- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 20:49:42.90 ID:CLFAjIt40
空が教えてくれた歌を聴きながら
空を仰げば、首が痛くて。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 20:50:43.88 ID:CLFAjIt40
僕は空を仰ぐように、
ずっとずっと
地面を仰いでいた。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 20:52:15.53 ID:CLFAjIt40
ぐーの手をぱーにして
今まで掴んでいたものを
そっと手放してしまったのです。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 20:53:13.72 ID:CLFAjIt40
それを今、
僕は
そっとそっとそっと
掴みなおそうとしているのです。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 20:54:36.44 ID:CLFAjIt40
ぱーと開いたこの冷たい手を
ぐーと閉じ、暖かくしたこの手で
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 20:56:08.34 ID:CLFAjIt40
空を掴みなおす。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 20:57:38.81 ID:CLFAjIt40
( ^ω^)恐竜少年と皆既日食のようです
四話
7月17日、屋上少年と天文教師
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 20:59:41.60 ID:CLFAjIt40
今日も空は灰色。
ぐるぐると混ぜるように濃い灰色と白い灰色が混ざり合う。
ずずず。
ずずずずず。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:01:20.57 ID:CLFAjIt40
ぐるぐるぐるぐるぐる。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:02:27.74 ID:CLFAjIt40
いつもと同じように
同じあの曲を聞いて。
淡々と流れる曲は、もう何万回聞いたことか。
ぼうっと空を見上げ、何万回聞いたことか。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:04:55.20 ID:CLFAjIt40
ああ
空色の猫がまちを出る。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:06:34.57 ID:CLFAjIt40
- >>17
IDがまとめ
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:07:48.71 ID:CLFAjIt40
せめて歌の中だけでも綺麗な青空を。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:10:08.69 ID:CLFAjIt40
「やーっぱりここにいたな屋上少年」
ぼうっとしていて、侵入者に気づいていなかった。
ちくしょう、ここの王様失格じゃないか。
うかうかと侵入を許すなんざ、やってはいけないことだ。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:11:34.18 ID:CLFAjIt40
けど、この侵入者は侵入者であって侵入者でない。
多分、俺が認めている唯一の侵入者。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:13:17.00 ID:CLFAjIt40
('A`)「あー。モララーせーんせー」
( ・∀・)「はーあーいー」
('A`)「なーにしてんでーすかー」
( ・∀・)「自由気ままな屋上少年のくせにテストがよかったからご褒美だよー」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:14:59.49 ID:CLFAjIt40
(;'A`)「スイカ!?一個丸ごと!?」
( ・∀・)「いーじゃないの、……あ、屋上少年。先生たち言ってたよー?」
( ,' 3)『何でアイツのテストは毎回全部80点なんだー!』
( ・∀・)「って」
(;'A`)「それ荒巻の真似ッスか?にてねー」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:17:07.91 ID:CLFAjIt40
互いに笑いあう。
けらけらという笑い声は、MDから聞こえる音楽と共に空へ溶けた。
人が来たことにより、淡々と流れるそれは軽いBGM。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:19:27.58 ID:CLFAjIt40
( ・∀・)「ああ、そういえば何で君はこんなところにいるんだい?」
('A`)「屋上少年、だからです」
( ・∀・)「勉強ができるのなら教室で勉強していい大学行けばいいのに」
('A`)「勉強なんかできませんよ」
( ・∀・)「うん。それは全教科80点の人間が言う言葉じゃないよね。不思議だよ君は全く」
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:21:34.25 ID:CLFAjIt40
どこからか持ってきた包丁を使ってスイカを切っていく。
一太刀するごとに赤い汁がぱたとぱたりと屋上を濡らす。
屋上の強い風が、甘い匂いを運んでくる。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:22:59.83 ID:CLFAjIt40
ただ、
それを嗅ぎながら「できない」とはどういうことだ?と考える。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:24:11.18 ID:CLFAjIt40
ぐるぐるぐるぐる。
ぐるぐるぐるぐる。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:25:43.71 ID:CLFAjIt40
この交わって混ざって気持ち悪くておえっと吐き出したい気持ちは何なのだろう。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:27:05.70 ID:CLFAjIt40
ぐるぐるぐるぐる。
ぐるぐるぐるぐるぐる。
ぐる。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:29:26.02 ID:CLFAjIt40
('A`)「あ。違うや」
( ・∀・)「何がだい?」
('A`)「できないんじゃなくて、気持ち悪いんだ」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:34:46.29 ID:CLFAjIt40
ザクン。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:35:52.89 ID:CLFAjIt40
( ・∀・)「気持ち悪い?」
('A`)「気持ち悪いんですよ。教室が」
( ・∀・)「いじめ?」
('A`)「さあ」
('A`)「知らない。けど、何でか気持ち悪いんスよ。何でですかね」
( ・∀・)「さあ」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:37:24.43 ID:CLFAjIt40
ザクン。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:38:53.06 ID:CLFAjIt40
( ・∀・)「はい、切れたよ」
('A`)「ああ、ありがとうございます」
大きめに切られたそれを一口含む。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:40:10.36 ID:CLFAjIt40
じゃりじゃり。
べとべと。
じんわり。
ぐるぐるぐるぐる。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:42:44.35 ID:CLFAjIt40
雲は流れる。
授業中
本当は教室という白い空間にいなければならないのに
屋上でこんなことをしていても、
注意
せずに流れていく。
ずずずずず。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:43:32.48 ID:CLFAjIt40
風に任せて
空を彩って
ぐるぐるぐるぐる。
ついでに僕のこの感情も掻っ攫ってくれないかなぁ。
絵空事。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:45:49.15 ID:CLFAjIt40
('A`)「うまい」
( ・∀・)「
僕が育てた」
('A`)「そうですか」
('A`)「あ」
('A`)「思い出した」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:48:39.44 ID:CLFAjIt40
( ・∀・)「何をだい?」
('A`)「見送ってないんだ」
( ・∀・)「……それは、僕が聞いてもいいものなのかい?」
('A`)「ああ、別にいいですよ。ちんけでちっぽけで、神童なのに馬鹿になりたかった奴の話ですよ」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:49:34.07 ID:CLFAjIt40
―2年前。
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:51:03.74 ID:CLFAjIt40
地面を仰いでいた。
仰ぐ、というのは見上げるとか敬うとか飲むとかそういった意味がある。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:51:57.64 ID:CLFAjIt40
多分、
俺は意味を知っていた。
だからあえて、「仰ぐ」と言った。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:52:49.73 ID:CLFAjIt40
「すごいな鬱田!学年1位だぞ!」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:56:06.76 ID:CLFAjIt40
空は仰ぐことがなかった。
仰ぐのは、首が痛い。
仰がなくても足で歩けた。
地面の影を見ることで天気がわかった。
だから、見る必要が無かった。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 21:58:41.93 ID:CLFAjIt40
「これならラウンジ高校も合格だな」
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 22:02:28.76 ID:CLFAjIt40
晴れたら濃く影が
曇りなら影は無く
雨なら水
雪なら氷
それぞれが、地面を彩る。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 22:03:16.33 ID:CLFAjIt40
('A`)「そうですか」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 22:06:35.32 ID:CLFAjIt40
目の前には木の床。
担任の顔は覚えていない。
ずっと
ずっと
地面ばかり見ていたからだ。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 22:09:02.04 ID:CLFAjIt40
('A`)「今思えば酷い中2病」
( ・∀・)「いや、そんなことないよ」
('A`)「当時の俺は、はいはい神童ワロス状態でしたからねー」
( ・∀・)「地面を仰ぐ、か。でもいいねそういうの」
('A`)「ただの根暗ですよ」
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 22:10:06.04 ID:CLFAjIt40
( ・∀・)「けど、首を上げたら痛いから空を仰がない」
( ・∀・)「地面を仰ぐのも、首を下げるから痛いんじゃない?」
('A`)「ああ。痛かったですよ」
('A`)「首の骨が、痛かったです」
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 22:11:30.62 ID:CLFAjIt40
本当に痛かったのはなんでしたっけねぇ。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 22:12:51.82 ID:CLFAjIt40
何もしなくて、ずっとずっと地面を仰ぐ日々が続いた。
それを壊したのは、彼女だった。
放課後の教室。
誰もいない教室。
ただただ机を見つめる俺。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 22:14:01.90 ID:CLFAjIt40
近づく女子生徒に気づきもせず、
ただただ机を仰いでいた。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 22:15:23.56 ID:CLFAjIt40
ζ(゚ー゚*ζ「鬱田ドクオ君!」
('A`)「……は?」
ζ(゚ー゚*ζ「地面ばっか見るのもいいけど、たまには上を見なきゃ!」
('A`)「……」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 22:17:21.51 ID:CLFAjIt40
ζ(゚、゚*ζ「もーノリ悪いなぁ」
('A`)「…何アンタ」
不審そうに俺が聞くと、彼女は笑った。
向日葵のような、太陽のような、きらきらとした。
悔しいほど、可愛い笑顔だった。
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 22:18:35.57 ID:CLFAjIt40
ζ(゚ー゚*ζ「『屋上少女』」
ζ(^ー^*ζ「青空を飛びたい、ただの『屋上少女』」
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 22:21:17.22 ID:CLFAjIt40
彼女の持っていたMDから、軽快な音楽が聞こえた。
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/31(月) 22:22:01.15 ID:CLFAjIt40
7月17日、屋上少年と天文教師 Fin
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