ξ゚听)ξ殺人鬼は微笑むようです

3 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:22:26.48 ID:7VLgO/Gl0
奴は言った。

「次は無い」

次とは何時だ。

僕は、何時お前を殺せる。

5 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:24:35.83 ID:7VLgO/Gl0
 
 
四 其の一
 
 
6 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:26:46.97 ID:7VLgO/Gl0
メン・イン・ブラックという映画をご存じだろうか。
トミー・リー・ジョーンズとウィル・スミスの二人が宇宙人や地球外生命体と生死をかけた戦いを繰り広げる、
ジョークも豊かでとても面白い映画だ。

さて、メン・イン・ブラックという映画の題にも実は意味があったのだ。
アメリカで噂される所謂都市伝説や陰謀説の類なのだが、
UFOや宇宙人などの目撃者・研究者の前に現れ、警告や脅迫を与えたり様々な圧力や妨害を行う謎の存在とされている。

まあそんな無駄知識はどうだっていい。
私はただ、この映画の主人公二名はよく真っ黒な服装にサングラスをつけているということを言いたかったんだ。

( ●ω●)

川▼ -▼)

ξ■凵。)ξ

……うん。
既に理解の早い読者はお分りだろう。

ξ■凵。)ξ(何でやねん……)

彼の名高い鬼違いを殺し回っているヒーローの内藤氏、そして世間からは絶世の美少女と謳われる直氏。
そしてそこに不良少女の私こと津出鶴子が加わったこの三人組。
何故か黒いスーツにサングラスで、駅ののホームで新幹線が来るのを待っていた。

7 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:28:56.02 ID:7VLgO/Gl0
ξ#゚听)ξつ■-■「何でやねえええええええええええええええええんんんんん!!」

勢いよくサングラスを外して叫ぶ。

( ●ω●)「初っ端から元気だおね」

川▼ -▼)「馬鹿の取り柄だ」

うんうんと二人が頷く。
いや馬鹿じゃねーから。私馬鹿じゃねーから。
大事な事なので二回言いました。

ξ#゚听)ξ「そもそもこんなクッソ暑い時期に黒スーツはねーだろ!」

季節は八月の中旬。
もう暑さで蝉すらも干乾びて死んでしまうようなこの太陽の下、真っ黒なスーツに真っ黒なスカート穿いて、
真っ黒なワイシャツ着て、真っ黒なネクタイ締めて、真っ黒なサングラスつけて、真っ黒、真っ黒、真っ黒真っ黒真っ黒……。

ξ#゚听)ξ「真っ黒黒助も驚きの黒さじゃーい!!」

落ちへん!この黒さ落ちへんで!!
ジョイ君どないなっとんねん!説明せーやドアホが!
何か関西人でもないのに無理して使うと気取ってるように思える!不思議!

11 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:31:04.61 ID:7VLgO/Gl0
( ●ω●)「どーどー。落ち着けお津出さん」

ξ#。听)ξノ「ぎゃいひー!ぎゃいひー!」

川▼ -▼)「ダメだコイツ……早くなんとかしないと」

暑さで頭も狂うってもんだ。
そりゃそうだ。夏ですもん。
夏で、夏だった……って某主人公も意味の分からない発言するほど、夏は殺人的な季節なんだ。

ξ;凵G)ξ「畜生……折角補講も終わって……事件らしい事件も無くて……夏を満喫しようと思っていたのに……」

プール行ったり、スイカ食べたり、零の作る冷麦食べたり、ラジバンダリンダリンダー!!

ξ;凵G)ξ「りんだりんだー!!りんだりんだりんだあああああああああああああああああ!!」

川▼ -▼)「どうすんだよこれ……収拾つかなくなってきたぞ……」

( ●ω●)「夏って恐ろしいお」

糞め……ファック……ファッキンサマー……。
この暑さどうにかしろよ……。

つーか、そもそも、何で私はこんなとこに居るんだ……。

12 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:33:12.98 ID:7VLgO/Gl0
それは昨日の事だった。

ξ*゚〜゚)ξ「やっぱ夏は素麺よねー」

ζ(^ー^*ζ「ねー」

午後八時くらいだっただろうか。
その日、ようやく補講が終わりを迎えた記念すべき私個人の夏休みスタート初日の夜のことである。
零の作った素麺をつるつると啜っていると、私の携帯がバイブレーションした。

ξ゚〜゚)ξ「面倒くさいからいいか」

まあ食事中ですし。後でかけなおしますよ。
かけなおしますからね。
うん。
かけなおし……。

そんなことを考えている間もずっと携帯は震えている。
何分なっているんだ。どんだけしつこいんだ。

ξ#゚〜゚)ξノ□「んふぁふぉらあ!!(んだこらあ!!)」

相手が誰かも確認せずに電話越しでそう怒鳴った。
人の至福の一時をぶち壊しやがってこのスカが。

13 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:35:21.64 ID:7VLgO/Gl0
『誰にそんな口をきいているのかな?』

ξ゚〜゚)ξノ□

ξ゚〜゚)ξノ□

ξ゚〜゚)ξノ□ ピッ

ζ(゚ー゚;ζ「ちょ、お姉ちゃん!」

ξ゚听)ξ「いやー、零のご飯は美味しいでごわすなー」

聞きなれた性悪女の声だったような気がするけどシラネ。
だって事件が起きるまでもう顔合わせることもないだろうし?
別に怖くもなんともねーし?
ざまあみやがれ!カスが!

ピンポーン

ζ(゚ー゚*ζ「あ、誰かな?」

ξ;凵G)ξノ「ダメだああああ!!絶対に出ちゃダメだああああああ!!」

しかし私の制止も虚しく零はお客さんを迎え入れてしまいました。
一体どなたかな?わくわく!

15 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:37:29.97 ID:7VLgO/Gl0
川 ≧▽≦)ノ「やあ!!津出さん!!」

ξ゚听)ξ

川 ≧▽≦)ノ

ξ゚听)ξ

川 ≧▽≦)ノ「やあ!!津出s」

ξ゚听)ξ「誰だよ」

川 ゚ -゚)「私だ」

ξ゚听)ξ「お前だったのか」

川 ゚ -゚)「暇を持て余した、神々の、あs」

ξ゚〜゚)ξ「あ、零生姜頂戴ー」

ζ(゚ー゚*ζ「はいはい」

川 ゚ -゚)ノ「やあ、君が零さんだね。話は聞いているよ、私の嫁にならないかい」

ξ#゚〜゚)ξ「おめーは何しに来たんだよ」

16 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:39:38.38 ID:7VLgO/Gl0
ついに鬼違いのそれになったかと思うほど直のテンションは、いつもよりもおかしかった。
最も、こいつに正常などという言葉は似つかわしくなく?
むしろ異常めいているからこれも或る意味正常なのかもしれない?

川 ゚ -゚)「何、先ほど調子に乗った馬鹿女が居たのでな、ちょいと殺しに」

ξ;凵G)ξ「許してええええええええ!!」

シリアスなんてなんのその。
そもそも私が居る時点でそんな物存在しません。
と、直に馬乗りにされて往復ビンタを喰らっている私は思いました。丸。

ζ(^ー^*ζ「仲いいですねー」

川 ゚ -゚)「まあね。姉君とは日頃から好い関係なのでね。主に肉体的に」

ξ#)(;:;)ξ「色々と語弊が生じるから止めてください」

そこは暴力的にと言え。そして私に謝れ。

川 ゚ -゚)「黙れよヤンキーが。むしろこれは更生だ。有難く思え」

うん。それ無理☆

ξ;--)ξ「で、何の用なのよ」

川 ゚ -゚)ノ「あ、私にも素麺くれないか?」

ξ#゚听)ξ(厚かましいにも程があるだろ!)

17 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:41:47.07 ID:7VLgO/Gl0
とはいうが、そこは零たん。
何と慈悲深き創世の女神はみすぼらく厭らしく醜悪で最悪極まりない糞女にも御自らの手で作った素麺を与えてやったのだ。
流石は我が妹よ。将来は私のために生きてくれ。

川*゚〜゚)「うまうま」

凄まじい速度で素麺を啜る直。
こいつ日頃何食ってんだ?

ξ#゚听)ξ「おい、直」

川 ゚〜゚)「まあ落ち着けよビッチ。説明してやるさ」

と、直が大きな紙袋を私に渡す。
何か持ってきていたのは見えたが、何だろうか?
重さはそこまでないが……。

川 ゚ -゚)「げふっ……ああ、それはスーツだ」

ξ゚听)ξ「すーつ?」

スーツ?あの社会人やらが着込む征服?
また何でそんな物を。

川 ゚ -゚)「明日、とある場所へ行かなきゃならん」

19 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:43:55.52 ID:7VLgO/Gl0
ξ゚听)ξ「……誰が?」

川 ゚ -゚)「私と、内藤と、お前が」

ξ゚听)ξノ「却下で」

川 ゚ -゚)「あ、零たん、包丁見せてくれるか?」

ξ;凵G)ξ「しんどいなーこの環境」

つーか今零の事たん付けしただろ。
零の事を零たんと言っていいのは私だけだ!

川 ゚ -゚)「キメーよシスコン百合ビッチ」

ξ゚听)ξ「はい。自覚しています。すみませんでした」

話が進まないのでこっちが折れる。

川 ゚ -゚)「何、そう大した用事じゃないよ。遠くもないし」

ξ゚听)ξ「……一応聞くけど、場所は?」

川 ゚ -゚)「頭狂」

ξ;゚听)ξ「遠っ!!」

21 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:46:05.93 ID:7VLgO/Gl0
頭狂。この国の首都だ。
私達の住む所からは大分離れている。

ξ;゚听)ξ「つーか、何しに行くのよ」

それに何で私まで行かなきゃならんのだ?
そう訊ねると直は気味悪く口角を釣り上げて笑った。

川 ゚ -゚)「ん、まあ、いいじゃないか。どうせ暇だろ?いっそ都内観光に行くものだと思ってついてこい」

いやいや。何勝手に決めているのかと。
私だってね、それなりに忙しいんですよ。

川 ゚ -゚)「へえ?忙しい?」

ξ;゚听)ξ「な、何よ」

川 ゚ -゚)「お前何するつもりだったんだ?」

そ、それは……。

川 ゚ -゚)「あーいやだいやだ。友達の居ない奴ってさ」

ξ;゚听)ξ「はあ!?い、いるから友達くらい!」

じゃあ誰と何をするつもりだったんだよ、と直が私に問う。

23 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:49:05.51 ID:7VLgO/Gl0
そうですね。
まず、私は仲の好い友達とですね、夏を満喫するためにプールに泳ぎにでも行こうかと。
その後はゲームセンターで遊んだり、カラオケに行ったり。
それで家に勝ったら零の晩御飯を食べて、寝るのだ。

ξ;凵G)ξ「……友達いなかったよ私」

そうです。
何せ、つるんでいた連中は全員ヤンキーでしたし。
おまけに友達と言えるかも微妙な間柄でしたし。
さらに言えばもう奴等は私に寄り付きもしなくなったし。

川 ゚ -゚)「切ねえ……」

ξ;凵G)ξ「高校生なのに……青春真っ盛りなのに……」

こほん、と直が咳払いをする。
はいはい、話を進めるんですね。

川 ゚ -゚)「まあ、でだ。明日はそれを着て十時に駅に集合な」

用件はそれだけだ。
と言って、直は出されたもの全てを平らげると直に帰ってしまった。

24 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:51:15.46 ID:7VLgO/Gl0
そして現在に至る。

蝉の亡骸が線路脇に落ちている。
ああ、暑くて死んだんだろうな。分かりますその気持ち。
さながら私もスーツなんて重装備の殻の中にいて、早く脱皮したい気分です。

ξ゚听)ξ「あーお爺ちゃんだ。手招きしてる。お爺ちゃんお小遣いちょうだーい」

( ●ω●)「ついに幻覚まで見始めたかお」

川▼ -▼)「酷い……事件だったね……」

そんな縁起でもないことを言うな!

しっかし……このままじゃ本当に死にそうだ。
それほどに暑い。暑は夏い。

( ●ω●)「ほら、津出さん、新幹線きたお」

アナウンスが流れて、遠くから高い音が聞こえてくる。
ようやくか!ようやくノアの方舟が到来したのか!

視線を音のする方へ向けると、夏の太陽光を浴びた新幹線が白く輝いて私達の前で止まる。
うほっ。いい車体。

そんなわけで、私達は冷房のきいた車内へとほいほい入っていったのだ。

25 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:53:34.26 ID:7tm29dxl0
ξ゚听)ξ「右肩痛い右肩痛い右肩痛い右肩痛い右肩痛い」

( ●ω●)「何の呪文だお」

ξ゚听)ξ「あ、私じゃないわよ、遠くでそんなこと誰かが言ってたの」

何か妙なテレパシーを感じたのでついつい口に出してしまう。
頑張れ知らない人!

ξ゚听)ξ「で、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないの?」

三人仲良く――私は左、直は右、内藤は真ん中の席順――新幹線の旅を楽しむのが目的でもあるまい。
ましてや都内観光なんてこいつらからすればあり得ないだろう。
何故って?

ξ゚听)ξ(だってこの二人は毎度厄介事を持ってきますからね!)

例えば眼球事件だとか、例えば吸血鬼事件だとか。
もうね、簡便してくださいよ。
せめて夏休みくらいは自由にしてくださいよ。切な願いでござるよ。
どうせ厄介事に巻き込まれるなら零とデートしたかったよ。

Σξ;゚听)ξ(百合が進行している!?)

26 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:55:42.66 ID:7tm29dxl0
と、自分自身に戸惑っていると内藤が私をサングラス越しで見つめる。

( ●ω●)「……?何って、空から何も聞かされていないのかお?」

ξ゚听)ξ「聞かされたわよ昨日。都内観光だって?」

新幹線は音もなく高速で走る。
あ、よくよく考えたら私新幹線初めて乗ったぞ。

(;●ω●)「……空」

川▼ -▼)「結婚指輪は一万カラットがいいな」

(;●ω●)「無視するお。津出さんに今日の事伝えてなかったのかお?」

ん?なかった?言い方が気になるね。
まるで伝える予定だったというか、前もって教えておけみたいな物言いだ。

川▼ -▼)「まあいいだろ?スーツも渡したし、現に今、こうして居るじゃないか」

(;●ω●)「そりゃ、そうだけどお……」

何だ何だ。
やけに気になるぞ。

28 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:57:51.50 ID:7tm29dxl0
ξ゚听)ξノ「ヘイミスタ殺人鬼。さっきから何を?」

( ●ω●)「いや、空の怠慢具合に苛立ちが増しただけだお」

いやそうじゃなくてですね。
何か伝えることが私にあるのでしょう?
そもそもこんな物を着こんで、更には頭狂だ。
これもまた機関絡みの仕事か何かか?

( ●ω●)「本部に」

ξ゚听)ξ「コンブに?」

( ●ω●)「行くんだお」

ξ゚听)ξ「イクラだお?」

何言ってんのこいつ?頭イかれてんの?

ξ゚听)ξ「……本部に、行く?」

本部って、何の。

( ●ω●)「機関の」

ξ゚听)ξ「はい?」

29 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 20:59:59.83 ID:7tm29dxl0
さてここら辺でおさらいといきましょう。

内藤は殺人鬼で、鬼違いという殺人鬼に似た部類の人間を殺し回っている。
直も内藤同様だが、その実彼女も鬼違いである。
かく言う私も鬼違いでね。

まあそれは置いといて。
内藤と直はとある機関に所属しているという。
私も無理矢理につい最近そこへと加入させられたのだが、これがまたどえらい組織なのだ。
と、言うのも。
マスコミ、警察、政治家、エトセトラ……国の情勢や秩序を担うこれまた強大な組織が、
その機関を支持し、形成していると言う。

ξ゚听)ξ「…………」

自分の体を見回す。
全身黒で塗り固められた、シャキッとしたスーツだ。

……成程?
だからこんな格好なわけか。納得納得。

ξ;゚听)ξ「ってよくねえええええよおおおおおお!!」

川▼ -▼)(声でけー)

30 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:02:08.47 ID:7tm29dxl0
ξ;゚听)ξ「滅茶苦茶ヤバイじゃん!なんだったらもっと気合の入った化粧してきたのに!」

( ●ω●)「気にするなお。僕だって髭剃り忘れたお」

ξ;゚听)ξ「香水だってもっといいの振ったのに!」

川▼ -▼)「どうせ臭いだけだあんな液体。やめとけやめとけ」

つーか何よりも心の準備が!心の準備ができていませんよ!
言うなればとんでもない地位の人たちが集う所じゃないですか!
政治家だとか警察だとか、ヤベーって!

( ●ω●)「大丈夫だお。君は」

と、内藤が私を見つめる。
何を根拠に!礼儀作法なんて何一つ覚えちゃいないぞ!

( ●ω●)「だから、大丈夫だお」

川▼ -▼)「普通にしてればいいんだよ、普通に」

いやいや、その普通が案外難しいんだって。
やべっ、今から既に緊張してきた。

31 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:04:16.95 ID:7tm29dxl0
川▼ -▼)「見た目に反して中身は弱いな本当」

ξ#゚听)ξ「わ、悪かったわね!」

昔から、そう言う改まった場所だとか行事だとか苦手だったんだ。
やれ文化祭だ、やれ合掌コンクール――皆で手を合わせる大会――だとか、運動会だとか……。

ξ;゚听)ξ(しかも今回はそんなの目じゃないし……やべっ、胃が……)

ごろごろと胃の中で何かが走り回る。
そういや今朝何食べたっけ……ああそうだ……ヨーグルト……。

( ●ω●)「そんなんじゃこの先が思いやられるお」

ξ;-听)ξ「……何の話よ」

あー、ごほん、と内藤が咳払いをする。
でたでた、毎度おなじみの説明の時間だよ。

( ●ω●)「津出さん。今回、僕たちは機関の会合へ出向くんだお」

ξ;-听)ξ「会合?」

34 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:07:15.49 ID:7tm29dxl0
( ●ω●)「だお。僕たち以外にも、全国に存在する、僕のような人間が、年に二度、会って話し合いをするんだお」

ξ;-听)ξ「話し合いって、何の?」

すっ、と内藤が指を三本立てて私に見せつける。
何だ?

( ●ω●)「なーに、仲好くおしゃべりするだけが目的なんかじゃないんだお。
       主な理由は三つあるんだけども……一つ。各地域の鬼違いの発生率の報告」

そんなもの、普段内藤の得意とするレポートで纏めて郵便で送ればいいじゃないか。

( ●ω●)「確かにそうだお。現に僕は毎月、殺した鬼違いの数や被害者の数、
        戦闘日誌なんかを書いて送っているお。でもやっぱり会って話す方が楽だお」

二つ目、と内藤が中指と人差し指を立てる。

( ●ω●)「身体検査。例えば……体調管理だとか、傷や後遺症がないかをチェックするんだお。
        他にも筋力、視力、体力の測定なんかも含まれているお」

まあ、身体検査は大事だろうな。
何せ日夜殺し合いの中で生きているのだから、傷や後遺症だとか、とにかく障害があってはたまらないだろう。
おまけに内藤のような、戦闘に特化した人間を大事にしないわけがない。
これほど使い勝手の好い人殺しもそうそういないだろう。

37 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:09:24.38 ID:IZJoIX/O0
と、少し気分は沈む。
果たして、機関は内藤をどういった目で見ているのだろうか?
いや、何も内藤に限った話ではない。
他の超感覚者や、直や私を入れたっていい。
やはり、都合のいい存在くらいにしか思っていないのだろうか?
一般人なんかじゃ到底太刀打ちのできないような鬼違いなんかを、
たかだか一人で殺す事の出来る彼らを、そう思っているのだろうか。

( ●ω●)「津出さん?」

ξ;゚听)ξ「ひゃい!?」

ぼうっと、そんな事を考えていると、内藤が私の顔を覗き込んでくる。
いけないいけない。ネガティブな考えはどっかに置いておこう。

( ●ω●)「で、三つ目。これが一番大事なんだけども」

内藤と直が私をじいっと見つめる。
な、何だよ、その妙に圧迫感のある眼差しは。
サングラス越しでも突き刺さる視線は鋭利で痛い!

( ●ω●)「皆でお茶飲みながら近状報告だとか世間話をするためだお」

ヾξ;゚听)ξノ「どっひゃー!あんさんそんだけ引っ張っといてそらないでー!」

38 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:11:33.35 ID:IZJoIX/O0
川▼ -▼)「さっみ。何ここ、冷房ききすぎだろ。おい内藤席移動しよう、ここにいたら凍え死ぬぞ」

( ●ω●)「まったくだお。おーさむいさむい」

ξ;凵G)ξ「これがスベった時の周りの反応か」

果たして私は何を目指しているのやら。
でも私負けない!だって女の子だもん!

( ●ω●)「ま、とにかく。そんなことが夏に一度、それと冬に一度あるんだお」

ξ゚听)ξ「ふーん。案外集まりを大切にしているのね」

そりゃそうだお、と内藤が答えた。

( ●ω●)「……次は、無いかもしれないからお」

ξ゚听)ξ「…………」

次は無いかもしれない、か。
そうだな。そうかもしれない。
日々を殺し合いの中で生きる彼らに、約束された明日なんて存在しないのかもしれない。
そりゃそうだ。確かに内藤のような超感覚者は、何かしらの感覚が優れているだろう。
だからといって、完璧という訳ではないんだ。
首を切られれば死ぬ。腹に風穴があけば死ぬ。
彼らだって人間なんだ。

39 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:13:42.25 ID:IZJoIX/O0
ξ--)ξ(次、か)

背を椅子に深く預ける。

内藤、お前は死ぬのか?
お前のような人間を、私は見たことがない。
有り得ない反応、凄まじい筋力、どれをとってもお前に勝てる人間は存在しないだろうに。

殺す感覚が人よりも優れている。
お前はそう言った。自分には人殺しの才能があると。

内藤、お前には約束された次が、あるように思える。
お前は死なない。絶対に。
何故なら、誰もがお前に敵わないからだ。

42 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:15:50.65 ID:IZJoIX/O0
 
 
四 其の二
 
 
43 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:17:59.19 ID:IZJoIX/O0
ええ、そうですね。
私はそりゃ田舎娘ですよ。
新幹線だって今日初めて乗ったし、お金もないから貧乏だし、お洒落だって流行に乗り遅れちゃうし。

ξ*゚听)ξ「おーわーあー!」

目に映る人、人、人。
溢れかえる人で出来た波の中から雑踏や賑わう声がそこら中で湧き上がる。
上を見れば狭い空。下を見れば汚い地面。

しかし、ここはなんと美しい所だろう。
頭狂。誰もが皆、表情に笑みを浮かべ、誰もが皆、お洒落で美しい。
ああ素晴らしきかな花の頭狂。来てよかった頭狂。

ξ;凵G)ξ「でもこんな格好だから逆に浮いちゃう!奇抜ってレベルじゃない!」

頭狂駅前。こんな夏真っ盛りの殺人的な日の下、真っ黒なスーツにサングラスをした三人組。
流石に怪しいよな。そうだよな。
通り過ぎる人のうち、半分は私たちを一度見ると顔を合わせないようにして過ぎ去って行く。
おい、そこの少年、変な誤解をするな、私はそっちの筋の人間じゃないぞ!おい!

(;●ω●)「あぢい……」

川;゚ -゚)「おい、迎えはまだなのか」

流石にこの二人も堪えたようで、直なんかはサングラスをはずして胸元を大きく開けている。

45 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:20:08.57 ID:IZJoIX/O0
ξ゚听)ξ

川;゚ -゚)「あちー」

ξ゚听)ξ(…………)

ξ。 。)ξ(……私だって、あのくらいのむn)

ξ  )ξ

川;゚ -゚)「ん?どうした津出」

ξ;凵G)ξ「この腐れアマ!!何故こうまで性能に差が出るんだ!!不公平だ!!」
  _,
川 ゚ー゚)「……ちっさ」

ξ;凵G)ξ「うわああああああああ!!貧乳はすてーたすだあああああああああ!!」

(;●ω●)「お、落ち着けお津出さん!余計に暑くなるから!」

48 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:22:24.32 ID:IZJoIX/O0
  _,
川 ゚ー゚)「泣くなよナイチチ。どうした?その真っ平らな胸は?どっかでおっぱい落としたか?ん?」

ξ;凵G)ξ「ああああああ死ね!!死ねこのやろおおおおおおおお!!」

(;●ω●)「いだっ!お、落ち着いてぶぐえっ!暴れないでがばあっ!」

内藤!この手を放せ!私を押さえるこの手を放してくれ!
私はどうしてもこのデカヂチ女を!この世から抹殺せねばならんのだ!!

そんな風に私達が暴れていると、目の前に一台の黒塗りの車が止まった。

ξ;凵G)ξ「……?」

でっか!これあれだ!リムジンとかいう奴だ!
すげー、初めて見たぞこれ。
こんなのに乗る奴いんのか……羨ましいなあ……。

と、ガチャリと運転席から人が降りて来て、私達の前に立つ。
……ん?

\(^o^)/「お久しぶりでございます。内藤様、直様」

ξ゚听)ξ「え?」

50 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:24:46.23 ID:IZJoIX/O0
( ●ω●)「おー!緒綿さんかお!久しぶりだお!」

川 ゚ -゚)「相変わらずだなじいさん。元気そうで何よりだ」

あの……。

\(^o^)/「いえいえ、お二方こそ。こんな酷暑にも関わらず、外であれだけ元気に遊ばれているのですからね」

と言って、その初老の運転手はクスクスと笑った。
……いやいや、そうじゃなくて。

(;●ω●)「恥ずかしいところ見られちゃったおね」

\(^o^)/「いいえ、私めは内藤様達の元気な様子が見られて満足でございます」

ところで、と運転手が私を窺う。

\(^o^)/「こちらの方は?」

ξ;゚听)ξ「あ!あの、わた、しは!」

( ●ω●)「津出鶴子さんだお。話は聞いてるかお?」

お、お前な!人が慣れもしない自己紹介を!一生懸命頑張って言おうとさあ!?

51 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:27:05.11 ID:IZJoIX/O0
\(^o^)/「ああ!なるほど!この方がそうだったのですか!
       いやー、話は聞いておりましたが、これはまたお美しい」

ξ*゚听)ξ「えっ?」

い、今、美しいって?
このじいさん、私を美しいって言ったよね?

これはこれは話の分かる人じゃないか。
ここ数日間で、ようやく初めてまともな人間に会えたぞ。

ξ*゚听)ξ゚ -゚)「お世辞に決まってるだろ?ナイチチが」

ξ゚听)ξ゚ -゚)

ξ゚听)ξ 川 ゚ -゚) トテトテ

ξ゚听)ξ (゚- ゚ 川 クルッ

ξ゚听)ξ (゚- ゚ 川「貧乳」


ヾξ#;凵G)ξノ「くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」!!」

(;●ω●)「もうやだこいつら」

53 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:29:15.43 ID:IZJoIX/O0
まあ、何はともあれ。
私たち某地区担当機関所属員の三名は、馬鹿でかいリムジンへと搭乗することとなる。

ξ;゚听)ξ「うおお!?広いぞこれ!!」

ξ(゚△゚;ξ「すげえテレビだ!しかも超大きい!バーのテーブルみたいなのもあるし!」

ξ;゚听)ξ「うっわやっべ!何これ背もたれがマシュマロみたい!」

ξ(゚△゚;ξ「うわ!冷蔵庫!シャンパンとかワインとかあるし!しかもどれも高そう!」

そもそも車に乗ること事態が久しぶりだ。
何故かって聞かれたら親はいないし、車も、車の免許も持っていないからね。
乗る機会なんてバスくらいだ。

とは言っても、これは別物じゃないか?
横にも縦にも広くて充実したこの空間。私室に使えそうなくらいだ。

川 ゚ -゚)「初々しいな。私も最初はこんな反応だったな」

( ●ω●)「僕も、まさかトランクスペースにジャグジーバスがあった時は度肝を抜かれたお」

Σξ;゚听)ξ「お風呂もついてるの!?」

何でもありかよ!すげーなリムジン!

54 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:31:23.53 ID:IZJoIX/O0
( ^ω^)つ●-●「ところで津出さん」

ようやく内藤は丸いサングラスを外すと、私に問いかける。

( ^ω^)「絶叫系のアトラクションって好きかお?」

ξ゚听)ξ「え?」

川 ゚ -゚)「おいおい内藤、こいつの目的忘れたのか?こいつは緊張感を求めるんだぞ?」

ξ゚听)ξ「……あの」

( ^ω^)「ああ!そうか、ならむしろ両手を上げて喜ぶおね!」

ξ゚听)ξ「すみまs」

川 ゚ -゚)「運がいいぞ津出。何、私も内藤も、その手の奴が大好きでな」

これは、一級品だぞ、と直が言う。
……あの?これって?

『えー、それでは皆様、これよりこのお、おわ、緒綿めが』

57 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:33:32.02 ID:IZJoIX/O0
すげえ!これ運転席からの声だ!
スピーカーからあのおじさんの声が聞こえる!

ξ;゚听)ξ「でも、何か様子がおかしいわよ?」

( ^ω^)「始まるお」

川 ゚ -゚)「スイッチ……オン」

と、直が指パッチンする。
すると、甲高い笑い声が後部座席に響いた。
な、何だ!?何が起こってんだ!?

『本日は!!この緒綿の車に乗車していただきありがとおおおわたたたたたたたたたたたたたた!!』

こ、この声……あのおじさんか!?
いくらなんでも人が変わりすぎてないか!?某格闘整体師みたいな声出してるぞ!?

( ^ω^)「緒綿さんは、スピード狂なんだお」

川 ゚ -゚)「あのじいさんな、どうにもハンドルを握ると――」

ブオオン!
鈍いエンジン音が響いて、車は爆発したように発進した。

58 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:35:40.60 ID:IZJoIX/O0
ξ;凵G)ξ「ちょおおお!!これヤバイってえええええええ!!」

なんだこれ、物凄いGが!車なのに!飛行機でも新幹線でもないのに!何これ!
ふとスモークガラスの外を見ると、景色は全て一瞬で流れていく。

『コオオオオオオナリイイイイイイインングウウウウウウウ!!』

ぎゃおおおおっとタイヤが地を滑る音が響く。
とにかく死に物狂いで座席にしがみつく。下手したら吹き飛ぶほど慣性が働いているのだ。
しかし、こんな狭い道路で、よもや六、八メートルもある大きさの車を、物の見事に操縦するのは感心した。

ξ;凵G)ξ「いや感心できねえええ!!これ死ぬってマジでえええええ!!」

川 ゚ -゚)「いいぞじいさん!もっとやれ!」

( ^ω^)「たまらんお!」

こ、この頭のイかれた二人組は!

ξ;凵G)ξ「お願だから!お願いだから誰か助けてええええええええ!!」

拝啓、零へ。
お姉ちゃん、もしかしたら一足早く父と母に会うことになりそうです。
秘密にしていたけれども、私の机の二番目の引き出しを開けてみてください。
そこにはしばらく不自由なく暮らせるだけのお金が置いてあります。
最後に、零。

ξ;凵G)ξ「あ・い・し・て・るううううううううう!!」

59 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:37:59.31 ID:IZJoIX/O0
一体何処をどう走ったのかは分からないが、最後の愛してるのリズムに会わせたブレーキで、リムジンは停止した。
ふと見えた窓の外で白い煙が上がっている。タイヤが焦げたんだ。

ξ )ξ「パネエ……パネエよ緒綿さん……」

扉をあけ、よろよろと地に座り込む。
ああ、生きてる……私生きているんだ。

( ^ω^)「いやあ、スリリングだったお」

川 ゚ -゚)「やっぱりじいさんが一番だよ」

\(^o^)/「お褒めに頂き光栄にございます」

ああ、もういいや。突っ込む気もおきねーや。
もう慣れたよ。お前らに常識なんてありゃしねーんだから。
そりゃそうだ。内藤や直の所属する機関だ。
運転手だって何かしらイかれてるだろうさ。うん。泣いた。

\(^o^)/「それでは、私めは駐車場で待機していますので、また後ほど」

そう言って、おじさんはリムジンのエンジンをかけると、風のように去って行った。

60 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:40:07.85 ID:IZJoIX/O0
( ^ω^)「ほら、いつまでそんなとこに座ってるんだお。スーツが汚れるお?」

うるせえ馬鹿野郎。分かってるっつーの。

( ^ω^)「さあ、後ろを見てみるお」

ξ;-听)ξ「後ったって、どうせこれまた大げさなビル――」

皆様、国会をご存じだろうか。
そう、日本の国の唯一の立法機関だ。
日本国憲法において、国会は「国権の最高機関」であって、「国の唯一の立法機関」と位置づけられている。
また、「国民の代表機関」としての性格も有すると言う、あの国会議事堂だ。

( ^ω^)「そっ。最高機関、それが国会だお」

待て、そうだ。
内藤は言った。私達の所属する機関は、全ての分野の頂点が支持する機関……。
言わば、それは国会のようなものじゃないか。

( ^ω^)「ようこそ。我らが『国解機関』へ」

64 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:43:18.86 ID:ejg1IrgH0
もうこれ以上驚きはしないと思ったんだけどもね。
そりゃ驚くわ。無理無理、予想できないって。

( ^ω^)「おっと、この国会が本部じゃないお?」

本部は、下だ。
そう言って内藤は指を地に向ける。

ξ;-听)ξ「何よそれ。国会に地下があるってか?」

( ^ω^)「その通りだお。この下に、僕等の『国解機関』があるんだお」

はっ。そうっすか。
もういいっすわ。驚きゃしませんよ。慣れましたよいい加減。

川▼ -▼)「さて、行こうか」

直がサングラスを再びかける。

( ●ω●)「おっ」

内藤もかけた。
なんだよこれ、畜生……。

ξ■凵。)ξ「似合わないのよっ、こんなシーンわっ……」

私もサングラスをかける。
私達は、ゆっくりと国会へと歩き出した。

65 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:45:27.91 ID:ejg1IrgH0
国会なんて、一生の内で関わることも来る事もない場所だ。普通ならば。
だのに私達は堂々とその中を歩いている。
怪訝な顔つきをする者もいれば、何かを悟ったように一礼をする者もいる。

少なからず、この内藤という人物は……『国解機関』という組織は、それなりに知れ渡っているみたいだ。

ξ■凵。)ξ(やべーこえー緊張がー脇汗が尋常じゃねえ)

平然を装い毅然とした姿勢で歩いてはいるものの、内心は軽くパニックだった。
歩き方だとか、姿勢だとか、服装だとか。
私は果たして、本当にこの中に居てもいいのか?

( ●ω●)「あれだお」

と、内藤が指差す先には見慣れたエレベーターが。
しかしどことなく高級感漂うその佇まいは、何とも言い難い。
やっぱり、ここは普段生活している私の空間とはかけ離れた場所なんだな、と再認識させられる。

内藤が下の階へ行くボタンを三度押す。

ξ■凵。)ξ(これも何かの合図だったりね)

それは正解だったようで、微かに高い音が鳴った。
すると、それまで上階で静かに下降していたエレベーターが、とんでもない速度で私達の階―― 一階――に降りてきた。

中に人がいたが、全員驚いていた。
すみません。びっくりさせてごめんなさい。

66 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:47:35.81 ID:ejg1IrgH0
三人同時に乗り込むと、すぐに内藤は扉を閉ざす。

( ●ω●)「さて……」

階数ボタンの下に、鍵穴があり、そこに内藤はポケットからだした鍵を差し込み捻った。
すると、エレベーターは下降を始める。
階数表示は一のままにも関わらず。

ξ■凵。)ξ「マジでマジなのね」

川▼ -▼)「マジでマジだよ」

いや、決して疑ってた訳じゃないよ?本当に。
ただ、こうも映画のような光景を目の当たりにすると、最早現実味なんて薄れるわけでですね。
そもそも私自身が非現実的な体験をしてきた時点で、この今起きている事実も認めざるを得ないのだけれども。
だけどさ。これだと本当に国が関与しているって認めざるを得ないよね。

( ●ω●)「そろそろだお」

体感時間的にはそれほど長くは無かったけれども、妙な緊張感が私の感覚を狂わせる。
まるで地の底まで……このエレベーターは地獄まで続く直通の箱のようだ。

だってそうだろう。ここは地獄だ。
鬼が居る。鬼違いではなく、この先には内藤と同じ殺人鬼がいるんだ。
それも、大量に。

68 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:50:06.77 ID:ejg1IrgH0
高い音が耳に届く。到着したようだ。
ゆっくりと扉が開いていく。

ξ■凵。)ξ「ゴクリッ」

完全に、扉が開いた。

ξ■凵。)ξ「あれ?」

しかし、予想にしていた光景とは、それはどうしてもかけ離れていた。

ξ■凵。)ξ「えええー……」

とても……普通だった。
壁はクリーム色で、床はどこにでもある塩化ビニル繊維系のタイルだった。

ξ゚听)ξつ■-■「なーんだ、そんなきーはら無くてもよかっt」

エレベーターを出て、一歩、そしてまた一歩と歩く。
そして三歩目に、私は感じ取る。
もうこれで何度目か。
それは人殺し独特の、殺意をもった生物独特のプレッシャー。

「っせいいいいいいい!!」

69 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:52:15.45 ID:ejg1IrgH0
背後から迫る風圧。
ちょ、これ、まさかの展開?
振り返ろうにも間に合いそうにない。
とにかく、背後から何者かが私に向けて、何かしらのアクションを取ったのだ。
恐らく、エレベーターの出口付近。
奴はそこで待ち伏せていたのだろう。

ξ;><)ξ「っっ」

私はその何かしらの攻撃を、耐えようと思い目をつぶってその衝撃を待った。
ところがいつまでたっても痛みは襲ってこない。
はて、何故だろうかと振り返る。
するとそこには内藤がいた。

(;●ω●)「……会って早々これかお、斉藤」

(;・∀ ・)「いててててて!ごめんよナイトー!腕放してえええ!!」

名も知らぬ、同い年くらいの男の子の腕を極めて。

ξ;゚听)ξ「な……え?」

な、何だ?二人は知り合いなのか?

川▼ -▼)「斉藤、相変わらずだな」

71 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:54:23.85 ID:ejg1IrgH0
内藤が斉藤という奴の腕を放す。

(・∀ ・)「おー!くーだ!久しぶりー!」

すると今度は直の奴に抱きついた。
何だ、何だこれは……現状を理解できていないのは私だけか?

( ●ω●)「紹介するお、津出さん」

ぐいっと内藤が斉藤という奴の襟をひっつかんで直からひきはがし、私の前に立たせる。

( ●ω●)「こいつは斉藤又座って言って、僕と同じく超感覚者だお」

(・∀ ・)「おー?お前誰だー?」

こ、こいつも超感覚者?こんなちゃらんぽらんな奴が?
両耳にピアス大量に付けて、髪の色は抜きすぎて白いうえにぼさぼさで、馬鹿丸出しの喋り方をした奴が?
こいつが本当に内藤と同じ殺人鬼なのか?

ξ;゚听)ξ「あ、あの、津出鶴子って言います」

(・∀ ・)「おー!お前が津出かー!噂は聞いてるぞー!くーと一緒なんだろー?」

72 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:56:32.31 ID:ejg1IrgH0
認めたくはないけど、その通りでございます。
奴も私も鬼違いで、内藤の監視下に置かれている存在だ。

(・∀ ・)「よろしくなー」

ξ;゚听)ξ「よ、よろしく」

握手をする。
うーむ……しかし、これが殺人鬼なのか……。
案外そういうもんなのか?
むしろ内藤のような普通そうな奴の方が意外なのか?

(・∀ ・)「それよりナイトー!早く行こうぜー!」

皆がお待ちかねだ、と斉藤は続けた。

(;●ω●)「相変わらず皆来るのが早いおね。もう全員居るのかお?」

内藤が足早に歩き出し、私たちはそれについていく。
何本目かの通路を右折したとき、そこには巨大な扉が。

(・∀ ・)「おー!もう皆いるぞー!」

そして内藤がその扉に手をかけ、勢いよく押し開いた。
そこには――

73 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 21:58:40.82 ID:ejg1IrgH0
 
 
四 其の三
 
 
77 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:00:56.64 ID:ejg1IrgH0
(´#)ω・`)「上等だよこの糞鳥野郎、ここで白黒つけてやろうじゃないか」

(#;:)∋゚)「いい度胸だ垂れ眉毛。先に病院の予約を入れておくんだな」

ノパ听)「いいぞ!もっとやれ!」

(`・ω・´)「負けるな曙歩!」

ミ,,;Д;彡「お前らさあ……本当、何で毎度会う度にさあ……」

……こんにちは。津出鶴子です。
今回、目的も知らぬままに頭狂へと内藤達と共にやってきたのですが、私は今何故か機関の本部にやってまいりました。
理由は年に二度ある会合に出席するためだそうで。
正直、国会の地下に本部があったことや、スリリングなドライブに度肝を抜かれていましたが。
何故か今目の前では、男と男の殴り合いが繰り広げられていました。

ξ;゚听)ξ「ええー……」

こう言うとき、どんな顔すればいいのか分からないの……。

川 ゚ -゚)つ▼-▼「笑えよベジータ」

そっちかよ……という突っ込みは止めておく。

ξ;゚听)ξ「ちょ、内藤!これ何さね!」

(;^ω^)つ●-●「毎度のことだお……本当、世話の焼ける奴らだおね」

ごほん、と内藤が咳払いをする。

81 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:06:02.75 ID:ejg1IrgH0
o川*゚ー゚)o「内藤おにいちゃーん!!」

と、何処に居たのか知らないが、小さな女の子が内藤に駆け寄った。
それにつられて他の奴らもいっせいに内藤に駆け寄る。

o川*゚ー゚)o「会いたかったよ内藤お兄ちゃん!」

少女は屈んだ内藤の胸に飛びつくと、愛しそうに顔を埋めた。
それに内藤は優しい抱擁をする。

( ^ω^)「おっおっ。大きくなったおね優ちゃん」

o川*゚ー゚)o「お兄ちゃんに見合うような女になった?」

何これ。何このガキ。
あれか。今時の子供は皆こんなもんなのか。
何だあの上目使い。何だあのわざとらしいスカートの肌蹴具合。

川 ゚ -゚)ノ「やあ、優ちゃん。ひさしぶr」

と、直の奴がその優とかいう糞ガキに手を伸ばそうとしたら、ガキはその手を払いのけた。
そして内藤の胸から離れると、直を見上げてこう言った。

o川*゚ー゚)o「触んじゃねーよババア」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「テメー毎度毎度何だその態度は。ガキの癖に生意気だろコラ」

82 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:08:11.74 ID:ejg1IrgH0
うはwwww直ざまあwwwwwwって言ってる場合じゃねえええええ!!
やべえ!!あいつマジギレしとりますがな!!

ξ;゚听)ξ「内藤!ちょ、あれ止めて!」

とにかくあれを止められるのは内藤くらいしかいない!
私は後ろへと振り返る。
が。

(´・ω・`)「内藤!会いたかったよ内藤!ね、兄さん!」

(`・ω・´)「ああ!まったくだ!」

(;^ω^)「(近え……)あ、うん、僕もだお」

( ゚∋゚)「また一段と肉付きがよくなったんじゃないか?

(^ω^ )「おっ!分かるかお?実はいいトレーニング方がだおね」

ノパ听)「おい内藤!たまには電話の一つくらいよこせよなあああ!!」

(;^ω^)「(うるせえ……)う、うん、ごめんお」

(・∀ ・)「内藤!抱いて!」

(^ω^ )「だが断る」

内藤はよほど人気者らしく、周りを人で固められていて身動きがとれそうもない。
おいおいおいおい、どうすりゃいいんだよ。

85 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:10:20.20 ID:ejg1IrgH0
o川*゚ー゚)o「お?皺増えたなババア?日々苦労してますってか?」

川 ゚ -゚)「黙れよガキ。子供には分からんだろうよ。苦労って言葉の意味分かるか?ん?」

やべえ……やべえよこれ……どう見ても一触即発ですよあれ。
誰か!誰かこの状況をどうにかしてください!

と、肩をポンと叩かれた。
な、何だよ!

ミ,,゚Д゚彡「あー、君が津出鶴子さん?」

話しかけてきたのは、男たちが殴り合っている最中、頭を抱えて泣いていた中年のおじさんだった。
髭がすっごくダンディです……。

ξ;゚听)ξ「あ、はい」

ミ,,;Д;彡「君からは似た何かを感じる。お互い苦労するね……」

ぐしぐしと涙を拭うおじさんは、何だかとても疲れている様子だった。
ああ……成程。この人私と一緒だ。
唯一常識を持った人なんだな……。

ξ;凵G)ξ「何でこいつら皆馬鹿なんですかね……」

ミ,,;Д;彡「だよな……。もうしんどいよな……」

86 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:12:28.60 ID:ejg1IrgH0
おじさんが一度咳払いをする。
ん?この仕草って……。

ミ,,゚Д゚彡「……お前ら、そろそろいいだろ」

と、渋い声が響いて、部屋の中――会議室かなにかだろうか。円卓がある――は水を打ったように静かになる。

ミ,,゚Д゚彡「……久しぶりだな、内藤」

と、おじさんが内藤を見つめる。
すると、内藤はその場で一礼するとおじさんの手を取った。

( ^ω^)「お久しぶりですお、布佐さん」

これは……もしかして……。

ξ;゚听)ξ「ね、ねえ、直」

川 ゚ -゚)「あ?」

どこかまだ苛立っている様子だが、私は疑問を口に出す。

ξ;゚听)ξ「あのおじさんって偉いの?」

川 ゚ -゚)「ああ、布佐のおっさんか」

87 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:14:38.26 ID:ejg1IrgH0
すっと直がおじさんを指差す。

川 ゚ -゚)「あのおっさんな、この機関の代表だよ。つまりトップ」

ξ゚听)ξ「へえ。そうなんだ。ってことはつまり一番偉い人……」

ξ゚听)ξ

Σξ;゚听)ξ「マジでえええええええええええええ!?」

川 ゚ -゚)(声でけえなあ)

おま、マジかよ!すんげー馴れ馴れしくしちゃったよ私!いいのかおい!

川 ゚ -゚)「いいんじゃないか?代表っていったって、あんま大事にされてないしなあ」

ああ、それは分かります。
あの人は私と同類だ……常識人なのに……皆からどうでもいい扱いされてるんだろうなあ……。

川 ゚ -゚)「ちなみにな、津出」

ξ;゚听)ξ「ん?」

と、直は今度はおじさんの隣に立つ内藤を指差した。

88 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:16:45.42 ID:ejg1IrgH0
( ^ω^)「内藤平助。只今到着しまたお」

川 ゚ -゚)「代表抜きで考えると、事実上内藤がこの中じゃ一番偉いんだぞ」

……そうすか。

91 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:18:57.14 ID:ejg1IrgH0
さて、それからの事を掻い摘んで話そう。
まず、私たち鬼違い抹殺員が全員――これで全員だ。あまりにも少ない――揃うと、
最初は各地域の鬼違い出現率、事件発生率、その他被害者数など、
とにかく鬼違いに関連のある話し合いが始まった。

( ^ω^)「こっちは先月だと三件。皆のところは?」

ノパ听)「こっちも三件だぞおおお!!」

(・∀ ・)「こっちは五件!すっげー疲れた!」

( ゚∋゚)「俺のところは四件だったな」

(´・ω・`)「こっちは二件だったなあ。ね、兄さん?」

(`・ω・´)「ああ。斉藤のとこは災難だったな」

(・∀ ・)「けどそこまで大した事件は無かったぞー!敵も弱すぎてつまんなかったぞー!」

o川*゚ー゚)o「こっちはほとんどお姉ちゃんが片付けたから私は退屈だったよー」

ノパ听)「優にはまだ早い!もっと色々な事を学んでから殺させてやるからな!」

o川*゚ー゚)o「はーい」

異常なんだろうなあ。この会話。
普通の人が聞いたら、驚くだろうなあ。
だって一月の間に、鬼違いに関わる事件が十七件。十七件だよ。
被害者の数だって、ついこの間なんかじゃ、こっちで三十三人も殺されてたんだぞ。
どうなってんだよ日本。

92 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:21:08.48 ID:ejg1IrgH0
そして何より、こいつらは何ともない調子でそんな事話してるんだから。
まあ、この異常具合に慣れている自分も自分か。

ξ;凵G)ξ(普通に生きたかった……)

直と内藤の間に挟まれ、出された紅茶を飲みながら、ふとそう思った。
正直、今何の話をしているのかもよく理解できていないし、ほとんど他人事のように思える。
けどそうじゃないんだよね。私もこんな会合に出向いているわけだし、一応機関に所属しているらいいし、
もう他人事じゃないんだよね。関係があるわけですよ。

ミ,,゚Д゚彡「相変わらず平均と変わりない発生率か。とりあえず現状のままでいいか?」

(´・ω・`)「あ、布佐さん、こっちの方にもっとマシな情報屋よこしてくれないかい?」

(`・ω・´)「どうにも仕事が遅くてな。毎度犯人特定に時間がかかってしまう」

ミ,,゚Д゚彡「うーん、分かった。検討しとく」

ノパ听)「もう少し報酬上げてくれよおおお!!」

ミ;゚Д゚彡「この間の件で一千万やっただろ?それでいいじゃないか」
  _,
ノパ 3゚)「えー?」

ミ;-Д-彡「上の方だってそんな金だしちゃくれないんだ。何だったらお前から直接国にかけ合ってみろ」
  _,
ノパ听)「ちぇっ」

93 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:23:16.90 ID:ejg1IrgH0
ミ,,゚Д゚彡「内藤はどうだ?」

と、内藤に話を振った。
すると、内藤は手を組んでこう言う。

( ^ω^)「……警察の動きが鈍いお。もう少しちゃんと働いてくれるように言って欲しいお」

ミ,,゚Д゚彡「と、言うと?」

とん、と内藤が指を机に叩く。

( ^ω^)「警察は確かに直接手を出させないけどお、牽制くらいには使えるお?
      だのに、前回の吸血鬼事件。こっちじゃ三十三人殺されてるお。
      もう少し警察が動いてくれてたらあの双子の殺人鬼もそこまで手を出せなかったはずだお」

……どうして警察が鬼違いにかかわっちゃいけないんだ?

川 ゚ -゚)「それが決まりになってるからさ」

ξ゚听)ξ「決まり?」

そうだ、と直が言う。

川 ゚ -゚)「鬼違い関連の話はこっちの機関の仕事。普通の事件はあっちの仕事って感じでな。
     前にも、ほら、眼球事件。あれな、警察から直接依頼が来たって言ったろ?」

そう言えばそんなこと言っていたな。

95 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:25:25.71 ID:ejg1IrgH0
川 ゚ -゚)「相手は言わば人殺しのプロだ。日本の警察はそう言った連中には弱い。
     おまけに人殺しなんてしたことがないだろう?複数人で動いてたとしても鬼違い相手じゃ敵わん。
     だから私たちが裏で密に始末するんだ」

ちなみに、犯人の特定なんかも警察の方で行っていたようで。
ようするに、汚れ仕事はこっちの機関の役目ってことか。

川 ゚ -゚)「文句は言えないさ。それで生かしてもらってるんだからな」

まあ、そうかもしれないけど。
けど皮肉だな。
人々の安全を守るはずの警察が、その実単なる役立たずだなんて。

川 ゚ -゚)「過去にも何度か警察側で鬼違いを確保したことがある。だが無駄に死人を増やすだけだった」

そう言う意味でも、最低限の被害にとどめるためにも、そして確実に犯人を抹殺するためにも、
私たち機関に仕事が流されてくるそうだ。
何ともまあ……裏じゃ何かしらあるんだろうなあ。

ミ,,゚Д゚彡「分かった。後でかけ合っておく」

( ^ω^)「有難うございますお」

103 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:38:08.44 ID:ejg1IrgH0
そして先の話し合いが終わると、次は身体検査だった。

ξ;゚听)ξ「はひっ!はひっ!ひぃっ!はひいっ!」

持久力を測るだかで、とにかくひたすらローラーの上を走らされる。
ちょ、待って、私運動はからきしなのに!

( ^ω^)「おっおっ」

(・∀ ・)「うほほほーい!」

川 ゚ -゚)「うーん、ちょっと体力落ちてるなあ」

o川*゚ー゚)o「歳だろババア」

川 ゚ -゚)「あ?」

ノパ听)「うおおおおお!!もっとスピードを上げろおおおおおお!!」

( ゚∋゚)「安定性のある運動を心がけろよ、この馬鹿」

(´・ω・`)「あー、お腹すいたなー」

(`・ω・´)「そう言えば昼飯食べてなかったな」

ちょ、何でコイツら普通に走ってんだよ。
ありえないだろ、今時速二十キロメートル出てるんだぞ?

105 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:40:29.62 ID:xRQXPiEt0
その後、常人では考えられないような筋力を叩きだしたり、視力が異常な奴がいたり、
有り得ないの連続ばかりだった。

唯一ほっとしたのは、私がまだ普通だということだ。
そりゃそうだ。私は超感覚なんて持ち合わせていないし。
……ん?

ξ;゚听)ξ「す、直」

川 ゚ -゚)「なんだ?」

ξ;゚听)ξ「あんた、何であんな平然と二十キロで走れたの?」

そう訊ねると、直は自分の足を叩いてこう言う。

川 ゚ -゚)「鍛えているからな」

いや、鍛えてるって言っても……。
あれを十五分間も走るのは、無理だろ……常識的に考えて……。
私なんて五分でダウンしたぞ。

川 ゚ -゚)「お前も鍛えておけ」

と、直は言う。
何でさ。

107 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:42:44.20 ID:Ig6wMsuA0
川 ゚ -゚)「毎回毎回、内藤が助けに来てくれると思ったら大間違いだぞ?」

そう言われて私ははっとした。
そうか。直の奴は、自分も戦えるようになるために、鍛えているんだ。

川 ゚ -゚)「死にたいならそのままでいいが、そうでなければ自分なりに鍛えてみろ」

直がそう言い終えると同時に、内藤達が診察室からぞろぞろと出てくる。
どうやら全員正常だったようで、目立った傷も無いそうだ。

ξ゚听)ξ(……戦う、か)

私が?喧嘩の一つもしたことの無い私が?
そんなレベルとはかけ離れた殺し合いに身を投じろと?
無理だ。あり得ない。
私にそんなことできっこない。

でも、もしも内藤が私を守れない状況で、私が鬼違いと対峙することになったら?
私はそこで殺されて終わるだろう。成す術も無く、あっさりと、簡単に。

それでいいのか?

私よ、本当にこのままで?

ξ゚听)ξ「…………」

109 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:45:34.87 ID:9EDVK5ae0
再び、会議室と思わしき部屋へと戻ってきた。
其々の席に皆着いて、喋り出す。
皆楽しそうだった。そうかもしれない。
約半年ぶりの再開で、仲間なんだから。

ξ゚听)ξ「…………」

私にはそう言った奴らが居ない。
過去に、居たとも言える。
だがそれが本当の意味での仲間だったかと問われれば、私は首を横に振るだろう。
私自身が奴らを煩わしいと思っていたのだから。
奴らを退屈で詰まらないと感じていなのだから。

直の言葉が胸に突き刺さる。
友達の居ない奴、か。
そうだな、うん。
こんな光景を見てると、無性に寂しくなってくる。
何だか入り込める余地もなくて、私は部外者のようだった。
一応、これでも機関に所属しているのにもかかわらず。

だが私は彼等の過去を知りもしないし、誰とどのような関係を持つのかも知らない。
何故あの優という少女が内藤に好意を持っているのかも、
何故あの曙歩とクックルとかいう奴が殴り合っていたのかも知らないし、
何故斉藤という奴と直が仲がいいのかも知らない。

私はこの中で孤独だった。
一人寂しく、ただ出された紅茶を啜るだけだった。

110 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:47:43.43 ID:9EDVK5ae0
( ^ω^)「なーんて、悲観に暮れているのかお?」

Σξ;゚听)ξ「んひぇっ!?」

内藤に内心を読まれた。
こ、こいつ、ついに読心術まで取り入れたのか?

ノパ听)「しけた面すんなよおおおお!!もっと楽しくいこうぜええええ!!」

と、突然喧しい女が私の首に腕をまわして絡んできた。

ノパ听)「あたいは火糸!!よろしくな鶴子ちゃん!!」

ξ;゚听)ξ「あ!あ、はい!」

( ゚∋゚)「こら、もっと声量を押さえろ。津出さんも困っているだろうが」

今度はクックルとかいう大男が私に近づいてきた。

( ゚∋゚)「クックル・ドゥードゥーだ。生まれはアメリカのアイダホだ。よろしくな、津出さん」

と、手を差し出されたので、私はそれを掴んで握る。
これは所謂握手という奴だ。

ξ;゚听)ξ「よ、よろしく」

113 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:49:51.97 ID:9EDVK5ae0
(・∀ ・)「さっきも紹介されたけど、もう一度言うよー!俺は斉藤又座!よろしくー!」

斉藤が机の上に寝転んで、そう言った。

o川*゚ー゚)o「私は優!よろしくね!」

ξ;゚听)ξ「うん、よろしくn」

o川*゚ー゚)o「お兄ちゃんに手を出したら殺すからな」

ξ;凵G)ξ(もうやだこの子)

(´・ω・`)「やあ、津出さん。自己紹介が遅れてしまったね。
      僕は曙歩。しがない殺人鬼さ」

(`・ω・´)「そして兄の樹だ。これからよろしくな」

二人の兄弟に、片方ずつの手で握手をする。

ああ、お父さん、お母さん。
私、鶴子はとても感動しています。
これですよ、これ。私はこんなのを待っていたんです。
友達……なんていい響きでしょうか!
私にも!ようやく!友達が!

ξ;凵G)ξ(皆殺人鬼だけどね!)

できれば普通の友達がよかったな!

114 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:52:22.82 ID:9EDVK5ae0
ミ,,゚Д゚彡「お?なんだ、もう皆と打ち解けたのか?」

と、布佐さんが部屋に入ってきて、そう私に言った。

ミ,,゚Д゚彡「よーし、今から御喋り会を開くぞー!と、その前に……」

布佐さんが私の椅子を引いて、手を取って立ち上がらせる。

ミ,,゚Д゚彡「皆も知っているだろうが、彼女は鬼違いだ。だが空と同じく、害は無い。
      彼女の保護・観察の意も含めて、内藤に預けているが……」

ちらっと布佐さんが私を見る。

ミ,,゚Д゚彡「……彼女は仲間だ。我々の、大切な、仲間だ。上が何と言おうとも、これだけは譲れん。
      彼女を迎え入れよう」

さあ、と布佐さんが私に振る。

ξ;゚听)ξ「つ、津出鶴子でしゅ!これからよろしくお願いいたひまふ!」

……やべえ、やべえよ。
噛んだってレベルじゃねえよ。なんだよこの空気。すっげー静かじゃん。
こえええええええ!!

116 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:54:39.31 ID:XeX+NtER0
ノハ;凵G)「ぎゃはははは!!いい!いいよ鶴子ちゃん!なんてー噛みっぷりだ!!」

(・∀ ・)「面白いぞー!津出ー!」

すると、どこからか笑い声が響いて、次第にそれは拡散していく。
部屋の中は笑い声に包まれた。

ξ;凵G)ξ(よかった!助かった!)

有難う火糸!斉藤!
貴方達は私の親友よ!

118 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:56:47.81 ID:XeX+NtER0
 
 
四 其の四
 
 
119 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 22:58:56.33 ID:XeX+NtER0
結局、その後は本当に他愛もない話が続き、時刻が夜八時になるとお開きとなった。
皆は惜しむようにそれぞれ別れを告げると、また半年後、と言って去って行った。

ξ゚听)ξ「じゃ、私たちも行きましょうか?」

川 ゚ -゚)「そうだな。おい、内藤」

内藤に呼びかける。
すると、内藤は頷くと、まだ残っていた布佐さんに一礼する。

( ^ω^)「よーし、帰るかおー」

内藤が私達に並ぶ。
そしてそのまま、私達は部屋を出ようとしたが――

ミ,,゚Д゚彡「――内藤」

布佐さんが、鋭い声を発した。
内藤を呼びとめたのだ。
内藤が怪訝な顔をして振り返る。

( ^ω^)「? どうかしましたかお?」

121 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 23:01:08.71 ID:XeX+NtER0
布佐さんは、何度か思案顔を作った。
思い悩んでいるようで、言うべきか迷っているように見受ける。

ミ,,゚Д゚彡「……よし」

決心したようだ。

ミ,,゚Д゚彡「実はな、内藤。クックルの奴から報告があったんだ」

奴が、現れた。
そう布佐さんが言った。

ξ゚听)ξ「……奴?」

なんだそれ?
と、直を見やると。

川;゚ -゚)

直は、まさか、という表情をしていた。
何だ、私の知らない話か?
……よく分からないが、早く帰ろう。
何だか嫌だぞ、この空気は。

……何故嫌だと感じるかって?
だって――

122 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 23:03:18.14 ID:XeX+NtER0
 
 
( ゚ω゚)

内藤が、今迄にない殺意を放っているから。
 
 
125 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 23:05:25.67 ID:XeX+NtER0
( ゚ω゚)「雲地県ですかお」

ミ,,゚Д゚彡「答えられん」

( ゚ω゚)「何時ですかお」

ミ,,゚Д゚彡「答えられん」

( ゚ω゚)「答えてくださいお!!」

聞いたことも無い大声で、内藤が叫んだ。

( ゚ω゚)「布佐さん!貴方だって、僕と同じ気持ちのはずですお!」

内藤が布佐との距離を一瞬で詰めると、彼の襟を内藤がひっつかんだ。

( ゚ω゚)「奴は!貴方と僕から!」

ミ#゚Д゚彡「黙れ!!」

しん、と静かになる。
何だよ、何の話だよ。

126 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 23:07:34.16 ID:XeX+NtER0
ミ#゚Д゚彡「……何故、俺がお前に言うのを渋ったか、分からないだろう」

(;゚ω゚)「……分かりませんお。分かりたくないお!」

どん、と布佐が内藤を突き飛ばし、その足を払う。
内藤が、地に尻をついた。

あの内藤が、一本取られた。

ミ#゚Д゚彡「それだ。お前は未だに復讐のために動いているんだ。だから言えなかった。
      お前はきっと、奴をまだ殺す事を諦めていないんだ」

(; ω )「だって!」

内藤が、拳を床にたたきつける。

(; ω )「その為だけに!僕は奴を殺す為だけに!大勢の鬼違いを殺してきたのに!」

微かに聞き取れたその言葉の意味は分からない。
だが、私はついに、何故内藤が鬼違いを殺し続けるかの理由が、分かった気がした。

(; ω )「姉さんの……仇をうつために……」

127 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 23:09:44.34 ID:XeX+NtER0
ミ#゚Д゚彡「無理だよ」

布佐が屈んで、内藤の顔を覗いて言う。

ミ#゚Д゚彡「あいつを殺せる奴は居ない」

(; ω )「野放しにしろって言うんですかお」

ミ#-Д-彡「…………」

(; ω )「……そうですかお」

よく分かった、と内藤は呟いた。

( ^ω^)「……取り乱してすみませんでしたお、布佐さん」

ミ,,゚Д゚彡「……いや、いいさ」

内藤が襟を正しながら言う。

( ^ω^)「けれど、布佐さん」

内藤が私と直を通りすぎて、扉の前に立つ。

( ^ω^)「奴を野放しにするつもりなら」

僕は貴方を許さない。
その言葉は、果たして布佐のおじさんに、どれほどのダメージを与えたのだろうか?
私にはよく分からない。
ただ、直はずっと、渋い顔をしていた。

128 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 23:11:53.15 ID:XeX+NtER0
( ^ω^)「聞きたいのかお」

ξ;゚听)ξ「え!?」

どうにも居心地の悪い空気の中、内藤が何かを察したように私にそう言う。

( ^ω^)「何れ、話す機会がある。って、言ったおね」

今がその時かもしれない、と内藤は言った。

川 ゚ -゚)「……つっても、そう面白味は無いと思うぞ」

むしろ最悪な話だ、と内藤がそれに付け足した。

( ^ω^)「はっきり言えば、この話は津出さんとは全然関係ないお。
      むしろ僕と空の出会い話みたいなもんだし」

川 ゚ -゚)「よくよく考えれば、あの人が死んだから、私は鬼違いになったんだろうな」

( ^ω^)「おっおっ、そうかもしれないおね」

129 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 23:14:02.11 ID:XeX+NtER0
雪が降っていた。
その年は、とても寒くて、とても辛くて。
私は遅い時間、外を歩いていた。
その日、私は家出をしたんだ。
毎日毎日、暴力に耐える日々。
もう我慢できなかった。
だから私は家を出た。

あてもなく街を彷徨う。どうにも雪は止みそうもなかった。
そしてあまりにも、この寒さは私を苦しめる。
一人には堪えた。冬は嫌いだ。

川 ゚ -゚)「え?」

路地裏にはただ、少年が誰かを抱えて泣いていた。
少年も、その抱えられた人も、血塗れで。

そして男は、それを見下して微笑んでいた。

「次は無い」

それだけを残して、男は去る。
私はどうすればいいか分からなかった。
ただ突っ立って、少年を眺めていた。

130 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 23:16:09.99 ID:XeX+NtER0
その腕の中に居る人は……死ぬんだろう。
非現実的な事が目の前で起きている。
にも関わらず、私は落ち着いていた。
それと共に妙な高揚感がある。そんな自分に少なからず戸惑った。

( ;ω;)「姉さん!姉さん……!」

彼の腕の中にいる女性は、息もたどたどしく、少年の頬に手を這わせる。
少年の顔が、血で染まった。

(;*-∀゚)「泣くんじゃねえ……ブーン……そんなんでこれから先、どうする気だ」

( ;ω;)「待ってくれお!死なないでくれお!お願いだから!」

少年は、女性の言葉に耳を傾ける気も無いらしい。

(;*-∀゚)「聞け、ブーン」

( ;ω;)「姉さん!」

(;*-∀゚)「聞くんだ!」

一際大きな声が路地裏に響いた。
少年は嗚咽を抑えて頷く。

132 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 23:18:26.37 ID:XeX+NtER0
(;*-∀゚)「オレはもう駄目だ。ここに置いていけ。お前は布佐の野郎に、この事を伝えるんだ。分かったか?」

( ;ω;)「そんな事言わないでくれお!」

ピッ、と少年の首に、包丁が突きつけられる。

(;*-∀゚)「これは命令だ」

( ;ω;)「嫌だ嫌だ嫌だ!絶対に!絶対に姉さんを連れて帰るお!布佐の兄さんだって待ってるお!」

私は、この目の前で繰り広げられる、戦争映画のような台詞が飛び交うのを、黙って見ていた。
果たして、何が起きたのだろう?何故二人は血塗れなのだろう?
理由は分からない。私は偶々通り掛かっただけだからだ。

(;*-∀゚)「っ……あー……この馬鹿弟子が……わがまま……言いやがって……」

女性の声から力が抜けていく。
私は直に理解した。
後少し。この女性はあと一分と持たない。

( ;ω;)「姉さん……」

(;*-∀゚)「……強くなれ、ブーン。お前は、オレの後釜なんだ。オレの弟子なんだ。オレみたいに死ぬんじゃねえぞ」

133 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 23:20:34.81 ID:XeX+NtER0
女性の口から血が溢れた。
とても苦しそうだ。

(;* ∀ )「ああ……畜生……わりいなー……布佐……先、逝く、わ……」

静寂が世界を支配した。
死んだ。今、私の前で、一人の人間が。
少年は泣きわめく。

その光景は、とても美しく思えた。

とても気高く、品があり、何を差し置いても、綺麗だった。
胸が高鳴る。
あれを間近で見たい。
死んだモノを、しっかりと見たい。

きっとこの世のものとは思えないほど綺麗なんだ。
だってそうだろう。
この雪景色の中。白と黒のコントラストがより美に磨きをかけている。

死んだ者のために泣く少年もまた、美しく思えた。
彼の涙が月光に反射して、死体の顔に落ちる。

その一連の流れすら、神が造り出した美の演出に思えた。

140 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 23:33:07.52 ID:J4Ga4KaC0
ざくりと雪を踏みしめる。
私は彼に近づいて行った。
一歩、また一歩。
私は踏みしめて歩く。
この道のりは、美への探求だ。

美という、死への道のりだ。

少年が、伏せていた顔を上げた。
目には見たことも無い憎悪が漂っている。
口は半開きで、脱力しているように思えた。

だがその目だ。
その目が私を惑わす。
そんな目をするな、余計にそれを見たくなる。

(  ω )「殺されたいのかお」

少年が、一瞬とも思える速度で私に包丁を突きつけた。
私は何故か冷静である。
今、後少しでもこの少年が包丁を押せば、死ぬというのに。

だが、何故か私は冷静なのだ。

142 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 23:35:16.54 ID:FDHr+HQM0
それはこの少年に、私を殺せないと思ったからだ。
何故か?
それも分からない。
きっと女の勘って奴だろう。

川 ゚ -゚)「殺されるのも悪くは無いな」

実際、私には何も無かった。
欲しい物も、守るべき物も、何も無い。
家族とももう離別した。
今の私に何がある?あるのは首に巻いてるマフラーと衣服、
そしてこのやせ細った痣だらけの体くらいだ。

だから構わなかった。
殺してくれてもよかった。
だがこの少年は私を殺せない。きっと、殺せはしない。

川 ゚ -゚)「だが、頼むよ」

私は少年の目を見つめる。
酷く、濁っている。この世の全ての憎しみの象徴にすら思える。
私と同い年くらいだろうに、一体どうしたらこんな目付きが出来るようになるんだ。

143 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/09/21(月) 23:37:24.96 ID:FDHr+HQM0
川 ゚ -゚)「この死体を、見せてくれ」

私はその時理解した。
私は、その瞬間に、私じゃない、別の私になったんだ。

いや、違う。
生まれ変わったんだ。私は。

(  ω )「お前は……」

ある冬の、雪の強い夜。
私は鬼違いに目覚め、そして彼……内藤と出会った。
 
 



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