( ^ω^)ブーンは呪われたようです

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:37:44.83 ID:MXV4tX44O
第七話「暗い希望と仮面の笑顔」

――――――――――

朝起きて、髪を梳かす。
顔を洗って厚い化粧をして、煌びやかな衣装を纏う。

ごてごてしたアクセサリーを身につけ、鏡の前で私は笑ってみせた。

うん、今日も完璧。

素敵な笑顔よ、私。

家を出て空を見上げると、直視出来ないほど眩しく輝く太陽が燦々と光を平等に降らしていた。

今日も暑くなりそうね。

「…………よし、今日も一日頑張るわよ」

私の仕事は笑顔が命。
それが喩えつくり笑顔だとしても、お客さんや見てくれる人が満足してくれれば私はそれでいい。

そう、子供の頃から洗脳されてきた。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:38:52.76 ID:MXV4tX44O
私だけじゃない、この国の選ばれた子供は、皆そう教えられて育ってきた。

私がやりたい仕事はこれじゃなくても、私はこの仕事を笑顔でこなす。

まるで人形みたいだと思ったのは、もう遠い昔のことだった。


『いつしかその仕事の意義は、違ったものにすりかえられていたけれど。』


砂漠に囲まれたこの国に暗い表情は似合わないと、人々はどんなときでも笑顔を絶やさない。
仮面のようなのっぺりとした笑顔。
そしてその仮面は今日も、安酒を片手に歌い、笑う。

その仮面を喜ばせるために私は今日も灼熱の太陽の元、祈りを捧げるのだ。

空には熱い太陽。
砂煙の国。
通りにはエキゾチックな歌が溢れ、小汚い男が女を貪る。
人々は芳しい酒に酔い痴れ、

私は今日も踊り続ける。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:40:27.31 ID:MXV4tX44O
―――――――――――

(∪ ^w^)「防寒着とか食料の補充は完璧、この砂漠の真ん中にニュー速国があって、とりあえずそこで色々情報収集をする。
もしも途中で何かあった場合、少しニュー速までの最短ルートから北に外れるけど小さな町があるからそこで問題は解決。これでいいんだおね?」

(,,゚Д゚)「完璧だな」

从 ゚∀从「しっかし暑いな!」

( ´ ゝ`)「お前が暑い言うなよ…」

(´< `;)「ぶっちゃけ俺らが一番暑いと思わないかね」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:42:14.91 ID:MXV4tX44O
(∪;^w^)「まぁまぁ、肌を守るための先人の知恵なんだから我慢するお!じゃあ、目標はニュー速!出発だお!」

ブーン達がいるのは、大陸の半分を占める砂漠、ラウンジ。
あまりにも果てしない広さと暑さで、ここで行き倒れる者も少なくないという。

昼は灼熱の太陽が。
夜は極寒の月が砂を操り、人を惑わす。

そんな砂漠の中をブーンたち5人は、ニュー速を目指して歩くのだ。

( ´ ゝ`)「でも途中で水がなくなったらどうするんだよ」

从 ゚∀从「そしたら誰か一番先にブッ倒れた奴の喉でも掻っ捌いて、血ィ啜るしかねーな!」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:43:32.68 ID:MXV4tX44O
(,,゚Д゚)「それ、笑えねーよ」

冗談を飛ばし、一行は歩きづらい砂の上に足跡を作っていく。
和やかなふいんき(何故かry)で進む彼らを見つめる視線に気付くものは、まだいない。

――――――――――

聞こえるのは、太陽を崇める歌と鳥の唄。
そして手拍子と笑い声。

それらをBGMに、私達は大地を踏みしめて踊る。
全ては仮面たちを喜ばせるため。
元々は、太陽神を喜ばせるためだったのに。

『どうして私、こんなことしているんだろう』

『どうして私、こんな笑顔でいるんだろう』

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:44:59.74 ID:MXV4tX44O
歌が盛り上がるのと一緒に、私達の踊りもどんどん激しさを増していく。

比例するように大きくなっていく、人々の歓声。

なんだか、狂気じみている。

ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの?なんか上の空だね」

別の踊り子と交代した私は、簡素なつくりの休憩室でぼんやりと宙を見つめていた。
そんな私を気遣って、お酒を持ってきてくれたのは踊り子仲間であり、親友のデレ。

気遣ってくれるのはとてもありがたいけれど、大丈夫だよ。と答えると、デレはにっこり笑った。

ζ(^ー^*ζ「そっか、でも何か悩みとかあるんならいつでも聞くからね!」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:46:15.98 ID:MXV4tX44O
太陽顔負けの笑顔だ。

この仕事に誇りを持っていなければ、絶対に引き出せない素敵な笑顔。

私には、絶対に真似できない。

だって、誇りなんて持っていないから。

持っているのは多くの疑問と、少しの嫉妬。

私がやりたいのはこんな仕事じゃない。

……ありがとう。

そう言って、私もデレのように笑ってみせた。

うまく笑えたかな?

毎日鏡の前で、自然な笑顔を引き出せるように練習しているんだから、うまく笑えないわけがないのだけど。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:47:37.18 ID:MXV4tX44O
――――――――――

(∪;^w^)「おおおおおおおおおおお!!!」

(;´_ゝ`)「もおおおおおおおおおおお!」

(´<_`;)「砂漠なんて嫌いだあああああ!!!」

(;,,゚Д゚)「うわあああああああああ!!!!」

从; ゚∀从「何なんだよあいつううううう!!」

砂埃を巻き上げて、5人は口々に思い思いの言葉を吐きながら全力で走る。
その後ろを、芋虫のような形の化け物が追いかけていた。

特記するべきは、芋虫のサイズと移動速度、そしてその体の硬度だろう。
7メートルほどの全長に、全力で走る人間に追い付けそうな移動速度。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:48:36.18 ID:MXV4tX44O
最初に出くわしたときに全員で迎え撃って、兄者と弟者の持つ短剣の刃が刃こぼれしたほどの外装硬度。

ぶっちゃけ勝てる気がしない、逃げるが勝ちだという全員の判断で、化け物に背を向けて逃げたのが運の尽きだったようだ。

芋虫は滑らかに砂の上を滑るようにブーン達を追いかける。
体液をだらだらと垂らすその口からは、なんとも言えない嫌な臭いが吐き出され、追いかけっこにも飽きたのか、芋虫は口から幾本もの触手を伸ばした。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:49:54.51 ID:MXV4tX44O
从;゚∀从「なんか変なの出てる!何かイカの足みたいなの口から出てる!」

(;,,゚Д゚)「実況すんなあああああ!!!」

(∪;^w^)「おおおおおおお気持ち悪いいいいいい!!!!」

(´<_`;)「おいブーン、このままじゃ俺たち全員力尽きて死n(∪ ^w^)「ぬおおおおおおおおおおお!!!」

(´<_`;)「話を聞けえええええ!!」

( ´_ゝ`)「まだ死にたくねええええええ!!!」

阿鼻叫喚。
この光景は、その言葉ひとつに尽きる。
かれこれ1時間は逃げているのではないだろうかと、そろそろ足に限界が来ているハインは思う。

実際にはそんなことはないのだが、極限状態だと体感時間はかなり長く感じるものだ。

そして、ふとハインは気付いた。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:51:13.20 ID:MXV4tX44O
从 ゚∀从「あれ?これ、オレ走る必要なくね?飛べばよくね?」

背中の羽は飾りではありません。

ハインはニヤリと笑い、背中の羽を広げた。
砂を思い切り踏みしめ、跳躍。

宙に浮いたハインの体は地面に落ちることなく、そのまま化け物の攻撃が到底届かない安全圏まで舞い上がった。

(∪ ^w^)(,,゚Д゚)( ´_ゝ`)(´<_` )「てぇめええええええ!!」

从 ゚∀从「かっかっかっ!!まぁそう怒るなって、今足止めしてやっからさ!」

腹を抱えて笑いながら、ハインは左手を化け物の体に向けて伸ばした。

狙いは芋虫の体。

攻撃があまり効かないのは分かっている。
あいつの足を止めるのが目的だ。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:52:33.29 ID:MXV4tX44O
芋虫を指差し、ハインは叫ぶ。

从 ゚∀从「『鎌鼬』!」

彼女の命令に従い、風は鋭利な刃物に姿を変えながら化け物の体を傷つけた。

一瞬だけ動きを止める化け物。

その隙を見逃さず、ブーンはくるりと向きを変えて化け物に向かって走る。
少しだけダメージを負ったらしい化け物は一度なんともいえない音を立てて上空にいるハインを睨んだ。

意に介さず、口笛を吹くハイン。

あまり挑発しないでほしいな、と内心で苦笑しつつ、ブーンは足を止めずに化け物の正面に向かった。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:53:42.17 ID:MXV4tX44O
(,,゚Д゚)「へっ、あんな化け物、俺一人でも倒せるぜ!」

戦場から少し離れたところでは、ギコがそんな言葉を呟きながら両手を地面につく。
ギコの手が触れている部分の砂がぼんやりと発光し、辺りを地響きが襲った。

( ´_ゝ`)「ギコ、お前それ死亡フラグ」

(´<_` )「俺…この戦いが終わったら結婚するんだ…」

( ´_ゝ`)「弟者、言っておくがダッチワイフは嫁にはなれないんだからな」

(´<_` )「軽く世界観破壊するようなこと言わないでくれるか」

(,,゚Д゚)「てかお前らもなんか援護とかしろよ…」

( ´_ゝ`)「ですよね」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:56:39.07 ID:MXV4tX44O
妙にぐだぐだな会話を繰り広げる兄者と弟者の二人。

その四つの視線の先では、ブーンが化け物の触手に捕らわれていた。

(∪ ^w^)「おおおおおおおお!?」

決して油断した訳ではなかった。
触手の数が多すぎる。

ブーンは前足を絡め取られ、吊るされた。
その体にも触手は巻きついて、ブーンを締め上げる。

―――突如、辺りを揺るがしていた地響きが止み、それと同時に化け物の目の前の砂が隆起した。

(∪ ^w^)「おっ!?」

何が起きたか分からず、驚くブーン。

隆起した砂は意思を持ったかのようにぐねぐねと動き、化け物の目を直撃。
さすがの化け物もこれには敵わず、ブーンを絡め取ったままその巨体をごろごろと転がす。
振り回されて目を回しながら悲痛な叫びを上げるブーンの体は、突然何の前触れもなく開放された。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 17:57:59.28 ID:MXV4tX44O
( ´_ゝ`)b「俺らって結構イイとこ取り?」

d(´<_` )「流石だよな、俺ら」

ぼふ。

砂煙を上げて地面に落ちたブーンの前に、流石兄弟の二人が並ぶ。
その手には、刃こぼれした短剣が握られていた。

(∪ ^w^)「ありがとうお!」

(´<_` )「触手は出来るだけ叩っ斬るから、お前はあの芋虫をどうにかしてくれ。俺はあれに近づきたくない」

( ´_ゝ`)「芋虫コワイ芋虫コワイ」

兄弟の援護。ハインとギコの援護を受け、ブーンは頭を軽く振った。
目を回した時の独特の世界の歪みが、少しはマシになった。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 18:00:02.52 ID:MXV4tX44O
一度ブーンは化け物から距離をとった。
どこを攻撃すればいいのかを見極める為、目を細める。

―――目を潰すのもいいかもしれないが、痛みのせいで化け物が逆上するかもしれない。
それは避けたい。
なるべくなら、一撃で済みそうな…。


思案するブーンの視界に、次々湧き出てくる触手を斬っていく兄者と弟者の姿が映る。

何をするにしても、あの触手が邪魔なのだ。

視線は触手の伸びる、化け物の口の中に移動する。

―――そう、あれが邪魔なんだ。

恨めしげに触手の出所を睨む。
そして気付く、青い光。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 18:01:26.05 ID:MXV4tX44O
(∪ ^w^)「三日月の模様……」

今も大量生産される触手。

その隙間から、時折青い光が覗いていた。

(∪ ^w^)「…………」

一か八か。
ブーンは、全員に聞こえるように声を張り上げる。

(∪ ^w^)「今からちょっと無茶するお!援護、お願いするお!」

从 ゚∀从「無茶?」

(,,゚Д゚)「分かった、まぁあの芋虫の邪魔だったら任せろ!」

( ´_ゝ`)「何する気なんだ、ブーンは?」

(´<_` )「さぁ……。とにかく、俺らは出来るだけ触手の数減らすから頑張れよ!」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 18:02:36.35 ID:MXV4tX44O
仲間の言葉を信じよう。

ブーンは目を閉じて、意識を足に集中させた。

これから自分がやろうとしていることは、タイミングと速さが重要になる。

あの化け物が、新たな触手を伸ばすとき。
あの化け物が、口を開いたとき。


走れるか?
―――走れるさ。僕は砂嵐に勝ったんだぞ。

やれるか?
―――やらなきゃ、ここで死を待つしかない。

お前の『賭け』が外れたら?
―――ただじゃ済まなさそうだ。でも、

(∪ ^w^)「多分賭けは僕の勝ちだお」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 18:04:16.64 ID:MXV4tX44O

出来るだけ身を屈める。

四本の足に集中。
聴覚と嗅覚に集中。
足の筋肉が、これでもかとばかりに張り詰める。

そして、

(∪ ^w^)「うおおおおおおおおおお!!!」

雄たけびと共に、ブーンの体は一直線に化け物に向かっていた。

目標は化け物の口の中。

あの忌々しい青い三日月。

从 ゚∀从「!」

(,,゚Д゚)「!」

( ´_ゝ`)「!」

(´<_` )「!」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 18:05:37.25 ID:MXV4tX44O
―――無茶、の意味がなんとなく分かったような気がする。あいつは馬鹿だ。

ハインは苦笑して、最大限まで圧縮した鎌鼬を化け物に向けて振り下ろした。


―――あいつ何してんの?何で真正面から突っ込んでんの?馬鹿なの?

ギコは眉を顰め、砂に大量の魔力を練りこんで化け物の目にお見舞いしてやった。


―――この芋虫気持ち悪い触手キモイ服の中に入ってくんなアッーー!

兄者は涙目になりながら、羽織っていた衣服の下から大振りの剣を抜いて辺り構わず振り回した。


―――口の中か?何か弱点になりそうなものがあるとも思えないけど…

弟者は触手を叩き斬りながら、ポケットに手を突っ込んで手榴弾を取り、化け物の口に放り込んだ。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 18:07:09.95 ID:MXV4tX44O
比較的軽めの爆発。
しかし化け物にとって、効果てき面だったようだ。

今まで無限に創造されていた触手が根こそぎもがれ、化け物は口から黒い煙を出しながら時折ぴくりと動く。

予想外の爆発にブーンは目を丸くさせたが、これ以上のチャンスはないだろう。

活動を再開しかけている化け物の口の前で思い切り跳躍。
口内に飛び込んで、三日月を探す。

もしもこの化け物に隠し玉があるとしたら、生きては帰れないだろう。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 18:08:26.51 ID:MXV4tX44O
直接言いたかったけど、今までありがとう、村長さん、村の人、それと―――

―――――?

……それと、

あの少女はなんて名前だったっけ……?

村にいたときに何かと世話を焼いてくれていた幼馴染……。

名前どころか、顔ですらうっすらとしか思い出せない…。

あれ?

村長の名前は、なんていうんだっけ?

村の名前は?

近所のお姉さん的存在だった、あの人の名前は?

何 て 名 前 だ っ た っ け ?

記憶を回顧。
親しかったはずの人達の名前が思い出せないその事実に、ブーンは身震いした。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 18:09:29.28 ID:MXV4tX44O
今そんなことを思い出している場合じゃないのは分かっている。

それでも、と必死に記憶の糸を手繰り寄せていたブーンは、化け物の咆哮で我に返った。

(∪;^w^)「く、喰らえおおおおおおお!!!」

ブーンの爪が、化け物の口内の三日月を縦に切り裂く。

光を失った三日月模様。

焼け爛れた口内に化け物の断末魔の悲鳴が響き、その音量に耐え切れず慌ててブーンは化け物の口から外へと逃げた。

名前のことは、度忘れしてしまっただけ。

すぐにまた思い出せる。

自分を奮い立たせる偽りの言葉を呟いて。

暗い希望に心を騙して。

化け物を倒したと喜びながら近づいてくる4人に、ブーンは尻尾を振って答えた。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/30(木) 18:10:37.93 ID:MXV4tX44O
――――――――――

外から聞こえる歌に耳を済ませてみる。
毎日変わらない、太陽の恵みに感謝する内容の歌詞。

女の人の綺麗な声が何重にも重なって、それはそれは美しい曲を作り上げて。

彼女たちは、厳選な審査やテストをパスしたエリートたち。

彼女たちにしか歌えない歌を、私も口ずさんでみる。

何が違うの?
私とあの人たちの、一体何が違うの?

生まれた環境?
声の質?
歌唱力?
ルックスの良さ?
男の人を喜ばせる技術?

分からない。

分からないから、私は歌を禁じられたまま嫉妬心を燃やし続ける。

分からないから、分かるまで私は仮面の笑顔を演じ続ける。

この国の人たち全員に、仮面の笑顔は張り付いている。


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