ξ゚ー゚)ξ殺人鬼は微笑むようです

4 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:01:15.42 ID:qp3MJqpW0
 
 
毀 上
 
 
6 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:04:53.74 ID:qp3MJqpW0
ξ#゚听)ξ「どりゃあああああああああああああ!!」

川#゚ -゚)「ぉおおおおおおおおお!!」

私の手の中で唸りを上げているのは内藤の手により特殊な改造を施されたダーツ。
それを複数指の間へと挟み込み、空へと向けて射出する。

対して空はそれを拳銃で撃ち落とし、避ける。

私達は対峙していた。互いの譲れない物の為に。

川#゚ -゚)「何故分からん!!」

空の拳銃の銃口が、私に向く。
咄嗟に私は横に走りだす。
それを追うかのように弾丸は射出され、後方の窓ガラスをぶち抜いていった。

川#゚ -゚)「死ぬかもしれない……!そんな状況に身を置く事を許す友が何処にいる!」

ガチリ、とハンマーが虚を叩く。弾切れだ。
その隙を逃さず私は空へと接近する。

右手に握りしめた匕首を空の顔面目掛けて振るう。
空は咄嗟に左手を自らの腰へと伸ばすと、特殊警棒を取り出し、私の匕首を防いだ。

ξ#゚听)ξ「それが大きなお世話だってのよ!!」

力の拮抗。
どうやら筋力はお互い同等の物らしい。

7 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:08:35.81 ID:qp3MJqpW0
ξ#゚听)ξ「言ったでしょうが……私は戦う。例え死地へと赴く事になっても……!
       そこで泣いている人がいるのなら、そこで傷ついている人がいるのなら……!!」

匕首を振り抜く。
撃ち落とす形となり、特殊警棒が空の手から離れた。

川;゚ -゚)「しまっ――」

そして私は振りかぶる。
力強く、これでもかと筋力を込めて、その左拳を。

ξ#゚听)ξ「私は絶対に助ける!!」

グシャリ、と、何かを潰したような派手な音が響いた。
私の拳が、空の頬を打ち抜いた音だった。

ぐらりと空が身体を崩す。
危うく地に伏せようとする所で、彼女は片膝をつき、耐えた。

川; - )「くぅっ……」

ξ#゚听)ξ「……戦いを始めるのは自分自身の筈よ。そして誓いも、自分が突きたてるのよ」

それを誰かが止める事は出来ない。許されてはいけない。

川; - )「……ふざけるな」

8 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:12:01.60 ID:qp3MJqpW0
ゆらりと空は立ちあがる。
未だその目に戦う意志を宿して。

川#゚ -゚)「ツン……私はもう決めてしまったんだ。私はお前の為に生きようと、そう」

ξ#゚听)ξ「馬鹿言ってんじゃないわよ。あんたの人生くらい、あんたで生きなさい」

分かっている。
彼女が此処まで来た理由くらい。
知っているさ。
お前が何故そうまでなってまで、立ち向かおうとするのかを。

川 ゚ -゚)「……好きだよ、ツン」

ξ゚听)ξ「っ……」

唐突に紡がれた言葉に、私は動揺する。

川 ゚ -゚)「初めてだったんだ……誰かの事を考えるだの、誰かの身を案じるだの。
     ……誰かと共に居たいだの、そんなの今まで一度も無かった……」

彼女は虚空を見上げ、独白を続ける。

川 ゚ -゚)「……手放したくないとまで私は思ってしまったんだ」

ξ゚听)ξ「空……」

10 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:15:43.60 ID:qp3MJqpW0
川  - )「誰かを!!」

虚空を見上げていたその目は虚ろになる。
まるで足元を確かめるように、今度は下を向き、彼女は叫び始めた。

川  - )「誰かを愛するとか!!失いたくないとか!!」

ξ )ξ「…………」

川  - )「……初めてだったんだ」

じり、と彼女が足を踏み出す。
私へ向けて。

川  - )「好きだ。愛しているんだ。お前から離れたくない、失いたくない。ずっと一緒に居たい」

そしてその目が私を射抜く。
まるでそれは混沌の塊だった。
酷くあやふやな眼光は、見ているだけで辛かった。

川 ゚ -゚)「奪われたくない。そう思う事は悪いことなのか?」

だが私は臆しない。
その目を見つめ返そう。

我が友よ。どうしようもない大馬鹿野郎よ。
お前の気持ちなんて、分かっていたに決まっているだろう。

川 ゚ -゚)「なあ、友よ。ならばいっそ、いっそ……」

11 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:18:53.28 ID:qp3MJqpW0
月下。
最後の戦いの火蓋は切って落とされた。

心の臓腑が雄叫びを上げ、身体は躍動する。
眼光は鋭く、火花が顔を照らす。

(//‰ ゚)「ふぅっ!!」

( ゚ω゚)「おおおおお!!」

『屍』。嘗て僕と刃を交えた殺人鬼。
それが今や僕の隣に立ち、共に走り、戦っていた。

(  ゚∀゚)「いいぜいいぜ!!もっとだ!!もっと!!」

三者三様の刃はそれぞれ唸りを上げた。
僕の鯨包丁は奴の首を喰らいに、『屍』の脇差は心臓を喰らいに。
そして『躯』の日本刀はその二つの刃を喰らいに。

火花が弾け、夜の戦場に煌めく。
まるで夢の中にいる気分だった。
今、生きているのか?それとも死んでいるのか?

( ゚ω゚)(わっかんねー……)

それすら忘れてしまう。
戦いは白熱を通り越し、灼熱の殺陣へと変わり果てた。

13 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:21:49.77 ID:qp3MJqpW0
(//‰ ゚)「っらあああああ!!」

『屍』が脇差を横合いから出鱈目に振るう。
危うく僕の首根っこをかっ捌く所だったが、それを僕は潜り抜けて地面に這いつくばる。
脇差の軌道は『躯』の顔面へと迫ったが、虚しくも奴の日本刀がそれを防いだ。

( ;゚ω゚)「こんの――」

何てことをしやがる!
そう叫びたかったがそんな事を言っている場合では無かった。
僕は『躯』の軸足へと、崩れた体制のまま右足で足払いをしかけにいった。

(  ゚∀゚)「だぁからぁ、そいつも『観え』てんだっつーの!!」

それを、奴はまるで知っていたように、当然のように後方へ下がる事で避けた。

( ;゚ω゚)「『屍』ぇ!!お前共闘してんのか喧嘩売ってんのかどっちだお!!」

それを見ながら僕は舌を打ち、僕の頭上を跳んでいく屍に叫び散らす。
今度は頭を蹴飛ばされそうになったのだ。

(//‰ ゚)「邪魔するなら容赦しないと言っただろう!!」

( #゚ω゚)「お前が邪魔してんだろうがお!!」

『躯』に『屍』は肉薄し、刃を振りまわしながらそう僕に答えた。
本当にどうしようもない奴だ、こいつは。

15 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:25:37.91 ID:qp3MJqpW0
(  ゚∀゚)「仲が良いのは羨ましいんだがよお?」

だが『躯』はその様が気に食わなかったのか。
冷ややかにそう言うと、奴は『屍』の脇差を受け止める。
そして刀の柄尻を『屍』の顔面に叩き込んだ。

(;/‰ ゙)「ぐぁっ!?」

( ;゚ω゚)(――やはり剣術……侮れんかお)

刃だけが攻撃方法の剣道とは異なり、殺人に特化した物が剣術だ。
流派も多義に渡るが、奴の太刀筋はやはり、尋常ではない。
攻撃の応用や機転から見て、経験など、想像を超える程詰んできているのだろう。

(  ゚∀゚)「よっこい――」

予想だにしない攻撃を喰らい怯んだ『屍』の腕を握ると、『躯』は軽く身を引く。
つられて『屍』がそれに引き寄せられ――

(  ゚∀゚)「――ショット!!」

――足を払うとと同時に逆手取り、そしてそのままその足で『屍』を蹴りあげた。

(;/‰ ゚)「〜〜!?」

( ;゚ω゚)「ってこっち来んなお!!」

予め狙いは僕に定めていたのだろう。
『屍』は僕の方へ――比喩では無く――飛んできた。

16 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:28:39.26 ID:qp3MJqpW0
( ;゚ω゚)「っとお!!」

それを何とか受け止める。

( ;゚ω゚)「……お前、大層な口をきく割に大した事ないじゃないかお?」

(;/‰ ゚)「チッ……さっきから見てるだけの奴に言われたくないね」

( ;゚ω゚)「お前が猪突猛進するのが悪いんだお……」

肩を握る僕の両手を、彼女は手で振り払い、不機嫌そうにボヤく。

(  ゚∀゚)「あーあー……お前ら、随分と余裕じゃあねえか?」

そんな様子の僕たちを見て『躯』は酷くご機嫌斜めそうにそう言った。

それもそうだろう。
何せ渇望していた獲物が、それも極上の好敵手がだ。
自分をそっちのけで漫才だ。そりゃ嫉妬もしてしまうに違いない。

( ;゚ω゚)「余裕……?おっおっ……んなもんあるかお馬鹿垂れめが……」

そんなもの、何処にあると言うのやら。
視線の先に佇む『躯』を睨みつけて言ってやる。

( ゚ω゚)「こっちはこれでも急いでんだお。さっさと死んでくれお。いやマジで」

17 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:31:40.18 ID:qp3MJqpW0
ジャキリと手の中の鯨包丁を構えた。

( ;゚ω゚)(しかし……)

どうしろと言うのだ。こいつを相手に。

奴は恐らく未来を『観る』、或いは予測する能力を持っている。
そんな相手にどんな攻撃を仕掛けようが無駄な労力に終わるのは火を見るよりも明らかだ。

実際、今に至るまで僕と『屍』の攻撃が奴に当たった例は一つも無い。
奴は僕等の攻撃を避けるか、いなすか、防ぐかして全てを拒んだ。

( ;゚ω゚)(考えろ、考えるんだお)

しかし、一体何をどう考えると言うのだ。
隙なんて無い。意表を突く事なんてそれこそ無理な話だ。

(  ゚∀゚)「考えは纏まったか?」

そんな僕の顔を見て奴は厭らしげに嗤う。

(  ゚∀゚)「どうしたんだ?まだ戦いは始まったばかりだぜ?
      そんな、そんな悲しそうな顔をするなよ、殺人鬼」

奴は凶悪な鋭さを誇るその日本刀を構える。
それは絶対的な死の象徴に思えた。

18 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:36:06.34 ID:qp3MJqpW0
ξ#゚听)ξ「――勝手なこと抜かしてんじゃねえ!!!!」

私は近づいてくる彼女に、今度はビンタをかましてやった。
パシーン、と。いい音がこの空間に響く。

私の呼吸は乱れていた。
それは別に過度の運動の所為じゃない。
ましてや疲れからきてるわけでもない。

怒りだ。どうしようもない程、私は怒っている。
他の誰でも無い、この馬鹿に、我が友に。

ξ#゚听)ξ「口を開けば『好き』だ『愛してる』だ、お前、安っぽっちにも程があるんだよ!!」

なあ、友よ。
お前、何をそんなに不安になっていたんだ。
こんな状況を作り出そうと思ったのは、何故なんだ。

……分かっているよ。
私の為なんだろう。

ξ# )ξ「そんなんじゃ私は嬉しくない……!!そんなんじゃ私は納得しない……!!」

知っていたさ。
お前が何故そこまで壊れたのか。

そうさ。
全て、全て私の所為なんだ。

20 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:40:40.34 ID:qp3MJqpW0
ξ#;凵G)ξ「『信じてる』って……その言葉だけで十分なのに……!」

ごめん、ごめんなさい、空。

きっと私が強かったなら、彼女は苦しまなかっただろう。
きっと私が戦う事をしなければ、彼女は悩みもしなかっただろう。

全ては私の行動が原因だったんだ。
私が戦うと決めた時、既に彼女は掛け替えの無い存在となっていた。

空。でも私は強くなれた。此処まで来れたよ。
お前と肩を並べられるまでになったんだよ。

だから認めてくれ。そして言ってくれ。
「信じてる」と言ってくれ。

川  - )「絶対なんて無いんだ……お前も、私も、何時死ぬとも知れないんだ……」

ξ# )ξ「なら……何であんたは戦うの」

川  - )「お前の為に決まっている!!」

ξ# )ξ「この――」

左拳を振り上げる。
だがそれよりも早く、彼女の膝蹴りが私の鳩尾へと叩きこまれた。

23 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:44:17.63 ID:qp3MJqpW0
ξ; Д )ξ「がはぁっ――!!」

体勢を崩す前に、すかさず後方へと飛退く。
前を見やれば、空が無表情で私を睨んでいた。

川#゚ -゚)「……無理矢理にでも連れて行くぞ、ツン。
     最早言葉は意味を持たない。お互い、譲れない事だからな。そうだろう?」

その手には無慈悲な鉄の塊――拳銃――が握られており、銃口が私を睨んでいた。
しかし私は立ち上がり、ベルトからダーツを引き抜く。

ξ#゚听)ξ「……あんたにしては分かりやすいやり方ね。つまり勝った者の言う事を聞く。そういうことね」

川#゚ -゚)「ああ」

ξ#゚听)ξ「あっそう」

お互い、同時に駆けだした。
空は拳銃を撃ち、私はダーツを射出する。

ξ#゚听)ξ「さっさと倒されなさいよこの分からず屋!!!!」

川#゚ -゚)「さっさと跪けよこの負けず嫌い!!!!」

弾丸が私の頬を掠める。
ダーツが彼女の肩を掠めていく。
特殊警棒が私の頭目掛けて振るわれる。
匕首がそれをいなし彼女に肉薄する。

25 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:47:16.28 ID:qp3MJqpW0
殺し合っているんだ。私達は。
お互いを親友だと認めても、私達は戦い続ける。

譲れない物の為、守るべき者の為。
彼女は撃鉄を引き、私はフライトに指をかける。

ξ#゚听)ξ(――五分五分ね)

きっと彼女もそれくらい理解できている筈だ。
内心驚いてすらいるだろう。
何せたった数カ月でこれ程までの戦闘を行えるようになったのだから。

私だって驚いている。
あの空と渡り合っている事に。

彼女の戦闘している姿を見た事は無い。
だが鬼違いでありながらも『国解機関』に所属している彼女が、生半可な実力なわけがないだろう。

実際に彼女は強かった。
ここまで来る道すがら相手にしてきた鬼違い共とは比べ物にならないほどに、彼女は鍛え抜かれていた。

きっと彼女も内藤に扱かれたのだろう。
じゃなきゃここまで似た動きをするものか。

ξ#゚听)ξ(……決め手が欲しい……)

だがお互い、必殺の瞬間を待ちわびている状態でもあった。
手探りの様な状態で攻撃を繰り広げるこの戦闘に、未だその瞬間は来ない。

27 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:51:13.24 ID:qp3MJqpW0
ξ#゚听)ξ(そっちが来ないのなら――!!)

足を踏み出す。
両の手には数十本のダーツ。

川#゚ -゚)「――!!」

彼女が悟ったような顔をした。
きっと勘付いたのだろう。何かが来ると。

ξ#゚听)ξ「っらああああああああああああああああ!!!!」

一本一本のダーツの加速装置を、一斉に押すのではなく少しの感覚を開けて押し出す。
それを私は投げ放った。

ξ#゚听)ξ「――避けられるもんなら避けてみなさい!!」

一本一本がタイムラグにより射出の際に差が出る。
たった数本程度なら難なく避けられるだろうが、数十本ならどうだ。

川;゚ -゚)「くそっ――!!」

それを彼女は避けていく。
まるで追尾でもされているような感覚だろう。
右へ行けば右に、左に行けば左に矢は飛来する。

全てを見越したうえで投げ放ったこのダーツの波は、そう易々と防げるものじゃない。

29 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:54:33.00 ID:qp3MJqpW0
川#゚ -゚)「――本当、驚きだぞツン」

しかし。
それは決め手になどならなかった。

ξ;゚听)ξ(チッ――)

彼女は幾つかの傷を負いながらも、その攻撃をかいくぐったのだ。
或いは撃ち落とし、或いは避け。

攻撃の波を越えた事を理解した途端、彼女は私に急接近してくる。
思わず後方へと退いてしまった。

川#゚ -゚)「だが、まだまだ実戦が足りないな」

肉薄してきた彼女に対し、私は掌底を叩きこもうとした。
だがそれを彼女は避けると、逆に右腕をとられる。

ξ;゚听)ξ「あっ――!」

まずい、と思った時には最早遅い。

川#゚ -゚)「――はあっ!!」

逆関節を取られた所に、彼女の膝が、私の肘に叩き込まれた。

ξ; )ξ「〜〜ッッ!!??」

想像を絶する痛み、何かが軋み、砕かれる音。
私はそれらを感じながら、片膝をつく。

30 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 20:57:57.87 ID:qp3MJqpW0
ξ; )ξ「っううぅぅあああぁああああ……!!」

綺麗に、折られたのだ、この右腕は。
拳に力を入れようにも、ビリビリと痛みが支配していてまったく力が入る事は無かった。

川#゚ -゚)「……勝負ありだ」

がちゃり、と米神に銃口を押しつけられる。
眼前に空の顔が迫り、そう言葉を告げられた。

ξ; )ξ「っとに……容赦も糞も無いじゃないの……」

川#゚ -゚)「腕の一本で済んでよかったさ……最悪五体不満足だったぞ……?」

ああ、そうだな、この程度で済んでよかったのかもしれない。
だがな、空よ。お前は今勝負ありと、そう言ったのか。

ξ; )ξ(……ふざけんな)

ここで私が負けてしまえばどうなる?
今、戦っている皆にどの面を下げる事が出来る?

戦っているんだぞ、皆。
布佐のおっさんも、火糸も、斎藤も、クックルさんも、双子も、あの内藤も。

だのに。
だのにこんな所で私一人が負けていいのか?

32 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 21:02:30.59 ID:qp3MJqpW0
なによりも。
私の誓いが、破られてしまう。

譲れないこの思い。
それがこんな所で終わりを告げるだと?

ξ )ξ「ナマ言ってんじゃねえ」

川#゚ -゚)「……お前っ……」

残された左腕を空へと伸ばす。
空はそれに抵抗などしなかった。最早その程度になり下がったとでも言いたいのか。

ふざけるな。なめるな。
私は空の胸ぐらを掴む。

ξ# )ξ「打ち倒さなきゃ、超えなきゃ、自分を確立なんて出来やしない……。
       そうよ。それこそが闘争の本質。あんたも、私も、だから戦っている」

ならば何をやっている、私よ、津出鶴子よ。
お前は負けるのか。己が信念を捨て去ると?

ξ#゚听)ξ「空。勘違いしてるわあんた。こんなので私を負かした気になるなんて、馬鹿にも程があるわよ」

川#゚ -゚)「……何を――」

言いかけた所で、私は折れた右腕を振りかぶる。

33 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 21:06:50.76 ID:qp3MJqpW0
川# Д )「――がはっ!?」

めきりと骨の軋む音と、激痛が私の体を襲い、駆け抜け、暴れまわる。
だが構うものか。この右腕は、この右拳は、まだ振るえる。まだ当たる。

彼女の米神に叩き込まれた私の右フックは、綺麗に入った。
予期せぬ攻撃に彼女は驚きを隠せないだろう。ガードも何も取っていない状態だ、そりゃ痛いさ。

仰け反った彼女の腹を蹴り上げ、続けて前蹴り。
流石に全て通るとは思わなかったが、しかし空はガードを取りつつも吹っ飛んだ。

ξ;゚听)ξ「ってぇー……マジ痛えわこりゃ……」

未だに右腕はジンジンと痛む。
つーか、意外とやればできるもんなんじゃないか。

川# - )「……本当、見くびってたよ、お前を……」

地に倒れていた彼女はのそりと起き上がり、首を鳴らしながらそう言う。

川#゚ -゚)「本当に、どうしようもないまでの馬鹿になってしまったとはな」

ξ#゚听)ξ「そりゃあんた褒め言葉よ、今の私にはさ」

お互い、そろそろ限界だろう。
次の一合が決め手となる。

何だかんだで彼女もそれなりに攻撃を喰らっている。
……私ほどではないだろうが。

39 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 21:12:25.22 ID:qp3MJqpW0
ξ;゚听)ξ(……ははっ、あん時薬打ってもらって、助かったわね)

今にして思えば、あの内藤のしてくれた事に感謝をしている。
もしも薬物投与していなければ、今頃は無残な結果になっていただろう。
まあ、今も無残って言えば無残な訳だけれども。

だが私はまだ生きているし、戦える。
右腕一本折れたって、まだ左腕も両足も残っている。

川#゚ -゚)「……弾切れ、か……」

空が手にしていた拳銃を放り投げてそう呟いた。私のダーツも先ほどの乱射で全て撃ち尽くしている。
成程?つまり?

ξ#゚听)ξ「殴り合いで決着とは、また華の無い話ね」

川#゚ -゚)「まったくだ。これでもお互い女なのに」

華のある最後、ね。
女の癖に戦いに身を投じてる人間が何を馬鹿げたことを言っているのやら。

空が構えを取り、私も構えを取る。

勝機はどれくらいだろう?
……分かったもんじゃないな。
信じるしかない。己を。そして己を鍛え上げてくれた内藤を。

ξ#゚听)ξ「おおおおおおおおおおお!!!!」(゚- ゚ #川

そして私達は、同時に駆けだした。

41 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 21:16:02.27 ID:qp3MJqpW0
(  ゚∀゚)「行くぜ!!」

(//‰ ゚)「!!」

( ;゚ω゚)「!!」

僕等と隔てていた距離を、奴は駆ける事で埋めていく。
『屍』が僕より先にそれに反応し、奴の刃を受け止める。
僕は彼女の反対側に回り込む。『躯』を挟み込む形になった。

( ;゚ω゚)(挟撃ならっっ!!)

『屍』が脇差を振るうタイミングに合わせて、僕も同時に正反対側から『躯』に包丁を叩きこむ。

(  ゚∀゚)「――いいねえ!!」

――だがしかし。
奴は僕の包丁を日本刀で打ち上げ、『屍』の脇差を、その腰に差していた日本刀の鞘で受け止めていた。

(;/‰ ゚)「くぅっ!?」

( ;゚ω゚)「〜〜ッッ、んなの有りかお!!」

(  ゚∀゚)「戦いに有りも無しも無ぇんだぜええ!!少年よおおおおオォオオオ!!!!」

『屍』の胴に奴の鞘が叩きこまれ、またも『屍』は吹き飛ぶ。
僕はその隙を逃さず、振り上げた包丁を凄まじい破壊力を乗せて一気に『躯』の頭目掛けて振り下ろした。

42 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 21:20:16.26 ID:qp3MJqpW0
(  ゚∀゚)「アぁ甘えエエエぇええええ!!!!」

しかしそれすらも奴は分かっていたのだ。
日本刀の腹が僕の包丁に横合いから殴りかかる。
絶妙のタイミングだ。
方向性を失った僕の攻撃は、奴の頭の横を通り過ぎ、アスファルトに包丁を叩きつける結果となった。

( ;゚ω゚)「――――」

(  ゚∀゚)「――この程度なのか、お前ら」

全てがスローモーションだった。
吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる『屍』。
アスファルトを破壊し、視界にその欠片が広がり。
そしてその向こう側から、奴の日本刀の切っ先が飢えた獣のように僕へと襲い――

( ;゚ω゚)「――ナめるなああああああ!!!!」

瞬時に両手を握りしめていた包丁から離す。そのまま後方へと飛退く。
そして自由になった両手を羽織っている背広の内側へと突っ込み、その無機質な塊を幾つか手に取る。

その無数のペティナイフ達を、アンダースローで全て『躯』へと向けて撃ち放った。

(  ゚∀゚)「!!」

44 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 21:24:11.43 ID:qp3MJqpW0
まるであの時のようだ。
日本刀を振りかぶる奴の姿。
そして奴に向けて迫りくる刃の群れ。

(  ゚∀゚)「――ッヒャッハッハッアッヒャハハハハハハハ!!!!!」

全てがあの日のままだった。
それを奴は避け、いなし、日本刀で弾き、防ぐ。

( ;゚ω゚)(本当、あの日のままだお)

そう。見た事のある光景。
嘗て僕がまだ未熟だった頃に見せられた最低最悪な場面。

違う事と言えば、姉さんの代わりを僕がしているということか。
そうか。あの日と同じだと言うのならば、僕はもう、死んでしまうのか。

一つ一つ、刃の嵐を奴は退けていく。
この僕の怪力によって射出され、姉さんの投擲なんかよりも遥かに速い僕の投擲すらも。

(  ゚∀゚)「よう、終わるみたいだぜ」

( ;゚ω゚)「――馬鹿かお、お前は」

だがな、違うのさ。あの時と。
決定的な違いが今、此処にはあるんだ。

46 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 21:27:08.71 ID:qp3MJqpW0
(  ゚∀゚)「――!!」

何かに気づいたように、奴は咄嗟に振りかえる。
振り向きざまに振り上げた日本刀は、激しい音と火花を散らした。

(//‰ ゚)「……おいおい。ボクを忘れるなよ……?」

(  ゚∀゚)「……ああ。すまねえな。すっかり夢中だったわ」

(//‰ ゚)「ほざけ!!」

( ゚ω゚)「僕の事も忘れてちゃあいけねーおね!!」

鍔迫り合う二人に割って入って僕は包丁を振りかぶり、『躯』目掛けて刃を振るう。
やはり奴はそれすら『分かって』いた。

三者とも、等間隔を開けて互いを睨みあう形となる。
これほどまでに高次元な戦闘は初めてで、妙な感覚だった。

( ゚ω゚)「……ったく」

だからこそ僕は忘れてしまっているのだ。勘違いをしてしまっているのだ。
燃え盛っている頭を冷やし、僕は頭をかく。

( ^ω^)「……『躯』。僕は正直、お前を倒せるかどうか分からんお」

(  ゚∀゚)「……おいおい、随分と弱気じゃあねーか……」

だって、あの姉さんですら倒せなかったお前を、僕なんかがどうかできるとは思えないのだ。

47 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 21:31:52.84 ID:qp3MJqpW0
けれども。

( ^ω^)「けれどお、『躯』。僕は僕で、姉さんは姉さんなんだお」

僕は彼女のように柔軟な戦闘はできない。
ただただ剛直に、真っ直ぐに突っ込んでいくしか出来やしない。

けどそれこそが僕で、僕の力で、僕の戦闘なんだ。
彼女の真似をした所で、それは結局真似でしかない。

( ^ω^)「本当、単純な事なんだお。お前を前にして冷静さを無くしていた所為かおね」

まったくもって、今も昔も僕と言う奴は感情的になりすぎる。
前だって、津出さんや空の前で醜い虐殺を繰り広げてしまっているしな。

( ^ω^)「悪いけど、やっぱお前、倒すお」

なあ、『躯』よ。
お前は『観え』ているのか?
この戦闘の行く末が、結末が。

それがどんな結果になるかは知らない。僕の持ち得る力は単純な『怪力』だからだ。

( ^ω^)「超絶簡単だったお、お前の攻略法」

駆けだす。
『屍』も、『躯』も、唐突に動いた僕に合わせて駆けだした。

48 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 21:35:04.09 ID:qp3MJqpW0
嘗てお前が傷ついた場面を見た事がある。
それはあの日、姉さんが放った飛刀の奥義、隠刀によるものだ。

未来を『観る』事のできるお前が、何故あの攻撃を防ぐ事が出来なかったのか。
不思議で仕方が無かった。

『躯』よ。再度心の中で問うてやる。
お前にこの戦闘の『結果』は。

(#^ω^)「『観え』てんのかお!!!!」

(  ゚∀゚)「っ!!」

それまで負荷を抑えるためにかけていたリミッターを自分で外し、本来の『怪力』を思う存分発揮する。
攻撃を避けた『躯』の足元――アスファルト――を、鯨包丁が砕いていく。
凄まじい音と衝撃が響く。

(//‰ ゚)「内藤!!」

回り込んでいた『屍』が『躯』の追撃にかかる。
それを僕は声で理解し、振り返る。

(#^ω^)(そう。僕は姉さんじゃない。ならば僕は僕の持ち得る武器で、決着をつけるしかない)

そう。
例え刺し違えようとも。

この場で奴を仕留めなければならない。

49 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 21:38:59.91 ID:qp3MJqpW0
(#^ω^)「――『躯』おおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

再び僕は背広に腕を突っ込み、複数のペティナイフを取り出した。

(#^ω^)(――姉さん)

借りるよ。
あんたの技。

(#゚ω゚)「はああああああああああああああああああ!!!!」

投げ放たれるは無数の刃。
それらは銀の群れとなり、夜を舞い、敵を討つべく駆けていく。

(//‰ ゚)「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

そして『屍』も勝負を仕掛けに行った。

(//‰ ゚)「合わせてやる!!お前の興に乗ってやるぞ殺人鬼(スプラッター)!!!!」

まるで矢のように放たれた『屍』の身体は、刃の群れの反対側に回り込み、『躯』を再度挟み込む。
この状況をどうにかできる人間なんて、最早人間なんかじゃない。

だが奴は、『躯』は異常の極みだ。
その戦闘技術は、能力は果てしないものだ。

(  ゚∀゚)「ああ……あ……ああああああああああああああああああっははひゃははあいゃはいああ!!!!」

51 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 21:44:47.48 ID:qp3MJqpW0
感じ取れる歓喜。狂気。
お前は、お前と言う奴は何を望んでいるのだ?

『躯』。お前は鬼違いだ。
では何かの目的があるのだろう?

ずっとお前の事を考えていた。
何故お前は戦い続けるのかと。
お前は言ったな。「俺より強い奴はいないのか」と。

『躯』よ。お前は本当に戦う事が目的なのか?
何故強者ばかりを望む?何故弱者を惨殺することに喜びを覚えない?

お前は、お前はまるで――

(  ゚∀゚)「あああっ!!!ああははああ!!!いいいぞ!!!来いよ!!!お前らああああ!!!!」

(//‰ ゚)「ぶっ死にさらせえええええ!!!!」

『屍』は振りかぶる。脇差を奴に目掛けて。
『躯』は防ぐ。迫りくる刃の群れを避けながら、弾きながら、『屍』の攻撃を。

(#^ω^)(流石だよ、あんた)

そして僕は駆けだす。

そうとも。先の飛刀は単なるデコイだ。本命なんかじゃない。
そしてこうなることも、奴は分かっているのだろう。

53 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 21:49:12.32 ID:qp3MJqpW0
だがな。

(; ゚∀゚)「――!?」

その刃の群れに、僕が何もしていないとでも思ったのか?

(#^ω^)「――僕を誰の弟子だと思っていやがるんだお」

別に得意ではない。
だがな、できるさ。

隠刀くらいはな。

刃の影に隠れた数多物もの刃達が、『躯』の腕に、背に、足に突き刺さる。
どれも決定打になどなりはしない。だがここにきてようやく奴に傷を与えられたのだ。

それに集中したいところだろう。
だがそれが叶うわけが無い。

(//‰ ゚)「ふっ――」

『屍』がその包帯を剥ぎ取り、脇差の柄尻に結び付ける。
そしてそれを『躯』に目掛けて振り回す。

(#゚;;-゚)「ボク達を嘗めるなよ、糞鬼違い!!!!」

前からは柔軟な攻撃が、後方からは予期せぬ攻撃の荒らしが。

形勢は一気に逆転した。
この流れを崩されるわけにはいかない。

55 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 21:53:16.18 ID:qp3MJqpW0
しかしそんな甘い奴なんかじゃない。

(  ゚∀゚)「――まだだ」

(;゚;;-゚)「なっ――」

『躯』は後方を捨てた。隠刀のみならず、飛刀すら受け入れてしまった。
だがしかし。奴は大きく溜め腰に日本刀を構える。

(;^ω^)「『屍』!!」

叫ぶも遅し。
目にもとまらぬ速度のそれは、居合い。

前方、果ては太刀筋は後方まで及び、後方に迫っていた刃の荒らしまでをもかき消す形となった。
そして。

(; ;;- )「お――ぉ――」

『屍』の両腕を切り裂いていく。

咄嗟の判断で腕でガードを固めながら、後方へ飛退いたのだろう。
しかし数瞬、遅かった。
奴の日本刀の軌道上にあったその両腕は、二の腕辺りを切り裂かれていった。

(;^ω^)(済まない……!!だが感謝するお……!!)

居合いを終えた瞬間。それは最も隙のできる瞬間だ。
完全に抜き放ってからの動作は遅れるだろう。

58 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 21:57:57.17 ID:qp3MJqpW0
だからこそ僕は奴に肉薄するのだ。
その手に持つ鯨包丁を――

(  ゚∀゚)「――投げるんだろ?」

奴に目掛けて投げつけるために。

(#^ω^)「ぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

奴はそれを知っていたのだろう。
だがそんなの、こっちだって理解できている。

僕は鯨包丁を奴に目掛けて怪力を以ってして投げつける。
それは信じられない速度で奴へと向かう。

(  ゚∀゚)「――所詮はその程度かよ!!!!」

それを奴は、打ち上げた。

(#^ω^)(それで、いい)

鉄の塊が宙を舞っていく。

(#^ω^)(それでいい)

僕は奴へと向けてまだ駆ける。
奴は未だ刀を上方に構えたまま。


前は、がら空きのまま。

60 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:02:07.38 ID:qp3MJqpW0
(#^ω^)「そ れ で い い ! ! ! !」

お前は侮っていたな。
僕を、『屍』を。

そうさ。僕等は戦い続けてきた。
数多もの死地を渡り、生死の狭間を彷徨って来た。

近い。僕と、『躯』。
まるで口付でもしてしまえるような距離――

(# ω )「――!!」

とんでもない速度で駆ける僕が、終ぞ奴へと触れると言う処で。
僕の右肩にとんでもない衝撃と激痛が襲う。

(  ゚∀゚)「……おしかった。ああ、本当に、おしかった」

ほんの数瞬、僕等の時間は止まっていた。
僕の右肩に奴の日本刀は叩きこまれていた。
その傷は肩を切り裂き、鎖骨を叩き割り、肺の真上にまで到達していた。

血飛沫が舞い上がり、僕と『躯』の顔を赤黒く染めていく。

急速に冷めていく体温。霞みだした視界。
そしてその先に見える醜く歪んだ奴の笑顔。

今、雌雄が決した。

62 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:06:17.89 ID:qp3MJqpW0
 
 
だが。
 
(# ω )「それで、いいんだお」
 
僕の右半身が、奴の身体へと、触れた。
 
 
65 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:09:14.49 ID:qp3MJqpW0
川#゚ -゚)「ツン!!!!」

空が私の名を叫ぶ。

ξ )ξ(あんたは、何て言うかしらね、内藤)

たった一つだけ、お前に叩き込まれた技があったな。
そいつはとんでもない破壊力を持っていて、どれほど身体を固めようと、ガードを取ろうと、まるで無意味に終わってしまう。

川#゚ -゚)「はああっ!!!!」

空の拳が私の米神にめり込む。
意識が一瞬途切れた。
いっそ、ここで意識を手放せてしまえたら楽になれただろう。

だがまだだ。まだ私は戦える。

右足を一歩踏み出す。
丹田に呼吸を深く落とし、全体を脱力させる。

そして流れるような動作で、まるで当たり前のように、身体を前へと押し出してやる。

67 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:11:36.25 ID:qp3MJqpW0
 
 
 
右半身を、接触させる。
 
 
ξ )ξ「――ぉお――」
 
 
 
――――――
 
 
 
(# ω )「――ぉお――」
 
 
地を踏みしめ、丹田から一気に息を吐き出す。
 
 
 
69 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:13:50.79 ID:qp3MJqpW0
 
 
 
重心は前へ、前へ。
 
 
ξ )ξ「――ぉおおおおお!!」
 
 
 
――――――
 
 
 
(# ω )「――ぉおおおおお!!」
 
 
そして緩めていた力を、一気に前方へと押し出す!!
 
 
 
72 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:17:19.73 ID:qp3MJqpW0
 
 
 
喰らえよ、存分に。
 
 
ξ#゚听)ξ「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
 
 
 
――――――
 
 
 
( #゚ω゚)「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
 
 
 
奥義、『当て身』を!!
 
 
 
74 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:22:20.29 ID:qp3MJqpW0
川# Д )「――っはぁっ――」

その痛みを私は身をもって知っている。
だから空。今お前が苦悶の表情を浮かべ、吐瀉物を撒き散らす理由も良く分かっている。

川# Д )「お……前……『当て身』を……」

ξ#゚听)ξ「――言ったでしょう。嘗めんな、って」

倒れそうになった空を、私は抱きしめ、支えてやる。
今にも意識を手放しそうだった。

ξ゚听)ξ「……どうよ。利いたでしょ?」

まさか、ここまで綺麗に決まるとは想像だにしていなかったのだが。
空の目を覗き込む。酷くあやふやで、涙を浮かべていた。

川 - )「……負けたのか、私は」

ξ゚听)ξ「……まだ戦いたいのなら、負けでは無いわよ」

川 - )「……酷い奴だな、お前は……」

ξ゚ー゚)ξ「ったく……人の腕を折っておいて何を言ってんのよ」

そんな私も、限界だった。
最早右腕は痛覚すら忘れてしまっていた。

足に力が入らず、両膝を突く形で空を抱きしめていた。

76 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:26:36.80 ID:qp3MJqpW0
(;  ∀゚)「お――っほ――」

僕は叩きこんだ。
僕の持ち得る能力を活かした最強の攻撃を。

きっと、『躯』の内臓はグシャグシャだろう。
瀕死に至る攻撃を受けてはいるが、それでも持ち得る全ての力を使い果たして撃ち込んだのだ。

見れば、奴は信じられない、と言った顔で僕を見ていた。

(# ω )「お前の敗因は二つ。一つは僕にお前の能力を見破られていた事」

そう。
こいつの能力は確かに未来を『観る』ことができるのだろう。

だが未来というのは断片の塊で、酷くあやふやな物だ。
結果、それは不確定で、確実な物は無い。

ただただ、果てなく『過程』だけを観測するこいつの能力は、『結果』まで『観る』ことは出来なかったのだ。

だからこいつはあの日、姉さんの隠刀を防ぐ事が出来なかったのだ。

そしてこの当て身は、観測できなかったのだろう。
こいつは始終観測できている訳じゃない。
何故なら、もしできると仮定したとすれば、僕や『屍』の接近を許すわけが無いからだ。

78 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:29:10.91 ID:qp3MJqpW0
(;  ∀゚)「ははっ……何を言っているんだかな、お前は。俺が負ける?まだ俺は生きているぞ――」

そう言って、奴は僕の肩にめり込んでいる日本刀に手をかけようとする。
だが。

(# ω )「そしてもう一つ」

ずぐり、と肉を突き刺す音が闇に響いた。
それは『躯』の身体から発する音。

(; ;;皿 )「はぁっ……はぁあっ……」

(# ω )「お前は僕達を嘗めすぎた」

その一撃が、最後の決定打となった。
両腕を破壊された『屍』は、その口に脇差を咥え、『躯』の背中を思い切り突き刺したのだ。

(;  ∀ )「ぐふっ――」

『躯』の口から血が垂れる。
内臓に達する一撃だ。最早お前は助からない。

(# ω )「お前の負けだお、殺人鬼(スプラッター)……!!」

ずるり、と『躯』は地に倒れる。
矢継ぎ早な呼吸と、ボクの肩から抜け落ちた日本刀の乾いた音が、終わりが間近だと言う事を教えてくれていた。

80 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:32:59.07 ID:qp3MJqpW0
(;  ∀ )「……終わるのか。ようやっと」

奴は天を見上げる。
この戦場に似つかわしくないほどに、今日の夜空は晴れ渡り、星達は瞬いていた。

秋に差し掛かる夜空は何処か遠く、儚く。
しかし輝く星々の光が僕等に僅かながらも居場所を与えてくれていた。

(;  ∀ )「長かった……ああ、本当に、長かったなあ……」

ぽつりぽつりと、奴は言葉を紡ぐ。

(  ω^)「……お前、やっぱり……」

やはり、そうなのか。そうだと言うつもりか。

81 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:35:10.88 ID:qp3MJqpW0
 
 
(;  ∀ )「やっと、死ねるんだな」
 
 
82 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:35:49.86 ID:qp3MJqpW0
 
 
(; ;;-゚)「――な……え……?」

『屍』が、驚きの声を上げる。
まるで意味が分からないと言いたげに。

(  ω^)「……『躯』。お前、死にたかったんだろう。いや、殺される事こそが、お前の目的だったんだろうお」
 
 
85 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:38:34.36 ID:qp3MJqpW0
そう。
『戦う』。それがこいつの目的ではない。

何故なら『戦う』だけなら態々強者に立ち向かう必要などない。
無差別にそこらへんにいる人間と戦い合えばいいだけの話だからだ。

だが僕は知っている。
僕はこいつを出来る限り調べ尽くしたのだから。

(  ω^)「お前の殺してきた大半の人間は、例えば軍人、例えば達人……要は強者ばかり。
      お前は厳選に厳選を重ね、結果数百という強者と渡り合い、そして勝ち続けてきた」

最初、僕は強者にしか興味のない戦闘屋なのかと思った。
しかし違う。

この考えに至ったのは、先ほどだ。
こいつは言葉の節々で言っていた。「倒せ」と、「殺せ」と。

それを挑発と取るか?答えは否だった。
それは本心からだったのだ。

(  ω^)「何故だ。何故お前はそうまでして死にたかったんだお」

(; ;;-゚)「…………」

ボロボロの僕等は、地に大の字になっている『躯』に問いかけた。

89 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:40:38.40 ID:qp3MJqpW0
(  ∀ )「……言っただろう。俺は生まれついての殺人鬼。生まれついての鬼違い」

はあと息を吐く。
その目は輝きを失い始めていた。

(  ∀ )「物心つく前からそうだった。俺は死にたかった。多分、子宮の中にいた頃から俺は死にたかったんだ」

(  ω^)「……お前」

(  ∀ )「テルアビブ空港乱射事件は、悲惨だったな」

唐突に出た単語に僕は硬直した。
『屍』は何の事だか分からないという顔だった。

(; ω゚)「お、お前、まさか」
 
 
(  ∀ )「そうだ。俺は赤軍で産まれて、日本赤軍で育ってきた」
 
 
血の気が引く。
今でこそもうその名を聞く事は無いと思っていた。

居るのか。まだ。
居たのか、此処に。

(  ∀ )「日々は戦争で、日々は革命で、日々は闘争だった……ずっと死と隣り合わせで、殺し、殺されていく日々」

90 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:44:25.23 ID:qp3MJqpW0
(  ∀ )「怖かったね。こんな世界に生まれたくなかった。だから産まれたときから、俺は死にたがりだったのさ」

僕はようやく理解した。
何故ここまでこいつは強いのかを。

それはこいつがずっと戦場にいたからだ。
本物の、戦場に。

テロを行い、ハイジャックをし、人を浚い、殺し。
そんな事を繰り返して育ってきたのだ、この鬼違いは。

(  ∀ )「それでも尚怖かったね。自分で死ぬのもまっぴらごめんだった。だから俺は自分から死地へと赴いたよ」

だけれども、と奴は続ける。

(  ∀ )「『観え』ちまうんだ。何かが来ると。そりゃ、完全じゃないさ、俺の力はな。
      だから死にそうな目にだって何度も合って来た。だが」

今の今まで生きてきてしまった。

(  ∀ )「どこかに居ないかと探し続けてきた。俺を殺せる人間がいないかと。
      その圧倒的な力を以ってして、俺の千里眼さえ打ち破る強者がいるはずだと」

だが戦場にそんな奴は居なかった。
日本と言う地には、更に居なかったと言う。

当然だ。何せここは世界でも数少ない非戦闘国家だ。

92 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:49:10.81 ID:qp3MJqpW0
(  ∀ )「赤軍が解散し、行き場を失った俺は流離続けてきた。
     中には俺を倒す一歩手前まで来た奴だっている。だが俺を殺すことなく、俺に殺されてしまう始末」

だけれど。
そう、奴は続けた。

(  ∀ )「お前達は、もしかしたらと思っていた……まるで戦場で生き続けてきたような奴等の目をしていた。
     きっと俺が想像だにしない日々を送ってきたのだろうと言うことくらい、分かった」

お前ほどではないさ、『躯』。
僕の日々は確かに血で彩られ、『屍』は痛みと苦しみで構築されていただろう。

だがお前の環境は普通ではない。

(  ∀ )「……ようやく、願いが、目的が叶うんだ……この汚く、腐った世界から消える事が出来る」

(  ω^)「……お前は、この世界に絶望していたのかお」

(  ∀ )「ああそうだよ。確かに現代では昔よりも戦争という奴は減っている。
      だがそれは減っているだけで、中東なんかじゃ未だにドンパチ。
      人が死ぬ事で人が助かる世界、訳の分からない信仰の為の犠牲、糞な秩序」

糞喰らえだ、と奴は吐き捨てた。

(# ;;-゚)「……ふん。なんだよ、結局あんたも弱者じゃないか……」

(  ∀`)「……好きなだけ言えモナ。俺は事実、単なる自殺志願者だったんだからな」

94 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:53:34.45 ID:qp3MJqpW0
(  ω^)「……『躯』。お前、何を希望に生き続けてきたんだお」

分かっているさ。
鬼違いは、つまりはそういう人種なのだと言う事を。

だが、それでは。
それではあまりにも悲惨すぎる。

『躯』。お前って奴は、どうしてそこまで居た堪れない馬鹿野郎なんだ。

(  ∀`)「殺されることだけを、夢見てきた。そして今、全てが終わる……」

ああ、と『躯』は呟く。

(  ∀`)「殺してきた人々の魂を礎に、俺は死の座につくことがようやっとできる……。
      長かったなあ……本当……に……」

そしてその呼吸はあっけなく止まった。
まるで今迄の事を忘れ去ってしまうかのような、そんなあっけなさが、場を静まり返させた。

(  ω^)「……なんて下らない、糞な結末なんだお。こんな馬鹿野郎一人の目的の為に、
      どれだけの人々が犠牲になったと言うんだお……」

そしてその中に姉さんがいる事が、憎らしい。

(# ;;-゚)「だがそれこそが闘争だ。己を確立するための手段だ」

97 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 22:58:14.40 ID:qp3MJqpW0
じゃきり、と『屍』は嘗て『躯』が愛用していた日本刀を拾い上げて構える。
だが、上手く力が入っていないようで、刀をぶら下げる形になっていた。
切り裂かれた腕の血は止まる気配を見せない。

(# ;;-゚)「さあ、最後の戦を始めようじゃないか」

それを僕は、無視する。
彼女の横を通り過ぎ、目的の地へと足を進める。

(# ;;-゚)「――貴様」

(  ω^)「構ってらんねーお……僕は行く所がある」

(# ;;-゚)「その身体で、か」

言われずとも分かっているさ。
先から右の視界が見えやしない。実を言えば右半身の感覚が無い。

(  ω^)「よっ、と」

ズボンのポケットに入れておいた注射器を全て取り出し、上半身に全て射し込む。
注入されていく薬物。先から震えが止まらない。

(# ;;-゚)「戦えよ、ボクと」

僕の前に立ち塞がるのは『屍』、横堀でい。
その姿は見るも無残、滑稽だった。

99 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 23:01:22.16 ID:qp3MJqpW0
きっと僕等は、誰が見ても引きとめるレベルに傷塗れだろう。
僕なんて右肩をぶった切られているものな。
先からもぎ取れそうな右腕がプラプラと図々しい。

(  ω^)「退けお」

僕は彼女の肩に左手を置くと、横に押し退ける。
だがそれでも彼女は食い下がってくる。

(# ;;-゚)「戦え!!!!」

(  ω^)「…………」

振り返り、彼女の顔を見やる。
なんだ、お前も視界、あやふやなのか。
足取りも覚束無いじゃないか。

(  ω^)「……お前には無かったんだっけかお、大事な物ってのは」

(# ;;-゚)「……何を」

(  ω^)「仲間ってすげーんだお、横堀」

(# ;;-゚)「っ……」

(  ω^)「僕も……僕も、お前とある意味では近い人生を歩んできたお。
      日々は殺戮で、犯され、感情を失っていく日々。人の肉を喰らい、生きてきたお……」

100 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 23:05:13.02 ID:qp3MJqpW0
忌まわしい記憶が頭の中で溢れる。

(  ω^)「けれどお。僕は知ったんだお。この世界は……人間ってのは、そこまで悪いもんじゃないってお」

(# ;;-゚)「……ふざけるな。人間は、どいつもこいつも糞だ、糞でできた怪物だ。
     何かを平気で傷つけて、壊して、そして笑う、最低最悪な生き物だ!!」

(  ω^)「……僕には今まで、人は単なる肉の塊程度にしか見えていなかったお。ただ殺して、それで終わり。
      差異も無い、特別な物も、何も」

けれども、と僕は続けた。

(  ω^)「横堀。人間って、温かいんだお。柔らかくて、一緒にいると安心できるんだお」

(# ;;-゚)「――馬鹿を言うな!!」

『屍』は……横堀でいは叫んだ。
きっと己すら否定されたような気分なのだろう。

(# ;;-゚)「そんなの嘘だ!!なら何で誰もボクを、母さんを助けてくれなかった!!」

(  ω^)「ならお前は助けを求めてきたのかお」

(# ;;-゚)「っ……!」

(  ω^)「……分からないわけじゃない。それを口に出す事すら許されない。
      自分は忌まわしい存在なのだと、そう、思い続けてきたんだろうお」

102 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 23:08:55.88 ID:qp3MJqpW0
僕は、その事を姉さんと出会ってから痛感した。
己という存在が如何に危険で、最低最悪だったのかという事を。

だから僕はこの生を生きている人々の為に、殺してきた人々の為に捧げた。

(  ω^)「けれど。どんなに傷ついても、お前は言葉を紡ぐべきだったんだお。
      『助けて』ってお」

(# ;;- )「……お前、お前……!!」

(  ω^)「……けどそんな生易しい環境では無かっただろうお。すまんかったお。
      だけどお、横堀」

僕はお前の手を取る事が出来る。
そう言って僕は奴の顔を見る。

(  ω^)「お前が口に出せないのなら、僕は手を差し出す。そしてお前の苦しみを断つ」

(# ;;-゚)「は……あ……?」

何を言っているのか分からない、と言った表情をする横堀。
まあ、自分でも少し臭すぎると思ったが、たまにはいいじゃないか、こういう台詞も。

(  ω^)「まあ、掴む掴まないはお前次第だお。そして僕はいま急いでんだお。
      あそこで助けを待つ友達がいるから」

それと、考えのとち狂った友達が。

104 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/10/14(金) 23:10:44.84 ID:qp3MJqpW0
(# ;;-゚)「…………」

横堀は俯いてしまった。
僕は一つため息を吐き、彼女の横を通り過ぎる。

(  ω^)「それと、横堀」

思い出したように僕は言葉を紡ぐ。

(  ω^)「あれでも津出さんと空は女だから、うまがあうんじゃないかお?」

それだけを言い残すと、僕は歩きだす。

見上げればそこには『美歩タワー』。
この街でそれはとてつもなく目立つ。

ふと何かの機械音が、『美歩タワー』の屋上のヘリポートから響きだした。

(  ω^)「……嫌な予感がするおね」

霞む視界を無視し、今にも壊れそうな身体を労る事もせず、
僕は『美歩タワー』へ向けて駆け出す。


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