( ^ω^)僕の知らない地球 のようです

57 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 19:45:23 ID:wIx/vkn.O
 
──



(;^Д^)「…モララー大佐」


 薄暗い部屋に居座るモララーに、プギャーが焦った様子で話しかける。
 モララーは横顔だけを向け、プギャーの報告に耳を傾けた。


(;^Д^)「コロンビア・ニコドーにて、五体のミュータントに生命反応が無くなりました」

( ・∀・)「五体…」

(;^Д^)「もはや人間の抵抗勢力としか思えません。早く潰さなければ…」

( ・∀・)「落ち着けプギャー」


 椅子から立ち上がり、テーブルに置いていた携帯電話をプギャーに投げる。
 慌ててそれをキャッチすると、モララーが静かに口を開いた。

58 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 19:46:43 ID:wIx/vkn.O
 
( ・∀・)「面白い話じゃないか。まずは試すんだ」

( ^Д^)「試す…?」


 携帯電話の画面を見る。
 どうやら被験体管理室へと電話をかけているようだ。


( ・∀・)「管理の連中に伝えろ。"コロンビアにソクラを放て"とな」

(;^Д^)「ソクラ…!」

( ・∀・)「早くしろ」

(;^Д^)「は、はい!」

59 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 19:47:40 ID:wIx/vkn.O
 
 プギャーが慌ただしく電話の相手と話し始める。
 再び椅子に腰掛けたモララーは、自分の口角が上がっていくのを無視しながら呟いた。


( ・∀・)「ミュータント類生物兵器、ソクラ」

( ・∀・)「万が一、奴を倒すことができたなら…」


 灰色の壁を見つめながら、静かに笑みを浮かべるモララー。

 まるで、子供が新しいオモチャを手にしたかのように。



──

60 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 19:48:48 ID:wIx/vkn.O
 
──


( ^ω^)「とりあえず今日中にはニコドーを出るお。車もあるみたいだし」

('A`)「そうか、寂しくなるな」

( ^ω^)「…アメリカに行けば、何か思い出すはずなんだお、多分」

( ^ω^)「ドクオも一緒に来るといいお!きっと楽しくなるお」


 ドクオの隠れ家の中で、ブーンは旅の準備をしながら話を進めていた。

 寂しそうに、しかし優しい笑顔でドクオが返す。


('A`)「…いや、俺は残るよ」

(;^ω^)「え?どうしてだお」

('A`)「コロンビアは俺の故郷だからさ。最後まで戦っていたいんだ、ここで」

61 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 19:49:31 ID:wIx/vkn.O
 
 また一人で行動するとなると、やけに心細く、そして寂しくなる。

 しかし、それがドクオの判断なら仕方ない。
 ブーンは笑顔をつくりながら頷いた。


( ^ω^)「…わかったお、気をつけるんだお」

('A`)「お前こそな。記憶が戻ったらまた来てくれ」


 ドクオはコロンビアに残り、ブーンはアメリカに向かう。
 一人にはなりたくないが、ある意味仕方のない判断でもあった。

 地上への扉を開け、校内にある車へと二人で歩く。

62 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 19:50:19 ID:wIx/vkn.O
 
 陽も沈みかけた世界で、二人は校舎裏の倉庫に着いた。

 中にはかなり古くなったジープがぽつんと待っていた。
 失礼ながら、少し不安になる外見だ。


(;^ω^)「…走れるのかお、これ」

('A`)「ちゃんとならしてあるから問題ない。ガソリンも一応入ってはいるが、もはや貴重な存在だ。大切にしてくれ」

(;^ω^)「良かった…ありがとうだお」


 助手席に荷物を置き、エンジンをかける。
 音を聞く限り、走行に問題は無さそうだった。


( ^ω^)「…それじゃドクオ、今まで本当に世話になったお。またどこかで会うお」

('A`)「ああ、元気でな」

63 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 19:52:20 ID:wIx/vkn.O
 
 徐々に車を進ませ、グラウンドへ出る。

 完全に姿が見えなくなる前に、もう一度ドクオの方へと振り返る。


 校舎の前で手を振るドクオ。
 その姿に向かって手を上げかけた途端。



('A`)「ブーン、逃げろ、早く」



 彼の姿は、大きな爆炎に包まれた。

64 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 19:53:15 ID:wIx/vkn.O
 

(;゚ω゚)「………え?」


 足が勝手に急ブレーキをかける。

 紅色の空に映える、大きな炎。
 激しく燃え盛る小学校の校舎。

 そして。



∬メ●皿#∬



 見覚えの無い化け物が、一体。



(;゚ω゚)「……!!」


 ミュータントだ。それは間違いない。

 しかし、他のミュータントと何か違う。
 「早く逃げろ」と本能が告げている。

65 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 19:53:58 ID:wIx/vkn.O
 
∬メ●皿#∬「……」


 やがて、化け物は片手に持った巨大な何かをブーンに向けた。

 それが見えた途端、ブーンはようやく現実に戻ることができた。


(;゚ω゚)「RPG…!?」


 急げ。逃げろ。

 自分に喝を入れながらアクセルを踏み、ハンドルを全力で切る。
 車が走り出した直後、その後ろでまたも爆発が起きた。


(;ーω゚)「くっ…!!」

 車体が大きく揺れ、グラウンドから舞う砂埃がブーンを襲う。

 それでも、どうにか校内から出ることができた。

66 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 19:55:10 ID:wIx/vkn.O
 
∬メ●皿#∬「……逃が、さない…」


 砂埃の舞うグラウンドを歩き、自らが乗ってきた大型バイクに跨る。
 旧型のジープなど、すぐに追いつけるモノだ。

 RPGの巨大な砲身を背中にかけ、エンジンをかける。


∬メ●皿#∬「…殺す、人間、ぜんぶ」


 ブーンの走り去った方向へ、バイクは勢い良く走り出した。


∬メ●皿#∬「…殺して、やる…」


 強烈な殺意を、その身に乗せながら。



──

67 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 19:55:50 ID:wIx/vkn.O
 
──


(;^ω^)「……」


 舗装された直線道路を走りながら、ブーンは武器の用意を始めた。


 見知らぬ化け物が、ドクオを殺してしまった。
 そして恐らく、奴は自分も殺す気だ。


(;^ω^)「なんなんだお…あの化け物は……」


 あの一瞬、本能が告げていた。
 戦ってはいけない相手だ、と。

68 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 19:57:49 ID:wIx/vkn.O
 
 それもそうだろう。
 対戦車ロケット砲、RPGー7を片手で軽々と発射させるような化け物だ。
 人間が勝負を挑める存在じゃない。


 しかし、それだけではない気がする。

 戦うことを躊躇わせた理由を、奴は身に纏っていたはず。
 確か──



∬メ●皿#∬「逃がさ、ない」

(;^ω^)「!!」


 考えている暇はない。
 ジープのサイドミラーに、バイクに跨ったあの化け物が映った。

69 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 19:58:33 ID:wIx/vkn.O
 
(;^ω^)「…レースでもする気かお!」


 アクセルを踏み込み、一気に加速させる。
 しかし、後ろのバイクはお構いなしに距離を縮めてくる。


(;^ω^)「くそっ!ジープ如きじゃ追いつかれるお!」


 どうすればいい。
 もし確実に照準できる距離に詰められて、もう一度あのRPGー7を向けられたら。

 間違いなく、命はない。


(;^ω^)「…やっぱりこれしかないかお」


 舗装された直線道路で勝ち目はない。
 ならば、ジープの特性を生かした勝負に持ち込むしかない。

70 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 19:59:32 ID:wIx/vkn.O
 
( ^ω^)「ふんっ!」

∬メ●皿#∬「!」


 道路から外れ、砂利の上へと車を走らせる。
 後ろのバイクもその後を追うが、安定がとれないためかスピードを落としていく。


( ^ω^)「次は獣道だお!!」

∬メ●皿#∬「!」


 砂利を走り、その向こうのジャングルへと車ごと突っ込んでいく。

 四輪駆動の先駆けとなったジープだからこその芸当。
 ジープなら木の根や土の上も安定して走ることができる。

 しかし、それがバイクとなるとそうはいかない。
 オフロードバイクでもない限り、このような悪路を走破するのは困難になる。

71 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 20:00:46 ID:wIx/vkn.O
 
∬メ●皿#∬「ク、ガ、…」


 案の定、化け物は不安定にバイクを操り続ける。

 やがて、バイクは勢いよく滑り、大木に激突した。


( ^ω^)「!」

 ジープを止め、後ろを振り向く。

 直後、激突したバイクが爆発を起こした。
 辺りに部品が散らばり、木々が燃え盛っていく。


( ^ω^)「…どうにか上手くいったお」


 化け物の体ごとバイクが滑ったのも確認した。
 生存するのは不可能だろう。

72 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 20:01:31 ID:wIx/vkn.O
 
 前に向きなおり、そのままジープを進める。


(;^ω^)「……」


 しかし、何故だ。
 何故、妙な胸騒ぎがする。

 何故、まだ奴の気配を感じる。


(;^ω^)(……)


 助手席からAKSー74Uを取り、車を止める。

 そのままゆっくりと降りようとした途端。
 ブーンの眼前に、RPGー7の砲身が迫ってきた。


∬メ#●皿#∬「ガアアアアア!!」

(;^ω^)「!!」


 体を倒しながら攻撃を避け、相手の胴を蹴る。
 その反動で、ブーンは転がるようにジープから出ることができた。

73 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 20:02:43 ID:wIx/vkn.O
 
 体勢を立て直し、銃口と共に相手を見る。


(;^ω^)「……え」


 ブーンが戦うことを躊躇わせた理由。
 それは化け物の服装にあった。

 野戦服のようなズボン、米軍のマーク。
 腰にかけられた銃とナイフ、そして右足のナイフ。

 メインウェポン以外の装備のレイアウトが、全てブーンと一致しているのだ。


(;^ω^)「正直に答えろお」

∬メ●皿#∬「……」


 銃口を向けたまま、ブーンが口を開く。
 対する化け物は、ブーンを見据えたまま微動だにしない。

74 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 20:03:32 ID:wIx/vkn.O
 
(;^ω^)「お前、名前は?」

∬メ●皿#∬「ソ、ソクラ…」

(;^ω^)「ソクラ…」

(;゚ω゚)(ソクラ……)


 どくん、と心臓が跳ね上がる。
 頭が割れるように痛む。

 知っている。
 この化け物を、「ソクラ」という名前を知っている。




    『被験体8番、反応あり』

    『"ソクラ計画"唯一の成功です』


(;゚ω゚)


    『よし、8番を演習場へ。他の被験体は別の計画に移せ』

    『おはよう"ソクラ"、我が息子よ』

75 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 20:04:46 ID:wIx/vkn.O
 
 真っ白な天井。
 響き渡る複数の男の声。

 失われた記憶の雫が、ひとつ、ブーンに零れ落ちた。


∬メ●皿#∬「…死、ね」

(;^ω^)「!」


 RPGー7を向ける「ソクラ」の腕に、AKSー74Uのフルオートの弾幕を浴びせる。
 ソクラの持つRPGー7が、その右腕ごと吹き飛ばされた。


∬メ#●皿#∬「…殺す」

(;^ω^)「!!」


 残った左腕でナイフを抜き、途轍もないスピードで迫る。
 その姿に引き金を引く前に、ソクラはブーンの視界から消えた。

76 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 20:06:05 ID:wIx/vkn.O
 
(;^ω^)(チッ…)


 ジャングル内での視界の悪さを利用したカモフラージュ。
 どこかの木々を移動しながら、確実にブーンへと迫ってくる。


(;^ω^)(あくまで接近戦を挑む気かお)


 ナイフを構え、辺りの木々を360度警戒する。

 やけに静かだ。


(;^ω^)「……」


 どこだ。どこから来る。
 どこに潜んでいる。

 神経を研ぎ澄まし、視野を広げ、相手を探る。

 直後、ブーンの真上から、静かに木の葉が落ちてきた。


(;^ω^)(──真上!!)

77 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 20:07:12 ID:wIx/vkn.O
 
∬メ#●皿#∬「ガアッ!!」

( ^ω^)「フンッ!!」


 真上から体ごとナイフを振り下ろしてきた相手を避け、距離を取る。

 とても片腕が無い状態とは思えないほどの威圧感。
 短い睨み合いの末、ソクラが先に手を出した。


∬メ●皿#∬「ガアア!!」

( ^ω^)「シッ!」


 順手に握ったナイフをうねらせ、変幻自在に繰り出すソクラ。
 その軌道を、全てナイフで流していく。

78 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 20:08:34 ID:wIx/vkn.O
 
 強い。
 だが、全ての軌道が見える。


( ^ω^)(今だ!)

∬メ●皿#∬「!?」


 ソクラの突きをナイフで流し、手首を掴み、そのまま後ろ回し蹴りで倒しながら腕を固定する。

 うつ伏せに倒れた体と、固定された左腕と、首に当たるナイフの刃。


( ^ω^)「僕の勝ちだお」

∬メ;●皿#∬「グ、ガア、ア…」


 揺るぎない勝利が手渡されたのは、ブーンの方となった。

79 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 20:09:40 ID:wIx/vkn.O
 
( ^ω^)「死にたくなかったら、僕の質問に全て答えるお」


 ソクラの首にナイフを当てながら、ブーンが続ける。


( ^ω^)「お前、記憶はあるかお?」

∬メ●皿#∬「……わから、ない」

( ^ω^)「どうして僕を殺そうとしたんだお」

∬メ●皿#∬「人間は、殺す、べき」

( ^ω^)「……」


 人間は絶滅すべき。
 やはり、ミュータントの思想が完全に根付いている。

80 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 20:10:21 ID:wIx/vkn.O
 
( ^ω^)「最後の質問だお」


 ナイフを握る手に、力が入る。


( ^ω^)「僕のこと、知ってるかお」

∬メ●皿#∬「………」


 沈黙。
 答えろ、と念を押そうとした途端。

 ソクラが、自らナイフに首を差し出した。


(;^ω^)「なっ…!!」

∬メ;●皿#∬「〜〜ッッ」


 深く食い込んでしまったナイフを引き抜くが、もう遅かった。

 ソクラは激しく痙攣したあと、ゆっくりと固まっていった。

82 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 20:12:00 ID:wIx/vkn.O
 
(;^ω^)「クソっ!!」


 地面を殴り、ニコドーの街の方を見る。
 黒煙が上る小学校を見据えながら、ブーンは小さく呟いた。


( ^ω^)「ドクオ…すまないお」


 AKSー74Uを取り、ジープへと戻る。

 ニコドーの街と、ドクオとの約束と、ソクラの死体。
 それらを背にして、ブーンはジープを走らせていった。



──

83 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 20:12:43 ID:wIx/vkn.O
 
──



(;^Д^)「…被験体ソクラ、死亡が確認されました」

( ・∀・)「そうか」


 背を向けたままプギャーの報告に応えるモララー。
 その声色は、どこか嬉しそうだった。


( ^Д^)「それと、ソクラを含む7体のミュータントをコロンビアで殺した犯人が特定できました」

( ・∀・)「…なんだと?」


 モララーが興味深けに振り向く。
 何かを期待するような瞳が、プギャーを捕らえた。


( ^Д^)「衛星からの映像でわかりました。奴はここを脱走した、被験体11番に間違いありません」

84 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/11/20(日) 20:13:32 ID:wIx/vkn.O
 
( ・∀・)「11番…?」

( ・∀・)「……はは、そうか…」


 薄笑いを浮かべながら、またプギャーに背を向ける。


( ・∀・)「…面白いことになってきたな」


 これで、また別の戦争になってしまう。

 人間と、ミュータントと、
 新しい「人間」との。



 第三話 終


戻る 次へ

inserted by FC2 system