( ^ω^)恐竜少年と皆既日食のようです

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:07:20.72 ID:Z7IkeD1r0




綺麗に舞う青空が好きでした。

綺麗に漂う雲が好きでした。



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:08:16.72 ID:Z7IkeD1r0

いつからでしょうか。

その好きを押さえられずに

押さえられずに



自分のものに、できないのでしょうかと


空を仰いで



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:09:36.88 ID:Z7IkeD1r0



ぱーの手をぐーにして




握りつぶしてしまう勢いで




ぐっと拳を握り締めるのです。



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:11:17.67 ID:Z7IkeD1r0


そして



僕はいつの間にか


空に一番近いところで



ずっとずっと過ごしていたのです。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:13:51.95 ID:Z7IkeD1r0

僕は


ちょっとおかしいのでしょうか。


皆は



僕を「屋上少年」と呼びます。


まあ、妥当なところでしょうね。




なーんて




思ってしまう僕。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:15:56.60 ID:Z7IkeD1r0



あーあ。

そんなの



陳腐な戯曲なのにね。



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:18:00.23 ID:Z7IkeD1r0





( ^ω^)恐竜少年と皆既日食のようです

二話
7月14日、屋上少年と恐竜少年




14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:19:09.05 ID:Z7IkeD1r0

ああ、暑い。
暑いけど、やはり来てしまう。

それはなぜかって?


それは俺にもわからない。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:20:49.30 ID:Z7IkeD1r0


MDプレーヤーから流れる曲を永遠にループ。

カチン、再生。
―溢れ出るやさしい歌を聴いて


カチン、再生。
―傷ついたその分だけ


カチン、再生。
―ほら空色の猫がまちを出る


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:22:34.39 ID:Z7IkeD1r0



淡々と淡々と。


同じ曲を永遠ループ。

ループ。ループ。ループ。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:24:19.31 ID:Z7IkeD1r0


カチン、再生。
―人はまた 懲りもせずに祈る


カチン、再生。
―背中を押されていく


カチン、再生。
―so take it slow


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:26:21.49 ID:Z7IkeD1r0



ああ何て最高な気分!



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:27:50.02 ID:Z7IkeD1r0

ごろり、と熱を帯びたコンクリートの上に転がる。
熱い。
背中が焼ける。

熱すぎたので、少し移動する。
入り口の近くが影になっており、その影まで一直線に転がっていく。


影の部分は思った通りひんやりと冷たく、背中の熱さを冷やしてくれた。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:29:25.10 ID:Z7IkeD1r0


('A`)「ヴァー」


奇声をあげていると、ドアが開く音。
びっくりして起き上がれば、そこには大きな男子生徒が。


(;'A`)「ひっ!!」

(;^ω^)「お……」


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:31:48.91 ID:Z7IkeD1r0

なんだコイツは。
ガチムチってレベルじゃねーぞ!


('A`)「あ……ごめんなさい…タベナイデ」

( ^ω^)「………何で食べるんですかお…」

('A`)「だって……でかいし……でかい。うん、でかい」

(;^ω^)「そんな理由ですかお…」

(#'A`)「うるせー!いくら理不尽でもここでは俺が法律だ!!」


そうだ!
ここでは俺が法律なんだ!


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:33:20.39 ID:Z7IkeD1r0


誰も寄り付かない汚い屋上。
そんなとこに寄り付くのは、俺とモララー先生くらいだ。

俺が来るまで誰も来なかった屋上。

どうしてここに来はじめたなんか、覚えていない。


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:35:02.90 ID:Z7IkeD1r0

ただぼやーっとした気持ちで


そのぼやーっとした気持ちをどこかに放り投げたくて



ここに来たんだと思う。多分。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:36:31.79 ID:Z7IkeD1r0

(;^ω^)「お…」

('A`)「…お前、1年か?」

(;^ω^)「はいです……お」

('A`)「よし勝った。俺2年。名前は……。……屋上少年、だ」

(;^ω^)「お?」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:38:51.02 ID:Z7IkeD1r0

('A`)「誰が言い出したかなんて覚えてない。けど、こう言われてる」

('A`)「からこれでいい。屋上の王様みたいなかんじだろ?俺も気に入ってる」

('A`)「だけど、結構有名なんだぜw」

(;^ω^)「知りませんでしたお……」

('A`)「なん…………だと…………。まぁいいやお前は?」

( ^ω^)「僕は…、……恐竜少年ですお」

('A`)「聞いたこと無い。知らん。確かにでかい」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:40:45.32 ID:Z7IkeD1r0


( ^ω^)「そうですかお…。屋上少年さんは、どうしてここにいるんですかお?」




('A`)「屋上少年、だからだ」




答えになってないですよ、と恐竜少年は言う。
けどそれが答えなんだ、と俺は言う。


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:42:52.84 ID:Z7IkeD1r0


('A`)「で、恐竜少年、お前はどうしてここに来た?」

( ^ω^)「あ…向日葵の種を植えに来たんです」

('A`)「向日葵?どうしてまた」

( ^ω^)「もらったんですお。だから、モララー先生のプランターに植えようと…」

('A`)「へぇ。でも、あの人向日葵先週植えてたぞ」

(;^ω^)「えぇ!?マジですかお!?」

('A`)「マジ。だから埋めても意味無いと思う」


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:45:54.88 ID:Z7IkeD1r0

はぁ、と恐竜少年がため息をつく。


音量を大きくしているMDからは、まだ音楽が聞こえてくる。

しゃかしゃか

しゃかしゃか


ベースの音も、ドラムの音も、ボーカルの音も。

全てしゃかしゃかと聞こえる。


俺は、その音をスイッチを切って塞ぐ。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:47:44.07 ID:Z7IkeD1r0


                                        カ

                                             チ

                                                  ン
                                                       。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:49:29.14 ID:Z7IkeD1r0

( ^ω^)「はぁ……じゃあここに来た意味がないですお…」

('A`)「お前何気に毒吐いてんな。…じゃあ、聞くが」

('A`)「何で『恐竜少年』なんだ?」

( ^ω^)「…」

('A`)「言えないなら別にいい。ただ、俺と同じように『○○少年』とか呼ばれているのが気になったんだ」

( ^ω^)「ああ。そうですかお」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:51:44.32 ID:Z7IkeD1r0


そう言って、恐竜少年は俺の両肩に手を置いた。

そして、そのまま相手の体重によって倒され…ってあれ?


俺の目の前には、嫌というほど青い空と、その光を受けて暗くなっている、『恐竜少年』の顔。


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:52:40.16 ID:Z7IkeD1r0


(;'A`)「おま!何やってんだ!俺ソッチの気はねーよ!」

( ^ω^)「…」


ぎり、と肩に力が入る。
痛い。
ちょっと力入れられただけなのにこの痛さは半端ない。


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:54:16.78 ID:Z7IkeD1r0


じゃなくて

やばい。このままだったら確実に犯される。
やばい。俺、ソッチの気はマジないから。


(;'A`)「はなっ…!!」


ぐっと相手の腰らへんのシャツを掴む。


(;'A`)「っせいんとせいや!!」


思いっきり力を入れ、相手を後ろへ投げ飛ばす。


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:56:31.62 ID:Z7IkeD1r0

(; ω )「ぶべら!」

(;'A`)「あっぶねーマジあっぶねー。貞操の危機だったわ。ちんこ縮みあがってやがる」

(;^ω^)「あいたたたた……本当投げられるとは思ってませんでしたお」

(;'A`)「おぎゃー!くんなガチホモー!」

(;^ω^)「ガチホモゆーな。てか気づかなかったんですかお?」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 20:57:57.99 ID:Z7IkeD1r0

(;'A`)「貞操の危機ってのは気づいた」

( ^ω^)「はははこの人馬鹿だ。あなた体重何キロですかお」

('A`)「馬鹿ゆーな。51だよ」

( ^ω^)「僕は81ですお。30キロ差なのに投げれるとかすごくないですかお?」

('A`)「あー…うん。で?」

( ^ω^)「それが、『恐竜少年』って意味ですお」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:00:18.64 ID:Z7IkeD1r0

よくわからん。

そういう顔をしているらしく、でしょうねと返事が返ってきた。


中学校時代の俺は、どう返しただろう。

どう思っただろう。



まあ所詮は過去の栄光。
今になっては、そんなこと、意味がない。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:02:02.70 ID:Z7IkeD1r0


そこで会話が途切れる。
未だ座り込んでいる俺と、俺を見下ろしている恐竜少年。



ミィンミィン。
ジィコジィコ。
ギィコギィコ。


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:03:14.08 ID:Z7IkeD1r0

( ^ω^)「もうすぐ」

('A`)「え?」

( ^ω^)「もうすぐ日食ですお」

('A`)「あー…。46年ぶりだっけ?」

( ^ω^)「そうですお。ここからも、見えるらしいですお」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:05:06.61 ID:Z7IkeD1r0

('A`)「どうせ部分だろ?」

( ^ω^)「あー…そうかもしれませんお」

('A`)「見るんだったら全部隠れるやつがいいよな。あーあ。ここでも全部隠れてくれねーのかな」



あ、でも完全に隠れたら空が見えなくなる。
それはだめだ。空は青くなけりゃだめだ。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:07:33.91 ID:Z7IkeD1r0

だから俺は


夜が嫌いだ。

雨が嫌いだ。

青い空が好きだ。




だから、「屋上少年」だ。


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:09:07.40 ID:Z7IkeD1r0

('A`)「46年ぶりったってそんな騒ぐことじゃねーのにな」

( ^ω^)「お…」

('A`)「どうせ世界各地で見れるんだろ」

( ^ω^)「今すごいらしいですお。向こうの島にめっちゃ人行ってるらしいですし」

('A`)「うわーかわいそうだなー」

( ^ω^)「かわいそう?」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:11:43.44 ID:Z7IkeD1r0

('A`)「ああ。日食よってその人の“普通”が」

('A`)「“異常”に変わるんだ」

('A`)「静かな町。それが普通だったのに、一気に賑わってしまう」

( ^ω^)「屋上少年さんは」



恐竜少年が口を開く。
おーきな口をがおーっと。

青い空までも食べてしまいそうな大きな口で。
がおーっと。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:13:14.96 ID:Z7IkeD1r0





( ^ω^)「僕と同じですお」

('A`)「ははっ。うれしくねぇ」

( ^ω^)「僕だって」





55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:15:28.34 ID:Z7IkeD1r0


恐竜少年は笑う。


笑う。笑う。笑う。



屋上少年も笑う。


笑う。笑う。わら     う                 。


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:17:40.18 ID:Z7IkeD1r0



('A`)「ああー。日食の日、この空も見れなくなっちまうのか」

( ^ω^)「そういうことになりますお。けど、その日は夏休み中ですお」

('A`)「しーらね」



57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:19:23.74 ID:Z7IkeD1r0

キィィィィーン

           コォォォォーォォォン…
   カァァァァァン

                 コォォォオォオオオン………

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:21:35.91 ID:Z7IkeD1r0

チャイムだチャイム。


SHRの始まりのチャイム。
この時間の終わりのチャイム。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:24:08.00 ID:Z7IkeD1r0


( ^ω^)「お…。SHRはじまりますお」

('A`)「ああ。けど、俺はここにいるよ」

( ^ω^)「そうですかお…」


恐竜少年が入り口に向かって歩く。

冷たいとってを手に取り、冷たい扉を開く。


おおっとそこを開けてしまうのかい。
俺は行かないよ。

もうそっちには行けないんだ。


60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:26:12.25 ID:Z7IkeD1r0



ギィィ 
                イイィイ   
        イイイ

                       イイ。



62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:27:32.82 ID:Z7IkeD1r0



('A`)「グッバイ。『恐竜少年』」

( ^ω^)「グッバイ。『屋上少年』」



63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:29:19.44 ID:Z7IkeD1r0



ギィイイィィイイィ。

古い音を立てて扉が閉まる。


ガシャアン。

閉まった。閉まった。閉まった。




64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:31:07.80 ID:Z7IkeD1r0






俺は、また屋上の王様になったのだ。





65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:32:04.42 ID:Z7IkeD1r0


7月14日、屋上少年と恐竜少年 Fin

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