( ^ω^)ブーンのエピローグのようです

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:28:26.77 ID:kgQKnCUSP
今さらだけど簡易キャラ紹介
理由は特にない


( ^ω^)ブーン:勇者
時の剣を引き抜いた勇者。
魔王を倒し世界を救うが、それと引き換えに記憶を失っていく呪いにかかってしまう。

ξ゚听)ξツン:武闘家
ブーンの幼なじみで、ブーンを助けるために魔王討伐の旅についてきた。
筋力、運動能力に関してはパーティー最強。

('A`)ドクオ:魔法使い(見習い)
魔王討伐の旅の途中で仲間になった魔法使い。
旅の中で魔法の才能を開花させたが、正式にはまだ見習い。

川 ゚ -゚)クー:弓使い
魔王討伐の旅の途中で仲間になった弓使い。弓矢の天才。
祖母がエルフなのでエルフの魔法が使える。動物が好き。

( ゚∀゚)ジョルジュ:魔法使い
時の剣を生み出した大賢者ゲオルグの末裔。
子供が好きだがロリコンではないらしい。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:31:07.89 ID:kgQKnCUSP
ノパ听)ヒート:エレメンタル
火のエレメンタル。
本人は気づいてないが、無限に近い火の魔力を持っている。

(`・ω・´)シャキン:賢者
ジョルジュの父親。時の賢者。
賢者狩りでモララーに殺される。

( ・∀・)モララー:賢者
魔王軍の幹部。火の賢者。
古代の闇の魔法も習得した。厨二病。

( ゚д゚ )ミルナ:魔王軍幹部
街の守備隊隊長だったが、実は魔王軍の幹部だった。
魔法、剣術、武術、どれでもオールラウンドにいける。

( ´_ゝ`)兄者:泥棒
ラウンジで泥棒をやっていた双子の兄。
ブーンたちとは昔出会っていた。弱い。

(´<_` )弟者:泥棒
双子の弟で、同じくブーンたちと知り合い。
実はそこそこ強い。

( ^Д^)プギャー:泥棒見習い
兄者と弟者の子分。
実はかなり強い。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:32:51.24 ID:kgQKnCUSP
从 ゚∀从ハインリッヒ:魔王軍幹部
魔王軍の幹部で、学者でもある。
竜人族の血が流れている。

バンタ(AA無し):ワイバーン
本名はワイ・バン太郎

(´・ω・`)ショボン:店主
オカルト山脈の麓の小さな村でバーボンハウスの主人をやっていた。
クーと弟者に武器と防具を提供した。

( ><)ワカンナインデス:温泉宿の青年
温泉宿“わかんない湯”の青年。
ラウンジ襲撃事件で弟を失った。

(,,゚Д゚)ギコ:王子
VIPの王子で、VIP軍の将軍でもある。
ドクオたちの手を借りてニダーを倒し、その礼にドクオたちに協力する。

(*゚ー゚)しぃ:王子妃
ギコの妻。
ニダーの人形呪文で操られていたが、ドクオによって解放される。

<ヽ`∀´>ニダー:魔王軍幹部
VIP国王の側近。国王を殺し、その罪をブーンたちとギコに被せた。
しぃを操ってVIPを乗っ取ろうとしたが、ギコとドクオたちに阻止される。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:35:10.15 ID:kgQKnCUSP
ノリ ゚ -゚)フィー:エルフ
“同胞の危機”を救うため、ニュー速を目指していたエルフ。
ブーンたちに命を救われ、行動を共にする。
※ストーリーの都合上、作者が勝手に作ったAAです(たぶん)

( ´∀`)モナー:エルフ
フィーの育ての親。
フィーに同行していたが、魔王軍の襲撃を受けて命を落とす。

( ゚∋゚)クックル:魔王軍の兵士
巨人と人間のハーフ。
どうやってセクロスしたのかとか、細かいことは気にしてはいけない。

( <●><●>)ワカッテマス:竜人族
竜人族の兵士。


( ФωФ)杉浦ロマネスク:魔王
魔王。
ブーンと幾度の死闘の末敗れる。


さーて、第十三話はじまるよー


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:37:02.94 ID:kgQKnCUSP



第十三話【竜人族】

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:38:55.20 ID:kgQKnCUSP
渡り廊下をひたすら走っていた。
クーさんが“空矢”で次々と敵を減らしていく。
それでも一向に敵の減る気配はない。

ノパ听)「たっけえええええ!!!」

(´<_`;)「耳元で叫ぶな!」

ノパ听)「だって物凄く高いぞ!」

ヒートが俺の背中で、下を見下ろしながら叫んだ。
確かに高い。
高すぎて底が見えないくらいだ。
落ちたらどうなるのだろう。
そんなことを考えて少し鳥肌が立った。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:40:55.77 ID:kgQKnCUSP
川 ゚ -゚)「遅いぞ」

敵を一掃しながらクーさんが叫んだ。
先に大階段が見えてきた。
だがそこにもたくさんの敵兵がいるのが見える。

川 ゚ -゚)「面倒くさいな」

クーさんが振り返った。
そして、彼女の表情が凍りつくのが見えた。

川;゚ -゚)「伏せろ!!」

振り向いたときには、既に巨大な鉤爪が目の前に迫ってきていた。
走馬灯のように、全てがスローモーションに感じられた。
鉤爪の持ち主の銀色の鱗、そして巨大な黒い翼を見た。
ドラゴンだ。
それから、その背中に乗った銀髪の人間の姿を見た。

从 ゚∀从「男をぶっ殺せ!」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:42:18.17 ID:kgQKnCUSP
鉤爪が俺の首を切り裂こうとした瞬間だった。
黒い巨大な影が視界に飛び込んできた。
その風圧で、俺とヒートは地面に倒れ込んだ。

从;゚∀从「なっ!?」

ドラゴンの悲鳴が響き渡った。
体を起こすと、傷だらけのワイバーンがドラゴンの喉元に食らいついていた。

(´<_`;)「バンタ!!」

それは間違いなくバンタだった。

从;゚∀从「うおっ!?」

銀髪がドラゴンの背中から振り落とされる。
ドラゴンはやっとのことでバンタを振り払った。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:44:03.30 ID:kgQKnCUSP
从;゚∀从「なんだこのワイバーンは!」

(´<_` )「クーさん、バンタが生きてた!」

俺は嬉しくて思わず叫んだ。
塔から落ちたのに、生きていたんだ。
バンタはその赤い瞳で俺とクーさんを見つめ、それから一鳴きして、宙に舞い上がった。
まるで挑発するように、ドラゴンを見下ろす。

川 ゚ -゚)「無理している」

(´<_` )「え?」

クーさんがバンタの翼を指差した。
いくつもの痛々しい傷跡が見えた。
飛ぶのすらやっとのようだ。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:45:46.34 ID:kgQKnCUSP
从 ゚∀从「ほー、ワイバーンのお友達かぁ」

ノパ听)「あいつ、悪いヤツだぞ!」

ヒートが立ち上がって叫んだ。
歩けたのなら自分で歩いてほしかった。。

从 ゚∀从「エレメンタルを返してもらおうか」

ノパ听)「私はヒートだ!」

川 ゚ -゚)「断る」

从 ゚∀从「交渉決裂だな。ヘンリクス! あの蝿を落としてこい!」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:47:10.78 ID:kgQKnCUSP
咆哮。
銀竜が翼を広げる。
飛び立つと同時に火球を吐いた。

(´<_`;)「危ない!」

バンタは空中で身を翻してそれを避けた。
直後、銀色の筋が走った。
ほぼ瞬間的に、銀竜がバンタとの間合いを詰めたのだ。

ノハ;゚听)「めっちゃ速いぞ!」

空の王者。
空中において、銀竜に速さで適う生物などいないのだ。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:48:48.05 ID:kgQKnCUSP
赤い血潮が宙に飛び散った。
銀竜の鋭い鉤爪がバンタの背中を切り裂いていた。

(´<_`;)「バンタ!」

从 ゚∀从「余所見とは余裕みてえだな」

(´<_`;)「!!」

気がつくと、銀髪が目の前で大剣を振り上げていた。
とっさに横に跳ぶ。
巨大な刃が地面を砕いた。
あんなの喰らったら、斬れるってレベルじゃない。

从 ゚∀从「うらぁっ!」

(´<_`;)「うおっ!」

速い。
身長ほどある大剣を瞬時に持ち替え、薙払う。
俺の目の前を剣先が通り過ぎた。
同時に銀髪の頬を矢が掠める。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:50:53.25 ID:kgQKnCUSP
从#゚∀从「クソエルフが……」

川 ゚ -゚)「クォーターだ」

从 ゚∀从「半人前ですらねえってわけか」

銀髪が頬から流れる血を拭って悪態をついた。

川 ゚ -゚)「そういう貴様は、見たところ竜人族には見えないが?」

从 ゚∀从「ハーフだ」

川 ゚ -゚)「ほう。珍しいな」

銀髪が大剣を肩に乗せた。
俺がすぐそばにいるというのに、クーさんと会話をする余裕を見せる。
なめられたものだ。
俺は足下のオークの剣を拾った。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:52:30.13 ID:kgQKnCUSP
(´<_` )「隙あり!!」

一瞬、息が止まった。
腹に鈍い衝撃。

(´<_`;)「がはっ……」

銀髪の膝が俺の腹を捉えていた。

从 ゚∀从「雑魚は静かにしてろ!」

その瞬間、数千という光の矢が目の前を横切る。
とっさに銀髪はそれを大剣で防ぐ。
直後、銀髪の姿が消えた。
金属音。
クーさんが大剣を受け止めた音だ。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:54:51.84 ID:kgQKnCUSP
ノパ听)「大丈夫か!?」

ヒートが俺の元へ駆け寄ってきた。

(´<_`;)「ああ……」

俺は体を起こして顔をあげた。
そして、その戦いに目を疑った。
銀髪がまるで嵐のように大剣を振り回す。
クーさんはそれをかわしながら、至近距離で何発も矢を放つ。
しかし銀髪もそれを全て避けている。

川;゚ -゚)「ちっ」

クーさんは距離をとって戦いたいはずだ。
だが銀髪はそれを許さない。
常に大剣の攻撃範囲内にクーさんを捉えて逃がさないのだ。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:56:35.12 ID:kgQKnCUSP
そして、頭上ではバンタとドラゴンが空中戦を繰り広げている。
バンタが圧倒的に劣勢だった。
飛ぶのだけでも精一杯なのだろう。
ドラゴンの尾がバンタを叩きつける。

从 ゚∀从「おらっ!」

川;゚ -゚)「くっ……」

クーさんの顔面を、銀髪の足が捉えていた。
倒れ込んだクーさんに、銀髪が追撃をかける。

川;゚ -゚)「ちっ!」

地面を転がる。
大剣が石の床を叩き割った。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/06(月) 23:58:23.14 ID:kgQKnCUSP
川;゚ -゚)「はぁ、はぁ」

从 ゚∀从「おいおい、もうバテてんのかよ。弓使いのクーも大したことねえな」

クーさんは腹を押さえていた。
一応手当てをしたものの、やはりあの深さの傷は辛いのだろう。
銀髪はその様子を見て、笑みを浮かべた。

从 ゚∀从「あの兄ちゃんと交代してもいいんだぜ?」

銀髪はちらりと俺を見て、笑いながら言った。
出来るものなら代わってやりたい。
しかし、俺にはそこまでの強さはない。
俺は唇を噛みしめた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:00:05.10 ID:FxZEgYO4P
そのとき、バンタが地面へと落ちてきた。

(´<_`;)「バンタ!」

片方の翼は半分が破れ、左目は潰れている。
ドラゴンが勝ち誇ったようにバンタの目の前に舞い降りた。

从 ゚∀从「よくやったヘンリクス。とどめをさしてやれ」

銀髪がそう言うと、ドラゴンは深く息を吸い込んだ。
地面に倒れているバンタめがけて灼熱の火球を放つ。
それと同時に、ヒートが飛び出した。

(´<_`;)「ヒート!」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:01:54.92 ID:FxZEgYO4P
次の瞬間、俺はその光景に目を疑った。
ドラゴンが吐いた炎が一瞬にしてかき消されたのだ。

ノパ听)「効かん!!」

从*゚∀从「うおおっ!!」

銀髪が歓喜の声をあげた。

从*゚∀从「ドラゴンの炎すら効かねえか!」

全てを焼き尽くす、竜の火焔。
それを素手でかき消したというのか。
ヒートは服に燃え移った小さな炎を叩いて消している。
銀髪はそれを惚れ惚れしたように見つめている。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:03:29.86 ID:FxZEgYO4P
川 ゚ -゚)「余所見はよくないな」

从 ゚∀从「!」

光が炸裂した。
銀髪の体が宙を舞う。
さらにそこに、雷撃を纏った矢が降り注ぐ。
轟音とともに、土煙が舞い上がる。

(´<_` )「やった!」

川 ゚ -゚)「手応えはあったが」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:05:35.81 ID:FxZEgYO4P
土煙の中から銀髪が姿を見せた。

从;゚∀从「はぁ、はぁ、ちくしょう……」

体中に矢を浴びて血を流している。
立っているのがやっとのようだ。

川 ゚ -゚)「なかなかしぶといな」

クーさんが矢を引き絞った。
矢先は銀髪の心臓に向いている。

从;゚∀从「ちっ……」

川 ゚ -゚)「ここまでだ」

クーさんが矢を放った瞬間、銀髪が最後の力を振り絞って駆け出した。
矢は銀髪の肩を貫く。
銀髪は欄干に足をかけ、そして飛び降りた。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:07:23.06 ID:FxZEgYO4P
(´<_`;)「自害か?」

この高さから飛び降りたら確実に死ぬだろう。

川 ゚ -゚)「いや、違う」

欄干に駆け寄って下を覗くと、ドラゴンが空中で銀髪を拾うのが見えた。

川 ゚ -゚)「逃げられたか」

クーさんが飛び去っていくドラゴンを見ながら舌打ちした。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:08:57.48 ID:FxZEgYO4P
ノハ;゚听)「おい、しっかりしろ!」

振り向くと、ヒートがバンタに声をかけていた。
俺とクーさんもそばに駆け寄った。

(´<_`;)「バンタ……」

バンタは地面に倒れたまま、弱々しく息をしていた。
俺たちが近寄ると、薄目を開けてこちらを見つめた。

川 ゚ -゚)「下がっていろ」

クーさんが手をかざして何かを呟いた。
緑色の光が、バンタの傷口を包む。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:10:35.34 ID:FxZEgYO4P
(´<_`;)「助かるんですか?」

川 ゚ -゚)「無理だ」

クーさんは静かに首を振った。

(´<_`;)「そんな……」

川 ゚ -゚)「私にしてやれることは、ただ痛みを軽くしてやることだけだ」

俺はしゃがんで首を撫でてやった。
すると、バンタは小さな声で鳴いた。
瞳の色がいつのまにか深い青になっているのに気づいた。
初めて会った時の、あの獰猛で攻撃的な赤い瞳ではなく。

(´<_` )「ありがとな」

バンタは嬉しそうに喉を震わせると、静かに目を閉じた。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:12:18.78 ID:FxZEgYO4P
川  - )「行こう。あの階段の先だ」

クーさんが背中を向けたまま呟いた。
大階段をオークの大軍が駆け降りてくる。
なんて数だ。

(´<_`;)「クーさん、どう……」

川  - )「少し待て」

そう言うや否や、彼女は闇雲に駆け出した。
直後、雷鳴が轟いた。
眩い光に視界が奪われる。

ノハ;゚听)「なんだぁ!?」

(´<_`;)「いったい……」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:13:53.14 ID:FxZEgYO4P
徐々に視力が戻ってくる。
そして、俺は目の前の光景に目を疑った。
あのオークの大軍が、一瞬にして全滅していたのだ。

川 ゚ -゚)「すっきりした」

死体の山の中に、クーさんが無表情で立っていた。

ああ、これが鬼か。
俺は直感でそう悟った。

川 ゚ -゚)「弟者」

(´<_`;)「は、はい?」

川 ゚ -゚)「バンタの仇、とるぞ」

意外な言葉だった。
普段全く感情を見せない彼女が燃えていた。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:15:32.02 ID:FxZEgYO4P
(´<_` )「はい!」

俺は力強く返事をした。
あの銀髪。
まだ生きているに違いない。
再び戦うことになるだろう。
今度は、ただ見ているだけなんてことはしない。
相手がドラゴンだろうと、俺は戦う。

ノパ听)「私も戦うぞ!!」

ヒートが隣で叫んだ。
クーさんが階段を駆け上がる。
俺も構えて、そのあとを追った。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:17:08.97 ID:FxZEgYO4P
〜〜〜〜〜〜



( ^Д^)「『竜人族の誇りをもって』とか言いながら、ドラゴンからは降りないんスね」

( ´_ゝ`)「一人じゃ怖くて戦えないんだろ」

軽く竜人族を挑発する。
もちろん、そんな小賢しい手で奴の集中を乱せるとは微塵も思っていない。
ただ、それで少しでも長く時間稼ぎができればいい。
VIPの兵士たちの逃げる時間を作れればいい。

( <●><●>)「我々は生まれたときからドラゴンと共にいます。
      戦うときも死ぬときも、それは変わらないのです」

( ´_ゝ`)「ふーん」

適等に返事をしながら、俺は必死に考えを巡らせた。
この状況でこいつらに勝つにはどうすればいいか。
竜人単体ならなんとかなるかもしれない。
問題は、どうしたらドラゴンを倒せるか。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:19:08.13 ID:FxZEgYO4P
( ^Д^)「とりあえずあの男をドラゴンから落としましょう」

プギャーが小さく囁いた。

( ´_ゝ`)「どうやって?」

( ^Д^)「そこらへんは兄者さんが考えてくださいよ」

( ´_ゝ`)「よし、じゃあ心理作戦だ」

( ^Д^)「というと?」

( ´_ゝ`)「ドラゴンと竜人の信頼関係を崩そう!」

( ^Д^)「んなことできるわけ……」

( <●><●>)「無駄話する余裕がないのはわかってます」

ドラゴンが物凄い速さで滑空してくる。
竜人がその上で大剣を構えた。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:21:20.59 ID:FxZEgYO4P
(;´_ゝ`)「うおっ!!」

とっさに身を屈める。
巨大な黒い刃が頭上を掠めた。
避けた。
そう思って一瞬油断したのが甘かった。
次の瞬間、横腹に強い衝撃を喰らう。

(;´_ゝ`)「がっ……」

壁に叩きつけられる。
口の中いっぱいに血の味が広がった。

(;^Д^)「兄者さん!」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:23:31.26 ID:FxZEgYO4P
( <●><●>)「ドラゴンの機動性を甘く見ていたのはわかってます」

まさにその通りだ。
まさか、かわした瞬間に尻尾の追撃がくるとは思わなかった。

( ´_ゝ`)「今のは油断してただけだ」

立ち上がって剣を構え直す。
再びドラゴンが舞い上がる。
空中で旋回し、こちらの隙を窺っているのだろう。
次向かってきたら、相討ち覚悟で剣を突き刺してやる。

(;^Д^)「建物の陰へ!」

突然プギャーが叫んで走り出した。
轟音。
ドラゴンの吐いた炎の玉が建物を破壊していく音だ。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:25:36.06 ID:FxZEgYO4P
俺とプギャーは建物の裏に身を潜めた。
竜人の声と、ドラゴンの羽ばたく音が聞こえる。

(;^Д^)「どうします?」

プギャーが息を切らしながら言った。
どうしますと言われても。
あれだけ飛び回られちゃどうしようもない。

( ´_ゝ`)「厄介なのはあの火の玉だな」

ドラゴンの咆哮が響き渡る。
素直に近づいて来てくれれば、なんとか攻撃のチャンスができるというのに。
俺は考えた。
奴らに隙ができる瞬間はいつか。
一瞬でいいから、ドラゴンが動きを止める瞬間はいつか。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:27:37.81 ID:FxZEgYO4P
( ´_ゝ`)「向こうが攻撃するときだ」

( ^Д^)「それしかないですね」

攻撃する瞬間、本人にも大きな隙ができるはずだ。
しかしそれには、“攻撃される人”が必要になる。
俺はため息をついた。

( ´_ゝ`)「俺が囮になる。おまえが隙をつけ」

( ^Д^)「え?」

プギャーが驚いたような顔をした。

( ´_ゝ`)「おまえじゃそのまま死にそうだからな」

無理して笑ってみせた。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:29:43.13 ID:FxZEgYO4P
( ^Д^)「……わかりました」

プギャーが真剣な表情で頷く。

( ´_ゝ`)「あんまり何度もできないぞ。決めるなら、一回でだ」

( ^Д^)「まかせてください」

剣を右手に、俺は物陰を飛び出した。

( <●><●>)「見つけたのはわかってます」

熱風。
俺の目の前の建物が砕け散った。
瓦礫をかわしながら、駆け抜ける。
火の玉が降ってくるのを感じるが、後ろを見る余裕はない。
頼む、早く降りてこい。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:31:31.72 ID:FxZEgYO4P
( <●><●>)「ちょこまかと小賢しいですね」

風を切る音。
来た。
ドラゴンが翼を広げ、滑空してくる。
その背後の建物の上に、プギャーの姿が見えた。
竜人を乗せたドラゴンが目の前に迫ってくる。
さあ、大剣がくるか、それとも牙がくるか。

( ´_ゝ`)「!」

一瞬、ドラゴンの鋭い爪が光った。
とっさに剣でそれを防ぐ。
重い。
剣が手から弾き飛ばされた。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:33:19.33 ID:FxZEgYO4P
( <●><●>)「終わりなのはわかってます」

竜人が大剣を振り上げる。
その後ろで、プギャーが建物から飛んだ。

( <●><●>)「!!」

竜人が俺の目線から感じたのか、後ろを振り返った。
だが、遅い。

(#^Д^)「死ねえええ!!」

赤い鮮血が舞い散る。
プギャーが竜人の背中に剣を突き立てた。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:35:36.59 ID:FxZEgYO4P
(;<●><●>)「ちぃっ!」

空中でプギャーを殴り飛ばす。
プギャーは錐揉み回転しながら地面に叩きつけられた。
俺は竜人にさらに大きな隙ができたのを見逃さなかった。
ドラゴンの首に手をかけ、地面を蹴る。

( ´_ゝ`)「喰らえ!!」

(;<●><●>)「!」

思いっきり、竜人の顔面を蹴り飛ばす。
吹き飛ばされた竜人の体が地面を転がった。
俺はそのままドラゴンに跨った。

( ^Д^)「兄者さん!」

プギャーが剣を投げてよこした。
普段の俺なら、それを取り損ねて手首の一つや二つ失っていただろう。
だが、今回の俺は一味違う。
剣をキャッチし、渾身の力を込めてドラゴンの首に突き刺す。
ドラゴンが悲鳴をあげた。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:37:24.02 ID:FxZEgYO4P
( ´_ゝ`)「うおっ!」

ドラゴンの背中から振り落とされる。
受け身をとって起き上がると、ドラゴンが血を流しながら苦しんでいた。

( ^Д^)「一本取りましたよ!」

プギャーが嬉しそうに言いながら駆け寄ってきた。
鼻からかなりの血が流れ出ているが、気にしていないようだった。


( <●><●>)「どうやら甘く見過ぎていたようですね」

竜人が埃を払いながら立ち上がった。
その表情には、一つの焦りもなかった。
とても背中に剣を突き立てられた人間とは思えない。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:39:07.01 ID:FxZEgYO4P
(;´_ゝ`)「おいおい、なんであんなピンピンしてんだよ」

(;^Д^)「知りませんよ」

( <●><●>)「ドラゴンの炎で鍛えた鋼鉄の鎧です」

どうやらあの黒い鎧のせいで、深い傷を負わすことはできなかったようだ。
だが、ドラゴンはまだ苦しんでいる。
俺は剣を握りしめて駆け出した。

( ´_ゝ`)「ドラゴンから降りればただの人間だ!」

鎧ごと叩き斬るつもりで、剣を振り下ろした。
だが、それは空を切るだけだった。
剣先が地面に当たる音が虚しく響く。

(;´_ゝ`)「き、消え……」

強烈な回し蹴りを脇腹に喰らう。
一瞬呼吸が止まる。
さらに顔面目掛けて掌打が放たれる。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:40:43.97 ID:FxZEgYO4P
( <●><●>)「!!」

奴の手のひらは、俺の顔面を抉る寸前で逸れた。
プギャーの蹴りがそれを弾いたのだ。

( ^Д^)「……」

プギャーが剣を上段に構えて竜人と対峙した。

( <●><●>)「剣術は?」

( ^Д^)「見よう見真似ッスよ」

( <●><●>)「ほう」

竜人は興味深そうにプギャーを見た。
剣を構えたプギャーからは、異様な覇気を感じられた。

( ^Д^)「今度は共闘しますよ」

( ´_ゝ`)「あいよ」

俺も剣を構え直す。
二対一。
しかも相手は丸腰だ。
勝機はある。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:42:09.63 ID:FxZEgYO4P
プギャーの剣先が一瞬横に動いた。
竜人の目線がそれを追う。
その瞬間、剣を突き出す。

( <●><●>)「!」

竜人が身を反らし、それをかわす。
そこを狙い、プギャーが横に薙払った。
竜人はそれを捌き、プギャーの足を刈る。

(;^Д^)「うわっ!」

プギャーはとっさに地面で受け身を取り、そのまま竜人の足を払う。

(;<●><●>)「くっ!」

( ´_ゝ`)「そこだっ!」

竜人の体制が崩れたところへ、俺は剣を振り下ろす。
だがその刃は俺の意思と反して空中で静止した。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:43:41.21 ID:FxZEgYO4P
(;´_ゝ`)「わーお……」

竜人が白刃取りの要領でそれを止めたのだ。
視界の隅で、竜人の足が動いた。
とっさに身を屈める。
その直後に、真上を目にもとまらぬ速さで蹴りが通過した。
我ながらよく見切れたものだ。

(;^Д^)「危ない!」

気を抜いた自分が馬鹿だった。
腰を捻って繰り出される二撃目。
気がつくと、竜人の足が迫ってきていた。
目の前で火花が散った。
直後、俺は強かに地面に叩きつけられた。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:45:21.16 ID:FxZEgYO4P
( ^Д^)「このっ!!」

プギャーが前に飛び出し、斬撃を放つ。
竜人は大きく後ろに飛んでそれをかわした。
だがプギャーの追撃が竜人を襲う。
頬を刃が掠め、血が滴り落ちた。

( <●><●>)「さすがにキツいですね」

竜人が跳躍する。
一気にプギャーと距離をとった。

( ^Д^)「あ!」

( <●><●>)「やはりこれが無いと」

竜人は足元の大剣を蹴り上げた。
身の丈ほどもある大剣を片手で構える。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:46:56.75 ID:FxZEgYO4P
( ^Д^)「武器を拾われましたよ。厄介ッスね」

プギャーが切っ先を竜人に向けたまま、じりじりと距離を詰めた。
俺も起き上がって、剣を構え直す。

先に動いたのはプギャーだった。
横に小さくフェイントをかけ、下段を薙払う。
竜人はそれを大剣で防いだ。

( <●><●>)「ふん!」

(;^Д^)「うわっ!?」

爆発的な力で剣が弾かれる。
プギャーの体制が崩れ、大きな隙ができる。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:48:19.35 ID:FxZEgYO4P
( ´_ゝ`)「させるか!」

竜人の腕目掛けて剣を振り下ろす。
だが竜人は瞬時に手を持ち替え、それをかわした。
頭上で大剣が振り上げられるのを感じた。
とっさに横に転がる。
巨大な刃が地面を叩き割る。

( ^Д^)「食らえ!」

( <●><●>)「!!」

プギャーの横払いを竜人は右に飛んで避けた。
だが若干遅かった。
刃の先端が、竜人の左腕を掠める。
鮮血が奴の腕から流れ出た。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:49:48.45 ID:FxZEgYO4P
( <●><●>)「なかなかやりますね」

( ^Д^)「まだまだッスよ」

竜人の息遣いが荒くなっていた。

すでに奴には三太刀浴びせた。
俺たちは何発か打撃を貰ってはいるが、大した痛手ではない。
確実に押している。
もしかしたら、勝機があるかもしれない。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:51:36.90 ID:FxZEgYO4P
その時、竜人の目が何かを確認するように一瞬横へと動いた。
プギャーはそれに気づかなかったようだ。
しかし、俺の直感は命の危険を知らせていた。

(;´_ゝ`)「避けろ!」

俺はプギャーを突き飛ばした。
直後、背中に熱気を感じた。
灼熱の業火がすぐ後ろを掠めたのだ。

(;´_ゝ`)「あぁっ!!」

俺はそのまま地面に倒れこんだ。
焼けるような激痛が背中を襲う。
いや、マジで焼けてる。
背中の皮が焦げ落ちたのを感じた。
視界の隅で、ドラゴンが口から残り火を吹きながらこちらを睨んでいる。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:53:45.72 ID:FxZEgYO4P
(;^Д^)「兄者さん!!」

( <●><●>)「余所見する余裕などないのはわかってます」

(;^Д^)「!!」


プギャーが振り返ると同時に、竜人が大剣を振り下ろした。


赤い筋が、プギャーの肩から胸にかけて走った。
プギャーの目が、驚いたように大きく見開く。
直後、血潮が胸から噴き出した。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:55:22.97 ID:FxZEgYO4P
(;´_ゝ`)「プギャー!!」


背中の痛みも忘れ、俺は叫んだ。
剣を片手に、竜人へと駆け出す。


( <●><●>)「終わりなのはわかってます」


竜人がにやりと笑った。
背後で風圧を感じた。
振り向くと、ドラゴンの鋭い爪がすぐ目の前にまで迫ってきていた。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:56:59.16 ID:FxZEgYO4P
死ぬ。
完全に頭が理解した。
何もかもが止まって見えた。
ドラゴンの鱗の一枚一枚まで鮮明に目に映る。
ゆっくりと、鉤爪が俺の心臓目掛けて伸びてくる。

血を噴き出しながら地面へと崩れ落ちるプギャーが目に浮かんだ。
そして、胸を貫かれた自分の姿が脳裏をよぎった。
やはり無理だったんだ。
たかが元盗人ふたりで、ドラゴンと竜人を倒そうだなんて。
英雄になろうと思った自分が馬鹿だった。
しかし、不思議と恐怖はなかった。
逃げずに戦いきった。
そのことに誇りをもって死ねる。


( ´_ゝ`)(悪い、弟者。俺先死ぬわ)

そう心の中で呟いて、目を閉じた。
あとはドラゴンの鉤爪が心臓を突き破るのを待つだけだった。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/07(火) 00:58:59.86 ID:FxZEgYO4P
「うおおおおおお!!!」

叫び声と甲高い金属音。

(;´_ゝ`)「なっ……」


何が起きたのかと目を開ける。
剣でドラゴンの爪を受け止める後ろ姿があった。
ドラゴンを倒した、数少ない人間のうちの一人。


( ^ω^)「大丈夫かお、兄者!!」

(;´_ゝ`)「ブーン?」

勇者の姿が、そこにあった。


つづく


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