精の種類なんて数え切れないほどあるから特に気にも留めなか「ちょっと待てよ」
ギコの言葉を遮り、不意にハインが立ち上がった。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:11:41.54 ID:OTI1XIeyO
その表情は少し困惑している。

从 ゚∀从「黒い皮膚に凄く長い銀髪。目がやけにでかくて、口はないけど喋る。もしかしてそいつ、手の甲に三日月の模様がなかったか!?」

(,,゚Д゚)「!…よくは見えなかったけど、あいつの左手の甲に青い何かがあったのは見えたぜ!」

奇妙に一致した、ふたつの種族を襲った者の姿。
ハインの言う「三日月の模様」に、ブーン達は心当たりがあった。

( ´_ゝ`)「ここに来る時に俺達に襲いかかってきた化け物…」

(´<_` )「新しいタイプの化け物、とはあまり考えたくないな」
(∪ ^w^)「……」

蜂とカブトムシを合わせて巨大化させたようなあの化け物にも、三日月のしるしがあった。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:12:28.60 ID:OTI1XIeyO
一気に黙り込んでしまったブーン達を見上げるギコとハイン。
その視線をしっかり感じながら、ブーンは突然鼻腔に刺した強烈な鉄の臭いを嗅ぎ取って立ち上がった。

( ´_ゝ`)「なんだ?」

(´<_` )「ブーン?」

从 ゚∀从「?」

(,,゚Д゚)「な、なんだよ」

尋常でないその臭い。
人間であったら、血相を変えてブーンは何も言わずにその臭いの元へ走った。
置いてけぼりを食らった4人は顔を見合わせた後、慌ててブーンを追いかける。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:13:16.02 ID:OTI1XIeyO
―――――――――――

白い木立の間を駆け抜けながらブーンは、その臭いの正体が外れであることを祈り続ける。

(∪;^w^)「…嫌だお……」

猛烈な速さでブーンは森の中を走りぬけ、ようやく森の外へ出ることができた。
そこからまた南に向けてずっと走り、広大な草原の中で彼は足を止めた。
ぼんやり青い月明かりに照らされたのは、

(∪;^w^)「……遅かったかお……」

草を薙ぎ倒して広がる死体の山だった。
ブーンの足元まで死体から流れる血は広がって、やがてその白い毛皮を赤で濡らす。
昼間ブーンの咆哮で逃げたと思われた妖精と精霊。
彼らは戦いの場を変えただけで、実は逃げてなんかいなかったのだ。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:15:56.53 ID:OTI1XIeyO
(∪;^w^)「……お…」

?「悔しい。殺したい。悲しい」

うなだれたブーンの近くで、声が聞こえた。
男のものか女のものか分らない中性的な声。
まだ生き残りがいる!

ブーンは顔をあげ、声の主を探す。
それは死体の山の上に立ってブーンを見下していた。

――――――――
(,,゚Д゚)『皮膚は黒くて』
――――――――

そのヒトガタの体があると思われる場所に、普通の人のような肌色は存在しなかった。
夜の闇よりも深い黒。
吸い込まれそうな、得体の知れない恐怖を煽る不快な黒。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:16:54.46 ID:OTI1XIeyO
――――――――
从 ゚∀从「凄く長い銀髪」
――――――――

身長はそこまで高くないだろう。
流れるような、透き通るような銀髪が、黒い体を流れて足元に広がっている。

――――――――
从 ゚∀从(,,゚Д゚)「目はやけにでかくて、口はないけど――」
――――――――

顔のある部分には、顔の半分を埋め尽くすほどに大きな目がじっとブーンを見下ろしている。
表情なんて分かる訳がない。
目は口ほどにものを言う、というが、何もその目からは分かる気がしない。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:17:41.33 ID:OTI1XIeyO
口がある部分には、体と同じ暗い黒い闇があるばかり。
気味が悪かった。
気持ち悪かった。
表情のないその何かがとてつもなく恐ろしく思えた。
尻尾を巻いて逃げたかった。

?「つまり殺意、憎悪、悲哀、そして――」

――――――――
从 ゚∀从(,,゚Д゚)「両手に三日月の模様があって――」
――――――――

三日月の模様のある両手を、そのヒトガタはブーンに向けた。
その一連の動作から敵意は感じられない。
月明かりと同じ色のその模様がうっすらと淡い光を放つ。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:18:53.12 ID:OTI1XIeyO
?「恐怖……。それが私の力になる」

(∪;^w^)「な…何を言ってるんだお!?ここにいる人達はっ」

?「恐怖を…殺意を憎悪を悲哀を、たっぷりと抱えさせて殺した…。何人かには逃げられた…」

(∪;^w^)「じ、じゃあ妖精と精霊をお互いに戦わせるように仕向けたのは!」

?「全て私のしたこと…しかしそれは大きな問題ではない…。もっと力を手中に」

(∪;^w^)「お前…一体誰d―――」

ブーンの質問が最後まで言葉になることはなかった。
そよ、と風が吹き、ヒトガタは気づけばいなくなっていたから。
ブーンは大量の死体の中にひとり取り残されていた。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/27(月) 18:19:50.56 ID:OTI1XIeyO
夜明け前の独特な空気を孕んだ風に乗って、テント前に置いてきた流石兄弟と妖精精霊の声が聞こえる。
必死に追いかけてきたのだろうか、こちらに近づいてくる足音は疲弊したように重々しく、
一番先に草むらから飛び出てきたハインはその悲惨な光景を見て叫んだ。

あのヒトガタの事を話さなければ。

震える声で仲間の死体を探すハインと、涙目で「何でだよ!」を繰り返すギコにブーンは声をかけようとする。
しかし開いた口からは声は出ず、二人に近づこうとする足に力が入らない。

( ´_ゝ`)「ブーン?」

ブーンの様子がおかしいことに気づいた兄者がブーンの名を呼ぶが、それに返事をする元気もなく。

草むらに倒れてからやっと気づいた。

(∪;^w^)「(凄く緊張してたのかお…。体が言うこと聞かないお…)」

誰かが呼ぶ声を聞きながら、ブーンは今まで極限まで張り詰めていた意識を手放した。


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