- 54 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/14(水) 20:09:42 ID:zx4nOZ.6O
- 「なぁ、ヒッキー」
「なに?」
「こんな事は言いたくないんだけどさ……もしお前、俺が急にいなくなったとしたら、どうすんの?」
「は?wwなにそれどういう意味?」
「お前、DQN達とうまくやっていけるのか?」
「……大丈夫だよ。高校生活も、あと半年だよ?」
「弁当隠され金を取られ」
「っ……」
「……最近じゃ俺が見ないとこだから、俺もフォローしにくいんだよ」
「こんな状況でもし俺がいなくなったら」
( ФωФ)「お前、どうする気なんだ?」
- 55 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:13:01 ID:zx4nOZ.6O
「いや、別にいいよ。相手にしてないだけだし」
( ФωФ)「相手にしてないのに、便所用スリッパを借りて帰るのは心が広すぎるな」
「うるっせぇなあ。別にお前、明日死ぬわけでもないんだろ?」
( ФωФ)
「それに、いざとなりゃやり返すさ。あいつら、根はビビりだから。カッターナイフ振り回すか、素手でちょっと殴るかしたら、イッパツさ」
( ФωФ)「そうか」
( ФωФ)
( ФωФ)「……そうか」
- 56 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:14:45 ID:zx4nOZ.6O
- 生きる事に必死な人間に向かって、世間様は必死になって人徳を求めやがる。
こう言っちゃなんだが、後悔こそ人生だ。
誰より求められた美しいはずのものこそ―――――――
第2話:「繋がりの果てに(ラストフルトラスト)」
対象者:杉浦ロマネスク
- 57 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:21:36 ID:zx4nOZ.6O
- ―――――――5時間前、VIP第一高等学校「北応接室」
( ^ω^)「授業中にごめんね、杉浦ロマネスクくん」
( ФωФ)「……いえ。なんですか」
爪'ー`)y-「……」
( ^ω^)「……あのね」
( ФωФ)「……?」
( ^ω^)「……ああ、いや、うん……単刀直入に言おう」
( ^ω^)「君に……逝紙が届いてるんだ」
( ФωФ)
は?
( ^ω^)「僕はこれを、渡しにきた」
- 58 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:22:38 ID:zx4nOZ.6O
- ( ФωФ)
そう言って、このおじさんが手渡してきたもの。
死亡予告証。
間違いない。テレビで見た。
授業でもやった。
それが、俺の元に。
死亡時刻は明日のPM1:30
今から、24時間後。
これ。
これって。
( ФωФ)「本物……?」
( ^ω^)「……本物だよ」
爪'ー`)y-「……杉浦」
担任も深刻な顔で俺を見ていた。
つまり俺は……本当に死ぬらしい。
まじでか。
- 59 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:27:43 ID:zx4nOZ.6O
- ( ФωФ)「まさか……バカな。だって、そんな」
嘘だろ。
だってまだ、高校三年生。
いやそりゃあ確かに18歳ではあるけど。
柔道で全国でも活躍して、おかげで大学からスポーツ推薦、しかも全額無償で貰って。
友達にもそれなりに恵まれて、幸せな明日があるはずの俺が。
人生を今から謳歌するはずの、俺は。
( ^ω^)「……気持ちはわかる。明日は嫌なら学校にも出席しなくていい」
( ^ω^)「最後の一日は君次第だ。では、僕はこれで」
爪'ー`)y-「……ご苦労様です」
( ^ω^)「……いえ。それでは」
( ФωФ)
( ФωФ)「……」
爪'ー`)y-「杉浦……」
- 60 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:30:29 ID:zx4nOZ.6O
- 爪'ー`)y-「……まさかお前みたいなクラスの見本と言えるべき生徒が選ばれちまうなんてな」
( ФωФ)
爪'ー`)y-「……今なら、なんでも言えばいい。なんなら今から帰ったって構わない。何か俺に言いたい事はないか?」
( ФωФ)
( ФωФ)「……先生」
爪'ー`)y-
( ФωФ)「……ずっと言わないで、って言われてたけど」
( ФωФ)「うちのクラス、いじめがあるんだ」
爪'ー`)y-
爪'ー`)y-「……そうか」
- 61 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:33:21 ID:zx4nOZ.6O
- ( ФωФ)「どうやったら、いじめは無くなる。いじめの解決策ってなんだ」
爪'ー`)y-「……」
( ФωФ)「この前、Googleで調べた」
( ФωФ)「『いじめ 解決策』で調べたんだ」
( ФωФ)「そしたらな、200万件くらいヒットしたんだ」
( ФωФ)「でもな、解決策、どこにも無かった」
( ФωФ)「200万もあったのに、答えが無かった」
爪'ー`)y-「……違うんだよ、ロマ。それはな、解決策がないんじゃない」
爪'ー`)y-「その全てが解決策なんだよ」
爪'ー`)y-「いじめって問題はな、言わば人間関係だ。人はモノじゃない。変わりゆくからこそ、いじめは無くならない」
爪'ー`)y-「いろんなケースがあるから、いろんな答えがある。それがいじめなんだ」
( ФωФ)「じゃあ俺はどうすりゃいい」
爪'ー`)y-「……」
( ФωФ)「『正しい答えが無いから何もしなかった』なんてのが、アンタはそれが正しいと思うのか」
爪'ー`)y-「……あのなぁ、ロマ」
- 62 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:38:41 ID:zx4nOZ.6O
- ( ФωФ)「わかってるだろう、馬鹿は力で見せないとわからない」
( ФωФ)「暴力を封じ込めるのは、更に大きな暴力しかないんだ」
爪'ー`)y-「だから……その、いじめっこどもを殴らせろと?」
爪'ー`)y-「ふざけんなよ、お前」
( ФωФ)
爪'ー`)y-「死ぬならなおさら、そんな事してどうすんだ。暴力で解決するなら、俺がそいつらぶん殴るっての」
( ФωФ)
爪'ー`)y-「……俺、授業中に一度だけ言ったよな、覚えてるか?」
( ФωФ)「?」
爪'ー`)y-「人を救う方法だよ」
( ФωФ)「……あぁ」
( ФωФ)「『ノドが乾いてるやつがいたら井戸の堀り方を教えろ。腹が減ってるやつがいたら麦の植え方を教えろ』……ってやつ」
爪'ー`)y-「そうだよ。間違っても、水や麦をそのまま上げて飢えを癒すだけで終わっちまってはいけないんだよ」
爪'ー`)y-「今のお前みたいに」
( ФωФ)
- 63 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:42:56 ID:zx4nOZ.6O
- 爪'ー`)y-「いじめは無くすもんじゃない。終わらせるもんだ」
爪'ー`)y-「もしお前が最後の一日をそれに使いたいなら……やるべきは、その『いじめられっこ』に対して、じゃないのか?」
( ФωФ)「……俺は」
爪'ー`)y-「いいよ、杉浦」
爪'ー`)y-「俺はお前みたいな生徒に会えて良かった。最後の一日まで他人を考える事が出来るやつなんか、大人でもそうそういないんだからな」
爪'ー`)y-「俺はお前の担任にいれた事を、誇りに思うよ」
( ФωФ)「……」
爪'ー`)y-「今日はもう帰れ。で、ゆっくり休め。な?」
( ФωФ)
( ФωФ)「はい」
- 64 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:45:51 ID:zx4nOZ.6O
- ( ФωФ)
( ФωФ)「死ぬのかぁ」
( ФωФ)(明日、死ぬのかぁ……)
聞いた話じゃ、俺は3歳くらいの頃に母親の薦めで柔道をやり始めたらしい。
らしいというのは、俺にはまるでその頃の記憶がないという意味だ。
とにかくまぁ、そのおかげで強く育った俺は
ケンカじゃ、誰にも負けなかった
だからって力を周りに鼓舞するほど僕は馬鹿じゃない。
それが無益だと気付いたのは中学2年生の頃だったか。
別段仲が悪いわけじゃないが、クラスの頭が悪いグループには関わらなかったし、向こうも関わっては来なかった。
そして高校に入って。
僕はいじめを見てしまった。
いじめられたやつの名は、ヒッキー。
今の俺の一番の親友だ。
- 65 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:50:00 ID:zx4nOZ.6O
不愉快だった。
いじめているDQNというやつは、頭が悪いチャラチャラしたひょろいやつだった。
そんな弱そうなやつがクラスで大声で息巻き、つるんではヒッキーをいじめていた。
それが気にくわなかった。
だから、一度だけヒッキーが殴られている時、「やめろよ」と言ってやった。
そしたら。
(-_-)「あ、あの……」
( ФωФ)「?」
(-_-)「助けてくれて、ありがとう……」
( ФωФ)「……あぁ、うん」
そこから僕とヒッキーは仲良くなった。
- 66 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:56:08 ID:zx4nOZ.6O
ヒッキーは話してみると面白いやつだった。
よくわからないアニメか何かのネタをふってきたりもした。
(-_-)「やっぱ東方なら諏訪子っしょwww俺マジロリコンwww」
( ФωФ)「うははww」
二人で遊ぶ事も多くなり、次第にヒッキーといるのが楽しくなってきた。
そして幾月。
いじめはまた始まった。
……俺に口出しされてはうざいからか、俺の見えない場所で、だ。
( ФωФ)「どうした、弁当ないのか?」
(-_-)「……いや、弁当、忘れちゃったみたいだwww」
( ФωФ)
ヒッキーは嘘を付くのがヘタだ。だからすぐにわかった。
- 67 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 21:01:48 ID:zx4nOZ.6O
( ФωФ)こんな状況でもし俺がいなくなったら、お前、どうする気なんだ?」
ヒッキーは真面目に返さなかった。
だから俺はどうするべきかわからなかった。
( ФωФ)
「暴力じゃ解決しない」。
だったら先生。
俺は、どうすればいいのだ?
いくら高尚な倫理を並べられたって、俺は否定する気にはなれないんだよ。
「暴力」を潰すのは、「もっと大きな暴力」だけだって事を。
- 68 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 21:04:15 ID:zx4nOZ.6O
- ( ФωФ)
( +ω+)
……やっぱり俺には、これしかないよなぁ。
明日しぬなら。
どうせなら。
水を与えながら、井戸の堀り方を教えるよ。
麦を食わせながら、畑の作り方を教えるよ。
これは人を救うに、良い方法なのかな?
先生。
- 69 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 21:08:31 ID:zx4nOZ.6O
- ――――――翌日。
朝礼のベルが鳴るかという頃。
俺は、クラスのど真ん中で行動を開始した。
( ФωФ)「おいDQN」
DQN「……あ?」
( ФωФ)「ヒッキーに謝れ」
(;-_-)
(;-_-)(ろま、何を……)
DQN「…………」
DQN「……はあぁ?wwwなんだいきなりwwww」
( ФωФ)「知ってんだよ、お前がヒッキーの私物潰したり、裏で金巻き上げたりしてるくらい」
DQN「えーwww証拠がありませんけどぉwwwひどくね?wwww」
DQN「つーかまず、誰があんなのに構うかってのwwwきめぇなwww」
( ФωФ)「いいからやれってんだ。殺すぞ」
DQN「……あ゛?」
- 70 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 21:12:59 ID:zx4nOZ.6O
- DQN「んだよ、ロマネスク」
( ФωФ)
顔が近い。
DQN「お前調子乗りすぎんなよ」
( ФωФ)
顔が近すぎる。だから。
DQN「あんまりナメてtt」
とっさに手が出た。
DQN「ぐぶづっ!!!」
DQNは盛大に鼻血を出して吹っ飛ぶ。
なんだ。弱い。弱すぎるよ。
こんなのが、人をいじめてたのかぁ。
女子「―――――キャアア!」
( ФωФ)「騒ぐなお前ら」
女子「―――!!!」
( ФωФ)「……生意気だなぁDQN。なんでそんな口が聴ける?DQNよォ」
そのワックスべたべたの髪の毛を掴み、DQNを引っ張りあげる。
DQN「あ゛ぁ!いだ、いだい……!!!」
ぶちぶちと、端から髪がちぎれる音。
なんか、楽しい。
( ФωФ)「もし俺が手を出したら、俺の大学へのスポーツ推薦が取り消されるからか?だから俺が手を出すはずがないと?」
( ФωФ)「ナメ腐ってくれてんなよ、オイ」
DQN「ヒッ……!!!」
- 71 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 21:29:46 ID:zx4nOZ.6O
- DQNはひどい顔だった。
いつものにへら顔は涙でぐじゃぐじゃ、腰パンはズレ落ちて青いトランクスが見えている。
その情けない姿を、クラス中に晒してやった。
( ФωФ)「まずは、ヒッキーに謝れよ」
DQN「……え」
( ФωФ)「ヒッキーにこの場で、土下座して謝れって」
DQN「……ううう」
( ФωФ)「早くしろってんだよ!」
DQN「あ゛ぁッ!」
2発目が出た。膝が綺麗に入った。
DQN「……ご、ごめんなさ……い……」
するとすぐに地べたに頭を擦り付けた。
よしよし、聞き分けの良い子は好きだ。
( ФωФ)「……さて」
( ФωФ)「ヒッキー」
(;-_-)「ひぃっ」
( ФωФ)「お前がやろうとしてたのは、こういう事なんだけど、わかってる?」
(;-_-)「……」
友人は怯えきった顔でこちらを見ていた。
ひっでぇな。まるで化物でも見てるかのようじゃないか。
- 72 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 21:40:01 ID:zx4nOZ.6O
( ФωФ)「友達だから忠告するよ、ヒッキー。たかだか先生にチクる事すら出ないお前が。自分の勇気がないのを周りのせいにして何も行動しないお前が」
( ФωФ)「いじめに向き合うなんて、簡単な事じゃない」
( ФωФ)「つまるところ、一人じゃお前は何もできないんだよ」
(;-_-)「……どうしたんだよ、ろま……お前なんかおかし……」
( ФωФ)「俺、死もうすぐぬんだ」
( ФωФ)「イキガミ、届いた」
(;-_-)「えっ!!?」
クラス中がざわめく。うるさいったらありゃしない。
( ФωФ)「今日の1時半、間違いなく死ぬ」
(;-_-)「そんな、お前……!!」
( ФωФ)「だからさ、昨日からずっと、最後の一日、何しようかって考えてた」
( ФωФ)「でも、これくらいしか浮かばんかった。クラスの皆もさ」
( ФωФ)「このクラスの問題を、見て見ぬフリだけはやめてくr」
爪;'ー`)y-「杉浦!!お前!!」
( ФωФ)
……時間か。もう少し色々、伝えたい事はあったんだけどな。
- 75 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/15(木) 01:16:23 ID:2VMSrzGoO
- 爪;'ー`)y-「何やってんだ馬鹿野郎が!!すぐDQNを離せ!それと―――」
先生が何かを言っているが、聞こえないフリをしよう。
それより、まずはヒッキーだ。
( ФωФ)「しのぐだけじゃダメだよ、ヒッキー。向き合わなきゃさ」
(;-_-)
( ФωФ)「これからお前人生たのしむんだろ。なら、変わろう。少しずつ」
( ФωФ)「口だけで自分を慰めるのはもうやめよう。俺がいなくても、お前は出来るよ」
(;-_-)
爪;'ー`)y-「おい……」
( ФωФ)「あと、クラスのみんな」
( ФωФ)「こんな事やっといてなんだけど、俺はやっぱりこのクラスが大好きだったよ」
爪;'ー`)y-
( ФωФ)「みんなと一緒に卒業できないのが心残りだけど、俺はこの学校にいられて良かった」
爪;'ー`)y-「……お前」
( ФωФ)「……じゃあね、みんな」
- 76 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/15(木) 01:28:28 ID:2VMSrzGoO
- (-_-)
その後、「ろま」……杉浦ロマネスクはそのまま家に帰りました。
そして数日の後、彼の葬式が行われました。
多くの人が涙しました。
普段はあまり交友のないクラスメートも葬式に参列していました。
また、ろまの両親はそんな息子を「誇りだ」と言っていました。
ろまは、みんなから愛されるやつだったのです。
(-_-)
そして……それだけに、わかりません。
あいつが自分の最後の一日を使ってまで、僕に何を伝えたかったのか。
僕の何を変えようとしたのか。
あいつの最後の言葉の真意を、理解出来ていない気さえします。
僕は、あいつがいた時と変われているのでしょうか。
(-_-)「ろま……」
- 79 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/15(木) 01:31:43 ID:2VMSrzGoO
―――――――
生徒が屋上に忍び込んだら、先生が怒る。
じゃあ先生が屋上に忍び込んだら、誰が怒ってくれんだろうな?
爪'ー`)y-
爪'ー`)y-「……いい風だな」
どうだった?ロマネスク
お前は納得して、天に逝けたのか?
爪'ー`)y-「……っち」
爪'ー`)y-「タバコ、ラス1だ。……しっかり味わうとすっか」
先生、お前に言ったよな?
「ノドが乾いてるやつがいたら井戸の堀り方を教えろ。腹が減ってるやつがいたら麦の植え方を教えろ」ってな。
あの話な、実は続きがあるんだ。
- 80 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/15(木) 01:33:58 ID:2VMSrzGoO
頭がいいお前なら気付いてたかも知れないよな。
もし今の世界で、ホントに堀り方植え方を教え続けてりゃ
今頃飢えに苦しむ国なんか無いはずなんだよ。
じゃあなんで未だに南米なんかじゃガキどもが飢餓に苦しんでるか、知ってるか?
なんでって、むこうの国には文明御大層な「いたわる」って感情が無いんだ。
食料が来ても、大人がまずたらふく食う。
子供はその余りを貰うんだ。
だから両親は満腹、ガキが飢餓状態なんて事が日常なんだよ。
だが食料の量の問題じゃない。食料の量を増やしたところで、俺らへのアピール程度に井戸掘って麦植えてるあいつらは絶対に働かなくなる。
知ってるか?
植え方を教えても、堀り方を教えても、やつらはまともにやらないんだよ。
知能が無いんじゃない。たんに働くのが嫌なだけだ。
こちらが教えようとしてる事の有用性を理解せず、サボるんだよ。
あげくの果てには、その麦の種まで食べて「我々は飢えている。もっとよこせ」なんて抜かすんだ。
それを見て日本人は「発展途上国は可哀想」なんて抜かすんだ。
爪'ー`)y-「……どう思うよ?杉浦ロマネスク……」
お前のやってた事は、そういう事なんだぜ?
- 81 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/15(木) 01:36:55 ID:2VMSrzGoO
- お前が必死にやってたのは、そういう事なんだよ、ロマネスク。
爪'ー`)y-「こんな事、教師は言っちゃいけないんだがな……」
今からは、俺の偏見な。
いじめるやつはクズだ。
んでもって、いじめられるやつはバカなんだ。
クズを矯正させようったって難しいし、バカを更正させようったってうまくいかない。
だからいじめって無くならないんだよ。
聞いた話じゃ、ヒッキーへのいじめは無くなってないらしいぞ。
いや、DQNではないらしい。
DQNはお前との一件以来、とても大人しくなったよ。
また別のやつが、いじめてるらしいんだ。
ヒッキーは、変わったのかな?
- 82 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/15(木) 01:42:54 ID:2VMSrzGoO
爪'ー`)y-「でも、お前の死は無駄じゃなかった」
今まで気付けなかったいじめを、なんで俺は今回は知ってると思う?
とある女生徒がな、教えてくれたんだよ。
凄いと思うぜ?今まで怖くて黙認するしかなかったいじめってやつを、今回、その子は勇気もって伝えてくれたんだ。
それはな、お前のおかげだと思うんだ。
爪'ー`)y-「影響力、あったんだよお前……だから」
お前が一番思いをぶつけたヒッキーが、変わってないはずがないと思うんだ。
俺に確かめるすべはないけど、そう信じてるぜ。
- 83 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/15(木) 01:47:45 ID:2VMSrzGoO
―――――――
( ´∀`)「しっかし……ねェ?なんか悲しいよねぇ」
( ^ω^)「何がですか?」
( ´∀`)「杉浦ロマネスク……あんな有能な子が死んでしまうなんて、って話だよ。確率ってのは無慈悲で、いやはや恐ろしい」
( ´∀`)「この世にゃ、もっと死ぬべき人間がいっぱいいるのに」
( ^ω^)「……そういう事は言うべきじゃないです」
( ´∀`)「なに?真実でしょ?」
( ^ω^)「真実でしょうが……それでも人の命は、尊重すべきでしょう」
- 84 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/15(木) 01:51:50 ID:2VMSrzGoO
- ( ´∀`)「『人の命は尊重すべきですよ』ね」
( ´∀`)「勘違いしてるね」
( ^ω^)「……?」
( ´∀`)「いいかい、その言葉はね……君みたいなのが言う、『人命は尊重すべき』という言葉の『人命』とはね……つまるところ、自分の命なんだよ」
( ^ω^)「っ……」
( ´∀`)「大事にするのも尊重にするのも大切にするのも、結局は巡り巡って自分の命だよ」
( ´∀`)「自分の命が含まれてるからこそ、自分の命が一番にくるからこそ、君は命が大事だなんてほざくんだ」
( ^ω^)「でも……だからって命の不平等性をひけらかすのは、倫理的によくないですお……」
( ´∀`)「口癖」
( ^ω^)「……あ」
( ´∀`)「また語尾に『お』ってついてたよ」
( ^ω^)
( ´∀`)「……早く忘れなさいな」
( ^ω^)「……はい」
- 85 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/15(木) 01:56:08 ID:2VMSrzGoO
( ^ω^)
なぁ、ツン。
「杉浦ロマネスクが死ぬくらいならば」と課長は言ったけど、僕は違うと思うんだ。
この親友にあたるヒッキー。
例えばこいつが死んでたら……どう変わったと思う?
僕はね、そこに差異は生じないとすら思うよ。
人は繋がり。
失う繋がりもまた一つあれど。
消える繋がりは、ないんだから。
( ^ω^)「……」
そしてな、ツン。
君との繋がりの果てに、僕は僕を台無しにしてる気分さえあるよ。
( ^ω^)
でも。
台無しだっていい。
それでも君との繋がりを、一辺たりとも忘れたくないから。
―――――――
- 86 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/15(木) 01:59:23 ID:2VMSrzGoO
- 死亡予告証――――――――――――――
『( ФωФ)』
指名:杉浦ロマネスク
生年月日:12月17日
本籍:○○県ヒロユキ市7―9―12
住所―○○県ヒロユキ市7―9―12
死亡予定時刻:「PM1:30」
あなたの御冥福を心からお祈りします。
発行日付:○月○日
担当人:内藤ホライゾン
―――――――――――――――――――
第二話:「繋がりの果てに(ラストフルトラスト)」
終了。
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