- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:39:09.05 ID:fkwNsrOFO
- あるところに人形師の振りをした美しい店番と、魔女で傷だらけの人形師がおりました。
魔女のでぃが作る人形には魂が宿り、それぞれが色んな形をしています。
基本的にはみんな素直な良い子なのですが、中にはちょっと変わっていたり、ひねくれていたり。
( ノAヽ)「お前なんかお母さんに相応しくないノーネ。お母さんはノーネが守るノーネ」
( ・∀・)「はは、自分では動けない癖に何を言っているのやら」
この緑色の布で出来た人形もその内の一体です。
( ・∀・)「大体君は婿に行くのが決まってるじゃないか」
( ノAヽ)「婿とか言うなノーネ、気持ち悪い。ノーネは此処に居るノーネ」
( ・∀・)「そんな事をしたら約束を破ったって、君の大好きなお母さんが大変な事になるよ?」
( ノAヽ)「お前を囮にしてノーネが連れて逃げるノーネ」
( ・∀・)「大概性格悪いな君」
( ノAヽ)「お前に言われたくないノーネ」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:39:57.15 ID:fkwNsrOFO
- 二人の口喧嘩をでぃは困った顔で見つめています。
(#゚;;-゚)「そんなに嫌? ヒートちゃんのお友達だからきっと優しいよ?」
( ノAヽ)「嫌なノーネ。お母さんの方が優しいに決まってるノーネ」
(#゚;;-゚)「病気がちでお外にに出られないって。お友達になってあげてくれない?」
( ノAヽ)「お断りなノーネ」
(#゚;;-゚)「ん……」
(;・∀・)「でぃ、何考えてる?」
黙り込んでしまったでぃを見て、慌ててモララーが彼女の肩を掴みます。
何だかとっても嫌な予感がしたのです。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:42:40.68 ID:fkwNsrOFO
- (;・∀・)「まさか受け渡し日を延ばして貰ってその間にもう一体作ろうとかしてないよね? それでノーネは家に置いておくとかダメだからね?」
(#゚;;-゚)「……」
(;・∀・)「その顔はやっぱり考えてたな!? ダメだよ、店の信用問題に関わる。しかも相手は軍人だよ? しかも少尉だよ? ただの一般兵じゃないんだよ? 絶対気難しいに決まってるじゃないか!」
(#゚;;-゚)「……どうしても?」
( ・∀・)「どうしても!」
( ノAヽ)「はっ、けつの穴の小さい男なノーネ」
(;・∀・)「何処でそんな言葉覚えた!」
頭を抱えるモララー。
そこに彼にとって救いの手が、人形にとっては悪魔の手が差し延べられました。
カランカラン
来客を知らせるドアのベルの音。
続いて聞こえた声は人形の依頼主の物。
助かった、とモララーは人形を掴み店へ出ます。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:44:54.25 ID:fkwNsrOFO
- ( ・∀・)+「これはこれはいらっしゃいませフィレンクト様ご依頼の品こちらになりますお嬢様の髪の色に合わせてこちらも緑の布で作り上げました可愛いでしょうそうでしょうお気に入り頂けましたか
それは良かった今おつつみ致します出来ましたはいどうぞ大事にしてあげて下さいひねくれてますがもしかしたら良いことがあるかもしれません」
(‘_L’)「……」
( ・∀・)「……」
(‘_L’)「……」
(;・∀・)「(やっちまったあああああ)」
一気にまくし立てたモララーは一言も発さない少尉にたらりと冷や汗を流しました。
つい、慌ててしまったのです。
でぃがぐずりだす前に一刻も早く、この人形を依頼人へ渡さねばならないと思ったのです。
(;・∀・)「(ヤバいヤバいヤバい何か凄い目でこっち睨んでるんだけど怖い本当怖いダメだって僕が居ないとでぃが泣いちゃうってか
生活力0なのに僕が見てないと食事睡眠お風呂全部忘れて延々と人形作ってるのにヤバいヤバいヤバい)」
(‘_L’)「人形屋」
(; ∀ )「はいぃっ」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:46:04.86 ID:fkwNsrOFO
- 冷や汗で背中がぼとぼとのモララーは直立不動のまま返事をします。
そして差し出されたのは小さな布袋。
受け取るとチャリっと音がしました。
(; ∀ )「へ? あの、これ」
(‘_L’)「代金だ」
(;・∀・)「うへ?」
(‘_L’)「邪魔したな」
言うが早いか、少尉はくるりと背を向けて出ていってしまいました。
モララーはぽっかり口を開けています。
( ・∀・)「切られるかと思ったのに」
腰に下がった剣を思い出し、モララーはぶるりと体を震わせます。
まぁ、それよりもっと怖いものが、仕事場で待っていたのですが。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:48:10.45 ID:fkwNsrOFO
- ────
緑色の頭の女の子、病弱少女はベッドの上でごろりと寝返りをうちました。
さっきまでは火の玉娘が居て楽しくお喋りしていたのですが、体に障るといけないからあまり沢山は遊べないのです。
たった一人のお友達が帰ってしまうと、後はもう暇で暇で仕方がありませんでした。
ミセ*゚ー゚)リ「おとーさんまだかなー」
ぐるんぐるん、ぐるんぐるん。
ベッドの上を回転しながら病弱少女ははふぅ、とため息をつきます。
口煩い乳母はあまり好きではないのです。
ミセ*゚听)リ「いつもねてなさい、それかベンキョーしなさいってさ。そりゃムリしちゃダメなのはわかってるけどケチだよね」
ちらりと目をやった枕元には分厚い、見るからに難しそうな本。
勿論挿絵なんて一つもありません。
ミセ*゚∧゚)リ「せめてえほんとかさー」
はふぅ
病弱少女はもう一度ため息をつきます。
こんな本、開いてみる気にもなりません。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:49:32.09 ID:fkwNsrOFO
- ミセ*゚ー゚)リ「!」
またため息をつこうとして、病弱少女はがばりと顔をあげました。
それからドアを開けて、とてとて玄関へ向かいます。
ミセ*゚ワ゚)リ「おかえりなさい!」
(‘_L’)「……寝てなきゃ駄目だろう」
ミセ*゚ー゚)リ「ただいまは?」
(‘_L’)「……」
_,,
ミセ ゚д゚)リ「たーだーいーまーはー?」
病弱少女のぷっくり膨れた頬っぺ。
困った顔をしながら、少尉は病弱少女の頭をわしわしと撫でました。
(‘_L’)「ただいま」
ミセ*^ー^)リ「おかえりなさい!」
にっこり笑顔になった病弱少女は少尉にぺったり抱き着きました。
それからはたと、少尉の抱えている箱に気づいて首を傾げます。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:50:20.22 ID:fkwNsrOFO
- ミセ*゚ー゚)リ「なにそれ?」
(‘_L’)「お前にだ」
_,,
ミセ*゚─゚)リ「……またほん?」
(‘_L’)「違う」
(゚、゚;トソン「お帰りなさいませ旦那様。まさかこんなに早くお戻りになられるとは思わずまだ夕飯の支度が」
(‘_L’)「いい。また直ぐ出る。これを渡しに戻って来ただけだ」
慌ててやって来た乳母に軽く返事をし、病弱少女に箱を渡します。
ミセ*゚─゚)リ「いっちゃうの?」
(‘_L’)「……」
ミセ*゚∧゚)リ「セッカクひさびさにおとーさんとあそべるとおもったのに」
(‘_L’)「すまない」
ミセ*゚∧゚)リ「はやくかえってくる?」
(‘_L’)「……すまない」
つまりは今日も遅くなるという事で。
一気に機嫌の悪くなった病弱少女の頭をもう一度撫でて、少尉は行ってしまいました。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:51:14.21 ID:fkwNsrOFO
- (゚、゚トソン「お仕事なんですからあまり無理を言ってはいけませんよ」
ミセ*゚─゚)リ「わかってる」
(゚、゚トソン「でしたら良いんです。さあお部屋に戻ってお休みなさい。それともお勉強にしますか?」
ミセ;゚д゚)リ「おやすみにします!」
勉強なんて真っ平御免です。
病弱少女は慌てて部屋に戻る事にしました。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:52:30.54 ID:fkwNsrOFO
- ミセ;゚д゚)リ「あ、アブなかった……」
部屋に戻った病弱少女はホッと一息つきました。
火の玉少女と二人で、ひそかにMs.ガリベンと呼んでいる乳母はスパルタなのです。
きっと少尉から貰ったプレゼントすら開けさせてくれないに違いありません。
ミセ*゚ー゚)リ「なにかななにかなー」
リボンを解き蓋を空け、手を伸べて触れたのは柔らかい布。
λ λ
( ノAヽ)
わくわく胸を高鳴らせながら取り出したのは緑色の人形です。
ミセ*゚ワ゚)リ「おニンギョウさんだ!」
早速病弱少女は頬っぺたを両手の平でふにっ、と挟み込みました。
ミセ*^ー^)リ「へんなかお!」
そう言いながらも病弱少女は眩しい程の笑顔を浮かべています。
前々から欲しいと思っていたのです。
けれど少尉に遠慮して、なかなか言い出せずにいたのでした。
ミセ*゚ー゚)リ「ナマエはねー、えーっと……」
考え込む事数分。
ぽんと浮かんだ名前。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:53:22.47 ID:fkwNsrOFO
- ミセ*゚ー゚)リ「ネーノにしよう!」
絶妙に外しながら病弱少女は笑顔を浮かべます。
そのあと乳母に呼ばれてご飯を食べ、薬を飲んで病弱少女はぐっすりと眠りに落ちました。
(# ノAヽ)「なんでやねん!」
ミセ;゚д゚)リ「ふぼあっ」
突然お腹の上に落ちてきた衝撃に病弱少女は目を見開きました。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:54:18.73 ID:fkwNsrOFO
- ミセ;゚д゚)リ「な、なに! なにごと!?」
(# ノAヽ)「なにごとじゃないノーネ」
ミセ;。 。)リ「ぶべっ」
さらに頭にも一撃。
頭上へ手を伸ばせば柔らかな感触。
犯人は今日家にやって来たばかりの人形でありました。
ミセ#゚д゚)リ「なにしやがんだこんなろー!」
(# ノAヽ)「それはこっちの台詞なノーネ! よりによってネーノとか、ノーネの存在全否定なノーネ!」
(# ノAヽ)
つ( `ー´)ナンジャネーノ?
「ネーノはこういう顔した語尾がネーノってつく奴でノーネの前に買われて行ったノーネ! どぅーゆーあんだすたん!?」
ミセ#゚д゚)リ「そんなのしるか! ナマエがあるならさいしょっからいえばいいでしょ。こっちはわかんないっての!」
(# ノAヽ)「言えたらとっくに言ってるノーネ! 人形に無茶言わないで欲しいノーネ!」
ミセ#゚д゚)リ「じゃあおニンギョウはおニンギョウらしく……って、へ?」
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:57:19.13 ID:fkwNsrOFO
- ミセ#゚д゚)リ
(# ノAヽ)「何なノーネ」
ミセ#゚д゚)リ
(# ノAヽ)
ミセ ゚д゚)リ
ミセ;゚д゚)リ「オバケだああああああ」
はたと我に返った病弱少女。
目の前で話し、動き、怒っている人形を見て絶叫します。
しかしそこに入る人形の本攻撃。
ミセ;。 。)リ「おぶ」
(# ノAヽ)「誰がお化けなノーネ」
ミセ;゚ー゚)リ「だ、だってうごくししゃべるしオカシイ」
( ノAヽ)「此処は夢の中なノーネ。何が起こっても不思議じゃないノーネ」
ミセ;゚д゚)リ「ユメ?」
ぽかんと病弱少女は口を開けます。
だって叩かれた頭がまだジンジンと痛むのです。
普通、夢ならば痛みを感じないはず。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:58:41.62 ID:fkwNsrOFO
- ( ノAヽ)「お母さんのお陰なノーネ」
頬を思いっきり摘んでやって、悲鳴を上げる病弱少女に人形は答えます。
曰く、現実では思いっきり遊べない病弱少女の為の仕掛けだと。
( ノAヽ)「ノーネが望めばやりたい放題なノーネ」
ほい、と振った手の先でボールが山の様に落ちてきました。
勿論全部病弱少女の上へ降ります。
ミセ#゚ー゚)リ「……おうけいケンカうってるのね」
( ノAヽ)「だったらどーするノーネ」
ミセ#゚д゚)リ「やってやろーじゃん! そのケンカかった!」
言うが早いか病弱少女はボールを拾って投げつけます。
ボールは見事人形の顔面にクリティカルヒット。
そもそもあまり大きくない人形はパタリと後ろに倒れました。
ミセ*゚∀゚)リ「ざまぁwww」
(# ノAヽ)「不意打ちなんて卑怯なノーネ!」
ミセ#゚∀゚)リ「そっちだってさっきからサンザンふいうちしてるでしょーが!」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 02:59:32.80 ID:fkwNsrOFO
- 続いて第二投。
けれど今度はひらりとかわされてしまいました。
ミセ#゚д゚)リ「よけるな!」
( ノAヽ)「避けるわ。ノーネはMじゃないノーネ」
そして今度は人形の攻撃。
次から次へとボールを呼び出し病弱少女を狙い撃ちます。
ミセ#゚ー゚)リ「ヒキョーだぞこんなろー!」
( ノAヽ)「この体格差が既に卑怯なノーネ。だから使える物はじゃんじゃん使うノーネ」
一人と一体の攻防戦。
軽やかに飛び回り、お互いにボールをぶつけ合います。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:00:12.91 ID:fkwNsrOFO
- (; ノAヽ)「な、なかなかやるノーネ。ただの病人じゃなかったノーネ」
ミセ;゚ー゚)リ「ミセリもビックリだよ。こんなうごいたのはじめてだもん」
ぜえぜえと息を切らし、病弱少女と人形は対峙します。
お互いに体力の限界。
次が最後の攻撃だと二人とも解っていました。
( ノAヽ)「えいっ」
先に動いたのは人形。
ボールを手に高く飛び上がり、病弱少女に向かって叩きつけます。
けれどそれをどうにか避けた病弱少女は勝ち誇った笑みを浮かべて、人形の腹へ──
( ノAヽ)「あ」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:00:53.71 ID:fkwNsrOFO
- ボールを叩き込んだ瞬間、病弱少女は目をパチリと目を開きました。
いつの間にか寝そべっていたベッドから身体を起こして、きょろきょろと辺りを見回します。
けれど、あれだけ沢山有ったボールは一つも転がっておらず、
倒したり落としたりしたはずの本も何も見つかりません。
ミセ*゚з゚)リ「あるぇ?」
枕元に居る人形も喋らず動かず、大人しく座っています。
頬を摘もうが、耳を引っ張ろうがただの人形です。
ミセ*゚ー゚)リ「……そっか、ゆめだからおきたらおしまいなんだ」
折角勝てそうだったのに、と病弱少女は頬を膨らませます。
けれどいくら拗ねてももう一度眠る程眠気は無く、残念ながら決着はもち越しです。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:02:55.87 ID:fkwNsrOFO
- コンコン
(゚、゚トソン「失礼しま、起きてるなんて珍しいですねお嬢様。着替えて顔洗って下さい。朝食の準備が出来ましたので」
ミセ*゚ー゚)リ「はーい」
身支度を済ませて向かった食堂では、既に少尉が食事を始めていました。
ミセ*゚ー゚)リ「おはよーおとーさん」
(‘_L’)「おはよう。珍しいな」
ミセ*゚ー゚)リ「たまにはねー」
少尉の隣にちょこんと座り、こんがり焼けたトーストを一口。
少尉はコーヒーを一口と、咳ばらいを一つ。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:04:38.22 ID:fkwNsrOFO
- (‘_L’)「あれは気に入ったか」
ミセ*゚ー゚)リ「あれ?」
(‘_L’)「人形」
_,,
ミセ*゚ー゚)リ「あー」
生意気で憎たらしくて意地悪で。
昨晩の事を思い出して病弱少女は眉を寄せます。
けれど、あんなにはしゃいだのは初めてで。
喧嘩みたいに始まったボールのぶつけ合いも楽しくて、あの人形を嫌いにはなれませんでした。
ミセ*゚ー゚)リ「うん、きにいったよ。おとーさんありがとう」
_,,
(‘_L’)「何だ今の間は」
ミセ*゚ー゚)リ「なんでもないよ!」
少尉は暫く渋い顔をしていましたが、乳母に嗜められて、遅刻してしまうと慌ててご飯を食べ始めました。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:05:50.79 ID:fkwNsrOFO
- (‘_L’)「行ってくる」
ミセ*゚ー゚)リ「いってらっしゃい! はやくかえってきてね」
少尉を送り出しご飯を食べ終わると、乳母は鬼教師に変身します。
病弱少女の大嫌いなお勉強の時間です。
(゚、゚トソン「ほらそこ。また間違えてますよ。ここも、ここも」
ミセ ;д;)リ「うう、べんきょうキライ……」
泣く泣く勉強を終えて、ご飯を食べて。
少ししてから友達の火の玉娘がやってきました。
ノパ听)「あそびにきたぞ。きょうはげんきか?」
いつも賑やかな火の玉娘。
けれど病弱少女の前では少しだけ大人しくなります。
お医者さんに言われた「あまり騒いではいけないよ」の言葉をちゃんと守っているのです。
ノハ*゚听)「おにんぎょうだああああああ」
まぁ、時々は忘れてしまうのですが。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:06:28.62 ID:fkwNsrOFO
- ミセ*゚ー゚)リ「おとーさんがかってくれたの」
ノパ听)「おもしろいかおだな!」
ミセ*゚ー゚)リ「ノーネっていうんだよ」
ノパ听)「へぇ!」
二人は仲良く人形と一緒に遊びはじめます。
ノパ听)
つ( ^ω^)「そーらーをじゆうにー、とーびたーいおー」
ミセ*゚ー゚)リ
つ( ノAヽ)「はい、れっどぶるー」
ノパ听)「れっどぶるつばさをさずけるー!」
ミセ*゚ー゚)リ「るー!」
ブーン、と人形に空を飛ばせていた火の玉娘は立ち上がり、もっと高い場所へ、と人形を持った手を伸ばします。
病弱少女も真似をして、二人一緒に
ミセ*゚ワ゚)リ「「ぶーーーーーーーん!」」(゚Δ゚*ハレ
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:07:02.24 ID:fkwNsrOFO
- ミセ ゚ー )リ「あり?」
ノハ;゚听)「みせり!?」
と、次の瞬間病弱少女はへにゃりとしゃがみ込んでしまいました。
ノハ;゚听)「だ、だいじょうぶかみせり! すぐにとそんさんよんでくるからな!」
ミセ ー )リ「う、だいじょーぶだよ。アタマちょっとふらっとしただけだからよばなくて……」
ノハ;゚听)「とそんさあああああんんん」
火の玉娘はドアを開けて乳母を探しに飛び出します。
病弱少女の話なんて聞いちゃいません。
(゚、゚;トソン「お嬢様!」
呼ばれて飛び出て乳母登場。
血相を変えて病弱少女の側にやって来ます。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:07:40.89 ID:fkwNsrOFO
- (゚、゚トソン「熱はありませんね。吐き気はどうですか?」
ミセ ゚ー゚)リ「んーん、ちょっとアタマふらっとしただけだから」
(゚、゚トソン「貧血でしょうか……。今日はもう夕飯までおやすみになった方がいいですね」
ミセ;゚ー゚)リ「え、やだ、まだあそびたい」
(゚、゚トソン「駄目です」
抗議してみるものの、乳母はさっくり切り捨てます。
(゚、゚トソン「という訳でヒートさん、申し訳ありませんが……」
ノハ´凵M)「ん……またあしたくる……」
ノハ´)「じゃあなみせり。またあした」
(゚、゚トソン「一応お医者様に見て頂いた方がいいかもしれません。大人しくなさってて下さいね」
火の玉娘はしょんぼりとしながら帰ってしまい、乳母はお医者様を呼びに行きました。
独り残された病弱少女は人形をギュッと抱きしめ
ミセ ー;)リ「おそらなんてとべなくていい。おそとでげんきにあそびたい」
はたはたと涙が人形の上に落ちました。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:08:28.59 ID:fkwNsrOFO
- ─────
その晩も病弱少女は夢を見ました。
(# ノAヽ)「おっまえふざけんななノーネ!」
頭をタオルで一生懸命拭いている人形と、服の裾を絞る病弱少女。
ミセ;゚ー゚)リ「だからごめんって! アタマぬらしたままねちゃったのはあやまったじゃん!」
(# ノAヽ)「謝って済む問題じゃないノーネ! カビたらどうする!」
ミセ;゚д゚)リ「じぶんだってひとのアタマにタライいっぱいみずかけるとか、きっちりフクシュウしてるくせに!」
(# ノAヽ)「けっ、これは夢の中なノーネ。現実ではどうってことないノーネ」
( ノAヽ)「だから」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:09:22.68 ID:fkwNsrOFO
- ぽん、と軽い音がして、いつもの部屋の中だったのがあっという間に真っ青な空の下に早変わり。
ミセ ゚д゚)リ
( ノAヽ)「ここでならどれだけ走っても遊んでも平気なノーネ。いっくらでも遊ばせてやるからもう泣くのは……おい聞いてるノーネ?」
ミセ ゚д゚)リ
(# ノAヽ)イラッ
(# ノAヽ)つ#)з゚)リ「あべし!」
(# ノAヽ)「とっとと遊べなノーネ!」
ミセ;゚д゚)リ「ぅえ、あ、う、うん」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:10:33.45 ID:fkwNsrOFO
- タタタ、と走っていった病弱少女は、以前窓から見た子供達の見よう見真似で、木に登りはじめます。
何度も足を滑らせ、転げ落ちながらもどうにか太い枝の上に腰掛け叫びます。
ミセ*゚ー゚)リ「ノーネも、あそぼ!」
( ノAヽ)「やなこったなノーネ」
ミセ*゚∀゚)リ「もしかしてのぼれないのー?」
(# ノAヽ)「オーケー、今すぐ登ってその頭叩いてやるノーネ、首洗って待ってろ」
ぎゃーぎゃーと騒がしい一人と一体。
来る日も行く日も別の日も。
眠る度に繰り返される、夢の中でだけの遊戯。
( ノAヽ)「馬鹿ミセリ」
ミセ#゚ー゚)リ「なんだと!?」
くだらない喧嘩を繰り返す日々を、病弱少女は大切に大切に過ごしました。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:12:05.13 ID:fkwNsrOFO
- 恨んだ事しかなかった病気。
けれどそのお陰で人形と出会えたし楽しく遊べるのだと思えば、何だか自分の弱っちい体も悪くないと思えるのです。
(゚、゚トソン「ご飯ですよ」
ミセ*゚ー゚)リ「はーい」
(‘_L’)「最近、調子が良さそうだな」
ミセ*゚ー゚)リ「あー、そういえばたおれたりしてないや」
(‘_L’)「良い事だ」
頭をわしわし撫でられて、幸せだと病弱少女は笑います。
それからちょっとだけ人形の事を思い出して申し訳ない気持ちにもなるのです。
自分だけこんなに幸せで良いのかしら。
人形だってお母さんの所に帰りたいはずなのに。
ミセ; ー )リ「(でもかえしてあげらんない。ノーネのおかげで、いまたのしいんだもん。ノーネがいなくなったらまたツマンナクなっちゃう)」
いつか帰してあげられる日が来るだろうから。
机の引き出しにしまった、一枚の手紙が読まれる日がきっと来るから。
だから、それまでは。
( ノAヽ)「? 何か言ったノーネ?」
ミセ*゚ー゚)リ「んーん、なんにも」
少しの申し訳なさと、沢山の幸せを詰め込んだ日々。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:12:48.46 ID:fkwNsrOFO
けれど、そんな我が儘を通し続けた罰があたったのでしょうか。
また、病弱少女は倒れてしまいました。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:13:37.06 ID:fkwNsrOFO
- ミセ ─ )リ「(あー……)」
いつもより高い熱、動かない体。
酷い発作を起こした病弱少女をお医者さんや中尉、乳母が囲んでいます。
ミセ ─ )リ「(これはもうダメかもわからんね)」
(;‘_L’)「しっかりしろミセリ!」
(゚、゚;トソン「お嬢様……!」
ミセ ─ )リ「(よかった、これでやっと……)」
(; ´_ゝ`)「父者このままじゃマズイ!」
彡⌒ミ
(; ´_ゝ`)「解っている! しかしもうやれる事が……」
ミセ* ー )リ「(……ノーネをかえしてあげられる)」
(; _L )「ミセリっ」
暗く落ちていく意識。
それと交替に現れる青空。
人形が一体、ぽつんと立って居ました。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:14:13.19 ID:fkwNsrOFO
- ( ノAヽ)「ミセリ」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、ノーネ。わたしそろそろダメっぽいよ」
( ノAヽ)「軽いなおい」
ミセ*゚ー゚)リ「だってどうしようもないもん。じぶんのことはじぶんがいちばんよくわかるもんだよ。こんかいはサスガにもうダメだねー」
人形のツッコミを病弱少女はにこりと笑顔で受け止めます。
ミセ*^ー^)リ「ノーネのおかげでやりたかったことほとんどやっちゃったし。かけっこしたり、きのぼりしたり、ボールぶつけたり。ミセリ、ノーネのおかげですっごくたのしかったよ」
( ノAヽ)「……何か遺言みたいなノーネ」
ミセ*゚ー゚)リ「ゆいごんだよ。ミセリしんじゃうもん」
ひょい、と人形を抱き上げてほお擦りを。
そのふわふわの体を堪能します。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:14:46.95 ID:fkwNsrOFO
- ( ノAヽ)「……お前が死んだらノーネはどうなるノーネ」
ミセ*゚ー゚)リ「おとーさんにちゃんとてがみかいてあるよ。おかーさんのところにかえしてあげてって」
ミセ*^ワ^)リ「だからあんしんしてあそぼ! しぬまであそぼ!」
( ノAヽ)「洒落にならないノーネ」
ぶつぶつ言いながら病弱少女の腕から飛び降りた人形は、少し潤んだ瞳を見つめながら溜め息をつきました。
それから、ひょい、と手を振ってボールを呼び出します。
病弱少女の上にばらばらと。
ミセ* ー )リ「……ノーネ」
( ノAヽ)「決着、つけるノーネ」
ミセ#゚∀゚)リ「おーけい、あのときのかりかえしたらああああ」
跳ねるボールと一人と一体。
跳んで投げて駆けて遊べば人間と人形の差など何処にも無く。
ミセ#゚д゚)リ「あたれえええ」
( ノAヽ)「狙いが甘いノーネ」
人と人形が友達になっては変かしら。
人と人形が通じ合っては変かしら。
何だって、いいじゃない。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:16:26.66 ID:fkwNsrOFO
- ( ノAヽ)「なかなかやるノーネ」
ミセ*゚ー゚)リ「ただのびょーにんじゃないからね」
お互いに体力の限界。
次が最後の攻撃だと二人とも解っていました。
( ノAヽ)「えいっ」
先に動いたのは人形。
ボールを手に高く飛び上がり、病弱少女に向かって叩きつけます。
けれどそれをどうにか避けた病弱少女は勝ち誇った笑みを浮かべて、人形の腹へ──
ミセ*゚д゚)リ「あ」
ぽとりと、病弱少女の手からボールが落ちました。
よく見ると病弱少女の体は透き通り、きらきらと光の粒にばらけていっているのです。
ミセ*゚ー゚)リ「またけっちゃくつかなかったや」
( ノ∀ヽ)「どの道ノーネの勝ちなノーネ」
ミセ*゚д゚)リ「んなわけないじゃん、ミセリのかちだよ」
暮れていく空、沈む夕日を後ろに笑う病弱少女。
まだ透けていない頬に落ちた涙を人形の手が拭います。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:17:40.71 ID:fkwNsrOFO
- ミセ*;ー;)リ「カビちゃうよ?」
( ノAヽ)「だからこれは夢だって言ってるノーネ。……死にたくないノーネ?」
ミセ*;ー;)リ「しにたくないよ」
( ノAヽ)「うん」
ミセ*;ー;)リ「ビョウキがなおらなくてもいいから、みんなといっしょにいたい」
( ノAヽ)「うん」
ミセ ;д;)リ「わがままいわないから、いいこにしてるから、」
( ノAヽ)「うん」
_,,
ミセ ;д;)リ「もっと、ノーネとあそびたい」
( ノAヽ)「……うん」
顔をくしゃくしゃにして泣きはじめた病弱少女。
「不細工ミセリ」と悪態をつきながら人形は笑いました。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:18:36.54 ID:fkwNsrOFO
- ( ノーヽ)「ノーネも、お前の事嫌いじゃなかったノーネ」
その笑顔があまりにも優しくて。
常の人形ならば絶対に有り得ない、とけるような笑みを浮かべていたから。
( ノ∇ヽ)「バイバイなノーネ、ミセリ」
病弱少女はさよならも言えなかったのです。
( ;_L; )「ミセリ!」
目覚めた病弱少女を待っていたのは、涙を流す少尉と乳母と二人の医者と
( ノA::,..
ざっくり裂けた緑の人形。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:19:55.47 ID:fkwNsrOFO
―――――
───
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:20:29.59 ID:fkwNsrOFO
- 泣き崩れて眠ってしまったでぃを横抱きにモララーは持ち上げました。
それからそっとベッドに寝かせ、上から毛布を掛けてやります。
でぃの腕の中には形だけ取り戻した緑の人形。
けれど肝心の中身は空っぽで、もう人形達と話す事も、誰かの夢に現れる事もありません。
( ・∀・)「……」
所詮人ではない、人に似せられただけの魂は天にも行けず、ぱちりと弾けてそれでおしまい。
それでも病弱少女の代わりになった人形を、モララーは少しだけ羨ましく思いました。
_,,
ミセ ;д;)リ『ノーネが、ノーネ、ノーネをたすけて!』
大切な人の為に何か出来たなら。
その為に命を落としたなら。
きっと一生その人の中から自分が消える事はなくて。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/15(日) 03:22:39.29 ID:fkwNsrOFO
- 人形はそんな事考えても居なかったでしょうが、モララーはその考えにうっとりとしました。
自分が居なければでぃが駄目になってしまうと言いつつ勝手なものです。
カランカラン
物思いに耽る中、店の方からお客の来店を告げる音。
準備中の札を掛けたはずなのに、と首を傾げながら外に出ると少尉が立っていました。
元病弱少女と共にやってきて、深々と頭を下げたのはつい今朝の事です。
( ・∀・)「どうかなさいましたか?」
(‘_L’)「……」
(; ・∀・)「少尉殿?」
無言の少尉の左手に握られたのはずしりと重い──
形代人形 了
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