- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:28:47.42 ID:WpbDyZAu0
第一話【旅の思い出】
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:30:25.43 ID:WpbDyZAu0
- とりあえず今夜は魔王の城のそばの小さな街で疲れを癒やすことにした。
街に着くと同時に、たくさんの拍手や歓声に迎えられた。
('A`)「いやー、英雄ってのはこういうもんだよな」
僕は少し恥ずかしい気もしたが、ドクオはまんざらでもない様子だ。
ξ゚听)ξ「とりあえず宿をとりましょう。もうくたくたよ」
村人が駆け寄ってきた。
「勇者一行さま、宿ならもう準備できております。ご馳走も用意してありますので」
( ^ω^)「そんなに気を使わなくても……」
「いえいえ、あなたがたは世界を救ったのです。是非おもてなしさせてください」
('A`)「是非おもてなししてもらおうぜ!」
( ^ω^)「じゃあお言葉に甘えて」
僕たちは世界を救ったんだ。
改めて実感できた。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:32:18.51 ID:WpbDyZAu0
- ('A`)「乾杯!」
( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ -゚)「乾杯!!」
('A`)「今日の酒は格別だな!!」
ドクオの言うとおり、世界を救ったあとの酒は最高だった。
続けて食事も運ばれてきた。
この小さな街で用意できるかぎり最高のもてなしなのだろう。
実際、質素だが素晴らしかった。
ξ゚听)ξ「こんなご馳走生まれて初めてよ!」
川 ゚ -゚)「温泉も最高だったぞ」
( ^ω^)「久しぶりにゆっくり風呂に入ったお」
('A`)「ああ、旅の疲れが吹き飛んだよ」
僕らはひたすら旅の思い出を語った。
こんなに楽しい時間は久しぶりだった。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:34:29.55 ID:WpbDyZAu0
- ('A`)「竜の洞窟はマジでヤバかったよな」
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「全員無事に脱出できたのが今でも信じられないわ」
川 ゚ -゚)「誰だかさんが竜の尻尾を踏んづけたせいだったな」
みんなが一斉に僕の方を向く。
( ^ω^)「そんなことあったかお?」
('A`)「とぼけやがって。ほんと死ぬかと思ったんだぞ」
ξ゚听)ξ「まったくよ」
( ^ω^)「そうだったかお」
僕は曖昧に笑ってごまかした。
竜の洞窟。
でも、いくら思い出そうとしても、全く思い出せない。
どうしてだろうか。
さっきも同じようなことが何回かあった。
まるで記憶の中にぽっかり穴が開いたような。
しかし、おかしなことはそれだけじゃなかった。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:37:19.17 ID:WpbDyZAu0
- ξ゚听)ξ「どうしたの?」
( ^ω^)「いや、なんでもないお」
ξ゚听)ξ「……」
いったい僕はどうしてしまったんだ。
お酒を飲みすぎたのだろうか。
('A`)「それでさー、あんときに俺が……」
目の前にいる男の名前がわからないのだ。
川 ゚ -゚)「どうした?」
( ^ω^)「飲みすぎたお。ちょっと風に当たってくるお」
川 ゚ -゚)「そうか」
('A`)「ブーン、この残ってる肉貰っていいか?」
( ^ω^)「え? ああ、いいで……いいお」
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:39:13.96 ID:WpbDyZAu0
- 僕はひとり、ベランダに出た。
夜風が心地良い。
世界は、久しぶりに平和な夜を迎えた。
僕ら四人が、この平和を取り戻した。
四人?
僕と、ツンと、クーと、あともう一人が思い出せない。
さっきの彼がその一人なのだろうか。
しかし、彼のことを全く思い出せない。
ξ゚听)ξ「ブーン?」
名前を呼ばれて振り向くと、ツンがいた。
( ^ω^)「どうしたお」
ξ゚听)ξ「それはこっちのセリフよ。あんた、なんか変よ」
( ^ω^)「変とは失敬な」
ξ゚听)ξ「いや、変よ。いつも以上に」
( ^ω^)「そうかお?」
ξ゚听)ξ「しらばっくれても無駄よ。だてに幼なじみやってないわ」
( ^ω^)「……」
ξ゚听)ξ「話してよ」
ツンがベランダの柵に寄りかかり、真剣な目で僕を見た。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:41:53.08 ID:WpbDyZAu0
- ( ^ω^)「もしかしたら……」
ξ゚听)ξ「もしかしたら?」
( ^ω^)「記憶が消えてるんだお」
ξ゚听)ξ「え?」
ツンは目を丸くした。
ξ゚听)ξ「記憶が消えてるって?」
( ^ω^)「そのまんまだお」
僕は言おうか一瞬戸惑ったが、ツンの真剣な表情を見て決心した。
( ^ω^)「さっきクーの隣に座っていた男が誰だか思い出せないんだお」
ξ゚听)ξ「は? ドクオのこと?」
ドクオ。
名前を聞けば思い出すかもしれないと思ったが、甘かった。
それは生まれて初めて聞いた名前に等しかった。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:43:29.79 ID:WpbDyZAu0
- ξ゚听)ξ「それはマジで言ってるの?」
( ^ω^)「マジだお。他にも思い出せないことがいくつもあるお」
ξ゚听)ξ「うーん……教会に行って見てもらうしかないわね」
教会に行って治るものだろうか。
ただの呪いの類ならいいが。
ツンが僕の腰の辺りに目をとめた。
( ^ω^)「どうしたお?」
ξ゚听)ξ「いや、あんた時の剣どうしたの?」
( ^ω^)「時の剣?」
ξ゚听)ξ「無いじゃない」
( ^ω^)「時の剣ってなんだお?」
ξ゚听)ξ「あー……もしかしてそれも思い出せないの?」
時の剣。
さっぱりだ。
僕は首を横に振った。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:45:47.54 ID:WpbDyZAu0
- ξ゚听)ξ「あんた、自分が勇者なのは覚えてるよね?」
( ^ω^)「もちろんだお」
ξ゚听)ξ「なんで勇者になったのかは?」
( ^ω^)「えーっと……」
そういえばなんで僕は勇者になったんだろう。
ξ゚听)ξ「思い出せないのね。あんたが村の裏にある祠でこの剣を抜いたからよ」
( ^ω^)「へぇー」
そんなことがあったのか。
ξ゚听)ξ「けっこう重症ね。明日すぐにでも教会に行きましょう」
( ^ω^)「そうするお」
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:47:26.30 ID:WpbDyZAu0
- ξ゚听)ξ「じゃあ、私はみんなのところに戻るけど」
( ^ω^)「僕は先に部屋に戻るお」
ξ゚听)ξ「わかったわ」
( ^ω^)「ツン」
僕はツンの背中に声をかけた。
ξ゚听)ξ「なによ」
( ^ω^)「ごめんだお。なんかいろいろ迷惑かけて」
ξ゚听)ξ「平気よ。あんたを助けるためにわざわざここまで付いて来たんだから」
そう言って、ツンは食堂の方へ歩いていった。
このままいつか、ツンのことも忘れてしまうんじゃないか。
一瞬、そんな恐怖に襲われた。
明日、すぐに教会に行こう。
きっとそこで治るだろう。
きっと。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:48:56.40 ID:WpbDyZAu0
- 〜〜〜〜〜〜
('A`)「ブーンはどうした?」
ξ゚听)ξ「疲れたから寝るって」
('A`)「そりゃそうだろうな。世界を救った張本人なんだからな」
川 ゚ -゚)「ツンは疲れてないのか? あんな一人で駆け回ってて」
ξ゚听)ξ「全然。武闘家を魔法使いや弓使いと一緒にしてもらっちゃ困るわ」
川 ゚ -゚)「そうか」
クーが笑った。
二人とも、ブーンの変化には気づいてないようだった。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:51:30.93 ID:WpbDyZAu0
- ξ゚听)ξ「みんな、これからどうするの」
('A`)「俺は故郷の村に帰るかな。カーチャンにはやく元気な顔見せてやんないと」
川 ゚ -゚)「私も一旦自分の村に帰るよ。それから一人旅でもしようかなと思ってる」
ξ゚听)ξ「そっか」
('A`)「ツンはブーンと同じ村だよな」
ξ゚听)ξ「そうね。まずはあいつを無事に村に帰らせなきゃ」
('A`)「あいつ一人だと絶対迷うもんな」
川 ゚ -゚)「ブーンはほんと、ツンがいないとダメだな」
私は無理して笑った。
でも、事態は大事かもしれない。
もしブーンの呪いがとけなかったら。
このままブーンの記憶が消え続けたら。
私がブーンを助けてあげなきゃ。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:52:56.00 ID:WpbDyZAu0
- 〜〜〜〜〜〜
( ^ω^)「お……」
朝だ。
隣のベッドには知らない男、ドクオが寝ている。
僕は服を着替え、下の食堂に下りた。
「おはようございます勇者さま。朝食の準備は出来ております」
( ^ω^)「ありがとうございますお」
勇者さまか。
魔王を倒しただけなのに。
そもそもなんで魔王を倒したんだっけか。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:54:23.30 ID:WpbDyZAu0
- ξ゚听)ξ「おはよ」
後ろから頭を叩かれる。
ξ゚听)ξ「私のこと覚えてる?」
( ^ω^)「もちろんだお」
ツンだ。
忘れてはいない。
僕は少し安心した。
ξ゚听)ξ「どう? なんか思い出した?」
ツンがパンを頬張りながら僕に聞いた。
( ^ω^)「なんも。何を忘れたかすらわかんないからどうしようもないお」
ξ゚听)ξ「そう。食べ終わったら教会に行きましょ」
僕は頷いてミルクを飲み干した。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:56:50.75 ID:WpbDyZAu0
- ( ゚∀゚)「よう、なんか用か迷える子羊ども」
教会に入るなり出迎えたのは金髪にピアスの、やたらとパンキッシュな男だった。
どう見ても神父には見えない。
ξ゚听)ξ「あー……神父さんに用があるんだけど」
( ゚∀゚)「いやいや、俺が神父だよ」
( ^ω^)「こんな神父がいるかお」
( ゚∀゚)「口のききかたに気をつけな。バチがあたんぞ」
男は十字架のロザリオを僕の目の前に突きつけた。
どうやら本当に神父のようだ。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/15(水) 23:58:51.09 ID:WpbDyZAu0
- ( ゚∀゚)「おまえらは運がいいな。ちょうど今朝帰ってきたところだからな」
男は剣を壁に立てかけた。
そもそもなんで神父が剣なんか持ってるんだ。
ξ゚听)ξ「帰ってきたって?」
( ゚∀゚)「魔物退治を引き受けてるんだ。看板見なかったのか?」
( ^ω^)「いや」
( ゚∀゚)「まあいいや」
男は上着を脱ぎ捨てて椅子に腰掛けた。
腕には入れ墨が彫ってある。
( ゚∀゚)「で、あんたら神父の俺様に用があるんじゃなかったのか?」
( ^ω^)「ああそうだったお」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:01:30.54 ID:gVeMdUHx0
- ξ゚听)ξ「記憶が消える呪いを解いて欲しいの」
男は顔をしかめた。
( ゚∀゚)「記憶が消える呪い? 聞いたことねえな」
( ^ω^)「そうかお。じゃあ他を……」
( ゚∀゚)「俺が知らないんだからこの国に知ってるやつはほとんどいないだろうな」
ξ゚听)ξ「どういうこと?」
( ゚∀゚)「いちおうこの国も最高の神父だぜ、俺は?」
( ^ω^)「嘘をつくなお」
( ゚∀゚)「嘘じゃねえよ」
ξ゚听)ξ「それにしても困ったわね」
教会じゃ無理ということか。
一気に希望が失われたように思えた。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:03:10.81 ID:gVeMdUHx0
- ( ゚∀゚)「……」
男が僕の顔をまじまじと見つめた。
(;^ω^)「なんだお」
( ゚∀゚)「おまえ、勇者か?」
( ^ω^)「まあそうらしいお」
( ゚∀゚)「時の剣を抜いたっていう」
( ^ω^)「えっと……」
ξ゚听)ξ「そうよ」
( ゚∀゚)「ちょっと待ってろ。もしかしたら……」
男がなにやら呪文を唱えると、本棚から一冊の分厚い本が飛んできた。
ツンも僕も目を丸くした。
物体移動呪文。
簡単に見えるが超高等魔法だ。
この男、どうやら本当にすごいらしい。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:05:34.44 ID:gVeMdUHx0
- ( ^ω^)「その本はなんだお?」
( ゚∀゚)「時の剣に関する伝承だ」
男がぱらぱとページをめくる。
( ^ω^)「何かわかったかお?」
( ゚∀゚)「これだな」
僕は机の上に開かれた本を見た。
ミミズがのたくったような文字が書かれている。
( ^ω^)「読めないお」
ξ゚听)ξ「古代文字ね。読めるの?」
( ゚∀゚)「ああ」
男は最後の項目を指差した。
( ゚∀゚)「『持ち主の“時”と引き換えに、持ち主を死から救う』だそうだ」
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:06:59.15 ID:gVeMdUHx0
- ( ゚∀゚)「あんた、いつか死にかけたか?」
( ^ω^)「僕かお?」
ξ゚听)ξ「私が知ってる限りでは無いわね。魔王との戦いは?」
ツンが僕の顔を見た。
魔王との戦いは鮮明に覚えている。
ただ、どうやって倒したのかだけが思い出せない。
僕の記憶は、僕が負けるところで終わっている。
鮮血。
消えていく体の感覚。
あれが死だとしたら。
( ^ω^)「死にかけたお」
( ゚∀゚)「ほんとか?」
( ^ω^)「たぶんだお。でも、そのあとが思い出せないお」
( ゚∀゚)「おそらくそこで剣に救われたんだろうな」
ξ゚听)ξ「“時”と引き換えっていうのは?」
( ゚∀゚)「記憶のことだろう」
全ての辻褄があった気がした。
僕は、自分の記憶と引き換えに魔王を倒したんだ。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:10:07.91 ID:gVeMdUHx0
- ξ゚听)ξ「記憶を取り戻す方法は?」
( ゚∀゚)「書いてないな」
ξ゚听)ξ「治す方法も?」
( ゚∀゚)「ああ。なんも」
ξ゚听)ξ「そんな……」
ツンはまるで自分のことかのように落ち込んだ。
( ^ω^)「大丈夫だお。なんとかなるお」
ξ゚听)ξ「なんであんたに慰められなきゃならないのよ」
ツンが僕の額を小突いた。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:12:32.46 ID:gVeMdUHx0
- ( ゚∀゚)「まだ諦めるには早いぞ」
男が本の背表紙を指差した。
古代文字なのだからさっぱりわからないのだが。
( ゚∀゚)「時の剣を作った賢者の名は?」
ξ゚听)ξ「大賢者長岡?」
( ゚∀゚)「俺のひいひいひいひいひいじいちゃんだ」
僕もツンも驚きのあまり言葉を失った。
( ゚∀゚)「ま、俺は勘当されてるがな」
男がいたずらっぽい笑みを浮かべた。
やはりこの男、ただ者じゃないようだ。
( ゚∀゚)「流石に大賢者さまはもう死んでるけど、親父になら会えるぜ。何か知ってるかもな」
( ^ω^)「ほんとかお!」
( ゚∀゚)「俺はジョルジュ長岡。ジョルジュでいい」
( ^ω^)「ブーンだお」
ジョルジュが仲間になった。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:14:40.33 ID:gVeMdUHx0
- ( ゚∀゚)「『しばらく開けます』っと」
ジョルジュが教会の扉に貼り紙をしている。
( ^ω^)「悪いお」
( ゚∀゚)「いやいや、俺もちょうど用があったところだしな」
ξ゚听)ξ「それでブーン、クーとドクオには?」
( ^ω^)「……」
クーは生死を共にした仲間だ。
ドクオだってきっとそうだ。
やはり、ちゃんと事情を話さなくては。
( ^ω^)「僕から説明するお」
ξ゚听)ξ「わかったわ」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:17:08.37 ID:gVeMdUHx0
- 食堂に入ると、クーとドクオが遅めの朝食をとっていた。
('A`)「よう、お二人さん。朝からどこ行ってたんだ?」
( ゚∀゚)「勇者の仲間って、もっと凄そうなヤツらだと思ってたぜ」
ジョルジュが僕に耳打ちした。
たぶんあんたが一番すごい人だと思うが。
川 ゚ -゚)「誰?」
( ゚∀゚)「あー、ジョルジュだ。この街の神父だ。よろしくな」
('A`)「神父? 嘘つくなよ」
( ゚∀゚)「嘘じゃねえよ」
川 ゚ -゚)「で、神父さまがなんでいるんだ?」
( ^ω^)「僕が説明するお」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:20:50.59 ID:gVeMdUHx0
- 僕が説明しようと椅子に座ったときだった。
食堂の扉が開き、なにやら武器を持った人たちがぞろぞろと入ってきた。
( ゚∀゚)「お、守備隊じゃねえか。揃いに揃ってどうしたよ?」
( ゚д゚ )「ジョルジュさん、そいつらから離れてください」
リーダー格の男がそう言った。
( ゚∀゚)「離れるって……」
男の背後の数人が、矢を引き絞ったのが見えた。
瞬間的にクーが前に飛び出し、放たれたそれを空中で掴んだ。
川 ゚ -゚)「なんの真似だ」
( ゚д゚ )「弓使いのクーか。素手で矢を止めるとは、噂以上だな」
男が剣を抜く。
(;゚∀゚)「おいミルナ! 状況を説明しろ!」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:22:35.29 ID:gVeMdUHx0
- ( ゚д゚ )「あなたには関係のな……」
ツンの蹴りが男の顔面に入った。
かと思えた。
( ゚д゚ )「手荒な女性だ」
男の手はツンの足をしっかりと掴んでいた。
( ゚д゚ )「しかし所詮は女。スピードが……」
そう言い終わる前に、男は吹き飛んだ。
ツンの目にも止まらぬ二撃目が男を襲ったのだ。
初撃とは比にならないスピードの蹴りは、しっかりと男の顎を捕らえた。
ξ゚听)ξ「私が足止めするから、その間に二人は二階に装備を……」
('A`)「わかった!」
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:24:41.68 ID:gVeMdUHx0
- ( ゚∀゚)「待て!」
ジョルジュがそれを制した。
( ゚∀゚)「おまえらの武器は二階にあるんだな?」
川 ゚ -゚)「ああ」
( ゚∀゚)「五秒待て」
そういうや否や、ジョルジュは杖をかざして呪文を唱えた。
どこからともなく、弓矢と杖が現れた。
(;'A`)「マジかよ……」
ドクオが驚愕した。
それも当然だ。
物質空間移動呪文。
空間魔法の中でも最高レベルの魔法だ。
( ゚∀゚)「ほら、おまえはこれを使え」
ジョルジュは腰にあった剣を僕に手渡した。
( ^ω^)「助かるお」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:26:46.05 ID:gVeMdUHx0
- ( ゚д゚ )「勇者の味方をするんですか」
男が立ち上がり、服の埃を払いながら言った。
( ゚∀゚)「文句でも?」
( ゚д゚ )「いや、別に」
( ゚∀゚)「おまえら、逃げるぞ」
ジョルジュが身を翻し、窓から外に飛び出した。
( ゚∀゚)「来い!」
( ゚д゚ )「逃がすな! 五人とも仕留めろ!」
飛んでくる矢を剣で叩き落とす。
よかった。戦い方はまだ忘れちゃいない。
('A`)「ちょっと待ってろ」
ドクオが手をかざす。
炎の壁が、僕らと敵の間に現れる。
( ゚д゚ )「くそっ!」
( ^ω^)「ナイスだお!」
( ゚∀゚)「こっちだ!」
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:29:10.56 ID:gVeMdUHx0
- ( ^ω^)「はぁ……はぁ……まいたかお?」
( ゚∀゚)「そのようだな」
僕らは街から少し離れた森の中に身を潜めていた。
('A`)「いったいなにが……」
( ^ω^)「さあ」
川 ゚ -゚)「敵は守備隊だったぞ」
( ゚∀゚)「魔王軍に味方したんだろうよ」
川 ゚ -゚)「どうしてわかる」
( ゚∀゚)「あのミルナって野郎は魔王軍と繋がりがあると俺はずっと思ってたんだ」
ジョルジュは舌打ちをしながら木の根元に腰を下ろした。
( ゚∀゚)「あの野郎、昔からあの目が気にくわなかったが……」
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:31:07.77 ID:gVeMdUHx0
- ('A`)「ちょっといいか?」
ドクオがジョルジュを見つめながら言った。
('A`)「さっきの空間魔法見たぞ。あんたただもんじゃないだろ」
( ゚∀゚)「んー、ジョルジュ長岡。ただの神父だよ」
('A`)「長岡? もしかしてあの大賢者とつながりが?」
( ゚∀゚)「俺の遠い御先祖様だ」
(;'A`)「わーお。大賢者の子孫か……」
川 ゚ -゚)「で、大賢者さまの子孫がなんでこんなところに?」
ジョルジュが僕に目配りした。
( ^ω^)「僕が話すお」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:33:16.87 ID:gVeMdUHx0
- 僕は、今僕の身に起きていることを覚えている限り話した。
('A`)「そうか……」
( ^ω^)「ごめんだお。ドクオのことは何も思い出せないんだお」
ドクオは悲しそうな顔をした。
('A`)「ま、しょうがないさ。それより早く、その呪いを解かないとだよな」
( ゚∀゚)「解けると決まったわけじゃねえ。手がかりが得られるかもしれないってだけだ」
ξ゚听)ξ「その村は遠いの?」
( ゚∀゚)「んー。歩いて二日かな。街で馬を借りるつもりだったが、もう無理だな」
('A`)「そうと決まったら今すぐにでも出発しよう」
( ゚∀゚)「ああ。敵もいるしな」
ジョルジュが立ち上がり、僕らもそれに従う。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/16(木) 00:36:08.06 ID:gVeMdUHx0
- ξ゚听)ξ「それにしても魔王軍のやつら、ほんとしつこいわね」
('A`)「もう少しだけ街でゆっくりしてたかったよなあ」
ドクオがぼやいた。
('A`)「まさか魔王を倒したあともこんな目にあうとはな」
( ^ω^)「え?」
魔王を倒した?
誰が?
( ^ω^)「魔王は死んだのかお?」
('A`)「もしかして覚えてないのか?」
ξ゚听)ξ「あんたが倒したのよ」
( ^ω^)「そんな……」
魔王が死んだ。
僕の記憶が正しければ、やつは何度も戦ってきた好敵手だったはずだ。
まあ僕の記憶が正しくなくなっているのが問題なのだが。
魔王を倒したという記憶はなかった。
ただ、魔王との戦いが楽しかったことだけは覚えている。
だから、こんなにも虚しく、物悲しいのだろうか。
まるで、古くからの友を亡くしたように寂しかった。
つづく
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