- 3 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 19:36:43.47 ID:9v5wmD3s0
-
僕との相違はただ一つ。
それは明確な殺意と憎悪を以ってしての殺人。
僕と貴様は違うぞ、殺人鬼。
そして鬼違いとも違う貴様は一体なんだと言うんだ。
- 5 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 19:38:45.66 ID:9v5wmD3s0
-
七 其の一
- 10 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 19:40:51.34 ID:9v5wmD3s0
- ふあ、と欠伸をかく。眠い。
( ^ω^)「……眠すぎるお」
時刻は朝の五時。
僕は小鳥の囀る小さな公園のベンチに座って、朝日を受けながら暇を持て余していた。
一体何故こんな時間にこんなところに?と思うだろう。
僕だって不思議だ。正直今すぐ帰宅して学校が始まるまで眠りに就きたい。
が、そうもいかない理由があった。
とある人物を待っているのだ。
( ^ω^)「ったく、たかだか十キロ走るのに何分かかってんだお」
まあ、普通の人間なら、きついのかもしれないけれども。
それでも空ならもう少し早く帰ってきてくれる。
( ^ω^)「……まったく」
なんて小言を呟いてはいるが、内心、嫌ではなかった。
むしろ何故か胸の中に嬉しさに似た何かが満ちていた。
- 12 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 19:42:48.72 ID:9v5wmD3s0
- ( ^ω^)「懐かしいおね」
まだ姉さんが生きていた頃。
無理難題を押し付けられてはそれをこなしていく日々を送ったものだ。
半ば死にそうになりながらも、それでも毎日を生き抜いてきた。
( ^ω^)「……あー、成程ね」
姉さんもきっとこんな気持ちだったんじゃないだろうか。
こう、何とも言い難いが、まるで子を躾ける様な――
ぶぶぶ、とズボンのポケットが振動する。
携帯に着信がきているようだった。
( ^ω^)「はいはいっと」
別段、どんな時間に電話やメールが来てもおかしいとは思わない。
こういう仕事柄だ、僕に安息の時間なんてあってないようなものだ。
( ^ω^)(安息の時間、ね)
では今の僕は?
早朝の公園で、先ほど買ってきたアイスコーヒーを手に、欠伸をかいている。
……ああ、素晴らしきかな安息の時。
- 15 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 19:44:45.10 ID:9v5wmD3s0
- なんて考えている間も携帯は震え続ける。
またもはいはいとわざわざ口に出し、開いた。
( ^ω^)(ふむ)
メールだった。
差出人はとある情報屋から。
( ^ω^)(……把握した、と)
内容を確認すると、返信を送る。
続けて空にメールを作成した。
( ^ω^)(あとはよろしく頼んだお、と)
我ながら何とも適当極まる。面倒なことは全て彼女にまかせっきりだ。
いやだがしかしそれだけの恩を彼女には今まで売りつけてきたつもりだ。
むしろ当然の事である。
の、だが。
また後で少しは自分で云々、何でお前は云々言われるんだろうなと思い、肩を落とす。
(;^ω^)(あれも我の強い女だからおー……)
まったくもって自分の周りには普通の女子がいない。
姉さんもそうだったが、どの女性も個性と言う奴が強すぎやしないか。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 19:46:49.06 ID:9v5wmD3s0
- 特に津出さんだ。あれはもう、何と言うか希少種だ。
いや珍しい鬼違いであるというのもあるが、あの性格やら生い立ちやら、いやはや摩訶不思議極まる。
( ^ω^)(……けど、彼女、やっぱり……)
おそらくそうだろう。
けれどそれで良かったのだとも思う。
ある種の自己防衛だし、それは仕方のないことだ。
( ^ω^)(ふーむ)
コーヒーの入った缶を傾ける。最後の一滴まで飲みほした。
( ^ω^)「まだかおー」
いい加減、日差しが少し熱い。
もう直もすれば夏も終わるだろうに、この熱量。
半端ないな。まいったものだ。
( ^ω^)「ん?」
と、またも携帯が振動した。
空だろうか。しかし返信を返すとは珍しい。
すっと取り出してみると、しかし様子が違った。
- 21 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 19:49:00.12 ID:9v5wmD3s0
- 点灯色が通話着信の色で点滅していたからだ。
何かよからぬ予感がして、すぐさま画面を開き、通話ボタンを押す。
( ^ω^)「もしもし?」
酷く荒れた呼吸がまず耳に入る。
――どんぴしゃりだ。
一瞬耳を携帯から離すと、通話相手の名前を見た。
『斎藤又座』
( ^ω^)「斎藤?おい、斎藤?」
焦らず名前を呼ぶ。
少なからず、電話が出来ると言うことは生きていると言うことだ。
だが彼からの着信なんて珍しい。
それにあからさまに、何か状況がおかしい。
『な、ないとー……』
声に力が無い。呼吸はようやっと整ってきたようだが、それでも何か、
普段の元気いっぱいの斎藤らしからぬ声色だった。
- 24 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 19:51:18.25 ID:9v5wmD3s0
- ( ^ω^)「どうしたんだお、こんな時間に」
こんな時間に、と考えられるのはたった一つ。
深夜から朝方にかけて僕等がやることと言ったら一つくらいだ。
さらにこの急激な運動の後のような息使い。
先まで殺し合いをしていたのだろう。
『ちっと、やばめかもしんないよー……』
の、割には緊張感が無い声だぞ、斎藤。
『いや、その……』
負けちゃった。
と、斎藤は続けた。
(;^ω^)「は?負けた、って、え?」
何を言っているんだ?負けたって言うことは、つまり、殺され――
いやだが待て、冷静になれ。
今現在、ボクは確かに斎藤と通話をとれている。
となると、一体彼は――
『「屍」にさー……』
( ^ω^)「!!」
- 27 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 19:52:43.40 ID:9v5wmD3s0
- その名を聞いた瞬間に、理解する。
奴、か。
( ^ω^)「で、逃がしちゃったわけかお」
『ごめんよー……でもやっぱあれ異常かもー……』
こっちの獲物まで巻き添えだよ、と言った彼は非常に残念そうだった。
きっと頭を垂れ下げて鼻でも啜ってるんだろう。
そんな姿が容易に想像できる。
( ^ω^)「……それで、奴は?」
『んー、それがねー』
なんとか色々と情報を聞き出すと、僕は早く元気出せよ、と励ましの言葉を最後に通話を終える。
( ^ω^)「……まったく、波乱だお」
本当、毎度毎度。
長期休暇の一つや二つ、与えてはくれんかね、布佐さんよ。
- 29 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 19:55:12.28 ID:9v5wmD3s0
- はっはっ、と私は息を吐く。
早朝、五時。私は人のいない川沿いの道を走っていた。
ξ;゚听)ξ「はっはっ、はっはっ」
どうも皆さんご機嫌麗しゅう、津出鶴子ことツンでっす☆
なんてハイテンションなふりをするが、そんなもんじゃない。
私はここ一、二週間程、毎朝こうしてランニングをしている。
約一時間ほどずっと走りっぱなしだ。
始めた当初は走り終えた後、あまりの身体の痛みに涙を流しそうになったが、それでも努力のたまものか、
今では呼吸こそ荒げるものの、なんとか時間内に走り切ることができるようになった。
ξ;゚听)ξ(……やっべー)
後ろにまとめ上げた髪が、私の身体が揺れるたびに、それに合わせて上下に跳ねる。
流れ出る汗が、まだ熱の籠っていないアスファルトへと落ちて吸い込まれていく。
ξ;゚听)ξ(……キモチー……)
そうなのです。
普段から不良と言われるように、私は運動なんてまったくしてこなかった。
ランニング?腕立て?スクワット?何それ美味しいの?なんてレベルだった。
だが実際やってみれば何と清々しく、気持ちの良いことか。
これはあれか、きっとあれか、せ、せせせ、セックシもこんな感じなのか?え?おい?ん?
- 31 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 19:56:47.10 ID:9v5wmD3s0
- ξ;゚听)ξ「っゴール!!」
なんて馬鹿なことを考えている間に、私は目的地である、とある小さな公園で足を止めた。
って、こら駄目だ駄目だ、急に止まっちゃ。
まだ呼吸のおぼつかない身体で、適当に歩きながらも柔軟をし、深呼吸をする。
ξ;゚听)ξ「ふぎぃ、夏の早朝はまあなんともすがすがしいでごんすなあ……」
あらかじめ用意しておいたタオルで顔を拭き、スポーツ飲料を飲み込む。
ふう、ちかれた。あたい、きっといい女になるわね。
さて帰ってもう一度寝るか。あー疲れたうんこたれ。
( ^ω^)ノシ「待てやコラ」パコッ
ξ;><)ξ「あいだっ!!」
なんて、帰る気満々だった私の後頭部を、容赦ないチョップが襲い掛かる。
こ、この野郎!人様の頭に向かってなんてことを!
こちとら乙女だぞこの糞っ垂れめが!!
(;^ω^)「君も何で毎度毎度そんなことするかね。もう毎日のお馴染のやり取りになってきてるじゃないかお」
面倒臭いなあ、と目の前の殺人鬼は呟いた。
( ^ω^)「……やる気無いんなら、もう帰るお?」
- 35 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 19:58:51.04 ID:9v5wmD3s0
- ξ;゚听)ξ「ぐぬっ……す、スミマセンデシタ」
( ^ω^)-3「分かればよろしい」
んじゃほら、と言って内藤は一人でに歩き出す。
その後に続いて私も歩き出した。
一通りの無い公園付近の路地。
何ともまあ静かな朝だ。
お爺ちゃんやお婆ちゃんが歩いていても不思議ではないのだけれどね、普通なら。
( ^ω^)「まあ、言わずもがな?」
ξ;゚听)ξ「あー、凄いね凄いね」
お得意の内藤の奴のプレッシャーってやつの所為だった。
( ^ω^)「それで、身体の調子は?」
のんびりと内藤の奴は訊ねてくる。
ξ゚听)ξ「……ふん、なめんじゃないわよ」
そうして歩き続けること数分、私たちはとある廃工場の前まできていた。
立ち入り禁止の札がかかった鎖を乗り越え、中へと侵入する。
- 38 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:00:50.49 ID:9v5wmD3s0
- 中は廃工場なだけあって、何も無かった。
いや、流石に大きなものは無いが、しかし小さな機材やら何か良く分からないものは残ってはいる。
おまけに油やら鉄のニオイも残されたままだった。
( ^ω^)「腹筋、腕立て、スクワット、ダンベル、フロントレイズ、エトセトラ……」
私たちは一定の距離を置いたところで、お互いに向き合う。
丁度工場内の中心に至るところだ。
( ^ω^)「まあ普通よりかは少し辛いメニューだけど、けれどそれは一般人からしてだからお」
……本当は、始めた当初は筋肉痛やら苛立ちに涙が零れもした。
ふざけんじゃねーよと、何だこれ出来るわけねーよと。
だがやらなければならない。
( ^ω^)「特訓してくれ、ね」
ξ゚听)ξ「……何よ、今更」
( ^ω^)「いや、別に?」
そう。私はここ数週間、内藤の奴にコーチをしてもらっていたのだ。
筋肉トレーニングのメニュー組みから、様々なことまで。
( ^ω^)「実際、体力さえつけばあとは根気と努力でどうにかなるお」
- 43 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:02:53.95 ID:9v5wmD3s0
- だからって十キロは鬼畜すぎやしないか。
( ^ω^)「まあそう言わないでくれお。これでも優しい方だお?」
これで優しいだと?
とても十代のピチピチ女子高生のやるような量ではないと思いますけれどね?
( ^ω^)「まっ、さておき」
内藤の雰囲気が変わる。
先までのどこか呆けたような感じから、途端に鋭い物へと。
( ^ω^)「何にせよ良い心がけだお。何があって、どう心境が変化をしたのかは、まあ、敢えては聞かないけどお。
しっかりとメニューもこなしてるし、体つきも若干良くなってきてるし」
うんうんと頷く。が。
( ^ω^)「でも駄目だお。それじゃ死ぬ。身体が出来て、体力が上がったところで。君は死ぬ。
何故って?単純だお」
内藤が構える。同時に私も内藤の見よう見真似で構えた。
( ^ω^)「君に一番不足している事は『戦う』事だからだお。さあ、準備は良いかお?』
そういって殺人鬼は微笑んだ。
ξ;゚ー゚)ξ「はっ、上等」
どうにもこのしたり顔がむかつく。
だから私も強がって、微笑み返してやった。
- 44 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:04:51.62 ID:9v5wmD3s0
- ξメ゙呀)ξ「た……ただい、ま……」
ζ(゚ー゚;ζ「ちょっ、お姉ちゃん大丈夫!?」
あまりの疲労と苦痛により、我が家の扉を開いたと同時に私は玄関に座り込んだ。
慌てて我が愛しの妹零たんが駆けつけてくる。ああ、なんという良い子なのだろう。
ξメ゙呀)ξ「はは、だ、大丈夫……」
ζ(゚ー゚;ζ「……には見えないけれど」
そうだろう。そうだろうとも。
何せ顔面は打撲の跡がいくつか、身に纏うジャージは何が起きたのかと問われるほどズタボロだ。
まるで事故にでもあってきたかのように思われるだろう。
だが最早これが日常と化してしまっていたため、零もそれ以上言わずにリビングへと私を引き摺って行く。
ちょっと零さん?扱い雑すぎやしません?
ζ(゚ー゚#ζ「勝手に怪我こさえてくる人なんて知りません!」
ξ;゚呀)ξ「ぐぬぅ……」
ほら早く、と急かされる。
おいおい、何をそんなに急がせると言うのかね君は。
こちとら満身創痍でございますのよ?
ζ(゚ー゚#ζ「何言ってんの!今日から学校でしょ!?」
- 46 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:06:47.55 ID:9v5wmD3s0
- ξメ゚听)ξ「……がっ……こう……?」
はは、こやつめ。一体何を言っていやがる。
今はまだ夏休みで、その早朝ではござらぬか。
ξメ゚听)ξ「まったく零ったら、おかしなことを言うわね――」
出来た子ほど、肝心な部分が抜けていたりするのは、まあよくある話だろう。
仕方のない子だなあと思いながらもリビングで光を放つテレビに目をやる。
朝のニュースがやっていて、日付まで表示されていた。
……ん?九月一日?
ξメ゚听)ξノ「あれれー?おかしいなーこのテレビ壊れたのかしらー」
ばんばんとテレビを叩く。しかし特に変化は無い。
いやいや、いやいやいやいや?
まさかそんな、馬鹿な話があるわけが?
ζ(゚ー゚#ζ「……課題はちゃんと済ませたの?」
ξメ゚听)ξ
ξメ゚听)ξ
Σξメ;凵G)ξ「うおわああああああああああおおおおおおおいいいいいいい!!??」
- 48 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:08:50.22 ID:9v5wmD3s0
- そ、そんな馬鹿な!嘘だ!あり得ちゃならない!
だってそうだろう!あれだけ長かったんだぞ!凡そ二年程に感じる夏休みが!?
よもや急激な終わりを迎えるはずが!!
ξメ;凵G)ξ「嘘だっ!認めん!私は断じて認めんぞこんな不条理いいいいいいいいい!!」
ζ(゚ー゚;ζ「ああっ、もうこんな時間っ!お姉ちゃん早くご飯食べて!」
はっ!?時間は!?
ξメ;凵G)ξ「し、しちじよんじゅうはっぷんだとおおおお!?」
な、内藤の野郎!!これじゃ走りでもしない限り間に合わん時間じゃないか!
ξメ;皿;)ξ「ハイフブッコオスウウウウ!!(あいつぶっ殺すうううう!)」
用意されて置いたご飯をかきこむ。
糞っ、あの忌々しい豚面殺人鬼野郎めが!
せめて今日から学校が始まることくらい教えてくれたっていいじゃないか!
そもそもこんな時間まで人をいたぶり続けやがって、生粋のサディストか何かか!
『――ており、近年、行方不明者の数は――』
ξ;゚听)ξ「っぶはぁ!!」
なんとかご飯を詰め込むと、それを一気に水で流し込む。
- 50 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:11:02.05 ID:9v5wmD3s0
- 「お姉ちゃん、早くー!」
ξ;゚听)ξ「ちょ、待ってー!」
玄関ですでに待機している零が声を上げる。
ええい急かすな我が愛しの妹よ、お姉ちゃんはな、これでも色々と大変なのだよ。
『――そして、殺人件数も含めると――』
ξ#゚听)ξつ□「ええい、喧しい!」
騒々しいテレビを消す。
行方不明?殺人?そんなの今更な話だろう。
もうそれが当たり前のことになってて、誰も違和なんて覚えやしないんだ。
ξ;゚听)ξ「せ、制服っ、鞄っ」
一体何時からだ。何時からこんな世界になってしまったんだ。
ξ;゚听)ξ「ニーソあっちいいいい」
殺し、殺されていく世界に。
消し、消されていく世界に。
ξ;゚听)ξ「よっしゃ、行くわよ零!」
ζ(゚ー゚;ζ「初日から遅刻は嫌だよー!」
殺人の横行する世界に。
- 53 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:12:58.41 ID:9v5wmD3s0
- 久し振りの学校は……本当に新鮮に感じた。
まるで数年ぶりに母校に帰ってきたような、不思議な感覚……。
ξメ゚听)ξ「何だろうか……まるで二年ぶりに思えるこの感じは」
そんなの知ったこっちゃねえ!
川 ゚ -゚)「相変わらず元気な奴だな糞女」
ξ;゚听)ξ「げっ」
始業式を終え、久し振りの自分のクラスへと入る。
一カ月ぶりの机に座り、教室を見渡してみた。
やはり誰も私に近寄ろうとはしない。
ふん、構うものですか。むしろ涼しくて助かりますのでね!
と、一人いじけている所に何故かあの性悪女狐がやってくる。
ξ;゚听)ξ「……何でこの教室に?HRは?」
川;゚ -゚)「お前、校長の話聞いてなかっただろ、この時間は自由時間だよ」
校長の話?ああ、あれか、無意味に長いあのおっさんの話しね。
聞くわけないだろうそんな物。その時間私は舟を漕いでいましたのでね。
川 ゚ -゚)「何故だろう、自慢に聞こえない」
ξ#゚听)ξ「自慢じゃねえ!」
- 55 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:15:05.40 ID:9v5wmD3s0
- ( ^ω^)「おいすー。って、空もういるのかお」
そんな風に私と馬鹿とで騒いでいたら、遅れて教室に入ってきた内藤の奴が輪に混ざってくる。
どことなく眠そうなのは、まあ、説明する必要もないだろう。
川 ゚ -゚)「いちゃ悪いのか?」
(;^ω^)「誰もそんな事言って無いお」
_,
ξメ゚听)ξ「帰れ帰れうんこマン」
川 ゚ -゚)「あ?今ゴミが口きいたぞ?凄いなこれ、どういう仕組みなんだ?」
ξ#゚听)ξ「喧嘩売ってんのかこらあ!」
川#゚ -゚)「うるせえナイチチスカトロ女がああ!!」
ξ#゚听)ξ「誰がナイチチでスカトロ女だボケエエエエエエ!!」
教室の至る所から小さな会話が聞こえてくる。
うそ……あの人スカトロマニアなんだ……やばくない……?
うわー、引くわー……ないわー……
ξ#;凵G)ξ「おい盛大な誤解が生まれたじゃねええかあああああああああ!!」
川#゚∀゚)「ははは!!ざまあみろ!!私を馬鹿にした罰なんだよ腐れ膣!!」
- 56 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:16:58.29 ID:9v5wmD3s0
- (;^ω^)(何なのこの二人)
内藤が憐れみの目で私と糞女を見つめる。
やめろ、この女と同レベル扱いするんじゃない。
そんな目で私を見るんじゃない!
ξ;-听)ξ-3「ったく、本当あんたといると碌な目にあわないわよ」
やれやれと私の方から折れる。
本当、こいつといて――いや正確にはこいつらと居て、だ――良いことなんてあっただろうか?
無い。断じて。ありえなかった。
私の正常だったこの世界を血に染め上げ、私という存在を覆され。
死と隣り合わせの日常へと突き落した悪魔共。
川 ゚ -゚)「おいおい、そう照れ隠しすんなよな」
ξ#゚听)ξ「誰がするか!」
川 ゚ -゚)ノシ「おーよちよち」
ξ#゙呀)ξ「撫でるな!」
まったく、とため息を吐く。
- 60 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:18:18.20 ID:9v5wmD3s0
-
ξメ゚-)ξ「本当、ウザイ女ね、空」
川 ゚ -゚)「お前が言うなよ、ツン」
- 62 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:19:49.94 ID:9v5wmD3s0
- ( ^ω^)
( ^ω^)
( ^ω^)
(;^ω^)「え?」
ξメ゚听)ξ「ん?」
川 ゚ -゚)「何だ?」
(;^ω^)「今、君達、お互いを、何て」
ξメ゚听)ξ「空」
川 ゚ -゚)「ツン」
( ^ω^)
( ^ω^)「えええ〜……」
- 63 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:21:54.39 ID:9v5wmD3s0
- おかしい、一体何が、と内藤は教室の隅で蹲ってぼそぼそと呟いている。
そんなに変な話か?
(;^ω^)「いや、だって、ねえ?君達、その、ねえ?」
ξメ゚听)ξ「何よ、名前で呼んじゃ悪いわけ?」
(;^ω^)「いや、決してそういうわけじゃないけどお」
川 ゚ -゚)「何だ、お前も名前で呼んでほしいのか?」
ξメ゚∀゚)ξ「呼んでやらねええええ!!絶対呼んでやらねええええ!!」
(;^ω^)「(うぜえええ)……はあ、まあ、いいっすけど」
そう、そうなのだ。
あの事件――人形事件――以来、私と空はお互いを名前や愛称で呼ぶようになった。
別に深い意味は無い。ただ、そう、お互い。
ξメ゚听)ξ(友達、ね)
そう思ってしまったからだろう。
別にいなくなっても構わない。だが、いないと何か物足りない。
そんなふうに思えてしまう。
空はあの日、私を励ましてくれた。それが何よりも救いになった。
- 66 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:24:42.46 ID:9v5wmD3s0
- そうさ。だから私は決めた。
もう泣いていては駄目だと。無力に打ちひしがれていてはいけないのだと。
では何ができる?
喧嘩の一つもしたことが無い。包丁だって碌に扱えない。
そんな私に殺人の、戦いの、何を知れと言うのか?
幸いにも私の周りには殺人のエキスパートが二人いる。
一人は最強を誇る殺人鬼、内藤。
そして我が親友にして鬼違いの空。
そう決めてからの行動は早かった。
毎朝血の滲む――まさしく言葉の通り――内藤からの特訓に耐え、
空から人体に関すること、戦法の伝授等、戦う意味や意義を教わり。
肉体を鍛え、怪我をこさえる日々を送った。
今日だってそうだ。
内藤との徒手格闘において散々な目にあわされた。
四肢や言わずもがな。顔面に計五発、背中に四発、コメカミ、後頭部共に七発、
急所――股間、心臓上部、内部圧迫、エトセトラ――に対する攻撃の数など数えればきりがない。
地面を引きずられ、壁にぶつけられ。
ぶん投げられて吹き飛ばされて。
女だからと言って内藤の奴は何一つ容赦しなかった。
- 69 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:27:35.10 ID:9v5wmD3s0
- ξメ゚听)ξ(……けど、まだまだね)
内藤から訓練を受けていて実感する。
それでもこの内藤と言う男は手加減しているのだと。
そうだろう。私は奴の戦闘をこの目で見ているのだから。
目で追うのがやっとの速度での接近、常識では計り知れない破壊力。
己は殺人・戦闘の為に生まれたようなものだと言っていたくらいだ。
川 ゚ -゚)「……しかし、何だな」
空が私の横顔を見てつぶやく。
川 ゚ -゚)「なんか、雰囲気変わったな」
ξメ゚听)ξ「? そう?」
川 ゚ -゚)「まあ相変わらず馬鹿な所は変わっちゃいないけれどな」
ξ#゚听)ξ「こいつは本当にいいいい!」
( ^ω^)「短気な所も直ってないお」
変わった、か。
よくは分からないな。
得てして自分のことなんて分かりえないものだ。
そうだろうとも。じゃなければ自分が鬼違いだなんて知らぬまま生きていけたのだから。
- 71 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:30:44.84 ID:9v5wmD3s0
- 世界は平常運転を続けているように見受けて、実は異常の航路を突っ走っていたのだ。
きっと皆知らないだろう。この世界に溢れる異常性のことなんて。
近年に伴って増加する殺人件数、そして行方の知れぬ者達。
果たしてそれらの結末は?
普通なら知りえない事だ。そんな事、治安を維持する警察やらそういった機関のみが知ることだ。
だがその彼らでさえ手に負えていないのが事実だった。
『国開機関』というものがある。
それこそがこの日本という国を陰で救う組織である。
その組織に所属する殺人鬼達は皆、稀なる力を秘めているのだ。
それが超感覚と言われる、所謂第六感覚だとか超能力と言われるものだ。
ではその力で一体何をしているのか。何を守っているのか。
何時の時代にも表れる、世界に害悪を齎す存在がいる。
得てしてそれらはシリアルキラーやサイコパス等と呼ばれる殺人鬼達だ。
詳しく説明すると、また違ってくるのだが、彼らを鬼違いと呼ぶ。
彼らは殺人を目的とはせず、それを手段と持ちいるのみである。
人としての何かが無くなった彼らは、最早その目的のみを遂行する危険な存在だ。
そんな存在が日本では溢れかえっていた。
理由は詳しくは知らないが、それでも結果としてそうなってしまっている。
だが日夜働く『国開機関』の殺人鬼達は、彼ら鬼違いを殺して回りどうにか秩序を保ち続けていたのだ。
- 72 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:33:14.52 ID:9v5wmD3s0
- 私や空や内藤の奴はその組織に所属していた。
内藤は生まれついての殺人鬼だったと言う。
自らの胸に秘める目的、いや最終目標のため、今も殺し続けているそうだ。
そして私と空。
私達は鬼違いだった。
空は生物の死を見る事を目的とし、私は極度の緊張感を求めた。
稀に見る、殺人を目的としない珍しい鬼違いらしく、内藤を手伝うと言う条件付きで今も生かされている状態だった。
それまで平穏な生活を送っていた私は異常な生活へと足を踏み入れる。
食人事件、眼球事件、吸血事件、そして人形事件と。
いやはやしかし、まったね。
もう二カ月余りだろうか。この世界に入って。
だというのにこれだけの件数の事件に巻き込まれたわけだ。
果たしてこれを多いと見るか少ないと見るか?
きっとそんな質問をすれば、内藤と空の奴は笑って「少なっ」と言うのだろうな。
ξメ゚听)ξ(……そう、少ないのよ、きっと)
これから。どんどんと増えていくのだ。
私が生き続ける限り、その地獄は続いていく。
果たしてその地獄の中私は生き続けられるだろうか?
無理だろう。
今のままで、内藤や空の助けなくして生きていられない私には、無理な話だ。
- 75 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:35:10.98 ID:9v5wmD3s0
- ξメ゚听)ξ(だから、強くならなくちゃ)
そう、強くなるのだ。
強くならねば死んでしまう。
私も、そして――
オラアアア
三川#゚ -゚)つ#)呀)ξ ボヘァ
川 ゚ -゚)「おーい、目、さめたか」
ξ#)呀)ξ「な、何故、何故殴られた……?」
_,
川*゚ -゚)ゞ「いやあ、なんか珍しく真剣に考え事してる姿が癪に障ったから?」
ξ#)听)ξ「ぶっ殺すぞクソアマがああああああああああ!!」
折角!!折角のシリアスを!!
シリアスブレイカーを自負するこの私が自ら作り出していたと言うのに!貴様と言う奴は!
と、そんな風に暴れていたらチャイムが鳴り響いた。
どうやら次の授業が始まるみたいだ。
それまで騒々しかった教室も、皆ため息をついて席に着き始める。
川 ゚ -゚)「ふうむ。ではまた後でなツン」
- 76 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:37:36.77 ID:9v5wmD3s0
- 後で、ってのは多分昼休みのことだろう。
最早私と空が図書室でご飯を食べるのは一種の決まりごとじみていた。
川 ゚ -゚)「ああ、それから内藤」
すっと踵を返して、席につこうとしていた内藤に何かを渡した。
( ^ω^)「おっ。相変わらず早いおね、どうも」
じゃあな、と手を振って凛とした表情で出ていく空。
普段からああなら、私の奴を見る目も変わったのだろうけどなあ。
と、空と入れ違いに教師が入ってきた。
ξメ--)ξ「はーああ」
苦い顔をする生徒達、まだ暑さの抜けない空気。
蝉の鳴き声、教室の少し埃っぽい空気。
どうにも、平和ボケしそうだ。
- 78 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:38:45.72 ID:9v5wmD3s0
-
七 其の二
- 80 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:40:45.01 ID:9v5wmD3s0
- おかしい。
_,
ξメ゚听)ξ「……おかしい」
私はとある人物を授業中も休み時間中もずっと観察していた。
( ´ω`) zzz
そう、あの最低最悪な殺人鬼、内藤をだ。
今は何時ものように間抜け面を晒して眠りへと落ちている。
新学期が始まっても、内藤の奴のやることは変わらないようだった。
に、見受けたのだが。
( ´ω`)「……ん」
面倒臭そうに起き上がると、携帯を取り出した。
そして何かの操作をして、また眠りへと落ちていく。
そんな姿が授業中も休み時間中も見られた。
_,
ξメ゚听)ξ「怪しいとは思わんかね、空よ」
川 ゚〜゚)「んー……」
もぐもぐとご飯を食べる空が唸った。
現在、昼休み。
やはり私と空はお決まりの場所――図書室――でご飯を食べていた。
- 82 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:42:49.28 ID:9v5wmD3s0
- しかし今日の空は普段とは違う物を食べていた。
弁当だ。あの空がだ。
川*゚ -゚)「いやあ、やはり美味いなお前の妹の飯は」
ξ*゚听)ξ「でしょでしょ!」
そう。空は零たんお手製の弁当を貪っていたのである。
ζ(゚ー゚*ζ『はいこれ』
ξメ゚听)ξ『? 何これ』
ζ(゚ー゚*ζ『直さんにあげて?話し聞いてたら、何か作ってあげなきゃと思って』
今日、学校に着いて早々に、零がそんな事を言って私とは別の弁当箱をよこしてきたのだった。
そのことを空に伝えれば、踊りだすほど興奮していた。
ξメ゚听)ξ「で、空。あんた何か知ってんじゃないの?」
まあ弁当の話はさておき、私は先の話へと戻す。
川 ゚ -゚)「げふっ。うーむ、そうだな」
綺麗に空の奴が弁当を平らげると、ごそごそと懐から何かを漁り始める。
- 83 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:44:42.91 ID:9v5wmD3s0
- 川 ゚ -゚)「おそらくこれだろう」
そうして見せられたのは携帯電話だった。
ξ;゚听)ξ「……何、これ?」
別に携帯に対しての質問じゃない。
問題はその画面に表示されているものだ。
川 ゚ -゚)「何って」
見えないのか?と空は指を画面に置いてそのタイトルを読み上げた。
川 ゚ -゚)「出会い系サイトじゃないか」
……いいですか、皆さん。
あろうことにもこの少女、学校と言う場所で、なんとも恐ろしいホームページを閲覧しているのです。
しかも何ともなさそうにだ。
川 ゚ -゚)「? どうした?」
ξ;゚听)ξ「あ、いや、うん、いいと思うよ、私は、さ、うん」
そりゃ驚く。こんな絶世の美女が、だ。
まさかの出会い系だ。
いや、珍しくは無いだろうよ?今の世の中だ、そういう人も少なくは無いだろうよ?
- 85 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:46:49.52 ID:9v5wmD3s0
- ξ;凵G)ξ「でもお願いだから!!自分の体は大事にして下さいお願いしますから!!」
((川;゚ -゚))「何を言ってるんだお前は、つーか揺らすなバカたれ」
それでも!それでも私は見過ごせんのだ!
何せ私は貴様の友達なのだから!
ξ;凵G)ξ「いくらなの!自分をどのくらいの値段で売ってるの!」
川;゚ -゚)「はあ?」
ξ;凵G)ξ「ま、まさか!既にビデオに出たとかそういうのじゃないでしょうね!?」
川;゚ -゚)つ「取りあえず落ち着け、後声を抑えろ」
図書室の中がざわめく。
そりゃそうだ。何せあの学内一の美少女が、え、えん、えんk。
川;゚ -゚)「だからしてねーっつうの」
ξ;凵G)ξ「じゃあ何で会員登録まで済ませてるのよっ!!」
誤魔化せるとでも思ったか!既にお前のページがあるじゃないか!
畜生ふざけやがってなんだこのプロフィールは!
二十二歳独身男性、可愛い子募集……。
ξ;凵G)ξ「……ん?」
- 88 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:48:56.12 ID:9v5wmD3s0
- そう、何ともふざけたプロフィールだった。
そこには二十二歳の会社員男性が少女を買う、と書いてあったのだ。
ξ;゚听)ξ「どういうこと?」
川 ゚ -゚)「……まあなんだ、少し場所でも移すか」
早く詳しい話を聞きたかったが、空にそう遮られてしまって仕方なく頷く。
私達は弁当箱を手に持つと、屋上を目指して階段を上って行った。
(;´ω`)「ううーむ……」
ξメ゚听)ξ「あ、内藤じゃない」
屋上への扉を開くと、扉付近の壁に凭れかかって携帯を操作している内藤の姿があった。
何とも偶然だ。いや、もしかしたら普段昼休みは此処にいるのかもしれないな。
川 ゚ -゚)「おや、丁度いいところに居るじゃないか内藤」
と、空が声をかけるが内藤は先から唸ってばかりだった。
ξメ゚听)ξ「……あんた、ずっと気になってたけど何を――」
いい加減、はっきりと知りたかった私は内藤の携帯の画面を覗き込む。
別段抵抗もしなかったため案外素直に見られた。
するとそこには――
- 92 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:51:29.99 ID:9v5wmD3s0
-
全然オーケイだよっ☆
楽しみだなあ(^^)
で、時間は何時にする?(´▽`)
という、内藤の作成途中のメールがあった。
ξメ゚听)ξ「…………」
川 ゚ -゚)「…………」
空の奴も私とは逆方向からのぞいていたようで、私達はお互いの顔を見合わせる。
きっと私達は同じ表情をしていたのだろう。
そう。見てとれるほどの――嫌悪感。
ξ;゚听)ξ「キモイキモイキモイキモイイイイ!!なんだこの鳥肌の立つ文面はああああ!!」
川;゚ -゚)「つーか顔文字とか!!お前いつの時代のセンスだよ気色わりいいいいいいい!!」
- 93 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:52:51.62 ID:9v5wmD3s0
- (;^ω^)「ええい黙れ糞女共!!これでもこっちは慣れない事してまいってんだお!!」
両サイドに騒がれ、流石に内藤もトサカにきたのかそう叫ぶ。
いやでもこれはねーよ。なんかもう、色々とおっさんくせーし。
ξ;゚听)ξ「いやでも、何?それ」
(;^ω^)「……何って、メールだお」
という意見に、私は少し驚いた。
どうにもこの文面だと、まるで友達と会うような内容だ。
あの内藤に友達がいるとは。これは新発見だ。
- 95 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:54:53.08 ID:9v5wmD3s0
- 川 ゚ -゚)「な訳ねーだろ馬鹿」
と、頭をはたかれる。え?何ではたかれてんの私?
ξメ゚听)ξ「いやでも、じゃあ、これは誰に向けてのメールなわけ?」
っていうかそこまで踏み込んでいい話なのか?
よくは分からないが……。
川 ゚ -゚)「だからな、これだよ、これ」
と言って空はまた私に先の出会い系のサイトを見せてきた。
いやだから、まったく話が見えんて。
( ^ω^)「さて、と」
ぱたん、と携帯を閉じて内藤は呟く。
どうやら先のメールは送られてしまったらしい。
……何ともまあ、あれだが。
( ^ω^)「津出さんや」
ξメ゚听)ξ「はいな」
( ^ω^)「出たお、鬼違い」
- 99 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:56:44.32 ID:9v5wmD3s0
- ξメ゚听)ξ「はあ」
そうか、出たのか。
鬼違いがね、そうか。ふーん。
Σξ;゚听)ξ「いや冷静すぎるだろうが!!」
おおおおおいいいい!!事件じゃねえええかあああ!!
何普通そうにしてんだよ馬鹿野郎、鬼違い現れちゃってるじゃねえええかああああ!!
( ^ω^)「段々、僕等に感化されてきてるようだおね」
川 ゚ -゚)「いい傾向なんじゃないか?」
よくねえよ!
ξ;゚听)ξ「つーか、それと先のと何が関係するわけ?」
まあいい、最早こいつ等に何を言ったって通じるものか。
そうだろうさ。こいつ等はこの異常な世界で何年と過ごしているのだから。
だから鬼違いが表れるのが自然で当たり前のことだと思っていやがるんだ。
兎に角、話を先に進めよう。
鬼違いが表れたと言うのなら、尚更。
- 103 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 20:58:47.30 ID:9v5wmD3s0
- ( ^ω^)「ここ最近の話だけどお」
この町で、行方不明者が続出している。
そう、内藤は言った。
ξ;゚听)ξ「……うん、でも、それと先の関連性は?」
鬼違いが出現した際おこりえる現象としては、殺人か行方不明のどちらかだ。
まあそうだろう。そういう種類だしな。
だが話が読めない。それと出会い系だとかメールだとかの関連性がつかめない。
川 ゚ -゚)「まあそう急くなよ。既に粗方の下準備は済んでしまっているからな」
と、空は言い、続けた。
川 ゚ -゚)「近年の若者は性への興味というものが尽きんようでな。いや、まあそれはどの世代でも言えるわけだが。
さてツン。そんな彼らはその欲望をどうすると思うかね?」
ξ;゚听)ξ「ううーん……ま、まあ、その、一人遊びで片づける、とか?」
( ^ω^)「まあそういう手段が大抵だお。けれどね、津出さん。世界はそういう人で溢れかえってるんだお」
川 ゚ -゚)「つまりだ。そういう人同士が欲望をぶつけ合えば事は済むのさ」
- 107 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:01:01.14 ID:9v5wmD3s0
- そうだろうとも。その為の出会い系だろう?
けれど何か嫌だな、私は。何処となくそれは薄汚れているように思えてならない。
( ^ω^)「で。今でこそそれはもう主流のコミュニティー扱いされてるおね」
確かにそうだ。
昔は――中学生くらいの時分――それは世間では蔑まされていたし、碌なものではないというのが常だった。
だが今ではどうだろう。某SNSサイトや巨大掲示板などでは、それはごく自然に行われている。
結局、それは自然なことになってしまったのだ。
肯定的になったわけではないが、でもあっても不思議ではないと言う、常識。
川 ゚ -゚)「でだ。利用者は当然膨大だ。千、いや万に至る数だろうよ」
そんなにも多くの人々が、今ではインターネットを通じて何かを、情欲を貪ろうとしている。
どこか、汚らわしく思えた。
川 ゚ -゚)「だからある意味分かりやすいのさ。そういう中での異常めいたことというのは」
ξメ゚听)ξ「異常めいたこと?」
( ^ω^)「大まかに、犯罪が分かりやすいお。ネット犯罪も然りだけど、この場合は、ネット経由での現実での犯罪だお。
例えば援助交際なんかは度々ニュースで取り上げられてるおね?」
ふむ、確かに。
あれだろう、おっさんが少女とチョメチョメしてお金を払ったりすることだろう。
- 110 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:03:05.18 ID:9v5wmD3s0
- ( ^ω^)「こういう事件っていうのは、売り、買い、のどちらかがどこかでボロを出せばバレてしまうんだお」
確かにそうだ。
よく後悔の念に押された、だとか、怖くなってしまった、だとか言って自首する人がいる気がする。
川 ゚ -゚)「で、そういう事は常々だったりするよ。報道されていないだけで、その実捕まる人間は多い」
そうだったのか。
( ^ω^)「ところが」
と、内藤が先の携帯を指さして言う。
( ^ω^)「おかしなことが起こったんだお」
おかしなことだと?
川 ゚ -゚)「行方不明者が続出しているのさ、出会い系サイト内で」
ξ;゚听)ξ「え?」
でも、それは珍しいことではないんじゃないのか?
退会したりだとか、面倒臭くなって放置している、だとか。
( ^ω^)「多くがリピート客なんだお、行方不明者」
川 ゚ -゚)「サイト内でも、何か不穏な空気が漂っている。いっそ警察に、とまで話は持ち上げられているそうだぞ」
- 114 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:04:44.70 ID:9v5wmD3s0
- つまり、消えるはずが無い人が消え、その異常性を薄々皆気付き始めていると言うのか?
( ^ω^)「そうなんだお」
ξ;゚听)ξ「でも、それで何で鬼違いが関係してるって――」
びっ、と空が懐から何かを差し出した。
写真だ、これは――
ξ;゚听)ξ「!?」
それは血塗れになったベッドの写真だった。
中央付近は、人の形上に、そこだけ何も付着していなかった。
ξ;゚听)ξ「これ、は」
ぞくぞくする。間違いなく、これは殺人現場だ。
川 ゚ -゚)「覚えているだろう、ツン。報道規制だ」
前に言っていたものだ。
あまりにも過激な事件や、連続して異常じみた事件が起きた場合、報道関連が振りかざす権力。
( ^ω^)「現場は色々とあったお。〇×ホテル、××ホテル、〇〇ホテル、他にもたくさん」
空が写真を仕舞う。
しかし、写真を見て嫌悪感を抱かなかった私は、もう、完全に順応しているのやもしれないな。
- 117 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:06:53.33 ID:9v5wmD3s0
- 川 ゚ -゚)「何故この出会い系サイトが関係しているのかというのは、被害者の身元を調べていて共通していたからさ」
ξ;゚听)ξ「つまり……」
つまり。犯人はここで獲物を見つけて。
( ^ω^)「殺していくんだお」
成程。しかし、何となく頷ける。
それほどまでに多くの人々が利用するインターネット上で。
一つの共通点――ましてや性事情だ――があれば親しくなれる場所だ。
おそらく獲物を探すのに手間なんてかからないのだろう。
( ^ω^)「で、信頼できる情報屋と、空の働きのおかげで」
今僕は犯人と会う目処を立てた。
そう内藤は言った。
ξ;゚听)ξ「……珍しいじゃない、普段行き当たりばったりな癖に?」
そう、とても珍しいと思えた。
何時もなら何の証拠もないまま、私の特殊能力じみた体質を利用して犯人を探して回ると言うのに。
川 ゚ -゚)「そりゃ、犯人が馬鹿なお陰だ」
- 121 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:08:50.54 ID:9v5wmD3s0
- ( ^ω^)「まったくだお。ネットってのは、証拠の残りやすい場所だお。そもそも、最後に会った人が怪しいし」
成程、確かにな。
ネットを利用するに当たってそこが注意すべき場所なのだろう。
( ^ω^)「事実、彼女と接触してから、被害者たちは亡くなってるからお」
と、言う事はだ。
ξ;゚听)ξ「犯人確定?」
にこり、と二人が歪に笑う。
( ^ω^)「津出さん、登校初日に何だけれど、今日は夜、空けといてくれお?」
川 ゚ -゚)「鬼違い狩りだ」
どことなく、それが自然な笑みなのかもしれないと。
私は思えてならなかった。
- 124 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:09:49.83 ID:9v5wmD3s0
-
七 三
- 125 名前: ◆hrDcI3XtP.[>>124訂正] 投稿日:2011/07/02(土) 21:10:21.16 ID:9v5wmD3s0
-
七 其の三
- 126 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:11:22.12 ID:9v5wmD3s0
- 夏の夜は、どこかうっとうしい。
そろそろ夏も終わるだろうに、それでも空気はしがみ付いてくるようにじめじめしていた。
ξ゚听)ξ「…………」
片田舎の、有楽街。
飲み屋やゲームセンターなどが所狭しと隣接する場所だ。
時刻は九時ジャスト。未だ制服を着た少年少女の姿が見えるが、もうじき帰路に着くだろう。
平日の夜だと言うのに、酔っぱらったおっさん連中も見受ける。
ξ゚听)ξ「暢気なものね」
そう呟いてしまった。
これを平穏と呼ぶのだろう。誰もが皆、自分達が異常なことに巻き込まれるとは思っていない。
だがその実、それは己の直ぐそこで起きているのだ。
今君達の隣を歩く、一組の男女。
( ^ω^)
爪'ー`)
川 ゚ -゚)「暢気なものだよな」
そう、空はいった。
恐らくそれは内藤に向けての言葉だろう。
確かにな。ああも自然に鬼違いと喋り、笑いながら歩く姿は間抜けにしか思えない。
- 127 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:13:12.43 ID:9v5wmD3s0
- そう、実情を知る者なら尚更のこと。
奴は今、正真正銘の殺人鬼の隣を歩いているのだから。
いや、だがそれは隣の少女にも言えるのだろう。
果たして彼女は想像に着くのだろうか?
その隣を歩くのが、百戦錬磨の無敵の殺人鬼だと言う事を。
川 ゚ -゚)「目標が建物内に侵入するぞ」
空が私の肩をたたく。
分かっている。
ξ;゚听)ξ「……行くわよ」
今回、私と空はサポートにまわることになった。
正直、何処かでほっとしている。
まだ、戦う事をしなくていいのだと。
ξ;゚ -゚)ξ(……馬鹿じゃないの?)
何とふざけた事を思っているんだ、私は。
あれ程強く願っていたことなのに。
そんな私の渋い表情を見てか、空はまた私の肩を叩いてこう言った。
川 ゚ -゚)「焦るなよ、ツン」
- 129 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:14:46.59 ID:9v5wmD3s0
- 焦るな?何を焦ると言うんだ?
川 ゚ -゚)「ツン、お前は少し勘違いをしているんだ」
ξ;゚听)ξ「? 何を……」
川 ゚ -゚)「私も、内藤もな」
お前には戦わせたくなんて無いんだよ。
空は、そう言った。
ξメ゚听)ξ「それ、どういう意味よ」
カチンときた。
何だそれは。私を戦力として見ていないとでも言いたいのか。
足手まといだと、そう言いたいのか?
川 ゚ -゚)「馬鹿野郎」
こつん、と頭を軽く叩かれる。
川 ゚ -゚)「……友達を危険にあわせたがる馬鹿がいるものか」
空は、少し恥ずかしそうに言った。
川 ゚ -゚)、「ほ、ほら、行くぞ!」
- 131 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:16:51.35 ID:9v5wmD3s0
- 手を引っ張られる。
ξメ゚听)ξ(……何よ)
……そんな事言われたら、何も言えなくなってしまうではないか。
爪'ー`)「ねえ?」
少女は薄汚れたベッドに腰掛けて、僕を呼んだ。
( ^ω^)「……何だお」
それに野暮ったく答える。
どうにもいけすかなかった。この空気も、この部屋も。
……この少女も。
爪'ー`)「君、本当は私と同じくらいの歳でしょ?」
そう言われて、僕は驚くでもなく自然にこう返す。
( ^ω^)「ん。正解だお」
爪'ー`)「わお。悪びれもしないんだ。カッコイー」
- 133 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:18:59.31 ID:9v5wmD3s0
- パチパチと少女は手を叩いて笑う。
僕は半ば呆れながらも、彼女に向かい合うように椅子へと腰掛けた。
爪'ー`)「ね。本当はさ、こういうの初めてなんでしょ?」
( ^ω^)「こういうのって?」
爪'ー`)「だからぁ」
言葉を紡ぎながらも、彼女は己のブラウスのボタンを一つずつはずして言った。
爪'ー`)「エッチな事」
何処の制服かも興味ないが、しかし真っ白な生地が剥がれ、
露わになったのは張りのある肌色と、強調された赤と黒色の下着。
僕は嫌悪感が増す。
( ^ω^)「さあ」
だから露骨に不機嫌そうに返した。
何故だか、腹が立つ。
どことなく気に入らない。
爪'ー`)「ねえ、エッチってさ、いいよね」
続けて彼女はスカートも脱ぎ始めた。
するすると、ゆっくりと。まるでストリップダンサー宜しく、段々とハレンチな姿をさらしていく。
この間接照明の色合いの部屋の中、それはより強調された。
- 135 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:20:55.69 ID:9v5wmD3s0
- 爪'ー`)「人と触れ合えるのよ。心の隅々まで。何て最高なんでしょう」
もう、彼女の体は下着だけとなった。
すらりとした身体。胸はその年の割には大きく、脚は長い。
尻は引きしめられていて、しかしそれでも弾力に溢れていそうだった。
きっと、彼女は魅力的な女性になる。
いや、現時点で、十分魅力的なのだ。
だが。
( ^ω^)「なら」
それでも。
こいつは、糞以下に見えた。
( ^ω^)「身体の至る所をかっ捌く必要は無いんじゃないかお?」
空気が張り詰めた。
少女が一瞬だけ目を見開く。
爪'ー`)「……知ってるんだ?」
( ^ω^)「さあてね」
自分の胸ポケットに手を突っ込むと、束ねられたそれをひっつかんで彼女に投げつける。
それらはしかし当たることは無く、宙を舞った。
- 142 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:34:02.15 ID:9v5wmD3s0
- 僕と彼女の頭上でそれらは――写真は舞い続ける。
( ^ω^)「全部、見覚えあるだろうお。お前がやったことだお」
一つの写真を空中から掴むと、見せつける。
そこには皮を裂かれ、肉や皮下脂肪を裂かれ、内臓の露わになった男性の死体が写されていた。
( ^ω^)「あまりにも糞だお。糞すぎるお。君は、糞以下か、果たしてゴミか?」
冷徹な目を彼女に向ける。
だが彼女はそれに対してニコリと笑って見せた。
それを合図と受け取って、僕は懐にしまってあるレコーダーの録音ボタンを押した。
爪'ー`)「……ダメなのよ、心だけじゃ」
ふっと寂しげな表情を作る。
爪'ー`)「ねえ、心が繋がり、身体が繋がっても、それでも温もりは消えていくわ。
だってそうでしょう?それは表面だけなのよ。心だって、目には見えない、不確かな物」
ふうとため息をついて彼女はその太ももに括りつけられている――ナイフを引き抜く。
爪'ー`)「もっと、もっとよ。体が触れ合うだけじゃダメだの。もっと、深くまで、
その不確かな心に触れられるくらい、深くまで、私は触れ合いたいの、感じたいの」
- 146 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:39:23.08 ID:9v5wmD3s0
- ( ^ω^)「それで、見つかったのかお、心は」
僕は椅子からのろりと立ち上がり、後ろ腰に挿しておいた牛刀を引き抜いた。
それと同時に、扉をけ破って二人の少女が侵入してくる。
ξ;゚听)ξ「ほ、包囲完了!」
川 ゚ -゚)「まあ、いらない世話だと思うがな、常々」
空がぼやく。
まあそうさ、僕に失敗なんてものはあり得ない。
そもそも取り逃がしたのは、今も昔もあのたった一人の鬼違いだけだ。
そう。史上最強最悪の鬼違いただ一人。
爪'ー`)「あら、随分とモテるのね?貴方」
少女は、別段気にする様子もなくそう言った。
余裕なのか、この状況で。
少し感心してしまったが、僕は彼女に向き直る。
爪'ー`)「……ねえ、心って言うのは、何処にあるのかしらね。心臓?脳味噌?掌?」
どれも調べ尽くしたのだろう。
そうだろうさ。さもなければ頭蓋を割られた死体なんてあるものか。
くまなく解剖された腕や、解体された心臓の写真などあるものかよ。
- 148 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:44:08.84 ID:9v5wmD3s0
- 爪'ー`)「見つからない、何故、何故?」
( ^ω^)「君は――」
何かに似ていると思った。
まるで必死に何かを探すその様は、求める様は。
爪'ー`)「貴方には、あるの?」
そう言って、彼女は仕掛けてきた。
その手に全長十五センチほどのナイフを握り、僕の頭を目掛けてふるう。
距離はそもそもが近かった。肉薄する寸前まで、僕は何の動作もとらない。
( ^ω^)「っ、ほっ」
襲い掛かる刃の群れを、僕は避け、いなす。
頭上から、下から、横から、斜めから。
成程、彼女はどうやら刃物の扱いに長けているようだ。
以前対峙した鬱田ドクオ。
彼も上手かった。やはり、自らの手で殺しに、解体しにいく鬼違い達は、刃物の扱いが上手い。
だが気付いているだろう。
最早僕には到底かなわないことくらい。
- 150 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:48:02.18 ID:9v5wmD3s0
- 爪'ー`)「その目」
びくりとする。
爪'ー`)「貴方、よほどの人生を歩んできたんじゃない?」
何を。
爪'ー`)「――温もりは、見つかった?」
がん、と迫りくる刃を弾き、彼女の体を当て身で吹き飛ばす。
彼女は壁に激突し、壁に掛けられた変な絵だとか照明も巻き込んで床に伏した。
( ^ω^)「下らんことを」
たかだか一、鬼違い如きに心を揺すぶられる僕じゃない。
このくらいで油断しては話にはならない。
よほどの人生だと?
温もりだと?
貴様に分かると言うのか?
僕の辿ってきた人生のなんたるかを。
( ^ω^)「立て」
血に塗れ、そして血を啜り生きている僕を。
貴様に分かるのか?
- 151 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:52:40.16 ID:9v5wmD3s0
- 爪;'ー`)「ぐ……くっ……」
おぼつかない足取りの彼女を、文字通り足蹴にする。
後ろ回し蹴りの要領で吹き飛ばすと、綺麗にまた壁に衝突した。
( ^ω^)「立て」
その腕をひっつかんで、瞬間の握力を以って粉砕する。
鋭い悲鳴が響きそうになり、僕は慌ててその口を破壊する。
千切れた舌が宙を舞い、歯が床に落ちていく。
巻き込まれた鼻は骨が折れ、血が溢れ出ていた。
( ^ω^)「立て」
髪をひっつかみ、力に任せて振り回す。
何本かの束になった髪が千切れ、頭皮も軽く剥がれたようだった。
それでもまた彼女は宙を舞う。
( ゚ω゚)「立てよ鬼違い」
ボロボロだ。絶対の暴力だ。
これこそが。僕の得た力。僕が望んだ、最高の力。
お前達、糞に塗れた殺人鬼共を根絶す為に求めた結果だ。
- 153 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:56:53.12 ID:9v5wmD3s0
- 脳裏に過る。
嘗てまだ僕が殺人鬼(スプラッター)として、スナッフビデオで男優として出演していた頃を。
たくさんの慰み者になった子や人達を殺してきたことを。
そのまだ幼くも、桁の外れた力を以ってして惨殺していた時のことを。
目の前の少女がそれに被る。
温もりだと?貴様が温もりだと。
ふざけるなよ。
お前が、お前達鬼違いが、奪ってきたのではないか。
その理不尽極まるふざけた目的の為だけに、罪のない人々を殺して回っているんじゃないか。
( ゚ω゚)「どの口がそんな事を言うんだお」
腕を牛刀で吹き飛ばす。
爪;'ー`)「あぎゃぁぁあああああ!!」
鮮血が舞う。今度こそ鋭い声が響いた。
だが関係ない。
既にこの建物内に人などいない。
貴様がどれだけ許しを乞うたところで、誰も、何も助けない。
( ゚ω゚)「どうした、立てお、鬼違い。温もりが今、ここにあるんだお?」
そうして己の心臓に牛刀の切っ先を向ける。
- 154 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 21:59:52.52 ID:9v5wmD3s0
- 爪;'ー`)「あ、っが……あぁ……」
舌が無い故か、はたまた歯が無い故か。
もしくは両方の所為か。
彼女は言葉を紡ぐことなく、斬られた方の腕を残った手で抑えつけながら呻く。
( ゚ω゚)「ほら、だから立て」
どうしてきた、貴様等は。
泣き叫び、助けを乞う罪無き人々に対してお前らはどうしてきた。
あの糞豚野郎共と一緒だろう?
恍惚の笑みを浮かべて、血沸き肉躍るのだろう?
醜く涎を垂れ流し、飢え、死へと追いやったのだろう?
( ゚ω゚)「ほら、ほら、ほら」
がすがすと牛刀を彼女の頭蓋に突き落とす。
単純な怪力を以ってすれば、容易にそれは突き刺さった。
まるで黒ひげ危機一髪というゲームのようだった。
突き刺す度に身体がびくりと震え、頭から何かを吹き出す。
汚らわしい。まるで糞だ。いや糞以下だ。
( ゚ω゚)「……貴様等は、何処まで行っても糞以下だ」
- 156 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:03:20.49 ID:9v5wmD3s0
- もう息をしてなどいない。
僕は牛刀をびっと振るい、付着していた血脂をはらい落とす。
( ゚ω゚)「…………」
振り向く。
ξメ;凵G)ξ「あ……うぅ……」
川;゚ -゚)「……内藤……お前」
そこには、涙を流し、震えながら地にへたり込む津出さんと、それを支える空の姿があった。
( ゚ω゚)「あっ――」
一瞬で冷静になる。
怯えている。今、この少女達は、僕に、怯えている。
(;゚ω゚)「そ、の」
――何をやっているんだ、僕は?
何故あそこまでやってしまった?
- 160 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:05:44.50 ID:9v5wmD3s0
- 何時ものように、華麗に、迅速に終わらせられたのに。
何故ああも容赦なく殺した?
自分の頭の中を訳の分からないものが駆け回っていく。
( ω )「……後は頼むお」
そうとだけ残して、僕は逃げるように現場を去った。
夏の夜はひどく図々しい。
纏わりつくような湿気、茹だるような暑さ。
統合して、結果、最低な季節だと言わざるを得ないだろう。
( ^ω^)「……何をやっているんだお、僕は」
何処とも知れない高層ビルの屋上に立ち、一人呟く。
たかだか一、鬼違い如きに心を揺すぶられる僕じゃない、だと?
このくらいで油断しては話にはならない、だと?
( ^ω^)「全然できてやしねーじゃないかお」
阿呆な話もあったもんじゃない。
結局、僕は暴走してしまったではないか。
たかだか鬼違い如きの言葉に憤怒し、力をなりふり構わず行使してしまったではないか。
- 164 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:09:12.08 ID:9v5wmD3s0
- ( ^ω^)「何が序列一位だお」
姉さんに言ったら、出直してこいの一言で終わるだろう。
そうさ。こんなふざけた戦闘、戦闘とは呼べやしない。
単なる虐殺だ。
その圧倒的な戦闘力を以ってして、一つの生命を弄んだだけに過ぎない。
( ^ω^)「鬼、か」
どっちがだ、と思う。
彼らは人ではなく、鬼と書いて鬼違いと呼ぶ。
では僕は?
人を殺すのではなく、鬼を殺す僕は何だ?
殺人鬼なのか?
それとも、虐殺者なのか?
- 167 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:10:58.60 ID:9v5wmD3s0
-
七 其の四
- 169 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:13:44.21 ID:9v5wmD3s0
- 深夜の片田舎の町は、静かではない。
国道を輸送車何台もが通るし、馬鹿達が馬鹿な事をしているからだ。
何時ぞやの頃の私も、あの馬鹿な光の群れの中に居た。
あの爆音の轟く、光り輝く世界の中で。
別段面白いわけではなかった。
ただその輪の中に居れば、もしかしたら面白い事があるのかも、って。
そう、思っていたのだけれども。
川 ゚ -゚)「……落ち着いたか?」
冷たい缶コーヒーを手に、空が私の腰掛けるベンチの隣に座った。
現在、深夜一時。
私と空はあの後、あまりにも目茶苦茶にされた死体をどうにか片づけると、
人知れぬ小さな公園へと来ていた。
ここは、私と内藤が特訓でよく来る場所だ。
と言っても、ここで行う事は朝のストレッチくらいで、後はランンングの際のゴール地点だとか、
兎に角目立った使い道が無い。
ξメ゚听)ξ「……なんとか、ね」
先の空の質問に、そう答える。
少し、ぶっきらぼうすぎたやもしれない。
だが、今は元気が出なかった。
あの光景を見てしまってから、私は恐怖に苛まれていた。
- 171 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:16:11.40 ID:9v5wmD3s0
- 川 ゚ -゚)「どうだ、怖かっただろう、あの馬鹿は」
まあ、それでも、私は満足できたけれどな、と空は言う。
そんな軽い口調で言うが、空の顔も強張っていた。
あの空も、恐怖を感じていたのだろう。
微かに覚えているのは、震える私を支える空の手も、震えていたことくらいだ。
川 ゚ -゚)「時々、本当に時々、ああいうことがあるんだ、内藤には」
きっと何かが、内藤の琴線に触れてしまったんだろう。
しかし、あそこまで激怒した内藤を、私は初めて見た。
川 ゚ -゚)「圧倒的な破壊力。敵うわけがないとさえ思えてしまう暴力」
それが内藤の、突き詰めた所の正体だ。
そう、空は言った。
川 ゚ -゚)「見ただろう、今日のあれを。誰もがあれと対峙すれば絶望するだろう」
だからこそ。あの姿を見てしまったからこそ。
私は恐怖した。
きっと今までの戦闘は、彼にとっては遊戯か何かの類だったんだろう。
あの鬱田ドクオも、若竹益男も、流石兄弟達も。
きっと他の鬼違いとの戦いも。
- 172 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:19:31.02 ID:9v5wmD3s0
- あの鬱田ドクオも、若竹益男も、流石兄弟達も。
きっと他の鬼違いとの戦いも。
圧倒的だった。即座に諦めという言葉が過った。
何に対しての諦めか?
それは、彼ともし対峙することになった時、彼と戦えるかどうか、と。
そう想像した時、出た結論だ。
川 ゚ -゚)「だがそれでいいんだよ、ツン」
ぎゅっと空は私の手を握る。
川 ゚ -゚)「お前に戦ってほしくない理由はな、ツン」
きっと、ああなってしまうかもしれない。
そう言った。
川 ゚ -゚)「私だけじゃないぞ……内藤も、そう、言っていた」
ξメ゚听)ξ「――え?」
まさかの言葉に、驚きを隠せない。
あの内藤が、私に?
川 ゚ -゚)「それだけじゃない。奴は私にも戦うことを望んでなんかいない」
- 176 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:22:43.28 ID:9v5wmD3s0
- 空は言う。
奴が望むこと。それは自分の身を守る術を持つことだけ。
決して戦う事だけを覚えてほしいわけではないと言う事。
……自ら望んで、戦場に赴くようになってほしくない事。
ξメ゚听)ξ「……何で?」
あの内藤が、あの殺人鬼が、何故?
川 ゚ -゚)「お前は、大事な人に、友達に、人殺しをしてほしいと思うか」
それが例え鬼違い相手だろうと。
ξメ゚听)ξ「…………」
して、欲しくなどないに決まっている。
だが、だが私はもう決意してしまったんだ。
戦う事を選んだのだ。もう、二度と戻れぬ世界に足を踏み入れてしまったんだ。
川 ゚ -゚)「それでも奴はお前には殺させない。私にも殺させないさ」
ξメ゚听)ξ「……ころ、す」
- 180 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:25:06.61 ID:9v5wmD3s0
- そうだ。戦いの結果は何だ?
それは今まで眼前で繰り広げられてきて、結果も目の当たりにしてきた。
それは死。どちらかは確実に、絶対に、滅ぶ。
そしてそれを突き付けるのは、力のある者だ。
私は選んだのだ。戦う事を。
だが、殺すことは?
川 ゚ -゚)「……大丈夫さ」
ぽん、と頭を撫でられる。
川 ゚ -゚)「内藤は、優しいからな。お前も私も、助けに来るに決まってる」
内藤は、つまり、そう言いたかったんだろう。
せめて自分が居ない時、窮地に陥った時。
戦えるように。
それは、身を守るための戦いだ。
決して私達に殺人という結果を導かせるためではなく、自衛のための戦い。
ξメ )ξ「……馬鹿よね、あいつ」
本当、馬鹿だ。
それで苦しむのは誰だ、傷つくのは?
- 181 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:28:55.60 ID:9v5wmD3s0
- お前は、内藤。
今にも壊れてしまいそうだったじゃないか。
まるで何かに必死で抗うように、何かに怯えるように。
その無限とも思える力で殺していたではないか。
お前はそれでいいのか?
私や空が傷つくのは望まないのに、自分が傷つくのは良しと出来るのか?
川 ゚ -゚)「……本当、馬鹿だよな」
お前は、お前は本当は違う。
お前は冷徹な殺人鬼でも、狂気の申し子でも何でもない。
お前は誰よりもその闇を知り、優しさに飢えた子供だ。
未だにその温もりを、失ってしまった温かさを手放せない童じゃないか。
ξメ。 )ξ「ばっかじゃねーのっ……」
頼むから。
もう、いい。
その傷をこれ以上自らの手で抉っていく必要なんてありはしない。
だからせめて、せめて手伝わせてはくれないか。
お前のその傷を、私達の手で和らげさせてはくれないか。
- 182 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:31:53.35 ID:9v5wmD3s0
- 川 ゚ -゚)「……お前も、大概じゃないか……」
そうさ、私はもう誓ったから。
もう誰も傷つけさせない。誰も死なせないと。
私の目の届くところで、誰も悲しませない。
ξメ。 )ξ(あんたもよ、内藤)
だから、強くなってやる。
内藤。
お前よりも、絶対に、私は。
続
- 187 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:42:39.13 ID:9v5wmD3s0
-
(#゚;;-゚)屍は笑わないようです
- 189 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:43:28.66 ID:9v5wmD3s0
- 憎らしきは世界か。
怨むべきは人間か。
求むモノは何か。
救いを乞うのは許されるのか。
ボクは人間なのか。
はたまた別の何かなのか。
罪があるなら何を咎とするか。
贖罪は誰が為か。
助けてくれ。
苦しく、辛い。
手を差し伸べてくれ。
神よ、どうか、どうか。
- 192 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:45:34.93 ID:9v5wmD3s0
-
一
- 194 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:47:05.80 ID:9v5wmD3s0
- ( ^Д^)「っらあ!」
鳩尾につま先が突き刺さる。
('、`*川「キモッwww」
頭を上靴で踏みつけられる。
( ゚д゚ )「はーいお化粧しましょうねーwwww」
チョークの粉をかけられる。
痛く、苦しい。
何時までも、途方も無く続く地獄。
ボクには世界がそう思えてならなかった。
(#゚;;-゙)「おぇっ……ぐふっ……」
喉をツンとした何かが駆け抜けそうになり、慌ててそれを飲み込む。
相も変わらずボクに浴びせられるのは暴力、暴力、暴力。
(-_-)「あ、チャイムだ」
早朝、HR前。
毎朝の儀式を終えて、皆が席に着く。
ボクはまだ癒えぬ痛みに、教室の隅でボロ雑巾のように転がったままでいた。
- 196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/02(土) 22:48:57.38 ID:9v5wmD3s0
- / ,' 3「おはよう皆」
戸を開けて入ってくるのはこのクラスの担任の荒巻先生。
皆からはおじいちゃん先生と呼ばれている。
相も変わらず、彼はボクを認識しようとしていなかった。
これが日常だった。
誰も助けてはくれない。誰も味方してはくれない。
/ ,' 3「おい、横堀、横堀でい!!おらんのか!!」
大きな声でそういう。
出席をとっていたようで、ボクの番で返事が無いためつかえてしまった。
ボクはまだ痛む体で無理矢理に立ち上がろうとし、小さな声を上げる。
/ ,' 3「何じゃあ?声はするのに見えやせんぞ?」
( ^Д^)「幽霊なんじゃないんすか?wwwww」
「うわー、ありそー」「気持ちわりーwww」
「早く死ねばいいのに……」「つーか臭くね?wwww」
そんな言葉が飛び交った。
日常。日常なんだ。これが。これこそが。
/ ,' 3「何じゃ、またそんなとこにおるのか!!早く席に着かんか!!」
(#゚;;-゚)「……すみ……ません」
僕の世界。
- 197 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:50:57.55 ID:9v5wmD3s0
- (;゚;;-゚)「わっ!?」
席に着こうと歩けば、足を引っ掛けられ、倒された。
('、`*川「……何してんの?邪魔なんだけど」
ずがっと彼女のつま先がボクの頬を蹴る。
それを皆が笑う。
/ ,' 3「横堀いいい!!さっさとしろと言っとるじゃろうが!!」
先生はそうとだけ言った。
(# ;;- )「……すみません」
小さな声で呟く。
まるで神に許しを請うようにボクは囁く。
全てが。
全てがきっと、敵なのだ。
この世界では、全てが敵。
いや、違うか。
僕が敵なんだろう。
彼らの。教室の皆の。学校の皆の。
世界の皆の敵なのだろう。
- 198 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 22:53:41.91 ID:9v5wmD3s0
- ボクの存在は許されなかったと言う。
一体いつからこういう扱いなのか?
それは生まれた時からだ。
石を投げられ、棒でたたかれ、砂利の上で転かされ、川に落とされ。
それが生まれた時から果てしなく続いてきた。
まるで生きながらに罪を、罰を受けている気分だった。
けれどそれは最初のうちだけで、後はもう、どうでもよくなった。
これが当たり前なのだと。
受け入れるしかないのだと。
血を流そうが、皮膚が剥がれようが、髪を引きちぎられようが、それが当然なのだと。
思わなければいけない。
(#゚;;-゚)「……ただいま」
学校での罪を贖い、傷だらけのままボクは家へと到着する。
きっと普通の家ならお父さんもお母さんも心配するだろう。
相手は誰だ、とか、教師は何をやっているんだ、だとか、警察へ行こう、とか。
夢のような話だ。それはとても素敵で、魅力的な話だ。
一時憧れもした。
きっと僕のこの現状はすべて夢幻で、目を覚まして、朝になれば世界は変わるだろうと。
- 203 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 23:10:01.98 ID:9v5wmD3s0
- (#゚;;-゚)「ただいま、母さん」
台所で目を虚ろにして、酒瓶を手に座り込んでいる。
口からは涎を垂れ流し、時折何かをつぶやいている。
ボクのお母さん。
身を痛めてまで生んでくれた、ボクの生みの親。
愛すべき人。
母さんは僕には何の反応もしない。
ただ時折何かをつぶやくと、酒瓶を傾ける。
それが彼女の生き方だった。
僕はもう何も言えない。言わない。
とんとん、と階段を上がっていく。
自室の扉を開け、すでに原型のとどまっていない通学鞄を机の上に置き、ズタボロの制服をハンガーにかける。
ふうと息をついた。
絶対の領域。ボクの砦。
全てから解放される、ボクだけの空間。
――なんてもの、あるわけがないだろう?
『――――』
『――――』
(#゚;;-゚)「…………」
- 206 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 23:13:40.79 ID:9v5wmD3s0
- 聞こえてくる。まるで地の底から唸るように。
その例えは間違ってなどいなかった。
そのままだ。僕の下の階からその音は、声は響いてくるのだから。
『――ん、あっぁ、きもち、い、ん、っんあ!』
(#゚;;-゚)
『は、ははっ!はーっ、っとぉ、へへ』
(#゚;;-゚)
『さん、お父さん!!いい、いいの!!ねえ、お父』
(#゚;;-゚)
『ろ?そうだ――ぁっ、やばっ、でる、でるでる、でる』
(# ;;- )
『私も、私もイ』
(# ;;- )「っ…………」
立ちつくしたままボクは耳を塞ぐ。
それでも音も声も鮮明に脳裏に響く。まるで目の当たりにしているように。
- 208 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 23:14:52.14 ID:9v5wmD3s0
- (#゚;;-゚)「……ああ」
何か、今日はダメだ。
今日は、壊れそうだ。
- 209 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 23:17:56.77 ID:9v5wmD3s0
- 時折ボクは壊れそうになる。
一体どのようにして壊れるのか?そんなことは分からない。
ただ、何か、今のボクとは違う何かになりそうで。
(#゚;;-゚)「っ、母さん」
下の階に下りたと同時に、母に何かを投げつけられた。
小銭だ。
(#゚;;-゚)「……ねえ、もう、お酒は」
言葉を紡ぐ途中で、彼女はボクに空の酒瓶を投げつける。
寸でのところでそれを避けた。後方の壁に激突し、派手な音をたてて砕け散る。
(# ;;- )「……分かった」
散らばった小銭を拾い上げる。
母は何かを呟いている。
隣の部屋からは声と音が聞こえる。
ダメだ、今日は、ダメだ。
ここに、いちゃいけない。
即座に僕は家を飛び出した。
- 211 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 23:20:50.38 ID:9v5wmD3s0
- 「あのさ、困るんだよ、毎度さあ」
(#゚;;-゚)「でも、お金なら……」
「いやだからさ、君未成年でしょ?」
(#゚;;-゚)「でも、お使いなんです……」
「そういう問題じゃないんだって」
(#゚;;-゚)「お、お願いします、じゃないと、母さんが――」
「チッ……ほらよ、早く出てけ、評判が落ちるわ」
ぶっきらぼうに差し出された酒瓶を持って、ボクは酒屋から出る。
もういい加減、ここでは買えなくなるかもしれない。
困った。お酒が無くなると、母はまた怒る。
(#゚;;-゚)「……どうしよう」
……なんとなく、今日は家に早く帰る気にならなかった。
お酒の在庫はまだ少しだけあるはずだ。
少し遅れたって構わないだろう。
(#゚;;-゚)「綺麗だなあ……」
それから暫く歩いて、何処とも知れぬ公園へとやってきた。
西日が真っ赤に燃えあがる空は、美しかった。
- 213 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 23:23:09.56 ID:9v5wmD3s0
- 誰もいない閑散とした公園だった。
久し振りに、孤独になれた。
(#゚;;-゚)「ブランコかあ」
遊具にすら一つとしていい覚えは無い。
それ等はボクを傷つける凶器になったからだ。
特にブランコなんかは、よく後頭部目掛けて投げつけられたものだった。
(#゚;;-゚)「よっと」
漕いで見る。思ったよりも、怖い。
小さな頃はこのくらいの速度と高さ、何とも無かったはずなのに。
大きくなったからだろうか。
(#゚;;-゚)「……綺麗だなあ」
結局、座るだけで満足に至ったボクはまた夕日を見上げる。
宵闇と言う奴だ。夕方と夜の狭間の時間。
どことなく、ボクのようだと思った。
その僅かな時間でしか存在を許されていないようで。
けれどボクはその僅かな隙間でさえ許されてなんていないのだろう。
そう考えると、宵闇と僕とは違った。
- 214 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 23:26:44.36 ID:9v5wmD3s0
- (#゚;;-゚)「カーラースー、何故ナクのー」
烏は果たして鳴いたのか、泣いたのか。
きっと泣いたんだ。
早く帰りたいから。お母さんの元へと。
きっと孤独に耐えられなくて、夕闇の中で泣いていたんだ。
でもボクは泣かない。泣けない。
この宵闇を愛した。
誰もいない、何も無い。
ただポツリと僕がいるだけのこの瞬間が、何よりも救いに思えた。
学校だけじゃない。
ボクは世間で存在が悪と見なされていた。
誰も止めない。むしろそれは加速していく。
誰もが皆、それこそが当然で当たり前だと信じているから。
父と姉は性に狂った。
その空気にあてられて、母は酒に逃げて僅かな正気だけを残して壊れてしまった。
そう言えば、赤ちゃんたちは今も尚、生きているのだろうか。
父と姉との間に出来た五人の赤子は。
だが、どうでもいいとも思えた。
こんな家庭だから、誰もがボクを、ボクの一族を排他的に捉えた。
更には父が自分の性行為を商売にしているものだから、尚更世間には知れ渡った。
『驚愕!?父と娘の過激な性事情!!』そんなタイトルのビデオが机の上に置かれていたこともあった。
- 215 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 23:30:21.65 ID:9v5wmD3s0
- (#;;;-゚)「あれ?」
時々、ボクは壊れそうになる。
何時ものことなのに、当たり前のことなのに。
それでも本当に時々、ボクは涙を流してしまう。
(#;;;-;)「……ははっ」
笑うしかない。
……笑うしかないじゃないか。
これが世界のルールなんだ。異端な物は排除し、より大多数の為へと。
排他こそが秩序の上で最も大切なことなのだ。
分かっている。分かっているんだ。
(#;;;-;)「っく、ふぅぅ〜……」
声を抑えろ。受け入れろ。
それがお前の罪で、罰なのだから。
生まれてきたこと自体が咎なのだから。
だから受け入れろ。全てを委ねてしまえ。
その心も、身体も、全て無に変えてしまえ。
そんな時、ボクの膝の上に暖かいものが乗った。
(#;;;-;)「え?」
- 217 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 23:33:09.98 ID:9v5wmD3s0
- にゃあお。
猫だった。真っ黒の、つぶらな瞳の猫。
(#;;;-;)「お前……」
そりゃ、猫には分かるまい。
ボクがどういった存在なのか。
その何の穢れもない瞳には一体ボクはどう映っているんだろうか?
(#っ;;-゚)「……ごめんね、餌とか持ってないからさ……」
そう言ってボクはしっしと追い払おうとする。
だが猫はぴくりともボクの膝の上から動こうとしなかった。
(#゚;;-゚)「……優しいんだね、君は」
短く、猫が喉を鳴らした。
そっと彼の頭を撫でてやる。
もしかしたら……いや、何かの暖かさに触れるのは初めてだった。
皆触れる事を許さなかったし、触れさせようとしなかったから。
何となく彼は彼なりにボクを元気づけてくれているんだと思った。
- 220 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 23:36:23.59 ID:9v5wmD3s0
- それから家に帰って、ボクは自室でただじっと静かに座っていた。
『おい、飯作れよ』
『…………』
『おいってばよおおお!?』
どん、ばん、と音が響く。ボクは布団の上で縮こまる。
『お父さん、それ、もうダメなんじゃない?』
『あぁ?ざけんじゃねーよ、おい、お前まだ生きてんなら動いてから死ね』
『笑えるんですけど!』
『…………』
『ちっ……おい、でい!!でい!!聞こえてんだろ!?』
びくりと身体が震える。
『降りて来い!!飯作れや飯!!』
(# ;;- )「…………」
体の震えは止まらない。それでも下に行かなければ、彼は此処まで乗り込んでくるだろう。
そしてその大人の力を以ってして、全力で暴力を振るうだろう。
- 224 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/02(土) 23:51:04.43 ID:9v5wmD3s0
- 嫌だ。嫌だ。嫌だ。
また歯を折られるのか、また足を刺されるのか。
結局、ボクはすぐさま階下へと降りて行った。
母は口と鼻から血を垂れ流しながらも、尚酒を飲んでいた。
『遅いんだよ糞がよお、あ?お前、あ?』
理性も知性も何もないのだろう。
何せ二十四時間性の為だけに生きているようなものなのだから。
ボクは小さくすみませんと呟いてすぐさま調理に取り掛かる。
『でいさー、ちっと後でゴム買ってきてくれない?』
姉が全裸のままそう言う。
その膨らんだ腹を見るに、意味なんて無いんじゃないのか。
だけれど、ボクは口には出せず、ただ頷く。
適当にあり合わせで作ったモノを二人に出すと、ボクは急いで自室へと逃げ込んだ。
『っかー、美味いわ。あいつ天才じゃねーの?』
『本当よね。それとはダンチだわwww』
『おい、こら、ゴミクズ!!ちっとは反省してんのか!?』
また大きな音が響く。
けれどボクはベッドの上で何もせず、ただじっと縮こまる。
耳を手で塞ぎ、目を瞑る。
- 227 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 00:09:30.75 ID:qFlDKpIV0
- この世は地獄。
無限の煉獄。
救いも助けもありはせず、ただ永久の苦痛を味わう為だけにある。
(# ;;- )「ははっ」
笑うしかないじゃないか。
笑うんだよ。
笑え。
脳裏にあの真っ赤な夕日が過る。
真っ赤な景色。伸びる紫色を帯びた雲。
ボクはそこで笑う。笑わなくちゃいけないんだ。
(#;;;-;)「ははっ、はははっ」
- 228 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 00:15:10.93 ID:qFlDKpIV0
-
助けて。
- 231 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 00:18:27.58 ID:qFlDKpIV0
-
二
- 232 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 00:22:41.66 ID:qFlDKpIV0
- (# ;;- )「ぐふっ……」
晴れた空の下、ボクは口から血を垂らしながら屋上の上で転がっていた。
既に授業は始まっている。
ボク意外に今、屋上には誰もいなかった。
つい先ほどまで十人がかりのリンチという奴を受けていた。
だが何時ものことだ。もう慣れている。
傷ついた頬や胸、足を触ってみた。
ぼろぼろだった。皮膚はもう、どこも硬くてごわごわで、とてもこの歳の子供の肌の質なんかじゃなかった。
果たしてボクの体で暴力を免れた部位などあっただろうか?
無い。断言できる。
この頬の切り傷も、背中の数え切れない痣も、足や腕に無数に押し付けられた煙草の痕も。
腹にはカッターで刻まれた痕だってある。
(# ;;- )「最近、ラッキー、だなあ」
だからそう思わざるを得ないのだ。
この程度で済むのなら、ボクは喜んで受け入れる。
口内がズタズタになろうが、歯がかけようが耐えられる。
(#゚;;-゚)「……空、か」
酷く晴れた空だった。
青々としていて、見て居て清々しくなるような、そんな青色だった。
けれどボクは好きになどなれない。
- 233 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 00:27:39.34 ID:qFlDKpIV0
- 妙に脳裏に過るのは、やはりあの日見た血に染まったような夕焼け。
あの日から、何かがボクの中を渦巻く。
あれ以来壊れそうになることは無かった。
何か、そう何かが、分かったような。
それは諦めと言おうか。いや、悟ったと言おうか。
(#゚;;-゚)「無理なんだよ……」
逃げられやしないし、変えられやしない。
だからもう、諦めてしまおう。
このまま永遠と続く地獄の中で、ボクはその時が来るまで痛みにもがき苦しめばいい。
(#゚;;-゚)「……あ」
何となく、ボクはそれを思った。
帰ろう、と。
(#゚;;-゚)(ドキドキするな)
荷物は教室に置いたままで、ボクは裏口からこそこそと学校から抜け出してみた。
所謂、エスケープと言う奴だ。
一度たりとしてこういうことをしたことがなかったというのに、何故今更?
とも思ったが、一度くらいは良いだろうと思えた。
それに、今日は何だか気分が晴れていた。
- 234 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 00:31:07.85 ID:qFlDKpIV0
- (#゚;;-゚)(違うな)
もう決めてしまったから。
決心がついてしまったから。諦める事に対して。
だからこれが、ボクの最後の抵抗と言う奴だ。
不良じみたことを一度もしたこと無いボクの、最後のツッパリ。
けれど向かう先など無かった。
それもそうだ。ボクに居場所なんてありはしない。
(#゚;;-゚)(あ)
あの公園。
(;゚;;-゚)「あれ?でも、何処だっけ」
不思議と場所が分からなくなってしまった。
そう言えば、あの時はぼーっとしていたから、道を覚えていない。
普段行かないようなところだった気もするし、案外近い場所だったかもしれない。
だが平日の午後三時に制服のまま外をぶらぶらするのもどうなのだろうか。
最悪、誰かに通報されるかもしれない。
(#゚;;-゚)(……結局、変わらないじゃないか)
だからボクが向かう先なんて一つしかありはしない。
- 235 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 00:35:45.94 ID:qFlDKpIV0
- 平日の昼間に、我が家にいたことなんて無い。
そりゃそうだ。普段、その時間は勉強をしているか暴力を受けているかだから。
何処となく自宅の扉をあける事を戸惑いながらも、それに手をかけようとする。
その時。
『っざっけんじゃねえぞごらああああ!!』
中から雄叫びが響いて、いつもよりも派手な音が響き渡った。
思考が一瞬停止する。
何だ。何時もと少し……いや、だいぶ違う。
これはかなり危ない。
警笛が頭の中を駆け回る。
何だ、何かとてつもなく嫌な予感がする。
(;゚;;-゚)「っ!?」
まるで何かに急かされるようにボクは自宅の扉を開け放ち、中へと入る。
声と音は先からまったく止む気配を見せない。
どうやらリビングで何かが起こっているようだ。
慌てて早く歩いて、それを覗き込む。
『お前よお、なあ、あ?おい、あ?なあ?はあ?』
其処には――母をバットで目茶苦茶にしている父と姉が、居た。
- 237 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 00:40:45.28 ID:qFlDKpIV0
- (;゚;;-゚)「な――え?」
何を、しているんだ。
違う、違うぞ、何時もと全然違うぞ。
何だあれは、顔面が、顔面が窪んでいるじゃないか。
何故両腕とも可笑しな方向に――何故骨が突き出ている。
足に何をしたと言うんだ。どうあれば膝が逆方向に――
(;゚;;-゚)「母さん!!」
母の前で息を荒げる父と姉を突き飛ばし、母へと駆け寄った。
息は……ある。だが……もう、喋れないだろう。
舌が、舌が。
(;゚;;-゚)(ちぎ、れてる)
ぷらぷらと、口から僅かな形を残して垂れさがっていた。
いや、だがそれだけじゃない。
この有様、果たして、母は。
(;゚;;-゚)(これ、もう、もう)
こ、われるんじゃ、ないのか?
眼球は破裂していた。歯も、もう残りを数えた方が早い。
腕と脚は言わずもがな――
- 238 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 00:45:40.69 ID:qFlDKpIV0
- 『あぁ?……何でお前がいんだよ……』
『はっ、はぁっ……あー、もう超ウザイんですけど』
二人が僕と母を見下ろしながらそう言う。
(;゚;;-゚)「何が、何で、こうなったの?」
普段二人と会話をしないボクが、そう訊ねた。
若干二人は驚いたようだったが、それでも父は苛立ったまま答えてくれた。
『そのゴミクズがよ、俺達の聖域に踏み込みやがったんだよ!!』
『もうサイッテー!!お陰でビデオまた作り直しじゃん!!』
(;゚;;-゚)「……は?」
何を、言っている。
この人たちは、何を?
『しかもあれだけ静かだった癖に泣き叫んで暴れやがってよ、ふざけんのも大概にしろよ!!』
ぺっと父は唾を母にかける。
(;゚;;-゚)「……それだけ?」
『は?何?あんた』
- 240 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 00:51:20.95 ID:qFlDKpIV0
- たった、それだけ?
それだけなのか?
それだけで、この仕打ちだと言うのか?
『んだ?その目は?あ?おい、こら』
(;゚;;-゚)「……んなよ」
『あ?』
(;゚;;-゚)「ふざけんなよ!!」
初めてボクは叫んだ。
心の底から、身体の深くから、言葉を吐きだした。
なんだそのふざけた理由は。
ふざけるな。
ふざけるなよ。
何故だ、何故母さんがこんな目にあわなくちゃいけないんだ。
(;゚;;-゚)「あんた達の所為じゃないか……全部……母さんが壊れたのも……」
ボクが、地獄に居るのも。
- 246 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 01:07:08.26 ID:qFlDKpIV0
- (;゚;;-゚)「全部全部!!あんた達の所為で!!――」
そこまで言って、バットがボクの脇腹を強打する。
(; ;;- )「――っがはぁっ!!」
一瞬で空気が抜けて、それからまた大きく息を吸う。
一気に肺の中の空気が入れ替わり、ボクは殴られた激痛に地に座り込んだ。
『お前、やっちゃったな、おい、やっちゃったよ、こいつ』
『だめだねー父さん、こいつもあれと同じでゴミクズじゃん?』
二人はそう言ってボクの前に立ち塞がった。
ダメだ、殺される、殺され――
そう思った時だ。
ふと何かが込み上げた。
それは解放感。
ここで、殺されてしまえばいいんじゃないか?
そうすれば、きっともう、辛い思いをしなくて済むんじゃないのか?
そうだ、そうだよ。
(; ;;- )(そうじゃないか……)
長く続くと思っていた地獄も、もう、終わるのなら。
いっそのこと――
- 247 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 01:12:44.88 ID:qFlDKpIV0
- 『っぁあああぁあぁっぁあああああああ!!』
そこまで考えが廻った時。
突如僕の後方で倒れ伏していた母が、立ち上がって二人に襲いかかった。
(;゚;;-゚)「え――」
馬鹿な。何故、足も腕も、あんな状態で。
何で。
『ぁうぁあああぁ!!ぁうぁあああぁ!!』
母が叫ぶ。
何故だか僕にはそれが「逃げなさい」と言っているように聞こえて。
父と姉は突然のことに反撃が遅れている。
チャンスだった。
(; ;;- )「う、うわああああああ!!」
だからボクは逃げ出した。
母さんがそう言ったから。
靴もはかず、扉も閉めないで、ボクは駆け抜ける。
一体いつまで走り続けるのだろうか。
辺りはもうすっかり夕暮れに支配されていて、目に映るのは血のような赤だった。
空には紫色の雲が走り、世界はまさしく血に飲み込まれていた。
- 249 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 01:17:18.48 ID:qFlDKpIV0
- (; ;;- )「はっ、はっ、はぁっ、はっ」
整わない息を無理矢理に落ち着かせる。
ふと足が痛いことに気付いた。
見やれば擦り傷やら切り傷やら、とにかく酷い状態だった。
(; ;;- )(母さん……)
きっと、母はボクを愛してくれてなどいなかったんだ。
そう、思い続けてきた。
むしろボクと言う存在を憎んでいたのではないかとも思えた。
(; ;;- )(ありがとう……ごめんなさい……)
きっと、ボクがしっかりしていれば。
ボクだけでもまともになれたのなら。
あの家族を、世界を変えられたのかもしれない。
ボクが強かったのなら。
ボクが泣かなかったのなら。
もしかしたら。
けれどボクは何もできなかった。
痛みと苦しみに耐える日々。全てを受け入れる日々。
変化を与える事などしない、そんな存在だった僕を、きっと母は憎んでいたに違いない。
- 250 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 01:22:26.57 ID:qFlDKpIV0
- だのに。
(#;;;-;)「母さん……」
守ってくれた。
最初で最後の、母さんの親としての行動。
そして最初で最後の愛情だった。
きっともう、母さんは生きてはいないだろう。
あの二人のことだ。容赦も何もありはしない。
(#;;;-;)「畜生……」
何故だ。
何故なんだ。
(#;;;-;)「畜生……!」
何故母さんが傷つかなければならない。
悪いのはボクだ。全てを変えられなかったボクこそが罪で、罰だ。
母さんに何の罪があると言うんだ。
何故殺されなければならない。
何故あの二人に、何故この世界に。
- 252 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 01:27:27.45 ID:qFlDKpIV0
- 気付けば、ボクはあの公園へと来ていた。
(#;;;-;)「あっ――」
世界は燃えあがる様に真っ赤で、空には紫色の雲。
寂しく佇む錆びた遊具。広がる緑の地面。
(#;;;-;)「…………」
不思議と冷静になれた。
この宵闇の中、ボクはただ佇む。
笑いもせず、かといって泣きもせず。
(#゚;;-゚)「…………」
涙はいつの間にか止まっていた。
あれほど苦しくて、辛かったのにも関わらず。
何故だ。何故この景色はこうもボクの心を落ち着かせる。
(#゚;;-゚)「あ」
にゃあおと鳴き声がした。
(#゚;;-゚)「また、君か」
あの真っ黒な猫がボクの足元まで歩いてきて、すり寄ってきた。
そんな彼を抱きかかえてやる。
- 253 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 01:31:25.80 ID:qFlDKpIV0
- (#゚;;-゚)「不思議だ。ここに来ると、君に触れると、何故だか心が落ち着いてしまう」
それはきっとこの孤独感と、この黒猫の暖かさ故だろう。
何よりも望んだことだった。
誰もいない、けれど温もりのあるような場所。
そんなところに、ボクは行きたかった。
其処こそがきっとボクの居場所になりえるのだと。
(#゚;;-゚)「ねえ、どうしよう」
猫に問いかけてみる。
人間の言葉なんて分かるわけもない。
それでも何とはなしにそう問うてみた。
これから、どうしようか。
いっそ逃げてしまおうか?
誰もいない、何も無い地の果てまで。
そう考えたら、世界は綺麗に見えた。
とても綺麗で、魅力的で、甘美な物に見えた。
(#゚;;-゚)「……分かってる。けれどそれは、ダメなんだよね」
君と何処かへ行きたいとさえ思えた。
けれどそれはダメなのだ。
何しろボクは生まれながらに罪で、罰。
結局、何処へ行こうとボクに待つのは地獄だけだろう。
- 255 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 01:36:56.97 ID:qFlDKpIV0
- そうさ。
「あ?おい、お前ら、あれ見ろよ」
ボクに待つのは。
「ああ?あれ横堀じゃね?」
地獄だけさ。
「あー丁度いいじゃん、学校サボった罰としてクシャっちまおうぜwww」
きっと学校帰りだったんだろう。
そうさ。こんな時間帯だ。何処に現れようと不思議じゃない。
(# ;;- )「ぐぶっ!!」
「おらあっ!!」
そうさ。何処へ行ったって、ボクに待つのは地獄だけだ。
(# ;;- )「いっ、ぎっ、うぎっ……!」
「キモイんだよっ!!」
誰もいない地?何もない地?
あるものか。そんなもの。
希望なんて、もう――
- 257 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 01:42:17.64 ID:qFlDKpIV0
- 「いてっ!んだ?こいつ!」
(;゚;;-゚)「――あっ!!」
暴力を受けているボクを見ているのが耐えられなかったのか、黒猫は生徒の一人に噛みついた。
中々に往生際が悪いようで、離れる気配が無い。
「おい、そのままな、そのままwww」
(;゚;;-゚)「お、い」
一人の生徒が、腕を構える。
噛みつかれている生徒が察したように猫のぶら下がる腕を拳を構える生徒目掛けて思い切り振り抜いた。
(;゚;;-゚)「止めろ……」
猫は宙を舞う。ゆっくりと、弧を描いて。
生徒の拳が虚空を駆ける。
(;゚;;-゚)「止めろっ」
空中で身動きなどとれる物か。そりゃそうだ。
そんなの羽の生えた虫か何かくらいしかできるわけがない。
拳は正確だった。それはゆっくりと、しかし着実に確実に、猫の頭部目掛けて振るわれる。
(;゚;;-゚)「止めろおおおおおおおおお!!」
小さく。猫がナイた気がした。
ぐしゃりと嫌な音がした。
- 259 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 01:47:38.57 ID:qFlDKpIV0
-
希望は、もう無い。
- 260 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 01:52:57.23 ID:qFlDKpIV0
-
三
- 263 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 02:10:45.44 ID:qFlDKpIV0
- 痛む体を引きずって。
夜の路地を歩く。
(# ;;- )
もう、何もありはしなかった。
ボクの胸の中には何も。
(# ;;- )「……ぁぁ」
死ねたらどれだけ楽だろう。
飛び降りられたら、飛び出せたなら。
(# ;;- )「ぁぁああぁ……」
そんな勇気あるわけもなくて。
だのに今ボクは必死で死を求めている。
(# ;;- )「壊れるんだ……ねえ」
母さん。貴女は、こうして壊れたのですか。
もう、何もかも、全て、限りなく奪われて、壊れたのですか。
胸に抱く猫の亡骸をボクはぎゅっと抱きしめたまま歩き続けていた。
此処は何処で、何を目指して歩いているのかも分からない。
ただ、もう、ダメな気がした。
- 264 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 02:16:11.83 ID:qFlDKpIV0
- 体中から血のニオイが香る。痛みは最早通り過ぎてしまってどうでもよかった。
(# ;;- )「ねえ、猫君」
ごめんなさい。
(# ;;- )「ねえ、母さん」
ごめんなさい。
ボクは歩く病原菌か何かなのか。
いや、それでは優しすぎるな。
歩く死だ。歩く屍だ。
(# ;;- )「殺してよ」
誰か、ねえ。
お願いだから、もう、殺してよ。
(# ;;- )「苦しいよ」
もう耐えられない。
(# ;;- )「辛いよ」
もう生きていたくない。
- 266 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 02:21:07.09 ID:qFlDKpIV0
- ようやっと触れた愛情も、暖かさも。
この手をすり抜けていく。
過ぎたものだと言いたいのか。
(# ;;- )「ねえ」
足は着実に向かう。
何処へ?分からない。
でも何故だろう。
この先には死が待っている気がした。
確実な死が。
びゅん、と風を斬る音が鳴る。
続いて何かがごとりと落ちる音がした。
満月の夜、何処かも分からない、入り組んだ路地だった。
それでも晴れた空から放射される月光は、影を作りながらも鮮明に目の前の景色を作り出す。
(# ;;- )「ねえ」
貴方なのでしょう。
ボクに死を与えてくれる死神さん。
- 267 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 02:25:45.10 ID:qFlDKpIV0
-
( ´∀゚)
(# ;;- )
- 268 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 02:30:59.27 ID:qFlDKpIV0
- 導かれてきたように思えた。
彼はその手に日本刀を持ち、肩に担いでいた。
彼の足元には首のない死体。
何故彼は人を殺しているのか?
そんな事は、最早どうでもよかった。
( ゚∀゚)「……ん?何だ?君は?」
彼は背後に立っていたボクに振り返ると、そうとだけ問うた。
( ゚∀゚)「なーんて、まあ、分かってはいたけどよ、来るのは」
刀を鞘へと仕舞って、彼はボクへと歩みを進める。
(# ;;- )「殺してよ」
偉く冷静に言えた。
そうだろう、もう、ボクの中には何も無いのだから。
(# ;;- )「ねえ、殺してよ。その刀でボクを切り裂いて、ボクをバラバラにしてよ」
(# ;;- )「お願いだよ、ねえ、頼むから、ねえ」
ボクはよろよろと彼へと近寄る。
しかし彼は微動だにせず、ボクをその眼でしかと見続ける。
(# ;;- )「もう無理だ、耐えられないんだ、父にも、姉にも、学校の皆にも」
彼の腕を掴む。彼はびくともしない。
- 271 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 02:36:27.05 ID:qFlDKpIV0
- (# ;;- )「痛いよ、苦しいよ、怖いよ、ねえ、もう我慢できないよ」
そしてボクはもう耐えられなかった。
地にへたりこみ、彼の足もとに縋りつく。
(#;;;-;)「助けてよ!!何でなの!!何でこんな目にあわなきゃいけないの!!」
(#;;;-;)「傷だらけで、誰にも愛されなくて!!誰からも憎まれて蔑まされて!!」
(#;;;-;)「もうイヤだよ!!辛いよ!!死にたいよ!!」
(#;;;-;)「母さんも死んだ!!猫も死んじゃった!!だのにボクはまだ生きてる!!」
(#;;;-;)「何でだ!!何でこんなことになったんだ!!何でボクは苦しまなきゃいけない!!」
(#;;;-;)「教えてくれよ!!何が間違っていたのかを!!何をどうすればよかったのかを!!」
(#;;;-;)「もう生きていたくなんてないよ!!これ以上耐えられないんだよ!!」
(#;;;-;)「ボクを殺してよおおおおぉぉおぉぉぉおおおおおおおお!!」
ボクは叫び散らす。
全てを開放して。
- 273 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 02:41:09.42 ID:qFlDKpIV0
- そうだ。これが本当の気持ちだったんだ。
何故だ。何故僕はこれ程までに傷つかなければならない。
どうしてこうも辛い思いをしなければならない。
父も、姉も、学校の皆も。
全てが許せなかった。全てが憎らしかった。
母さえも、怨んでいた。
ボクは永遠に、生き続ける限り苦しめと。
家畜同然に扱われ、文句も言わず受け入れろと。
そういうのか。
ふざけるな。
ならばボクの気持ちはどうなると言う。
糞以下と扱うか、虫けらと嘲笑うのか。
ふざけるな。
ふざけるなよ。
ボクは、ボクはこんな思いをするために生まれてきたんじゃない。
幸せになりたかった。笑いたかった。
もう泣くのも嫌だ。痛いのも嫌だ。
これ以上続くと言うのなら、せめて、せめて――
- 275 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 02:45:45.00 ID:qFlDKpIV0
- ( ゚∀゚)「――っ、くっ、ふ、ふふ」
しかし男は。
( ゚∀゚)「あっひゃ、ははは!!ひゃひゃはははははあああはははは!!」
大きな声で笑う。
( ゚∀゚)「はああぁあぁあぁぁ!?殺してくれだと!?馬鹿か君、え?」
つん、と人差し指がボクの額を押す。
突然の笑い声と動作に、ボクはぽかんと口を明けてただ見ているだけだった。
( ゚∀゚)「俺はな、少女よ、強い奴しか殺さない。いや、強いやつとしか『戦わない』んだよ」
( ゚∀゚)「殺す?そんなの、結果だ。悪いが俺は君の求めるものなど持ち合わせてなどいないのさ」
(#;;;-;)「なっ……あっ……」
ボクの短く切られた髪が風に靡く。
何故だ、何故、何故――
( ゚∀゚)「弱いな、少女よ」
鋭い声でそう言った。
( ゚∀゚)「何もせず、ただあるがままを受け入れてきた。そうだろう」
- 277 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 02:50:42.36 ID:qFlDKpIV0
- 何も言えず、ボクは押し黙る。
( ゚∀゚)「だがお前は抱いているな。その胸に、心に、大事な物を」
ぐいと先の人差し指がボクの胸に押しつけられる。
それも尋常じゃない力で、強く、めり込むように。
( ゚∀゚)「憎悪だ」
ドクンと胸が鳴る。
( ゚∀゚)「煮え滾り、燃え盛り、弾け、砕け、そして混ざり、お前の心を侵食したんだ」
(#;;;-;)「う、あ」
彼の目がボクを見つめる。深く、深く、まるで沈み込んでいくように。
( ゚∀゚)「いいのか?それで、このままで」
ドクンと胸がまた鳴る。
( ゚∀゚)「お前は、そうさ、気付いていない。自分自身に」
( ゚∀゚)「いや、違うな。気付かないようにしているんだ。壊れないために」
(#;;;-;)「――!!」
壊れない、ため?
- 278 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 02:56:14.60 ID:qFlDKpIV0
- ( ゚∀゚)「だが――」
そして彼はボクを抱きしめた。
優しく、まるで生まれたての赤ん坊を包み込むように。
儚く、しかし力強く。
( -∀゚)「それを拒絶してはいけない。それを否定してはいけない」
( ゚∀゚)「認めろ。そして飲み込んでしまえ。お前の本当の姿を、さらけ出さなければ」
まるで深く立ち込めていた霧が晴れていくようだった。
( ゚∀゚)「そうさ、お前は――」
ふつふつと何かが湧きあがる。
そう、何か。今まで曖昧にしていた何か。
だがもうボクは知っている。その正体を。
( ゚∀゚)「――純粋な、何よりも狂気に満ちた殺人鬼(スプラッター)だ」
- 279 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 03:00:44.59 ID:qFlDKpIV0
- 脳を 埋めていく
殺意 とか 憎しみ が
皆 許せない
皆 許さない
助けて やらないし 見過ごしもし ない
殺したい
殺して殺して 殺してやりたい
( ゚∀゚)「ならば受け取れよ、屍」
すっと手渡される。
それは脇差。全長四十センチ程の凶器。
それだけをボクに託すと、彼はすっとボクから離れて、闇の中へと歩き出す。
( ゚∀゚)「どうにも少女よ、君は俺達、鬼違いとは異なる種の殺人鬼のようだな」
何を言っているかはもう分からない。
( ゚∀゚)「じゃあな、屍。次にあった時は、殺してやるよ」
- 282 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 03:05:58.52 ID:qFlDKpIV0
- 無音が響く。
辺りには誰も、何も居ない。
(# ;;- )
すっと鞘からそれを抜きだす。
(# ;;- ) スーッ
刀身に鼻を押し付けて匂いを嗅ぐ。
鉄の香りがした。
甘く、しかしそれでいてほろ苦いような匂い。
鎬に舌を這わせる。これもまた鉄の味がした。
甘美だった。何よりも、素晴らしく思えた。
(# ;;- )「ありがとう」
もう、迷わないよ。
(# ;;- )「ありがとう、殺人鬼」
刃をむき出しにしたまま、ボクは歩きだした。
- 283 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 03:10:42.43 ID:qFlDKpIV0
- この世は地獄。
『おい、おい、何を、おい』
苦痛は永遠と続く。
『許して、お願い、お願いよおおおお!!』
誰からの助けもなく、何も救いが無いのなら。
(# ;;- )「……これだから、ゴミクズは」
ボクがこの手で終わらせてやる。
ゴミクズ共の部屋の中には、腐った赤ん坊の死体が五体あった。
いや、正確には赤ん坊の死体は六体になるのだろう。
だが一匹増えた所で変わるものか。
母の亡骸を見つめる。
可哀そうな人だった。愛した人間には家畜の如く扱われ、子にはぞんざいに扱われ。
(# ;;- )「さようなら、母さん」
それでもこの世でたった一人の母親だった。
最後の最後に愛することが出来た。
- 285 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 03:15:57.72 ID:qFlDKpIV0
- 返り血を纏ったまま、ボクは夜空を見上げる。
(# ;;- )「もう、夕闇の中にはいられないんだね」
いいさ。
それでよかったんだ。
(# ;;- )「始めてやるよ」
全てを殺しつくしてやる。
生きる者全てを、限りなく、殺しつくす。
それこそがボクの望む、ボクの生き方だから。
さあ、泣き叫べ、糞畜生共。
地獄を作ってやる。
- 286 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 03:20:17.83 ID:qFlDKpIV0
-
四
- 287 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 03:26:15.62 ID:qFlDKpIV0
- (#゚;;-゚)「ふう」
一息つく。流石に疲れもする。
何せこれだけの大運動なんてしたことがなかったからだ。
(#゚;;-゚)「不味いなあ、ちょっとばかし雑すぎたかも」
けれどまあ上出来だ。
一応目標は達成されているわけだし、構わないだろう。
(#゚;;-゚)「お世話になりました、と」
血塗れの教室に向けてお辞儀をする。
三十二名の死体がそこらへんに散らばっていた。
酷く血のニオイが充満しており、少々頭がくらくらしてきた。
脇差をしっかりと拭いてから、ボクは鞘へと仕舞い込む。
床に転がっていた男子生徒の頭蓋を視界に入れると、それを容赦なく蹴り飛ばした。
(#゚;;-゚)「あー疲れた。さてどうやって逃げようかな」
先から学校全体が静かだった。
そりゃそうだ。あれだけ叫び声やら異音が響き渡ればそうもなるだろう。
けれどまあ、もういいだろう。
もう少し殺して回りたかったが、これ以上長居するのはよろしくない。
さて、とスカートのポケットから包帯を取り出す。
それを顔面にくるくると巻きつけた。
- 288 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 03:30:44.19 ID:qFlDKpIV0
- (//‰ ゚)「こんなもんかな」
セーラー服を着て顔面に包帯巻いて、だなんて目立つにも程があるだろう。
だがこれでいい。ボクはもう、死んだのだ。
そう。嘗てのボクはあの夜、あの男によって殺されたのだ。
(//‰ ゚)「屍、かあ」
あの男にそう呼ばれた時、何故かしっくりした。
そうだな。もう死んでいるのなら、それが一番いい。
(//‰ ゚)「それじゃ、皆さんさよーなら」
扉を開けて廊下に出る。
すぐそこの窓に手を駆けると、勢いよく開け放った。
次いで教室から引っ張ってきたロープを外へと投げる。
何となく、スパイ映画とかでありそうなワンシーンだ。
ふと、遠くからサイレンの音が鳴り響いていた。
これはぐずぐずしている暇はなさそうだ。
(//‰ ゚)「さて」
学校から脱出し、適当に盗んだ自転車に乗って走り出す。
- 289 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/07/03(日) 03:35:47.69 ID:qFlDKpIV0
- これから何処へ行こうか?
……いや、関係ないな。
殺そう。全て。
それだけでいい。
(//‰ ゚)「……風、気持ち良いなあ」
朝の路地をボクは自転車に乗って走り抜ける。
きっともう、止まることなど無い。
この身が亡びるその時まで。
ボクは人間を殺し続けよう。
完
戻る 次へ