- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 22:43:12.75 ID:fcnWz3Wm0
第九話【暗闇の中で】
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 22:44:49.32 ID:fcnWz3Wm0
- 真っ暗な空間。
宿の青年が木箱を抱えて立っている。
( ><)「おまえのせいで弟は死んだんです」
本当は僕のせいなんかじゃない。
そう言おうとしたが、声は出ない。
青年は木箱を開けた。
中から、泥人形が出てきた。
僕は小さく悲鳴をあげた。
しかしやはり声にはならない。
('A`)「おまえにとって俺たちはその程度のもんなのかよ」
泥人形はドクオに形を変えた。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 22:46:29.19 ID:fcnWz3Wm0
- さらにもう一体が箱から出てくる。
川 ゚ -゚)「……」
ラウンジの大通りで見た女の人だ。
冷たい目をしてこちらを見ている。
そして、最後の一体が箱から這い出す。
それはツンの姿をしていた。
ξ゚听)ξ「どうせ私のことも忘れちゃうんでしょ?」
ツンが冷たい声で言い放つ。
ξ゚听)ξ「私なんてもう何でもないんだ」
違う。
ξ゚听)ξ「私はこんなに……」
ツンの体が崩れていく。
待ってくれ。
僕を一人にしないでくれ。
必死に体を動かそうとするが、ぴくりともしない。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 22:48:57.12 ID:fcnWz3Wm0
- ( ><)「殺してやるんです」
背後で青年が呟いた。
手には青く輝く剣を持っている。
逃げなきゃ殺される。
足が動かない。
声も出ない。
青年が剣を振り下ろす。
刃は風を斬り、僕をk
ξ#゚听)ξ「うっさいのよ!!」
強烈な蹴りを腹に叩き込まれた。
息が止まるかと思った。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 22:50:51.10 ID:fcnWz3Wm0
- (;^ω^)「がっ……」
ξ#゚听)ξ「隣で唸られちゃ眠れないでしょ!」
月明かりに照らされる中、ツンが突っ立っていた。
僕は夜の森の中に戻っていた。
(;^ω^)「ごめんだお」
ξ゚听)ξ「全く、静かに寝なさいよね」
そう言うとツンは寝袋の中に入った。
気がつくと、僕は汗まみれだった。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 22:54:06.91 ID:fcnWz3Wm0
- ξ゚听)ξ「高っ」
ツンが崖の先に立って見回した。
眼下に広がる平原。
日の光を浴びて緑に輝いている。
見上げると、白い雲がゆっくりと空を流れていく。
昨夜の嫌な夢も忘れてしまうくらい、実にすがすがしい朝だ。
ξ゚听)ξ「ニュー速平野よ。そしてあれがニュー速ね」
ツンは地図を片手に遠くを指差した。
不気味な黒い影。
あれがニュー速か。
その上空だけ、空が暗い。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 22:55:48.96 ID:fcnWz3Wm0
- ( ^ω^)「マジであそこに行くのかお?」
ξ゚听)ξ「行かないの?」
( ^ω^)「わざわざ危険を冒す必要はないんじゃないかお?」
ξ゚听)ξ「潰すに越したことはないわ」
そう言うと、ツンは崖を降り始めた。
(;^ω^)「ここを降りるのかお?」
ξ゚听)ξ「その方が数倍近道よ」
断崖絶壁だというのに、ツンは軽々と降りていく。
ξ゚听)ξ「早く来なさいよ」
下からツンの声がする。
今さら無理だと言っても聞かないだろう。
僕はゆっくりと後に従った。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 22:58:09.98 ID:fcnWz3Wm0
- (;^ω^)「うおっ!?」
足を滑らせそうになった。
石が遥か下へと落ちていく。
ξ゚听)ξ「気をつけなさいよ」
(;^ω^)「小便ちびるかと思ったお」
ξ゚听)ξ「漏らすのは勝手だけど、私にかかったら殺すわよ」
だいぶ崖を降りただろうか。
やっと地面が見えてきた。
ξ゚听)ξ「よっと」
ツンが地面に着地した。
ξ゚听)ξ「ほら、予定の半分の時間で済んだわ」
あたりまえだ。
本来遠回りして行くところを、崖を降りて直線で突破したのだから。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 22:59:57.80 ID:fcnWz3Wm0
- ( ^ω^)「上が見えないお」
僕は降りてきた崖を見上げた。
ξ゚听)ξ「ずいぶん降りたのね」
僕らは平原の真ん中の岩場で昼食にした。
ツンがウサギを捕まえてきたので、シチューにすることにした。
ξ゚听)ξ「香り草が欲しかったわね」
( ^ω^)「草ならその辺に生えてるお」
ξ゚听)ξ「バカなの?」
バカとは失敬な。
それにしても、作りすぎたんじゃないだろうか。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:01:59.07 ID:fcnWz3Wm0
- ξ゚听)ξ「余らすの勿体無いから全部食べてね」
(;^ω^)「いや、もうお腹一杯だお。というかツンも食えお」
ξ゚听)ξ「イヤよ。太るじゃない」
(;^ω^)「第一なんで四人分も作ったんだお」
ξ゚听)ξ「いつもの癖で。あいつら、どうしてるかな」
( ^ω^)「あいつら?」
ξ゚听)ξ「クーとかドクオとかジョルジュとか」
( ^ω^)「ああ」
僕はクーという人は知らないのだが。
顔はなんとなくわかる。
あの泥人形がそうなのだろう。
( ^ω^)「きっとなんとかやってるお」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:03:58.50 ID:fcnWz3Wm0
- ξ゚听)ξ「そういえば……」
ツンが突然何か思い出したように顔をあげた。
ξ゚听)ξ「あんたがはぐれたとき、今後の予定を話し合ったのよ」
( ^ω^)「はぐれたのはそっちだお」
ξ#゚听)ξ「んなことどうでもいいわよ」
(;^ω^)「すみませんお」
ξ゚听)ξ「でね、そんとき確か『ヒートを助けるためにニュー速に向かう』って話が出たのよ!」
( ^ω^)「なるほど」
ξ゚听)ξ「だから、あいつらももしかしたらニュー速に向かってるかも!」
( ^ω^)「おお!」
つまり、ニュー速でジョルジュたちと合流できるかもしれないってわけだ。
( ^ω^)「でも、クーって人はどうするんだお?」
ξ゚听)ξ「どうせあいつらが助け出したでしょ。とにかく私たちがやるべきことはニュー速に向かうことよ!」
ツンが手を叩いた。
しかし、ニュー速に行って無事に会える可能性は低いような気もするが。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:05:47.48 ID:fcnWz3Wm0
- ξ゚听)ξ「ちょっと待って」
ツンが辺りを見回した。
ξ゚听)ξ「何か聴こえない?」
( ^ω^)「お?」
地鳴りがする。
平原の反対側に何かが見える。
騎兵だ。
僕らに気づいたようで、こちらに向かってくる。
( ^ω^)「どうするお?」
ξ゚听)ξ「まあ敵だったら倒せばいいでしょ」
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:08:08.09 ID:fcnWz3Wm0
- 「Dartho」
兵士たちは僕らのすぐ目の前で馬を止めた。
隊長らしき人が前に出る。
( ^ω^)「エルフだお……」
銀色の髪に銀色の瞳。
美しくもどこか神秘的な顔立ち。
思わず見とれてしまうくらいだ。
ノリ ゚ -゚)「人間がこんなところで何をしている」
ξ゚听)ξ「え、クー?」
ああ、どこかで見た顔だと思ったらラウンジの泥人形だ。
しかしあのときは黒髪だった気もするが。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:10:09.57 ID:fcnWz3Wm0
- ノリ ゚ -゚)「誰だそれは」
ξ゚听)ξ「違うの?」
( ^ω^)「よく見るお。髪の色が違うお」
ξ゚听)ξ「髪だけじゃない」
( ^ω^)「銀か黒かってだいぶ大きな違いだお」
その時、耳元を何かが掠めた。
振り返ると地面に矢が突き刺さっている。
ノリ ゚ -゚)「私の質問に答えろ」
(;^ω^)「答えますからそれを下ろしてくださいお」
彼女の構える弓矢は真っ直ぐ僕の心臓に向けられていた。
ノリ ゚ -゚)「答えによってはそのまま殺す」
額を嫌な汗が流れる。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:11:55.85 ID:fcnWz3Wm0
- ξ゚听)ξ「ただの旅人よ。なんか文句あんの?」
案の定、ツンが食ってかかった。
ノリ ゚ -゚)「ただの旅人がニュー速に来る理由はないだろう。本当のことを言え」
ξ゚听)ξ「なんなのよさっきから偉そうに。別にあんたたちに教える義理は……」
矢がツン目掛けて放たれる。
反射的に剣を抜き、それを弾いた。
( ^ω^)「何をするんだお!」
こいつ、マジで撃ちやがった。
しかも確実に急所を狙っていた。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:13:48.18 ID:fcnWz3Wm0
- ノリ ゚ -゚)「言葉に気をつけろ人間」
ξ#゚听)ξ「もうあったまきた!」
ツンの姿が一瞬視界から消えた。
次の瞬間、ツンの蹴りがエルフを吹き飛ばした。
エルフの体が宙を舞う。
ノリ;゚ -゚)「くっ!」
「貴様、よくも!」
周りの兵士たちが矢を構える。
( ^ω^)「ツン、危ないお!」
ツンに向けて放たれた矢を全て叩き落とす。
兵士たちが身をたじろいだ。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:15:56.18 ID:fcnWz3Wm0
- ξ#゚听)ξ「このっ!」
ノリ;゚ -゚)「!!」
エルフがすんでのところでツンの蹴りをかわす。
地面が大きく抉れた。
あれを喰らっていたら骨が砕けていただろう。
ξ#゚听)ξ「すばしっこいヤツね!」
ノリ;゚ -゚)「ちっ!」
エルフが体制を整える。
ツンの二撃目がエルフの顔をとらえようとした、その瞬間だった。
「Alagos berio!」
ξ;゚听)ξ「え!?」
ツンの体が空中で静止した。
同時にエルフも止まっていた。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:18:09.50 ID:fcnWz3Wm0
- ξ;゚听)ξ「ちょっと、何よこれ!」
( ^ω^)「何してるんだお?」
ξ;゚听)ξ「動けないのよ!」
空中で固まったまま喚くツンの姿は非常に滑稽だった。
ノリ ゚ -゚)「邪魔をするな」
( ´∀`)「邪魔っていうかむしろ助けたんだモナ」
隊列の奥から、一人の男が出てきた。
同じように整った顔立ち。
だが少し年をとっているようにも見える。
( ´∀`)「勇者ブーンと武闘家ツンの二人モナ。おまえじゃとてもかなわないモナ」
兵士たちの間でどよめきがあがる。
ノリ ゚ -゚)「余計なことを」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:20:16.03 ID:fcnWz3Wm0
- ( ´∀`)「大変失礼しましたモナ」
モナーと名乗ったエルフの男性は僕らに深々とお辞儀した。
( ´∀`)「うちのバカ娘がご迷惑をおかけしましたモナ」
ξ゚听)ξ「まあ謝ってくれるなら許すけど」
肝心のバカ娘の方は謝る気はなさそうだ。
ノリ ゚ -゚)「こいつら悪人だぞ。この場で殺さなくていいのか」
( ´∀`)「あんな手配書、でたらめに決まってるモナ」
ノリ ゚ -゚)「どうだか。いかにも悪人面じゃないか。とくにそこの女」
ξ#゚听)ξ「あんたやっぱムカつくわね。前歯折るわよ」
( ^ω^)「まあまあ」
僕はツンをなだめた。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:22:07.68 ID:fcnWz3Wm0
- ( ´∀`)「ところで、お尋ねしたいことがあるモナ」
( ^ω^)「なんですかお」
( ´∀`)「この辺で、誰か別のエルフを見かけたりしかなかったモナ?」
( ^ω^)「いやー」
(;´∀`)「わかりましたモナ」
モナーは困ったようにうつむいた。
ξ゚听)ξ「どうかしたの?」
ノリ ゚ -゚)「貴様らに話す義理などない」
ξ#゚听)ξ「じゃあいいわよ!」
( ´∀`)「ちょっと黙ってろモナ」
モナーが娘を小突いた。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:24:24.25 ID:fcnWz3Wm0
- ( ´∀`)「実はこの辺で彼女が“同胞の危機”を感じたのです」
( ^ω^)「同胞の危機?」
モナーが首から何かを外して見せた。
銀に輝く宝石がはめ込まれた、プラチナのペンダントだ。
( ´∀`)「南の森に住む我々は、皆このペンダントをつけています」
よく見ると彼女の首にも同じペンダントがあった。
しかし、その宝石はモナーのとは違い、まるで血のような赤に染まっていた。
( ´∀`)「血の繋がった者の命の危機が迫ると、このように魔石が赤く光るモナ」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:26:26.12 ID:fcnWz3Wm0
- ξ゚听)ξ「つまり、そいつの親族が死にかけてるってこと?」
( ´∀`)「そうモナ。“同胞の危機”を感じた者は兵を率いてそれを助けに行く掟があるモナ」
だからこんな若い娘が兵を引き連れているというわけか。
( ´∀`)「しかし、非常に困ったことがあるんだモナ」
( ^ω^)「?」
( ´∀`)「彼女の親族は、全員無事だと確認がとれているモナ」
ξ゚听)ξ「どういうこと?」
娘がめんどくさそうにため息をついた。
ノリ ゚ -゚)「誰が死にかけてるのかわからないから困ってるんだよ」
ξ゚听)ξ「あら、それは大変ね」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:28:31.27 ID:fcnWz3Wm0
- ( ´∀`)「ペンダントはまだ西を示してるモナ」
( ^ω^)「このままニュー速に向かうのかお?」
( ´∀`)「私としては、できるだけあのような恐ろしい場所には近づきたくないんだモナ」
モナーは俯いて答えた。
ノリ ゚ -゚)「なぜ恐れる必要がある」
娘がモナーに言った。
ノリ ゚ -゚)『私たちがあいつらのような下等で汚らしい種族に負けるとでも?』
( ´∀`)『おまえは魔王軍の恐ろしさを知らないモナ』
( ^ω^)「?」
不思議な言葉で二人は会話を始めた。
まるで歌を唄っているようだ。
きっとエルフ語なのだろう。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:31:47.71 ID:fcnWz3Wm0
- ( ´∀`)『やつらはかつてエルフを大量に殺しているモナ』
ノリ ゚ -゚)『なら仇をとるまでだ』
( ´∀`)『簡単にできるわけがないモナ。魔王が死んだとしても、ニュー速の魔王軍の強さはほとんど衰えていないモナ』
ノリ ゚ -゚)『そうやって同胞の仇をとることすら恐れるというのか。臆病者め』
娘はキツい口調で何か言い放つと馬に飛び乗った。
ノリ ゚ -゚)『どちらにしろ、選択権は私にある。全員、ニュー速に向かうぞ』
(;´∀`)『フィー!』
娘はモナーの制止を無視した。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:33:26.70 ID:fcnWz3Wm0
- ノリ ゚ -゚)「おい人間」
ξ゚听)ξ「なによ」
ノリ ゚ -゚)「どうせニュー速に来るなんてろくな用事じゃないんだろう? 貴様らが着く前にニュー速を潰しといてやるよ」
彼女はそう言うと、馬で駆け出した。
その後を兵士たちが追う。
(;´∀`)「とんだ大バカ娘モナ」
モナーはため息をついた。
( ´∀`)「どうもご迷惑おかけしたモナ」
( ^ω^)「いえいえ」
( ´∀`)「私も後を追わなきゃいけないモナ。ではお気をつけてモナ」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:35:44.58 ID:fcnWz3Wm0
- ξ#゚听)ξ「ほっんとムカつく女だったわ!」
彼らの姿が平原の向こうへ行ってしまってから、ツンが悪態をついた。
ξ#゚听)ξ「エルフって嫌な人種ね」
( ^ω^)「モナーさんは良い人だったお」
きっと、エルフがみんなあの娘みたいなわけではないのだろう。
もともとプライドの高い種族だと聞くが。
( ^ω^)「ニュー速に向かってったけど心配だお」
ξ#゚听)ξ「別にどうでもいいわよ、あんな奴ら」
ツンはだいぶ頭に来ているようだった。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:37:31.22 ID:fcnWz3Wm0
- ξ#゚听)ξ「さ、走るわよ!」
(;^ω^)「えぇー、また走るのかお?」
ξ#゚听)ξ「当たり前よ! あいつ、『ニュー速を潰す』って言ってたじゃない!」
( ^ω^)「別に潰してくれるなら全然いいんじゃないかお?」
ξ#゚听)ξ「あいつに潰させるってのが癪だわ」
ああ、そんな理由か。
そのせいでまた走るのか。
僕も少しあのエルフの娘を恨んだ。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:39:38.17 ID:fcnWz3Wm0
- 〜〜〜〜〜〜
(;´∀`)『フィー! フィー!』
後ろからモナーの呼ぶ声がする。
ノリ ゚ -゚)『どうしたモナー。臆病風に吹かれて人間と一緒に帰ったのかと思っていたよ』
(;´∀`)『馬を止めるモナ。ここはすでにニュー速の領土の中モナ』
ノリ ゚ -゚)『止める必要などないだろう』
私はさらに馬のスピードを上げた。
だんだんとニュー速の黒い城壁が近づいてくる。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:41:32.22 ID:fcnWz3Wm0
- (;´∀`)『兵が少なすぎるモナ。せめて一度引き返してもっと兵を連れてくるモナ』
ノリ ゚ -゚)『勝手にするがいい』
(;´∀`)『おまえh』
その瞬間、モナーの頭を、矢が貫いた。
ゆっくりと彼の身体が馬から崩れ落ちる。
ノリ;゚ -゚)『モナー!』
『ワーグだ!!』
誰かが叫ぶと同時に、何十本もの矢が味方を襲う。
背後に矢を構えた敵の群れが現れた。
奴らはワーグに乗っている。
馬より速く、狼より賢く、熊より獰猛な魔物。
いつのまに後ろに回られたんだ。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:44:32.65 ID:fcnWz3Wm0
- ノリ;゚ -゚)『敵だ! 迎え討て!』
叫んだ声が裏返っていた。
仲間がどんどん減っていく。
私は剣を振りかざした。
ノリ;゚ -゚)『ワーグを恐れるな! 戦え!』
「エルフ共が。首を城の飾りにしてやるよ」
耳元で敵が呟いた。
ノリ;゚ -゚)『!!』
斧が振り下ろされる。
剣が砕け散った。
わき腹に激痛を感じ、視界は暗転した。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:46:41.79 ID:fcnWz3Wm0
- 〜〜〜〜〜〜
(;^ω^)「はぁ、はぁ、ちょっと休憩しないかお?」
僕は立ち止まって膝に手をついた。
ξ゚听)ξ「だらしないわね。早くしないと日が暮れちゃうわよ」
空はだんだん暗くなってきている。
しかしまだ日没というわけではない。
ニュー速に近づいているからだろう。
あの黒い塔も、だいぶ近くに見える。
( ^ω^)「不気味な塔だお」
ξ゚听)ξ「なに、見かけだけよ」
( ^ω^)「そうだといいけど……」
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:48:44.41 ID:fcnWz3Wm0
- ξ゚听)ξ「ちょっと待って。何か来るわ!」
ツンが指差した。
一頭の馬がこちらに走ってくるのが見える。
何かを引きずっているようにも見える。
(;^ω^)「あれは!」
引きずられていたのは、さっきのエルフの娘だった。
ξ;゚听)ξ「ひどいケガじゃない!」
鎧は血で赤く染まっている。
わき腹に深い斬り傷があった。
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:50:50.33 ID:fcnWz3Wm0
- ノリ - )「うぅ……」
彼女は低く呻いた。
( ^ω^)「大丈夫かお? 何があったんだお?」
ノリ - )「Belnir……Belthnir aen nan gwaur firenhoth」
彼女は完全に怯え、震えていた。
先ほど見たあの美しく高潔な娘の姿はなかった。
ξ゚听)ξ「とりあえず傷を手当てしないと。血がすごいわ」
( ^ω^)「そうだお」
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:53:43.61 ID:fcnWz3Wm0
- 僕らは岩場の影に彼女を寝そべらせた。
薬草や包帯なら、宿の青年がたくさん用意してくれてある。
ツンが簡単な水魔法で傷口を洗い流した。
その上に薬草を塗り込む。
ξ゚听)ξ「これで早く塞がるはずだけど」
( ^ω^)「ツンはすごいお」
ξ゚听)ξ「旅の基本よ。それより、どうしようかしら」
彼女を置いていくわけにもいかないだろう。
( ^ω^)「目を覚ますまでここにいるしかないお」
ξ゚听)ξ「そうね」
ツンはそう言って岩に腰掛けた。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:55:47.69 ID:fcnWz3Wm0
- 日が傾き、だんだんと西の空が赤く染まってきた。
彼女はまだ目を覚ましていない。
( ^ω^)「なかなか起きないお」
ξ゚听)ξ「相当深い傷だったし。魔王軍にやられたのかしら」
モナーさんは無事だろうか。
望みはほとんどないが。
ξ゚听)ξ「さすがに暗くなってから移動は危険だわ。今日はここで野宿しかないわね」
ツンがため息をついた。
ξ゚听)ξ「まったく、こいつのせいでだいぶ迷惑被ったわ」
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/04(木) 23:58:04.49 ID:fcnWz3Wm0
- 直に日が暮れ、平原は暗闇に包まれた。
( ^ω^)「暗くてなんも見えないお」
ξ゚听)ξ「しょうがないでしょ。火なんか焚いたら敵に見つかっちゃうわ」
月明かりに目が慣れるまでだいぶ時間がかかった。
( ^ω^)「お腹すいたお」
ξ゚听)ξ「そうね。クラムがあるわ。えーっと、カバンはどこよ」
( ^ω^)「その辺に置いたお」
ξ゚听)ξ「暗闇って嫌いだわ」
ツンがカバンを手探りで探しながら悪態をついた。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/05(金) 00:01:10.26 ID:8JF4YP6o0
- ξ゚听)ξ「何も見えないんだもの。まるで世界が自分一人になったみたいで、すごく怖い」
( ^ω^)「ツンにも怖いものがあったのかお」
ξ゚听)ξ「そりゃあるわよ」
ツンは笑って答えた。
ξ゚听)ξ「他にもたくさんあるわ。虫とか。あいつら、知らないうちに服に潜り込んでくるじゃない」
ツンにも意外と女の子らしい面もあるんだ。
その割にはさっき蜘蛛を叩き潰していた気もするが。
ξ゚听)ξ「でも、一番怖いのは別にあるわ」
( ^ω^)「死ぬこととかかお?」
ξ゚听)ξ「死ぬことは怖くないわ。むしろ楽しみよ」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/05(金) 00:05:56.59 ID:8JF4YP6o0
- ( ^ω^)「どうしてだお?」
ξ゚听)ξ「おばあちゃんが教えてくれたの。死は新しい旅の始まりだって」
( ^ω^)「旅?」
ξ゚听)ξ「一面灰色に染まって、まるで硝子細工みたいに透き通った世界」
ツンは興奮したように語った。
ξ゚听)ξ「目の前には白い岸辺。青い海。その遥かさきには緑の草原」
( ^ω^)「よくわかんないお」
ξ゚听)ξ「でも、なんだか楽しそうじゃない?」
( ^ω^)「まあ、悪くないお」
ツンは微笑んだ。
それから、悲しそうな顔をした。
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/05(金) 00:07:27.21 ID:8JF4YP6o0
- ξ゚听)ξ「私が一番怖いこと、なんだかわかる?」
なんだろう。
死ぬことよりも、暗闇よりも怖いこと。
僕には想像もつかなかった。
すると突然、ツンは僕に抱きついた。
(;^ω^)「ツン?」
ツンは僕を放そうとしなかった。
彼女の鼓動。
彼女の呼吸。
彼女の体温。
全てがまるで自分の物のように感じ取れた。
ξ゚听)ξ「ブーンに忘れられるのが怖い……」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/05(金) 00:10:02.36 ID:8JF4YP6o0
- ξ゚听)ξ「ブーンが私のことを忘れる前にね……」
ツンの声は震えていた。
ξ゚听)ξ「せめてこれだけは知ってほしいの」
ツンは僕の耳元でそっと呟いた。
ξ゚听)ξ「私、ブーンのことが大好きだから……」
そう言ってツンは僕を見つめた。
僕は目を逸らすことができなかった。
胸の中に、何か温かいものが流れ込んだようだった。
ずっと忘れていた何かを、今思い出しそうになった気がした。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/05(金) 00:11:33.94 ID:8JF4YP6o0
- 拍手が鳴り響いた。
振り返ると、エルフの娘が僕らを見ながら手を叩いていた。
ノリ ゚ -゚)「ブラボー、ブラボー」
(;^ω^)「起きてたのかお?」
ノリ ゚ -゚)「まあな」
ξ;゚听)ξ「いつから見てたの!?」
ノリ ゚ -゚)「最初っから全部だ」
ξ///)ξ「……!!」
暗くてもわかるくらい、ツンの顔が赤く染まった。
ノリ ゚ -゚)「しかし人間というのは不思議な種族だな。あかの他人がいる前で愛の告白をするとは」
ξ///)ξ「うっさいわよ!!」
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/05(金) 00:13:29.25 ID:8JF4YP6o0
ノリ ゚ -゚)「人間に助けられるのは不本意だが、とりあえず礼は言っておこう」
名前はフィーというらしい。
だが、どうしてこうも一言多いのだろうか。
( ^ω^)「いったい何が起きたんだお」
ノリ ゚ -゚)「魔王軍に襲われたんだ。味方は全滅だろう」
フィーは唇を噛み締めた。
ノリ ゚ -゚)「明日、夜明けと共に仇を討ちにいく。世話になった」
( ^ω^)「一人で行くのかお?」
ノリ ゚ -゚)「もちろんだ」
ξ゚听)ξ「バカみたい」
ノリ#゚ -゚)「なんだと!」
フィーが立ち上がってツンを睨みつけた。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/05(金) 00:15:33.59 ID:8JF4YP6o0
- ξ゚听)ξ「あんたみたいな雑魚が一人で言ってもすぐに殺されるわよ」
ノリ#゚ -゚)「そんなことわかっている!」
フィーが怒鳴った。
ノリ#゚ -゚)「勝てないことぐらい、奴らと対峙して十分に悟った!」
ξ゚听)ξ「じゃあなんで一人で行こうとするのよ」
ノリ#゚ -゚)「私のせいで皆を失ったんだ! ここで私だけ逃げて帰れというのか!」
ξ゚听)ξ「プライドだけは高いのね」
ツンは呆れたようにため息をついた。
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/05(金) 00:17:21.66 ID:8JF4YP6o0
- ξ゚听)ξ「ついでだし、私たちが手伝ってあげるわよ」
ノリ#゚ -゚)「なっ……。人間の助けなど……」
ξ゚听)ξ「死にたいのか仇討ちたいのかはっきりしなさいよ」
ノリ#゚ -゚)「くっ……」
フィーは黙り込んだ。
( ^ω^)「心配しなくていいお。ああ見えて、ツンはものすごく強いんだお」
しばらく考え込んでいたが、やがて彼女は口を開いた。
ノリ ゚ -゚)「……ついて来たければくればいい」
ξ゚听)ξ「『ついて来てください』でしょ」
ノリ ゚ -゚)「ふん」
フィーはそっぽを向いた。
ξ゚听)ξ「可愛くないわね」
( ^ω^)「きっと照れてるんだお」
ξ゚听)ξ「そうには見えないけど」
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/05(金) 00:18:52.79 ID:8JF4YP6o0
- 〜〜〜〜〜〜
(´<_`;)「本当にこれで大丈夫ですかね」
川 ゚ -゚)「大丈夫だ。私を信じろ」
そう言いながらクーさんは魔王軍の鎧を身に着けた。
これで敵に紛れ込むという作戦らしい。
俺も、気絶して床に転がっている敵から鎧を頂戴した。
(´<_`;)「うわぁ……」
汗の臭いが鼻をつく。
こいつ、ちゃんと風呂入ってるのだろうか。
(´<_` )「こいつらどうします?」
川 ゚ -゚)「見つかると面倒だ。そこのロッカーに閉じ込めておこう」
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/05(金) 00:20:49.48 ID:8JF4YP6o0
- 窓から外を見渡す。
さすがに第二の魔王城というだけある。
その大きさは、ラウンジの城とは比べ物にならない。
もはや城自体が一種の街になっている。
川 ゚ -゚)「さて、ヒートを探すわけだが」
(´<_` )「こんなに広いとどこから探したらいいのかわかりませんね」
川 ゚ -゚)「誰かに聞こう」
(´<_`;)「は?」
この人はいったい何を言い出すんだ。
川 ゚ -゚)「大丈夫だ。鎧を着てるからバレやしない」
そんなに上手くいくだろうか。
そうこうしてるうちに、クーさんは廊下を進んでいってしまった。
(´<_`;)「ちょ、クーさん……」
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/05(金) 00:22:48.44 ID:8JF4YP6o0
- 川 ゚ -゚)「おい、そこのキミ」
俺の制止を振り切って、クーさんはすれ違い様に敵に声をかけた。
なるべく声を低くするよう意識はしているみたいだ。
「あぁ?」
川 ゚ -゚)「ヒートという女の子を知らないか?」
(´<_`;)「……」
もっと聞き方というものがあるだろうに。
「知らねえなぁ。女の子がこんなとこにいるとは思えねぇしな」
敵は口をひんまげて笑った。
怪しまれてはいないようだ。
(´<_` )「牢屋の場所ってどこだっけ?」
「ああ、おまえら新入りか。牢屋は第四ブロックの地下だぜ。第四ブロックは渡り廊下を通って西塔に行けば行けるぜ」
(´<_` )「ああそうだった。ありがとよ」
「気にすんな。最近新入りが多いからよく聞かれんだよ」
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/05(金) 00:24:29.90 ID:8JF4YP6o0
- 川 ゚ -゚)「なかなかやるじゃないかな」
クーさんが小声で呟いた。
(´<_` )「あとは第四ブロックとやらに行けばいいんですね」
川 ゚ -゚)「そこにヒートがいるかどうかはわからないがな」
まあ牢屋にいる可能性が一番高いだろう。
(´<_` )「渡り廊下ならさっき窓から見えました」
川 ゚ -゚)「……いつの間にそんなしっかり者になったんだ?」
(´<_` )「昔からですよ。ダメな兄を持つと弟はしっかり者になるんです」
川 ゚ -゚)「ふーん」
クーさんは感心したように俺を見た。
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/05(金) 00:26:35.18 ID:8JF4YP6o0
- 渡り廊下から見る景色も圧巻だった。
黒い闇の中に浮かぶ赤い炎。
川 ゚ -゚)「あれは武器を作ってる火だろうな」
クーさんが下を見下ろしながら言った。
トロルが何かを運んでいるのも見える。
これだけの軍事力が魔王軍に残っていたのか。
そう考えると鳥肌が立つ。
(´<_` )「こんな相手に勝てますかね」
川 ゚ -゚)「今は五分五分だろう。ただ、魔王が復活したら……」
(´<_` )「復活したら?」
川 ゚ -゚)「世界は確実に闇に堕ちる」
俺は思わず息を呑んだ。
その時、空気が震えるような咆哮が辺りに響いた。
渡り廊下にいた者たちが歓声を上げた。
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/06/05(金) 00:28:26.38 ID:8JF4YP6o0
- (´<_`;)「あれは!」
空に何十もの黒い影が見えた。
大きな翼。
体中を覆い尽くす鱗
口からは火を吐いている。
(´<_`;)「ドラゴンだ!」
「すげぇだろ? ついに竜人族まで味方につけちまったんだよ」
そばにいた兵士が笑いながら言った。
竜人族。
北の山脈に住んでいたという、ドラゴンを操る伝説の種族だ。
数百年前に滅んだんじゃなかったのか。
ドラゴンたちは火を吹きながら空中を旋回している。
その光景に戦慄を覚えた。
ドラゴンに比べたら、ワイバーンなんて可愛いものだ。
川 ゚ -゚)「これは、魔王が復活しなくても世界は危ういな」
クーさんが静かに呟いた。
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