- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 20:43:19.44 ID:A27oEf+YO
- ある所に人形師のふりをした店番の美しい男が居りまして、人形師で魔女の傷だらけの少女が居りました。
人形師で魔女のでぃにとって作り上げた人形は娘や息子、家族同然です。
店番のモララーが嫉妬する程、人形達に対して深い深い愛情を注いでおりました。
だから人形を愛して貰えば喜びますし、傷付けられれば怒ります。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 20:45:47.48 ID:A27oEf+YO
- ノハ;;)「おにんぎょうやさああああああん」
(; ・∀・)「ど、どうしたのヒートちゃん」
ノハ;;)「ぶーんがあああああ」
泣き叫びながら凄い勢いでお店に飛び込んできた小さな女の子。
火の玉娘のあだ名で呼ばれる彼女は、布で出来た人形とそのとれた右腕を差し出してわんわん泣きます。
( ・∀・)「あちゃー取れちゃったのか」
ノハ;;)「なおる? なおる? ぶーん、ひーとのせいでいたいいたいなっちゃって……うわああごめんなさいいいい」
( ・∀・)「大丈夫だからそんな泣かないで。直ぐ治してあげるからちょっと待っててごらん」
ノハ;;)「本当かああああ?」
( ・∀・)「本当、本当」
ノパ听)「じゃあ待つ」
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 20:46:49.11 ID:A27oEf+YO
- モララーは火の玉娘を何とか宥めると、人形を連れて仕事部屋に引っ込みます。
( ・∀・)「って訳なんだけど」
(#゚;;-゚)「ん……」
でぃの手に渡った途端、人形は悲しそうな顔をする自分のお母さんにわたわたと説明を始めます。
( ^ω^)「違うんだお違うんだお! ヒートちゃんは悪くないんだお! ヒートちゃんは僕といつも遊んでくれる優しい子なんだお。今日も一緒に木登りしてて、たまたま枝に引っ掛かっちゃっただけなんだお。だから」
(#゚;;-゚)「だから?」
( ^ω^)「ヒートちゃんを怒らないであげて欲しいんだお。お願いだお」
(#゚;;-゚)「ヒートちゃん好き?」
( ^ω^)「大好きだお!」
(*゚;;-゚)「そう」
即答する息子にでぃはふんわり笑顔になりました。
子供が遊んでいる最中に怪我をするなんてよくある事。
仕方がない事ですし、自分の息子がこんなにも幸せそうで、とっても嬉しかったのです。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 20:47:57.14 ID:A27oEf+YO
- (#゚;;-゚)「じゃあ怒らない」
( ^ω^)「お」
(#゚;;-゚)「早く治して戻らないと、ね?」
( ^ω^)「おっ!」
でぃは針と糸を取り、人形の腕と体を丁寧に縫い合わせます。
ちくちくちくちく。
あっという間に人形の腕は元通り。
(#゚;;-゚)「出来た」
( ^ω^)「流石お母さんだお! ありがとうだお!」
(*゚;;-゚)「ん」
( ・∀・)「はいはーいじゃあヒートちゃん待ってるから早く行こうねー」
モララーがひょい、とでぃの手から人形を抱き上げます。
(#゚;;-゚)「そうだね。早く行って安心させてあげないと」
( ^ω^)「おっおっお。元気百倍になったの見せに行くお。バイバイだおー」
(#゚;;-゚)「バイバイ」
でぃは少し寂しそうに手を振ります。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 20:49:43.07 ID:A27oEf+YO
- 扉の向こうではそわそわと、火の玉娘が人形の帰りを待ち侘びていました。
モララーが仕事部屋から出て来た途端駆け寄ってきます。
ノハ;゚听)「ぶーんは!? ぶーんはだいじょうぶなのか!?」
( ・∀・)「うん、もう大丈夫だよ」
ノハ*゚听)「ふおおおお!!」
火の玉娘はモララーから人形を受け取ると、ぎゅーっと強く強く抱きしめました。
ノハ;;)「ごめんなぶーん! もうぜったいけがさせたりしないからな! ごめんなああああ」
一しきり人形に謝った後、火の玉娘はぺこりと頭を下げました。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 20:50:53.47 ID:A27oEf+YO
- ノパ听)「ありがとうおにんぎょうやさん! これあげる!」
ポケットを探って取り出したのは、セロハンに包まれたピンク色。
飴玉を差し出して火の玉娘はにっこり笑います。
ノパ听)「いちごあじでとってもおいしいんだ! ぶーんをなおしてもらったおれい!」
( ・∀・)「でもそれヒートちゃんのおやつじゃ」
ノハ*^竸)「いいんだ! おやつよりぶーんのほうがだいじだもん!」
どうやら人形の言っていた通り、とても大切にされているようです。
飴を貰ってモララーもにっこり笑いました。
(* ・∀・)「じゃあ貰おうかな。ありがとう」
ノハ*゚听)「へへっ。じゃあなおにんぎょうやさん。またぶーんとあそびにくるぞ!」
( ・∀・)「その時は無事な姿で来てよ?」
ノハ^竸)「はーい!」
元気に返事をして、人形と一緒に駆けて行った火の玉娘。
それと入れ替わるようにして次のお客さんがやってきました。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 20:52:55.79 ID:A27oEf+YO
- (´<_` )
やって来たのは神経質そうなひょろりと背の高い男。
医者の次男坊で、月に一度は訪れるお得意様でありました。
( ・∀・)「いらっしゃいませオトジャ様。今日も人形を?」
(´<_` )「ああ」
( ・∀・)「丁度良かった。是非オトジャ様に見て頂きたい人形が有るのです。少々お待ち下さいませ」
言うが早いかモララーは人形を取りに仕事部屋へ引っ込みます。
次男坊が呆気に取られている間に、モララーは直ぐに帰ってきました。
( ・∀・)「こちらですオトジャ様」
戻ってきたモララーが抱えていたのは真っ白なドレスを纏ったあどけない顔の人形。
赤ん坊より一回り程大きく、汚い物なんて何一つ知らない様な、純真無垢な笑顔を浮かべた女の子の人形でした。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 20:55:08.12 ID:A27oEf+YO
(´<_` )「良いな」
( ・∀・)「でしょう?」
次男坊は一目で人形を気に入りました。
その様子に、モララーは誇らしげに胸を張ります。
( ・∀・)「お得意様のオトジャ様の為に特別にご用意させて頂きました。オトジャ様の気に入るよう、オトジャ様の為だけに在るよう、オトジャ様の為だけに作り上げた人形です」
(´<_` )「貰おう、幾らだ」
( ・∀・)「お代は結構です。いつもご贔屓にして頂いているそのお礼に」
(´<_` )「良いのか?」
次男坊はしげしげと人形を眺め、首を傾げます。
(´<_` )「なかなか良い物みたいだが」
( ・∀・)「ええ勿論一級品でございます。ですがこれは私の気持ちの表れ。どうかお受けとり下さい」
(´<_` )「それじゃあ有り難く貰おうか」
( ・∀・)「有り難うございます。今お包みしますね」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 20:56:19.23 ID:A27oEf+YO
- 一度布で包んで箱の中にそっと座らせ、蓋を閉めてもう一度布で包みます。
( ・∀・)「どうぞ」
(´<_` )「ああ」
( ・∀・)「大切にしてあげて下さいね。大切にして下さればきっと良いことがありますから」
どことなく嬉しそうに次男坊は箱を受け取ります。
それから恭しいお辞儀と共に開かれたドアをくぐろうとして、ふと思い出したようにモララーを振り返りました。
(´<_` )「そうだ。前に来た時にカフスは落ちていなかったか。金の台座に黒瑪瑙なんだが」
( ・∀・)「黒瑪瑙のカフス……ううん見てませんねぇ。気付けば取っておくんですが。一度探してみます」
(´<_` )「すまんな」
( ・∀・)「いえいえ」
次男坊は上機嫌で帰路につきました。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 20:57:43.78 ID:A27oEf+YO
- ─────
次男坊が家に着くと彼は家人への帰宅の挨拶もそこそこに、自分の部屋に向かいます。
そして机の上に箱を置き、中の人形を取り出すでもなくじぃっと箱を見つめるのです。
(´<_` )「まだだ……まだ……」
ぶつぶつ呟く彼は少々不気味です。
そうしてしばらくそうしていたかと思うと、次男坊は箱をクローゼットの中にしまい込んでしまいました。
それからくっ、と笑みを漏らし机に向かって勉強を始めます。
優秀な医者である父の跡を継がねばなりません。
出来損ないに任せる訳にはいかないのです。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 20:59:10.94 ID:A27oEf+YO
- 「オトジャ、夕飯だぞ」
(´<_` )「ああ」
暫く勉強しているとドアの向こうから兄の声がしました。
分厚い本とノートを閉じ、ドアを開けるとふんわり良い匂いが漂ってきます。
( ´_ゝ`)「今日はシチューだそうだ」
(´<_` )「そうか」
二人で食堂の有る一階へ降りると、もう家族全員揃っていました。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「早く座りなさい。折角のご飯が冷えてしまう」
促されるままに二人が座ると、父が食事の前の祈りを始めます。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 21:00:27.66 ID:A27oEf+YO
- 今日の恵みを与えて下さった神へ。
自分達に命を差し出してくれた生き物達へ。
父に倣って家族全員で感謝の祈りを捧げますが、次男坊はそれがさっぱり理解出来ませんでした。
食事が冷めるというのならこんな面倒な祈りなどしなければ良いのです。
そもそも何故感謝しなければならないのでしょう。
今日この食事を食べられるのは父が働いて来たからです。
神に何かをして貰った覚えはありません。
牛や豚や鶏に意思など有りませんし、植物が生きているなど詭弁です。
弱者は強者に搾取されるべきです。
食物連鎖の頂点に位置する人間の為に、総ての動植物は存在するのです。
父が受け入れないであろう事は解っていたので、そんな考えおくびにも出しませんでしたが。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 21:02:54.30 ID:A27oEf+YO
- 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「さて食べようか」
父の言葉で夕食が始まります。
案の定食事は少し冷めていました。
かちゃかちゃと食器を動かす音だけが食卓に響きます。
その中で父が兄を呼びました。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「明日は朝からフィレンクトさんの家に行くから、ちゃんと用意しておきなさい」
( ´_ゝ`)「そのことなんだが……」
兄は食器を動かす手を止めました。
それから次男坊の方をちらりと伺って、父の方を見ます。
( ´_ゝ`)「オトジャも一緒じゃ駄目か? オトジャは頭が良いし良く勉強してる。経験さえ詰めば俺なんかよりずっと良い医者に」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「駄目だ」
ぴしゃりと父は兄の言葉を遮りました。
とても厳しい顔で兄と、次男坊を見ます。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 21:04:13.17 ID:A27oEf+YO
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「前にも言ったが、オトジャを医者にするつもりは一切無い。幾ら勉強しようと優秀だろうとだ。
オトジャは早く別の仕事を探しなさい」
(# ´_ゝ`)「っ、何でそこまでオトジャが医者になるのを反対するんだ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「オトジャには医者として最も大切なものが欠けている。それだけの話だ」
(# ´_ゝ`)「何なんだその欠けてるものって!」
(´<_` )「ご馳走さま」
(; ´_ゝ`)「待、」
父と兄の言い争いをよそに黙々とご飯を食べていた次男坊が席を立ちます。
部屋へ戻る背を慌てて追い掛ける兄。
階段の前で腕を捕まえ必死に次男坊に訴えます。
( ´_ゝ`)「諦めるなよオトジャ。父者の言う欠けてるものが何かは解らんが、俺が絶対に説得してみせる。
お前は俺なんかよりずっとずっと凄い奴なんだからな! 立派な医者になって沢山の人を救うんだ!」
(´<_` )「……うん、頼むぞアニジャ」
(* ´_ゝ`)「任せとけ!」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 21:05:06.86 ID:A27oEf+YO
- 笑顔で胸を叩き、兄は父を説得するべく食卓へ戻っていきました。
残された次男坊はその背を見送る事も無く自分の部屋へ帰ります。
そして自分の部屋へ戻りドアを閉めた途端、
( <_ )「……っ!」
ベッドを思いっきり殴りつけました。
それだけではぐるぐると巡る真っ暗な衝動をどうする事も出来ず、二度、三度と繰り返します。
( <_ #)「アニジャの癖にアニジャの癖に出来損ないの癖に!」
次男坊にとって兄はただの出来損ないでした。
父が兄を選ぶ理由が次男坊にはさっぱり解らなかったのです。
父がいつも言う兄に有って次男坊には無い「足りない物」なんて、何処をどう探しても有る訳が有りません。
だから次男坊にとって兄はただの出来損ないでした。
その兄に。
自分より下であるはずの兄に庇われ励まされるという行為は、次男坊のプライドをズタズタにするに十分だったのです。
怒りで視界は明滅し、どうにかなってしまいそうなほど。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 21:06:19.19 ID:A27oEf+YO
- ( <_ #)「ふーっ、ふーっ」
荒い呼吸のままクローゼットを開け、取り出したのは人形の入った箱。
箱から人形を取り出すとつぶらな黒い瞳が次男坊を見つめます。
从'ー'从
つるりと光るその目は黒瑪瑙。
無垢な瞳の人形を、次男坊はベッドに放り投げました。
これから一方的な暴力が始まるのです。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 21:07:19.03 ID:A27oEf+YO
- 自らもベッドの上に乗り上げた次男坊は、おもむろに人形の頬を叩きました。
二発、三発。
壊れないように加減して。
国一番の人形師が作った人形はとても丈夫ですが、それでも所詮はただの人形。
直ぐに壊れてしまっては面白くありません。
( <_ )「ふ……ふふ……」
段々と呼吸が落ち着いてきたかと思うと、今度は次男坊の口から笑い声が漏れます。
次男坊にとって人形は兄であり父であり、自分以外の全てでありました。
自分こそが一番上に立つ人間だと信じてやまない彼は、けれどそれが出来ない苛立ちを人形にぶつけるのです。
これまでも沢山の人形をそうして壊してきました。
命を持たない人形は抵抗しない人形は、彼にとって格好の餌食だったのです。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 21:08:16.38 ID:A27oEf+YO
- ( <_ )「死ね、死ね……!」
呪詛を込めて人形を殴り続けます。
そして最後のとどめとばかりに、頭上高く振り上げた手を人形の顔めがけ振り下ろしました。
ガシャン
小気味良い音を立てて人形はただのガラクタになる、いつもそうでしたそのはずでした。
从'ー'从
なのに人形は元のまま、次男坊の拳の下で寝そべっているのです。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 21:09:12.63 ID:A27oEf+YO
- (´<_` )「……?」
次男坊は首を傾げながら、もう一度拳を振り下ろしました。
それでも人形は壊れません。
(´<_` #)「……」
ひくり、とこめかみを動かせながら次男坊はまた拳を振り下ろします。
何度も何度も。
腕、足、腹、顔、色んな場所に暴力を降らせます。
それでもやっぱり壊れない人形に、次男坊は怒鳴り付けます。
(´<_` #)「何で壊れない!」
こんな意思を持たない物にすら抵抗されて、お前は所詮底辺だ、と言われたようでした。
(゚ <_゚ #)「ふざけるなあっ!」
遂にキレた彼は机の上の鋏を手に取り振り下ろそうとして──誰かに叩かれました。
(´<_` #)「……は?」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 21:10:23.61 ID:A27oEf+YO
- 思わず呆気に取られていると、二度、三度と繰り返し叩かれました。
けれど周りには誰も居ません。
(´<_` )「一体何が、痛っ」
段々と次男坊を叩く、殴る力は強くなります。
うずくまっても、手で庇っても、見えない誰かはそれをかい潜って次男坊に暴力を振るうのです。
( <_ ;)「止めろ! 止め、痛い! 止めてくれっ」
制止の言葉も虚しく、べきり、と次男坊の右腕が勝手に有り得ない方向に折れ曲がりました。
( <_ ;)「あ、ああああああ」
絶叫。
次に左腕、右足、左足。
ばきりばきりと嫌な音を立てて、次男坊の身体が壊れていきます。
まるで人形のように。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 21:13:07.21 ID:A27oEf+YO
- (; ´_ゝ`)「どうしたオトジャ!」
次男坊の悲鳴を聞き付けて父と兄が部屋へ飛び込んできました。
床に倒れ伏し泣き叫ぶ次男坊の姿に二人は驚き、立ちすくむ間にも次男坊の破壊は進みます。
次男坊は腹部への衝撃に血を吐きました。
内蔵が破れたのかもしれません。
彡⌒ミ
(; ´_ゝ`)「「オトジャ!」」(´く_` ;)
(;<_; )「あ……ああ、た、ぅ、たずげで」
駆け寄る二人に、関節が二つに増えた腕を伸ばし助けを求めます。
馬鹿にしていた相手に助けを請い、次の瞬間
(;<_; )「あ」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 21:14:25.54 ID:A27oEf+YO
- ガツッ
頭蓋を陥没させて次男坊は事切れました。
(; ´_ゝ`)「オトジャ……? 起きろオトジャ! オトジャ!」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「……駄目だアニジャ。これはもう……助からん」
(; ´_ゝ`)「嘘だ! オトジャ! オトジャっ!」
次男坊の名を叫ぶ兄と、静かに涙を流す父親。
从'ー'从 ( <_ )
もう動かない次男坊の横で、あどけない顔をした人形はにっこり微笑んでいました。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 21:15:32.41 ID:A27oEf+YO
- ─────
ゴーン
ゴーン
翌朝の事です。
重苦しい弔いの鐘を聞いて、店先の掃き掃除をしていたモララーは教会の方に視線をやりました。
( ・∀・)「だから大事にして下さいねって言ったのに」
因果応報、自業自得。
自分のした事は自分に返るのです。
はぁ、と溜め息を吐いてモララーはポケットから金のカフスを取り出しました。
中心には埋まっていた石を取り出され、ぽっかりと穴が空いています。
埋まっていた石は使ってしまったのでもう有りません。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/12/04(土) 21:17:23.97 ID:A27oEf+YO
- ( ・∀・)『忘れ物みたいなんだけど』
(#゚;;-゚)『貸して。誰のか見る』
( ・∀・)『はい、どうぞ』
(#゚;;-゚)『ありが、』
( ・∀・)『でぃ?』
カフスに触れた時のでぃを思い出し、モララーはぶるりと身体を震わせました。
子供を傷付けられた怒りと、それに気付かずせっせと子供を渡していた自分への怒りと。
真っ青な顔で呪詛を吐いたでぃの姿はまさしく修羅でした。
( ・∀・)「……母親って怖いね」
自分の子供の為に聖母にも修羅にも変わる。
モララーはまた一つ溜め息を吐き、掃き掃除を再開しました。
壊れた人形と壊れない人形 了
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