( ^ω^)はイキガミの配達員になるようです

138 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/27(火) 05:57:33 ID:qASgjoIAO
都内。
欲と欲がぶつかりあう夜の街、「ビッチ町」。

そのの駅前に見えるこじんまりしたバー、「バーボンハウス」

(´・ω・`)「いらっしゃいませ」



そここそが、僕、真弓ショボンの築き上げた城だった。

高校を卒業後、バーでバイトしていた経験を生かし
紆余曲折と努力を経て、僕は自分の店を持つようにまで至った。

ちなみにこの「バーボンハウス」という名前には、あまり意味はない。

「ショボンがやってるバー」……それを兄貴が「バー・ショボン」さらに「バーボン」と略したまでの話だ。

……そう言えばそろそろ、その兄が登場する時間帯だ。

僕の兄は、この夜の街を闊歩する男。

今日もどうせ、そこらへんのお高いホステスなんかを連れてくるのだろう。



「いいからいいから!ちょっと顔出すだけだってんだ」

(´・ω・`)(……ほら)

兄貴の声だ。

139 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/27(火) 06:03:06 ID:qASgjoIAO

「別にそのまま家もよってけなんて事ァねーよ!ここでシメーだからよ!」

(´・ω・`)

また女でも口説いてるんだろう。
そして酔わせて食っていくつもりだろう。
まったく……あの兄貴だけは、悪い意味でしっかりしている。


「ちょ、まって下さいお……僕、お酒あんま飲めないし……」

(´・ω・`)

……ん?男の声?

(`・ω・´)「おいすー!来たぞショボーン!」

(;^ω^)「ちょ、だから僕は……」

(´・ω・`)

(´・ω・`)「やぁ、ようこそ兄貴。貴方がそっちにも目覚めたとはね」

(`・ω・´)「違ェよ。この人は、俺の死神さ」

(´・ω・`)「え?」

140 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/27(火) 06:04:40 ID:qASgjoIAO



(`・ω・´)「俺、死ぬらしいわ」


(´・ω・`)

(´・ω・`)「え」

(`・ω・´)「明日の午前1時にな」



(`・ω・´)「イキガミ、届いちまった」

(´・ω・`)


(´・ω・`)「……そうかい」

142 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/27(火) 06:11:48 ID:qASgjoIAO
―――――――

神様達は俺ら人間をコマとした人生ゲームで遊んでいるのさ。神様がふったサイコロで、俺らの人生は決められる。
それだけなら平等なんだがなぁ……
……神様は、平気でイカサマをするから。



第四話:「即席の最大幸福(ハリーヘヴンスリーセブン)」

対象者:真弓シャキン

145 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/28(水) 21:52:52 ID:n/thVli2O
―――――――数時間前。


(`・ω・´)「そうか……俺、死ぬのか」

( ^ω^)「はい」

( ^ω^)「そこに書かれている通りです、真弓シャキンさん」

(`・ω・´)「……」

びっくり。
自分が国繁死ってのは、まさかだな。

あと24時間ちょっとで死ぬというのに、浮かんできたコメントはこれだけだった。
というよりむしろ、感心も大きい。

( ^ω^)「他にご質問等は?」

(`・ω・´)「……内藤さんとやら」

( ^ω^)「はい?」

(`・ω・´)「この俺の最後の一日は、尊重されて然るべきなんだよな?」

( ^ω^)「え……あ、はい。もちろんです。ですから死亡予告証はその一日を出来るだけ不自由なく過ごせるようにと配慮されているものですが」

146 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/09/28(水) 21:59:09 ID:n/thVli2O
(`・ω・´)「つまりそれに殉ずる貴方も、もちろん俺の一日を尊重してくれているわけだ」

( ^ω^)「……?はい、もちろんそうですが……?」

(`・ω・´)

にやり。
そんな擬音が生まれそうなくらい、分かりやすくにやついた。

(`・ω・´)「じゃあよ、決まりだな内藤さん」

( ^ω^)「……?」

(`・ω・´)「俺の最後の一日に付き合ってくれよ!いいバー知ってるんだわ。ちょっくら飲みに行こうぜ」

( ^ω^)

(;^ω^)「……はい?」

(`・ω・´)「よし、決まりだな!さぁ行こう!早くしねーと俺が死んじまうぜ!」

(;^ω^)「え?ちょ、待って下さい。僕も頼み事で……」

(`・ω・´)

(`・ω・´)「……これから華々しい未来を送るはずだった24歳の、文字通り命懸けの仕事をあなたは断r」

(;^ω^)「ごめんなさい!わかりました!わかりましたから!」

147 名前:仕事→頼み事の方が日本語が自然かな[sage] 投稿日:2011/09/28(水) 22:36:09 ID:n/thVli2O

―――――――

(´・ω・`)「なるほどね。いやはや、嫌なやつに目をつけられましたね内藤さん」

(;^ω^)「お……いや、でも私も楽しいっちゃ楽しいからいいんですが」

(`・ω・´)「そうだな。それにショボン。嫌なもんに目をつけられちまってるのは俺だぜ?1000人に1人から選ばれちまったわけだし」

(;´・ω・`)「……ああ、うん、確かに」

(;^ω^)「……」

笑えない。
死が絡んでるばかりに、まったく笑えないジョークだ。

(`・ω・´)「もうちっと人生楽しむはずだったんだがな。俺は先におさらばさ」

(´・ω・`)「うん。常連が一人減ると思うと寂しいね。まぁこういう店に騒がしさを持ち込む常連なんか、早々に消えりゃいいとは思ってたけど」

(`・ω・´)「キツいな。涙ぐみながら『どうして兄さんが……!!』とか言えばいいのに」

( ^ω^)「……」

( ^ω^)(……なんか、おかしいな)

そう思った。

僕は今までいろんな死に直面した。

その中で一番処理に困るのは、案外にも「家族」だ。
大抵の当人は死を受け入れる事に抵抗はないが、家族は違う。
どれだけ仲が悪くとも、やはり最後には失うものの大きさを、寸前まで悔やみ続ける。

それが繋がりを持った人間というものだからだ。

なのに、この兄弟。

( ^ω^)(……妙にサバサバしすぎだお)

149 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/12(水) 10:39:57 ID:A5NkyfHwO
(´・ω・`)「なんか腑に落ちない顔してますね、内藤さん」

( ^ω^)

(´・ω・`)「身内が死ぬのに、なんでそんな落ち着いてられるのか、ってとこですか」

( ^ω^)「……はい、まぁ」

(`・ω・´)「お、内藤さんなんだ、そんな事で悩んでたのか!聞きたいなら聞けばいいぞ」

(`・ω・´)「なんせ死人に口無し、もうすぐ喋れなくなるわけだし」

用途が違う上に笑えない。
わかったこの人、確信犯だ。

(`・ω・´)「ちょっとな、俺の夢は特殊でな。あんまり家族から理解を得れてないわけだわ」

(´・ω・`)「かっこいい言い方すんなよ。いい歳してろくに職もないもんだから家族から見放されてるだけだろ」

(`・ω・´)「おいみなまで言うなおい」

( ^ω^)「……え、失礼ですが……無職……?」

(`・ω・´)「ちげーよ。一応、職にはついてるさ」

( ^ω^)「?」

150 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/12(水) 10:46:36 ID:A5NkyfHwO
(`・ω・´)「というかまぁ、職業というよりは、生きざまみたいなもんだけど」

( ^ω^)「……?ますます意味が……」

(´・ω・`)「かっこつけないの。ホントにもう……」

(`・ω・´)「あぁ」



(`・ω・´)「俺、ギャンブラーなんだわ」

( ^ω^)

(`・ω・´)「博打で生計立ててんの」

( ^ω^)

(;^ω^)「……はい?」

(´・ω・`)「こんなんだから、家族から見放されてんですよ。わかるでしょ?」

(;^ω^)「……え、あ……ホントに?まじで?」

(`・ω・´)「まじだ」

(;^ω^)「まじか……」

いやはや、これは驚いた。
今のご時世に、そんな波乱万丈な人生を選んでいる人間がいたとは。

151 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/15(土) 09:32:40 ID:vi2fcCakO
(`・ω・´)「わはは。やっぱりあんたもそんな反応すんのか。みんな同じだ、そうやって驚きと呆れを混ぜたような」

( ^ω^)「いや、え、その……失礼ですが……成立…してるのですか?それで……生活が」

(`・ω・´)「してるよ。だからこうして今あんたに酒をおごってるんじゃないか。俺をそこいらのギャンブラーと一緒にすんなよ」

( ^ω^)「……ですが」

にわかに信じられません。
そう言いつつホントは全く信じられていないのだが、ここまで胸を張って言われては少し引ける。

第一、ホントにそんなふざけた生計の立て方が成立するのなら、今頃パチンコ屋は丸つぶれだろう。

(`・ω・´)「キモの部分から言えばな、俺は、ギャンブルの『常勝』の方法を知っているんだよ」

毅然としたまま彼はそう答えた。

ギャンブルなのに、常勝。
そんな矛盾を前提としたまま、彼は話を勧めた。

154 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/19(水) 07:50:07 ID:0u2lR0HUO
(`・ω・´)「『常勝』の法だよ、常勝の。何もどこぞによくある『必勝』の法を知っているわけじゃない」

( ^ω^)「……はぁ」

(´ーω-`)「……」

ショボンさんは無言でグラスを磨いていた。
もしかすれば、聞きあきているのだろうか。


(`・ω・´)「ギャンブルってぇのは非常に良く出来たシステムでな。簡単に言えば馬鹿は必ず最後は泥沼に入る仕組みになってる」

( ^ω^)「よく聞く話ですね。特にパチンコやスロットなんかには……」

(`・ω・´)「そうさ、パチンコやスロットなんかが一番わかりやすいな。あれはひどいもんさ」

(`・ω・´)「パチンコ屋の怖いところは、毎日いけるってとこにある。これが一番危ないんだな」

(`・ω・´)「継続ってのは良くも悪くも人間に多大な効果を及ぼすってこと」

( ^ω^)「……」

(`・ω・´)「話がそれた。じゃあなぜ多くの人はギャンブルに負けるかって話からだな」

155 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/19(水) 08:05:30 ID:0u2lR0HUO
(`・ω・´)「『コントロール幻想』って言葉は知ってるか?」

( ^ω^)「いえ……あまり学はないもので」

(`・ω・´)「心理学用語だったかな。簡単に言えば、人間にゃ往々にして『自分だけは特別』『俺なら大丈夫』だって心理があるのよ」

( ^ω^)「……へぇ」

(`・ω・´)「ギャンブルをする人間はまずこれに支配される。レアな当たりを引いた、少ない投資で勝てた。勝った事実が裏付けだとこじつけるようにしてな」

(`・ω・´)「思い上がりも甚だしいもんさ。そうなると、ギャンブルの本質を忘れ出す」

( ^ω^)「……本質?」

(`・ω・´)「あぁ」

(`・ω・´)「『財布には上限があるが、欲には上限はない』って事」

( ^ω^)「……あー」

(`・ω・´)「『勝ちたい金額』を設定しながら勝負やるやつなんていねえだろ。だが、『払える金額』は最初から設定されてある。自分の財布の中身なんだからな」

(`・ω・´)「2万円出して2万5000円返ってくるものを、1万しか出せずそのまま飲まれる、みたいなな」

(`・ω・´)「もっとも、例えの話だが」

( ^ω^)「……じゃああなたの常勝法とは?」

156 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/19(水) 08:16:23 ID:0u2lR0HUO
(`・ω・´)「急かすなぁ。まず俺はな、単純に儲けるなら、さっき上げたパチンコやスロットが一番良いと思う。」

( ^ω^)「はい?それはまた……」

(`・ω・´)「競馬や競輪はイヤなんだ」

(`・ω・´)「信じる相手が『生物』だからな」

( ^ω^)

(`・ω・´)「生物は所詮生物。不調もありゃ奇跡もある。デリケートなんだよ、『運』ってのが。」

( ^ω^)「なるほど。でもパチスロは」

(`・ω・´)「ああ、機械なんだよ。よっぽど信頼における」

(`・ω・´)「生物じゃなく、機械。そうすれば『運』という莫大すぎる可能性は、『確率』という矮小なもんに成り下がってくれる」

( ^ω^)「……一応、理にはかなってますおね」

(`・ω・´)「だろ」

157 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/19(水) 08:29:13 ID:0u2lR0HUO
(`・ω・´)「みんな知らないんだろうが、ああいうパチンコやスロットっていうのは、馬鹿が勝てないだけで賢いやつなら誰でも勝てんだよ」

( ^ω^)「はぁ……まぁ、先ほどの理論から言うならそうでしょうか」

(`・ω・´)「まぁただ、パチ屋やスロ屋に入り浸ってる時点で、そいつは馬鹿なんだがな」

( ^ω^)「なんですかそれ。矛盾してませんか?」

(`・ω・´)「してるな。つーか、賢いやつはギャンブルなんかしない。コツコツ働いた方がいいと知っているからな」

(`・ω・´)「ただ。賢いやつにもイレギュラーはいるもんさ。俺みたいにな」


(`・ω・´)「まず俺は、ギャンブルをしにいく時は朝イチ。そんで25万は持って行くかな」

(;^ω^)「にっ……!?」

(`・ω・´)「んで、上限を忘れる。やる台はパチンコなら釘、スロットなら設定を良く見る。それで1時間半は使うかな」

(`・ω・´)「そんで、これだ!ってのがあればそれをやる。無ければ別の店、もしくは帰る」

( ^ω^)「……ほー。なんか、諦めがいいんですおね」

(`・ω・´)「当たり前だろ」

(`・ω・´)「パチやスロは、どれでもいいわけじゃない。大概の人間はそれに気付かず、『パブロフの犬』よろしく『レバーひきゃ餌出るだろ』みたいな楽観的考えしか持たなくなる」

158 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/20(木) 08:50:20 ID:WUZ9VFjQO
(`・ω・´)「そうなりゃ負け組確定……だから自分の業に呑まれない事も大事だな」

( ^ω^)「言い方がなんかかっこいいですね」

ここでシャキンさんの幾杯目かのグラスが空になる。
弟たるショボンさんは無言のまま、しかし待ってましたと言わんばかりに次のグラスを用意した。

高そうなスコッチウイスキー、ロック。
疑わしき濁色にも関わらずそれは、正体不明の説得力を持ち合わせている。

(`・ω・´)「そして……引くんだ。大当り」

( ^ω^)

そのグラスをぼんやり眺めたまま。
その勝ち組の背中は、あまりにも不安定に見える。

(`・ω・´)「こんなとこかな。俺の常勝法ってのは」

( ^ω^)「……」

(`・ω・´)「信じられないかい、内藤さん?ただな、俺は18で家を出てから、ずーっとこうやって生きてきた」

(`・ω・´)「弟が店開いた今じゃあ毎日ここに通ってる。お高いホステスなんかを連れてな」

(´・ω・`)「ふふ。おかげでうちは繁盛してます」

(`・ω・´)「その事実が、俺の言ってる事の裏付けだと思ってくれりゃいい」

159 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/20(木) 09:04:21 ID:WUZ9VFjQO
( ^ω^)「……いや、恐れ入ります」

(`・ω・´)

( ^ω^)「ほとんどの人間はそこまでの研究する前に、その日一日の幸福で満足してしまう。なのにあなたは、そんな即席では飽きたらず、その先まで手を伸ばした」

( ^ω^)「かっこつけた言い方をするなら、誰にもたどり着けない境地でしょう」

(`・ω・´)「ああ。いや、まぁ、他にもいると思うぜ?こうやってギャンブルで食い繋いでるやつってのは」

( ^ω^)「そんなの極僅かでしょう。少なくとも、私は聞いた事はありませんし」

( ^ω^)「こんなお兄さんを持つショボンさんも、ある種誇らしいでしょう」

(´・ω・`)「皮肉に聞こえますねそれはw単なる無職ですよそいつは」

(`・ω・´)「おいおい」

(´・ω・`)「でもまぁ、話題にはなりますし」

(´・ω・`)「自慢の兄ですね」

(`・ω・´)

(`・ω・´)「……そうかい」

( ^ω^)

160 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/20(木) 09:15:54 ID:WUZ9VFjQO
(`・ω・´)「よしショボン、最後に一杯、なんかお前の自信作をくれ」

(´・ω・`)「……お勧め?」

(`・ω・´)「なんでもいいんだよ。よくよく考えりゃ俺は、お前に高そうな酒しか頼んだ事がなかった気がするからな」

(´・ω・`)「じゃあとっておきの名酒を飲ませてあげるね。『水』って名前なんだけど」

(`・ω・´)「せめてアルコールはいれといてくれよ〜……」

そう言ってシャキンさんは大袈裟にアクションした。
素面に見えたが、実はかなり高揚しているらしい。

( ^ω^)「はははw」

(´・ω・`)「冗談。じゃあ、たまにはカクテルなんかどう?兄貴、あんまり飲んだ事ないでしょ」

(`・ω・´)「カクテル……ふぅん。確かにいつも洋酒ばっかだったからな。たまには、悪くないかもな」

(´・ω・`)「じゃあ用意しますね、お客様」

161 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/20(木) 09:31:04 ID:WUZ9VFjQO
―――――――

繊細な指先が踊る。
宝石が等間隔に混ざってゆく。
絢爛豪華な黄色と、優柔なピンク。
最後にパイナップルが添えられ、それは完成した。

(´・ω・`)「……お待たせ」

(`・ω・´)「おぉ」

それは、シャキンさんの前に。
僕は頼んではいなかったが、僕の前にも。

(`・ω・´)「へぇ、洒落た色だな」

( ^ω^)「凄い……。とても綺麗ですね」

(´・ω・`)「でしょ。兄貴にぴったりだと思ってね」


(´・ω・`)「『ミリオンダラー』って言うんだ」


( ^ω^)「ミリオンダラー……『百万ドル』?」

(`・ω・´)「おお、えらく景気のいい名前だな!」

(´・ω・`)「その方が兄貴にはお似合いでしょう。お金持ちや成功者には、これはうってつけだと思うんだ」

(`・ω・´)「はは……」

シャキンさんはゆっくりと口をつけた。
グラスの中の黄金が、静かに揺れ動く。

(`・ω・´)「……うん。気に入った」

(´・ω・`)「へへ、ありがとう」

162 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/20(木) 09:38:48 ID:WUZ9VFjQO
―――――――

(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「さて」

(´・ω・`)(そろそろ閉店準備でもするかな……)


ぎぃ。

(´・ω・`)(ん……)

樹の扉の音は、よく響く。

( ^ω^)

( ^ω^)「お邪魔ですかお?」

(´・ω・`)

(´・ω・`)「……いや、大丈夫ですよ。昨日、兄貴はちゃんと家に帰りましたか?」

( ^ω^)「駅前でタクシーを呼びましたお。大丈夫でしょう」

(´・ω・`)「そうですか……でも、なんでまた?」

( ^ω^)「一応昨日は業務中でしたから。思いっきり飲むわけにもいかなくてね」

( ^ω^)「今日は非番ですから。『ミリオンダラー』、もらっていいですかお?」

(´・ω・`)「はい」

(´・ω・`)「……なんか、変な語尾ですね」

( ^ω^)「……はは。よく言われますお」

163 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/10/20(木) 09:48:01 ID:WUZ9VFjQO
(´・ω・`)「兄貴は、もう死んだんですね」

( ^ω^)「……はい。今が1時45分……だから、ほんの45分前に」

(´・ω・`)「……感慨深いものもないや」

( ^ω^)「……そうですかお」

(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「……『答え会わせ』。します?」

( ^ω^)

( ^ω^)「……一応。今日来た目的の1/4くらいは、それですし」

(´・ω・`)「そうですか」

(´・ω・`)「……の前に、はい」

グラスは置かれた。
昨日と同じで、ミリオンダラー。
巨万の富。

164 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/20(木) 10:02:44 ID:WUZ9VFjQO
(´・ω・`)「……兄貴の話。あれ、何割信じてました?」

( ^ω^)「……ぶっちゃけ、0割」

(´・ω・`)「ははw」

( ^ω^)「というか……失礼ながら……知ってたんですお、僕」

(´・ω・`)「あら」

( ^ω^)「国繁死対象者の事後処理の要覧で……」


( ^ω^)「シャキンさんに、巨額の借金があるってこと」

(´・ω・`)「やっぱりか」

( ^ω^)「さらに無職……最初見たときは、目を疑いましたよ」

165 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/20(木) 11:40:56 ID:WUZ9VFjQO
( ^ω^)「結局のところ、彼もギャンブルで大勝などしていなかった」

(´・ω・`)「そういう事。」

( ^ω^)「しかし理解出来ないのはその先です」

( ^ω^)「なぜシャキンさんは……そんな事」

(´・ω・`)「わかりませんか」

(´・ω・`)「見栄に決まってるでしょう」

( ^ω^)

(;^ω^)「はい?」

(´・ω・`)「バカなやつです」

(´・ω・`)「あいつはいっつもここで、一人旅立った僕に安心させる為に」

(´・ω・`)「どっからか借りた金で、ここでずっと豪遊して……ずーっと僕に『勝ち組の兄』をアピールし続けた」

(´ーωー`)「僕も気づいてましたよ。あの凡人たる兄に、そんな事出来るわけがない」

(´ーωー`)「そんな方法で世が渡れるはずがない……けどの」


(´ーωー`)「けどね内藤さん。あいつ馬鹿だから……そんな方法でしか……泥沼に落ちても維持を張って……」



(´;ω;`)「……あいつはね、最後の最後まで、僕の自慢の兄で有り続けたんですよ」

( ^ω^)


(´つω;`)「……失礼しました」

( ^ω^)「……いえ」

166 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/10/20(木) 11:55:12 ID:WUZ9VFjQO
( ^ω^)「しかしまぁ、彼は最後に引き当てたじゃないですか」

(´つω・`)「……」

( ^ω^)「大当り」

(´・ω・`)「……はい?」

( ^ω^)「もし借金等で多額の負債を抱える人間が国繁で死ぬとなればどうなるか」

( ^ω^)「……国繁の死亡予告伝達前に出来ていたものに限り、その借金の返済責任は無くなります」

( ^ω^)「彼は、7桁ほどの借金を持ち合わせていましたが……それは全てチャラになりました」

(´・ω・`)「……あぁ」

( ^ω^)「僕が見た最大のケースで奨学金の返済が帳消しになったものもありますが、それを遥かに上回る額です。シャキンはそれを、引き当てた」

(´・ω・`)「……なんだか、皮肉な話だ」

( ^ω^)「ええ」

(´・ω・`)「ははは」

(´・ω・`)「幸せだったかな、あいつ」

( ^ω^)「わかりませんが、そうであると願いたいですね」

167 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/10/20(木) 12:01:13 ID:WUZ9VFjQO

―――――――

都内。
欲が欲を動かす街、ビッチ町。

その街の隅、隠れた名店と評判のバー、『バーボンハウス』。

「……いらっしゃいませ」

その店のカウンター、その右奥から3番目の席には、いつも「SAVE」と書かれた札で予約されている。

「すいません、この席は……」

「ああ、ごめんなさいね、お客様」



「その席は、この店一番のVIPが予約されている特等席なんです」



特等席には、富の象徴であるカクテル
『ミリオンダラー』が用意されていた。

168 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/10/20(木) 12:04:18 ID:WUZ9VFjQO
死亡予告証――――――――――――――
『(`・ω・´)』
指名:真弓シャキン
生年月日:12月13日
本籍:○○都ビッチ町アバズレ区7―21
住所:○○都ビッチ町アバズレ区7―21
死亡予定時刻:「AM1:00」
あなたの御冥福を心からお祈りします。
発行日付:○月○日
担当人:内藤ホライゾン
―――――――――――――――――――

第四話:「即席の最大幸福(ハリーヘヴンスリーセブン)」

終了。


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