- 2 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 18:27:44.96 ID:OtU5RShe0
内藤装備まとめ
鯨包丁
http://viploader.net/ippan/src/vlippan232008.jpg
鰹包丁
http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/s/?@0_mall/chokuhan/cabinet/ikou_20100323/img1022398704.jpg
- 3 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 18:30:56.13 ID:OtU5RShe0
-
僕が。
私が。
私が。
望んだ事って何だったんだろう。
- 5 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 18:35:03.74 ID:OtU5RShe0
-
十三 其の一
- 8 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 18:38:20.84 ID:OtU5RShe0
- ζ(゚ー゚*ζ「他でもない貴女なら、きっと分かってくれる」
川;゚ -゚)「…………」
彼女は私に肉薄する。
唇と唇が触れてしまうくらい、直ぐそこに居るのに。
だのに私は身動きが取れなかった。
同じだ。こいつは。
内藤だとか、つまりはそう言った人種なのだ。
誰もいない図書室。
本日は学園祭も相まって学校中至る所が賑やかだった。
対して、今私と津出零の居るここは、得体の知れぬ緊張感で満ちていた。
その不穏な雰囲気を放つのは、他でもない、彼女。
川;゚ -゚)「……お前は何者なんだ」
ここ数週間、訊きたくて堪らなかった言葉を吐き出す。
そもそもが謎に満ちている。
今目の前にいるこの女の正体は、一体。
- 12 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 18:41:28.32 ID:OtU5RShe0
- ε-ζ(゚ー゚*ζ「……そうね。順を追って言った方が早いものね」
そう言って彼女は微笑む。
私から身を離すと、先と同じように向かいの席へと腰掛ける。
私も向かい合う。知らずうちに唾を呑みこんでいた。
ζ(゚ー゚*ζ「貴女はこんな組織があったのを知っている?」
それは途方もなくて、まるで夢のような、馬鹿げた話だった。
日本の影を支配し、殺戮の限りを尽くす。
鬼違いと殺人鬼がおりなす血みどろのオーケストラ。
だが私はそんな夢物語を知っていた。
そんな下衆で糞で腐った組織が存在していた事を。
何故ならその組織と深い因縁を持つ者が近くに居る。
ましてや我が『国解機関』はその組織を壊滅に追いやった張本人ではないか。
川;゚ -゚)「……何故だ」
何故お前がそれを、『vip』を知っている。
先もそうだ。私の事や、『国解機関』のこと。
一体全体、貴様はどうやってその情報を仕入れている。
- 13 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 18:44:48.53 ID:OtU5RShe0
- だが何故だ。
川;゚ -゚)「何故今更そんな話を?」
最早それは遠い記憶の彼方の存在ではないか。
単なる知識自慢だとでも言いたいのか?
いやしかし、それを今口に出すと言う事は、何かしら意味があるに決まっている。
ζ(゚ー゚*ζ「……今だからこそ、かな?」
訳が分からない。まるで答えになっていない。
ζ(^ー^*ζ「あるのよ?その残存組織が」
川;゚ -゚)「――!?」
……何を言っているんだ、この女は。
ζ(゚ー゚*ζ「そうね。回りくどいのはやめましょうか。単刀直入に言うわ」
そう言って彼女は己の指で己を示す。
σζ(゚ー゚*ζ「『vip』の後継組織、『ν』の首領をやっているの、私」
- 14 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 18:48:05.47 ID:OtU5RShe0
- 川;゚ -゚)「馬鹿な!」
叫んで立ち上がる。
そうだ。それは本当に馬鹿げたことだ。
だってそんな話、知らないのだ、私は。
そもそもあるわけがない、と。
だって完全にそれは破壊し尽くしたじゃないか、と。
何故、お前のような若い人間が、と。
言葉は頭を駆けまわる。
何から口に出せばいいのか分からなくなる程に。
ζ(゚- ゚*ζ「失礼ね。馬鹿じゃあないわよ」
川;゚ -゚)「……馬鹿だから馬鹿だと言ったんだ」
だが否定できる材料が何処にある。
はっきり言えば彼女の言う事が真実かどうかなんて分からない。
だがそれを覆す情報を私は持っていない。
ζ(゚ー゚*ζ「……何時だって人々は心に黒いモノを抱いている」
川;゚ -゚)「……何の話だ」
ζ(^ー^*ζ「まあ、聞いてよ」
- 15 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 18:50:55.71 ID:OtU5RShe0
- 私は立ったまま、彼女を、ツンの妹を、零を見つめたままでいた。
ζ(゚ー゚*ζ「きっと、誰しもが人には言えない『何かを』秘めているのだと、私は思うの」
川;゚ -゚)「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「それが決して許されない事でも、どうしても求めてしまう『何か』が」
そう言うと、彼女は私と自分を指さす。
ζ(゚ー゚*ζ「けれどふとした何かがきっかけで、自分を抑えられなくなる時が来る」
川;゚ -゚)「……お前、まさか」
嫌な予感がした。
そうだ。きっとそうだ。
私は知っている。彼女のある特異な事情を。
それは彼女だけじゃなく、ツンにだって関係している事を。
きっとそうだ。ツンは自己防衛のために、その記憶を封印してしまっているのだろう。
だが彼女は――
ζ(゚ー゚*ζ「そうよ。私も、鬼違い」
- 16 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 18:54:38.25 ID:OtU5RShe0
- 川;゚ -゚)「……きっかけ、とは」
ζ(゚ー゚*ζ「私達姉妹の事、もう、調べ尽くしているのなら、言う必要もないでしょ?」
川;゚ -゚)「…………」
……沈黙が場に響く。
どうにも、どうするべきなのか、分からない。
だが目の前に居るのは、他ならぬ鬼違いだ。
我らの本分を忘れたわけではない。
しかし、しかし。
ζ(゚ー゚*ζ「友達の妹は殺せない?それとも、殺す事が怖い?」
そう、訊かれた。
川;゚ -゚)「私は殺す権限を持ってなどいない。あるのは力の行使、のみだ」
懐から拳銃を静かに引き抜く。
銃口を彼女に向け、セーフティレバーを下ろす。
川;゚ -゚)「訊きたい事は山ほどある。確認するべき事もな。着いてきてもらうぞ」
先の『ν』という組織の話も、そしてその首領であるという話も、鬼違いであると言う事も。
私一人では対処のしようが無いのだ。
- 17 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 18:57:35.19 ID:OtU5RShe0
- ζ(゚ー゚*ζ「……言ったでしょ?用があるのは、私の方よ?」
だが彼女はこの状況で余裕だった。
拳銃を突きつけられていても、だ。
川;゚ -゚)「はっ、余裕じゃないか。今のお前に何が出来る」
ζ(゚ー゚*ζ「何か、はできるかもね」
川;゚ -゚)「そうなる前に、私は引き金を絞るぞ」
構え直す。
一体、一体この余裕は何だ。
普通じゃないぞ。お前、今、銃を突きつけられているのに。
ζ(゚ー゚*ζ「ふふっ」
川;゚ -゚)「……何がおかしい」
ζ(゚ー゚*ζ「んー?いやあ、ね」
そうこられるとなあ、と零は呟いた。
ζ(゚ー゚*ζ「困るわ。力を行使するのなら、私も使わなきゃいけないから」
川;゚ -゚)「……馬鹿が。だから――」
- 18 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 18:59:58.42 ID:OtU5RShe0
- ζ(゚ー゚*ζ「いいわよ、入ってきて」
川;゚ -゚)「!?」
その言葉が紡がれた瞬間、図書室の扉が静かに開いた。
次いで、足音がこちらへと近づいてくる。
それはまるで無機質で、何の存在感も無い、空気のようだった。
果たしてそこに居るのか、居ないのか、分からなくなる。
そうだ。これは生気が無いのだ。
本当に、何も。
川;゚ -゚)「……嘘、だろ」
記憶の中に微かに残っているその姿。
あの雪の降る季節、私はそいつの後姿をよく覚えていた。
血を纏い、闇を歩き、生と死の狭間を好んで生きる化け物。
そいつは私の前に立った。
まるで無機質、まるで無生気。
( ´∀`)「嘘じゃあないモナ。俺は今、確かに、此処に」
- 20 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:02:45.07 ID:OtU5RShe0
- いるのだ。その最悪の象徴が。
あの最強の内藤が求めてやまない死神が。
今、確かに、私の、目の前に。
ζ(゚ー゚*ζ「驚いちゃった?」
川;゚ -゚)「う……ぁ……」
驚くだと?そんなもので済むはずが無い。
こいつは、この男は、『躯』は、この世で最も恐ろしい存在なんだぞ。
そんな奴が何故此処に、何故お前なんかに――
( ´∀`)「おい、少女よ」
そんな『躯』が、零に声をかける。
ζ(゚ー゚*ζ「何かしら?」
( ´∀`)「まさかこんなのと『戦え』とか言わないモナね?」
ζ(゚ー゚*ζ「……不満が?」
( ´∀`)「ありありモナ」
『躯』は至極面倒臭そうに、退屈そうにため息をつくと、かつかつと窓辺に歩いていく。
そうして手に持つ布で包んだ何か――日本刀だろう――を立てかけると、外の景色を眺め始めた。
- 22 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:05:45.72 ID:OtU5RShe0
- ζ(゚ー゚*ζ「あー……まあ、その、ね、変な事は考えないでほしい、かな?」
零はそれに呆れたようで、私の顔を再度見るとそう言った。
変なこと、ね。この状況でか。
そんなことが出来る奴、いてたまるものか。
川;゚ -゚)「……一体、私に何の用なんだ」
私は銃を再び懐に仕舞うと、椅子に座る。
どうやら『躯』は私に興味が無いようだが、零に何かをしたら、きっとただでは済まないのだろう。
まるで無関係と言いたそうな顔をしているが、常にこちらの様子を窺っているのが分かった。
ζ(゚ー゚*ζ「……お姉ちゃん、このままでいいと思う?」
川;゚ -゚)「……?」
このままでいいとは、何の話だ。
ζ(゚ー゚*ζ「何も知らないわけじゃないのよ。最近、明朝に出掛けたり、深夜まで帰ってこなかったり。
どうせ、何かやっているのでしょうけどね」
ねえ、と彼女は私を見つめる。
ζ(゚ー゚*ζ「貴女、何も思わないの?」
川;゚ -゚)「…………」
- 23 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:08:13.13 ID:OtU5RShe0
- 何も思わない?
だって、それは彼女が彼女の意思で始めたことではないか。
強くなりたいと、戦えるようになりたいと望んだのは、ツン自身だ。
一体誰が何癖つけられると言うんだ?
ζ(゚ー゚*ζ「分かって無いのね。貴女」
川;゚ -゚)「おい、お前、いい加減はぐらかさず言いたい事を言えよ」
ζ(゚ー゚*ζ「だから。この先、お姉ちゃんに絶対の安全は保障されるの?」
川;゚ -゚)「っ……」
安全の保証なんて、この世界にある訳が無い。そんなの当然だ。
暗部に生きているお前ならよく知っているはずだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「……言ったわよね。私は、お姉ちゃんを世界で一番愛している、って」
川;゚ -゚)「……ああ」
ζ(゚ー゚*ζ「私は許せないし、耐えられないの。お姉ちゃんがそんな危険な世界に生きる事が」
川 ゚ -゚)「……危険な、世界……」
- 25 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:11:03.34 ID:OtU5RShe0
- ζ(゚ー゚*ζ「否定できるの?私の知る記録だけでも、既にお姉ちゃん、何度も殺されかけてるのよ?」
川#゚ -゚)「――あの夜、見離した癖によく言うじゃないか」
まるで矛盾している。
お前はあの時何をした。
私にヒントを与えるだけで、それっきりだったじゃないか。
ζ(゚ー゚*ζ「見離した?いいえ、私は居たわ。ずっと。お姉ちゃんの傍に」
川 ゚ -゚)「――え?」
ζ(゚ー゚*ζ「控えていたのよ。ずっと。どうしようもなくなるその時まで、ずっと」
川;゚ -゚)「……何の為に」
ζ(゚ー゚*ζ「貴女を試していたのよ、直さん」
私を、試す?
ζ(゚ー゚*ζ「自らを友達と名乗った人が、その友達の窮地を救えるかどうか。信用に値するかを」
川;゚ -゚)「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「……まあ、結果から言えば、ギリギリ合格、だけどね」
- 27 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:14:28.37 ID:OtU5RShe0
- ( ´∀`)「おい」
唐突に『躯』が声を上げた。
( ´∀`)「始まるみたいだモナ」
川;゚ -゚)「え……?」
ζ(゚ー゚*ζ「……そう。じゃあ、行きましょうか」
そう言うと、零は立ち上がり、『躯』は刀をひっつかむ。
何が始まるのか知らない私は警戒心をむき出しのまま二人を睨みつけた。
ζ(゚ー゚*ζ「来て。見せたいものがあるから」
川;゚ -゚)「……拒否権は」
ζ(゚ー゚*ζ「……最悪、お姉ちゃん、死ぬわよ?」
川;゚ -゚)「!? どう言う事だ!」
ζ(゚ー゚*ζ「……いいから、来なさい」
私は二人に連れられ、校舎の外へと出た。
一体、何が。
- 28 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:16:56.85 ID:OtU5RShe0
- 川;゚ -゚)「――!」
ある一画に差し当った時、それは唐突に身体に襲い掛かった。
それは殺し合いの中、或いは強者が放つ者。
川;゚ -゚)「何だこの殺意(プレッシャー)……」
それは途方もなくどす黒い物だった。
あの内藤と同等くらいの、身震いするほどの。
ζ(゚ー゚*ζ「さあ、見て見ましょうか」
零に手を引かれる。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃんの窮地を、ね」
川 ゚ -゚)「――――」
私は見た。それを。
ξ;゚听)ξ
(//‰ ゚)
- 29 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:19:10.53 ID:OtU5RShe0
-
川 ゚ -゚)「…………」
時間にしてしまえばあっという間の話だ。
だがそれでも、彼女はまた、危うくも殺されてしまう所だった。
まるで時を見計らったように内藤はその場に現れたが。
もしも、誰の助けも無かったら……?
- 30 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:21:54.36 ID:OtU5RShe0
- ζ(゚ー゚*ζ「強くなる。殺されないように勝つ。いい事よ。それは称賛されて然るべき程」
川 ゚ -゚)
ζ(゚ー゚*ζ「でも絶対なんて無いの。だって相手は鬼違いだもの。殺人鬼だもの」
川 ゚ -゚)
ζ(゚ー゚*ζ「『国解機関』?一体、あんな組織を誰が頼りにしていると思ってるの?最早内外共にボロボロ」
川 ゚ -゚)
ζ(゚ー゚*ζ「でも私なら、『ν』なら大丈夫。その保証も自信もあるわ」
川 ゚ -゚)
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃんが私達を気に入るかは分からない……でも、今よりも絶対に安心、安全」
川 ゚ -゚)
ζ(゚ー゚*ζ「戦う事も、殺される事も無くなるわ」
- 31 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:24:27.29 ID:OtU5RShe0
- 気付いたら、私は先までいた図書室へと帰ってきていた。
目の前でべらべらと零が喋っている。
まるで根拠も糞も無いのはお前も一緒ではないのか。
人を殺している集団が、何を言っている。
( ´∀`)「よお、お嬢さん」
川 ゚ -゚)「…………」
( ´∀`)「お前、何のために戦うんだい」
『躯』は、そんな言葉だけを残すと、何時しか姿を消していた。
辺りは既に夕日色に包まれていて、目の前には私を見つめる零だけ。
ζ(゚ー゚*ζ「貴女は、お姉ちゃんが好き?」
川 ゚ -゚)「…………」
分からない。そういう感情が。
私には友達も、特別な感情を持った事も、無いのだから。
だが彼女が、ツンが特別であるのは事実だ。
初めてだったんだ。友達って奴は。
こいつは手放したくないって、そう思った。
こいつが死ぬのは、耐えられないと。
腕の中で震えて泣いているツン。
あの姿が今でも脳裏に焼き付いて離れやしなかった。
- 33 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:26:57.54 ID:OtU5RShe0
- 零は、その言葉だけを残すと、図書室を去る。
川 ゚ -゚)「……友、達」
ぽそりと呟く。
その呟きを、戸が開く音が掻き消した。
一体、こんな時間のこんな場所に、誰が――
川 ゚ -゚)「……ツン?」
ξ゚听)ξ「…………」
彼女は驚いて目を見開く。
恐らく私がここにいたのが予想外だったのだろう。私だってきっと似た表情をしているに違いない。
川 ゚ -゚)「お前、日中ずっと見なかったが……あれ、そういえば内藤も見かけなかったぞ?
一体何してたんだ?」
……何を言っているんだか。白々しい。
私はその光景を見ていた。気取られない場所から、ただ、指をくわえて。
親友の窮地の時に。
川 ゚ -゚)「? ツン?」
胸が痛む。
だって、ツンは今にも泣き出しそうな顔だったから。
- 34 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:29:17.46 ID:OtU5RShe0
- ξ )ξ「空っ」
ツンは私にふらりふらりと近づくと、限界が来たように、崩れるように私に抱きついてきた。
そんな彼女を抱きしめ返してやる。
川 ゚ -゚)「…………」
ξ )ξ「…………」
最近。彼女が泣く姿をよく見る気がする。
川 ゚ -゚)(……ツン)
お前は、お前は、辛いのか?
ξ )ξ「初めて、戦ったよ」
川 ゚ -゚)(お前、怖いんじゃないのか?)
ξ )ξ「初めて、殺したいとも思った」
川 ゚ -゚)(何で何時も泣いて、傷ついてるんだ?)
ξ )ξ「もう、訳が分からないよ」
- 38 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:33:06.07 ID:OtU5RShe0
- 私は、友達だ。
ツンの、親友だ。
一体友の泣く姿を何とも思わない奴が何処にいる。
何故彼女ばかりが傷つき、苦しむ。
川 ゚ -゚)(……私達の所為なのか?)
この世界に引きずり込んだ、私や、内藤の所為なのか?
川 ゚ -゚)「……辛かったな」
私は言う。
川 ゚ -゚)「まだ、全部を理解なんてできないさ。それに、暗部なんて、結局は矛盾で構成されているようなものなんだ。
それを理解なんてできないだろうし、慣れろと言われても嫌気がさすだろう」
白々しくそんな事を言う。
川 ゚ -゚)「それでも、私達は従う他無いんだ。生き続けるために」
本当に?
生き続ける限り、苦しめと言うのか?
ξ )ξ「嫌だよ、そんなの」
川 ゚ -゚)(――!)
- 39 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:35:55.01 ID:OtU5RShe0
- 嫌、か。
そう、なのか。
そうなんだな。
川 - -)「……ツン」
誰が友人を危険な目に合わせたがる。
誰が親友を死地へと送りたがる。
あり得ちゃならない。
例え私やツンが鬼違いだからと言って、そんなのあっちゃいけない。
川 ゚ -゚)(……分かったよ、ツン)
ツンの涙を拭う。
分かったよ、ツン。
私はもう、決めてしまっているから。
お前を守ると。お前の為に。
それは本心へと変わっていく。
偽りの思いから確かなものへと。
傷つけると言うのなら、私は許しはしない。
ツンの為なら何でもやってやろう。
例えそれが彼女の近しい人であろうとも。
彼女に害を加えるのなら、徹底的に叩きのめしてやる。
- 40 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:37:31.12 ID:OtU5RShe0
-
十三 其の二
- 43 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:43:16.97 ID:OtU5RShe0
- 様々な思いが脳や、心の中を駆け巡って這いずり回ってかき乱していく。
目の前にある光景に僕は正気を保つのに精一杯だった。
ζ(゚ー゚*ζ
月光を浴びて深紅のドレスを纏う津出さんの妹。
川 ゚ -゚)
その銃口を僕に定めている友の姿。
( ´∀`)
そして長く探し続けた怨敵。
( #゚ω゚)「――――」
訳が分からなかった。
つまりは、つまりはこの全てを企てているのは、この三人なのだと、理解したくなかった。
最悪な面子じゃあないか。まるでお笑いじゃあないか。
誰が仕組んだと言うんだ、こんな馬鹿げた事を?
鯨包丁を強く握る。
もう、もう、考える事すら、億劫だ――
- 44 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:46:03.95 ID:OtU5RShe0
- ( #゚ω゚)「空」
鋭い眼光で僕は駅の屋根に立つ友を射抜く。
( #゚ω゚)「理由を言えお。何故そこに立っているのかを」
川 ゚ -゚)「…………」
彼女は何も語らなかった。
ただじっと、その冷徹な目でライフルのスコープの中を覗いたまま、僕に照準を合わせたまま。
( #゚ω゚)「妹」
次いで深紅のドレスを着る女を睨む。
( #゚ω゚)「答えろお。お前が全ての黒幕なのかお」
ζ(゚ー゚*ζ「……語るに及ばず」
次いで津出さんの拳を受け止めたままの殺人鬼を睨みつける。
( #゚ω゚)「躯」
ざり、と踏み出した。
最早我慢ならなかった。
この状況をどうするもこうするも。
もう、怒りのみが頭の中を支配していたのだ。
- 47 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:48:57.42 ID:OtU5RShe0
- 空がトリガーを引くよりも早く、僕は駆けだす。
遅れて弾丸が先までいた地面にめり込んだ音が耳に届いた。
狙いはただ一人。一直線に、『躯』の下へ――
( #゚ω゚)「おらあああああああああああ!!」
( ´∀`)「モナっ」
奴は津出さんを退けると、その刃を鯨包丁と激突させた。
真っ向から、潔く。
( ´∀`)「へえ……成程。練り上げたモナね、少年」
( #゚ω゚)「喋んじゃねえお。僕は今、気が狂いそうなんだお」
単純な力ならば、僕は誰にも負けやしない。
そう、例え相手が千里の眼を持ち、最強最悪の称号を持っていようが。
僕は包丁を振り抜く。絶大なる怪力を以ってして振るわれた刃は、呆気なく『躯』の日本刀を打ち上げる。
その機を逃さない。
後方へ退いた『躯』を追う。すかさず奴は日本刀を構えた。
対して僕は背から鰹包丁を引き抜き、突きを信じられない速度で見舞う。
( ´∀`)「モナっ――」
それを奴は――避けた。
いなしも、受けもせず。
まるで舞い散る葉のようにひらりひらりと、華麗に。
- 49 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:51:37.48 ID:OtU5RShe0
- やはりこいつは異常だ。
凡そ人の出来る芸当ではない。
ξ;゚听)ξ「内藤っ!!」
奴はその攻撃の合間合間を丁寧に掻い潜る。
速くも遅くも無く、着々と僕に迫る。
まるであの日のようだった。
姉さんの放った無数の刃の群れを、奴は防ぎ、掻い潜り、邁進した。
そしてその日本刀で――
( #゚ω゚)「――なんて、上手くいくとでも思ってんのかお!!!!」
馬鹿が。お前は本当の馬鹿だ。
言っただろう。僕の本分は、僕の真の力は。
( #゚ω゚)「怪力だおおおおおおおおおおお!!!!」
突きの荒らしの中、横合いから僕は鯨包丁を奴の顔面目掛けて途方も無い速度で叩きつけようとする。
刃渡り凡そ七十センチメートル。厚みはまるで鉈の如く、切れ味は剃刀の如く。
この包丁は破壊を目的とするためにある。
この時の為。僕の絶大な怪力に耐えうる包丁は今、この手の中に。
だがしかし。
( ゚∀`)「――ひゃあは」
奴は、それを、受けたのだ。
- 51 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:54:53.58 ID:OtU5RShe0
- ( ゚∀゚)「ひゃはははあああああああああ!!!!」
僕の刃が、奴の日本刀の唾に、減り込む。
ぐしゃりと鉄の拉げる音が響き、次いで僕の手にその衝撃が伝わる。
その一瞬の間に、奴は僕の懐に潜り込んでいた。
( ゚∀゚)「――いいぜ!!いいじゃねええか少年!!強くなりやがったなあああああ!!??」
( #゚ω゚)「――――」
逆袈裟に、奴は日本刀を振ろうとした。
すかさず僕は後ろに飛退く。
日本刀は弧を描き、宙を斬った。対して僕は、奴と少しばかりの距離を挟み立ちつくす。
( ;゚ω゚)(……なんつー反射神経と運動能力だお)
相手にしてみて、痛感する。
やはりこいつの戦闘技術は……計り知れない。
わずかこの一合にて分かった。
( ;゚ω゚)(……殺されるかも、お)
目の前にいるのは宛ら人食い虎だ。
そのぶっとい牙と爪は一撃が必殺の威力を持つ。
- 54 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 19:58:21.68 ID:OtU5RShe0
- ( ;゚ω゚)「!」
頭上で反射光が一瞬瞬く。
何かが来ると判断し、僕は右に跳んだ。
ばきん、とアスファルトを弾丸が削っていく。
川 ゚ -゚)「……やはり、お前はそういう奴なのだな」
( ;゚ω゚)「……空」
ようやく、彼女は口を開いた。
その目に怒りの意志を込めて、拒絶の色を含めて。
ξ )ξ「空……」
立ちつくしていた津出さんも、彼女を見上げた。
何とも言えぬ表情をしている。
川 ゚ -゚)「ツン……大丈夫だ。すぐ、助けてやるからな」
そう言うと、彼女は屋根の上から飛び降り、津出零の下へと歩んでいく。
それを見て津出さんは駆けだした。
慌てて僕はその後を追おうとする。
だが。
( ;゚ω゚)「――ぐ!?」
( ゚∀゚)「……何処へ行きやがるんだ、え?」
- 57 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:00:56.30 ID:OtU5RShe0
- ゆったりのったりと、僕の前に立ちはだかる『躯』
今まで必死で探してきた。
姉さんの敵。
いつか必ずこの手で殺すと決めた相手。
( ゚∀゚)「そうだぜ。今お前の目の前には、愛しき怨敵がいるんだ」
( ;゚ω゚)「……貴様っ」
心の中で荒らしが巻き起こる。
その顔。その声。
忘れるものか。忘れてしまうわけがあるか。
お前は言ったな。あの時。
『次は無い』と。
では今は何だ。
今お前と対峙しているこの只今こそが、その『次』なのではないのか。
( ; ω )「……おぉ。今すぐにでも、お前を殺してやりたいお」
だけれども。
( ;゚ω゚)「だが退け!!今はお前に構っちゃいられねーんだお!!!!」
- 60 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:03:31.89 ID:OtU5RShe0
- きっと。きっとあの二人は、津出さんに何かする気に決まっている。
そもそも今の戦力では、この三人を相手しきれるわけが無い。
『躯』は言わずもがな、空なんて曲がりなりにも鬼違いの上、『国解機関』の一人。
更には未知数ながらも、恐らく鬼違いにして殺人鬼、そして『ν』の首領の津出零。
最悪だ。まさに詰みだ。
この状況を僕と彼女だけで打破出来るわけがない。
確かに津出さんは強くなった。恐らくは空と同等、もしかしたらそれ以上の力を身につけているやもしれない。
だが今の彼女に何が出来る。
ξ )ξ
( ;゚ω゚)(――津出さん……!)
心身ともに、今彼女は限界が来ている。
身体は先ほどの薬物投与でかなり楽にはなっているだろう。
だが。
( ;゚ω゚)(精神がまともでいられるわけがない……僕は『中』まで鍛えちゃいない……)
僕が彼女に叩き込んだのは『戦い方』だ。『護る』ことは教えちゃいない。
それに、彼女の内面は酷く脆い。この状況で平気でいられるはずが無い。
- 63 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:06:00.66 ID:OtU5RShe0
- 立て続けに起きたショックな事ばかり。
街での大量虐殺。
初めての殺人、戦場。
生命の危機を幾度となく感じ。
そして今、目の前では信頼を寄せていた人達の裏切りがある。
( ;゚ω゚)「……退けお殺人鬼(スプラッター)……お前の相手は後でしてやるから……!」
( ゚∀゚)「退く……?俺が退く……?目の前に最高の獲物がいるのに?」
馬鹿な事を。奴は言う。
( ゚∀゚)「がっかりさせるなよ、殺人鬼(スプラッター)……俺を前にして下らない考えなど……」
そうして奴は動く。僕に向けて。
( ;゚ω゚)「糞っ――こ、の、野郎!!」
( ゚∀゚)「さあ楽しもうぜ最強!!ぎゃはひゃはあははははぁぁはははあああ!!」
こいつを倒して行くしかないと言うのか。
( ;゚ω゚)「――津出さん!!逃げろお!!」
今は、今はせめてここから離れてくれれば――
- 66 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:08:33.89 ID:OtU5RShe0
- ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん」
私の手を取るのは、可愛い可愛い、私の妹。
何時もにこにこ、いい笑顔で。
見ているとこっちまで幸せになってしまうような。
まるで天使のような子だと、私はよく思った。
こんな妹がいて、私は誇らしいなと。
ξ )ξ「……何でなの」
手を握られたまま、私は俯いたまま言葉を吐き出す。
訊きたい事は山ほどある。
何故あんたなのか。
何故こんな事をしているのか。
何故、何故、何故。
疑問は尽きる事を知らない。いっそこの理不尽で理解不能な気持ちを、
暴力に任せて目茶苦茶にしてもいい。
だが最早そんな気力も湧いてくる事は無かった。
その原因は他ならぬ彼女。
川 ゚ -゚)「ツン」
お前だ。空。
- 67 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:10:54.10 ID:OtU5RShe0
- ξ )ξ「何であんたらなの」
何ともまあ、ふざけたお話じゃあないか。
笑えもしない。糞で詰まらない話だ。
その問いに彼女達は何も言わない。
ただ、やはり零は笑っていて、空も……笑っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん、一緒に行こう?」
何処へ。
川 ゚ -゚)「お前が傷つかないところさ、ツン」
傷つかない場所?
川 ゚ -゚)「幸せな場所へ」ζ(゚ー゚*ζ
ξ )ξ「――幸せ」
幸せ。ははっ。また何とも素敵な響きじゃないか。
そんな場所があるなんて驚きだ。この地獄と化した世界で。
一緒に行こうだと?傷つかないところだと?
そんな場所。
ξ )ξ「誰が望んだのよ」
- 68 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:13:51.67 ID:OtU5RShe0
- ζ(゚- ゚*ζ「……お姉ちゃん?」
川 ゚ -゚)「……ツン?」
お前達が一体何のためにこんなふざけた事をやっているのかは知らない。興味も無い。
所詮お前達も私も鬼違いだ。ならばそれだけで納得してしまえる。それが理由になる。
だがな。
私は誓ったんだよ。
あの少女の死をきっかけに。
それだけじゃない。
今まで鬼違いに殺された人や、今まさに傷つけられそうになっている人。
私は全てを守りたいと思い、願った。
だから私は此処まで来た。
血反吐を啜り、日々を痛みと血で染め上げた。
何度も泣いて、何度も後悔して、幾つもの傷をこさえて。
ξ )ξ「ふざけてんじゃねーよ」
だのに。
お前らは何をやっている。
お前らは、お前らは。
- 70 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:15:57.43 ID:OtU5RShe0
- ξ )ξ「お前らはやっちゃったのよ、やっちゃならない事を」
お前らはどれだけ殺した。
この街で、どれだけの人々を己が目的の為だけに?
何が幸せな場所だ。何が傷つかない場所だ。
ξ )ξ「お前らが奪ったんだろ」
どの口が言う。何処のどいつがそんなふざけた事を言う。
私は力を求めた。絶対な力を。
護るための力を。悪を根絶やす為の力を。
ζ(゚- ゚*ζ「あ……もしかして、怒ってr」
言いかけた所で、私は拳を振り上げた。
可愛い妹。愛しい妹。
唯一この世で血の繋がっている私の家族。
父も母もいなかったけれど、ずっと二人で強く生きてきたつもりだった。
だのに。だのに。
ξ#;Д;)ξ「歯ぁ食いしばりやがれえええええええ!!!!」
何で。
何でなの、零。
- 71 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:18:22.42 ID:OtU5RShe0
- 川 ゚ -゚)「ふっ!!」
ξ# Д )ξ「がはっ!?」
拳を振り上げ、零に殴りかかろうとした処で、後頭部に激痛が走る。
恐らく、殴られたのだ、空に。
意識が遠のいていく。世界がぼんやりとしはじめて、次第に音も遠のいていく。
ζ(゚ー゚*ζ「……お姉ちゃんは、本当、優しいね」
ξ )ξ「……うっ……ぐぅ……」
川 ゚ -゚)「すまん、ツン……だが、お前も悪いんだぞ……?」
二人に頭を撫でられているのが分かる。
やめろ、私に……私に触るな。
糞、力が抜けていく……。
「津出さん!!しっかりしろお!!津出さん!!」
……ああ、遠くで馬鹿の声が、私を呼んでいる気がする。
ξ )ξ(……内、藤……ご……め……)
私の意識は、ゆっくりと闇に呑まれていった。
- 73 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:21:37.27 ID:OtU5RShe0
- ( #゚ω゚)「――貴ぃ様等ああああああああああああああああああ!!!!」
湧きあがる怒り、憎悪。
今この瞬間、僕は狂った。
( #゚ω゚)「退けええ!!!!退けよこの糞おおおおおおおおおおおおおお!!!!」
( ゚∀゚)「あひゃああぁぁあはっははは!!!!馬鹿野郎が!!!!楽しめって言ってんだろうがああああ!!!!」
今すぐ駆けつけたいのに。
今すぐ助けてやりたいのに。
だのに目の前には立ちはだかる壁がある。
それは途方もなく厚く、高い。
普通では突破できないとてつもない壁。
( #゚ω゚)「があぁぁぁあああぁあああああああぁぁああああ!!!!」
乱雑に目茶苦茶に刃を振るう。最早冷静さなど持ち合わせもせず。
ふざけるな。邪魔をするな。
今あそこで僕の友達は危機に瀕しているのに。
だのに僕は何をやっている。
( ;゚ω゚)「糞っ!!糞おおおおおおお!!!!」
- 75 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:24:36.78 ID:OtU5RShe0
- またか。また僕は救えないのか。
僕の近しい人を、助ける事が出来ないのか。
僕のこの力は、一体何のためにある。何故求めた。
贖罪の為だと、殺してきてしまった人々の為だと。
その中に彼女も、津出鶴子さえも加わってしまうと言うのか。
( ;゚ω゚)「ふざけるな……畜生!!ふざけんじゃねえお!!!!」
刃と刃は幾度となく交差し、衝突し、火花を散らす。
僅かな隙間さえも奴は、『躯』は塞ぎ、僕を逃すまいと迫る。
悔しさと怒りで体が震える。零れそうになる涙をぐっとこらえる。
(# ゚∀゚)「――集中しろって、言ってんだろうがああああ!!!」
途端、『躯』が舞った。
月光を背に、高く。
僕はすかさず鯨包丁で奴の攻撃を受けようとする。
がぎり、と刃と刃がまた衝突した。
だが、それだけで奴の攻撃は止まらない。
(# ゚∀゚)「ひゃあぁああああああ!!」
- 77 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:26:58.79 ID:OtU5RShe0
- 奴の膝蹴りが、がら空きになった僕の鳩尾に入る。
( ; ω゚)「ぐぅっ!?」
次いで、回転蹴りが叩きこまれ、僕は吹き飛んだ。
アスファルトの上を抵抗もせず滑っていく。
皮膚が摩擦熱で痛み、手にしていた鰹包丁が遠くへと滑っていってしまった。
( ; ω )「っはあ……はぁっ……!」
片膝をつく。
まだ、体力は残っている。力もまだまだ行使できる。
だが、それをすべて使い切ってでも、今目の前にしている奴を倒せるのか?
そして、彼女を助ける事が?
川 ゚ -゚)「……内藤」
唐突に、凛とした声が響いた。空だ。
( ; ω )「……お前は何がしたいんだお」
何時裏切ったのか、何故こんなことをしているのか。
そんな事は最早どうでもいい。
ただ今ある事が事実で、彼女が敵ということが、真実で。
( ;゚ω゚)「……空」
- 80 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:29:55.03 ID:OtU5RShe0
- 川 ゚ -゚)「…………」
( ;゚ω゚)「…………」
長い付き合いだ。もう、四年か、五年か。
あの夜、初めて出会った時、僕は感じた。
その死んでも生きていても構わないと言ったような、酷く濁った眼。
まるで昔の僕のようだと。そう思った。
( ;゚ω゚)「……お前は、全てが嘘だったと、言いたいのかお」
今まで過ごしてきた時間も。
今まで共有してきた事も。
全てを否定してまで、この現状を望んだと言うのか。
( ;゚ω゚)「津出さんは……お前を友達だと言ったお。僕だってそう思っている」
だのに。
( ;-ω-)「何でだお……何でお前は……」
奥歯を噛みしめる。
この感情は何なのだろう。
無気力とも、脱力とも違う。
はたまた怒りとも違い、憎悪でもない。
- 83 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:32:35.34 ID:OtU5RShe0
- ( ;゚ω゚)「何で、裏切ったんだお……」
最早どうでもいいだなんて……嘘だ。
聞きたかった。本心を。
何故こんな事をしているのか。何を一体しようとしているのか。
川 ゚ -゚)「……私も、お前を信用していたよ」
空は、静かに答えた。
川 ゚ -゚)「鬼違いであるのに、私を守る様に、ずっと傍に居てくれた。離れないでいてくれた」
( ;゚ω゚)「…………」
川 ゚ -゚)「……感謝だってしてる。お前には、助けられて、頼ってばっかで……」
だけれど。
その言葉が、彼女の眼を鋭くさせた。
川 ゚ -゚)「出会わなければよかった。お前なんかと関わらなければよかった」
その言葉は僕の心を抉っていく。
深く、深く、爪を立てて。
川 - )「……いっそ、産まれてこなければよかった」
( ;゚ω゚)「……空」
- 86 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:35:25.01 ID:OtU5RShe0
- 川 - )「こんな感情さえ無ければ……こんな思いもしなくてすんだのに……」
きっと。
僕は理解していたつもりだったんだ。
彼女の事を……空の事を。
でもそれは思っていただけで。
僕は彼女の変化に気づいていたのか?
最近、彼女が笑った所を見たか?
彼女が悩んでいる表情を何度見てきた?
見ていなかったじゃないか。何も。
何もしてきやしなかったじゃないか。ただ傍にいただけじゃないか。
川 - )「憎い。怨めしい。お前が」
( ; ω )「………っ」
川 ゚ -゚)「――お前を、私は許さない……!!」
- 88 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:37:55.09 ID:OtU5RShe0
- 彼女がライフルを構える。
川 ゚ -゚)「お前がツンを誘惑しなければ」
川 ゚ -゚)「お前がツンを守らなければ」
川 ゚ -゚)「お前がツンをこっち側に引きこまなければ」
川 ゚ -゚)「お前がツンを傷つけなければ」
川 ゚ -゚)「お前がツンを危険な目にあわせなければ」
川 ゚ -゚)「何もかも、何もかもきっと今まで通りだったのに」
( ; ω )「僕の、所為……?」
川 - )「――そうだ。全部、全部お前の所為だ!!」
川# - )「お前さえいなければ、ツンは、私は――!!」
- 89 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:40:41.01 ID:OtU5RShe0
-
「馬鹿じゃないのか」
- 91 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:42:55.64 ID:OtU5RShe0
- ――そいつは、現れた。
全身に殺意を纏って。
「戦いを始めるのは、刃を翳すのは何時だって自分自身のはずだ」
( ;゚ω゚)「――お前」
その顔面に包帯を巻き。
闇夜に爛々と片目を輝かせ。
「誰かが悪い?何かの所為?はっ。それはまさに弱者だ。死んで然るべき存在だ」
ざり、と足音を響かせて奴は止まる。
「勘違いしているんじゃないぞ女。お前の考えは全て見当違いなんだよ」
晴れ渡る夜空。
光り輝く月。
血と硝煙と鉄が支配するこの場で、狂気はやってきた。
- 92 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:45:20.34 ID:OtU5RShe0
-
(//‰ ゚)「馬鹿共が。全員動くな。ぶち殺す」
屍が、来た。
- 94 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:47:40.68 ID:OtU5RShe0
-
十三 其の三
- 96 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 20:49:54.90 ID:OtU5RShe0
- その殺意が答えだった。
ボクの行くべき場所だと教えてくれた。
この戦場でそれは響き渡る。
何よりも深く、恐ろしいまでの憎悪。
身を震わせ、地に伏せたくなるような殺意。
だからボクは駆けた。きっと其処にボクの求める奴等がいると信じて。
立ちはだかるゴミ共を薙ぎ倒し、駆け抜けた。
嬉しさで笑みが零れる。
舞い上がる血飛沫がまるでトンネルのようで、それを潜り抜けていく。
ああ。いい夜だ。
待ち望んでいたものが手に入る。
あの殺人鬼と、あの殺人鬼を。
ボクの手で殺せる。
- 99 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:02:49.23 ID:OtU5RShe0
- (;゚∋゚)「布佐さん……今の殺気……」
ミ;゚Д゚彡「……内藤」
あの殺気と憎悪はきっと、この街一帯に伝わったはずだ。
一瞬のことだったが、それで十分だっただろう。
誰もがきっと、気付いたはずだ。
途方も無い何かがいるのだと。
ミ;゚Д゚彡「会敵したんだな……ついに」
駆けつけたかった。今すぐにでも内藤の下へ。
だが離れる事が出来る訳が無い。只でさえ劣勢を極めるこの戦場で、
抗う力を持たない人々を放っておけなどしない。
しかし、その後直ぐに、また別の殺気が街全体に伝わった。
それはしかし、狂気に近い。
まるで嬉々として駆け抜けていくような、そんな狂気。
ミ;゚Д゚彡(……『屍』。やはり食い付いたか)
一体全体、どうなるというんだ。
この戦場は、どうなってしまうんだ。
- 103 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:06:01.35 ID:OtU5RShe0
- ( ;゚ω゚)「……『屍』……横堀、でい……」
誰もがその新参者を見つめていた。
嬉しそうに眼を歪ませ、ゆっくりと歩いてくるその狂人を。
ζ(゚ー゚*ζ「来たのね……ようやっと」
津出零が嬉しそうに言う。
(//‰ ゚)「来るさ。お前は分かっていたのだろう?」
その手に刃を握って奴は言う。
(//‰ ゚)「素晴らしい……まさに夢のようだ。あの糞鬼違い共とは違う。お前らは夢のようだ」
全身に血を纏い奴は言う。
(//‰ ゚)「殺人鬼、内藤。虐殺者、『躯』。首領、津出零……」
ζ(゚ー゚*ζ「……やっぱり、私の下へ来るつもりは無いわけ、か」
その言葉に奴は笑った。
大きく、叫ぶように。
(//‰ ゚)「阿呆が。ボクが、ボクが貴様のような奴と共闘だと?笑わせるな。
ボクは殺す。お前は、お前たちは無性に気に食わない。だから皆殺しだ」
- 107 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:10:40.70 ID:OtU5RShe0
- そう言って奴は僕に肉薄する。
( ;゚ω゚)「!!」
その振るわれた脇差を僕はすさかず受け止めた。
(//‰ ゚)「……殺人鬼。お前も気に食わないぞ。あの日とまるで別じゃないか。
まるであの日、手を抜いていたとでも言いたげじゃないか」
( ;゚ω゚)「……はっ。むしろ感謝しろお。ペティナイフで本気?笑わせるなよ殺人鬼(スプラッター)。
それに僕に殺意が無かったことくらい、分かっているだろうお」
(//‰ ゚)「……だからこそ、お前は気に食わない」
音を立てて奴は離れる。
僕や、『躯』。そして津出零と空の対峙する、丁度中間位置に立つ。
(//‰ ゚)「……くく。くはっ」
嬉しいのか。お前は。
(//‰ ゚)「くははははっぎゃはっ、あはははははははは!!!!」
そんなにお前は殺したいのか。
(//‰ ゚)「最っ高だ……ああ、実に良い夜だ。死んで、殺されて、終わってしまっても無理は無い」
- 110 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:15:40.77 ID:OtU5RShe0
- ζ(゚ー゚*ζ「『躯』」
だがこの状況で、彼女はあっけらかんとしていた。
まるで無関係だと、興味が無いと。
ζ(゚ー゚*ζ「全ては今整ったわ。貴方の望むモノ、全て、揃えてあげたわよ」
その言葉で合点する。
そうか……お前もなんだな。『躯』よ。
( ゚∀゚)「ああ……ありがとうよ、阿婆擦れ少女。これで何も文句は無えよ」
嬉しそうに奴は日本刀を構える。
愛おしそうに僕と、『屍』を睨みつけた。
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん」
空が津出さんを担ぎあげ、歩き始めた。
慌てて追おうとするも、『屍』と『躯』がそこに立ち塞がる。
ζ(゚ー゚*ζ「取り返したいのなら、あそこへ来なさい」
川 ゚ -゚)「来られたら、な」
そう言って指さすのは『美歩タワー』。
- 113 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:19:35.08 ID:OtU5RShe0
- ( ゚ω゚)「……急がば回れ、かお」
糞だな。本当、心の奥底まで。
こんな茶番に付き合ってなどいられないと言うのに。
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあね〜」
手に鯨包丁をしっかりと握りしめる。
今更遠くに落ちている鰹包丁を取りに行く暇も隙も無い。
(//‰ ゚)「……しかし、まずはだ」
『屍』が僕ではなく、『躯』を睨んだ。
(//‰ ゚)「……会いたかったよ、死神さん」
その言葉に、『躯』は心底嬉しそうに、楽しそうに笑った。
( ゚∀゚)「ひゃはっ……なんつー眼だ……まるで肥溜だ。まるで糞の塊じゃあないか」
( ゚ω゚)「…………」
( ゚∀゚)「本当、嬉しいぜ……?二人とも、本当によくぞここまで練り上げた……」
素晴らしい。そう言う。
( ゚∀゚)「視えている……俺には……だがそれでいい……来いよ、二人とも」
- 117 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:24:04.58 ID:OtU5RShe0
- ( ゚ω゚)「『屍』」
(//‰ ゚)「言っておくが、終わったらお前も殺してやる」
( ゚ω゚)「はっ……ほざけお」
僕の隣に殺人鬼は立つ。
その手に短刀を持ち、包帯をはためかせて。
(//‰ ゚)「いいか、邪魔だけはするなよ。その瞬間、お前も容赦しない」
( ゚ω゚)「黙れ慣れ合い主義……喋ってんじゃねえ――」
同時に僕たちは駆けだす。
目標は死神、『躯』ただ一人。
( #゚ω゚)「――ぉおおおお!!」
(//‰ ゚)「はああああああああ!!」
そして奴は静かに待ち構えるのだ。
その顔を醜く歪ませて、微笑みながら。
( ゚∀゚)「良いぞっ、最高だ……!!俺を楽しませて見せろ!!俺を殺して見せろ!!」
- 119 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:29:01.33 ID:OtU5RShe0
- こつこつと私は隣に鬼違いを侍らせて歩く。
ζ(゚ー゚*ζ「もうすぐね……」
全てが今、揃った。
私の望んだモノが今、全て。
川 ゚ -゚)「……本当に、やるつもりなのか」
隣を歩く女が私に問う。
ζ(゚ー゚*ζ「ええ。そのための『過去の遺物』……でしょ?」
川 ゚ -゚)「……しかし」
ζ(゚ー゚*ζ「……まあ、貴女の目的はお姉ちゃんだけだものね」
今は協力関係にあるが、それでもこの女は『ν』の人間ではない。
ただの来客、その程度の存在だ。
ζ(゚ー゚*ζ「……ふふ」
お姉ちゃんも、無限の死も、そして『過去の遺物』も。
欲しい物は、手段は、目的はすべて揃った。
さあ。後は始めるだけ。
- 125 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:33:16.84 ID:OtU5RShe0
- 川 ゚ -゚)「……すぐに始めるんじゃないのか」
タワーの展望台に出る。全面ガラス窓のここからは、市街を見渡せた。
今では暗闇の中に炎の赤や、血の赤が咲き誇り、世界を死で満たしていた。
ζ(゚ー゚*ζ「馬鹿ね、そんな無粋な真似、できるわけないじゃない……」
あの三人を思い浮かべる。二人の殺人鬼と、一人の鬼違いを。
ζ(゚ー゚*ζ「彼……『躯』はね。会いたかったのよ。あの二人に」
川 ゚ -゚)「…………」
すぐ下を見やれば、そこには駅が見える。
だが随分と高所からなので細かい所まではよく分からなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「知ってる?彼と接触して生き残った人の数」
川 ゚ -゚)「……いや」
ζ(゚ー゚*ζ「……二人よ。あの二人だけ」
川;゚ -゚)「っ……」
まあ、『屍』の場合は特殊だ。
だけれど、あの内藤と言う男を、きっと『躯』は待ち望んでいたのではないだろうか。
- 129 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:37:49.90 ID:OtU5RShe0
- ζ(゚ー゚*ζ「『戦う』……ね」
私は彼の目的を知っている。
それが途方もなく下らなくて、とんでもなくはた迷惑な物だと。
ζ(゚ー゚*ζ「大義名分振りかざしちゃって……臆病者」
川 ゚ -゚)「……お前は知ってるのか、奴の目的を」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、知ってるわ……」
きっと今頃は、下で血みどろの戦いが始まっているに違いない。
きっと誰一人としてまともな状態では済むまい。
……彼は。内藤は来るだろうか。此処まで。
ζ(゚ー゚*ζ(来ると、いいな)
彼を見ていて分かったのだ。
彼もまた、姉を特別な目で見ているのだと。
ならば欲しい。彼も。
今ここに居る直空という人間だけでは、やはり不足やもしれない。
ζ(゚ー゚*ζ(皆……馬鹿ばかり)
この心の奥底を知らない馬鹿達。
まあいい。存分に今は踊り狂ってくれ。
- 130 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:38:12.02 ID:OtU5RShe0
-
十三 其の四
- 133 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:42:49.74 ID:OtU5RShe0
- 夢を見ている。
深く、仄暗い世界。
ξ゚听)ξ(……またか)
これを私は前に見た。
あの日、内藤との訓練で気を失った時、確かに。
だがしかし、状況は違った。
今は何処までも広がる、灰色の世界に私は立っていた。
ξ゚听)ξ「……一体、何なのよ」
不思議と居心地は悪くなど無かった。
むしろ、昔からここをよく知っているような、そんな感じ。
取りあえず歩いてみる。
行く場所も分からないのに、適当に。
ξ゚听)ξ「…………」
……意識がある夢と言うのは、やはり不思議な感じだ。
先まで起こっていた事を私は鮮明に思い出せる。
ξ )ξ「……もう、嫌……」
いっそ意識さえなければいいのに。
- 135 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:46:34.53 ID:OtU5RShe0
- 嫌でも考えてしまう。
内藤の事、空の事、そして零の事。
今まさに起こっている虐殺、戦争。
一体私は何をしているのだろう。
こんな所で油を売っている暇などないのに。
ξ )ξ「…………」
立ちつくす。
ξ )ξ「……いやだなぁ」
もう、何もしたくない。
ショックな事ばかりだったんだ……辛い事ばかりで……。
いっそ考える事すら億劫で……だけれど思考は止まらなくて……。
ξ )ξ「……零」
彼女が鬼違いだったとは。
ξ )ξ「……空」
彼女が裏切るとは。
- 137 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:49:33.56 ID:OtU5RShe0
- 何もかもうまくなんて行かなかった。
一体全体、どうすればよかったと言うんだ。
ξ )ξ「私が望んだ事って、何だったの……?」
それは遠い約束。
何時の日か、幼い頃――
ξ゚听)ξ「――え?」
……?何を?
私が誓った事は、あの日、少女の死をきっかけに……
「違うよ、それは誓い」
突如、灰色の世界に言葉が響いた。
ξ;゚听)ξ「!?」
慌てて辺りを見渡す。
「強くなる、誰かを助ける。それは誓い。望みじゃない」
ξ;゚听)ξ「――だ、誰!?」
「誰って」
- 140 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:52:21.21 ID:OtU5RShe0
-
ξ゚ -゚)ξ「わたしはわたしだよ、わたし
ξ;゚听)ξ「――!?」
- 141 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:56:02.05 ID:OtU5RShe0
- 目の前に、突然に私が……現れた。
ξ゚ -゚)ξ「確かになったのにね、望んだわたしに」
ξ;゚听)ξ「……何を」
ξ゚ -゚)ξ「……やっぱり、覚えていないんだね」
一体、お前は何を……。
ξ゚ -゚)ξ「おとうさんとおかあさん」
ξ;゚听)ξ「……父さん、母さん……?」
ξ゚ -゚)ξ「殺されちゃったの、忘れたの?」
ξ゚听)ξ「は?――」
突如、頭に激痛が走る。
ξ; Д )ξ「いぎぃっ!?」
な、何だ!?何だこれ……何で急に……。
ξ゚ -゚)ξ「れいも一緒だよ。わたしと。一緒になったの」
ξ; Д )ξ「あんた……一体……」
痛みは治まる事を知らない。それどころか徐々に痛みは増していく。
- 143 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 21:59:56.97 ID:OtU5RShe0
- ξ゚ -゚)ξ「それが強さだって。幸せになることだって」
さあ、思いだして。
そう言って、目の前の私は私の頬に触れる。
ξ゚ -゚)ξ「あの日を――」
揺れる頭上の電灯。辺りに飛び散った血。
床に倒れる二人の人。
それを見下ろす――違う。私も、見下ろされているんだ――人の影が幾つか。
- 146 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 22:04:04.56 ID:OtU5RShe0
- ξ゚ -゚)ξ「パパとママは殺されたの」
「れいー!パパが!ママがー!」
ξ゚ -゚)ξ「わたしとれいは、生かされた」
ζ( ー *ζ「だいじょうぶだよ、おねえちゃん、だいじょうぶ」
ξ゚ -゚)ξ「その光景を見て、れいは泣きながら笑ってた」
ξ; )ξ「…………」
ξ゚ -゚)ξ「そしてわたしも、真似して、笑った」
- 149 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 22:09:21.70 ID:OtU5RShe0
- ぼんやりと脳裏をかすめていく記憶。
それは何時だったか。
まだ幼い私と零には、父と母がいた。
ξ゚ -゚)ξ「れいは言った。『綺麗』って」
幸せな家庭だった。
何一つ不自由も無く、笑顔に包まれた家庭だった。
ξ゚ -゚)ξ「それを見て、わたしは分かった。『ああ、壊れちゃったんだな』って」
だが突然その日は来た。
男たちが押し入り、ビデオカメラを回しながら私達の父と母を殺していったのだ。
ξ゚ -゚)ξ「怖かった。だけどそれが正しいのだと、れいのようにならないとって」
そしてその日。
私は私に。
零は零になった。
- 151 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 22:13:04.67 ID:OtU5RShe0
- ξ )ξ
ξ゚ -゚)ξ「思い出した?」
ξ )ξ「……ええ。そうだったわね」
ξ゚ -゚)ξ「……れいを一人になんて、できなかったもんね」
ξ )ξ「……だって、私の妹だもの。だから、放ってなんておけないもの」
ξ゚ -゚)ξ「だから、なったんだよね」
ξ )ξ「そうよ。だから私も鬼違いになった」
ξ゚ -゚)ξ「でも、辛かった」
ξ )ξ「だから、無理矢理忘れた」
ξ゚ -゚)ξ「結局、れいに全部押し付けちゃってた」
ξ )ξ「……最低ね。私」
ξ゚ -゚)ξ「仕方ないよ。誰もが皆強いわけじゃないもの」
ξ )ξ「だけどその実、私は零を見捨てたのよ?」
ξ゚ -゚)ξ「一人だけ記憶を忘れて?」
ξ )ξ「……そうよ。私は逃げた」
- 155 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 22:17:12.67 ID:OtU5RShe0
- 望んだんだ。それが強さになると信じた。
だから私は自分から鬼違いになった。
だけれど私は望んだ。幸せになりたいと。
だから私は記憶を自ら忘れ去った。
ξ )ξ「何故、今なの」
何故今更、この状況でこんな事を?
ξ゚ -゚)ξ「今だからこそ。わたしが望んだからこそ」
ξ )ξ「……そう」
私は歩きだす。
何処へ?分からない。
だが見えているのだ。光が。
きっとあの光の射す方へ行けば、現実へと戻るのだろう。
ξ゚ -゚)ξ「怖くは無いの?」
ξ )ξ「怖いわよ」
ξ゚ -゚)ξ「後悔は無いの?」
ξ )ξ「してるわよ」
ξ゚ -゚)ξ「そう。なら」
- 156 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 22:21:35.68 ID:OtU5RShe0
- 大丈夫。
その言葉が私の背を押す。
ξ )ξ「なーにが大丈夫、だ」
少なくとも。
まだ私は壊れてなどいない。
そう、言いたいのか。
ξ )ξ「……ああ、糞」
いっそここで朽ち果ててしまえたら楽なのに。
だけどそんな甘えた事、私自身が許すわけも無く。
ξ )ξ「どいつもこいつもさ」
拳をぎゅっと握りしめた。
ξ )ξ「私を嘗め過ぎなんだよ」
足が速まる。
ξ )ξ「いい加減にしろよ」
もう考えるのも億劫だ。
ならば駆けだす。その拳を振りかざす。
- 157 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 22:25:57.54 ID:OtU5RShe0
-
ξ#゚听)ξ「ダセエ真似はこりごりなんだよ!!!!」
そして私は踏み出す。
その光の中へ。
- 160 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 22:30:13.06 ID:OtU5RShe0
- 川 ゚ -゚)「……ツン」
眠っているツンの頬を撫でてやる。
随分と肌は汚れ、傷ついているようだった。
よくもここまで戦い続けてきたものだ。
今、私達は先の展望台にいた。
妹の零は、最後の準備だと言って何処ぞへと行ってしまった。
川 ゚ -゚)「もうすぐだからな……」
もうすぐ、お前は自由になれる。お前と私は。
そうすればもう、危険な目にあう事も無くなる。二人で幸せに――
川 ゚ -゚)「あっ……」
ξ--)ξ
ξ-听)ξ
ξ゚听)ξ
川 ゚ー゚)「……おはよう、ツン。よく眠れ――」
次の瞬間。
側頭部に激痛が走り、私は吹き飛んでいた。
- 161 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 22:33:57.06 ID:OtU5RShe0
- 川; - )「〜〜ッッ!?」
な、何が、何が起きた?
慌てて立ち上がり、振り向くと――
ξ゚听)ξ「――おはよう、ダチ公。そして糞馬鹿」
――ツンが、拳を構えて私を見据えていた。
川;゚ -゚)「……先ほどのお返しってわけ、か?そう、怒るなよ……」
ξ゚听)ξ「うっせー馬鹿。私は今怒ってんだよ」
川;゚ -゚)「いや、だから、謝るよ、その件に関しては。だから――」
ξ )ξ「――だから、あんたぶっ飛ばす」
そう言って、ツンはベルトからダーツを引き抜き、構えた。
対して私はそれを冷静にみつめて、不思議に思う。
川 ゚ -゚)「……寝起きで混乱してるのか?」
ξ゚听)ξ「残念だけど、超絶すっきりしてるわ」
川 ゚ -゚)「…………」
- 163 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 22:37:39.60 ID:OtU5RShe0
- ξ゚听)ξ「眼を覚ますのはあんたの方よ、空」
ツンはそう言って私を見据えた。
川 ゚ -゚)「……どうやら、やはり混乱しているんだな、ツン」
きっと、酷く殴りすぎたのだろう。
失敗したな。
川 ゚ -゚)「どれ、すぐによくなるさ。だから、落ち着いて」
ξ゚听)ξ「構えなさいよ、空」
川 ゚ -゚)「っ……」
私は、戸惑いながらも懐から拳銃を引き抜く。
ξ゚听)ξ「そうね。まずはあんたからよ。そしたら、あの馬鹿な妹を、叱ってやるんだから」
川 ゚ -゚)「……馬鹿な事を」
私達は対峙する。お互いを新の友と知りながらも。
大丈夫だ。直ぐにお前を救ってやるからな、ツン。
ξ゚听)ξ「さあ――行くわよ!!」
川 ゚ -゚)「――来い!!」
- 165 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/09/02(金) 22:39:25.28 ID:OtU5RShe0
- 私達は駆けだす。
お互いに武器を向けあう。
きっと大丈夫だ、ツン。
今のお前はどうにかしているんだ。
だから何とかしてやる。
だって私はお前の友達だから。
お前を守る。
只その為だけに。
私は此処まで来たのだから。
続
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