( ^ω^)僕の知らない地球 のようです

2 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:28:52 ID:n9HqO1T2O
 
「…………」


「…………ん」




 頭が痛い。
 随分と長く眠っていたようだ。

 しかし、目を開けてもそこには暗闇が広がるばかり。
 やがて、それは土の中に顔をうずめているからであるということに、ようやく気付くことができた。


(;^ω^)「…ぶはあ!!」


 顔を上げ、うつ伏せに寝ていたらしい体勢を直し、今度は仰向けに転がる。

 頭が痛い。

3 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:29:38 ID:n9HqO1T2O
 
(;^ω^)「はあ……はあ…っ」


 自らの左腕に喝を入れて、痛む額にだらしなく乗せた。
 こうしていると、この激しい頭痛も幾分か楽になる。


(;^ω^)「……」


 薄く目を開け、周りを見てみる。

 地面の感触で何となく予想がついていたが、そこはジャングルと呼ぶに相応しい、広大な密林のようだった。
 空は既に明るく、恐らく正午あたりだろうと推定できる。

 しかし、どこのジャングルにいるのかなんて全くわからない。


(;^ω^)「てゆうか……」

4 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:30:39 ID:n9HqO1T2O
 
 もっと知りたい情報、もっと理解できていない状況が多々ある。
 言うなれば、それは「今の状況」の全てがそうなのだが。


(;^ω^)「……」


 とりあえず自分の服装を見てみる。

 黒いTシャツに、米軍のマークがつけられた野戦服のようなズボン、ブーツ。
 腰にぶら下がるオートマチックの拳銃とナイフ。更に右足のブーツにもナイフがある。


(;^ω^)「……ますますわかんないお」


 兵士の格好で、ジャングルに倒れていた自分。

 何故だ。何が起こった。
 こうなる前の記憶が一切無い。
 思い出そうとすればするほど、頭も更に痛んでいく。

5 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:31:36 ID:n9HqO1T2O
 
 何も思い出せない。
 状況がわからない。

 その根本的なことでさえ、自分は何も知らない。


(;^ω^)「…僕は、誰なんだお」


 そう、自分という人間のことでさえ。



──

6 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:33:05 ID:n9HqO1T2O
`



( ^ω^)僕の知らない地球 のようです





7 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:33:53 ID:n9HqO1T2O
──



 暫く同じ体勢でいると、頭痛が大分収まってきた。
 とりあえず体を起こし、ゆっくりと立ち上がる。


( ^ω^)「…適当に歩いてみるかお」


 とにかく、せめて場所だけでも知りたい。
 その手掛かりを探るべく、茂みを掻き分けながら進み始めた。


 ようやくそれらしき手掛かりを見つけたのは、それから三時間が経った後だった。

8 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:34:56 ID:n9HqO1T2O
 
(;゚ω゚)「……!!」


 吐きそうになるのを無理やり堪え、その「手掛かり」から後ずさる。


 そこには、白骨化した人間の死体が転がっていた。
 着ている服やその大きさから、成人男性であることだけは伺えた。


(;゚ω゚)「はっ、はっ、…」


 大木にもたれ、尻餅をつきそうになるのを堪える。

 落ち着け、落ち着くんだ。
 そう言い聞かせながら、静かに目を閉じる。
 ゆっくりと深呼吸をして、また静かに目を開け、ようやく呼吸を整えることができた。

9 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:37:24 ID:n9HqO1T2O
 
(;^ω^)「……」


 改めて白骨死体を見る。
 民間人のような服を着ているが、自動小銃を手にしている。
 何らかの紛争、内戦に巻き込まれたような格好だ。

 さらに、その足元にはその男のものと思しき荷物があった。


(;^ω^)「………」


 ゆっくりと荷物に手を伸ばし、此方に引き寄せる。
 中には銃のマガジン、財布、手帳が入っていた。

10 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:38:17 ID:n9HqO1T2O
 
 まず財布を見てみる。
 免許証を取り出し、それを読み込むと、ようやく自分の居場所に大きな目星をつけることができた。


(;^ω^)「スペイン語…コロンビア国籍」


 コロンビア国籍の男の死体。
 もしここがコロンビアであると仮定すれば、この状況に説明はつきそうだ。

 国軍と革命軍が内戦を繰り広げるコロンビアで、この男は内戦に巻き込まれて命を失い、いずれかの軍に属しているであろう自分も倒れた。

 しかし本当にそうなのだろうか?
 自分が身にまとっている服には米軍を示すマークがつけられている。
 つまり、コロンビアの国軍でも革命軍でもない可能性がある。

11 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:38:57 ID:n9HqO1T2O
 
 それに、もし民間人と内戦が衝突した場合、場所はジャングルではなく市街地になるものだ。

 何らかの理由でジャングルで戦闘があったとしても、何かが気にかかる。


(;^ω^)「……」


 顔を上げ、周りを見渡す。

 静かすぎる。
 戦闘があったとはとても思えない。

 戦闘後の静けさじゃない。
 最初から何も起こらなかったような、自然の静寂だ。


(;^ω^)(だったら…)


 だったら、何故死体がある。

12 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:40:36 ID:n9HqO1T2O
 
 腑に落ちない点が色々あるが、とりあえず荷物に財布を戻して手帳を取った。

 手帳は最初の数ページしか書き込まれていない。
 それを眺め、スペイン語で書かれた文章を一字一句読み取る。


( ^ω^)「…"人間が裁かれる時が来た。人が産んだ化け物を、神は人間界に放った"」

( ^ω^)「"奴らはいつでも、どこにでも現れる。寝る暇も与えられないまま、人間は裁かれ、衰弱していく"」

( ^ω^)「"生き抜きたいなら、奴らを殺すことだ。弱点は人間とほぼ同じだ"」

( ^ω^)「"自分が助かると思うな。他の人間を守るために戦え。それが我が身を守ることとなる"」

13 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:41:14 ID:n9HqO1T2O
 
 なんだこれは。
 どこかのSF小説のような、妙な言葉が並べられている。

 裁き。化け物。身を守る。
 人間じゃない誰かに、この男は襲われたとでも言うのだろうか。

 馬鹿馬鹿しい。
 こんなことより、かなり気になり問題があるというのに。


(;^ω^)「…てか、何でスペイン語が読めるんだお」


 米軍の格好をしているが、南米で公用語となっているスペイン語もマスターしている。

 気味が悪い。
 自分は一体何者なのだ。


(;^ω^)「……」

14 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:42:10 ID:n9HqO1T2O
 
 とりあえず白骨から銃を取り、更にマガジンを失敬する。
 フレームがかなり劣化しているが、使用するにあたって問題は無さそうだった。


( ^ω^)「AKS-74U…ごついもん持ってるお」


 武器の知識もある。
 どうやら軍人であることには間違いなさそうだ。

 AKSー74Uと呼ばれる自動小銃を肩にかけ、白骨を背に歩き出す。

 それからすぐ、ジャングルから市街地へ抜ける道を発見することができた。

15 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:42:52 ID:n9HqO1T2O
 
 町の様子は酷く殺風景なものだった。

 ボロボロになった建造物の群れ、伸びきった雑草、廃棄されたかのような車。
 人の姿はない。


(;^ω^)「…嫌な雰囲気だお」


 銃のセーフティーを解除し、町に下りる。

 人の姿は無いが、人の気配は間違いなく感じる。
 スーパーマーケットと表記された、今にも崩れそうな建物に侵入した時だった。


(;^ω^)「!!」


 棚の陰で、何かが動いた。

16 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:43:48 ID:n9HqO1T2O
 
(;^ω^)「あ、あの…」


 恐る恐る声をかけると、「それ」はゆっくりと立ち上がり、此方に近づいてきた。

 男だ。
 背の低い男が、やけにゆっくりと歩み寄ってくる。


(;^ω^)「あの、お聞きしたいことがあるんですお」

(メノ‐゚)「……」

(;^ω^)「ここは何という町…って大丈夫ですかお!?怪我してるお!」


 よく見ると、男は顔面が傷だらけになっていた。

 しかし、様子がおかしい。
 顔から流れる血にも、その傷にも、まるで何も感じていないような。

17 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:44:50 ID:n9HqO1T2O
 
(;^ω^)「急いで治療したほうがいいお!近くに病院は…」

(メノ‐゚)「生き残りか」

(;^ω^)「…え?」

(メノ‐゚)「人、なのか」


 病院を探すため外に向かおうとすると、男が妙なことを口走った。

 生き残り、人。
 何を言ってるんだ。まだ状況は掴めてないが、少なくとも自分だってそうじゃないか。

 そう言おうと振り返った途端、その光景に思わず息が止まった。

18 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:45:26 ID:n9HqO1T2O
 
(メノ皿●#)「裁きを」


 目の前にいたのは、もはや人間ではなかった。

 大きく真っ黒な目、獣のような大きな口、歯。
 先ほどまで人間だったそれは、人とはかけ離れた「化け物」と化していた。


(;゚ω゚)「あ、あ」

(メノ皿●#)「人間に裁きを!!」

(;゚ω゚)「ヒッ!!」


 拳を振り回し、近くの棚を吹っ飛ばしていく化け物。
 人間の力じゃない。


(;゚ω゚)「うわっ、わあっ!!」

 店を飛び出し、入り口から距離を取る。
 直後、化け物が窓を突き破って飛び出てきた。

19 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:46:25 ID:n9HqO1T2O
 
(メノ皿●#)「フーッ、フーッ」

(;゚ω゚)「〜〜〜!!」


 肩に掛けていたAKS-74Uを反射的に取り、慣れた手つきで構える。

 こんな時でさえ、またも自分自身に驚いた。
 銃を扱った記憶すらないのだが、銃を持った途端、体が勝手に動いたのだ。


(メノ皿●#)「裁きをォォオオ!!」

(;゚ω゚)「!!」


 いや、驚いている場合じゃない。
 向かってくる化け物に、その銃口を向け、引き金を引く。

 しかし。

20 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:47:20 ID:n9HqO1T2O
 
(;゚ω゚)「ジャムかお!こんな時に!」


 弾詰まりだ。今それを直している暇はない。

 一発も銃弾を放つことなくAKS-74Uを投げ、自らの腰に下がる拳銃に手を伸ばす。
 しかし、その直後に化け物の突進が迫ってきた。


(メノ皿●#)「グオッ!!」

(;゚ω゚)「!!」


 それを紙一重でかわし、再度拳銃を引き抜く。
 構えた拳銃は、化け物が素早く繰り出した裏拳に弾き飛ばされた。

21 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:48:32 ID:n9HqO1T2O
 
(;゚ω゚)「ッッ!!」


 痺れる右手を抑えながら、震える足で後ずさる。

 すべてが、スローモーションに見える。


(メノ皿●#)「裁きを」


 化け物が右腕を上げ、拳を突き出す。

 途端、スローモーションの世界が現実に戻った。
 素早く繰り出された右腕を、反射的にかかえるようにキャッチし、肩を外す。


(メ;ノ皿●#)「グガアアアア!!」

(;゚ω゚)「ふんっ!」


 そのまま背後に回り、口と後頭部を押さえ、膝を折る。

 そして、静かに化け物の首を回した。

22 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:49:30 ID:n9HqO1T2O
 
(;゚ω゚)「はっ、はっ、はっ」


 崩れ落ちた化け物の横で、震える両手に目を向ける。

 なんだ今のは。
 そんな殺しをどこで覚えたのだ。

 あまりにも気味が悪い。
 自分という人間に、一種の恐怖を感じる。

 早く、記憶を取り戻したい。


(;^ω^)「……」


 弾き飛ばされた拳銃を戻し、弾詰まりを直したAKS-74Uを肩にかける。

 手がかりがほしい。
 この化け物達の正体と、自分自身の記憶を戻すための手がかりを。


──

23 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:51:18 ID:n9HqO1T2O
──


( ^Д^)「モララー大佐」

( ・∀・)「…プギャーか」


 真っ白な広い部屋。
 会議室のように机が並べられた中で、モララーと呼ばれた男は一人座っていた。

 そこに、彼の部下であろう男、プギャーが静かに入ってきた。


( ^Д^)「報告します。コロンビアのヤオイストリートで、一体のミュータントが死亡したようです」

( ・∀・)「死亡?」


 怪訝な顔をプギャーに向ける。
 だが、彼自身その情報を疑っているようだった。

24 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:52:02 ID:n9HqO1T2O
 
( ・∀・)「あり得ん。コロンビアにはミュータントしかいないはずだ」

( ^Д^)「ええ、ですが明らかに人間に殺されたとのことです」

( ・∀・)「……」


 考え込むように俯くモララー。
 やがて、静かに指示を下した。


( ・∀・)「…その人間を徹底的に探せ。見つけたら報告しろ。手は出すなよ」

( ^Д^)「はっ」


 指示が来た途端、プギャーは早足で部屋から出て行った。

 また一人になった室内で、モララーが小さく呟く。

25 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/09/18(日) 00:52:56 ID:n9HqO1T2O
 
( ・∀・)「…生き残りの抵抗勢力か、或いは…」


 まっすぐ前を見据えながら、机の上を指で叩く。

 そのうち、モララーは無意識のうちに口角が上がっている自分に気付いた。


( ・∀・)「それを上回る、"人間"なのか」


 長年探していたものが見つかったような。
 妙な胸の高鳴りを、モララーは確かに感じていた。



 第一話 終


戻る 次へ

inserted by FC2 system