( ^ω^)ブーンのエピローグのようです

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/12(金) 23:39:03.23 ID:BGTJpXi/0



第十話【人形】

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/12(金) 23:41:07.56 ID:BGTJpXi/0
VIPの街が見えてきた。
かつては大陸にその勢力を広げていた大国。
魔王軍によって今はその領土の多くが失われた。
しかし、それでもなお、その強大さがうかがえる。

(;'A`)「すっげぇ……」

思わず声が洩れた。

(;´_ゝ`)「人間が作ったものとは思えないな」

(,,゚Д゚)「簡単に攻め込まれないように街は螺旋状になってるんだ」

まるで小さな山だ。
その頂に見える白い城。
VIP城だ。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/12(金) 23:43:27.76 ID:BGTJpXi/0
( ´_ゝ`)「あそこに住んでたんだろ?」

(,,゚Д゚)「そうだが」

( ´_ゝ`)「いいなぁ……」

(,,゚Д゚)「もしニダーを倒せたら、部屋を貸してやろうか?」

( ´_ゝ`)「マジで!?」

兄者が歓声をあげた。


石造りの大きな門をくぐると、ひたすら坂道が続いていた。
街は人々の活気で溢れている。

( ^Д^)「こんな沢山の人、ラウンジでも見たことないッスよ」

( ゚∀゚)「すげえな。本当に螺旋状になってやがる」

ジョルジュが上の層を眺めながら言った。
ここからだと街の頂上は見えない。

(,,゚Д゚)「第一層は工業区だ」

鉄を叩く音が鳴り響き、木材を運ぶ人々が目に入る。
工業区特有の煙の臭いが鼻をつく。

(,,゚Д゚)「第二層が商業区、第三、第四層が居住区だ」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/12(金) 23:45:17.67 ID:BGTJpXi/0
( ´_ゝ`)「ところどころにあるこれはなんだ?」

兄者が小さな門のような物を指差して言った。

(,,゚Д゚)「敵が攻め込んで来たときに足止めするんだよ。頂上に着くまでに数十ヶ所はある」

( ´_ゝ`)「へぇー」

(,,゚Д゚)「それだけじゃない」

ギコは壁を指差した。
上の階から何かを落とせるようになっている。

(,,゚Д゚)「そこから下目掛けて岩を落とすんだ。他にも戦うためのいろんな仕組みがある」

( ゚∀゚)「まさしく要塞都市ってわけだな」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/12(金) 23:47:15.50 ID:BGTJpXi/0
商業区は工業区とは違った活気に溢れていた。

('A`)「すごい数の店だな」

武器から防具、食料品から雑貨まで、いろんなものを並べた店が道に沿って並んでいる。
ここならなんでも揃いそうだ。


「道を開けろ!」

坂の下から怒鳴り声が聴こえた。

( ゚∀゚)「なんだなんだぁ?」

馬に乗った兵士が剣を振り回しながら坂を駆け上がってくるのが見える。

( ´_ゝ`)「こんな人ごみの中で剣を抜くか普通?」

( ゚∀゚)「あまり許せたもんじゃねえな」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/12(金) 23:49:41.33 ID:BGTJpXi/0
ギコが道の真ん中に立ちふさがった。

「どけ! ひき殺されたいのか! ……おまえは!!」

兵士の顔が驚嘆と恐怖に歪んだ。
次の瞬間、ギコは兵士を馬から引きずり下ろしていた。

(,,゚Д゚)「俺の部下に、街中で剣を振り回すバカは思い当たらないな」

ギコは兵士の首根っこを掴んで引き寄せた。
兵士は黙ってギコを睨みつけている。

(,,゚Д゚)「不思議そうな顔してるな。どうして生きてるかって?」

「……処刑されたはずだ!」

(,,゚Д゚)「地獄から戻ってきたんだよ。ニダーの野郎の首をへし折るためにな」

ギコは兵士を壁に叩きつけた。
兵士は白目を剥いてその場に崩れた。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/12(金) 23:51:42.23 ID:BGTJpXi/0
( ゚∀゚)「『地獄から戻ってきた』か。さすが、王子様はかっけぇな」

ジョルジュが口笛を吹いた。
呆気に取られている野次馬をよそに、俺たちは城を目指した。

('A`)「ニダーってやつは強いのか?」

(,,゚Д゚)「厄介な相手だな。魔法も使えるし、何より……」

( ´_ゝ`)「何より?」

(,,゚Д゚)「狡猾だ。正々堂々戦おうとはしないだろうな」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/12(金) 23:53:45.82 ID:BGTJpXi/0
俺たちは居住区を進んだ。

(,,゚Д゚)「昔から俺はあいつが気に入らなかった」

( ゚∀゚)「国王に仕えてたんじゃねえのか?」

(,,゚Д゚)「側近の皮を被り、常にVIPを奪う隙を窺っていたんだ」

第四層の最上部。
城へと続く門が姿を現した。
VIPの紋章が刻まれている。

(,,゚Д゚)「開けてくれ」

門番はギコを見ると一瞬驚いたような表情を見せ、それから黙って門を開いた。

( ゚∀゚)「やけにすんなり入れてくれたな」

(,,゚Д゚)「俺の部下だった奴だからな」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/12(金) 23:55:44.03 ID:BGTJpXi/0
門をくぐると、さっきまでの込み合った街が嘘だったかのように視界が開けた。

( ^Д^)「広いッスねー」

( ´_ゝ`)「こりゃ庭だけで俺の地元くらいあるぜ」

兄者の冗談にも頷けた。

それくらい広いのだ。

('A`)「あのおかしな像はなんだ?」

俺は庭の中心にある銅像を指差した。
手を広げた男が、満面の笑みを浮かべて走っている姿だ。
どう見てもこの庭には不釣り合いだ。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/12(金) 23:57:48.12 ID:BGTJpXi/0
(,,゚Д゚)「ああ、あれね」

ギコは苦笑した。

(,,゚Д゚)「あれはVIPの象徴らしいんだ。“風を切る男”だそうだ」

( ^Д^)「悪趣味ですね」

(,,゚Д゚)「俺はあんま好きじゃないんだがな」

この馬鹿っぽい表情を見ていると、なんだかブーンを思い出す。
ブーンたちは無事だろうか。
まあツンがついてるし、そこまで心配しなくてもいいだろう。
ただ、あいつらがいないと少し寂しい気もした。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/12(金) 23:59:40.56 ID:BGTJpXi/0
(,,゚Д゚)「さてと」

ギコが剣を抜いた。
商業区で手に入れたばかりの剣が日の光を反射して輝く。
これほど剣が似合う男はいないだろう。

(,,゚Д゚)「あのクソ野郎をぶちのめしてやる」

ギコが手先で剣を回した。
俺も杖を構える。

('A`)「対人とか久しぶりだな」

( ^Д^)「雑魚はまかせてくださいね」

( ゚∀゚)「お、てめえも少しは戦うんだな」

( ´_ゝ`)「俺は後方支援に回る!」

(;'A`)「ようするに戦わないんだろ」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:01:42.24 ID:Emzo5AoI0
二人の兵士が歩いてくるのが見えた。

「何者だ、おまえら! ここをどこだと思っている!」

「武器をしまえ!」

( ゚∀゚)「てめえの元部下だったら言えよ?」

(,,゚Д゚)「あんなやつら知らん」

( ゚∀゚)「よしきた」

ジョルジュが指先で杖を回す。
次の瞬間、二人の兵士は宙に舞っていた。

(,,゚Д゚)「へぇー、やるな」

( ゚∀゚)「なめんなよ」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:03:23.81 ID:Emzo5AoI0
城の戸を開く。
大広間だ。
床は大理石が敷き詰められ、天井からは巨大なシャンデリアが吊されている。
壁には金で装飾されたVIPの紋章が輝いている。

( ´_ゝ`)「すっげぇー! 俺、城の中入んの初めてだぜ!」

兄者が歓声をあげた。

(;'A`)「バカ、大声出すな!」

「ギコくん!」

階段の上から声がした。

(,,゚Д゚)「しぃ!」

(*゚ー゚)「ギコくん!」

小柄な女性が階段を駆け降りてくる。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:05:16.24 ID:Emzo5AoI0
( ゚∀゚)「姫かなんかか?」

それにしてはやつれているような気もする。
目の下には深い隈ができている。
頬は痩け、肌はまるで血の通っていないような土色だ。

(,,゚Д゚)「心配かけて悪かった」

しぃと呼ばれた女性がギコへと駆け寄った。
ギコは彼女を抱きしめた。

(*゚ー゚)「処刑されたって聞いたから……」

(,,゚Д゚)「安心しろ。俺はこの通り生きてる」

ギコが笑ってこたえた。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:07:02.66 ID:Emzo5AoI0
その瞬間、しぃが短剣を抜くのが見えた。

(*゚ー゚)「本当、なんで生きてるのかしらね」

(,,゚Д゚)「え?」

(;'A`)「ギコ、下がれ!」

杖をしぃに向ける。

(*゚ー゚)「あら」

しぃが雷撃を軽くかわす。
彼女が離れると同時に、ギコがその場に崩れた。
腹から血が迸る。

(;,゚Д゚)「しぃ……?」

(*゚ー゚)「わざわざ殺されに戻って来たのね」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:09:07.54 ID:Emzo5AoI0
気がつくと、VIPの兵士たちに周囲を囲まれていた。
全員俺たちに弓を向けている。
完全に罠にはめられたのだ。

(*゚ー゚)「せっかくお友達も呼んだみたいだけど、全部ムダだったわね」

しぃが不気味な笑みを浮かべた。

( ゚∀゚)「お姫様もグルだったってわけか」

(*゚ー゚)「ふふふ」

短剣に付いた血を舌ですする。
まるで蛇のようだ。

(,,゚Д゚)「ニダーか……」

(*゚ー゚)「なんのことかしら」

(,,゚Д゚)「どこで見ている……姿を見せろ!」

(*゚ー゚)「とうとう王子様は頭までおかしくなってしまったようね」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:10:55.60 ID:Emzo5AoI0
(;´_ゝ`)「ちくしょう、どうすんだよ!」

( ゚∀゚)「この状況じゃどうしようもねえだろ」

万事休すと言うべきか。
周りには弓矢を構えたたくさんの敵。
ギコは腹を刺されて動けない。

(*゚ー゚)「心配しなくても、あなたたちもちゃんと殺してあげるわ」

(;´_ゝ`)「ふざけんなこのアマ!」

( ゚∀゚)「おい」

ジョルジュが声を出さずに唇だけを動かした。

( ゚∀゚)『兵士の気を逸らす。てめえはあの女をどうにかしろ』

何かするつもりなのか。
この数の敵兵をどうするつもりなのだろう。
しかし、ジョルジュを信じるしかない。

('A`)『10秒待ってくれ』

( ゚∀゚)『ああ』

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:12:40.79 ID:Emzo5AoI0
(*゚ー゚)「何をこそこそ話してるの?」

しぃが笑いながら近づいてきた。
気にするな。
神経を集中しろ。
練習では上手くいっている。
俺は呪文を頭の中で暗唱した。

( ゚∀゚)「10秒たったぜ!」

(*゚ー゚)「!」

ジョルジュが杖を抜いた。
反射的にしぃが後ろに飛び退いた。

(*゚ー゚)「射殺せ!」

( ゚∀゚)「おせえ!」

眩い閃光。
ジョルジュの杖から放たれた雷撃が壁を砕く。
壁際にいた兵士たちに瓦礫が降り注いだ。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:14:32.17 ID:Emzo5AoI0
(*゚ー゚)「ちっ!」

しぃが跳躍し、二階へ飛び移った。
逃げられると厄介だ。

('A`)「逃がすか!」

俺は後を追った。

(*゚ー゚)「誰も逃げないわよ」

('A`)「!」

しぃが振り向き様に短剣を投げた。
すんでのところでそれをかわす。
頬に鋭い痛みが走り、血が伝う。
俺は頬を拭って杖を構え直した。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:16:40.56 ID:Emzo5AoI0
(*゚ー゚)「魔法使いね。そんなボロい杖で勝てるとでも?」

氷の剣がしぃの手に現れる。

('A`)「へぇー。見かけによらず古臭いんだな」

魔法剣。
魔法と剣術の融合。
古代の魔導剣士が使ったとされる術だ。

(*゚ー゚)「“見かけ”なんて所詮偽りにすぎないのよ」

('A`)「なるほどね」

様子がおかしいと思った。
“人形呪文”だ。
となると、操っている奴は相当のやり手だ。
ジョルジュとプギャーは下で兵士たちと戦っている。
兄者は使えないし、ギコは戦闘不能だろう。

('A`)「あーあ、俺一人かよ」

(*゚ー゚)「すぐにみんなまとめて殺してあげるわ」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:18:39.01 ID:Emzo5AoI0
('A`)「!」

とっさに身を逸らす。
氷の刃が鼻先を掠めた。
速い。
視界の片隅でしぃの指先が微かに動くのが見えた。
その場から飛び退くと同時に、氷柱が床を貫いた。

(*゚ー゚)「よく見切ったわね」

('A`)「指の動きがでかいんだよ」

(*゚ー゚)「ご指摘どうも」

強がってはみたものの、正直ヤバい。
今のだって偶然見切れたようなものだ。
次も避けられる自信はない。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:20:50.79 ID:Emzo5AoI0
(*゚ー゚)「じゃあこれはどうかしら」

しぃが両腕を広げた。
無数の氷の刃が俺を襲う。

(;'A`)「ちっ!」

杖でそれを弾く。
しかし防ぎ損ねた一つが肩に突き刺さった。
さらにしぃが剣を振り下ろす。
捌くつもりだったが、肩の氷のせいで反応が遅れる。
剣先が俺の服を裂いた。
さらに二撃目。
避けきれない。
すんでのところで杖で受け止める。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:22:23.90 ID:Emzo5AoI0
(*゚ー゚)「頑丈な杖ね」

杖を持つ手が震える。
なんて力だ。
こいつ、本当に女なのか。

(*゚ー゚)「でも杖はただの棒とは違うのよ? 魔法使いなんだから魔法使ったら?」

(;'A`)「!!」

地面から氷の塊が突き出した。
俺の身体が宙に舞う。
階段の柵を破り、下の階に叩きつけられた。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:24:46.89 ID:Emzo5AoI0
(;´_ゝ`)「ドクオ!」

部屋の隅に隠れていた兄者が叫んだ。
遅れてしぃが二階から飛び降りてくる。
立ち上がろうとしたが、右足が動かない。
見るとおかしな方向に曲がっているではないか。

(*゚ー゚)「あらあら、痛そうね」

しぃが氷の剣を手で回しながら近づいてくる。

(*゚ー゚)「すぐに楽にしてあげるわ」

あと数歩。
しぃは完全に勝利を確信したのか、余裕を見せていた。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:26:50.95 ID:Emzo5AoI0
(;´_ゝ`)「ドクオ! 逃げろ!」

(*゚ー゚)「無駄よ。彼の足はもう動かないんだから」

あと一歩。
渾身の力で魔力を込める。

(*゚ー゚)「今さら何をしt」

しぃの足元が輝いた。

(;'A`)「ふぅ……」

しぃはぴくりともしない。
俺は安堵のため息をついた。

(;´_ゝ`)「どうしたんだ?」

兄者が俺のもとに駆け寄ってきた。

(;'A`)「運が良かったよ。さっき張っておいた魔法陣にちょうどかかってくれたからな」

( ´_ゝ`)「へぇー」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:28:08.49 ID:Emzo5AoI0
( ゚∀゚)「ちくしょー、だから無理すんなっつったのによ」

ジョルジュがプギャーをおぶりながら歩いてきた。
敵の兵士も片付けたみたいだった。

(;^Д^)「マジすいませんッス」

プギャーは太ももから血を流していた。

( ゚∀゚)「おっと、こっちにも重傷が二人も」

ジョルジュは床に倒れているギコと俺を見た。
それから、固まっているしぃを見て驚愕した。

(;゚∀゚)「これ、てめえがやったのか?」

('A`)「まあそうだけど」

ジョルジュは怒りと感心が混ざったような複雑な表情をした。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:30:04.78 ID:Emzo5AoI0
( ´_ゝ`)「で、ニダーってやつはどこにいんだ?」

('A`)「やつはしぃに人形呪文を使ってた」

(,,゚Д゚)「やはりそうか。あの野郎……」

ギコが呻いた。

( ´_ゝ`)「あんまり暴れんなよ。かなり血流してんだから死ぬぞ」

( ゚∀゚)「人形呪文を使ってたとなると、近くで見てたことになるな」

ジョルジュが広間を見渡した。
崩れた壁や、倒れている兵士ばかりで怪しい姿は目に入らない。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:31:46.49 ID:Emzo5AoI0
( ^Д^)「あああ!!」

床に横になっていたプギャーが上を指差した。
シャンデリアの上に男がいるのが見える。

(,,゚Д゚)「ニダー!」

<ヽ`∀´>「ウェーッハッハッハッ! 見つかってしまったニダ」

男が身軽に床に着地した。
片手には氷の剣。
舌を出したり引っ込めたりしている様子はまるで蛇だ。

( ゚∀゚)「兄者は怪我人どもを見てろ」

( ´_ゝ`)「よしまかせろ。だが、怪我を考慮しても俺が最弱なのは否めないがな!」

兄者が俺の隣にあぐらをかいた。
全く頼りにならない。
というか、せめて立っていてくれ。
いざという時にどうすんだよ。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:33:39.74 ID:Emzo5AoI0
( ゚∀゚)「てめえか、俺たちに国王殺害の罪をなすりつけたのは」

<ヽ`∀´>「おやおや、勇者の仲間だったニカ?」

ニダーが薄ら笑いを浮かべた。

<ヽ`∀´>「VIPを危機に陥れようとする輩は、ニダーが排除するニダ」

二人は同時に魔法を唱えた。
数千の氷の矢がニダーの手から放たれた。

( ゚∀゚)「おせえんだよ」

<ヽ`∀´>「!」

ジョルジュは高速移動でニダーの後ろを取った。
だが、次の瞬間ニダーは氷の像に変わっていた。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:35:44.11 ID:Emzo5AoI0
(;'A`)「転身か!」

(#゚∀゚)「ちくしょう!」

ジョルジュは像を蹴り砕いて広間を見渡した。
逃げたとは考えづらい。
だとすると、どこかに隠れてるはずだ。

(,,゚Д゚)「ジョルジュ、後ろだ!」

( ゚∀゚)「!」

瓦礫の影から氷が地面を走った。
まるで蛇のようにジョルジュの足を捕らえようとする。

( ゚∀゚)「誰が捕まるかよ!」

ジョルジュはバックステップでそれをかわす。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:37:20.10 ID:Emzo5AoI0
(;´_ゝ`)「上!!」

兄者が叫んだ。
金属音。
ぎりぎりのところでジョルジュはニダーの剣を防いでいた。

<ヽ`∀´>「いい反応ニダ」

( ゚∀゚)「そりゃどうも」

ジョルジュが剣を押し返す。
一瞬、ニダーの体勢が崩れた。
その隙をジョルジュは見逃さなかった。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:39:15.61 ID:Emzo5AoI0
(#゚∀゚)「うらぁ!!」

鈍い音。
ジョルジュの蹴りがニダーの腹に叩き込まれる。
血を吐きながらよろめくニダー。
そこをさらに杖で殴る。
ニダーが吹き飛び、壁に叩きつけられる。

( ゚∀゚)「へっ。反応が悪いな」

ジョルジュがニダーの首に杖先を突きつけた。

<ヽ`∀´>「……」

ニダーは口を拭いながらジョルジュを睨んだ。
そしてにやりと笑った。

( ゚∀゚)「何がおかしい」

<ヽ`∀´>「ただ武器を振り回すだけでは戦いには勝てないニダ」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:41:00.57 ID:Emzo5AoI0
(*゚ー゚)「……」

( ゚∀゚)「!!」

(,,゚Д゚)「しぃ!!」

しぃが自分の喉元に短剣を突きつけていた。

( ゚∀゚)「てめえ……」

( ^Д^)「いつの間に魔法陣を……」

<ヽ`∀´>「時間停止なんて触れば解けるニダ。そんな隙、いくらでもあったニダ」

おそらく転身を使った直後だろう。
ニダーは笑いながら立ち上がった。

<ヽ`∀´>「さあ、その杖を下ろすニダ。さもないとお姫様が首から血を噴き出すはめになるニダ」

( ゚∀゚)「ちっ」

ジョルジュは舌打ちをして杖を放り投げた。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:43:06.62 ID:Emzo5AoI0
<ヽ`∀´>「それでいいニダ」

低い音が鳴り響いた。
ニダーがジョルジュを殴り飛ばしたのだ。
ジョルジュは床に倒れた。

(#゚∀゚)「てめえ……」

<ヽ`∀´>「ウェーッハッハッハッハ!」

ニダーが大声で笑った。

<ヽ`∀´>「ようこそ、我が国へニダ」

(,,゚Д゚)「我が国だと? 調子な乗るなよ」

ギコが悪態をついてニダーを睨んだ。

<ヽ`∀´>「調子に乗ってるのはおまえニダ」

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:44:48.66 ID:Emzo5AoI0
ニダーは瓦礫に腰掛けた。
しぃを人質にとった今、もはや目の前のジョルジュすら脅威ではないと考えたのだろう。
ジョルジュも床に手をついたまま、悔しそうにニダーを睨んでいる。

<ヽ`∀´>「ま、せめてもの情けニダ。愛する妻に殺させてやるニダ」

そういいながら手元で剣を回している。
完全に余裕がうかがえる。
しぃが短剣を手に、ギコに近づいていく。

( ´_ゝ`)「待て! 俺が相手になろう!」

(;'A`)「バカ、やめろ!」

前に飛び出した兄者の顔面を、しぃの蹴りがとらえた。
兄者は錐揉み回転しながら床に倒れた。

(;´_ゝ`)「女なら勝てると思ったんだ……」

兄者が鼻血をすすりながら小さく呟いた。

('A`)「おまえは戦わなくていいよ」

(;´_ゝ`)「うん、そうする」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:47:08.73 ID:Emzo5AoI0
しぃはギコの目の前で足を止めた。
本当なら琥珀色の綺麗な瞳なのだろう。
しかし今の彼女は、蛇のような鋭い目でギコを見下ろしている。

(,,゚Д゚)「しぃ、俺の声が聞こえるか?」

ギコが囁いた。
しぃは表情を変えない。

<ヽ`∀´>「無駄ニダ。人形呪文は説得で解けるほどヤワな魔法じゃないニダ」

ニダーがあざけ笑うかのように言った。

<ヽ`∀´>「何も見えないし何も聞こえないニダ。完全な闇に堕ちて、ただの操り人形になるニダ」

(,,゚Д゚)「……」

ギコはニダーを睨み、それからしぃを見つめた。

<ヽ`∀´>「じゃあ、死ねニダ」

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:48:54.69 ID:Emzo5AoI0
しぃが短剣を突き出す。
それをギコは右手で受け止めた。
赤い血飛沫が舞う。
短剣の刃が、ギコの手の甲を貫いた。
しかしギコは、そのまま短剣ごとしぃを引き寄せた。

(*゚ー゚)「!」

血まみれの身体で、ギコはしぃを抱きしめた。

( ゚∀゚)「そのまま離すなよ!」

ジョルジュが剣を抜き、ニダーに斬りかかった。
座っていたせいでニダーの反応が遅れる。
剣はニダーの胸を切り裂いた。
悲鳴が広間に響きわたる。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:50:20.82 ID:Emzo5AoI0
俺は杖を持って、ギコとしぃのもとへ這った。
右足はもはや痛みを通り越して感覚が麻痺している。
しぃはギコの腕の中で必死にもがいていた。

(,,゚Д゚)「頼む……彼女をはやく……」

ギコは失神寸前だった。
俺は杖でしぃにかけられていた呪文を解いた。

(;*゚ー゚)「!?」

みるみる彼女の顔に生気が戻っていく。
死人のような土色をしていた肌が、ピンクに染まっていく。

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:51:47.35 ID:Emzo5AoI0
(;*゚ー゚)「ギコ……くん……?」

(,,゚Д゚)「よしよし、怖かったろ……もう大丈夫だ……俺がいるからな……」

ギコがしぃの髪を撫でた。
呪文が解けた安堵からだろうか。
彼女は目いっぱいに涙を浮かべ、わっと泣き出した。

(,,゚Д゚)「泣くなって……綺麗な顔が台無しだぞ?」

ギコはそう言って優しく彼女を抱きしめた。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:53:11.90 ID:Emzo5AoI0
( ゚∀゚)「さーて、こっちも決着をつけようか」

ジョルジュが言い放った。
ニダーは血を流し、息を切らせながらジョルジュを睨んでいる。

<;ヽ`∀´>「ハァ、ハァ、まだまだニダ」

ニダーが苦しそうに言った。
だが所詮強がりにすぎない。
奴の頭の中では必死に助かる方法を探しているのだろう。
目がせわしなく辺りを見回している。
やがて、その視線が一番近くの窓で止まった。

('A`)「逃げるつもりだ!」

( ゚∀゚)「!」

ニダーが窓へと駆け出した。
ジョルジュが追うが、間に合わない。

<ヽ`∀´>「!」

風を切る音。
同時にニダーの胸に矢が突き刺さった。
ゆっくりとニダーが床に崩れた。

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:54:25.20 ID:Emzo5AoI0
( ゚∀゚)「誰だ?」

数人の兵士が広間に入ってくる。

「ギコさん!」

「生きてたんだ!」

みな一斉にギコの周りに駆け寄った。
非常に人望が厚いのだろう。
兵士たちの目に浮かぶ涙がその証拠だった。

「バカやろう、ギコさんが死ぬわけないだろ!」

( ゚∀゚)「おい、はやく手当てしてやらねえと本当に死ぬぞ」

まさにジョルジュの言うとおりだ。
ギコはほとんど意識を失いかけていた。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:56:11.99 ID:Emzo5AoI0
(*;ー;)「ギコくん、死なないで!」

しぃが必死にギコに呼びかける。
ギコはゆっくりと彼女の手を握った。

(,,゚Д゚)「安心しろ……ちょっと眠くなっただけだ……」

そう言ってギコは静かに目を閉じた。
しぃの手を握っていた右手が力なく落ちた。

(*;ー;)「ギコくん? 嫌だよ! 目を覚ましてよ!」

( ゚∀゚)「……」

('A`)「……」

(*;ー;)「嫌だぁぁぁぁぁぁ!!」

ギコは返事をしなかった。
しぃの泣き叫ぶ声だけが広間に木霊した。

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:58:09.58 ID:Emzo5AoI0
(,,゚Д゚)「いやー、本当死ぬかと思った!」

( ゚∀゚)「……」

('A`)「……」

(*゚ー゚)「……」

ギコが目を覚ましたのは夕方すぎだった。
ベッドの上で、ギコが腹を抱えながら豪快に笑う。
とてもさっきまで物凄い量の血を流していた本人とは思えない。

(,,゚Д゚)「死ぬ直前にはすごい美しい景色が見えるって言うけど、あれは嘘だな!」

ギコが林檎をかじった。

(*゚ー゚)「いっそのこと死ねばよかったのに」

(;'A`)「!?」

(;^Д^)「!?」

(,,゚Д゚)「ん? なんか言ったか?」

(*゚ー゚)「ううん、なんでもないよ」

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 00:59:26.06 ID:Emzo5AoI0
(,,゚Д゚)「ニダーを倒せたのもおまえらのおかげだ。ありがとう」

ギコが頭を下げた。

(*゚ー゚)「是非とも何かお礼をしたいです」

( ´_ゝ`)「じゃあキスをs」

ギコの拳が兄者の顔面に入った。



(,,゚Д゚)「いいんだ、しぃ。その話ならもう済んでる」

(*゚ー゚)「?」

( ゚∀゚)「ニュー速で一緒に戦うって約束だったよな?」

しぃが目を丸くした。

(*゚ー゚)「ニュー速?」

(,,゚Д゚)「ああ。約束は守る」

ギコは林檎の芯を放り投げた。

(,,゚Д゚)「一刻も早くがいいんだろう? 明日の夜明けにでも出ようか」

さすが王子と言うべきか。
決断と行動が早い。

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 01:00:50.74 ID:Emzo5AoI0
( ゚∀゚)「てめえも含め、怪我人がまだ戦えないだろ?」

('A`)「俺は大丈夫だぜ?」

俺は右足を動かしてみせた。

('A`)「VIPの医者は腕がいいな」

( ^Д^)「ですよねー」

プギャーの足の傷もほとんど塞がっている。

(,,゚Д゚)「決まりだな。今すぐ兵士たちに準備させよう」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 01:02:27.64 ID:Emzo5AoI0
(*゚ー゚)「私も行きます!」

しぃが手を挙げた。

( ゚∀゚)「お姫様にはニュー速はちとキツいんじゃねえのか?」

(*゚ー゚)「私だって戦えます。それに私もあなた方にお礼をしたいんです」

彼女の目は真剣だった。
ただ、連れて行くとなると、とても危険な目に合わせることになる。
気持ちは嬉しいが無理な話だ。

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 01:04:00.65 ID:Emzo5AoI0
(,,゚Д゚)「おまえは残れ」

ギコがしぃの肩に手を置いた。

(*゚ー゚)「でも……」

(,,゚Д゚)「おまえにもできることがある」

(*゚ー゚)「?」

(,,゚Д゚)「こいつらの無実の罪を晴らすんだ」

そうだ。
彼女ならそれができる。

(,,゚Д゚)「そして、魔王軍との戦いに備えるよう各国に伝えてくれ。ラウンジだけじゃなく、世界中にだ」

(*゚ー゚)「わかった!」

しぃが頷いた。

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 01:06:37.30 ID:Emzo5AoI0
( ゚∀゚)「やっとこっちから反撃ができるってわけだ」

( ´_ゝ`)「俺もしぃさんと一緒に残りたい」

( ^Д^)「あなたみたいな変態としぃさんを一緒に残せるわけないでしょ」

(;´_ゝ`)「冗談に決まってるだろ。というか最近おまえ、俺に対して態度でかくないか?」

( ^Д^)「俺の方が強いですから」

(;´_ゝ`)「……」

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/13(土) 01:07:52.98 ID:Emzo5AoI0
('A`)「やっとこっちから反撃ができるってわけだ」

( ゚∀゚)「やられっぱなしでムカついてたとこだぜ!」

ジョルジュが腕を振った。

(,,゚Д゚)「出陣は明日の夜明けと同時だ」

ギコが立ち上がった。

(,,゚Д゚)「魔王軍の奴らに痛い目見せてやろう」

( ゚∀゚)「おうよ!」

明日は戦いだというのに、皆全く緊張はしていなかった。
魔王城決戦の前夜は吐きかけたくらいだったのに。
こんなに気が楽なのは、このギコという男のせいもあるのだろう。
不思議と、彼がいれば安心な気になれた。
それがギコの魅力であり、厚い人望の理由なのだろう。
まさか、明日の戦いが世界の運命を変えることになるとは微塵も思わなかった。


つづく


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