( ^ω^)はイキガミの配達員になるようです
- 195 名前:名も無きAAのようです:2011/11/16(水) 22:47:03 ID:EmRmJv1AO
- 皮肉にも、この世はとても壊れやすい「割れ物」で充満しています。
「割れ物注意」よろしく……みんなそれを壊さぬようにと、繊細に過ごしています。
たまに「割れ物」を割ってしまう人間がいます。
彼は周りから、「割る者」と呼ばれてしまいます。
「割る者」は、罵られます。
ふふ、壊れちゃう方は、いつだって無責任。
第5話:【無差別殺神《ゴーストホロコースト》】
対象者:井戸本貞子
- 197 名前:名も無きAAのようです:2011/11/16(水) 22:53:13 ID:EmRmJv1AO
- ( ´∀`)「昔々あるところに、ある少女がいました」
( ^ω^)
( ´∀`)「彼女は大学で、オカルト研究部に所属していました」
( ^ω^)「……」
( ´∀`)「彼女は霊のたぐい……オカルト全般を信じきっていました」
( ^ω^)「……あの」
( ´∀`)「するとびっくり。彼女は会ってしまったのです」
( ´∀`)「死神に」
( ^ω^)
( ´∀`)「……ってね」
( ^ω^)「……それは、モナーさんの……?」
( ´∀`)「まぁね、昔……僕が受け持った子でね。最近君は、何かと死亡予告者に心を入れてる節があるから」
( ´∀`)「こんな馬鹿もいた、って話」
( ^ω^)「……」
- 198 名前:名も無きAAのようです:2011/11/16(水) 23:11:45 ID:EmRmJv1AO
- ―――――――四年前、某大学キャンパスオカルト研究部部室。
その少女は、オカ研のエース的存在だったんだ。
川д川「……でね、思うんですよ。人間は物体的存在としては不要な、精神性を持っていて……」
(・∀ ・)「つまりはその精神ってのが死後にゃあ魂って形に帰依するってか」
川д川「そうです。霊は、まず何かしらの感情から形を成すもの……」
(・∀ ・)「俺らにある心ってのが死後、新しい形に生まれ変わるわけか」
川д川「いえ、むしろ……逆なのでは」
(・∀ ・)「?」
川д川「死後にあらわれる魂という物こそ……本当の心の形なのではないか、って」
(・∀ ・)「……ふぅん」
- 200 名前:名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 05:26:25 ID:CHtCQTLMO
- (・∀ ・)「やっぱ面白いな、お前」
川;д川「えっ……、あ、すいません勝手にべらべらと!私、そういうつもりで……」
(・∀ ・)「や、皮肉じゃねーよwまんまの意味さ」
(・∀ ・)「お前と話してんの、楽しいわ」
川*д川「えっ……」
先輩部員「確かに、貞子ちゃんワールドは見てて飽きないよなw」
大概のオカルト研究部ってのはね、内藤くん。大抵が不気味がって楽しむだけなのさ。
でもこの貞子って子は違った。まるで一端の研究者かのように、オカルトに対し真摯に向き合っていた。
川д川「……あの」
(・∀ ・)「ん?」
川д川「斎藤先輩は……」
(・∀ ・)「ん?」
川д川
川;д川「……す、すいません。なんでもないです……」
(・∀ ・)「なんだよーw愛の告白ならいつでも受けんぞ?w」
川;*д川「え、あ、いや…その……」
先輩部員「調子のんなきんたまwww」
(・∀ ・)「きんたま言うなwww」
- 201 名前:名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 05:32:09 ID:CHtCQTLMO
- (・∀ ・)「……っし。じゃあ、そろそろ帰るとすっかー」
川д川「……あ、はい」
(・∀ ・)「2時間後にゃもうバイトかー。だりぃなー早く帰んねーと」
川д川「あ、お、お疲れさまです」
(・∀ ・)「おぉ、貞子!」
(・∀ ・)「また明日な!」
川д川「っ……!」
川*д川「は、はい!」
ここまで話せばわかるかな。
そうさ、彼女がこんなにオカルトに熱心なのは、
別にオカルト研究者目指してるからとか、そういうわけじゃないんだ。
好きな人と話す口実になるから。
好きな人に興味を持ってもらえるから。
井戸本貞子は、同じくオカ研の先輩、斎藤またんきに恋をしてたんだよ。
- 203 名前:名も無きAAのようです:2011/11/22(火) 09:48:28 ID:PIBs/JiEO
( ´∀`)「ふん、滑稽だね。好きな人の為にオカルトに被れる、だなんてね」
( ^ω^)「……そんなバカにした言い方」
( ´∀`)「いや、馬鹿なやつだろとは言わないさ。
好きな子のために懸命になる事が、『馬鹿だ』とは言わない。
ただ、もう少しマシな方法があったんじゃないかと思うんだよ、僕はね」
( ^ω^)「……まぁ不器用だとは、思いますが」
( ´∀`)「恋ってそんなものなんだろうね?
大抵は気持ちばかりが先行し、歪が歪のままに進められるってもんだ。
軌道修正が効けばいいのだが……これがまた難しい」
( ^ω^)
皮肉か。もしくはわざとか。
モナーさんの言葉のせいで、目の裏にはひっきりなしにあの思い出が甦る。
( ´∀`)「……あぁ、君に対する皮肉ではないよ。津村さんは、また別」
( ^ω^)
( ^ω^)「よく僕の考えてる事がわかりましたね」
( ´∀`)「わかりやすいよ。いきなり枝豆むしる手がピタッと止まるんだもん」
- 205 名前:名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 10:38:43 ID:jMbpd4wQO
- ( ´∀`)「まぁ君のとは、ケースが違うじゃない」
( ^ω^)「ただの惚れた腫れたならば、あまり大きな違いはないように思いますが」
( ´∀`)「言ったろ。これはただの恋の話。君のは愛だ。誇っていい」
( ´∀`)「恋は一方通行、愛は相互反応だよ」
( ^ω^)「……なるほど」
( ´∀`)「……まあ、最近では……」
( ´∀`)「自分の弱さを他人に押しつけるだけの行為。それをさして恋だの愛だのと言っちゃうらしいけどね」
「……馬鹿馬鹿しいモナ」
ま、とにかく
僕はそんな彼女に、イキガミを渡しにいったのさ。
(・∀ ・)「今日もシメーにするか。またな、貞子!」
川д川「あ、はい。お疲れさまでした!」
女友「……ほんっっと、良い感じだよねー貞ちゃんと斎藤先輩!」
川д川「そ……そうかな?確かに先輩、私の話をちゃんと聞いてくれるけど……でも、それだけで」
女友「それがムズいんだっつーの!アンタと小一時間会話を続けられるって、それこそマジモノの幽霊さんでもなきゃムリだよ?w」
川;д川「え……ちょ、ひどくない?そんな風に思ってたの?」
- 206 名前:名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 10:44:40 ID:jMbpd4wQO
- 女友「冗談ww……で」
女友「いつになったら告白すんの?」
川;*д川「こっ……こくっ!!?」
女友「告白」
川;*д川「な、なな……ないよ!そんなの!わ、私みたいなのがいったら迷惑だろうし……それに……!」
女友「あ、好きだって事は否定しないんだねw」
川;*д川「……うう」
女友「いいんだってアンタで。ホントに純粋だしそれなりにカワイイし」
女友「つーか絶対斎藤先輩もその気あるって!!アンタが勇気出しゃ、もうイチコロだよ!」
川;*д川「え……ええ……?」
- 207 名前:名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 10:49:45 ID:jMbpd4wQO
- 女友「ま、ちゃんと考えとけよそのへんwじゃねー」
川д川「あ、うん、また……」
川д川「……」
川д川(告白……かぁ)
川д川(そりゃあ……斎藤先輩とお付き合い出来たら……なんて)
川д川(考えはするけど……)
いるんだよねぇ。自分に自身が無い子。無さすぎる子。
他人の良いとこを見つけては劣等感に陥っちゃったりする子。
誇れるモノのない子。
それが、貞子。
川д川「……帰ろう」
- 208 名前:名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 11:00:07 ID:jMbpd4wQO
川д川「……」
川д川(あ……)
帰り道、貞子は必ず少し大きな公園の前を通りかかる。
小学生と温和そうなおばあさん、それと犬。
なんとも微笑ましい空間の、空きスペース。
彼女はその空きスペースであるブランコをちらりと見た。
それがまるで、「おいでおいで」と言っているかのように揺れ動いていたから。
川д川「……」
ぎしり……。
特に用も無いが、ちょこりと座ってみた。
錆びたそれは心地よい不協和音を鳴らしながら、揺れる。
しかしそれにもすぐ飽いて、しかしやる事もないので、携帯をいじりながらボーっとしていた。
川д川「……なにやってんだろ、私」
- 210 名前:名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 11:08:29 ID:jMbpd4wQO
- 今の日常は、苦痛であると言えば苦痛だ。
普通の女の子たる私が、ただ、あの人を好きになっただけ。
そんな事だけで……やってしまった、曲がりに曲がった努力。
そして今は
「オカルト大好き電波ちゃん」
そんな名前で呼ばれる。
ふざけるなと言いたい。
自分が異端だと言われ喜ぶのは馬鹿だけだ。
もしくは、それでしか個性を発揮出来ない無個性人間。
川д川(……まぁ無個性って、モロに私の事だけど……)
でも。
もしそれでも。
斎藤先輩と結ばれたなら……報われるだろう。
大好きな先輩。
彼と結ばれたなら。
いや、でも。
しかし。
川д川(……無限ループ)
川д川(……もう、死んじゃいたいなぁ)
自分を優しく受け止めているブランコは、やはり冷たかった。
- 211 名前:名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 11:16:30 ID:jMbpd4wQO
「……井戸本貞子さん、ですモナ?」
川д川「えっ」
そうして、気付くのが遅れた。
( ´∀`)
すぐ隣には、フォーマルなスーツ姿の知らない男性が立っていた。
川;д川「あの、え……」
不安がよぎる。
このご時世に見知らぬ男性から声をかけられるとなると、どうも犯罪の臭いが絡む気がしてならない。
( ´∀`)「……あぁ、不安がらないで下さい」
( ´∀`)「私は尾前モナーと申します」
( ´∀`)「あなたに、死亡予告証を届けにきましたモナ」
川д川
川д川「えっ」
- 212 名前:名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 11:30:46 ID:jMbpd4wQO
- 川д川
川;д川「……」
嫌な汗が吹き出る。
不安が、やけに大きくぶり返してくる。
でも、目の前の白い紙には。
間違いなく、私が写っていて。
川;д川「……や、やだ……」
何が嫌だ、なのか。
意味のない言葉だけど、出さないわけには行かなかった。
先ほど死にたいと言ったばかりなのに、何故。
何故私はこうも、生きていたい。
( ´∀`)「……まぁ私も大変遺憾だとは思いますが」
( ´∀`)「仕事柄、あなたにこれを渡さなきゃいけない」
川;д川「あ……」
( ´∀`)「さぁ、受け取って下さいモナ」
川;д川
そうして私は、震える手でそれを受け取った。
受け入れた。
- 214 名前:名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 16:56:33 ID:jMbpd4wQO
( ´∀`)「……その時の彼女の可哀想な姿と言ったらないな。僕は今でもくっきり思い出す」
( ^ω^)
( ´∀`)「どうしてだろうねぇ。人生ある程度幸せで円滑に進んでるやつより、こういった負け組……というのは酷いかな?そんな連中のが」
( ´∀`)「死を言い渡された時には、色濃い……未練たらたらな顔をする」
( ^ω^)「まだ幸せになってない、自分にはまだまだ幸せになる権利がある……とか考えてるんでしょうね」
( ´∀`)「アホらしいね。幸せほど不平等な概念はないってのに」
――――――
母「……そう。まさか、アンタがね」
川д川「……うん」
母「どうする?せっかく最後の一日なんだから、誰かと何かしてきたりはしないの?」
川д川「……」
川д川「いまちょっと色々、考えてる」
母「そうかい。じゃあ、好きにしなさいね。私も父ちゃんも、何も言わないわ」
川д川「……ありがとう、母さん。今までいっぱい迷惑かけたね」
母「……ふふ、いいのよ。じゃあこれだけお願いしていい?」
川д川「?」
母「久々に、抱きしめさせておくれよ」
川д川「……うん」
- 215 名前:名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 17:01:40 ID:jMbpd4wQO
ぎゅっ……、と。
時間がスローになる感覚。
川д川
母さんは、いつの間にかホントに小さくなっていた。
回ってくる腕も、それを実感さする。
母「……ほんと、成長しちゃって」
川д川「うん」
母「胸だけはもう少し成長しても良かったんじゃない?(笑)」
川д川「……うるさいなw」
母「ふふ……」
川д川
母「……なんで、アンタが…………」
川д川
涙が出そうになった。
だからもうその日はすぐ部屋にこもった。
私が死ぬのは、明日のお昼の2時。
まだまだ時間は有り余ってる。
- 218 名前:名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 19:30:49 ID:c5DAeaXcO
- いつもの布団に寝転ぶけれど、違和感は取れない。
川д川
脳裏に残るのは、やっぱり先輩の姿。
川д川
川д川(……いま、告白したら)
彼はどう思うだろう。少しは哀れんでくれるのか。
実は好きだったら……なんて事があったりしたら。
あぁ。
川д川「……なんでもっと早く伝えとかなかったんだろ……私」
後悔したって遅い。
川д川「あぁ」
けど。
「……がんばろう」
行動は今からでも遅くはない。
どうしても、伝えたい。
川д川(……明日、絶対に言うんだ)
無造作に、携帯電話を開く。
- 219 名前:名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 19:34:08 ID:c5DAeaXcO
- 「俺は斎藤またんきって言います!よろしく!」
斎藤先輩と出会ったのは、とあるゼミ。
「貞子て珍しー名前wあ、呼び捨てでいいかな?」
「あ、俺、オカルト研究部に入ってるんだ。貞子もどう?」
「興味ない、かな?」
特に心霊なんかに興味はなかったけれど。
あなたの楽しそうな顔を見て。
楽しそうな顔を、もっとみたくて。
「あ、……はい。ちょっとやってみたい、です……」
「だよな、キモいよな……って、えぇ!?マジで!?」
川д川(……)
あの時と同じ。
勇気。
勇気を出せ、自分。
- 220 名前:名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 19:42:53 ID:c5DAeaXcO
ぷるるる、がちゃり。
早くて心の準備も間に合わないまま
「もしもし、あれ、貞子?」
繋がった。
川д川「……も、もしもし、先輩ですか?」
「はいはい先輩ですとも。珍しーな、お前が電話って」
「どした?大事な用?」
川д川「はい、……あの、先輩って明日は学校に何時に来ますか?」
「何時って……そうだな、3限あるし、昼にはいくけど」
川д川「……」
よし。
いけ。いまだ。
川д川「あの、あ、明日、ですね」
川д川「……お昼の1時半に、部室に来て欲しいんです」
――――――
- 221 名前:名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 20:22:31 ID:c5DAeaXcO
- ( ´∀`)「1番。告白は成功し、二人は結ばれ貞子は幸せな最後を過ごした」
( ^ω^)
( ´∀`)「2番。告白は失敗。無念だがスッキリした終わりを迎えた」
( ´∀`)「3番。イキガミを家に忘れた彼女は自分の死を証明出来ず、最後まで電波ちゃん扱いされた」
( ´∀`)「どーれだ」
( ^ω^)「4番」
( ´∀`)「正解。よくわかったね」
( ^ω^)「モナーさんがそういう時は大抵、答えが中にないですもん」
( ´∀`)「はは。内藤君、ヘタすりゃ僕よりひねくれてるよね」
( ^ω^)「……で、4番目の答えは?」
( ´∀`)「死んだよ。2人とも」
( ^ω^)
- 222 名前:名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 20:24:13 ID:c5DAeaXcO
- ( ´∀`)「……時計がね」
( ^ω^)
( ´∀`)「部室内の時計がね、狂ってたんだ」
( ´∀`)「彼女はそれで時間を見間違え、告白の最中に死んだよ」
( ^ω^)「……それで、なんで斎藤まで死んだんですか?」
( ´∀`)「ふふ」
- 223 名前:名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 20:26:55 ID:c5DAeaXcO
( ´∀`)「呼び出すまではうまくいったのさ、貞子は」
( ´∀`)「でも……」
――――――
「呼び出してごめんなさい、先輩」
「ああ、いいよ。ちょうど授業、つまんねーと思ってたしww」
「あ、いや……すいません」
「いいってだからwで、なに?用事って」
「まさかマジで俺に告白しちゃうわけ?w」
「っ……」
――――――
( ´∀`)「たぶん、だけど。貞子はそれをこう捉えたんではないかな。」
( ´∀`)「『おいおい、お前が?冗談だろ?』ってね」
( ´∀`)「そこで……折れちゃったんだろうね。
素直に告白、出来たら良かったんだけどね」
「傷つく事を恐れた彼女の心が土壇場で、路線変更した」
- 224 名前:名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 21:16:29 ID:c5DAeaXcO
- 「……やっぱりかぁ」
「?貞子?」
「私なんかが舞い上がって、馬鹿みたい。最後の頼みなら……って思ったけど」
「こんな事で報われようなんて、それがおかしかったんだよね」
「……?おい、お前なんかおかしいぞ貞子……」
「サヨナラ、先輩。私は、今から死にます」
「……はっ!?」
「それでも心はずっと、あなたのそばにいますからね」
「おい……貞子?は?死ぬ?なんで?」
「……実は私」
「いきg」
ばたり。
「……」
「貞子?」
「おい!貞子!貞子っ……!!?」
「!!!!!? ……脈がっ……嘘だろ……!!?」
「…………う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
- 225 名前:名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 21:19:54 ID:c5DAeaXcO
斎藤だって、違うのだ。
少なくとも『オカルト』は、今日の晩御飯よりは気になっていたし
『貞子』についても、帰りによる予定だったパチンコ屋よりは大切に思っていた。
どちらも心を占めるほどに強かったわけじゃないが
どうでもいいわけじゃない。
その、『貞子』が。
人間が、目の前で好意を伝えていきなり死んだ。
『オカルト』チックに。
「あ――――――」
『あなたが好き――――――』
『私の心はずっとそばに――――――』
『幽霊とは、心の真の形――――――』
それが、どうまとまったのだろう。
イキガミと知らぬオカルトかぶれは、こう考えたんだ。
「――――――今から俺は、呪い殺されるんじゃね?」
――――――
( ´∀`)「……はっ、馬鹿みたい」
- 226 名前:名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 21:21:57 ID:c5DAeaXcO
- ( ´∀`)「斎藤は恐怖から発狂。……後にその部室で自殺」
( ´∀`)「……どうだい、内藤くん」
( ´∀`)「滑稽だろ」
( ^ω^)
( ^ω^)「……」
( ´∀`)「やっぱ無理かい。他人の死を笑うのは」
( ^ω^)「……少し気が引けます」
( ´∀`)「でもさ、馬鹿らしくならない?」
( ´∀`)「最後の最後に頑張ろうとした人間が、こんな結末を迎えるのは」
( ^ω^)「……そう……ですけど」
- 227 名前:名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 21:22:37 ID:c5DAeaXcO
( ´∀`)「僕は笑うよ。でも笑ってるのはバカにしてるからじゃない」
( ´∀`)「こんな悲惨な死に方、せめて笑って送ってやらなきゃ悲しすぎるだろう」
( ^ω^)
( ´∀`)「悔やむくらいなら前向けよ。僕らは一般人じゃない」
( ´∀`)「目に写る死の数々を、ただご冥福をお祈りするだけで過ごしていっちゃ……」
「僕らはいつか、人として終わってしまう気がするんだよ、内藤くん」
- 228 名前:名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 21:31:59 ID:c5DAeaXcO
久々に誰かとお酒を飲んだ僕は、そのまま帰路に着く事にした。
結構飲んだつもりだったが、モナーさんはぴんぴんしていた。化物みたいだ。
( ^ω^)
( ^ω^)(前を向き続けないと、死を迎える僕らはいつか壊れちまう……ってか)
どんなに死を見送っても、僕らはそれをずっと見据えなきゃいけない。
そこを、変わってはいけないのだ。
そうでなければ僕らは、永遠に気の狂わない犯罪者。
まるでただの無差別殺人犯だ。
( ^ω^)(……)
毎日毎日それを見送り続けた結果が、モナーさんのあの背中なんだろうか。
僕はいつまでたっても、あの背中に追い付ける気がしない。
- 229 名前:名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 21:48:04 ID:c5DAeaXcO
- 人間は愚かだ。
この仕事を始めて、ずっと思い続けてる事。
( ^ω^)(……その貞子ちゃんだって、最後で諦めなきゃあ、もう少しまともな最後)
( ^ω^)(それこそ1番や2番の答えになってたかもしれないのに)
何から何まで効率悪く、何から何まで非合理的。
ファミコンのような稚拙さを内蔵した生物。
( ^ω^)(……でも)
でも。
不思議な事に「どうせ死ぬんだから」と何もしなかった人間は、一人としていないんだ。
……だから僕は、人間を嫌いになれないんだろうな。
- 230 名前:名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 21:54:36 ID:c5DAeaXcO
- 死亡予告証――――――――――――――
『川д川』
指名:井戸本貞子
生年月日:12月2日
本籍:○○県幽霊町リング区0―01
住所:○○県よつば町ホテル呪怨3―33
死亡予定時刻:「PM2:00」
あなたの御冥福を心からお祈りします。
発行日付:○月○日
担当人:尾前モナー
―――――――――――――――――――
第5話:「無差別殺神《ゴーストホロコースト》」
終了。
戻る 次へ