- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/01(土) 23:41:26.84 ID:JRFvlKxSO
第八話「雨下の戦い、侵蝕する青」
砂漠の砂に、蜃気楼が上る。
やっとの思いで化け物芋虫を倒し、疲労困憊したブーンたちはしばらく大の字になって体力の回復を図っていた。
(∪ ^w^)「……」
ブーンの頭の中は故郷の村のことでいっぱいだ。
いくらなんでも、度忘れにしては絶対におかしい。
行商の旅に出ていた時も、いつどこにいたってあの村の住人の名前は一人残らずすらすらと言えたはずだった。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/01(土) 23:44:10.51 ID:JRFvlKxSO
- あの村がブーンの帰る所で、
あの村は如何なる時でもブーンの希望だったから。
それなのに、何故大切なことを思い出せないのか。
(∪ ^w^)「…………「……ーン、ブーン?」
気付けばブーンは眠っていたらしい。
さっきまで高いところにあった筈の太陽は、もう赤く色を変えて地平線に溶け込もうとしていた。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/01(土) 23:45:44.38 ID:JRFvlKxSO
- (,,゚Д゚)「ずいぶん寝てたな、そのうち潰れた蛙の末路みてーに干乾びちまうぜ?」
(∪;^w^)「お…それは嫌だお」
(,,゚Д゚)「だろ?とりあえず今日はここで野宿らしいから、寝るんならちょっと移動した方がいい」
(∪ ^w^)「移動?」
(´<_` )「ここだと風が当たるから、化け物の死体の陰に行くんだ」
(∪ ^w^)「なるほど」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/01(土) 23:48:10.22 ID:JRFvlKxSO
- 心配事を抱えたのを誰にも悟られないよう。
ブーンは頭を振り、ギコと弟者の後ろに着いて化け物の死体に近づいた。
化け物の死体の表皮。
―――気味悪いな、
そう思いつつギコの目は化け物の死体に引き寄せられる。
クリーム色の分厚い皮の下。
何かとてつもなく大きなものが蠢いたような気がして、思わずギコの足が止まった。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/01(土) 23:49:40.88 ID:JRFvlKxSO
- (;,゚Д゚)「…………」
しばらく見ていても何もない。
何かが動いたような気がしたのは見間違いだったのだと、ギコは無理矢理自分を納得させた。
―――――――――
砂漠の上で見る夜空は、とても幻想的だ。
大小様々な光りを放つ星と、半分より少し膨らんだ月が綺麗で、寒ささえどうにかなれば素晴らしい場所なのに。とハインは思う。
風は遮られているのだが、それでも寒いものは寒いのだ。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/01(土) 23:51:39.82 ID:JRFvlKxSO
- 从 ゚∀从「ひー、やっぱ寒ぃなぁ!」
(,,゚Д゚)「そんな格好しといて寒いとかwwww」
从 ゚∀从「うるせーなー」
(´<_` )「お前らくだらねーな…」
( ´_ゝ`)「…ブーン、眠いのか?」
焚き火を囲っての談話。
いつになく静かに黙り込んでいるブーンを見て、兄者が心配そうに尋ねた。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/01(土) 23:53:59.17 ID:JRFvlKxSO
- (∪ ^w^)「お!大丈夫だお!」
( ´_ゝ`)「…そうか?」
無理矢理納得したように頷いた兄者。
夜が進んでいくうちに、一人、またひとりと夢の世界への舟を漕ぐ。
星空を眺めて最後まで起きていたハインは、めきめきと間近から聞こえ始めた音が気になってゆっくりと起き上がった。
从 ゚∀从「何の音だ?」
音はまだ聞こえており、警戒しながらハインはゆっくりと歩みを進めていく。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/01(土) 23:55:58.89 ID:JRFvlKxSO
- どうやら音は、動かなくなった芋虫の体から聞こえるらしい。
それに気付いたハインの表情は硬く、険しいものになっていった。
めきめき、めきめき。
がさっ、……めきめき。
ずっ、…ずっずっ。
音の種類が変わる。
何かを折るような、何かを破くような音から、何かを引きずり出すような音に。
嫌な予感が頭を掠める。
それでもハインは音の出ている部分にどんどん近寄っていった。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/01(土) 23:57:49.44 ID:JRFvlKxSO
- そして、見た。
昼間倒したはずの芋虫の背中からずるりと出てきた、とてつもない大きさの異形の物体。
从;゚∀从「っ……う…ぎゃあああああああああああああ!!!!!」
ハインの叫び声。
反応したのは、5つの生き物。
(∪;^w^)「おおおおおおおおお!!!?」
(;´_ゝ`)「ぎゃああああああああああ!!」
(´<_`;)「わあああああああああ!!」
(;,,゚Д゚)「敵襲だ!!総員武器を取れ!戦ええええええ!」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/01(土) 23:59:37.97 ID:JRFvlKxSO
- 物凄い勢いで跳ね起きたブーンたち。
たった今芋虫の体を割って、蝶のようなものへと変化した気色悪いモンスター。
緩慢な動きで大きな羽を広げたモンスターは、絶句しながら見上げるブーン達の目の前で一度大きく羽ばたいた。
直後、突風が砂漠に吹く。
砂の攻撃に思わず顔を背けた5人を嘲笑うかのようにモンスターは何度か羽ばたいた後、西へ向かって飛んでいってしまった。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:01:05.37 ID:5Ex427VAO
- (∪ ^w^)「な…あいつは?!」
从 ゚∀从「昼間倒したあの芋虫から出てきやがった!!」
(´<_`;)「それよりブーン、あいつ西に向かったぞ!」
( ´_ゝ`)「西にはニュー速国があるんだったな」
(,,゚Д゚)「や、ヤバイだろっ!それ!」
恐らく、あのモンスターの狙いはニュー速国。
西へ消えつつある蝶のモンスターを追いかけるため、ブーン達は慌てて荷物を掴んで走った。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:03:12.39 ID:5Ex427VAO
- ―――――――――
この国には、夜がない。
…いや、毎日毎日朝が来て昼が来て、空が暗くなって夜は来るけれど、人々の意識の中に夜は存在しない。
昼間と同じで、お酒を片手に談笑するだけ。
それに少しだけ、女との時間が混ざるだけ。
歌や踊りが止むことはないし、笑い声が止むこともない。
店が閉まることもないし、眠る人もいない。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:05:49.14 ID:5Ex427VAO
- 店の明かりのおかげでむしろ昼間よりも明るいこの国に、『夜』は訪れない。
『夜』は、なかった。
―――あの音がするまでは。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:07:57.38 ID:5Ex427VAO
- ――――――――――
西の空に蝶のモンスターが消えて数分後。
びりびりと空気が揺れ、ブーンは顔を上げた。
いくら眠ったとしても、さすがに昼間の疲れは抜けきらない。
今日は走ってばかりだお、とひとりごちてみる。
頭に浮かぶ大惨事のイメージを必死で拭い去ろうとブーンは走るスピードをあげた。
5人が走っている間も、相変わらず空気は音を立てて震えている。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:09:56.99 ID:5Ex427VAO
- ――――――――――
『その音』が聞こえた途端、居住区エリアが爆発した。
爆弾か何かを落とされたのかと思った。
それほどの凶悪な音と、凶悪な熱気が辺りの空気を焼く。
何が起きているのか全く分からない。
轟音と共に崩れていく街。
赤く光る何かが街に落ち、爆発したのが見えた。
綺麗だな、と思ったのもつかの間、火が。
火が。
「何よこれ……」
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:12:09.61 ID:5Ex427VAO
- 現状把握に脳みそが追いつかない。
やっと出てきた言葉がそれで、私は自己嫌悪に陥った。
至る所から上がる悲鳴。
火の手。
そして、空を泳ぐ蝶。
その蝶の上で、月は妖しく光る。
ここはこんな地獄なのに、月はなんて綺麗なんだろう。
ぼんやりと、そんな暢気なことを考えて―――
私は、轟音に吹き飛ばされた。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:14:08.90 ID:5Ex427VAO
- ――――――――――
轟音と悲鳴、火が爆ぜる音が聞こえてきた。
あの砂の山を越えたらニュー速国なはずだと、ブーンの後ろの方で息を切らしながらギコが叫ぶ。
もうそれに答える余裕も体力もない。
ニュー速を囲むように聳え立つ砂の山を一気に駆け上り、そこにあった地獄を見てブーンは言葉を失くした。
―――予想していたよりも、はるかに酷い光景が眼前に広がっている。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:15:25.47 ID:5Ex427VAO
- (∪;^w^)「これは……」
酷い、という言葉すら憚られる。
地上に現れた地獄に来てしまったような錯覚さえ覚える。
黒い煙が上がる国。
あの蝶のモンスターは悠々と空を泳ぎ、時折思い出したように火を吐いた。
それも、街の中にいる人間が決して外に出られないように国の周りを火の壁で覆っていくという計算高さ。
小賢しい。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:16:48.37 ID:5Ex427VAO
- 煙に巻かれて動かなくなる人間が、ひとり。ふたり。
火に全身を舐められて動かなくなり、肘や膝を曲げる人間が、ひとり。ふたり。
風に乗って運ばれてくる、人や何かが燃える臭いと熱気。
言葉をなくして立ちすくむブーンにやっと追いついたハインも、ゆっくりと羽を折りたたんで地上に降りた。
(,,゚Д゚)「はぁ、はぁ、お、おいブーン!何こんなところでボサっと突っ立ってんだ!?助けにいかねぇのかよ!」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:18:31.92 ID:5Ex427VAO
- ブーン、ハインの次にやっと砂の山を登り終えたギコは、ニュー速という地獄を目の当たりにしてからブーンの頭を引っ叩いた。
(∪ ^w^)「い、行くに決まってるお!」
(,,゚Д゚)「よし、じゃあさっさと行くぞ!」
言うが早いか、ギコは砂を駆け下りていく。
それに続くブーン。
ハインは、
从 ∀从「……」
(;´_ゝ`)「くそ、俺たちは、人間なん、だぞ、」
(´<_`;)「つ、つかれた…。…ハイン、どうした?」
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:20:26.49 ID:5Ex427VAO
- ハインはニュー速の街を飛ぶ蝶のモンスターを睨んでいた。
その瞳には怒りという感情が宿っていた。
从 ゚∀从「……あの野郎、随分とエグイ真似しやがるじゃねーか…」
(;´_ゝ`)「エグイ?」
从 ゚∀从「オレの一番嫌いなやり方だ」
(´<_`;)「え?」
从#゚∀从「行くぞ!」
(;´_ゝ`)(´<_`;)「ええええええええええ!!?」
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:22:06.58 ID:5Ex427VAO
- 怒り心頭の彼女は、兄弟の首根っこを掴んで砂の山を一気に駆け下りる。
悲鳴をあげる兄者。
首が絞まって気絶した弟者。
ハインの目に、火で覆われた門が映る。
从 ゚∀从「行くぞ!!」
(;´_ゝ`)「いやあああああああああ!!!」
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:24:27.95 ID:5Ex427VAO
- ――――――――――
気がつけば、私は瓦礫の上でうつ伏せになっていた。
近くで何かが燃えているらしい、強烈な臭いが鼻につく。
何が燃えているのかは考えないことにした。
「う………」
体を動かすと、頭や膝に痛みが走った。
血が出ているようだ。
でもまだ私は動ける。
「……あいつ…」
空を舞う蝶を見上げた。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:26:33.80 ID:5Ex427VAO
- 怒りがむくむくと首をもたげ、私はそこらにあった木の棒や瓦礫を蝶に向かって投げた。
届くわけがない。
だから、覚えてなさい。
後でブッ殺す。
あちこち痛む体を押して、私は立ち上がった。
ぉぉぉぉぉぉぉぉ「それにしても、一体何が『ぉぉぉ』きてる『ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』?」
分からない。
分からn(∪ ゚w゚)「おおおおおおおおおお!!!!」
うるさい
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:28:36.00 ID:5Ex427VAO
- ――――――――――
火に舐め尽くされた門を蹴り開け、ブーンとギコは二手に分かれた。
とにかく生きてる人を助けること。
動ける人がいて、水があったら出来るだけ消火に協力してもらうこと。
それを確認し、ギコは火に飲まれた町の通りを駆け抜けていった。
ブーンは手近にあった1メートルほどの壁を越すため、少し身を屈めてから跳躍。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:30:34.56 ID:5Ex427VAO
- そして、壁の向こう側にいた少女の頭に思い切り突っ込んだ。
(∪ ゚w゚)「おおおおおおおおおおお!?」
鈍い音と共に倒れる少女とブーン。
一瞬の気絶の後、頭を抱えて少女が先に起き上がった。
ξ )ξ「……っっっ…!!!」
(∪ w )「 」
ξ#゚听)ξ「いっっっっっっっっっっっったぁぁあぁあい!!!!」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:31:46.75 ID:5Ex427VAO
ただでさえ頭から血が出てるというのに。
ぐわんぐわんと痛みが響く頭を涙目で押さえ、少女はすっかり伸びきったブーンに目をやった。
ξ゚听)ξ「……犬?」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:34:22.71 ID:5Ex427VAO
- ――――――――――
火だるまになった何かを蹴飛ばして、ハインはニュー速国の中へ進入する。
辺りはもう火で埋め尽くされ、軽く舌打ちした後にハインは兄者と弟者の背中を蹴り上げた。
从#゚∀从「てめーらもさっさと生き残り見つけてこい!」
(;´_ゝ`)「分かった分かった!」
(´<_`;)「あばばばばばばば」
引け腰でどんどん国の中心部に進む流石兄弟を見送り、ハインは真上を飛ぶ蝶を見上げて悪態をつく。
そして自身も、生き残りを探しに火の中へ身を投じた。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:36:50.24 ID:5Ex427VAO
- ――――――――――
(∪ ^w^)「!」
ξ゚听)ξ「あ、気付いた!?頭突きで死んじゃったらどうしようかと思ったわ、大丈夫?ワンちゃん」
火に囲まれた空間で、少女はブーンの頭を撫でる。
場の熱気は相当上昇していて、少女の額にも大粒の汗が浮かんでいた。
(∪ ^w^)「大丈夫だお!」
ξ゚听)ξ「あぁ私はもう駄目なんだ、犬が喋る幻覚を見てるなんて」
(∪ ^w^)「幻覚じゃないお!それよりも、早くここから脱出しないと…」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:38:27.81 ID:5Ex427VAO
- ξ゚听)ξ「あぁ、私もう死んだのね、犬が喋るなんてありえないし」
(∪;^w^)「めんどくさいお」
しかし、少女の言うとおりだ。
辺りは火に飲まれてしまっている。
ブーンは、自分が飛び込んで来た壁を見上げた。
火に飲まれてかけてはいるが、それでも他の場所よりはまだマシだろう。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:40:15.25 ID:5Ex427VAO
- 意を決して、ブーンは少女に背を向けた。
(∪ ^w^)「逃げるお!!」
ξ;゚听)ξ「は?」
(∪ ^w^)「時間がないんだお、僕の背中に乗るんだお!」
ξ゚听)ξ「な、何言ってるの?もう助からないわよ!いいからあなた一人で逃げなさい!」
そうしている間にも酸素はおもしろいほどに薄れていく。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:41:51.10 ID:5Ex427VAO
- ぶっちゃけブーンの体力も気力もとうに限界突破している。
根性で動いているようなものだ。
(∪;^w^)「早く!僕は君を助けに来たんだお!」
肺に残された酸素全てを使った叫び。
少女はしばらくブーンの背中を見つめた。
ξ//゚听)ξ「……いいの?」
(∪;^w^)「いいから…早く!」
その言葉に従い、少女はブーンの背中に乗った。
落ちないように毛皮にしがみつく。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:43:39.84 ID:5Ex427VAO
- (∪ ^w^)「行くお!」
ξ゚听)ξ「うん!」
もたついていた間に火だるまになってしまった壁。
少女を背に乗せ、ブーンはその壁を飛び越えて国の外に脱出した。
(∪;^w^)「おっ!」
ξ;゚听)ξ「わっ!!」
砂漠の砂に足を取られ、少女ごと思い切りブーンは転倒する。
ブーンの背中から投げ出される少女。
彼女は仰向けに倒れ、そのまま星空を見上げた。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:45:18.28 ID:5Ex427VAO
- ξ;゚听)ξ「…ねぇ、ここって国の外?」
(∪;^w^)「そうだお」
ξ゚听)ξ「そっか、ここが…」
(∪;^w^)「ぜはーっ、ぜはーっ」
ブーンは必死に肺に空気を浸す。
冷たくなった砂の上に転がったまま、ブーンは大きく深呼吸した。
またすぐにこの火の町に飛び込まなければ。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:46:48.36 ID:5Ex427VAO
- まだいるかもしれない生き残りの人が、今この瞬間にも苦しみもがいているかもしれないのだ。
でも、さすがに体は言うことを聞いてくれない。
やっとの思いで『伏せ』の体形まで起き上がったブーン。
(∪;^w^)「さすがにキッツイお…」
ξ゚听)ξ「ねぇワンちゃん、他の生き残りの人はどこにいるの!?」
(∪;^w^)「お!?あ、いや…今僕の仲間が頑張って探してると思うんだけど…。多分、生きてる人はほとんどいないと…」
ξ゚听)ξ「……!!」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:48:20.53 ID:5Ex427VAO
少女は体を跳ね起こす。
そして、ブーンが止める間もなく彼女は火の街へと走り去ってしまった。
あまりにも無駄のないその動きに、ブーンはただただ黙ってみていることしか出来ず。
我に返ったブーンは、もう本格的に力の入らない足に鞭を打って、少女の後を追った。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:51:23.26 ID:5Ex427VAO
――――――――――
(;´ ゝ`)「弟者、どうだ!?」
(´< `;)「ダメだ生存者はいない!そっちは?!」
(;´ ゝ`)「こっちもダメだ!」
兄者と弟者は、比較的火の手がまだ及びきっていない商業エリアで生存者を探していた。
しかし、商業エリアは全滅したらしい。
あるのは黒く焼け焦げた死体だけだった。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:54:15.88 ID:5Ex427VAO
二人は立ち止まることなく、自ずと風上に向かって走る。
風上ならまだ火はそこまで回っていないだろうから、生きている人もいるのではないかという判断だ。
広い通りを進み、噴水があるエリアにたどり着いたところで、先を走っていた弟者が突然足を止めて叫んだ。
(´< ` )「兄者、生存者がいた!」
―――――――――――
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:56:01.95 ID:5Ex427VAO
- ――――――――――
从#゚∀从「絶対におかしいだろ、これッ!!」
ハインは居住区エリアで何人か見つけた生存者を引き連れて、とある門の前にいた。
怯えきった女から聞きだしたこの門は、国の外へと通じているらしいのだが…
从#゚∀从「何で開かないんだよ!!鍵かかってねーじゃねーか!」
押しても引いても、びくともしない門。
そこにいた全員でやってみてもダメだった。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:58:03.88 ID:5Ex427VAO
- 鍵はかかっていないし、門自体が歪んでいるわけでもない。
開かない要素が何一つ見当たらない。
それなのに、開かない。
「俺達は殺されるんだ!!」
「ずっと隣にいたお母さんがいないの!」
「妹がいない!」
誰かが叫ぶ。
―――うるさい、
ハインは門を蹴った。
門はびくともしない。
从#゚∀从「くそ……!!」
だれかの泣き声がやけに大きく響いた。
――――――――――
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 00:59:41.88 ID:5Ex427VAO
- ――――――――――
(;,゚Д゚)「な…何だよこれ!」
ギコは『それ』を見て、自分の目を疑った。
彼の目の前には外界と国の中を繋げる門がある。
ハインが見ているものと同じ形の門で、この国にはいくつかあるようだった。
しかしそんなことはどうでもいい。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:01:19.51 ID:5Ex427VAO
- ―――何でこれがこんなところに?!
頭上を飛来する蝶を睨みあげ、ギコは拳を握った。
目の前にある、閉ざされた門。
その門に浮かぶ、ぼんやりと青い光。
その青い光が形づくるのは、三日月の形―――
(;,,゚Д゚)「くっっっっそおぉぉおおおお!!!」
ギコの慟哭が、辺りに響く。
――――――――――
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:03:06.28 ID:5Ex427VAO
- ――――――――――
(∪;^w^)「ちょ、待って、ほんと、頼むから、お願いだから、」
ξ;゚听)ξ「何で着いてきたのよ!?」
居住区エリアの、ひときわ大きな通りに少女とブーンはいた。
火に飲まれ、もう炭と灰しか残されていない景色をブーンは必死に走る。
5メートルほど先を走り続ける少女を追って。
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:05:15.53 ID:5Ex427VAO
- (∪;^w^)「何で戻ったんだお!?」
ξ;゚听)ξ「私の仲間がまだいるかもしれないでしょ!?」
(∪;^w^)「いないかもしれないお!?」
ξ゚听)ξ「それでもまだ生きてる人がいるんなら!」
少女は走るスピードを上げる。
着いていくのもやっとだったブーンは、どんどん離されていった。
――――――――――
少女は、最も火が回っていない地区―――『オアシス』に着いたところでやっと足を止めた。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:08:26.13 ID:5Ex427VAO
- 陽炎と炎に囲まれた、見慣れた人影がいたのだ。
ξ゚听)ξ「デレ!」
ζ(゚ー゚*;ζ「ツン!!」
その人影は、ツンと呼ばれた少女の親友のデレだった。
デレは泣きながらツンに抱きつく。
それをしっかり受け止め、ツンは良かった、と安堵の笑みを零した。
( ´_ゝ`)「あれ、百合の最中?」
(´<_` )「んなわけないだろう、早くあの子たち連れて行くぞ!」
そんな彼女達の元に現れたのは、兄者と弟者。
そして、少しツンから遅れて来たブーン。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:09:57.67 ID:5Ex427VAO
- (∪;^w^)「兄者に弟者!?」
( ´_ゝ`)「あれブーン」
(´<_` )「あれ?」
思わぬ偶然に驚く三人をよそに、ツンはデレを剥がして怪我の有無を調べる。
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫、怪我はないよ!」
ξ゚听)ξ「そう、良かった!……それと、」
ツンの瞳がブーンたちに向けられた。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:13:21.36 ID:5Ex427VAO
- ξ゚听)ξ「あなたたち、知り合い同士?」
( ´_ゝ`)「ああ」
ξ゚听)ξ「そう、それなら――――」
空気を振るわせる咆哮がツンの声を掻き消す。
思わずデレはまたツンに抱きついた。
(´<_` )「!」
弟者の遥か上空を、蝶のモンスターが風を切って飛んでいく。
その口に火の色が見えた。
蝶の狙いは、恐らくブーン達。
ツンにしがみつくデレの腕の力が増した。
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:15:12.85 ID:5Ex427VAO
----------------
ツンは蝶を見上げて、胸元から何かを引きずり出す。
(∪;^w^)「お!?」
ξ゚听)ξ「あんたには絶対に一発くれてやろうと思ってたのよ!喰らいなさい!鉛玉を!」
そう叫んだツンの手には、拳銃が握られていた。
細い人差し指が、何の躊躇もなく引き金を引く。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:16:58.75 ID:5Ex427VAO
- 蝶の口から火の玉が放たれた。
拳銃の弾丸は猛スピードで蝶の目をえぐり、蝶は痛みに任せて羽を震わせる。
物凄い突風がブーン達を襲った。
そして、その風に押されて火の玉は真っ直ぐブーン達に向かって飛んでくる。
(∪;^w^)「伏せるおおおおおおお!!!」
ブーンが叫び、火の玉は目前。
もうすぐ訪れるであろう灼熱の衝撃に備え、無駄だと知ってもツンはデレを抱きしめて目を瞑って祈った。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:19:29.93 ID:5Ex427VAO
- 誰もが、もう駄目だと覚悟を決める。
火の玉の熱で体が蕩けそうな錯覚をツンが覚えたとき、その場違いな叫び声は聞こえた。
(,,゚Д゚)「さっせるかああああああああ!!!!」
突然近くの門を蹴り破って転がり込んできたギコの両手が光る。
彼の周りに転がる瓦礫がブーンたちの6人の周りに集まり、一部の隙間もなく彼らを覆った。
直後、僅かな熱気が瓦礫の盾の内部にいたブーンの毛皮を揺らす。
数秒の後に、瓦礫の盾は役目を終えて崩れ落ちた。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:22:13.78 ID:5Ex427VAO
- ξ゚听)ξ「?!何よ今の!」
(∪ ^w^)「ギコ!助かったお!」
(,,゚Д゚)「知ってるよ!」
从 ゚∀从「ギコ!こっちは準備完了だ!でももうオレはこの攻撃で最後だぜ!ったく、この国何個門があるんだよ!」
(,,゚Д゚)「分かってる!俺もだ!」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:24:55.86 ID:5Ex427VAO
- ギコが現れた門から、ハインが顔を覗かせた。
意味が分からないといった様子のブーン達をよそに、二人は上空で暴れる蝶を見据える。
片目が潰れた蝶は相当怒ったようだ。
なりふり構わず、辺りに火を散らして暴れまわる。
そんな蝶のモンスターを正面にして、ギコとハインは横に並んだ。
从 ゚∀从「ブーン、生きてる奴はとりあえず国の外に避難させたから大丈夫だ」
(,,゚Д゚)「それと、この国の色んな所にある門とか扉に、簡単な呪文が仕掛けられてた。
例のあの三日月の印に、『内側からは開けられない』魔術が施されてたよ」
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:28:13.57 ID:5Ex427VAO
- (∪;^w^)「…それ、どういう意味――(,,゚Д゚)「まぁ後で話す。これから俺とハインはとりあえずあの化け物の羽をぶっ潰すから、」
从 ゚∀从「多分それでもう今日はオレたち限界だからよ!後は頑張って倒してくれ!」
蝶のモンスターの口に、火の気が集まる。
それを見たギコは、近くにあった噴水の水に手を浸した。
彼の両手と噴水の水が反応して光った。
ハインは、蝶を見据えたまま何もしない。
爆ぜた火の粉に少し顔をしかめ、それでも蝶から視線は外さない。
本気で集中しているようだ。
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:30:31.20 ID:5Ex427VAO
- 何も出来ることがないブーンたちは、ただ黙ってその光景を見守っていた。
あらかたを焼き尽くした火が燻ぶり、熱い空気が全員の体力を奪う。
その場の緊張が痛いほど上がっていくのをツンは感じた。
双方、睨み合い。
何かに引火したのかオアシスの近くで大きな爆発が起こり、蝶の口の中にある火の気が一際大きく光った。
蝶を睨み上げていたギコは叫ぶ。
(,,゚Д゚)「行くぞ!」
从 ゚∀从「了解!」
ギコ、ハインの二人の攻撃が発動した。
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:35:12.56 ID:5Ex427VAO
- 街の中心で羽を揺らして飛んでいる蝶の化け物に伸びるのは、火で出来た紐。
それは街の至るところから伸び、化け物の体を捕縛した。
(,,゚Д゚)「うっしゃ、そのままじっとしてろよ!」
ギコの簡単なジェスチャーに反応し、噴水の水が突然物凄い勢いで飛び出した。
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:38:47.73 ID:5Ex427VAO
- 飛び出した水は、空中で捕縛されて動けなくなった蝶の羽に向かってその形を変える。
それは例えるなら、鎌のよう。
水でできた鎌は蝶の羽を根本から切り裂いて、ただの水に戻った。
空を飛ぶ術を無くした蝶の口から火の気が消えた。
ぐらり。
飛べなくなった蝶の胴体がバランスを崩して地上に落ちる。
切り離された羽は、風に乗ってどこかへ落ちたようだ。
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:40:18.63 ID:5Ex427VAO
- (;,,-Д-)「 」
从; -∀从「 」
蝶の体が地面に落ちて行くのを見届け、まず最初にハインが倒れた。
続けて、ギコが。
(∪;^w^)「ハイン!?ギコ!?」
ξ ゚听)ξ「あっ…」
瓦礫に倒れた二人を、兄者と弟者が抱え起こす。
ブーンは力尽きた二人に近付くと、蝶の体が落ちたであろう場所を睨んだ。
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:42:38.94 ID:5Ex427VAO
- (∪ ^w^)「……」
体力も気力も、もうとうに尽きた。
それでも、ギコとハインがくれたチャンスを無駄にすることだけはできない。
その場にいた6人を置き去りに、ブーンは走った。
足が上がらず、転んでも走った。
いつしか月は厚い雲に隠れ、その雲から大粒の雨が降り注ぐ。
―――ここで気を抜いたら、もう立ち上がれないぞ!
自分を叱り付け、ブーンはようやくたどり着いた。
多くの人の命を奪い、多くの人の日常を奪ったであろう元凶の元に。
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:45:06.04 ID:5Ex427VAO
- (∪;^w^)「…」
言葉が出ない。
声に回す気力すらもう無いのだ。
動けない蝶の体をブーンは観察した。
目立つ所に三日月の模様はない、あの模様はどこに?
―――あれさえどうにかすれば、もう終わるんだ。
雨で霞む視界を晴らすため、ブーンは一度目を閉じる。
そして、その些細な行動が裏目に出た。
蝶はもう何も出来ないと思っていたのだ。
羽をもがれ、鋭い爪も牙も持っていなかったことからの油断。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:47:07.11 ID:5Ex427VAO
- だから、信じられなかった。
もう動けない蝶が力を振り絞って口から伸ばした触手が、
ブーンの体を貫いたなんて。
(∪ ゚w゚)「 」
あの芋虫の触手は、肉を貫くに特化した形状ではなかった。
だからこの蝶の触手も同じで、精々ブーンの動きを止めて締め上げることしか出来ないと。
そう思い込んでいたのが、
迂闊。
――――蝶の触手はまるで自由自在に動く杭のようだった。
腹から背中に、背中から脇腹に貫かれたブーンの身体にもう力はどこにも残っていない。
雨に掻き消されるように、意識は薄れていった。
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:48:38.47 ID:5Ex427VAO
- ――――――――――
ブーンが倒れ、数分後。
そこに現れた二つの影の行動は迅速だった。
片目が潰れた蝶の、残された目。
それ目掛けて、何かを投げ付けた影。
血を流して倒れているブーンを抱え、その場からとりあえず離れる影。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:50:06.77 ID:5Ex427VAO
- ( ´_ゝ`)「どうやら残されたのは俺達だけのようだぞ、弟者」
(´<_` )「おいしいトコ取りって言ってる場合じゃないよな。ブーンを殺しやがったあいつに与えるべきは―――」
(#´_ゝ`)「「死刑だ」」(´<_`#)
両目を潰された蝶が、なんとも言い難い音を立ててもがく。
片目には鉛玉が。
もう片方にはナイフが深々と突き刺さっていた。
しかしそんな事はこの流石兄弟には何の関係もなく、むしろどうでもいい。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:51:42.11 ID:5Ex427VAO
- 意に介さず、兄者と弟者は容赦なく蝶に一方的私刑(リンチ)を与える。
芋虫だった時の外装の硬さは、蝶の身体には受け継がれなかったらしい。
攻撃すれば攻撃するほど、手応えは返ってきた。
(´<_`#)「死ね!!」
弟者は叫び、ナイフを投げ付けた。
ナイフは綺麗に蝶の胴体に刺さり、また新たな傷を増やす。
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:53:28.50 ID:5Ex427VAO
- 兄者はポケットから何かを取り出してピンを抜いた。
蝶の頭の前に落ちたそれは、芋虫に多大なダメージを与えた武器、手榴弾―――。
( ´_ゝ`)「逃げろ弟者!」
(´<_` )「分かった!」
二人が頭を抱え、伏せた途端に手榴弾は爆発した。
―――煙が晴れ、二人はゆっくりと立ち上がる。
(´<_` )「さすがの化け物でも、ここまでダメージを与えられたら死ぬだろうな」
しかし、そう呟いた弟者の予想に反して蝶は生きていた。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:55:09.60 ID:5Ex427VAO
- 兄弟が油断したのをいいことに、攻撃するための準備を整えて。
( ´_ゝ`)「あれ、ヤバい」
(´<_` )「こりゃー死ぬな」
蝶の口が、小さい火の気を携えてこちらに向いていた。
火は蝶の口から吐き出され、
兄弟は思い切り何かに突き飛ばされた。
(;´_ゝ`)「!?」
(´<_`;)「!?」
もろに瓦礫の山に突っ込んだ兄弟をよそに、『何か』は火の玉に向けて走っていく。
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:57:28.37 ID:5Ex427VAO
- それが火の玉と接触する直前、『何か』は、飛び上がって直撃を避けた。
目標を見失った火は瓦礫を焼いて消える。
一方で、上空に飛び上がった『白い何か』は攻撃する術を無くして無防備な蝶の口の中へ飛び込んだ。
その途端に蝶が苦しみ、絶命したことから口内で何があったかは一目瞭然。
蝶の口の中から出てきたのは、
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 01:59:58.73 ID:5Ex427VAO
- (;´_ゝ`)「ブーン!」
(´<_`;)「………」
まだ傷から血が流れたままのブーン。
普通なら立っていられるはずがない程の大怪我だが…。
(∪ ^w^)「兄者も弟者も、無事で良かったお!」
ブーンは全くいつもの調子で尻尾を振ってみせた。
強がりがきく状態じゃないのは明らかで、だからこそブーンの今の状況は絶対におかしい。
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 02:01:02.96 ID:5Ex427VAO
- ( ´_ゝ`)「えーと…。大丈夫なのか?ブーン」
(∪ ^w^)「全然平気だお!」
―――何故平気でいられるのかは考えても分からないんだろうな。
兄者は頷き、こちらに走って来た少女たちに意識を向けた。
ξ ゚听)ξ「だ、大丈夫?!」
(∪ ^w^)「問題ないお!」
ζ(゚ー゚*ζ「………」
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 02:02:13.61 ID:5Ex427VAO
- 互いの無事を確認し、ツンとデレは背負っていたギコとハインを地面に寝かせた。
ζ(゚ー゚*ζ「…あの蝶、キミたちが倒したの?」
ハインを下ろしたデレがブーンの前でしゃがむ。
その表情は晴れやかな笑顔で、ブーンは尻尾を振りながら肯定した。
ζ(^ー^*ζ「そう、強いね」
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 02:02:57.59 ID:5Ex427VAO
- デレはにっこり微笑み、
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 02:03:39.60 ID:5Ex427VAO
ツンから奪った拳銃で、
- 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 02:04:59.22 ID:5Ex427VAO
ばん
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/02(日) 02:06:08.30 ID:5Ex427VAO
ブーンの頭を零距離で撃ち抜いた。
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