( ^ω^)恐竜少年と皆既日食のようです

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 20:56:49.77 ID:P9cExXAO0






僕は恐竜だ。

おーきな体で、おーきな口、そしてなーがい足。



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 20:58:06.45 ID:P9cExXAO0

恐竜は、おーきな体で、おーきな口、そしてなーがい足。
博物館で見る恐竜は、映画で見る恐竜は、みーんなそうだ。
おーきな体で、おーきな口、そしてなーがい足。

とらえられた人間はおーきな口でぱっくりとね。
ぱっくりとね。ぱーっくりと。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 20:59:40.60 ID:P9cExXAO0


けど、
博物館でふと思う。
あーんな大きなお頭で、あーんな大きなお頭で

あーんなに速く、走れるのだろーか。


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:00:54.75 ID:P9cExXAO0




僕は恐竜だ。




10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:01:36.07 ID:P9cExXAO0


おーきな体なのに


弱くて、


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:03:04.59 ID:P9cExXAO0


おーきな口なのに


小食で、



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:04:22.75 ID:P9cExXAO0



なーがい足なのに



遅い。



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:05:17.71 ID:P9cExXAO0




でも、
みんなは畏怖の念で僕をこう呼ぶんだ。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:06:14.73 ID:P9cExXAO0



「恐竜少年」ってね。



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:07:11.73 ID:P9cExXAO0



あーあ。
なんて面白いじょーだん!




20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:08:38.53 ID:P9cExXAO0



( ^ω^)恐竜少年と皆既日食のようです

一話
7月13日、恐竜少年と徘徊少女




21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:09:54.29 ID:P9cExXAO0




VIP高校1年3組



/ ,' 3「夏休みまであと少しですが、気を緩めることのないよう気を引き締めていきましょう」


SHR。
何ら変りのない担任の声が耳に入る。
英語の先生が出張とか、だれだれはSHR後にちょっと来いとか、そんな変わりないことだ。

僕は、それを聞いているふりをして外を見ている。
今日は空が青い。
いつか絶対に空が落ちてくる。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:12:29.20 ID:P9cExXAO0


落ちてきたらどうなるんだろう。
世界が青に包まれて、
光が無くなって、そして。


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:13:22.47 ID:P9cExXAO0


がらっと。
僕の思考を邪魔する音が耳に入った。
音の方向を見ると、くるくると髪を巻いた1人の少女。
赤いリュックサックを背負った、徘徊少女だ。


ξ゚听)ξ「すみません、遅れました」

/ ,' 3「…またですか?」

ξ゚听)ξ「はい。猫を追いかけてました。黒猫です」

/ ,' 3「はぁ…。ですが、これ以上遅刻したら留年ですよ?」

ξ゚听)ξ「わーすごい」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:14:44.79 ID:P9cExXAO0


さも興味のないような素振りで自分の座席へ向かう。
彼女の席は僕の斜め後ろだ。


ξ゚听)ξ「…」


だが、何か今日は違う。
彼女はこっちに向かってきている。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:17:47.03 ID:P9cExXAO0

そして彼女は僕の机を両手で叩いた。
ばんっという音が静かな教室に響く。
談笑していた者たちも、こちらを見ている。
視線が痛い、というのはこういうことなのか。

数秒したあと、彼女はゆっくりと口を開いた。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:19:01.98 ID:P9cExXAO0


ξ゚听)ξ「…おはよう恐竜少年」

( ^ω^)「………おはようだお」


徘徊少女、と最後に言えば、彼女の眉がぴくりと動く。



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:20:11.31 ID:P9cExXAO0


徘徊少女…。
彼女のあだ名みたいなものだ。
いつもいつの間にかどこかへ行って、ふらりと帰ってくる。
そんな彼女の行動からついたあだ名だった。

彼女は怒ると思いきや、口の端を思い切り上げて



ξ゚ー゚)ξ「へぇ」




と一言だけ言って席についた。



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:21:20.42 ID:P9cExXAO0




6時間目、その時間に彼女はいなかった。
彼女の得意分野の生物だと言うのに、どこかへ徘徊してしまった。

生物の先生…モララー先生は、いつものことさと苦笑いして教科書を手に取った。
そして思い出したようにあ、と声をあげる。


モララー先生が教科書を机に置き、にこーっと笑った。


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:22:12.82 ID:P9cExXAO0

( ・∀・)「そういえば、22日は皆既日食の日ですね」

(,,゚Д゚)ノ「せんせー!カイキニッショクってなにー?」

( ・∀・)「んーとねー、お月様がお日様を食べちゃうことだよー?」

(,,゚Д゚)「小学生じゃねぇんだからそんなことでだまされるかよ!」


くすっとどこかの女子が噴出した。
どこかの男子もくつくつと笑っているのが聞こえる。
それがいつの間にか教室全体に広がり、大笑いに進化していた。


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:23:50.76 ID:P9cExXAO0

すみません風呂に行ってくるので、少しだけ保守していてくれたら嬉しいですorz
すみません本当orz

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:35:44.51 ID:P9cExXAO0
ただいま帰りました。
特急でした。
保守ありがとうございます。
投下していきます。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:37:40.89 ID:P9cExXAO0


( ・∀・)「じゃー、今日細胞やるの面倒だから皆既日食のことやろうか。内藤」

( ^ω^)「お…」


椅子を引いて立ち上がると、後ろの女子が小さく短く悲鳴をあげた。
おーきな体におーきな口になーがい足。
平均的な高校生よりも、ひとまわりもふたまわりもおーきな僕が、怖いのだろう。
(まあ、実際に身長は189くらいあるし、体重は81キロだ)


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:39:30.49 ID:P9cExXAO0


( ・∀・)「カイキニッショクってなーんだ」

( ^ω^)「先生の言うとおり…なんじゃないですかお?」

( ・∀・)「ほほう?」

( ^ω^)「お月様がお日様をもしゃもしゃ食べて世界が真っ暗くなる、それでいいじゃないんですかお?」


( ・∀・)「ほー?」


( ・∀・)「ほほーう。真っ暗に、なるのかい?」

( ^ω^)「はぁ…」

( ・∀・)「んーそっかぁ」


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:41:11.26 ID:P9cExXAO0


そう言って、モララー先生は黒板に向き合った。
白いチョークで書くは中を塗りつぶした白い丸。
そして、その丸に覆いかぶさるか否かのところでもう一つ丸。

( ・∀・)「えーっとね、皆既日食のときはね、こうなるんだよ」

( ・∀・)「これはね、ダイヤモンドリングって言って、太陽が隠れた後に月の周りに出る光のことなんだよ。聞いたことあるだろー?」

( ・∀・)「実際はね、もーっときれいなんだ。こんなもんじゃないよ」

( ・∀・)「真っ暗になると思われがちだけど、太陽の光はちょっとだけど漏れ出しているんだ」

( ・∀・)「まぁ、結構真っ暗だけどw」


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:42:50.28 ID:P9cExXAO0



へぇー。
そうなんだ、と素直に関心する。
他にも見るのには特殊なめがねが必要だとか、日食が起きる前の夕焼けはとても綺麗だとか、色々なことをモララー先生は言った。

多分、こういうくだらない話をするから、モララー先生は結構人気があるんだ。
僕みたいな恐竜少年でも、よく話してくれる。いい先生なんだ。

彼女も、唯一モララー先生には懐いてる。
だから生物の授業にはよく出る。
恋心…ではないらしい。多分だけど。


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:44:13.83 ID:P9cExXAO0


それにしても、今日は空が本当に青い。
気分が悪くなるほど、青い。

けど、少しだけスモッグ?みたいなのがかかっているのが気にかかる。
あの青い空から
ぬうっと大きい掃除機が出てきて、
スモッグを全部吸い取ったらどうなるんだろう。

ああ、でもそれじゃあ外にいる人間とか犬とか猫とかも全部吸い取られちゃうよな。
じゃあ、政府から
「今から掃除機出るんで家にいてください」
ってテレビで流したらいいんじゃないか?


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:45:55.05 ID:P9cExXAO0


いや、いいや。
現実的じゃない。


でも、




実際に起きたら


結構面白いんじゃないか?

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:47:35.72 ID:P9cExXAO0



キィィィィーン

           コォォォォーォォォン…
   カァァァァァン

                 コォォォオォオオオン………

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:49:03.24 ID:P9cExXAO0
( ・∀・)「ありゃりゃ。授業終わっちゃったねー。じゃあ委員長、号令」

「きりーっつ!きよーつけー!れー!」

( ・∀・)「気をつけて帰るんだよー」


はーい!と皆の元気のいい声が響く。
それから、ばたばたと忙しそうに片付け、部活に行くものは部活へ行き、そのまま帰るものは帰ってしまった。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:50:19.40 ID:P9cExXAO0


「今日の部活って何だっけー?」
「3年が部活終わったから新部長決めじゃね?」

         「あーマジ今日つかれたぁー部活めんどーい」
         「でもそっちの部活イケメンいるじゃーん」

  「あっつー。アイスたべたーい」
                                「宿題いつまでだっけー?」



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:51:01.87 ID:P9cExXAO0

生物の教科書をゆっくりとゆっくりと片付ける。
あえて、みんなと一緒の時間には帰らないようにゆっくりとゆっくりと。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:52:22.96 ID:P9cExXAO0

しぃんと静まった教室。

空は青色。

影は茜色。

遠く聞こえる声。

薄いせみの声。

いつもの風景。

いつもの時間。


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:54:50.39 ID:P9cExXAO0




日食という歪んだ存在ができるとは、到底考えられなかった。

僕にとって、日食は異端な存在だった。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:55:49.46 ID:P9cExXAO0



しぃんと五月蝿い教室。

空は赤色。

影は青色。

近く聞こえない声。

濃いせみの無言。

変わった風景。

変わった時間。



54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:57:33.90 ID:P9cExXAO0







そんな時間を作り出してしまうのではいか、と内心ヒヤヒヤしている僕がいて。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 21:58:35.58 ID:P9cExXAO0


( ^ω^)「…帰るかお」

ξ゚听)ξ「あ、ら」

( ^ω^)「…お」

ξ゚听)ξ「恐竜少年じゃないの」

( ^ω^)「徘徊少女さんじゃないですかお」

ξ゚听)ξ「言うわね」

( ^ω^)「そっちも」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:00:01.67 ID:P9cExXAO0

ξ゚听)ξ「何してたの」

( ^ω^)「何もしてないをしていましたお」

( ^ω^)「あと、日食のことについて」

ξ゚听)ξ「?」

( ^ω^)「こんな普通な毎日が続いてるのに、どうして異端な存在が出てくるんだろうって考えてましたお」


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:00:39.41 ID:P9cExXAO0








ξ゚听)ξ「変なの」

( ^ω^)「その変なのに話しかけるあなたも十分変なのですお」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:02:47.29 ID:P9cExXAO0




せみは
いつの間にかひぐらしに変わっていて。
僕たちの沈黙を
かなかなと
かなかなと

彩ってくれている。




61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:03:30.89 ID:P9cExXAO0


ξ゚听)ξ「恐竜少年」


最初に沈黙をやぶったのは向こうだった。
手を出して、といわれ言われるがままに手を出した。

ぴとり、と彼女の冷たい冷たい手のひらが僕の手のひらに重なる。


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:05:23.06 ID:P9cExXAO0



ξ゚听)ξ「大きい」



ξ゚听)ξ「けど」



ξ゚听)ξ「小さい」



( ^ω^)「どういう意味ですかお」



ξ゚听)ξ「『恐竜少年』って意味よ」



63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:06:22.86 ID:P9cExXAO0



そうして、彼女は手をのけた。
冷たい感触がまだ手のひらに残っている。


ξ゚听)ξ「ばいばい、恐竜少年。それ、お土産ね」


彼女は自分の席から赤いリュックサックを掴んでひらりひらと手を振って教室を出て行った。



65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:08:49.95 ID:P9cExXAO0



残ったのは教室に大きく影を残す僕と


熱い手のひらに残された向日葵の種だけだった。


さて、この向日葵はどうしようかな。

そうだ、屋上のモララー先生用プランターへ埋めておこう。
あの人なら喜びそうだ。


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:10:06.30 ID:P9cExXAO0










67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:11:06.51 ID:P9cExXAO0











ああ、

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:12:21.68 ID:P9cExXAO0






まただ。

また異端な存在が、出てきてしまった。


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:15:28.50 ID:P9cExXAO0


しぃんと静まった教室をしぃんと五月蝿い教室に

空は青色を空は赤色に

影は茜色を影は青色に

遠く聞こえる声を近く聞こえない声に

薄いせみの声を濃いせみの無言に

いつもの風景を変わった風景に

いつもの時間を変わった時間に



する異端が出てきてしまった。


71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:16:33.84 ID:P9cExXAO0

ああ、くそう馬鹿な日食め。



と僕は日食を強くうらんだ。
「恐竜少年」の名の通り、おーきくおーきく。



72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:17:48.95 ID:P9cExXAO0



7月13日、恐竜少年と徘徊少女 Fin

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