- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:06:48.52 ID:5hQYyc78P
第十七話【VIP、決戦】
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:09:40.05 ID:5hQYyc78P
- 日は傾き、西の空が赤く染まる。
そして、東の空を暗い雲が覆っていく。
「市民の避難、完了しました」
若い兵士が、緊張した面持ちで部屋に入ってきて言った。
おそらく伝令を頼まれたのだろう。
歳は16ぐらいだろうか。
(,,゚Д゚)「予想よりも早いな。上出来だ」
ギコが誉めると、兵士は嬉しそうに顔を輝かせ、敬礼した。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:11:18.08 ID:5hQYyc78P
- 川 ゚ -゚)「不吉な雲だな」
クーが窓の外を眺めながら言った。
('A`)「何か感じるのか?」
川 ゚ -゚)「風が泣いている」
ノリ ゚ -゚)「ああ。闇の匂いがする」
('A`)「……」
この二人はもっとわかりやすい会話ができないのだろうか。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:13:32.16 ID:5hQYyc78P
- (,,゚Д゚)「いいか」
ギコがVIPの見取り図を机に広げた。
攻めてきた敵を頭上から攻撃するために造られた、螺旋状の街。
その中心に、VIPの城がある。
(,,゚Д゚)「歴史上、VIPが第二層より上に侵攻を許した例はない」
(,,゚Д゚)「しかし、だ」
ギコは語気を強めた。
(,,゚Д゚)「今のVIPは過去の歴史にはないほど弱っている」
('A`)「兵力は?」
(,,゚Д゚)「年寄りや少年を含めて一万くらいだ」
それでも意外といるものだ。
さすが、かつて大陸を支配していただけある。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:15:21.98 ID:5hQYyc78P
- ( ゚∀゚)「んで、魔王軍は?」
(,,゚Д゚)「ニュー速の戦力は三万」
( ゚∀゚)「もの足りねえな」
川 ゚ -゚)「あの程度が三万なら、大したことはない」
(,,゚Д゚)「ただし、ここ数週間、各地からニュー速に兵が集結している」
( ゚∀゚)「そういうのは早く言え。で、実際はいくらなんだよ」
(,,゚Д゚)「ざっと十万だ」
ジョルジュの笑いが凍りついた。
無理もない。
十万だと。
こちらの十倍じゃないか。
(,,゚Д゚)「あくまで予測だ。実際はもっと多いかもしれん」
川 ゚ -゚)「確かに、あの巨大な要塞なら十万いてもおかしくない」
俺たちが戦ったのはそのほんの一部だったわけだ。
あの数十倍の敵を相手にするわけか。
だいぶ無理があるな。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:17:01.95 ID:5hQYyc78P
- ノリ ゚ -゚)「竜人族もいるぞ」
(,,゚Д゚)「問題はそれだ」
ギコは短剣を見取り図の中央に突き立てた。
(,,゚Д゚)「奴らはまっすぐここへ飛んでくる」
('A`)「VIPの螺旋要塞が全く機能しないな」
(,,゚Д゚)「ああ。そこでだ」
ギコは青と緑の駒を二つ、短剣の横に並べた。
(,,゚Д゚)「クーとフィー、お前たちに対空迎撃を頼みたい」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:18:53.29 ID:5hQYyc78P
- 二人とも明らかに不服そうな顔をした。
ギコもそれを察したのだろう。
(,,゚Д゚)「本来なら、おまえらは各々の判断に任せた方がいいとは思うんだ」
ノリ ゚ -゚)「ならそうさせてもらうとありがたいのだが」
(,,゚Д゚)「だが、そうは言ってられない。竜人族に中から攻められたら終わりだ」
川 ゚ -゚)「まあ仕方ないが……」
その辺は、まだクーの方が物分かりがいいようだ。
その証拠に、フィーは眉間に皺を寄せていた。
川 ゚ -゚)「私たち二人だけでやれというのか?」
(,,゚Д゚)「弓兵を全員預ける」
川 ゚ -゚)「思い切った判断だな」
ノリ ゚ -゚)「その中に、飛翔するドラゴンを射抜ける腕を持つヤツがいるかだな」
(,,゚Д゚)「数打ちゃ当たるだ」
フィーは呆れたように鼻で笑った。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:21:36.19 ID:5hQYyc78P
- ( ゚∀゚)「おいおい、正面門はどうすんだ? 地上からも、うん万の敵がくんだろ?」
('A`)「同意見だ。空を気にしてる間に玄関から入ってくるぞ」
(,,゚Д゚)「その辺は心配ない」
ギコは茶色い駒を二つ、正門の前に並べた。
(,,゚Д゚)「俺の計算だと、おまえらが一人あたり一万倒してくれることになってる」
(;゚∀゚)「……」
(;'A`)「……」
この人はたまに、真面目なのかふざけているのかわからない時がある。
本当に大丈夫なのだろうか。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:23:16.55 ID:5hQYyc78P
- 〜〜〜〜〜〜
( ´_ゝ`)「それにしても暑いな」
兄者が鎧の中を扇ぎながら愚痴をこぼした。
( ´_ゝ`)「ときに弟者、なんでおまえはそんな薄着なんだ?」
兄者は俺の装備を見て言った。
(´<_` )「まあ、鎧よりも、この服の方が丈夫だし」
( ´_ゝ`)「嘘をつくな嘘を」
(´<_` )「嘘じゃねえよ。れっきとした上級装備だ」
(#´_ゝ`)「よこせ!」
(´<_`#)「誰がやるか!」
(#^Д^)「暑いから暴れないでくださいよ!」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:25:26.52 ID:5hQYyc78P
- ( ´_ゝ`)「……」
(´<_` )「……」
( ^Д^)「……」
プギャーの怒鳴り声が響き渡った。
( ´_ゝ`)「俺たち、明らかに浮いてるよな」
兄者が周りを見回しながら言った。
たしかに、話し声は俺たちの以外聞こえない。
人はたくさんいる。
いすぎて熱が籠もるぐらいだ。
だが、誰一人として喋ろうとはしない。
( ´_ゝ`)「これじゃ、まるで葬式だ」
(´<_` )「だな」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:29:28.52 ID:5hQYyc78P
- ( ^Д^)「そういえば、兄者さんはなんでここにいるんすか?」
プギャーが剣の手入れをしながら呟いた。
(;´_ゝ`)「え?」
( ^Д^)「ここは徴兵された人たちの集合場所ですよ」
(;´_ゝ`)「なんで言わないんだよ」
( ^Д^)「いや、知ってると思ってました」
(;´_ゝ`)「弟者も知ってたのか?」
(´<_` )「もちろん。というか、俺とプギャーはここを仕切るよう言われてんだよ」
そう言って俺は襟章を兄者に見せた。
(;´_ゝ`)「おまえそんな偉いの? というかなんで兄の俺より位が上なの?」
兄者は驚いて目を丸くした。
(´<_` )「まあ敵倒したし」
(;´_ゝ`)「俺だって突入のとき活躍しただろ!」
( ^Д^)「あ、俺はそれで位が貰えましたよ」
(;´_ゝ`)「えぇー」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:32:30.78 ID:5hQYyc78P
- そのとき、俺はある目線を感じた。
柱の陰から、俺たちを見つめている少年がいた。
(-_-)「……」
向こうは俺が気づいたのを知ったらしい。
目をそらすようにして顔を伏せた。
(´<_` )「どうした? 暗いぞ?」
兄者とプギャーの口喧嘩に付き合ってるのも退屈だ。
俺は少年に歩み寄って声をかけた。
(-_-)「……別に」
歳は十五、六か。
その年齢特有の素っ気ない返事で返してきた。
(´<_` )「さっき、俺たちのこと見てたろ」
(-_-)「……見たっていいじゃないか」
(´<_` )「まあいいけどさ」
俺はそう言いながら少年の隣に腰を下ろした。
少年は明らかに嫌そうな顔をして横にずれた。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:35:24.64 ID:5hQYyc78P
- (´<_` )「怖いか?」
(-_-)「何が」
(´<_` )「戦うのが」
(-_-)「別に」
少年は面倒くさそうにそっぽを向いた。
(´<_` )「見かけによらず度胸あるんだな」
(-_-)「うるさいなぁ」
(´<_` )「何歳だ?」
(-_-)「十五」
(´<_` )「剣は持ったことあるのか?」
(-_-)「あるけど」
(´<_` )「へぇー。習ってたのか?」
(-_-)「親父に少しだけ」
(´<_` )「親父さんに剣術教えてもらったのか」
(-_-)「剣術って言うほどでもないけど」
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:36:46.63 ID:5hQYyc78P
- (´<_` )「ふーん。親父さんは何やってる人なんだ?」
(-_-)「兵士だよ。死んだけど」
(´<_` )「あら……」
悪いことを言わせてしまったと、俺は少し反省した。
しかし、少年は気にする様子はなかった。
それどころか、話を続けた。
(-_-)「魔王城の決戦ってあったじゃん」
(´<_` )「あったな」
ブーンたちが魔王城を落とした戦いだ。
VIPとラウンジの兵士も戦いに参加していたはずだ。
(-_-)「親父はそれで死んだ」
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:39:02.71 ID:5hQYyc78P
- ( ´_ゝ`)「……辛くはなかったのか?」
俺はさばさばと話す少年を見て、思わず尋ねた。
(-_-)「親父は、時の神殿へと向かう魔王とその側近たちを止めようとして、瞬殺されたらしい」
(´<_` )「……」
(-_-)「すごくかっこいいじゃん。勝てるわけのない敵に挑んで、散って。俺は親父の死に様を誇りに思うよ」
少年は腰の剣の柄を握っていた。
支給される銅の剣ではなく、立派な鋼の剣だ。
(´<_` )「親父さんの形見か?」
(-_-)「まあね。折れてるけど」
そう言って少年は剣を引き抜いた。
刀身は半分から無くなっていた。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:41:07.08 ID:5hQYyc78P
- (-_-)「誰にも言うなよ。俺はこれで戦うんだ」
(´<_` )「まあ、そうしたいなら誰にも言わないけどさ」
それでろくに戦えるとは思わない。
俺は少し心配になったが、本人がそれを望んでいるのなら別にいいのだろう。
だが、少年が自信満々な様子で剣を鞘に納めるのを見て、やはり少し気になった。
(´<_` )「死ぬのも怖くないのか?」
(-_-)「別に。親父だって死んだし」
あまり答えになっていない気もするが。
(-_-)「でも、死にたくはないよ」
(´<_` )「怖くないんじゃないのか?」
(-_-)「だって、母さんが泣くから」
少年はうつむいた。
(-_-)「親父が死んだ日、街中が、VIP中が喜びに湧いてた。魔王城が陥落したんだ、当然さ」
(-_-)「でも母さんは泣いてた。一人、台所で、声を枯らして」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:43:30.18 ID:5hQYyc78P
- (´<_` )「……母さんが好きか?」
(-_-)「別に」
少年は照れを隠すように、顔を伏せた。
(´<_` )「おまえが死んだら、母さん泣くんだろ?」
(-_-)「たぶんね」
俺は銅の剣を少年に渡した。
(´<_` )「いざとなったら、これ使えよ」
(-_-)「いらないって」
(´<_` )「いいから持っとけ」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:45:38.53 ID:5hQYyc78P
- 無理やり剣を押しつけ、俺は立ち上がった。
(-_-)「二本も重くて持てないよ」
(´<_` )「一本と半分だろ」
俺がからかうと、少年はむっとしたように頬を膨らました。
(-_-)「おっさん、何て名前?」
(´<_` )「弟者だ。それと、おっさんじゃない。おまえと七歳しか変わらん」
(-_-)「おっさんじゃん。俺はヒッキー」
(´<_` )「じゃ、俺は向こう行くから。お母さん泣かすなよ」
(-_-)「おっさんも死ぬなよ」
ヒッキーは、会って初めて笑顔を見せた。
まだ幼さの残った、綺麗な笑顔だった。
(´<_` )「おっさんかぁ……」
俺は顎をいじりながら呟いた。
兄者とプギャーがチャンバラしているのが見えた。
のんきな奴らだ。
その傍らで、白髪の男性が頭を抱えている。
それを見て、俺はなんとも言えない気持ちになった。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:48:11.11 ID:5hQYyc78P
- 〜〜〜〜〜〜
空が暗い雲に覆われた。
東から、地鳴りが近づいてくる。
何万もの敵の足音。
もう、この暗闇の向こうまで迫って来ている
('A`)「いよいよか……」
俺はVIPの平野を見下ろしながら呟いた。
風が吹き抜ける音が不気味に響く。
川 ゚ -゚)「何をしているんだ?」
後ろからクーが歩み寄って来た。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:50:25.14 ID:5hQYyc78P
- 川 ゚ -゚)「おまえの持ち場は城壁の上だろ?」
集合の時刻はとっくに過ぎていた。
VIPの螺旋状の要塞を囲むように、城壁がある。
俺の持ち場はその上だ。
そこから、正門を突破しようとする敵を阻止するのだ。
('A`)「ちょっと風に当たってただけだ」
川 ゚ -゚)「カッコつけてたの間違いだろ?」
クーは鼻で笑った。
('A`)「最後の戦いのまえに、俺が言った言葉覚えてるか?」
川 ゚ -゚)「記憶から抹消した」
やれやれ。
俺はため息をついた。
あの直後に急所に蹴りが飛んできたのは、記憶から消したくても消せない。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:52:48.09 ID:5hQYyc78P
- ('A`)「でも、あえてもう一度言う」
俺は彼女の足を警戒しつつ、言った。
('A`)「この戦いが終わったら、付き合ってくれ」
直後、防ぐ間もなく、急所に蹴りが入った。
激痛。
俺は涙を流しながらその場に崩れた。
川 ゚ -゚)「全部終わったらな」
(;'A`)「……え?」
そう言って、クーは去っていった。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:54:28.90 ID:5hQYyc78P
- 城壁にはたくさんの魔法使いが待機していた。
全員、緊張した面持ちで、暗い地平線の先を見つめている。
その中で、ジョルジュを見つけるのは簡単だった。
明らかに容姿が周りと浮いているのだ。
ジョルジュは先頭であぐらをかいていた。
( ゚∀゚)「おせえよバカ」
ジョルジュは腕のアクセサリをじゃらつかせながら手を挙げた。
('A`)「わりぃわりぃ」
( ゚∀゚)「何ニヤついてんだよ。いいことでもあったか?」
('A`)「別に」
('A`)「なんかいっそう派手になってないか?」
俺はジョルジュのアクセサリを見ながら言った。
服も魔法使いとは思えない派手さだ。
( ゚∀゚)「これが俺の正式戦闘スタイルだ」
('A`)「へぇー」
その中にひとつ、熱でひん曲がったようなアクセサリが目についた。
彫られている文字は溶けてしまって読み取れないが、「ながおk」までは確認できた。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/17(月) 23:57:28.13 ID:5hQYyc78P
- ( ゚∀゚)「おいでなすったぞ」
ジョルジュが呟きながら指差した。
地平線の先から、地面が黒く染まっていく。
目を凝らして初めて、それが敵の大軍だとわかった。
背後からざわめきがあがる。
( ゚∀゚)「数万ってレベルじゃねえな」
('A`)「……」
振り返ってVIPを見る。
螺旋状の道を埋め尽くすように、兵士たちがならんでいる。
頂上には弓兵が見える。
こちらも決して数が少ないわけではない。
しかし、あの数の前では頼りなさすぎる。
城の頂上に二人の人影が見えた。
クーとフィーだろうか。
( ゚∀゚)「あいつら、何やってんだ?」
('A`)「さあ」
あの二人の考えることはわからないし、理解しようとするだけ無駄だろう。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:01:42.96 ID:U3Bhz30FP
- (,,゚Д゚)「見ろ」
敵の影が平原の半分を黒く埋め尽くしたあたりで、ギコの叫び声が聞こえた。
第三層の広場にギコの姿が見える。
よくここまで声が届くものだ。
(,,゚Д゚)「闇はもう目の前だ」
兵士たちは水を打ったように静まり返った。
(,,゚Д゚)「この迫りくる絶望を前にして、なお剣を握ってくれたおまえたちに感謝する」
(,,゚Д゚)「さて、この吐き気がするくらいに膨れ上がった悪を叩き潰す時が来た」
ギコが剣を抜き、高く掲げた。
(,,゚Д゚)「友を奪い、家族を奪い、国を、自由を、生を、光を奪った奴らを許すな!」
(,,゚Д゚)「怒りの炎を、剣に灯せ!」
(,,゚Д゚)「あの闇を、信念の光で切り裂け!」
(,,゚Д゚)「剣を抜け、VIPの戦士たちよ! この黒い大地を、奴らの血で紅く染めてやれ!!」
ギコの声に応えるように、一万の兵士が、吼えた。
空気が、大地が、VIPが震えた。
ただ、勝利を勝ち取ろうという雄叫びには聞こえなかった。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:03:21.59 ID:U3Bhz30FP
- 〜〜〜〜〜〜
地上の震えが、地下まで響いてくる。
ノハ;゚听)「うおお?」
ヒートが驚いたように天井を見上げた。
ノハ;゚听)「なんじゃこりゃ」
(*゚ー゚)「戦いの前に、騒いでるだけよ」
ノハ*゚听)「うおおおお! 私も戦いたいぞ!!」
ヒートは部屋を走り回った。
ノハ*゚听)「なあ、やっぱ私も上に行っていいか?」
「なりません」
見張りの兵士が首を振った。
ノハ;゚听)「なんでだっ!?」
「ギコさんとジョルジュさんの言いつけですから」
ノハ#゚听)「ジョルジュのバカやろうめ!!」
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:06:08.40 ID:U3Bhz30FP
- (*゚ー゚)「ほんと、バカよね」
そっと息を吹きかける。
見張りの兵士二人は腰が抜けたように崩れ落ちた。
「しぃさま……何を……」
(*゚ー゚)「私を見張るんなら、あと五十人は用意しておくべきだったわね」
ノハ*゚听)「すげぇぇぇぇぇ!!」
ヒートが関心したように歓声をあげた。
(*゚ー゚)「さ、行きましょ」
私はヒートの手を引いて階段を昇った。
女だからってなめてもらっちゃ困る。
私だって、戦いたいのだ。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:08:05.75 ID:U3Bhz30FP
- 〜〜〜〜〜〜
狂気を孕んだ黒い影が、もうVIPの目と鼻の先まで迫ってきていた。
( ゚∀゚)「さて」
ジョルジュが杖を構える。
背後の兵士が唾を飲み込んだ。
( ゚∀゚)「……来るぜ」
ジョルジュが指差す先に、いくつかの大きな投石機が見える。
直後、一斉にそれが放たれた。
無数の巨大な岩が、風を切る音を立て、放物線を描きながら飛んでくる。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:09:31.80 ID:U3Bhz30FP
- ('A`)「まかせろ」
( ゚∀゚)「んあ」
魔力を軽く込め、杖を横に振る。
数秒遅れて、青い稲妻が岩を全て薙払う。
石粒一つたりともVIPには届かない。
背後で歓声があがった。
('A`)「ま、余裕だな」
しかしもちろん、それで諦めてくれるほど敵も優しくない。
さっきの倍以上の数の岩が空中に放たれる。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:11:20.64 ID:U3Bhz30FP
- ( ゚∀゚)「一発残らず撃ち落とせ!!」
ジョルジュのかけ声と共に、一斉に魔法を放つ。
眩い閃光を放ちながら、飛んでくる岩を残らず砕いていく。
( ゚∀゚)「まるで花火だな」
ジョルジュが鼻で笑った。
こんな一斉に魔法を使う瞬間は見たことない。
大量の雷撃や火炎で、辺りは昼間のように明るい。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:13:38.16 ID:U3Bhz30FP
- 「敵の先頭が、射程圏内に入ります!」
( ゚∀゚)「よーし、できるだけ引きつけろ」
だんだんと敵が近づいてくる。
あと少し。
上空の眩い光のおかげで、先頭のオークたちの注意は地面から逸れている。
あと数歩。
もう手を伸ばせば正面門に届くところまで来た、その瞬間。
( ゚∀゚)「今だ!!」
オークたちの足下が、赤く輝いた。
爆音。
張り巡らされた魔法陣が灼熱の火柱を噴く。
一瞬にして数千のオークが灰と化した。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:15:38.11 ID:U3Bhz30FP
- ( ゚∀゚)「攻撃!!」
慌てふためく敵に、一斉に魔法を浴びせる。
黒い影を白い光が掻き消すように蹴散らしていく。
( ゚∀゚)「魔力の出し惜しみはすんなよ! ここで全滅させんぞ!!」
杖を回し、雷を放つ。
数十の雷の槍が降り注ぎ、オークを一掃する。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:16:48.50 ID:U3Bhz30FP
- 「危ない!!」
背後で轟音と悲鳴があがった。
振り返ると、ちょうど岩の塊が壁にぶつかるところだった。
土煙をあげながら壁が崩れ落ちる。
そのとき、視界が暗くなった。
(;'A`)「!!」
巨大な影。
岩が目の前に迫って来ていた。
(;'A`)「ちっ!!」
とっさに横に飛んでそれをかわす。
岩は魔法使いの一団に突っ込んだ。
さらに続けて何発もの岩石が降ってくる。
寸前のところでそれを砕く。
細かい瓦礫が頭上に降り注ぐ。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:18:45.71 ID:U3Bhz30FP
- (;'A`)「ジョルジュ! あれをなんとかしてくれ!!」
( ゚∀゚)「あれってどれだ!」
(;'A`)「あのでかいのだよ!」
いくつもの巨大な投石機が遠くに見える。
しかし、この距離じゃ魔法は届かない。
( ゚∀゚)「しょうがねえなぁ!」
ジョルジュが杖をかざす。
それに合わせて、岩が空中で静止した。
( ゚∀゚)「返すぜ!!」
そして杖を振る。
弾き返されたそれは綺麗な放物線を描きながら投石機に直撃した。
('A`)「ナイス!」
( ゚∀゚)「ジョルジュ様と呼べ!」
ジョルジュが杖を回してポーズを取った。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:20:52.35 ID:U3Bhz30FP
- その時だった。
耳をつんざくような悲鳴。
恐怖を掻き立てる鳴き声。
灰色の空の彼方から、黒い雲が近づいてくる。
この鳴き声は、聞き覚えがある。
「ワイバーンだぁ!!」
誰かがそう叫んだ。
その声もあの恐ろしい鳴き声にかき消された。
(;'A`)「なんて数だ……」
ラウンジの時の倍以上だ。
空を覆い尽くさんばかりのワイバーンの群れ。
それがまるで一つの巨大な生き物のように、VIPに迫ってくる。
(;'A`)「あんな数、どうすんだ?」
(;゚∀゚)「知らん!」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:23:09.41 ID:U3Bhz30FP
- そのとき、青と緑の光の筋が貫いた。
黒い群れが二つに裂ける。
川 ゚ -゚)「放て!!」
クーの声が聞こえた。
直後、数千という矢の雨がワイバーンに降り注ぐ。
('A`)「すっげえ……」
矢は止むことなく群れへと放たれ続ける。
ワイバーンたちがみるみる地面へと落ちていく。
( ゚∀゚)「よし、上はあいつらにまかせろ! 門を守れ!!」
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:25:37.80 ID:U3Bhz30FP
- ノリ ゚ -゚)「来たぞ」
川 ゚ -゚)「うむ」
数千のワイバーンの群れの中。
矢をくぐり抜けながら物凄い速さで近づいてくる、いくつかの黒い影。
それを、二人の鋭い眼は見逃さなかった。
そして俺も、かろうじてそれを目にとらえた。
黒い鱗。
巨大な翼。
紛れもない、ドラゴンだ。
竜人族の姿も確認できる。
(;'A`)「ジョルジュ、見えたか?」
(;゚∀゚)「ああ、しかも軽く十体以上はいんぞ!!」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:28:49.98 ID:U3Bhz30FP
- 青い閃光。
クーが矢を放ったのだ。
だが、それはドラゴンのだいぶ前を通り過ぎた。
(;゚∀゚)「外したのか?」
(;'A`)「さあ……」
外したとしても、クーはあそこまで大きく外したりはしない。
その瞬間だった。
クーの矢の軌跡を追うように、一斉に数千の矢がそこに放たれたのだ。
そして、それは見事に一体のドラゴンの軌道をとらえていた。
('A`)「やった!!」
クーがドラゴンの動きを先読みし、それを全員に伝えていたのだ。
さすがのドラゴンも、あれだけの矢を食らってはひとたまりもない。
集中放火を浴びたドラゴンは、錐揉み回転しながらVIPの城に激突した。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:31:06.48 ID:U3Bhz30FP
- ( ゚∀゚)「上はひとまず任せておけそうだな」
('A`)「ああ」
「あれを止めろぉっ!!」
誰かがそう叫ぶのが聞こえた。
視線を下へと移す。
(;'A`)「なんだありゃ!?」
何かが向かってくる。
俺は目を凝らした。
四本の足で土煙をあげながら突進してくる巨大な怪物。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:33:06.55 ID:U3Bhz30FP
- (;゚∀゚)「門を破られるぞ!!」
額から突き出している角を振り回しながら、一直線に走ってくる。
味方のはずのオークまで蹴散らし、それでも勢いを緩める気配はない。
あんな突進を食らったら、門どころか城壁まで危うい。
(;'A`)「止めろ!!」
そう叫びながら俺は怪物めがけて雷撃を放った。
同時に、一斉に魔法の光が怪物へと放たれる。
しかし次の瞬間、黒い炎によってそれらは掻き消された。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/08/18(火) 00:34:58.79 ID:U3Bhz30FP
- (;'A`)「なっ……」
怪物の背中の上に、一人の人影が見えた。
身の丈ほどある長い杖。
邪悪な笑みを浮かべながら、奴はこちらに手を振った。
(#゚∀゚)「あいつは!!」
( ・∀・)「どーも」
直後、強い衝撃と轟音。
そして。
「門が破られたぞ!!!」
VIPの正門が、破られた。
つづく
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