- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:11:48.65 ID:yK5HxynaP
第十五話【決意】
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:14:04.82 ID:yK5HxynaP
- 体中が痛む。
痛いということは生きているのだろうか。
僕はゆっくりと目を開いた。
しかし何も見えない。
やはり死んだのだろうか。
でも、感覚はある。
身体が水に浮かんでいるのがわかる。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:15:37.03 ID:yK5HxynaP
- ( ^ω^)「あー」
試しに声を出してみた。
僕の声は木霊となって響き渡った。
( ^ω^)「生きてるお」
どうやら地底湖に落ちたおかげで助かったようだ。
しかし地上は見えない。
それどころか、一寸の光すらない。
( ^ω^)「はぁー」
僕はため息をついた。
これからどうしろと言うのだ。
とりあえず岸に上がりたいが、この暗闇じゃそれも難しい。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:17:31.44 ID:yK5HxynaP
- ( ^ω^)「お?」
僕は目を細めた。
微かな光が見えたのだ。
僕はその光を目指して泳いだ。
やがて足がついた。
ゆっくりと立ち上がって岸に上がる。
食事のような匂いまで漂ってきた。
人がいるのだろうか。
僕はおそるおそる岩影を覗いた。
その瞬間、目の前で何かが光った。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:19:14.53 ID:yK5HxynaP
- (;^ω^)「うおっ!!」
とっさに体を反らす。
耳元を緑の閃光が掠めた。
/ ,' 3「む?」
そこにいたのは老人だった。
人間にしては少し小さい。
背の丈は僕の腰くらいだ。
そして、短い杖を僕に向けていた。
(;^ω^)「な、何するんだお!」
/ ,' 3「オークにしては素早いのう」
腰に手を伸ばしたが、剣が無い。
落ちたときに湖に沈んだんだ。
再び杖先が光る。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:21:11.16 ID:yK5HxynaP
- (;^ω^)「ストップ! ストップ!」
僕は光線をかわしながら叫んだ。
(;^ω^)「よく見るお! 人間だお!」
/ ,' 3「人間?」
老人は地面にまで届きそうな長い白髭をいじりながら、僕を見つめた。
/ ,' 3「おお! 本当じゃ!」
わかってくれたようだ。
老人は杖を下ろした。
/ ,' 3「すまんすまん、人間なんて何十年ぶりかだからのう」
笑いながらひょこひょこと歩く姿は、どこか愛嬌がある。
/ ,' 3「久しぶりのお客さんだ。ほれ、来なさい」
そう言って老人は僕を洞窟の奥へ招いた。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:23:22.19 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「人間が落ちてきたのはこれで四人目じゃよ」
老人は荒巻さんというらしい。
荒巻さんはそう言いながらスープを僕に渡した。
匂いが少々キツいが、味はとても旨い。
( ^ω^)「ここに住んでるのかお?」
/ ,' 3「そうじゃ。もう数十年は住んどる」
( ^ω^)「ひとりでかお?」
/ ,' 3「たまに頭の悪いオークどもが落ちてくるが、それくらいじゃな」
数十年間、ここで独りきりで暮らしているのか。
僕は気が遠くなった。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:26:01.50 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「それにしても、上から落ちてきてよく無傷だったのう」
( ^ω^)「運良く湖だったんだお」
/ ,' 3「オークなら全身の骨が砕けとるぞ」
荒巻さんは興味深そうに僕の身体を見た。
( ^ω^)「オークが落ちてきたらどうするんだお?」
/ ,' 3「こう、トドメを刺すんじゃ」
荒巻さんは杖を突く素振りを見せた。
/ ,' 3「それから」
( ^ω^)「それから?」
/ ,' 3「食う」
(;^ω^)「え゛?」
/ ,' 3「硬いし不味いが、貴重な食料じゃ。魚もあまり捕まらないしのう」
聞かないほうがよかった。
僕はスープを飲むのを止めた。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:28:23.52 ID:yK5HxynaP
- ( ^ω^)「そういえば、荒巻さんは魔法使いなのかお?」
僕は杖を指差して言った。
先ほどその杖で殺されかけたのだ。
/ ,' 3「いかにも。大賢者荒巻とはわしのことじゃ」
( ^ω^)「……?」
/ ,' 3「もしかして知らんのか?」
首を横に振ると、荒巻さんはため息をついた。
/ ,' 3「これが時代の流れというヤツか……せつないのう……」
そんなことより、このヨボヨボ爺さん賢者なのか。
/ ,' 3「今わしをヨボヨボと思ったじゃろ」
読まれた。
どうやら、ただの爺さんじゃなかったようだ。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:30:05.27 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「まあ数十年も籠もっておれば、地上の様子も変わっとるじゃろうな」
地上の様子。
僕は地上のことを思い出した。
まだみんな戦っているに違いない。
はやく上へ出なければ。
( ^ω^)「僕、もう行かなきゃだお」
/ ,' 3「急にどうしたのじゃ?」
( ^ω^)「地上で仲間が戦っているんだお」
荒巻さんは首を傾げた。
それから側にあった砂時計のようなものを手にとった。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:32:13.70 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「まる一日経っとるが」
(;^ω^)「え?」
/ ,' 3「おぬしが落ちてきた音がこの時計で一日前じゃ」
(;^ω^)「どういうことだお?」
/ ,' 3「あがってこないから、湖底に沈んだと思ってほっといたんじゃ」
(;^ω^)「そんな……」
まさかまる一日水面で気を失っていたというのか。
あの戦況で、一日戦いが続くとは思えない。
運が良ければ逃げているだろうけど、最悪全滅かもしれない。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:34:32.62 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「それに、地上に出る道を一つ知っておるが……」
( ^ω^)「知っておるが?」
/ ,' 3「今は無理じゃ」
( ^ω^)「どうしてだお?」
/ ,' 3「あそこに洞窟があるじゃろ」
荒巻さんは暗闇を指差した。
僕には何も見えないが、何十年もここで暮らしていれば目も慣れるのだろう。
/ ,' 3「あそこから地上に行けるはずじゃが、昨晩の大雨で冠水しとる」
( ^ω^)「マジかお……」
/ ,' 3「まあ水が退くのは、この時計があと三回光ったらじゃな」
ちょうど砂時計が光ったところだった。
それと同時に、砂が逆に昇り始めた。
何かの魔法がかけてあるようだ。
/ ,' 3「まあ、それまでゆっくりしてなさい」
( ^ω^)「……」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:36:26.65 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「ところで、聞きたいことがあったんじゃ」
荒巻さんは目を細めて僕を見た。
/ ,' 3「わしの不意打ちを避けたあたり、なかなかのやり手のようじゃが?」
( ^ω^)「ああ、それは……」
一瞬、言おうか言うまいか迷ったが、まあ話しても問題ないだろう。
( ^ω^)「これでもいちおう元勇者らしいお」
まあ記憶にはないのだが。
しかし、荒巻さんは目を丸くしていた。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:38:37.28 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「勇者じゃと? ということは、第二の暗黒期が来とるのか?」
( ^ω^)「暗黒期は終わったお」
/ ,' 3「おぬしが魔王を倒したのか?」
( ^ω^)「らしいお」
/ ,' 3「……ただの興味本位じゃが、魔王の名は?」
( ^ω^)「ロマネスク……杉浦ロマネスクだお」
荒巻さんはさっきよりも目を見開いて驚いていた。
しかし、それ以上に僕も驚いていた。
まさかまだ魔王の記憶が残っていただなんて。
倒した瞬間は覚えていない。
だが、ヤツと交えた剣の一太刀一太刀は鮮明に思い出すことができた。
あの血の沸き立つような興奮が甦ってくる。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:40:41.91 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「なんてことだ……」
荒巻さんは頭を抱えていた。
( ^ω^)「どうしたんだお?」
/ ,' 3「わしはロマネスクを知っておる」
( ^ω^)「え?」
荒巻さんが地上にいたのは数十年前の話のはずだ。
魔王はそんな年寄りだったのだろうか。
/ ,' 3「ここで今の勇者と出会えたのは何かの運命じゃな」
荒巻さんはぼんやりと遠くを見つめ、それから僕を見つめた。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:42:39.56 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「わしは過去の勇者のパーティーじゃった」
( ^ω^)「はい?」
思わず聞き返してしまった。
こんなヨボヨボ爺さんが、勇者のパーティーだって?
しかしさっき賢者だと言っていたような気もする。
というか勇者って昔にもいたのか。
/ ,' 3「二百年続いた暗黒期に終止符を打ったのがわしらじゃよ」
( ^ω^)「その時にも魔王がいたのかお?」
/ ,' 3「うじゃうじゃおったぞ」
(;^ω^)「マジかお!?」
/ ,' 3「習わなかったのか?」
残念ながら記憶にない。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:44:19.17 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「あれは正確には“魔族”じゃな」
魔族なら知っている。
三十年ほど前に滅んだ闇の種族だ。
しかし、どういうわけか一人だけ生き残りがいた。
それが僕の知っている魔王、ロマネスクだ。
/ ,' 3「昔は魔族の一人一人を魔王と呼んでおった。その強さからじゃ」
( ^ω^)「へぇー」
/ ,' 3「その中でも、魔族の歴史上でも最強と言われた男がおった。“大魔王”じゃ」
/ ,' 3「その大魔王を勇者は倒した。自らの命と引き換えにじゃ」
( ^ω^)「あらま……」
/ ,' 3「あいつは良いヤツじゃった。あそこまで心の綺麗な男は見たことがない」
荒巻さんは懐かしそうに語った。
命と引き換えか。
記憶と引き換えとどちらが辛いだろうか。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:46:49.99 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「とにかく、歴史の上ではそこで魔族は滅んだことになっておるはずじゃ」
( ^ω^)「“歴史の上では”?」
/ ,' 3「一人、生き残りがおったのじゃよ」
( ^ω^)「生き残り?」
/ ,' 3「それがロマネスクじゃよ」
魔王の姿が目に浮かんだ。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:49:22.94 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「わしが見たときはまだ赤ん坊じゃった」
( ^ω^)「でも、僕が戦ったときでもヤツはまだ若かったお」
魔族だって成長の速さは人間と同じはずだ。
/ ,' 3「わしらが封印したのじゃよ」
( ^ω^)「封印? どうして殺さなかったんだお?」
僕は思わず語気を強めた。
その時殺していれば、魔王は現れなかったはずだ。
僕はこんな目にあってなかったはずだ。
/ ,' 3「全く、わしのせいじゃ……」
荒巻さんはうつむきながら呟いた。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:51:51.80 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「わしには弟子がいた」
( ^ω^)「弟子?」
/ ,' 3「類い希な才能と勤勉さを兼ね備えた、非常に優秀な弟子じゃった。最後の戦いにも参加した」
荒巻さんは悲しそうな表情をみせた。
/ ,' 3「その弟子が魔族の赤ん坊を見つけてきたのじゃ」
/ ,' 3「彼は涙を流しながらこう言った。『たとえ魔族でも、赤ん坊を殺すことはできない』と」
( ^ω^)「……」
/ ,' 3「もちろん最初は反対した。しかし、弟子の涙には勝てないものじゃ」
/ ,' 3「わしとその弟子、それと同じくパーティーの一人じゃったエルフの三人で、赤ん坊を封印したのじゃ」
/ ,' 3「じゃが、その一年後に事件は起こったのじゃ……」
荒巻さんは頭を抱えた。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:54:05.22 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「そのエルフが何者かに殺されたのじゃ」
( ^ω^)「あらま……」
/ ,' 3「それから、もう一人、武闘家も殺された。彼も勇者のパーティーじゃった」
( ^ω^)「勇者のパーティーを二人も倒すなんて、相当の強敵だお」
/ ,' 3「そうじゃ。わしは弟子に警告をした。次はわしかおまえかもしれないと」
/ ,' 3「ところが、弟子は執拗に封印のことについて尋ねてきた。殺された二人のことなど気にもしとらんかった」
( ^ω^)「つまり、その弟子は封印を解こうとしていたのかお?」
/ ,' 3「うむ。わしは弟子の異変に気づいて問いつめた。するとヤツは本性を現したのじゃ」
( ^ω^)「本性?」
/ ,' 3「二人を殺したのもヤツじゃった。ヤツは闇魔法に染まっておったのじゃ」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:56:26.45 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「わしはヤツを葬ろうとした。それが師としての責任じゃと思った」
/ ,' 3「しかしできなかった。闇魔法を取得したヤツは既にわしを遥かに超えておった」
/ ,' 3「わしはヤツに破れ、命からがらで逃げ延びた。そのとき、死の呪いを受けたのじゃ」
荒巻さんはそう言って、ローブを脱いで背中を見せた。
灰色の肌が焚き火の明かりに照らされた。
いや、肌ではなかった。
(;^ω^)「石……?」
荒巻さんの背中はまるで石像のように固まってしまっていた。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 22:58:35.25 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「ヤツの魔法が完成しとらんかったおかげでこの程度で済んだのじゃ」
そう言いながら荒巻さんはローブを着直した。
/ ,' 3「しかし、わしはもう太陽の下で生きることはできなくなった」
だから何十年もこんなところで暮らしているのか。
( ^ω^)「でも、口は割らなかったんじゃないのかお?」
/ ,' 3「もちろんじゃ。殺された二人もそうじゃったはずじゃ」
( ^ω^)「じゃあどうして……」
/ ,' 3「おそらく、封印を解く手段を見つけたんじゃな」
荒巻さんは真剣な顔をして僕を見つめた。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:01:31.30 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「しかし、おぬしが魔王を打ち倒してくれた」
そこまで聞いて、僕ははっと思い出した。
( ^ω^)「でも魔王軍は魔王の復活を企ててるお。“死の石”の力を使うつもりなんだお」
荒巻さんはため息をついた。
/ ,' 3「やはりそうじゃな。間違いなくヤツは生きておる」
( ^ω^)「?」
/ ,' 3「死の石のことも、昔わしが教えたんじゃ……」
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:03:29.46 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「この老いぼれの頼みを、ひとつ聞いてくれんか?」
荒巻さんは静かに呟いた。
/ ,' 3「ヤツから、世界を救ってくれぬか」
( ^ω^)「……」
/ ,' 3「わしにはできなかった。きっと、世界を救えるのはおぬしだけじゃ」
そんなこと頼まれても。
もうこれ以上面倒なことはごめんだった。
記憶を取り返すのですら、少し諦めかけていたのだ。
ましてや世界のことなんてどうでもよかった。
それに、仲間たちをもう危険な目にはあわせたくなかった。
それなのに。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:05:19.64 ID:yK5HxynaP
- ( ^ω^)「わかったお」
/ ,' 3「すまないのう……」
気がつけば引き受けてしまっていた。
記憶が無くても、勇者は勇者なのかもしれない。
それが、勇者の宿命なのだろうか。
僕はため息をついた。
/ ,' 3「ヤツは強敵じゃ」
( ^ω^)「その弟子の名前はなんていうんだお?」
/ ,' 3「ショボンじゃ」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:06:36.88 ID:yK5HxynaP
- 〜〜〜〜〜〜
(;・∀・)「開かないし暑いし、なんなんだよもう!!」
モララーが悪態をつきながら、目の前の扉を蹴り飛ばした。
しかし扉はびくともしない。
火口から灼熱の風が吹き上げる。
(;・∀・)「んー」
( ゚д゚ )「何かわかりましたか?」
(;・∀・)「まず文字が読めないしなあ。というかこれ、文字なの?」
モララーは扉に刻まれた文字のようなものを指差した。
古代文字でもエルフの文字でも何でもない。
解読不可能だ。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:08:36.82 ID:yK5HxynaP
- (=;゚ω゚)ノ「いい加減諦めないかょぅ……暑くて死にそうだょぅ……」
( ゚д゚ )「もうバテたんですか? 竜人族は暑さに強そうですけど」
(=;゚ω゚)ノ「ただの偏見だょぅ」
(;・∀・)「でもなぁー、せっかく“死の山”まで来て、何もせずに帰るってのもなー」
モララーは何か呟きながら杖で扉を突いた。
杖先が一瞬黒く光ったが、扉は閉じたままだ。
(;・∀・)「はぁー」
モララーはため息をついた。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:10:13.30 ID:yK5HxynaP
- (=;゚ω゚)ノ「ニュー速はほっといていいのかょぅ?」
(;・∀・)「だいじょーぶ、ハインがいるし」
あいつが役に立つとは思えないが。
( ゚д゚ )「それに、いざとなったら竜人族の方々がなんとかしてくれるでしょう」
(=;゚ω゚)ノ「まあそうだろうけどょぅ」
ただでさえ一族絶滅の危機に瀕してるんだ。
なるべく無駄に仲間を失いたくない。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:11:57.48 ID:yK5HxynaP
- (;・∀・)「よし、最後の手段だ」
モララーはそう言ってポケットを探った。
( ゚д゚ )「何をするんです?」
(;・∀・)「あの人に聞く」
( ゚д゚ )「ショボンさんですか?」
(=;゚ω゚)ノ「誰?」
(;・∀・)「あの人ならなんかわかりそうだし」
( ゚д゚ )「また怒りますよ? 僕の趣味を邪魔するなって」
(;・∀・)「しょーがないじゃん。あ、あった」
そう言ってモララーは小さな黒い石を取り出した。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:14:12.83 ID:yK5HxynaP
- (=;゚ω゚)ノ「ありゃなんだょぅ?」
( ゚д゚ )「見ない方がいいですよ」
一瞬、その石に目が奪われかけた。
一気に闇の底に引きずり込まれそうになる。
(=;゚ω゚)ノ「うおおお!?」
とっさに目を逸らす。
気がつくと地面に手をついていた。
暑さとは違う、冷たい汗が額を伝った。
まだ心臓が激しく脈打っている。
(=;゚ω゚)ノ「い、いったい……」
( ゚д゚ )「よく耐えましたね。さすが、その若さで竜人族の頭をやってるだけある」
ミルナは石を見ないようにしながら言った。
( ゚д゚ )「あれは“闇の瞳”ですよ」
聞いたことがない。
ただ、とんでもなく危険なものだということは身をもってわかった。
( ゚д゚ )「瞳は世界に四つだけ。今のところ扱えるのは世界に二人だけです」
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:16:32.84 ID:yK5HxynaP
- (;・∀・)「もしもーし?」
モララーが石に話しかける声が聞こえる。
あれを通して誰かと会話できるのだろうか。
(;・∀・)「しょうがないじゃないですかー。わかんないもんはわかんないんですよ」
モララーがへりくだっているのは初めて見た。
闇の瞳とやらを使っていることも考えると、相当の力の持ち主のようだ。
(=;゚ω゚)ノ「その、ショボンって人はどんな人なんだょぅ?」
( ゚д゚ )「まあ変わり者ですね。最近は趣味でバーボンハウスの店主をやってますよ」
(=;゚ω゚)ノ「へぇ……」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:18:53.68 ID:yK5HxynaP
- (;・∀・)「ええ!?」
突然モララーが声をあげた。
(;・∀・)「なんでその場で殺さないんですか! 面白そうだからってあんた……」
( ゚д゚ )「どうかしましたか?」
(;・∀・)「勇者の一味に協力したんだと」
モララーはため息をついた。
(;・∀・)「今ごろニュー速で戦ってるはずだって」
( ゚д゚ )「あの人は何を考えてるんだ……」
(=;゚ω゚)ノ「おいおい、大丈夫なのかょぅ」
( ゚д゚ )「引き返した方がよさそうですね」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:20:59.16 ID:yK5HxynaP
- (;・∀・)「え? まだ何かあるんですか?」
モララーはいらついた様子で闇の瞳に言い放った。
それから、はっと何かに気づいたように顔をあげた。
(;・∀・)「なるほど、簡単だ」
(=;゚ω゚)ノ「何がだょぅ?」
(;・∀・)「しょせんこの扉の結界も人間が張ったものなんだよ」
モララーが手で扉の文字をなぞった。
(;・∀・)「鍵なんて必要ないよ。それ以上の力で破っちゃえばいいんだ」
( ゚д゚ )「なるほど、エレメンタルですか」
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:23:02.97 ID:yK5HxynaP
- エレメンタル。
噂に聞いたことがある。
生まれた時から、無限の魔力を持った人間のことだ。
それは人間を遥かに超える、もはや神に近い魔力だという。
(=;゚ω゚)ノ「でも、エレメンタルは数千年に一人生まれるかどうかじゃないのかょぅ?」
(;・∀・)「その数千年に一人を捕まえちゃったんだよねー」
(=;゚ω゚)ノ「マジかょぅ……」
(;・∀・)「ハインが遊びすぎて壊してないといいけどね」
モララーがにやりと口元を歪めた。
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:24:29.93 ID:yK5HxynaP
- 〜〜〜〜〜〜
ノパ听)「ひっくしゅ!」
ヒートのくしゃみの声で俺は目を覚ました。
VIPのベッドの上にいた。
川 ゚ -゚)「目を覚ましたか」
クーが枕元に腰掛けていた。
体を起こそうとして、激痛が走った。
川 ゚ -゚)「動かない方がいいぞ。骨が固まったばかりだからな」
(;'A`)「……」
あの野郎、本気でくれやがって。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:26:11.31 ID:yK5HxynaP
- 窓の外が明るくなってきていた。
雨はいつの間にか止んでいた。
川 ゚ -゚)「ツンを止めようとしたんだろ?」
('A`)「まあな」
俺は天井を見つめたまま答えた。
川 ゚ -゚)「どうだった?」
('A`)「勝てるわけねえな、ありゃ」
川 ゚ -゚)「だな。私でも無理だろうな」
クーが静かに笑った。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:28:13.97 ID:yK5HxynaP
- 川 ゚ -゚)「あれが彼女なりに納得のいく決断なんだろう。止めることはできないさ」
('A`)「だけど……」
川 ゚ -゚)「帰ってくると約束した。あとはツンを信じるだけだ」
クーは微笑んだ。
('A`)「そうだな……」
今ごろツンはあの深い穴を一人で降りているのだろうか。
ブーンが生きているのを信じて。
だったら俺にできることは何か。
ツンを、そしてブーンを信じて、二人の帰りを待つだけだ。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:30:31.38 ID:yK5HxynaP
- 部屋の扉が開いた。
ジョルジュとギコが入ってくる。
( ゚∀゚)「よお。ツンとやりあったらしいな」
('A`)「まあな」
( ゚∀゚)「で、あいつは行っちまったのか?」
('A`)「ああ、行っちまった」
( ゚∀゚)「そうか……」
(,,゚Д゚)「おまえらに話すことがある」
ギコはそう言いながら椅子に腰掛けた。
(,,゚Д゚)「昨日の夜、ニュー速の黒い塔が火を噴くのが見えた」
('A`)「……」
(,,゚Д゚)「戦の合図だ。間違いなくVIPを潰しに来る」
( ゚∀゚)「とりあえずVIPは滅ぶよな」
(,,゚Д゚)「ああ」
ギコの返事は予想外だった。
冗談を言ったジョルジュ本人も、ギコの反応に驚いたようだ。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:32:08.52 ID:yK5HxynaP
- (,,゚Д゚)「おそらく今夜にもニュー速の大軍が攻めてくる。それまでにVIPから逃げてくれ」
('A`)「逃げろって……」
(,,゚Д゚)「おまえらはたまたまVIPを訪れた旅人だ。VIPのために死んでくれなんて言わないさ」
ギコは笑ってみせた。
( ゚∀゚)「無理しなくていいんだぜ? 俺たちがいた方が勝率は上がるだろ?」
(,,゚Д゚)「燃え盛る炎の中に、一滴水を垂らしたところで何も変わらないさ」
('A`)「あんたやVIPはどうするんだ?」
(,,゚Д゚)「俺は死ぬまでVIPを守る。VIPが死ぬときは俺も一緒だ。兵士たちもきっと同じだ」
きっと一晩中悔やんだのだろうか、隈が酷い。
しかし、目は戦士の目だった。
死を覚悟した者の目だ。
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:33:58.70 ID:yK5HxynaP
- ノリ ゚ -゚)「私は残ろう」
窓際に寄りかかっていたフィーが言った。
ノリ ゚ -゚)「ブーンもツンも居なくなってしまったし、こいつらと一緒に行動するのも気にくわない」
( ゚∀゚)「こっちだって願い下げだよ」
ジョルジュが悪態をついた。
フィーはそれを無視して続けた。
ノリ ゚ -゚)「それに、私はニュー速のやつらを皆殺しにしないと気がすまない」
川 ゚ -゚)「敵討ちとやらか?」
ノリ ゚ -゚)「貴様には関係ない」
川 ゚ -゚)「それもそうだな」
クーは納得したように頷いた。
フィーも全く気にする様子もなく再び壁に寄りかかった。
容姿だけでなく、考え方まで同じなのだろうか。
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:35:51.91 ID:yK5HxynaP
- (,,゚Д゚)「まあ戦うのを止めはしないが……」
ギコは不思議そうに二人を見ながら言った。
敵討ちか。
俺だって二人の仲間を失った。
いや、まだ失ったわけではない。
あいつらなら生きてる。
俺はそう心に言い聞かせた。
しかし、少なくとも俺はあいつらを守れなかった。
結局何もできなかった。
今回もそうなのか。
死を覚悟して戦おうとする仲間を、見捨てるのか。
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:37:38.17 ID:yK5HxynaP
- ('A`)「俺も残る」
気がつくとそう言っていた。
ギコとジョルジュは驚いたように俺を見た。
フィーも興味を示したらしく、窓の外を眺めるのを止めた。
(,,゚Д゚)「急になんでだ?」
('A`)「仲間が死ぬかもしれないのを、放っておけるわけないだろ」
(,,゚Д゚)「……どうなっても知らないぞ」
ギコは眉間に皺をよせ、顔を背けた。
これは感謝の照れ隠しとして受け取るべきか。
('A`)「そういうわけだ、クー。これで元勇者パーティーも解散だな」
俺は無理して笑ってみせた。
自分で言ってから、それがとても寂しい言葉だったことに気づいた。
しかし、クーは不思議そうに首を傾げた。
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:39:18.16 ID:yK5HxynaP
- 川 ゚ -゚)「どうして解散なんだ?」
('A`)「いや、俺はここに残るから……」
川 ゚ -゚)「私は残っちゃいけないのか?」
クーは俺に小さく微笑んでから、ギコに向き直った。
川 ゚ -゚)「私がいるのといないのとじゃ、だいぶ違うぞ」
(,,゚Д゚)「……好きにしろ」
( ゚∀゚)「しっかたねえなぁー! このジョルジュ様も参戦してやんよ!」
ジョルジュが大声をあげて腕を振った。
ノパ听)「私も戦うぞ!!」
( ゚∀゚)「ヒートはだめだ」
ノパ听)「ええええええええ!!!」
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:40:50.74 ID:yK5HxynaP
- その時、再び部屋の扉が開いた。
( ´_ゝ`)「楽しそうな話してんじゃないの」
兄者と弟者、そしてその後ろにはプギャーが立っていた。
(,,゚Д゚)「おまえらはいてもいなくても変わらねえよ。さっさと逃げてくれ」
兄者が一枚の羊皮紙をギコに突きつけた。
弟者とプギャーも同じ物を持っている。
( ´_ゝ`)「てめえの国の兵士に逃げろだなんて言うのか?」
(,,゚Д゚)「……入隊許可した覚えはねえぞ」
(´<_` )「しぃさんが快く許可してくれましたよ」
ギコは唇を噛みしめた。
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:42:26.75 ID:yK5HxynaP
- ( ^Д^)「ぜひ、ギコさんの下で戦いたいんです!」
プギャーが身を乗り出した。
('A`)「怪我はいいのか?」
( ^Д^)「完治っすよ!」
( ´_ゝ`)「嘘だけどな」
兄者が脇腹をつついた。
プギャーは痛みに顔を歪めて悶えた。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:44:10.08 ID:yK5HxynaP
- (,,゚Д゚)「……どいつもこいつも」
ギコは顔を伏せた。
その声に、前までの威勢の良さは無かった。
(,,゚Д゚)「死んでもしらないぞ」
川 ゚ -゚)「また味方を死なせてしまうのが怖いのか?」
クーの言葉に、ギコは顔を驚いたように上げた。
クーが他人の感情に干渉するのは珍しかった。
まさかギコも、クーに図星をつかれるとは思わなかったようだ。
ギコはまた黙って目を逸らした。
川 ゚ -゚)「それなら心配いらない。皆、おまえのように死を覚悟している」
俺はちらっと兄者を見た。
意外にも、兄者は笑っていた。
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:45:57.50 ID:yK5HxynaP
- 川 ゚ -゚)「皆、己の信念に従い、残ろうとしてる。止められないさ」
(,,゚Д゚)「……」
川 ゚ -゚)「それに、ここにいるやつらは皆そう簡単に死ぬようなタマじゃない」
クーはそう言って微笑んだ。
(,,゚Д゚)「……わかった」
ギコは何か決意したように顔を上げた。
それから、剣を抜き、それを床に突き立てて雄叫びをあげた。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:47:47.79 ID:yK5HxynaP
- (;゚∀゚)「どうした急に」
(,,゚Д゚)「俺としたことが、心が折れていた。皆、ありがとう」
ギコは床から剣を引き抜くと、真剣な顔でそれを見つめた。
(,,゚Д゚)「俺も、自分の信念のために、この国を、そしておまえらの信念を守るために戦おう」
その表情には再び覇気が戻っていた。
(,,゚Д゚)「ニュー速のやつらに痛い目を見せてやろう!」
( ^Д^)「そうこなくっちゃ!」
( ゚∀゚)「燃えてきたぜ!」
俺は拳を握りしめた。
この掌の痛みに誓おう。
もう、仲間を失ったりはしない。
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:49:40.77 ID:yK5HxynaP
- 〜〜〜〜〜〜
魔法の砂時計が淡い光を放ち、砂が再び降り始めた。
時間だ。
( ^ω^)「世話になったお」
僕が礼を言って立ち上がると、荒巻さんは物寂しそうに僕を見つめた。
/ ,' 3「もう行くのか」
( ^ω^)「仲間が待ってるんだお」
しかし、荒巻さんはまたこの暗闇の中、ひとりで生きていくのかと思うと少し気の毒だった。
/ ,' 3「武器が無いじゃろう。これをやろう」
そう言って、荒巻さんは一振りの剣を僕に手渡した。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:51:26.11 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「抜いてみるんじゃ」
言われるがままに剣を引き抜いた。
暗闇の中で刃がうっすらと青く光る。
その光は、どこか懐かしくも感じた。
不思議と手に馴染む。
荒巻さんはそれを満足そうに見つめていた。
( ^ω^)「この剣は?」
/ ,' 3「前の勇者の形見じゃよ」
そんなたいそうな物を貰うわけにもいかない。
僕は剣を鞘に収め、返そうとした。
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:53:05.89 ID:yK5HxynaP
- / ,' 3「いいんじゃ。受け取ってくれ。剣もそれを望んでおる」
( ^ω^)「?」
/ ,' 3「これが何よりの証拠じゃ」
そう言って荒巻さんは剣の柄を握った。
しかし、それを引き抜こうとはしなかった。
/ ,' 3「いわゆる“試練の剣”じゃ。おぬしも似たような剣を引き抜いたんじゃろ?」
そういえば、僕が勇者になった理由は封印されていた剣を引き抜いたからだと、誰かに聞いた。
/ ,' 3「試練の剣を使えるのは、剣に認められたものだけじゃ。つまり、今この世界ではお主だけじゃ」
不思議な感覚だった。
この剣が世界中で僕だけにしか抜けないというのだ。
こんなにも簡単に抜けるのに。
/ ,' 3「剣も持つべき者の所にありたいじゃろう」
荒巻はしわくちゃの顔で微笑んだ。
それなら、ありがたく貰っておくことにしておこう。
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:54:46.69 ID:yK5HxynaP
- 荒巻さんは僕を洞窟の入り口まで案内してくれた。
/ ,' 3「魔物に気をつけるんじゃぞ。無駄な心配かもしれんが」
( ^ω^)「剣、ありがとうだお」
/ ,' 3「うむ」
( ^ω^)「スープ、意外とおいしかったお」
/ ,' 3「うむ」
( ^ω^)「それじゃあ、行くお」
/ ,' 3「……世界、頼んだぞ」
( ^ω^)「全部終わったら、また会いに来るお」
僕は荒巻さんに別れを告げた。
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/19(日) 23:56:11.76 ID:yK5HxynaP
- 〜〜〜〜〜〜
しばらくして、再び水の音が鳴り響いた。
/ ,' 3「む? このところ来客が多いのう」
荒巻は杖に手をかけた。
つづく
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