('A`)は異世界で魔法少女に出会うようです

31 名前: ◆r6WlJKDcuM 投稿日:2011/07/29(金) 22:58:20.91 ID:H1eJ8KFL0
第二話「魔法学校」

道中何度か箒から落ちそうになるというハプニングがあったが、それ以外はたいしたこともなくツンたちが通う魔法学校に到着した。
学校というから、そんなに大きなものを予想していなかったのだが、ドクオの目の前にあるのは東京ドーム一個分はあるんじゃないかというくらいに大きい。

('A`)「でかいな。どんだけ金かけてんだよ」

ξ゚听)ξ「私は先に校長先生のところに言って事情を説明してくるから、ドクオは渡辺とその辺ぶらぶらしてなさい」

从'ー'从「わかったよー。ドクオ君、学校案内してあげるね」

('A`)「おう、って引っ張るな!自分で歩くから!」

ツンに見送られながら、ドクオと渡辺は校舎内に入っていく。
外観からも予想はしていたが、やはり校舎内はかなり広い。
何の目的で使うかもわからないような名前の教室があったり、学食のようなところもある。
目につくところから渡辺が説明していくが、はっきり言ってドクオはあまり聞いていなかった。
それよりも何よりも気になるのは、校舎内に残っている生徒たちのドクオを見る目だった。

('A`)「やっぱ目立つよな、これ」

周囲の生徒たちは皆ツンや渡辺と同じように三角帽子にマントを羽織っており、いかにも魔法使いといった出で立ちだ。
対してドクオはよれよれでぼろぼろのスーツ。これでは目立たないわけがなかった。

从'ー'从「ドクオ君、どうしたの?」

('A`)「あ、いや、なんか、俺目立ってるなって」

33 名前: ◆r6WlJKDcuM 投稿日:2011/07/29(金) 23:03:32.89 ID:H1eJ8KFL0
从'ー'从「そういえば、ドクオ君の服ってこっちじゃ見たことないもんね」

('A`)「だよなぁ。どっかで服売ってないのか?」

从'ー'从「街に出れば売ってるよー」

('A`)「街か・・・・・・」

そういえばここは自分のいた世界とは違うのだ。
おそらく、ドクオが持っているお金で物は買えないだろう。
これでは服を新調することもできない。

从'ー'从「校長先生とお話したら街も案内してあげるねー」

('A`)「えっと、渡辺。その、俺お金持ってないんだけど」

从'ー'从「そうなの?でもきっと何とかなるよー」

何とかならないだろうjk。
と、ドクオがため息を吐くと、不意に声をかけられた。

( ^ω^)ノ「おいすー」

从'ー'从「あ、ブーン君こんにちはー」

( ^ω^)「こんにちはだお。今日も校長先生に借り出されたってきいたけど、意外に早く戻ってきたんだおね」

从'ー'从「今ツンちゃんが校長先生とお話してるんだー」

35 名前: ◆r6WlJKDcuM 投稿日:2011/07/29(金) 23:07:53.54 ID:H1eJ8KFL0
( ^ω^)「そうかお。ところで、隣の人は誰だお?見慣れない服を着てるお」

从'ー'从「紹介するねー。ドクオ君だよ」

('A`)「あ、えと、ドクオです」

( ^ω^)「僕は内藤ホライゾンだお。親しみを込めてブーンって呼んで欲しいお」

('A`)「はあ」

从'ー'从「えっとね、ドクオ君は違う世界から来たんだよ」

( ^ω^)「そうだったのかお!遠いところからようこそおいでませだお!」

いいのだろうか。こう、アニメとかゲームでは自分が異世界から来たことは隠しておけと念を押されたりするのに、
こんなに簡単にばらしちゃって問題ないのだろうか。

( ^ω^)「それで今は何をしてるんだお?」

从'ー'从「ドクオ君に学校を案内してるの。よかったらブーン君も一緒に行こうよー」

( ^ω^)「おお、ちょうど暇だったから喜んでご一緒させてもらうお!よろしくだおドクオ!」

('A`)「あ、ああ。よろしく」

なんともにぎやかなやつが出てきたもんだ。
ドクオはなんとなく疲れそうだな、と思った。
その予想が正しかったことをドクオは後ほど痛感する。

39 名前: ◆r6WlJKDcuM 投稿日:2011/07/29(金) 23:13:14.57 ID:H1eJ8KFL0
――――――

ξ゚听)ξ「というわけです」

ツンはことのあらましを校長に話し終え、言葉を待つ。
森の異変と合わせて、召喚陣もなく現れた異世界からの来訪者。
そして、本来であればあの森には魔物が生息していないはずなのに、現れた魔物。

(´・ω・`)「なるほどね。これは一大事だ」

ξ゚听)ξ「これは私達だけでどうにかできる問題じゃないですよ」

(´・ω・`)「僕もそう思う。一応政府にはそういう報告を上げておくよ」

ξ゚听)ξ「それで、ドクオはどうするんですか?」

(´・ω・`)「召喚陣もなしに召喚された人間か・・・・・・。何かくさいな」

ξ゚听)ξ「どういうことですか?」

(´・ω・`)「君も知っているとは思うけど、異世界からこの世界にやってくるには召喚陣を通らなくてはならない。
      そして、召喚されたものは召喚獣として術者に使役される。これが大前提だ」

ξ゚听)ξ「まあ、普通はそうですよね」

(´・ω・`)「それに合わせるかのように起こったマナの減少。君がとった記録によれば、マナの大樹周辺ではマナがほとんどない状態だ」

ξ゚听)ξ「誰かが、裏で何かをしているということですか?」

42 名前: ◆r6WlJKDcuM 投稿日:2011/07/29(金) 23:18:24.84 ID:H1eJ8KFL0
(´・ω・`)「その可能性が高いよね。しかも、今マナの大樹はマナを生み出していないみたいだ」

ξ゚听)ξ「このままじゃ、世界中のマナがなくなるっていうことですか?」

(´・ω・`)「うん。一度詳しく調べたほうがいいだろうね。それとこの件はくれぐれも内密にね」

ξ゚听)ξ「わかりました。それではドクオをつれてきますね」

話が終わると、ツンは会釈をして校長室を出る。
誰かが裏で手を引いているだなんて考えたくなかった。
マナがなくなってしまえば当然魔法も使えなくなる。
魔法は人々の生活には必要不可欠なものなのだ。それがなくなってしまえば、世界中で混乱が生じるだろう。

ξ゚听)ξ「絶対に止めなきゃ・・・・・・」

――――――

校長室に入ると、やけにしょぼくれた顔の若い男性が待っていた。

(´・ω・`)「やあ。ようこそバーボンハウスへ。このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いてほしい」

45 名前: ◆r6WlJKDcuM 投稿日:2011/07/29(金) 23:21:02.95 ID:H1eJ8KFL0
('A`)「え・・・・・・」

ξ゚听)ξ「校長」

(´・ω・`)「おっと、すまない。まあとりあえず、話は聞いているよドクオ君。初めまして、僕が魔法学校の校長を勤めるショボンだ。よろしくね」

('A`)「あ、どうも。ドクオです」

(*´・ω・`)「それにしてもいい体してるね君。よかったら僕と」

ξ#゚听)ξ「死ね!氏ねじゃなくて死ね!」

鉄建制裁。

(;'A`)「おい、ちょっとやりすぎじゃないかこれ」

ドクオの目の前にはもはや誰だったのかわからないほどぼこぼこになったショボンが倒れていた。
生きているのかすら危ういだろう。
ドクオはツンを絶対に怒らせないようにしようと固く誓った。

ξ゚听)ξ「このあほ校長はこれぐらいじゃ死なないから大丈夫よ」

(#)ω・`)「うん、まあ結構きいたけどね」

ξ゚听)ξ「ね」

48 名前: ◆r6WlJKDcuM 投稿日:2011/07/29(金) 23:24:49.31 ID:H1eJ8KFL0
(´・ω・`)「さて、冗談はこれくらいにしてようか。ところでドクオ君、君は異世界からこちらにやってきたようだが」

('A`)「あ、はい」

(´・ω・`)「詳細を教えてくれないかな?」

('A`)「詳細といわれてもな・・・・・・」

正直な話、ドクオはどうやってこの世界に来たのかを覚えていない。
ビルの上から跳んで、気付けばこの世界で倒れていたのだ。
跳んで地面に着く瞬間に気を失ったのかはわからないが、その間の記憶は一切ない。
とりあえず、ドクオは覚えている限りのことを話すことにした。
もちろんビルの上から跳ぶに至った理由については語らなかったが。

(´・ω・`)「うーん、難しいね」

('A`)「・・・・・・すいません、お役に立てなくて」

(´・ω・`)「いや、気にしないでほしい。君はいわば被害者だからね」

ξ゚听)ξ「それで校長、このあとドクオはどうするんですか?」


49 名前: ◆r6WlJKDcuM 投稿日:2011/07/29(金) 23:25:35.58 ID:H1eJ8KFL0
(´・ω・`)「ドクオ君の衣食住に関しては僕が面倒を見よう。学園内の寮に空き部屋がいくつかあるからね、そこに住むといい」

ショボンは引き出しから一本の鍵を取り出すと、ドクオの手に握らせた。
心なしか菊門がきゅっと閉まったのは気のせいだろうか。

(´・ω・`)「必ず君を元の世界に返して見せる。だから、それまでは不便だろうが、待っていて欲しい」

('A`)「・・・・・・ありがとうございます」

元の世界に返る・・・・・・か。
あまり考えたくない話だが、いつかはそうなってしまうのだろう。
自分はこの世界の住人ではなく、何かの手違いで紛れ込んだイレギュラーなのだ。
間違いはいずれ正されなくてはならない。
ならば、そうなる前に、自分は正しい選択をしなければいけない。
ドクオはそんなことを考えながら校長室を後にした。

――――――

51 名前: ◆r6WlJKDcuM[sage] 投稿日:2011/07/29(金) 23:27:54.18 ID:H1eJ8KFL0
校長と話が終わった後、ドクオは渡辺とブーンに連れられ街を散策したのだが、
二人のお勧めの店が多くて全てを回りきる頃にはドクオの体力は0になっていた。
ドクオはあまり体力があるほうではないのだ。
部屋にはすでに家具がそろっており、何も買わずとも生活は出来そうだった。
とはいえ、さすがぼろぼろのにスーツでは目立ってしまうため、いくつかの服などは購入した。
ちなみにお金は校長が自腹を切って出してくれたそうだ。
荷物を適当に放り投げ、ドクオはベッドへと倒れこむ。

('A`)「・・・・・・なんで俺生きてんだろうな」

本来なら、ビルから飛び降りた時点でドクオの命は尽きていたはず。
地面にたたき付けられ、内臓やら血液やらをぶちまけて死んでいた。
なのに、どういうわけか自分はわけのわからぬままに異世界へと飛ばされ、のうのうと生きている。
許されるはずがない。神が許そうとも、ドクオは自分自身を許せなかった。
気付くとドクオは立ち上がっていた。
部屋を出て、階段を上っていく。外へ出る扉を開ければ、そこには闇が広がっていた。

('A`)「いい夜だな」

街を散策する際に購入した煙草を咥え、火をつける。ハイライトよりは不味いが、贅沢は言ってられない。
どのみち、自分は、これから、今度こそ間違いなく死ぬのだ。
ゆっくりと屋上のふちへと歩いていく。幸い落下防止用のフェンスはない。
いける。必要なのは死ぬための勇気だけだ。
煙草を根元まで堪能し、ドクオは煙草を踏み消した。
ためらいはない。
ドクオは足の裏に力を込めた。

从'ー'从「あれれー?ドクオ君何やってるのー?」

いきなり声をかけられ、ドクオは振り返るとそこには寝巻き姿の渡辺がぼけーっと立っていた。

52 名前: ◆r6WlJKDcuM 投稿日:2011/07/29(金) 23:29:46.99 ID:H1eJ8KFL0
('A`)「渡辺・・・・・・お前こそ何やってるんだよ」

从'ー'从「私ー?私はね、星を見に来たんだよー」

('A`)「星って・・・・・・」

迂闊だった。よく考えればここは魔法学校の寮なのだ。
渡辺や、他の生徒が屋上に来てもなんらおかしくない。

从'ー'从「ドクオ君もご一緒にどうかな?私、こう見えても星に詳しいんだよー」

渡辺の誘いに、ドクオはなんと答えればいいのか分からなかった。
自分は、今死のうとしたのだ。
自分の生を自ら終わらせようとしたのである。
そんな自分が、渡辺と一緒に星を眺めながら語らう資格などあるはずがない。

54 名前: ◆r6WlJKDcuM 投稿日:2011/07/29(金) 23:30:25.85 ID:H1eJ8KFL0
('A`)「悪い。俺、ちょっと疲れてるんだ」

从'ー'从「そうなんだー。それじゃ早く休んだほうがいいよー」

('A`)「ああ。そうさせてもらうわ」

从'ー'从「ドクオ君おやすみー」

ドクオは何も言わずに屋上を後にする。
なぜか少しだけ罪悪感を感じた。
それはおそらく、渡辺に対する後ろめたさ。
そして、嫉妬だ。
あの少女と行動を共にして、自分がどれだけ汚い人間に成り果てていたのかを知ってしまったのだ。
ドクオは部屋に戻ると、ベッドに倒れこみ、そのまま気絶するように眠りに着いた。
その夜、ドクオは夢を見た。
たくさんの人間に罵倒され、蔑まされ、暴力を振るわれていく。
それでもドクオは抵抗をやめなかった。必死で生きていた。
だが、最後に行き着いたのは闇。死ぬことも生きることも出来ない奈落の底。
そこでドクオは何をしたのかは、覚えていない。

第二話「魔法学校」終


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