- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/04(金) 21:22:27.18 ID:R+o5LIfF0
-
一 其の一
- 17 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:24:55.21 ID:Zk8pia4w0
- あの日から私は奴を観察することにした。
( ω )
奴のあの妙な笑顔が頭をよぎる。
恐ろしいと素直に感じた。
今まで数多くの不良や馬鹿な奴らを見てきたが、あそこまで不気味で殺気立ったものを私は見たことがなかった。
そして私は観察しているうちに知ったことが幾つかある。
ξ゚听)ξ(その一。奴に同性の友達はいない)
休み時間。クラスの、或いは他クラスの不良が私のもとへ集ってくる。
何故か私は奴らのグループの中心核になっていたようで、私が席を動く時は、トイレに行くか、
自販機に飲み物を買いに行くか、昼飯を食べに行くくらいだった。
私がそんな群にいる中、奴に気取られないように見ていた限り、奴の周りには誰も寄り付かなかった。
奴は本を読むか、寝たフリをするかの二択だった。
所謂空気な存在だったのだ、内藤という奴は。
目立ちもせず、視界に入っても気にされることすらない奴だ。
- 18 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:27:09.39 ID:Zk8pia4w0
- だがそんな奴だというのに、たった一人だけ接点を持つ者がいた。
ξ゚听)ξ(その二。奴は直とだけ会話をする)
いや、言い方を変えよう。
奴は決してたった一人のみと会話をするという訳ではないのだ。
話しかければそれに答える。現に先ほど後ろの席の生徒に話しかけられて何かのやり取りをしていた。
内藤が自分から話しかけることはない。
誰かが話しかけるまで誰ともコミュニケーションを取らないのだ。
これでは友達など作れるわけもない。
だというのに、そんな奴だというのに。
自分から話しかけたのが一度ならず数度、確認できた。
それは決まって教室の外でだ。
奴が教室を出る時は決まっていた。
毎度三限目の後だった。
私は取り巻きを自然に誘導させながら奴を追跡した。
- 19 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:29:26.90 ID:QQjKYWEs0
- そして私は見た。
( ^ω^)「空ー」
川 ゚ -゚)「やあ内藤」
階段の踊り場で、奴が自分から彼女に話しかけたのだ。
まるで友達のように。
そう、よく知った仲であるように、それに彼女も似た調子で答えていた。
ξ゚听)ξ(あれは……)
彼女の名前は直空。読みはスナオクウ。
姓と名が一文字ずつというのも珍しく、それに伴って彼女は美人で学校のマドンナ的存在だった。
とにかく目立ち、人気者である彼女と、冴えない空気者が仲良く喋っている光景は、釈然としなかった。
どういった関係なのか知りもしたくなったが、そこまでする必要はないだろう。
それにそこまで調べ上げるとなると、ストーカーも同然だ。
ξ゚听)ξ(ストーカー……)
- 21 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:31:43.84 ID:QQjKYWEs0
- ……三つ目に分かったこと。
私は何故かあの内藤の事が気になりだしていた。
- 24 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:33:54.69 ID:QQjKYWEs0
- 巷を騒がす事件が起きている。
何でも猟奇殺人だとかいうもので、それも聞いた話によるととてつもない内容であった。
最初に見つかった死体は、二週間前のことだ。
美歩大橋の下で、それは静かに存在していた。
それ――死体――はバラバラであった。
腕はちぎれ、足は根本さら取られていたという。
しかし不可解な物も死体と共に残していった。
その死体の各部パーツに、歯型が残されていたのだ。
内臓系統も無くなった部分があり、断裂部にもやはり噛まれた形跡があったという。
つまり、犯人は死体を食ったのだ。
マナーを守っているつもりなのか、残された死体は綺麗に整頓されているらしく、
現場には毎度「ごちそうさまでした」という血の書き残しがあるという。
そして事件はこの二週間の間に、初日も含め計八回起きていた。
どれも内容は似ていた。
犯人は特に襲う人間を選ばないようで、老若男女問わず、死体は増えていった。
しかし必ず犯人は決まった条件で行動を起こす。
よく晴れた夜に、犯人は犯行をしでかしている。
- 26 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:36:08.52 ID:QQjKYWEs0
- しかし近年、国内ではこのような事件は珍しくはなく、今やこの国では
殺人事件の発生率は年々と増加している傾向にある。
記憶に新しいものを上げれば、先月、S県で起きた死体のいずれかの指を必ず持ち去る指切り事件や、
S県と同月に起きたM県の頭部爆破事件等、様々な……
ξ゚听)ξ「って、何でこんなもんを……」
そこまで記事を読んで、私はブラウザを閉じた。
最近は夜、外に出るのは危ないと不良の連中も言いだしていて、私も例にもれず家の中で
退屈な時間を紛らわせようとインターネットをしていた。
気まぐれでニュースブログを見ていたら、先の記事があり、興味を惹かれたので見てみると
とんでもないものであった。
しかも、現場は私の住んでいる地域だった。
まさかこんな近くで起きていたなんて。
美歩大橋……歩いて十分とない。
だというのに私は何故事件を知らなかったのだろう?
いや、普段からテレビや新聞なんて読まないし、不良どもも似たようなもので、
馬鹿なことしか頭の中に無いからだろう。
- 28 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:38:22.72 ID:QQjKYWEs0
- 実際、不良どもが何故夜に遊ぶのを控え始めたのかすら、私は理由も知らなかった。
ξ゚听)ξ「よく晴れた夜、か」
窓を見る。
雲一つ無い、初夏の夜空が広がっていた。
梅雨は終わりを告げ、星達が瞬いている。
ξ゚听)ξ「よく晴れた夜、ね」
ドクンと心臓が高鳴った。
……つまり、今夜なわけ?
私は先ほどインターネットブラウザを閉じたパソコンをスリープモードにすると、部屋着のまま玄関に向かった。
親はいないから出入りなんていつでもできる。夜遊びをしても誰も咎める者はいない。
ζ(゚- ゚*ζ「……お姉ちゃん?」
……この子を除いて。
- 30 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:40:31.40 ID:QQjKYWEs0
- ξ゚听)ξ「何」
サンダルに足を滑らせる。
そう言えば、何故不良どもはキ○ィサンダルやエル○サンダルやら可愛らしいものを好むのだろうか。
私も持ってはいるが奴らに会う時以外は恥ずかしくて履かない。
ゴム質なサンダルのつま先をトントンと地に叩きつける。
ζ(゚- ゚*ζ「ダメだよ、夜は危ないから……」
妹が弱々しく、そう言う。
畜生、この妹は。可愛すぎてイライラしてくる。
ζ(゚- ゚*ζ「ね、お願い、お姉ちゃん……」
ξ#゚听)ξ「行ってきます!」
バン、と思い切り派手な音を立てて扉を閉めた。
少し罪悪感が胸に芽生える。
ξ#゚听)ξ「……うるせえ」
ああ忌々しい。
できた妹よ、姉のようになるなよ。
- 31 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:42:40.13 ID:QQjKYWEs0
- マンションを出て、先ずは先の記事の内容を思い出し、大橋に向かう。
高揚感からか、はたまた緊張からか足が早まる。
何だろうか、この感覚は。
一歩踏み出すたびに、生きているのか死んでいるのか、分からなくなるような。
ξ゚听)ξ(……大橋だ)
視界にそれが入ってくる。
第一の現場だ。
記事には橋の下が犯行現場と書いてあった。
土手を下る。
緊張感が高まる。
もしかしたら、犯人がいるかもしれない。
ξ゚听)ξ「っ」
果たして、そこには誰もいなかった。
ただ、ポツンと置かれた花が目に付くのみだった。
ξ゚听)ξ「居ない……」
- 32 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:44:55.33 ID:QQjKYWEs0
- まるで私は、犯人を探しているようだった。
止めなさいよ、もしかしたら本当に犯人に出会ってしまうかもしれないのに。
第一、見つけてどうするの。何をしようと言うの。
相手は殺人鬼なのよ。
そうは思うが、何故か私は街を彷徨った。
今まで犯行が起きた現場を全て回る。
その度に緊張感に支配され、犯人が居ないと知ると安堵を繰り返した。
次第に私は気づいた。
自分から極限状態に陥ろうとしているのだ。
オーガニズムに近い。
いや、ここははっきり言わせてもらうが私は処女だ。
何故絶頂時の快楽現象を知っているかというと、まあ、所謂年相応で、自慰行為で経験しているからだ。
しかし、何故こうも……。
ξ; )ξ「はぁ……はぁ……」
最後の現場に到着する。
やはり犯人の姿はない。
- 34 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:47:08.79 ID:QQjKYWEs0
- ビニールシートが、事件の跡を生々しく教えてくれる。
清掃もまだ完全ではないのか、血の跡がそこらへんにある。
ここは廃工場の駐車場だった。
入り組んでいることもあり、分かりにくい。
犯人がここで食事をしたのにも頷ける。
ただ次の日、運悪く地主がここの見回りに来なければ、死体はもう少し後で見つかっただろうに。
ξ゚听)ξ「ここで殺されたのが一昨日……」
……一昨日?
そう言えば。
あいつとあいつが何かを言っていた気がする。
「明後日、ここの旧校舎で」
「ああ」
- 35 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:49:17.85 ID:QQjKYWEs0
- ξ゚听)ξ「旧校舎……」
知らずに、私の足は進んでいた。
目的地が旧校舎に変わったのだ。
何故彼らの会話が、私の頭の中に残っていたのだろう。
私はしっかり聞いた覚えなどないというのに。
脳裏に奴のあの笑みが浮かび上がる。
あのおぞましい笑顔が。
見るもの全てを凍りつかせる悪魔のような笑みが。
奴が、先の言葉を、笑いながら私に向けていたような映像が頭の中で再現される。
直の奴も私を見つめて、内藤に返事を返していたような気がする。
よく晴れた夜。
猟奇殺人。
旧校舎。
何故だろうか。
私は胸が高鳴っていた。
- 37 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:51:34.55 ID:QQjKYWEs0
- そんなまさか、と思う。自分自身。
まさか同級生が人殺しを、挙句死体を貪るような真似、する訳がないと。
それに奴は、あの日、屋上で私に見せたのはあまりにも無様な醜態だった。
そんな弱くて、頼りない奴が人を殺せるのか?
そうだ、あり得ない。
そもそもこの事件と奴が関係しているとは断言できない。
だのにその思考をあの笑顔が全て消し去っていく。
ξ;゚听)ξ「まさか、まさか」
手が震えだす。
にも関わらず足は早まり、いつしか走りだしていた。
気づくと私の体はフェンスを越え、旧校舎へと向かっている。
一体、私は何時、どうやってここに辿り着いたのだろうか。
キン。
突然、静かな夜の旧校舎で、金属音がした。
背中に氷を押し付けられたような寒気が走る。
同時に胸が爆発したように熱くなる。
ξ;゚听)ξ「まさか……」
足が早まる。
音は使われなくなった旧校舎側のプールから聞こえた。
- 39 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:54:10.62 ID:QQjKYWEs0
- プールのフェンスをよじ登り、超えた頃には、最早先の金属音が聞き間違いなどでは
無かった事を身に沁みさせる。
プールサイドの方から、激しい金属のぶつかる音が響く。
それと共に低い唸り声や、息や、駆ける音が。
ξ;゚听)ξ「嘘よ」
何故か、それまで猛っていた足は、震えだした。
それまで保っていた速度も何処へやら、ゆっくりと、プールサイドへと向かい出す。
と、これまでで一番激しい金属音が響いた。
何かが遠くへ飛んでいく音、そして地面に落ちる高い音。
どちらかが獲物を手放したのだ。
何故それだけで、両者が闘っている図が思い浮かんだのだろうか。
これまでの事件はどれも一方的なもので、交戦したような事はなかったはず。
ならば何故、今このプールサイドでは闘いが繰り広げられているのだろうか。
更衣室の影から、そうっとプールサイドを覗き見た。
- 40 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:56:19.39 ID:QQjKYWEs0
- そこには、牛刀を手にした奴と。
( ^ω^)
奴を見つめている直が。
川 ゚ -゚)
いた。
- 42 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 21:58:28.33 ID:QQjKYWEs0
-
一 其の二
- 43 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:00:38.66 ID:QQjKYWEs0
- 異常な光景がそこにはあった。
昼間、いつも見ている奴の姿とは打って変わって、それはとても美しく見えた。
妙に凛とした表情を湛え、体には返り血を纏い、右手には牛刀を握っている奴の姿。
月光に照らされる奴は、神々しかった。
そしてそんな奴の後ろに控える直もまた、美しかった。
( ^ω^)「さて、どうするお、ドクオ君」
ξ;゚听)ξ(……え?)
聞き間違えだろうか。
奴の口から、私の知る者の名前が出てきた。
欝田ドクオ。私の同学年で、苛められっ子だ。
よく不良にはパシリにされたりサンドバックにされていたのを思い出す。
去年は同じクラスだったこともあり、彼にはよく扱き使われてもらった。。
未だに彼の地位はそこに留まっていると耳にしたが。
奴が語りかける先には、倒れている人がいる。
つまりそれは先まで内藤の奴と戦闘を繰り広げ、一本取られた状態だ。
先の音から察するに、相手にはもう武器は無い。
内藤の奴は余裕の表情だし、武器もある。
直の奴も控えているから、万が一にも相手に勝つ見込みがあるとは思えない。
- 44 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:02:48.94 ID:QQjKYWEs0
- 最も、相手にまだ余裕があったり、武器を保持しているとなると別だが。
だが私の眼に、奴に勝てる人間がいるとは、思えなかった。
直接闘っている姿を見たわけでもなく、醜態を晒していたような奴だというのに。
( ^ω^)「もうお終いかお?」
相手が、ムクリと起き上がった。
月光が相手の顔を照らす。
ξ;゚听)ξ「なっ!?」
自分が大きな声を上げていることすら、どうでもよくなった。
そこには彼がいたのだ。
イジメられっ子で、弱々しくて、不細工で、病気かと思うほど細い体つきをした彼が。
('A`)「…………」
欝田ドクオが確かにいた。
- 45 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:04:58.21 ID:QQjKYWEs0
- しかし驚きと同時に私は自分の過ちをすぐに理解した。
全員が私を見ている。この、異常に満ちた旧校舎の、理解できない空間に居る人間達の目が私を射抜く。
最早私も物陰から躍り出ていたし、姿は丸見えだった。
直の奴は驚愕につきる表情で、ドクオの奴は混乱しているようだった。
だが奴は、内藤だけは。
( ^ω^)
あの笑顔を湛えていた。
('A`)「……内藤、どういうことかな、これは?」
しかしドクオは直に平静を取り戻し、口元の血を拭いながら、奴に問いかけた。
( ^ω^)「何が?」
あっけらかんと内藤はそれに答えた。
首を傾げ、まるで理解できないと言いたいように。
いや、実際奴は「何が?」と口に出しているから、つまり、そもそもドクオの問い事態を理解していないようで、
素直に分からないと、理解できないと言っているのだろうか。
- 46 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:07:05.68 ID:QQjKYWEs0
- ('A`)「……つくづく、お前は気に食わない」
そしてその態度にドクオは苛立っている。
内藤や直よりも離れた場所から見ている私にも分かるほど、ドクオは殺気立っている。
今にもその手で内藤の首を絞めに行くのが容易に想像できるほど。
('A`)「内藤、お前、まさか勝った気じゃないだろうね?」
ドクオが、ズボンの後ろポケットに手を伸ばし、何かを取り出した。
あれは――
ξ;゚听)ξ(折りたたみナイフ!?)
そもそも、私は今起きていることを全然理解できていない。
まず、どちらが狙われているのかすら分かっていない。
っていうか、何故闘っているんだろうか、この二人は?
っていうか、何故私はここにいるんだろうか?
どちらにせよ異常だ。
同じ学校の、同学年の知った奴らが、刃物を手に、殺し合おうとしている。
- 47 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:09:15.95 ID:QQjKYWEs0
- いや、先程まで――私が現れるまで――も闘っていたんだろう。
何故ならドクオにも内藤にも、真新しい傷が見える。
二人の衣服にも破れ、解れ、切り裂かれたような跡がある。
ドクオは内藤よりも何倍も悲惨で、体の至るところから血を流していた。
やはり、これはどう見ても内藤の優勢――
ξ;゚听)ξ(――いやいや、違う違う)
何を呑気な事を考えているんだ、私は。
何故止めない、何故逃げない。
……ああ、足が竦んで動けないんだと素直に認めてやろう。
なんにせよ、自分も狙われる可能性はある。
どちらかが――もし――死んだ場合、残った人間は始末されるのがセオリーだ。
漫画や小説や映画なんかじゃそうだった。
しかも、どちらも食人だという可能性は捨てきれない。
直の奴も含めれば、もう誰が残っても絶望しかない。
- 48 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:11:24.48 ID:QQjKYWEs0
- そして、現状を完全に把握できていない私を他所に、物語は進んでいく。
いつだって、悲劇のヒロインっていうのは、不遇なんだ。
- 50 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:14:06.31 ID:QQjKYWEs0
- (#'A`)「死ねえええええええええ!!」
ドクオが駆ける。
剥き出しのコンクリの地面を蹴り、内藤に迫る。
振りかざしているのは、刃渡り十センチ程の折りたたみナイフ。
( ^ω^)「それはお前だお」
そして内藤は、それを静かに待ち構えた。
奴の頭にナイフが突き刺さる寸前、内藤が右手を勢いよく振る。
大型の牛刀に、折りたたみナイフは衝撃に耐えられず、ドクオの手から離れていく。
ドクオは完全な無防備になった。
( ^ω^)「キチガイ」
内藤が、慈悲も情けもなく、ドクオの腹に牛刀を突き立てる。
聞いたこともない音が響く。血の滴る音が静かに伝う。
ドクオは苦しそうに呻き、尚も内藤の首を絞めようとした。
( ^ω^)「ぉおっ!!」
そしてその光景は一瞬だった。
腕が飛び、首が飛び、ドクオは最早パーツを失ったマネキンのような様で、まるで作り物のようで。
静かに血を噴き出しながら、ゆっくりとプールサイドに倒れこんだ。
- 52 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:16:15.25 ID:QQjKYWEs0
- 私は悲鳴を上げなかった。
ただ目の前で起きていることを、フィルム越しで起きているように――そう、劇場にいるように、
それはまるで現実ではなく、撮った物を映画館で見ている感覚だった。
( ^ω^)「さて」
悪魔の笑顔をした奴が、こっちに歩み寄ってきた。
私はまだ夢現で、遠近感すらもあやふやで、一体奴が今どこにいるのかも識別できずにいた。
ガシリと肩を掴まれる。
触れた。
これは、こいつは、現実だ。
ξ;゚听)ξ「いっ――」
そこでようやく我に帰った。
人が死んだ、血のニオイがする、人殺し、猟奇事件の犯人、内藤、ドクオ、直、様々な情報が一気に流れ込んでくる。
それらが脳内でコンマ以下の速度で結びつき、算出された答えは「悲鳴を上げる」というなんとも人間らしい反応だった。
だがそれは虚しくも内藤の血生臭い右掌で口を塞がれたことにより、無駄足に終わる。
- 53 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:18:32.28 ID:QQjKYWEs0
- ( ^ω^)「暴れちゃダメだお。五月蠅くしてもダメ。おkかお?」
顔を私にこれでもかと近づけて、低い声でそう言う。
私はゆっくりと、それでも何度も頭を縦に振った。
( ^ω^)「いい子だお」
すると内藤はすっと私から離れて、座り込んだ私をその平均的な身長から見下ろす。
と、そんなところで足音が近付いてきた。
直だった。
彼女の右手には、先ほど内藤が再度ドクオの腹に突き立てた牛刀がある。
川 ゚ -゚)「まさか本当に来るとは……」
( ^ω^)「言ったお?津出さんもキチガイだって」
……何だろうか。
今こいつは人の事をとんでもない言い方しなかっただろうか。
ξ;゚听)ξ「ち、ちょっと、人のことを頭のいかれた風に言わないでよ」
- 54 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:20:42.71 ID:QQjKYWEs0
- 精一杯の勇気を振り絞り、抗議する。
そりゃ不良ではあるが、キチガイ呼ばわりは頂けない。
流石にこんな状況でも怒りが込み上げてくる。
川 ゚ -゚)「君に発言権は無いんだがな」
ξ;゚听)ξ「ひぃっ!」
と、目にもとまらぬ速度で、私の首に牛刀の切っ先を突きつける直。
おま、おい、普段の温厚な君からはとても想像だにできない行動だがね!
何か雰囲気も非常に怖いのですが……あれ、っていうか、これ私殺されかけてる?
ξ;凵G)ξ「ごめんなさいマジ簡便してください許して下さいこらえてつかあさい!!」
(;^ω^)「お、落ち着くお津出さん。空も、やめるお」
閑話休題
(;^ω^)「すまなかったお」
ξ;゚听)ξ「……いえ、いいわ」
それより、と続ける。
- 55 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:22:53.20 ID:QQjKYWEs0
- ξ;゚听)ξ「私も、殺すの?」
( ^ω^)「お?」
ξ;゚听)ξ「いえ、分かってるわ。そうよね、そう言う運命だもんね。うん、分かってる」
ξ;゚听)ξ「ああ、私食べられるのね。今まで捕食してきた牛や豚や鳥さん、気持ちがよく分かります」
川 ゚ -゚)「おい」
ξ;--)ξノ「いえ、いいんです、慰めなんて。首を突っ込んだ私が馬鹿だったのね」
ξ;凵G)ξ「ごめんね、零、お姉ちゃん、先に逝くからね」
(;^ω^)「津出さん」
ξ;凵G)ξ「至らない姉でごめんね、迷惑かけたわね、お姉ちゃん、大好きだったからね!!」
川#゚ -゚)「いい加減にしろ!!」
ξ )ξ ゚ ゚「ゴブラッファ!!」
- 56 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:25:00.33 ID:QQjKYWEs0
- (;^ω^)(最早シリアスの面影すらないお、ぶっ壊れちゃったお……)
ξ;凵G)ξ「な、何よ人殺し!人食い!鬼!悪魔!」
川#゚ -゚)「ああそうかなら殺してやるお前なんか斬って刻んで家畜の餌にしてやる」
(;^ω^)「ストップ。いい加減にしろ」
閑話休題、其の二。
などという事を繰り返してはいたが、それでも私は恐怖に苛まれていた。
何故なら、目の前には今しがた人殺しをやってのけた犯罪者が一名。
私を殺そうとした女子が一名という、異常な空間に居るのだから。
現在は旧校舎の一階、保健室。
話があるとのことでここに連れられて来たが、やはりここで殺されるのだろうか。
しかし、意外と冷静だ。
さっき人が死んだっていうのに――しかも、目の前で、同級生が――も関わらず。
しかも目の前にその犯人がいるにも関わらず。
- 58 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:27:08.88 ID:QQjKYWEs0
- 慣れるには時間が不足過ぎる。
ならば何故こうも落ち着いていられるのだろう?
いや、恐怖は先も言ったようにある。怖くて逃げだしたいほどだ。
だが、私は興奮していた。
あの時と同じだ。
ここに到着するまで、犯行現場を回っていた時と同じ。
あの時の緊張状態が、延々と続いているような。
恐怖と安堵が何度も駆けまわる。
果たして今生きているのか、それとも死んでいるのかすら、分からなくなる位に。
この極限状態は、あまりにも居心地がよかった。
( ^ω^)「楽にしてくれお」
保健室の中、突っ立ってる私に、椅子に座る内藤は言った。
私は小さく返事を返して、埃塗れのベッドの上に腰かけた。
直の奴は壁に凭れかかっている。
( ^ω^)「率直に言えば」
キイ、と内藤が回転式椅子を軋ませて、身を乗り出し、私を見つめて言った。
( ^ω^)「君が今日、来る事を僕は予測していたんだお」
- 59 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:29:20.46 ID:QQjKYWEs0
- ドクンと心臓が高鳴る。
……何だって?
( ^ω^)「驚いてるおね。まあ無理はないお」
いや、一人で納得するな。
ちゃんと私にも理解できるように説明を――
( ^ω^)「あの日」
ビッと人差し指を、内藤は私に向けた。
( ^ω^)「屋上だお。僕は呼ばれたんだお、君に」
ξ;゚听)ξ「――は?」
( ^ω^)「それまで極めて微弱ながらも感じてはいたんだけども、あの日だけは動かざるを得なかったお」
……待ってくれ、さっぱり理解できない。
- 60 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:31:34.05 ID:D8gZkPri0
- ( ^ω^)「……理解できてないおね、やっぱり」
ξ;゚听)ξ「正直、何が何やら」
だおねー、と弱々しく呟いて、内藤は顔を伏せた。
こいつ、もしかして……電波じゃないか。
あまりにも理解不能な事を口走ってるし、やっぱりこういう、普段はおとなしい奴に限って、
所謂電波系なんじゃないか。
いや、うん、まあ、これは、電波だろ。
そう言う類の奴ほど、危ないことするしさ。
人だって殺すでしょ、うん。
川 ゚ -゚)「……やれやれだな」
ふうと、直の奴がわざとらしく大きなため息をついて、壁から背を放した。
どけ、と短い言葉とその見かけからはとても想像だにできない暴力で、回転式椅子に座る
内藤を吹き飛ばし、そこに腰を掛ける。
川 ゚ -゚)「最早こうなった手前、説明するしかあるまい」
- 61 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:33:49.54 ID:+IyZHebd0
- 川 ゚ -゚)「あいつに喋らせると話は進まんからな、私が分かりやすく教えてやろう」
ξ;゚听)ξ「はあ」
まあ、殺されるまでの暇つぶしだ。
正直何でそんなものを聞かなければならないのか分かっちゃいないが。
そもそも、私は関係ないだろう。
川 ゚ -゚)「……自分は無関係だ、とでも言いたげな表情だな」
ξ;゚听)ξ(鋭い!)
だが口には出さない。
こう言った時は目線を下げてだんまりを決め込むのが一番だ。
川 ゚ -゚)「まあいいだろう……」
内藤とは違い、直は身を乗り出す事をせず、綺麗な姿勢を保って、私に話しかける。
川 ゚ -゚)「昨今、犯罪の……それも殺人事件が日増し目立つようになっているのは、流石に知っているよな?」
- 65 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:35:58.18 ID:+IyZHebd0
- ついさっき知ったばかりです。
ξ;゚听)ξ「ええ、まあ」
川 ゚ -゚)「その犯人達はな、ほとんどがある種の存在なんだ」
……?
ξ゚听)ξ「ちょっとよく分かんないんだけど」
( ^ω^)「人殺しを好む奴らなんだお。所謂殺人鬼って奴。まあ本質は少し違うんだけどお」
と、床でドタバタと暴れていた内藤が急に真剣な物言いで、そんな事を言った。
いや、そりゃ人殺す奴なんて、皆殺す事が好きでしょうに。
( ^ω^)「違う違う。鬼なんだお。キチガイ」
ξ;゚听)ξ「……ん?」
( ^ω^)「だから、鬼違いだお」
……ああ、もう。
やっぱりこいつ等電波だ。
- 66 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:38:06.86 ID:+IyZHebd0
-
一 其の三
- 69 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:40:23.16 ID:+IyZHebd0
- 川 ゚ -゚)「正確には人なんだがな。その残虐性と狡猾な様から私達はそう呼んでいる」
( ^ω^)「ほら、つい最近なんか頭爆発させちゃう奴とかも居たおね」
そう言えば、記事にそんな事が書いてあったな。
鬼……鬼、か。
確かに、鬼かもしれない。
今私が関わっている食人事件も、その頭部爆破事件も、とても人間のなせる事じゃない。
非道、人の道を踏み外している。
でも、人を殺すこと自体、既に道徳から反しているわけだから、言ってしまえば、
人を殺す奴なんて全員が鬼に変わりはない。
ξ;゚听)ξ「ってことは、今まで起こった殺人事件は全部、その、鬼違いの所為?」
( ^ω^)「では無いお」
違うらしい。
っていうか、その鬼違いが何なんだ。
仮にそいつらが存在していることを認めて、そいつらが事件を起こしていることを認めよう。
で、だからどうした。
- 70 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:42:35.38 ID:+IyZHebd0
- ( ^ω^)「奴等は、人を殺すことが目的なわけじゃないんだお」
ξ;゚听)ξ「……目的?」
川 ゚ -゚)「それも十人十色、それぞれ何かしらの思いがあってやってるんだろうがな」
……そう言えば、指切り事件。
犯人は、被害者のいずれかの指を一本切りとって持ち去ると書いてあった。
今回の事件にしても、その目的とやらが窺える。
犯人は、被害者を食べて、そこでようやく犯行を終えるのだ。
つまり、どの事件も、実のところ、本質は殺すことではない……?
( ^ω^)「気づいたかお」
ξ;゚听)ξ「まさか……」
川 ゚ -゚)「奴等はな、人の肉が食いたいから殺して捕食し、指が欲しいから指を持ち変えるんだ」
何だ、それは。
ξ;゚听)ξ「前者は分かるわ。食材っていうのは死んだ状態で初めて食べられる物になるから」
- 71 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:44:45.03 ID:+IyZHebd0
- ξ;゚听)ξ「でも、指を切りとるのなら、別に殺さなくても」
( ^ω^)「普通の人間が、指くれる分けないお」
ξ;゚听)ξ「……だから殺して……?」
川 ゚ -゚)「物を頼む時は頭を下げて目的を言うのが筋だろ。拒まれたから殺して持っていったんじゃないか」
ξ;゚听)ξ「そんな、考えられない」
( ^ω^)「奴等に常識は通じないお。人じゃないし」
川 ゚ -゚)「爆破魔もそうだ。頭が弾ける様を好んでいるらしい。別に殺したいわけじゃないらしいぞ」
……何でそんなことまで知っているんだ?
まるで、犯人に直接聞いたような口ぶりじゃないか。
ξ;゚听)ξ「もういいわ、分かった、信じてやるわよ」
そうだ、まずその話は一旦止めよう。
今、一番大きな疑問を投げかける。
ξ;゚听)ξ「あんたら、何者なの?」
- 74 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:46:58.75 ID:j5uviuFW0
- 先ほどまでの話を全部信じるとしよう。
ならば何故そんな事を知っているんだ?
一般人であり、学生なんて言う子供の身分で何で警察も知らないような事を知っているんだ?
そして、やはり二人は今回の事件の犯人なのか?
( ^ω^)「先に言うお。食人事件の犯人は、さっき殺したお」
ξ;゚听)ξ「それじゃあ!」
ベッドから身を乗り出す。
川 ゚ -゚)「ああ。欝田ドクオ……あの鬼違いが犯人だったんだ」
ξ;゚听)ξ「……そう、なの」
そこで、私は安堵する。
少なくとも、二人は死体を食べるような人間ではないという事だ。
いや、まだ自分が殺されないと断定したわけではないのだけれども。
( ^ω^)「で、僕達が何者か、かお」
- 75 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:49:09.55 ID:j5uviuFW0
- ゴクリと唾を飲み込む。
川 ゚ -゚)「鬼違いだよ」
……想像通りの返答だった。
そうだ。まだ謎は多いが、鬼違いだとかいうのをよく理解しているということは、
本人達がそうでは無いとは限らないのだから。
極めつけはあの戦闘能力に、解体速度だ。常人の出来ることではない。
そもそも普通の人間に人を刺す事も腕を切断するなんて事も出来るわけがないのだ。
川 ゚ -゚)「私は、な」
ξ;゚听)ξ「……え?」
ドクンと胸が鳴った。
私は、な……って、どういうことだろうか。
二人のうち自分はそうだが、もう一人は――
( ^ω^)「まあ、一応人ではあるお」
- 76 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:51:20.26 ID:j5uviuFW0
- 予想を裏切って、まさかの答えが返ってきた。
ξ;゚听)ξ「う、嘘だあ」
( ^ω^)「本当だお」
ξ;゚听)ξ「いやいや、だって、人、殺してたじゃ――」
川 ゚ -゚)「忘れたのか?鬼違いはな、殺すことを目的としていないんだよ」
ξ;゚听)ξ「で、でも」
( ^ω^)「津出さん。僕は鬼違いを殺すのが目的なんだお」
トン、と内藤が自分のこめかみに指を当てる。
( ^ω^)「超感覚って知ってるかお」
ξ;゚听)ξ「……はい?」
- 78 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:53:33.05 ID:j5uviuFW0
- 一体、何度私を呆れさせる気なんだろうか。
鬼違いといい、もう沢山だ。
どうせただじゃすまないんだろうしさ、こんな事に関わってしまったんだし。
ならもう好き勝手言ってしまおう。
あー阿呆臭いったらありゃしない。
ξ゚听)ξ「……あのさ、いい加減にしてくんない?」
( ^ω^)「お?」
内藤の奴も、直の奴も、普通じゃない。
いや、うん、人殺してるから普通じゃないけどさ。
ほら、あるじゃん。
頭のおかしい人ってさ、自覚してないんだよ。
何が鬼違いだ、何が超感覚だ。
ξ#゚听)ξ「馬 っ 鹿 じ ゃ な い の ! ?」
人生で初めてと言っても過言じゃないくらい、私は出したこともない声量でそう叫んだ。
ベッドに仁王立ちして、驚いた顔の内藤を見下ろしながら。
- 80 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:56:06.55 ID:j5uviuFW0
- ξ#゚听)ξ「あのね、今どき電波とか流行んないわけよ。分かる?所謂時代錯誤って奴なの。
そこら辺をまずさ、ちゃんと自覚してもらえてるかしら?いいえしてないわよね、分かってるわよ。
今の時代ね、そう言うのは厨二病、或いは邪気眼って呼ばれてるの。
いや、呼び方云々はやっぱこの際どうでもいいのよ。あんた等はね、とんでもなく痛いのよ。
どのくらい痛いかっていったら爪と指の隙間に間違って針を刺しちゃった時並みに悲惨で痛いのよ。
訳の分からん創作に用いるような設定をね、私のような一、一般人に語られても『はあ?』としか感想
なんか抱かないわよ。つーかね、その設定自体もう有触れた物すぎだっつの。古いんだよ。
如何にも型月マンセーって感じよ。どうせプレイした事も無いくせに馬鹿じゃないの?
そもそも厨二病っていうのはね、本来は中学二年s」
ビュンっ、と。
まだまだ言い足りない私の横顔を、物凄い速度で何かが通り過ぎて、後ろの壁に刺さった。
何だ、と不思議に思って振り返れば、そこにはビュインビュインと身を弛ませて壁に突き刺さっている牛刀が。
そして視線を前に戻せばそこには鬼と見間違えるほど恐ろしい少女の姿があった。
川#゚ -゚)「そんなに死に急いで何処へ行こうというのかね、ん?え?」
ξ;凵G)ξ「お、横暴だー!暴力で全てが解決するだなんて思ってるでしょー!?」
襟を掴まれ、プラプラと宙に浮く私。
驚くべきは、直の奴は私を片腕で持ち上げているということだった。
一体何処にそんな力があるんだ。
- 82 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 22:58:15.26 ID:j5uviuFW0
- ( ^ω^)「おk、時に落ち着け君たち」
と、後少しで三途の河原で船の順番待ちをするところで、救いの手が差し伸べられた。
川#゚ -゚)「チッ」
(;^ω^)「そこ、舌打ちしない」
あからさまに機嫌の悪い直を内藤が窘める。
……まるで子と親のようだ。
意外だった、まさか直の奴がこんな本性を隠し持っていただなんて。
実を言えば、私は直と何度か会話したことがある。
学校内での彼女は淑やかでいて清楚、その様は水面の如く澄み、静と美を併せ持つ。
会話も非常に礼儀正しく、気遣いもできるとてもいい子だと思っていたのに……。
川#゚ -゚)「後でハーゲンダッツな」
(;^ω^)「ちょ、簡便してくれお」
(゚- ゚#川「もう知らん!」
ξ;凵G)ξ(やっぱ人間じゃねーよこれ)
- 84 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:00:29.27 ID:j5uviuFW0
- はてさて、一体何処へ行こうというのか。
本来の姿にあるまじき状態に陥ってはいないか。
最早緊張感など何時の話か、私も分からない。
( ^ω^)「――真面目な話……」
なのに、全てがまたあの時の雰囲気に戻った。
あの、月の下、プールサイドで。
私が目にした奴の姿が、今、目の前にある。
その澄んだ瞳は私を見つめている。
瞳の中には私がいて、そして私の瞳の中には内藤がいる。
まるで吸い込まれるようだ……妙な感覚が身を包む。
これは、一緒だ。
甘い痺れ、居心地のいい緊張感、気持ちのいい息苦しさ。
ξ; )ξ(そうだ……極限状態だ……)
今、最も私は生と死の狭間に近いのだ。
この眼の前の少年が先の牛刀一本で、その命運を決めることができる。
私は、今や完全に内藤に支配されているんだ。
生きるも死ぬも、内藤次第だ。
- 86 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:02:37.85 ID:j5uviuFW0
- ( ^ω^)「確かに、信じ難いだろうお。突然こんな話を切り出されたら、普通はそう言う反応を取ると思うお」
目が、私を見ている。
私を見つめている。
( ^ω^)「感じるだろうお、津出さん?」
目が、私に更に近づいた。
今やあと数センチでぶつかる程の距離にあるというのに、私は動けない。
( ^ω^)「君は今、敏感に死を感じている。それと共に生もだお」
ξ; )ξ「う……ぅ……」
( ^ω^)「第六感覚、超能力、所謂存在の定義すらあやふやなもの、それが超感覚だお」
内藤が、ようやく私から目を離した。
すると、ようやく私は身が自由になった。
先ほどまで感じていた感覚もない。
ξ;゚听)ξ「……何で?」
- 87 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:04:47.03 ID:j5uviuFW0
- ( ^ω^)「プレッシャーだお」
ξ;゚听)ξ「プレッシャー?」
そうだお、と頷く。
( ^ω^)「今、僕は僕の持てる超感覚を、君に不快感や緊張感、圧迫感に変えて与えていたんだお」
何ならもう一度やるかお?と奴は言う。
ξ;゚听)ξ「……い、え……結構よ」
まさか、本当に存在しているのか?
その、超感覚という物が、こいつにはあるのか?
( ^ω^)「眼力なんて言うのは闘いの初歩も初歩、プレッシャーを与えるのは基本的な戦闘技術だお」
よく、戦闘のプロや格闘技者は眼だけで人を脅えさせることがあるという。
分かりやすい例えだと、不良のメンチやヤクザのあの眼なども似た物に挙げられる。
- 90 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:06:55.88 ID:j5uviuFW0
- ( ^ω^)「超感覚にも種類は色々あるお。超能力だって数えきれないだろうお?」
私は、そのようなものには詳しくはない。
が、ここは話を進めるために頷く。
何故か私は興味を再度抱いていたのだ。
この男、内藤に。
( ^ω^)「僕は、簡単に言っちゃえば、人を殺す感覚……闘う感覚が発達してるんだお」
ξ;゚听)ξ「え……」
( ^ω^)「……?どうしたお?」
ξ;゚听)ξ「いや、てっきり……その……」
(;^ω^)「死の線が見えたり、刃物を持つと達人クラスの剣客すらも一瞬で圧倒するような一族では無いお」
ξ;゚听)ξ「で、ですよねー」
- 91 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:09:05.62 ID:j5uviuFW0
- ( ^ω^)「ともかく、僕はそういう事で殺す才能があるんだお」
今度は才能ときたか。
まあ確かに才能なのかもしれない。
それがいいものだとは思えないが。
( ^ω^)「で、僕たちの正体は先も言ったように、僕は人間、空は鬼違いなんだお」
ξ;゚听)ξ「そこよ!」
ビン、と人差し指を内藤に突きつける。
ξ;゚听)ξ「何であんた達は鬼違いを殺すの?言わば同族じゃないの」
内藤はさっき、鬼違いを殺すのが目的だと言った。
だが直は何が目的なんだろうか?
そもそも、何故この二人は鬼違いに関わっているのか?
何故鬼違いを殺すのか?
( ^ω^)「順を追って説明させてもらうお」
こほん、と一つ咳払いをする内藤。
- 92 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:11:14.50 ID:j5uviuFW0
- ( ^ω^)「まず、鬼違いにも種類はあるお」
そう言って、内藤は直を指さした。
直の奴は眉間に皺を寄せてそっぽを向く。
( ^ω^)「鬼違い全てが、目的を持っているといったおね」
ξ;゚听)ξ「ええ」
( ^ω^)「彼女、空の目的は、生物が死ぬ瞬間を見ることなんだお」
当然、驚いた。
いや、何でって、あんな同年代の美少女が、まさかそんな趣味を持ってるのよ。
驚かない方が可笑しい。
それに加えて普段の彼女を知る人間だから尚更驚いた。
( ^ω^)「まあ彼女との馴れ初めは何時か話すお」
その話は今とても重要な気もするけれども、頷く。
( ^ω^)「で、だお」
- 94 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:13:23.42 ID:j5uviuFW0
- ( ^ω^)「空のように、極稀だけど人を殺さない鬼違いもいるんだお」
ξ;゚听)ξ「そうなの?」
川 ゚ -゚)「正確には殺せないんだよ、そこの馬鹿が邪魔でな」
ξ;゚听)ξ「ええ!?」
(;^ω^)「殺す気無いだろうお、嘘つくなお」
殺す気がない?
( ^ω^)「言ったお?鬼違いはそれぞれ目的があるわけで、殺しは目的を達成する手段の一つにすぎないお。
空は先も言ったように、殺さなくても目的を達成できるんだお」
まあ、絶対に殺さないとは言い切れないけれども、と奴は呟いた。
- 95 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:15:37.26 ID:j5uviuFW0
- ( ^ω^)「まあ比較的ニュースなんかに取り上げられる奴らは鬼違いの見本みたいなもんで、
僕たちは禁則事項的な所から依頼を受けて犯人を殺してるんだお」
ξ;゚听)ξ「じゃあ、ほとんどの事件はあんたら二人が解決してるわけ?」
( ^ω^)「実のところ、半分は。けれど僕のような人が国内には少なからずいるんだお。
それぞれが担当の地域で犯人を抹消してるんだお」
川 ゚ -゚)「覚えはないか?突然、昨日までは取り上げられていた事件が、いつの間にかパッタリと報道されなくなった。
これはな、既に犯人はこの世に居ないから取り上げる必要が無いのさ」
( ^ω^)「警察、マスコミ、政治家……ほとんどの機関は僕等のアシストをしてくれているんだお」
ξ;゚听)ξ「で、でも、それだけの機関があるんなら、何でそいつ等が直接手を下さないわけ?
可笑しいじゃない、どれも強大な組織ばかりよね?」
( ^ω^)「だから、僕たちなんだお」
ξ;゚听)ξ「……え?」
( ^ω^)「僕は、要は国という組織で鬼違いを殺すために存在するヒットマンなんだお」
- 97 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:17:50.96 ID:j5uviuFW0
- ξ;゚听)ξ「つまり、いいように使われてるわけ!?」
( ^ω^)「だお。無駄な経費はできるだけ避けたいお。僕一人で事件を解決できるなら国も安泰だおね」
川 ゚ -゚)「けれどここ最近はイタチごっこでな。あっちで事件を解決すればこっちじゃ新しい事件と、
流石に厳しい状況になってきた……らしいぞ」
そうだろ、と直の奴が内藤に訊ねる。
すると内藤は暗い顔をしておぉー……と深いため息をついた。
( ´ω`)「まったくだお。他県に飛んだり朝方まで闘ったり、寝不足は続くし疲労は溜まるし、嫌になるお。
関西じゃ僕の仲間が一人殺されたって言うし、油断しているとこっちが死ぬお」
聞けば学校が終わるとすぐさまどこぞへと駆けつけては色々とやっているようで、
そう言えばあの日、内藤の奴が屋上でとんでもなく疲れた顔をしていたのを思い出し、一人で頷いた。
ξ;--)ξ「……おk、もう分かったわ。いいわよ、認めてやるわよ」
既に私は疑うことを止めていた。
はっきり言えばこいつ等の言っていることを完全に信じたわけじゃない。
今だって信じ難い話なのだ。どれもこれも、まずは冷静になってから考えてみたい。
- 99 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:19:59.52 ID:j5uviuFW0
- ξ゚听)ξ「あんた、言ったわよね」
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「私に、あの日、呼ばれたって……私が、鬼違いだって」
私が真剣に訊ねる。
そう、後はこれだけを聞いて終わりにしてもらおう。
( ^ω^)「……僕は、超感覚で、戦闘に秀でていると言ったおね」
無言で頷く。
( ^ω^)「あの日。教室で寝ている僕は、敏感に殺意を感じ取ったお。
それもすんごく気持ち悪い、ドロドロした感じの、鬼違いとよく似たものだったお」
――ああ、皆、死ねばいいのに――
思い当たり、胸がチクリと痛んだ。
あれに反応したというのだろうか。
ただボンヤリと思ったことなのに?
- 109 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:32:15.85 ID:j5uviuFW0
- ( ^ω^)「自覚ないかもしれないけどお、君の殺意は酷かったお。
何気なく思ったことでも見る人から見ればもう危ない人としか思えないおね。
まあ、何度か君からはそんなものを感じていたって、さっきも言ったお?」
また無言でうなずく。
( ^ω^)「で、行ってみたら、何故かボコられて終わったお。
そこら辺はいいけど、実はね、津出さん」
僕は、君を殺そうか迷った。
そう、奴は言った。
( ^ω^)「僕をよく観察している風だったし、殺されでもするかと思ってたんだお。
で、一昨日、君に気取られないよう、この日を空に伝えたのだけれども……」
グイッと内藤の顔が、また私に近づいた。
( ^ω^)「君は、どうしてか来てしまったお」
- 110 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:35:05.58 ID:j5uviuFW0
- ( ^ω^)「結論を言えば、君は非常に可笑しな鬼違いであると言えるおね」
ξ゚听)ξ「え……」
( ^ω^)「まだよく分かった訳じゃないけど……そうだ、津出さん、此処に来るまで、何をしていたんだお?」
突然奴は私にそう訊ねた。
今更隠す必要もないと思い、私はすべて話した。
今まで起きた食人事件の現場を全て歩き回ったこと。
……犯人に、会おうとしていたこと。
( ^ω^)「……なるほど、空?」
川 ゚ -゚)「ああ、間違いない、こいつは鬼違いだよ」
ξ゚听)ξ「…………」
鬼違い本人に言われると、何とも説得力がある。
何となく、予想はできていたんだけどね。
- 114 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:38:03.11 ID:j5uviuFW0
- ( ^ω^)「君は極度の緊張感を求めているんだお」
やあ私。
今日から鬼違いと名乗りましょう。
- 115 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:40:10.82 ID:j5uviuFW0
-
一 其の四
- 118 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:43:12.46 ID:j5uviuFW0
- 結果からいえば、私は殺されなかった。
ξ--)ξ「零ー、ご飯ー」
ζ(゚ー゚*ζ「もう、さっき帰ってきたと思ったらこれなんだから。今日平日なんだよ?」
ξ゚听)ξ「心配しないでもちゃんとガッコー行くわよ!それよりごーはーんー!!」
ζ(゚ー゚*ζ「もう……ちょっと待っててね」
( ^ω^)『殺しはしないお。今は』
( ^ω^)『君がもしも害になるようなら殺すけど、今のところ気になるわけでもないし』
( ^ω^)『まあそういうことで、話も終わり、バイビーだおー』
ξ;゚听)ξ(或る意味死の宣告だよなあ)
ζ(゚ー゚;ζ「お姉ちゃん、ご飯落ちてる!」
- 121 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:46:06.40 ID:j5uviuFW0
- ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、私先に学校行くからね」
ξ゚皿゚)ξノ「はひはひ、ひっへはっはひ(はいはい、いってらっしゃい)」
ζ(゚ー゚*ζ「食べながら喋らないの!」
バタン、という大げさな音を残して、妹は先に学校へ行ってしまった。
途端に家の中が静かになる。
ξ゚听)ξ「モグモグ……」
どうにも、現実味のない一日だった。
私のキャパシティでは半分も理解できてないかも。
ξ゚听)ξ「ガラガラガラガラガラペッ」
鬼違い……超感覚……。
ξ゚听)ξ(いい加減ニーソも需要が薄れてきたかしら……)
どれも昨日から今日にかけて、初めて知った単語だ。
その内容たるや……非現実すぎて……。
ξ゚听)ξ「行ってきまー」
- 124 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:49:01.13 ID:j5uviuFW0
- ξ;゚听)ξ(うわ、顔ヤバッ……目とか超真っ赤だ……)
大橋を通る。
ここから後十五分もすれば、学校だ。
停めてあった車のミラーを覗き込んだ私の顔は、酷かった。
ξ゚听)ξ(あー、しんどい)
とてもつい数時間前まで人殺しの現場に居合わせていたとは思えない。
それくらい、私は冷静だった。
_,
ξ;゚听)ξ(あっついなー今日……)
内藤……直……。
昨日までは同じ学校の同じ学年の生徒というカテゴリーにいたのに。
もう彼等はその枠から遠くへと位置づけられた。
殺人鬼。
その部類へ私は脳内に収めた。
新しくできたカテゴリーに、少しも動揺することはない。
ξ;゚听)ξΣ(わずか一レスで学校についた!)
気づけば、いつの間にか校門を通りすぎていた。
- 127 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:52:43.07 ID:j5uviuFW0
- ついっと視線は旧校舎へと走る。
昨夜、事件がおこった場所だ。
特に変わった様子はない。
大方、あの後あの二人が始末とやらをしていたんだろうな。
ξ゚听)ξ(欝田ドクオ……か)
結局、彼が何故人を殺し、食べるなどという目的を持ったのか、私は知らなかった。
川 ゚ -゚)「やあ、おはよう津出さん」
と、下駄箱で、奴は突然現れ、話しかけてきた。
ξ;゚听)ξ「直……空……」
私を何度も殺そうとした、私の天敵。
その見た目からは想像できないほど醜悪で下劣な本性を隠し持つ悪魔。
こういうのが、悪女って言うんだろう。
- 129 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:54:59.98 ID:j5uviuFW0
- 川 ゚ -゚)「なんだかよからぬ事を思われている気がする」
ξ;゚听)ξ(その通りですよええ)
いや、非常に私は的確な表現をしたと思っている。
直をこれから見る時は妙なフィルターがかかる事だろう。
川 ゚ -゚)「少し、食堂に寄って行かないかい?」
ξ゚听)ξ「いえ、結構d」
川 ゚ -゚)「こい」
ξ゚听)ξ「はい」
いや、そりゃ行きたくなんかないよ。
下手したらこいつに殺されるかもしれないし。
わざわざ人気のないところへ連れて行くのもあれだし。
けど肩がっちりと掴まれたら逃げられないですよ。
今のうちに遺書でも書いとこうか。
- 132 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/04(金) 23:57:42.96 ID:j5uviuFW0
- 川 ゚ -゚)「でだ」
誰もいないからと分かっているからか、直の奴は椅子に胡坐をかいて座った。
もう嫌だこの美人、どうしてここまで今まで描いていたイメージを壊すんだよ。
川 ゚ -゚)「知りたいんだろ、今回の事件のことを」
ξ゚听)ξ「!?」
身を乗り出す。
川 ゚ -゚)「まあ、お前には知る義務がある、と言っておこうかな」
ξ゚听)ξ「え?」
川 ゚ -゚)「……いずれ分かるさ」
自動販売機で買ったコーヒーを、直が飲む。
そういえば、大分疲れているように見える。
川 ゚ -゚)「先まで死体片付けてたからな」
ξ;゚听)ξ「なるほど」
- 133 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:00:17.90 ID:tzamr4Yk0
- ああ理解できるのが少し悲しい。
自分も既にそう言った領域に慣れてきているのだろうか。
川 ゚ -゚)「事の発端はこうだ」
欝田ドクオ。美歩高校二年七組の生徒でイジメられっ子である。
幼少のころから彼はイジメられていたようで、言わばイジメられっ子の見本だ。
陰鬱な表情に細い体つきから、彼はよく気持ち悪がられていた。
彼は自分の体が嫌いだった。
顔は仕方がないと思っていたらしい。できればいつか金を貯めて整形をするつもりだったそうだ。
川 ゚ -゚)「太らない体質って、あるだろう?」
ξ゚听)ξ「ああ、時々居るわね。見てて腹が立つ」
川 ゚ -゚)「平たく言えば、欝田はその体質だったんだ」
いくら食べても太らない。
いいや、太れない。
何故ならそういう体質だからだ。
川 ゚ -゚)「基礎代謝を知っているか?」
ξ゚听)ξ「きそ……だいあやまり?」
川 ゚ -゚)「この馬鹿が」
- 135 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:03:11.10 ID:tzamr4Yk0
- 川 ゚ -゚)「基礎代謝は、何もせずじっとしていても、生命活動を維持するために生体で自動的に、
生理的に行われている活動でエネルギーを必要とする働きなんだがな」
欝田ドクオの場合。
彼は平均よりもその消費エネルギーがかなり多かった。
川 ゚ -゚)「そしてそのエネルギー消費量は骨格筋、肝臓、脳が半分以上を占めるんだが――」
率直に言えば、奴はイジメられたせいでその体質になったんだ。
ξ;゚听)ξ「え?何で?」
川 ゚ -゚)「度重なる身体的暴力、内臓への負担、極めつけは、奴が脳をよく使っているということだ」
ξ;゚听)ξ「何が何だか……」
川 ゚ -゚)「奴の成績を知っているか?」
ξ゚听)ξ「いや……」
川 ゚ -゚)「今までの試験、あれな、一位は全部欝田だよ。しかも全教科満点」
ξ;゚听)ξΣ「マジで!?」
- 138 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:05:20.83 ID:tzamr4Yk0
- 川 ゚ -゚)「勤勉であり、日々どうイジメを対処すればいいか、どうすれば終わらせられるか、なんてずっと
考えてるもんだから、当然奴の脳はとんでもない速度で動いてる」
まあ、とりあえずここまではそう大した問題ではない。
川 ゚ -゚)「でだ。奴は太りたかったんだ。だから奴はよく食った。好き嫌いもせず、何でも食べたそうだ」
ξ゚听)ξ「それで太らないのが羨ましいわね」
川 ゚ -゚)「馬鹿野郎。それが原因で、事件は起きたんだよ」
ξ;゚听)ξΣ「マジで!?」
川 ゚ -゚)「……お前、それが気にいってるのか?」
ξ*゚听)ξ「え?い、いやあ、まあ」
川 ゚ -゚)「……まあ、いい。続けるぞ」
- 141 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:08:01.88 ID:j5uviuFW0
- 川 ゚ -゚)「太る方法を知っているか」
ξ゚听)ξ「……いえ、まったく」
川 ゚ -゚)「先に言ったように、奴は勤勉だ。それも異常なまでに。学校でイジメられている以外は、ほとんど勉強しているくらいだ」
ξ;゚听)ξ「何か逆に怖いわね……」
川 ゚ -゚)「で、奴は見つけたんだ。その太る方法を、ある食材を」
脂肪、蛋白質、栄養素。
様々な要素が豊富であり、かつ質量の豊富なもの。
それは。
川 ゚ -゚)「そう、人間だ」
ξ;゚听)ξ「…………」
川 ゚ -゚)「奴がそこにたどり着くと、後は行動を起こすだけだった。その次の週には犯行に及んでいたそうだ」
- 145 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:10:51.57 ID:tzamr4Yk0
- ξ;゚听)ξ「ね、ねえ、直」
川 ゚ -゚)「何だ?」
ξ;゚听)ξ「何であんたそんなに詳しいの?」
川 ゚ -゚)「そりゃ、会って話したからな」
ξ;゚听)ξ「い、何時?昨日?」
川 ゚ -゚)「よりも前だ。奴を旧校舎に来るよう、言った日……一昨日になるか?」
私は、内藤の後をついていく。
先ほど内藤の電話に指示が出され、おそらく現在、犯人が犯行を犯しているであろう現場へと
向かっている。
( ^ω^)「さて、どんな奴かおねー」
川 ゚ -゚)「何でもいいから早く歩け」
呑気に歩く目の前の筋肉質な豚を蹴る。
早くしないと、死様が見れないだろうが。
- 148 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:13:35.50 ID:tzamr4Yk0
- ( ^ω^)「ここかお」
内藤が、高く聳えるフェンスを見据えて呟く。
川 ゚ -゚)「廃工場か……なかなかの趣味だな」
( ^ω^)「ほら、空、行くお」
そう急かされて、私は内藤の背にしがみつく。
一瞬、内藤が低い呻き声をあげたかと思うと、景色は一瞬で変わり、普通の跳躍では味わえない高さに達した。
川 ゚ -゚)「お前の背中は筋肉質すぎて、乗り心地が悪い」
( ^ω^)「文句言うなお。ほら、着地するお」
ぐんっ、と妙な浮遊感に襲われたかと思うと、すっぽりと私は内藤の腕の中へと落ちる。
こいつ、今私を離したな。
( ^ω^)「んー、音が……もう少し先のところかお」
内藤が歩きだし、私もそれに続く。
先ほどから微かではあるが、音が伝わってきていた。
- 149 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:16:01.13 ID:tzamr4Yk0
- この肌を粟立たせる、不快な音色。
普段嗅ぐことの無い、鉄の咽る香り。
間違いない。
死の香りだ。
川* - )「んっ……」
震えが走る。気持ちのいい震えだ。
ああ、やはりこういうものを感じると、自分は鬼違いなんだなと実感する。
( ^ω^)「感じてないでさっさとしろお」
……この野郎めが。
鬼違いなら、鬼違いなら分かってくれるだろうに。
まあ、こいつは人間だから、仕方がないか。
カツン、と、内藤がわざと大きな足音を立てて、そこに辿り着いた。
場所は、入り組んだ所にある駐車場だった。
奥の闇の中、月に照らされ赤い絨毯の広がる地面に、何者かが何かを貪っている。
あまりにも夢中で気づいていないのか、はたまた気付いてはいるが無視しているのか。
そんなこともお構いなしに、内藤はぐんぐんと何者かに近づいて行った。
- 150 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:19:04.83 ID:tzamr4Yk0
- ( ^ω^)「コンバンワ」
奴が発した第一声はそれだった。
なるほど?礼儀は正しいな?
で、相手はどう答えるんだろうか。
「…………」
……無視。
( ^ω^)「ダメだおダメだお。君は小さい頃、あいさつはちゃんと返さないといけないよって
教えてもらわなかったかお?」
またも無視。
( ^ω^)「いやあ、今夜はよく晴れてるおねー」
更に無視。
( ^ω^)「で、美味いかお、それ」
ピクリと、何者かの肩が動いた。
- 152 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:22:28.03 ID:tzamr4Yk0
- 「味はともかく、非常に臭くて、濃厚で、蛋白質が豊富だよ」
ぐっと相手は立ち上がった。
何とも細い身体をしている。
少しでも殴ったら折れてしまうんじゃないかと思うくらい。
そして、そいつは振り向いた。
('A`)「ああ、いい夜だな。内臓がよく見えて、脂肪がよく見えて、実に解体のしやすい夜だ」
その瞬間、現場は凍りついた。
内藤も、私も、そして――犯人、欝田ドクオも、全員が静止した。
( ^ω^)「……まさか、同じ学校にまだ鬼違いがいるとは思いもしなかったお」
('A`)「何を言ってるか知らないが、お前、確か……内藤、か?」
それに、と続けるように私を見る。
('A`)「直さん、直さんまでいやがる。お前と一緒に、何故だ?」
( ^ω^)「デートだおデート。こんな晴れた綺麗な夜はしっぽりと外でね」
- 154 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:25:02.99 ID:tzamr4Yk0
- ('A`)「そうか、意外だ。学校でマドンナ的存在の直さんに、よもやこんな冴えない彼氏がいただなんて」
( ^ω^)「おい誰が冴えないだって?」
川 ゚ -゚)「うるせーお前はどうでもいいわ。おい欝田とかいうの、誤解だ誤解、私はそこの豚とは何ともない」
('A`)「……何か、普段の君らしからぬ言動だね」
( ^ω^)「これが地って奴だお。女は怖いおねー」
川 ゚ -゚)「黙れ殺すぞ」
そこで、一旦沈黙が訪れる。
三者とも、現状をどうすればいいか模索しているのだ。
('A`)「深くは聞かないが、見られたからには逃がしはしないぞ、君達」
( ^ω^)「ああ、安心しろお。別に誰かに言ったりしないから」
('A`)「そういうことではn」
( ^ω^)「明後日」
- 155 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:28:02.70 ID:tzamr4Yk0
- 内藤が、無理やりに宣言する。
( ^ω^)「明後日、旧校舎のプールで、もう一度会おうお」
その言葉に、欝田は何かを感じ取ったのか、いやらしく笑うと、
('∀`)「……いいだろう。僕は慈悲深い、待ってやる。それまで精々いい物をたくさん食べて、上質な肉になってくれよ」
とだけ残し、去っていった。
川 ゚ -゚)「待て待て待て待て、意味が分からんぞ」
( ^ω^)「何がだお?」
何がって……。
何でわざわざ鬼違いを逃がすんだ、この馬鹿は。
( ^ω^)「いや、少し、実験も兼ねて……ね」
川 ゚ -゚)「おい詳しく聞かせろ」
- 156 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:31:02.06 ID:tzamr4Yk0
- 川 ゚ -゚)「で、内藤はお前を試す目的も含めて、今日……ん、いや、昨日を選んだわけだ」
ξ;゚听)ξ「別に、その場で殺せばいいものを……」
いや、と直が身を乗り出し、私に指を向ける。
川 ゚ -゚)「そうとも言い切れん。何故なら昨日までの段階で、内藤はお前も殺す対象に入れていたからだ」
……そうだ、そうだった。
そう言えば奴は私を殺すかどうするか迷ったと言っていた。
ξ;゚听)ξ「つ、つまり……一度に二体始末しようと?」
川 ゚ -゚)「ま、そんなところだった」
ξ;凵G)ξ「生きててよかったー!」
- 158 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:34:01.80 ID:tzamr4Yk0
- 川 ゚ -゚)「まあ、そんなわけだ」
一体どういうわけなのかはさておき、直はコーヒーを飲み干すと、立ち上がる。
川 ゚ -゚)「もうお前は無関係じゃない」
ギクリと身が固まる。
川 ゚ -゚)「これから、何度かお前と何かしらをすることになるかもしれんな」
じゃ、と直の奴は手を振って、行ってしまった。
ξ;--)ξ「……勘弁してよ」
ああ、もう。
……いいや、諦めよ。下手したら内藤に殺されるんだし。
大人しく従うことにするよ。分かりましたよ。
あーあもう人生波乱万丈、何が起こるか分からんね。
私は更に疲れが増した気がした。
- 167 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:47:15.95 ID:bmgHjjTP0
- (,,゚Д゚)「ちょーパネエwwwwwwwwwwwww」
从 ゚∀从「まじうけるんですけどwwwwwwww」
( ・∀・)「んだべ?wwwwwwwwだべ?wwww」
ξ;゚听)ξ(うるせー)
自分の教室に入ると、既に取り巻きは私の机の前で盛り上がっていた。
ξ゚听)ξ
ξ(゚△゚ξチラッ
( ´ω`)zzz
ξ(゚△゚ξ(ですよねー)
- 171 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:50:01.19 ID:bmgHjjTP0
- 奴――内藤は、自分の机に突っ伏して眠っていた。
まあ、そうだろう。
激闘を終え、長く喋って、死体の処理をして、もう朝だ。
……ん?もしかして今まで私がフリだと思っていたのは、実は本当に眠っていたのか?
ξ;゚听)ξ(まあ、いいや)
自分の椅子に座る。
取り巻きどもがおはよーだの何だのとあいさつを寄こしてくる。
それに私は適当に答えた。
(,,゚Д゚)「おいツンwwwwwwビッグニュースビッグニュースwwwwwww」
ξ;--)ξ「……何よ」
朝っぱらから、どうしてこうもテンション高いんだろうか。
こっちの身にもなれ、人の気持ちを知れ馬鹿野郎が。
从 ゚∀从「それがよwwwwwwww欝田がよwwwwww」
( ・∀・)「転校したんだってさwwwwwwwwww」
- 172 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:53:09.07 ID:bmgHjjTP0
- ξ゚听)ξ(転校ね)
在り来たりな事後処理もあったもんじゃない。
まさかこんな、小説やアニメやドラマや映画などで見ることが現実で行われるとは。
( ・∀・)「やっぱギコのせいだべwwwwwwwwwwwwwwww」
ξ;゚听)ξ(声でけーなー)
(,,゚Д゚)「は?wwwwwwちげーしwwwwww俺悪くねーからwwwwwww」
ξ; )ξ(うっせーなー)
从 ゚∀从「ひどっwwwwwwwwお前が一番イジメてたじゃんかwwwwwwww」
ξ )ξ(うぜーなー)
(,,゚Д゚)「知らねーwwwwwwwやられる方がわr」
ブチッ
ξ#゚听)ξ「うっせえええええええええええんだよカスがあああああああ!!!!!」
- 175 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:56:01.65 ID:bmgHjjTP0
- 机を吹き飛ばし、椅子が後ろに倒れた。
突然の事に、取り巻き共も驚いている。
教室の生徒が皆緊張の面持ちで私に注目していた。
ξ#゚听)ξ「テメーラ全員出てけゴルァアアアアアアアアア!!」
取り巻き共をまとめて教室の外へ投げ出した。
こちとら寝とらんのじゃ、迷惑なんじゃ、うっせーんじゃ。
あー精々した。
ξ゚听)ξ「ん?」
ふいに視線を感じた。
( ^ω^)
ξ゚听)ξ(あ、起しちゃったか)
( ^ω^)9m
ξ゚听)ξ(ん?私?)
( ^ω^)9m「減点」
ξ;゚听)ξ「何の!?」
- 178 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 00:59:02.11 ID:bmgHjjTP0
- ξ#゚听)ξ「おい何の減点よ今のは!」
( ^ω^)「君の持ち点は残り九だお」
ξ#゚听)ξ「いやだから何の!」
( ^ω^)「安全数値……?零になったら即排除」
ξ#゚听)ξ「なんでじゃあああああ!!」
( ^ω^)「人に危害加えたり物を壊したりしたらその分減点だお」
三三ξ#゚听)ξつ)ω^)ボヘェ
(;#)ω^)「ぼ、暴力はいけないと思うお!」
ξ#゚听)ξ「うるせえ死ね!!」
- 181 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/05(土) 01:01:19.71 ID:bmgHjjTP0
- 朝から元気もりもり、津出鶴子です。
あ、ようやく本名でた。
そうです、私、鶴子といいます。
取り巻き共からはよくツンと呼ばれておりますが、それは渾名です。
今時なんて古風な名前でしょうね。
妹は零なんてカッコカワイイ名前なのにね。
鶴って。鶴って何だよ。じったい。
動物かよ。鶴の子供で鶴子って。
そりゃグレますよ。不良みたいになっちゃいますよ。
(;#)ω(:;#)「も、もう君の持ち点零!零だお!これがどういうことか分かるかお!」
ξ#゚听)ξ「うるせえ死ねえええええ!!」
そんな鶴子ですけど、何やら鬼違いだったようです。
鶴じゃなくて鬼かよ。鬼子でいいよもう。
この先、どうなるんですかね。
続
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