- 2 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:14:40.11 ID:S5Dg4rhc0
-
殺人鬼としての生を送らなかったのなら。
僕は一体どうなっていたと言うのだろうか?
幸せそうに、楽しそうに。
毎日を姉さんと過ごせたのだろうか。
- 3 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:17:15.97 ID:S5Dg4rhc0
-
十 其の一
- 4 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:19:45.72 ID:S5Dg4rhc0
- (……?)
ぼんやりとした視界。
どこか仄暗く、狭く感じた。
(……何これ)
私は口を動かす。
いや、動かしている、はずだ。
どうにも感覚がおかしいのだ。
まるで頭の中で喋っているように、言葉を発しているはずなのに、空気を震わせない不自然。
目を瞬く。
相も変わらず視界は仄暗く、何処かうすら寒い景色に感じる。
(……違う)
うすら寒いのではない。完全に冷え切っているのだ。
今居るこの場所は途方も無く凍てついているのだ。
別にここが北極だとかシベリアの地だと言う話ではない。
ただ、異常が空気を満たしているだけだ。
- 6 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:23:30.14 ID:S5Dg4rhc0
- 揺れる頭上の電灯。辺りに飛び散った血。
床に倒れる二人の人。
(何よ、これ)
それを見下ろす――違う。私も、見下ろされているんだ――人の影が幾つか。
私?今この視界を認識しているのが私?
試しに手に力を込めてみる。
(力が、入らない)
不思議な感覚だった。どうにも人生で初めての経験だ。
まるで夢でも、見ているような……。
「れいー!パパが!ママがー!」
恐らく、私が口から出した言葉だ。
れい――零を、我が愛しの妹の名を呼ぶ。
ζ( ー *ζ「だいじょうぶだよ、おねえちゃん、だいじょうぶ」
私を抱きしめる幼き妹。
これは一体何だ。こんなもの、経験した覚えは無いぞ。
私を見下ろす奴等の手には刃物が。
相も変わらず床に這いつくばる男と女が。
- 9 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:26:58.31 ID:S5Dg4rhc0
- ζ( ー *ζ「だい、じょうぶだからっ……!」
ぽろり、ぽろりと零の瞳から滴が落ちる。
私の頬にそれは当たり、少しの温もりを与えた。
(一体、何なのよ、これは――)
何処とも知れぬ場所で、見知らぬ人が私達を襲おうとしている。
恐らく先の犠牲となった男女が二人。
(くそっ、動け!)
何を泣いている、私。
今何をすべきかどうか考えろ。
ぐずぐずするな、よ……。
……え?
(小さな、手?)
目に映る小さな私の掌。
抱きしめる零の姿も小さかった。
何を今更。
「忘れたの?」
何を?
- 10 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:27:45.16 ID:S5Dg4rhc0
-
「わたしがわたしになった日――」
- 13 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:30:53.24 ID:S5Dg4rhc0
- ( ^ω^)「おはよー」
ξメ#)呀)ξ「ぐぅっ!!」
床に這いつくばる私の頭を踏みつけて内藤は暢気にそう仰った。
( ^ω^)「いい御身分じゃないかお。十秒も眠れるだなんて?」
ぎりぎりとかかる力が強くなっていく。
く、そ、これじゃマジで頭を踏み砕かれる――
ξメ#)听)ξ「っらあ!!」
その足を振りほどくと、当て身をしようと内藤へ突進する。
が、内藤はそれを難なく避けると、少しばかり私と距離を置いた。
( ^ω^)「おお、いい根性だお」
ξ;#)听)ξ「けっ、なーにがいい根性、だ」
お前のいつもの手じゃないか。
まったく容赦も情けも無く私をボコボコにして、更に追い打ちだ。
先ほども内藤にぶん投げられて壁に激突し、気を失っていたところだった。
だのにも関わらず、こいつは更に追い打ちをかけ、無理矢理に戦闘を続行させると言う。
- 16 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:33:11.64 ID:S5Dg4rhc0
- ( ^ω^)「いやいや優しいだろうお。骨の一つも折らないようにしてんだからおー」
そりゃそうかもしれないがな。
( ^ω^)「で、君、さっき当て身しようとしたけど」
ざっ、と足を踏み抜く音が聞こえたかと思えば。
( ^ω^)「こう――」
内藤の右半身全体が私の体に触れる。
と、思えば次の瞬間には途轍もない衝撃が体内を駆けまわり、いたるところで爆発するような感覚が襲う。
( ^ω^)「――だお。分かったかお?」
ξ;#)Д )ξ「がっ……はっ!!おええぇぇええええええ゙えええ!!」
まるで内臓をもみくちゃにされたような気分だ。
いや、それは間違いではない。
何せこいつの当て身は内部を破壊するものだと言う。
更には脳味噌まで揺らすものだから、意識を保つのも精いっぱいだ。
胃の中の物を全て吐き出す。
が、それはもう何十回も繰り返されているため、もはや内容物など無い。
少し黄色がかった液体がツンとつく臭いを発しながら口から滴る。
( ^ω^)「おーい、早く立てお」
ぐいと髪の毛をひっつかまれる。
揺れる視界に映るのは、優しい笑みを湛えた糞殺人鬼が。
- 17 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:37:52.21 ID:S5Dg4rhc0
- ( ^ω^)「僕は君を甘やかさない。僕は君を立派な戦闘人間にしてやるお」
ああ。そうさ。
( ^ω^)「何故なら君はそれを望んだからお」
分かっているとも。
こんな糞のような特訓、誰が好き好んで続けるかよ。
そんなの、生粋の変態くらいだろう。
( ^ω^)「なら立てお」
震える私の体を蹴り飛ばす内藤。それでも私は衝突した壁に手をつき、立ち上がる。
( ^ω^)「腕がへし折れようと、足が消し飛ぼうと、内臓をバラされようと、それでも戦えお。
戦って戦って戦って、そして生きろ。それが君が僕から得るものだお」
分かっているさ。この糞野郎。
お前がどれだけ優しくて、どれだけ最低最悪かくらい、とっくに把握しているんだよ。
何が骨の一つも折らないように、だ。
その分こうやって瀕死にまで追い込む程残虐じゃあないかよ。
ξ;#) )ξ「っせーんだよ、バーカ」
いい加減、手、抜いてんじゃねーぞ。
ξ;#)听)ξ凸「さっさとこいよ!!殺人鬼!!」
- 20 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:41:32.11 ID:S5Dg4rhc0
- 「次の方どうぞー」
ξ;凵G)ξ「はい……」
ワイワイ、ガヤガヤと、思ったよりも賑わっている片田舎の県立病院。
平日の昼間だというのに、以外にも利用する人は多いようだった。
一体何故私がこのような場所に居るのかって?
いやあ、もう大体分かってくれるだろうけれども。
(;^ω^)「おお……その、すまんかったお」
ξ#;凵G)ξ「うっせー糞豚!!」
そうです。この糞殺人鬼の野郎に明朝、目茶苦茶に痛めつけられたからなのです。
あの後、中指を突き立てた私に対して何時もよりも激しい攻撃ばかりを見舞ってきた内藤。
その猛攻に対し、終ぞ限界が訪れたのか私の右足に異変が起きたのだ。
(;^ω^)「いや、でも、多分それねんz」
ξ#;凵G)ξ「いだいいだいいだいいいい!!」
まるで足が外れたのかと思うほどの激痛が襲いかかったことにより、本日の訓練はそれまでとなった。
- 24 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:44:52.66 ID:S5Dg4rhc0
- 順番待ちをすること数十分、ようやく名前を呼ばれて室内へと通される。
ξ;-听)ξ「つーか、何であんたが付き添いなのよ」
普通は家族の人間だとかそういった人だろうに。
いやまあ何だ、零たんには私の怪我如きで学校を休んでもらっては申し訳なさすぎるのだ。
しかし何故か今、私の隣には内藤の奴がいた。
別に頼んでもいないのに、だ。
( ^ω^)「んー。まあ、実は僕もちょいと野暮用があってお?」
何……だと……?
ま、まさかあの最強最悪、天下無敵、常勝無敗の内藤平助が?
怪我をしている、だと?
ξ;゚听)ξ「え?まじで?あ、まさか『屍』との戦闘で?」
確かに内藤はあの『屍』により、横腹を切り裂かれていたはずだ。
他にも奴との戦闘の中、数え切れないほどの負傷をしているのではないだろうか。
( ^ω^)「怪我ならもうほとんど治ってるお。脇腹も、ほら」
そう言って見せられた傷痕は、だいぶ回復していた。
これもあれか、超感覚のなせる業って奴か?
- 33 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:48:24.69 ID:S5Dg4rhc0
- ( ^ω^)「まあそんなもんかおね」
ξ゚听)ξ「じゃあ、一体何しに来たのよ?」
怪我も病気も無いとすれば、病院でやることなんて無いだろうに。
Σξ;゚听)ξ「はっ――まさかあんた、危ないクスリを!?」
有り得なくもない話だ。
何せこいつは日夜殺し合いの中に生き、緊張と不安とで神経をすり減らす毎日だ。
ならばそれを少しでも和らげるためにも薬は一番楽な逃避方法ではないか。
ξ;凵G)ξ「でもあかん!あかんで!あんたクスリだけはあかんのや!」
(;^ω^)「(めんどくせーなこいつ)んなわけあるかお」
ならば一体他に何があるというんだ。
( ^ω^)「まあ、いいから入ろうお」
何時までも漫才してたら話進まないし、と内藤が部屋の奥へと入っていく。
おま、普通そこは怪我人の私が先に行くべきだろうが。
ξ;゚听)ξ「はーっ……ってて……」
でもまあ、この程度で済んだことが奇跡とでも言おうか。
それともこの程度で済ませた内藤の手腕に見事と言うべきか。
測り知れん奴だ、まったく。
- 37 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:51:39.26 ID:S5Dg4rhc0
- 病院の独特なニオイは、別段好きでも嫌いでもない。
これは何だろうか、薬品の香りなのだろうか。
実験室なんかも似たようなニオイがするような気もする。
通された部屋には椅子に座る眼鏡の男と、傍に控える看護師が一人。
内藤は私を差し置いて、先に椅子に腰かけていた。
ξ#゚听)ξ「おまっ、ざっけんなようんこ野郎!」
一体な、誰の所為でこんなことになってると思ってんだよ、と。
つーかもっと反省しろよ、と。そもそも何で私より先に椅子に座ってんだよ、と。
突っ込みたいが面倒なので言葉を呑む。
( ^ω^)「まあ落ち着けお。後君、あまり汚い言葉ばかり使ってるとお、恥かくお?」
言われて私ははっとする。
少し苦笑いをする看護師さん、何処となく微笑んでいるお医者さん。
先ほど言った言葉を思い出すと、私は赤面してしまった。
ξ///)ξ「後で覚えとけよこのやろ……この馬鹿!」
いや今更だけれどね!
染髪して薄い化粧してなんて、ヤンキーじみた私が今更取り繕ってもね!
でも人前では出来るだけ恥かきたくないよね!死ね糞野郎!
(-@∀@)「はははは!いやあ元気がいいじゃないか!」
( ^ω^)「ちょっと頭の方が酷い状況かも知れんお。後でレントゲン頼むお」
ξ#;皿;)ξ「ぶっ殺すぞ!!」
- 43 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:55:37.28 ID:S5Dg4rhc0
- って、おい、お前内藤よ。
ξ;゚听)ξ「あんた、お医者さんに対して何生意気な口きいてんのよっ」
逆にお前の方が恥ずかしいぞ。
何だその馴れ馴れしい態度は。
(-@∀@)「ああいや。いいよ。慣れてるからね」
慣れてる?
( ^ω^)「津出さんや。さっき僕は、野暮用があるって言ったおね?」
ξ゚听)ξ「あー、うん、そういえばね」
看護師さんに促されて、内藤の隣の席に座る。
( ^ω^)「実はこの人に用が合って来たんだお」
と言って、内藤は指を、目の前の男性――
(-@∀@)「内藤君から直々のお目見えなんて珍しい限りだよ」
――お医者さんに向けた。
ξ;゚听)ξ「……え?」
何だ、今この医者、内藤君、って。
まるでお互いをよく知る関係のようじゃないか。
- 45 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 01:58:42.76 ID:S5Dg4rhc0
- (-@∀@)「さて、まずは僕の自己紹介からさせてもらおうかな」
一体何が何やら分からない私に対して、目の前の男は正面を向くと自らを名乗りあげる。
(-@∀@)「初めまして、津出鶴子さん。僕は朝日。情報屋だ」
ついでにこっちの看護師が助手ね、と言う。
ξ;゚听)ξ「情報、屋?」
その存在を、少なからず私は認知している。
以前、会合の時にもちらりとその話が出たし、解体事件の時にもお世話になっていた。
( ^ω^)「それだけじゃないお。僕等が今まで関与してきた事件、全てに関わっているんだお」
ξ;゚听)ξ「そうなの?」
(;-@∀@)「ははは。まあ、あまり役に立てていないように見受けるよねー……」
(;^ω^)「いやいや、いつもお世話になってるお、朝日さん」
曰く。
情報屋は、どのような組織、機関においても切っても切れない関係にあるという。
名の通り情報を扱う彼らは何時の世もどの時代でもどんな国でも少なからず存在しているという。
情報こそが戦い制す、というように、それほどまでに情報と言う物は大きいのだ。
でなければ行動を起こせないし、作戦を練るに練られない。
- 51 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:01:58.69 ID:S5Dg4rhc0
- そもそもが、だ。
暗部での動きを知る者がまず限られてくる。
さらには警察のような機関が関われないようなことも最近では多いときたものだ。
となるとさらに大きな勢力や、或いは特殊な機関がその情報を独占することが多い。
そんな情報を得て、かつ売りさばくのが情報屋だ。
得てして危険のつき纏う職業だが、それ故に得られる物も大きいらしい。
そしてそんな危険の中に生きる彼らを手籠めにし、且つ安全を保証するためと言って、
機関はある程度の情報屋を雇っているのだそうだ。多額の金で。
ξ゚听)ξ「情報屋、か」
一体どのような手段を用いて様々な情報を手に入れているのかは知らない。
だが、どうにも血生臭い中、必死で情報を漁る彼らにある種の同族めいたものを感じた。
( ^ω^)「まあ、僕の話は何時でもできる事だし、先に津出さんを診てくれないかお?」
(-@∀@)「了解。では失礼させてもらうよー」
はてさて、そんな情報屋に内藤が何の用なのだろうか?
いや、情報屋に会いに来て何するって、そりゃあ、何かの情報目当てなのだろうけれども。
しかし直接出向いてくるのは珍しいと、先ほど朝日さんは言った。
となると、何か大事な話が――
_,
Σξ;Д;)ξ「っていってええええええええええええ!!」
(-@∀@)「ありゃ、見事な捻挫だね。レントゲン見てみてもまあ、うん」
( ^ω^)「やっぱりかお」
- 57 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:04:45.37 ID:S5Dg4rhc0
- こ、この野郎!戸惑いも無く人の間接弄りやがったな!
(;-@∀@)「そんな怖い顔しないでよ……うーん、結構酷いみたいだけど」
( ^ω^)「この程度で泣き喚くだなんてガキかお」
ξ#;凵G)ξ「貴様あああ!!この痛みが分かるのか!?あ!?」
(^ω^ )「知ったことかお」
ξ#;皿;)ξ「何時か!!何時か絶対泣かす!!」
(;-@∀@)(噂に聴いてたけど、いやしかし、テンション高い娘だなあ)
何やら怪訝な表情で私を見る朝日さん。
な、何よ、私があまりにも美しくてキュートだからって、そんな。
ξ*゚听)ξ、「て、照れるじゃない」
( ^ω^)「朝日さん、ちゃっちゃと頼むお」
(-@∀@)「うん」
既に私の扱いに手慣れている内藤は、私を無視してそう朝日さんに言う。
糞、朝日さんまで対応早すぎやしないか?
(-@∀@)「これでよしっと。取りあえず、あまり派手な動きはしないでね。
下手したら骨折や靭帯断裂なんかもあり得るからさ」
ξ;-听)ξ「はーい……」
- 62 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:06:36.59 ID:S5Dg4rhc0
- しかし、捻挫って意外と恐ろしい物なのだな。
今聞こえた単語の中に骨折やら断裂やらって……。
(-@∀@)「身体は基本、大事に扱ってあげてね。ただでさえ君たちは日夜戦闘に勤しんでいるんだからさ」
まあ、その訓練でこの様なんですけどね。
(;-@∀@)「うーん、しかし、他にも色々気になる所あるな……腕とか背中とか、大丈夫?
脇完全に締められてないし、猫背だし肩落ちてるけど」
ξ゚听)ξ「え?」
言われて、自分の体を見る。
別段、変な所は無いと思うが……まあしいて言えば、全身痛いっちゃ痛いな。
(;-@∀@)「……内藤くーん……」
( ^ω^)「……まあ、壊れない程度、だお」
壊れたら、その間何もできないし。
と、内藤が呟いた。
(-@∀@)-3「……ほどほどにね?」
ξ;゚听)ξ(うーん……? もしかして、結構私の身体ってボロボロなのか?)
- 66 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:09:06.66 ID:S5Dg4rhc0
- ( ^ω^)「まあ足の事もあるし、暫くは軽いメニューでいくとするかお?」
ξ*゚听)ξ「ま、まじで!?」
まじかよ!あの地獄の特訓が幾分か楽になるだと?
これは願っても無い話だ!
( ^ω^)「まあ、血反吐くらいは吐いてもらうけど」
ξ;凵G)ξ「ですよねー」
そんな甘い話があるわけないもんね!
だって内藤だもんね!知ってた!私!
( ^ω^)「さて」
ふいに内藤の雰囲気が変わる。
( ^ω^)「朝日さんや、まず答えてもらいたい事があるんだけどお」
(-@∀@)「うん?」
ずい、と内藤が朝日さんに顔を近づける。
( ^ω^)「大事な情報、隠してるおね、あんた」
(-@∀@)「…………」
- 72 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:12:51.87 ID:S5Dg4rhc0
- ξ゚听)ξ「……大事な情報?」
何の話だろうか。
( ^ω^)「いいや、あんただけに限った話じゃあないお。恐らく、機関が手籠めにしてる情報屋全員」
全員で機関に対して秘密事を抱えているんじゃないか。
そう、内藤は言った。
(-@∀@)「はて、何を唐突に」
( ^ω^)「そうかお?じゃあ、教えてもらおうかお」
そんな朝日さんの何食わぬ表情を見て、内藤は続けた。
( ^ω^)「『vip』。いや、その残りっカスのお話を聞きたいお」
(-@∀@)「…………」
ξ;゚听)ξ(『vip』?……)
その単語に聞き覚えは、果たしてあったのだ。
それは何時か、内藤とあの『屍』が対峙した際。
『屍』がその名前を出すと、内藤は驚愕に表情を固めた。
(-@∀@)「知っているだろう、君も。最早あれは過去の遺物さ。存在しないし、残りっカスだなんて――」
- 74 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:15:28.43 ID:S5Dg4rhc0
- 話を遮ったのは明確な殺意と、朝日さんの首に宛がわれた柳包丁だった。
ξ;゚听)ξ「ちょ!?」
その殺意と包丁を持つのは内藤だ。
今にもその薄皮を掻っ切って、首まで刈り取るような様だった。
( ^ω^)「ネタは上がっちゃいないけれどお、あの『屍』の置き土産だお?それに既に代表にも話は通してある」
しらばっくれるなよ、と凄んで見せた。
(-@∀@)「……もしも、本当に何も知らないと言ったなら?」
( ^ω^)「馬鹿言っちゃいけないお。全ての分野に精通し、かつギルド内で情報を盥回しにしてて、
知らないわけが無い」
何故なら、あの『屍』にすら情報が漏れているからだ、と内藤は続ける。
それが決定打だったのか、朝日さんは短く息を吐くとやれやれと呟いた。
(-@∀@)「目茶苦茶な推論だよ。いや、推論とも言えない。それ、勘ってやつだよ」
( ^ω^)「たまには分からないなりに我武者羅にやってみるのも手だお。ほれ、すると思わぬ手柄が?」
成程、と言って朝日さんはくすくすと笑った。
いや、あの、まったく話が分からないのですけれども。
- 77 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:19:31.74 ID:S5Dg4rhc0
- ( ^ω^)「簡単に言うと、この人は、いや、機関の情報屋は皆僕等を欺いていたんだお」
ξ;゚听)ξ「はい?」
……訳が分かりません!
( ^ω^)「まあ、だろうから、順を追って説明していこうかお」
そう言うと、内藤はにこりと微笑んだ。
( ^ω^)「嘗て、『vip』という組織があったんだお」
内藤は語る。
『vip』。その昔日本の裏社会を支配したと言われるほど規模も影響力も大きかった組織があった。
その内容たるや、麻薬の密売、銃刀類の売買、中には軍事兵器等を取り扱う事もあったという。
ある種、ヤクザやマフィアのような存在であったようだ。
そんな中でも特殊めいた物まで取り扱っていたという。
( ^ω^)「人身売買、そして、スナッフビデオの制作、販売だお」
ξ;゚听)ξ「!」
ある一つの単語に私は反応する。
スナッフビデオ、だと?
- 80 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:24:40.67 ID:S5Dg4rhc0
- ( ^ω^)「もう気付いたかお。そう」
そこは嘗て僕が飼われていた組織だ。
そう、内藤は何でもなさそうに呟いた。
ξ;゚听)ξ「で、でも、それって確かあんたの姉さんとかが終わらせたって――」
( ^ω^)「そうだお。間違い無く、壊滅させたお」
そう。組織自体は、の話だ。
( ^ω^)「だけれども、完全に関係者すべてを抹殺、或いは捕縛できるかと問われたら……」
確かに、それは難しい話だ。
それにそれほどまでに巨大な組織だと言うじゃないか。
聞けば傘下の組織もあったと言う。
( ^ω^)「つまり取り逃がしたネズミが一、二匹居たって不思議じゃないんだお」
ξ;゚听)ξ「うーん……確かに」
だが、何故今更そんな話が出てくるというのか?
確かにその逃げ延びた組員が居たとしても、それは微々たる数だろう。
それに組織の本部も支部もすべて破壊し尽くしたというじゃないか。
ならばそれは既に機能しない筈だ。
一体、何故今更そんな遺物の話を?
- 82 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:28:20.37 ID:S5Dg4rhc0
- ( ^ω^)「さて津出さん。その前にその『vip』という組織についてもう少し詳しく語るお」
ξ;゚听)ξ「詳しく?」
( ^ω^)「『vip』という組織は、その実、そのほとんどの人間が鬼違い、或いは殺人鬼で構成されていたんだお」
その言葉に私は戦慄する。
いや、だがしかし、同時に頷けもした。
何故ならば。
( ^ω^)「おっおっ。この僕がいたような環境だからお」
そもそもがだ。
スナッフビデオだなんていう常人にはとても扱えないような代物を取り扱っている。
だけには飽き足らず自分たちの手での制作だ。
そうなると普通の人間がそこまでいるとは思えない。
流石に全員が全員鬼違いだとか殺人鬼だとかいう話はあり得ないだろう。
何故なら鬼違いは本能の赴くがままに人を殺していくし、殺人鬼に至っては殺す事を至上とするのだから。
となるとやはり指揮を執る人間は普通の思考回路を持つ人間でないとな。
( ^ω^)「けどそれは極僅かな数の人間だお。先も言ったとおり、その大半は異常に尽きる」
まあ募る所、殺人集団だった訳で。
鬼違い絡みであることから、内藤の姉達は動いたという話だそうだ。
- 84 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:30:51.84 ID:S5Dg4rhc0
- ξ;゚听)ξ「しっかし、危ない組織ね……そんなのが幅利かせてるとか、恐ろしいったらありゃしないわよ」
( ^ω^)「鬼違いなんて目的の為だけに生きてる分、使い勝手がいいし、利用しやすいからお。
お互いの目的が達成されるわけだから儲けもんだおね」
成程、そんなとんでもない組織が存在したというのか。
しかし無くなってよかったもんだ。心の底からそう思う。
聞けば獲物は誰でも何でもよかったそうだ。
肌の色が違おうが、頭がおかしかろうが、身体が不自由だろうが。
そんな無差別なもんだから、もしかしたら、身近な人が標的にされるかもしれない。
そんな事を考えると、途端に血の気が引いていく。
( ^ω^)「さて。津出さん」
ξ゚听)ξ「何よ」
( ^ω^)「何故今更こんな話を、とさっき訊いたおね?」
ξ゚听)ξ「うん」
ふふ、と内藤は堪えていたのか、笑みを零す。
何処か嬉しそうなのは、きっと気のせいなんかじゃないだろう。
( ^ω^)「あるんだってお。vipの後継的な組織が」
ξ゚听)ξ
Σξ; )ξ ゚ ゚「なんだってええええええええええ!?」
- 87 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:33:02.27 ID:S5Dg4rhc0
-
十 其の二
- 88 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:36:13.63 ID:S5Dg4rhc0
- ゴツリ、ゴツリと。
俺は踏みしめていく。
ミ,,゚Д゚彡-~「ふーっ……」
口に咥える煙草が赤く燃え、煙を吹く。
よく、あいつには煙草を辞めるように言われていた気がする。
ミ,,゚Д゚彡-~「結局、辞めらんないけどな」
リノリウムの床を俺は歩いていく。
まるで果てしなく続いていくかのような錯覚を俺は覚えた。
この道は俺の決心へと繋がっている。
その道の何と長く険しいかったことか。
ミ,,゚Д゚彡-~「ブーンよう」
長らく腰を落ち着けたままでいた。
その胸に燻ぶる熱に気付かないふりをしたままで。
弟――ブーン――が黙って調べ事をしているときだって、見て見ぬふりを続けてきた。
その懐の銃を、錆びつかせたままでいた。
ミ,,゚Д゚彡-~「俺もちっとは、男見せてくるよ」
この道は長い。
いいや、長かったのだ。
- 90 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:39:10.98 ID:S5Dg4rhc0
- ミ,,゚Д゚彡-~「…………」
目の前に立ちはだかる重々しい両開きの扉。
ここに立つのに、俺はどれだけの時間を労してきたというのだろうか。
たった一歩、たった一言が言えないままで。
だが、決定的に踏みいる手段も理由も手に無いままで。
だが俺は掴んだのだ。
我が愛する弟からその手段は受け取ってきたのだ。
ミ,,゚Д゚彡-~「よっと」
目の前の扉を足蹴に開く。
ブーンのような馬鹿げた力は無いが、それでも鍛え抜かれた脚力で重圧な扉を蹴って見せた。
ミ,,゚Д゚彡-~「邪魔しますよ」
ざわついている。
そうだろうとも。
普段、この場では俺は物静かで、何も語る事をしない人間だ。
ただ報告と命令だけを受けて時が過ぎるのを待っていた人間だ。
ミ,,゚Д゚彡-~「揃いも揃ってご機嫌麗しゅう」
ここは日本のトップ達が何事かを裏立てて計画を組む場だ。
その実、暗部の動向も全てこの木偶の坊達が管理し、把握し、そして操っている。
- 91 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:41:21.38 ID:S5Dg4rhc0
- 俺達『国解機関』もそれらと同等だ。
例えば公安も、特隊も、高等警察だって、こいつらが操ってきた。
「な、何事だ、布佐君!?」
ミ,,゚Д゚彡-~「何事も糞も、ねえ?」
空いている椅子に俺は腰掛ける。
空いているというよりかは、元より俺の座る筈だった席なのだが。
ミ,,゚Д゚彡-~「そもそもがだ」
ゴールデンバットを口から離し、煙を噴き上げる。
ミ,,゚Д゚彡-~「あの時もそうだった。あんたらが大事に大事に利益になるためだと放し飼いにしていた『vip』だ。
あれを潰した時、何故俺達には罰則も糞も無かったのか?」
一体何を、と場に居る人間達がどよめく。
ミ,,゚Д゚彡-~「理由は三つだ。一つはあの当時、既にそれは切り捨てられていた話だった。
何、そもそもが一つの組織程度が稼げる金なんてたかが知れる。あんた等の私腹の肥し程度、
他の何でも賄えたからだ」
二つ目、と俺は指を立てる。
ミ,,゚Д゚彡-~「最早あんた等の手では負えなかった。最悪、現在のメキシコマフィア並みの戦力になるところだったからな。
むしろ潰してくれて願いは叶ったりで万々歳だったろう」
その保持する兵器を目の当たりにして感じたのは、まるで戦争でも始めるつもりなのかと疑いたくなる数。
金が有り余ればこうもなるのかと驚愕し、慄いたものだ。
- 93 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:44:58.23 ID:S5Dg4rhc0
- ミ,,゚Д゚彡-~「何、俺はただあんた等に言いたい事があったから言いに来ただけだ」
散々痛めつけてようやっと口を開けた情報屋から手に入れた情報。
それは正に望んでいたものであった。
ミ,,゚Д゚彡-~「俺は……いや。俺達は今回、完全にそれを、『ν』を潰す」
その発言に、数名の者は席を立つ。
既にリークされている情報通りの顔ぶれが、悲痛な面持ちで俺を睨みつける。
ミ,,゚Д゚彡-~「おーおー。やっぱ『vip』の時の顔ぶればかりだな。
いいよ、あんたらも逆らえない立場にあるくらい知ってる」
誰だって命は惜しいに決まっている。
例え嘗て利用していた側だったとしても、それが逆転してしまうこともある。
つまり、彼らはまさにそれに成り下がってしまったのだ。
扱いきれぬ獣は手に余るというのに。
馬鹿な奴らだ。目先の金に目が眩む奴ほど未来を逃す。
ミ,,゚Д゚彡-~「おっと、何も言われる筋合いは無いし、言わせもしないぜ」
それが俺たちの仕事なのだから。
この国を、人々を脅かす鬼違い共を狩る存在。
人道を逸し、殺人を正当化し、正義と平和の名の旗の下、血を吹き暴れる。
それこそが俺たちなのだ。
- 94 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:46:53.98 ID:S5Dg4rhc0
- ミ,,゚Д゚彡-~「お疲れさん、おっさん共」
それだけで終わりだと告げて、俺は椅子を立ち、出口へと向かう。
「ふ、ふざけるな!!そんな行動、認められるか!!」
ミ,,゚Д゚彡-~「認めるんだよ、おっさん」
懐から銃を引き抜くと、戸惑いなく引き金を引く。
甲高い音が響き、おっさんの頭の真横を通り過ぎた弾は後方の壁にめり込んだ。
ミ,,゚Д゚彡-~「お前らの思惑なんて知ったこっちゃない。お前らの私欲のためだけに国を、俺達を、扱うな」
おっさんは腰を抜かして床にへたり込む。
俺はそんな様を嘲笑うと、煙草を吐き捨てて全員に背を向け歩き出した。
ミ,,゚Д゚彡「最後の理由だ。あんたらは俺達殺人鬼を、単純に畏怖しているんだ」
そうとも。
俺も、ブーンも、鶴子だって。
何を忘れていたのやら。
もっとシンプルでいい。
俺と言う存在を、俺達『国解機関』という意義を。
ミ,,゚Д゚彡「そうとも。俺たちは殺人鬼(スプラッター)」
際限なく、躊躇も情けも無く。
俺達は鬼違いを狩り続けるのみ。
- 96 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:50:12.56 ID:S5Dg4rhc0
- かち、かち、と。
時計は動いている。
だのにも関わらず、私は身動きが取れないでいた。
ξ;゚听)ξ「……マジで言ってるわけ?」
そんな危なっかしい組織の後継って、冗談だろう?
あったとして、何故『国解機関』は動かないと言うんだ?
( ^ω^)「理由は色々あるお。そもそも独断専行を僕等は認められていないお。
特に一つの組織相手となると、それこそ勝手にやるわけにはいかない」
それが例え鬼違いで構成されているような組織でも。
そう内藤は続けた。
ξ;゚听)ξ「け、けど、そのvipとかいうのは」
( ^ω^)「当時、かなり名の知れていた組織だったからお、知らない人は暗部ではいなかっただろうお」
だけれど。
( ^ω^)「それほどに強大且つ巨大な組織、一体どうしてそこまでの規模になったのか?」
勢力を増やすには金が、人員がいる。そして何よりも強力なスポンサーが。
そう言われて私は最悪な考えが過った……まさか。
( ^ω^)「だお。上の大半が奴等のスポンサーだったって話だお」
何とも馬鹿げた話じゃないか。
一体何だ、それは。
- 97 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:52:50.19 ID:S5Dg4rhc0
- ξ; )ξ「……信じらんない」
裏切られた気分だ。
少なくとも上に対する疑念は『屍』との接触からあった。
何か妙だと。
ようは、自分たちの都合の問題だったという話だ。
それが金であったり権力であったり、様々な形の力だったのだろう。
そうまでして得たいのか。誰かが死んでも。
( ^ω^)「姉さん達は結局、耐えかねて強襲した、ってわけだったんだお」
さて、と内藤は朝日さんを見る。
( ^ω^)「もう大体検討はついてるけどお。あんた等、上に直接口止めされてるんじゃないかお?」
その言葉に朝日さんは頬をかくと、短く唸る。
(-@∀@)「……半分正解かな。何、僕等はそういう人種だってくらい分かるだろ?」
別段、悪気も無くそう言う。
あんたも、結局は金だと言うのか。
( ^ω^)「ふうん……」
半分正解か、と内藤は呟いた。
- 101 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:55:48.89 ID:S5Dg4rhc0
- ( ^ω^)「となると、残りはその残党共からかお」
(-@∀@)「御名答」
成程ね、と内藤は一人納得した様子だった。
少なからず私も一人合点していた。
最早この組織は……。
( ^ω^)「悲しい事実だけどお。もう皆に裏切られていたわけかお」
上には情報を濁され。
信頼していた筈の情報屋はその実、既に買収されている。
( ^ω^)「御誂えだお、津出さん。むしろ僕らには相応しいとさえ言えるお」
ξ; )ξ「何処がよ……」
もう、一体何を信じろと言うのか。
これが社会で、大人の世界だと言うのか。
何でもありじゃないか。
何処に正しさがある。何処に正義があるのだ。
私は、私達は一体、何を信じて戦えと言うのか?
( ^ω^)「決まってるだろうお、津出さん」
そう言うと内藤は私の肩に手を置いた。
- 102 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 02:58:14.26 ID:S5Dg4rhc0
- ( ^ω^)「僕や、空。兄さんや他の皆。そして、君自身を」
信じろ。
そう、強く言った。
(-@∀@)「熱いねー。若いっていいことだよ」
そんな様子を緑茶を啜りながら朝日さんは眺めていた。
ξ#゚听)ξ「このやr」
( ^ω^)「まーまー落ち着けお、津出さん」
さて、と内藤は言う。
(-@∀@)「……分かってるよ、情報は全て吐く。だから殺さないで欲しいかなあ?」
( ^ω^)「納得する情報を言ってくれれば考えてやらん事も無い」
手厳しいねこりゃ、と朝日さんはため息をついた。
命は金より重いんだ、逆にありがたく思えよこの糞眼鏡。
(-@∀@)「……『ν』。それがその組織の名前だ」
( ^ω^)「はっ。新設故に『ν』だって名付けたなら安直もいいところだおね」
(-@∀@)「勘付いているだろうが、その組織は以前に比べれば少人数だ」
- 104 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 03:02:14.66 ID:S5Dg4rhc0
- 内藤でさえその組織の名前を聞かないとなると、やはり規模は小さいのだろう。
ただでさえ現代では特殊な組織や機関と言うのは目立つ。
だのにも関わらず名前を見もしないとなると、つまりはそういうことなのだ。
(-@∀@)「支部は無い。各地に構成員は少なからずいるだろうが、それも僅か。
大体数の連中は本部で活動しているよ」
( ^ω^)「活動内容は?」
(-@∀@)「…………」
黙り込んだ朝日さんに、先の包丁を内藤は向けた。
(-@∀@)「……スナッフビデオの制作、販売。そして『過去の遺物』の奪取」
( ^ω^)「成程、重点は変わらずかお。で、過去の遺物ってのは?」
(-@∀@)「……望んでいるんだよ、あの人は」
内藤の質問に答えず、何処か遠いところを見つめながら、朝日さんはぽそりと呟いた。
(-@∀@)「限りない死を」
( ^ω^)「…………」
ξ゚听)ξ「…………」
何かがあるのだろう。
途方も無い何かが。
- 106 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 03:05:39.39 ID:S5Dg4rhc0
- それを予感と言うべきか。
或いは予知したと言うべきか。
得も知れぬ恐怖が私の肌を伝う。
何かが起きる。そんな気がして。
(-@∀@)「内藤君。『vip』の由来は知っているかい?」
( ^ω^)「いや……」
ことり、と朝日さんは湯飲みを置いて、窓を眺める。
燦々と煌めく太陽が、今日も世界を光で照らしていた。
(-@∀@)「本部の……いや。始まりの地名にちなんでと言うべきかな。
何と言うか、ダジャレめいた……いや、しかしセンスが無いよね」
地名……?
ξ;゚听)ξ「え?」
いや、まさかな。
そんな分けが無い。
そもそも似たような地名なんて幾らだってあるだろう。
だから何も変なことなんて――
- 107 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 03:07:13.11 ID:S5Dg4rhc0
- (-@∀@)「想像通りさ津出さん。内藤君、君は本部で過ごしていたね?」
( ^ω^)「……まさかとは思うけれどお」
おい、勝手に合点するな。
おい、頼むから。
(-@∀@)「これは偶然か、はたまた必然か?しかし君は運がいい。今も、そして昔も」
これを幸運と呼べるのか?
こんな糞なことを?
(-@∀@)「組織『ν』。構成員約二百名。本部は嘗ての『vip』と同じく。ここ、美歩町が活動拠点だ」
ξ;゚∀゚)ξ「……ははっ」
本当、ふざけてる。
これを幸運と呼ぶべきか否か。
なあ、内藤。
お前はどう思う。
( ^ω^)「おっおっ……」
何も奴は言わない。
ただイヤらしく、狂気に満ちた顔で笑う。
続
- 111 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 03:13:21.68 ID:S5Dg4rhc0
-
問 二
何故彼女は見つけられたのか?
- 113 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 03:14:01.42 ID:S5Dg4rhc0
-
解 其の二
- 114 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 03:15:22.97 ID:S5Dg4rhc0
- 川;゚ -゚)「まいったな……」
どんしゃんぴゃらり、と祭囃子だとか人々で賑わう片田舎の神社。
来て早々に私達は津出と離れてしまった。
(;゚∋゚)「こんだけ人がいると見つけるのは至難だぞ、空」
川;゚ -゚)「分かってるよ……」
先から彼女の携帯にコールをかけてみるが繋がらない。
恐らくあの馬鹿の事だ、充電でも切れてしまったのだろう。
まったくもって世話の焼ける大馬鹿女だ。
折角の縁日だと言うのに……。
川#゚ -゚)「ええい、仕方のない奴め」
今頃はチョコバナナだとか綿菓子だとか、水あめだとか型抜きだとかを思う存分楽しんでいるはずなのに。
(;゚∋゚)(食うことばっかだな……しかもガキ臭い……)
川 ゚ -゚)「しかし……」
果たして津出が向かう場所は何処だろうか。
大抵、こういう大きな場所ではぐれたら人目につきやすい場所へ行くはず。
- 115 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 03:17:52.98 ID:S5Dg4rhc0
- 川 ゚ -゚)「いやいや……」
むしろ逆か。
これだけ人がいるのならばかえって人の少ない場所に居た方が分かりやすいだろう。
川 ゚ -゚)(あいつにそこまで考えが及ぶかは知らんが)
……結局、私の考えは的を外れていた。
屋台裏、人の近寄りそうにない所。
神社の裏側まで見て回っては見たが何処にも居ない。
( ゚∋゚)「しかし、一人でうろちょろしてる訳も無いだろう」
どうかな。
もしかしたら一人で祭を楽しんでいる可能性まで浮上してくるぞ、この有様では。
( ゚∋゚)「取り合えず、二手に分かれよう。俺はあっち見てくる」
また後でここで落ち合おう、と言うと、クックルはその巨体で人の群れをかき分けていった。
川 ゚ -゚)「ふうむ」
しかし、本当に何処に居ると言うのだろうか。
先程一人で楽しんでいるやも、とは言ったが、あいつの性格からそういうのは有りそうに無い。
兎に角クックルとは反対側にまわると、人の群れをかき分けながら奴の姿を探す。
- 118 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 03:19:19.48 ID:S5Dg4rhc0
- 川;゚ -゚)(ぐぬ……っくそぅ)
しかし人が多い。
溢れかえるこの人、人、人。
一体全体、こいつらは何処から湧いて出てきたのだろう?
特に目立つ催しも無いと言うのに、何故こんな辺鄙な所の祭なぞ。
身長が低い所為もあるが、先から周りがよく見えない。
それほどまでに人でごった返しているのだ。
そんな時。
「東の林だよ」
そんな声が聞きとれた。
川 ゚ -゚)「――え?」
何故だかその声には、何処か聞き覚えがあった。
川;゚ -゚)「……?」
辺りを見渡す。相変わらず人で溢れている。
誰が誰なのか、正直見分けがつかなくなるほど。
- 119 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 03:21:56.54 ID:S5Dg4rhc0
- 先の言葉が頭の中で再度響く。
東の林。
何の話だ、と単純に不思議に思う。
そもそも私に対しての台詞なのか?
いやしかし、確かにその言葉は、何故か自分に向けられているものなのだと、感じた。
川;゚ -゚)「……何だ、この違和感」
いや、むしろ薄気味悪さ、か?
それに、何処か聞き覚えのある声。
女性の……いや、少女の、声。
川 ゚ -゚)「いや、しかし、林……ね」
確かにそっちはまだ調べていなかった。
流石にあの馬鹿でも、そんな所に入ったりはしないだろうと。
だが、調べてみる価値はある。
川 ゚ -゚)□「……クックルか、ちょっと指示する場所に来てくれ」
携帯を取り出し、クックルと連絡をとるとそう言う。
まあ、行ってみるだけ行ってみようか。
- 120 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 03:24:17.30 ID:S5Dg4rhc0
- ξ )ξ「…………」
果たして、彼の馬鹿女はそこに居たのだった。
小さな女の子にのしかかられ――殺される手前の状態で。
即座にクックルは動くと、少女の首を刎ね飛ばす。
呆然とする津出を抱きしめてやると、奴は静かに泣き始めた。
川 ゚ -゚)(……本当に、居た)
彼女の背を撫でながら私は先の事を思い返す。
あの台詞。あの言葉。
何故だ。何故……。
川 ゚ -゚)(そして……)
思い返す。その声色。
可愛らしい声だった。誰が聞いてもきっと納得するくらい。
川 ゚ -゚)(いや、だが、そんな)
疑心が胸を渦巻く。
脳裏に内藤の笑顔が浮かび、次いでその少女の笑みが浮かんだ。
川 ゚ -゚)(…………)
- 126 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/16(火) 03:40:30.48 ID:S5Dg4rhc0
- 何かが、何かが狂っていく気がした。
私や、津出、そして内藤さえも巻きこんでしまうような。
だがこの疑いは、解決しなくてはいけない。
川 ゚ -゚)(津出……)
震える少女を私は抱きしめてやる。
普段はヤンキーを気取っているくせに、その実何と脆弱なことか。
少しでも小突いたら、死んでしまうような、そんな儚さだった。
川 ゚ -゚)(……友達、だもんな)
それは本心へと変わっていく。
偽りの思いから、確かなものへと。
傷つけると言うのなら、私は許しはしない。
津出の為なら何でもやってやろう。
例えそれが彼女の近しい人であろうとも。
彼女に害を加えるのなら、徹底的に叩きのめしてやる。
終
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