('A`)幸福方程式のようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 18:48:17.16 ID:ZUtYKA1F0

第二話『アオミチ』

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 18:49:25.57 ID:ZUtYKA1F0
('A`)「………」とぼとぼ…

 寒さが袖口から蔓延る十二月の早朝。
 まるで白い霧のような朝靄がコンクリートの歩道を包み込み、それを見る人の精神的にも堪えさせてくる。

('A`)「……」

"(('A`))"「さむい」

 そんな寒さに耐えきれず身体がシバリングを始めた所で、ゆるりと視界の先に我が学び舎が見えてきた。
 vip東高等学校、それが毎朝にて寒さに耐えつつ向かわなければならない場所だった。

('A`)「……はぁ〜」

 吐き出したため息が、白い靄となり空気に散って行く。
 それは毎日毎日、その灰色の校舎が見えてくるとやってしまっている癖だったけれど。

('A`)「………」

 昨日から今日にかけて、この癖は。普段と一味違ったものだったと言えるだろう。
 まあ、それは、もちろんのことだけれども。 

( ^ω^)もしゃもしゃ

 ───隣に、コイツがいるせいでだ。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 18:51:24.58 ID:ZUtYKA1F0
('A`)「……おい、なんでついてきてるんだ」

 僕はいったんあたりを見渡し、自分の近くに人がいないことを確認してから声をかける。
 
( ^ω^)"?

('A`)「可愛らしく首をかしげても、無駄だ。つうかオッサンがそんなことをしてもキモイだけだぞ…」

 キモイとはひどいお、なんてぼやきながら。
 僕の隣を悠々とあるく男は、口に含んでいた棒状の菓子を一気にほおばった。

( ^ω^)「…ごくん。こうやって、君の様子を心配して着いてきているというのにお」

('A`)「ぜんっぜん嬉しくないつうか帰れ。天界にとか帰れよ、戻って色々と人知を超えた仕事しろ」

( ^ω^)「人知を超えた仕事とか……wwww」ケラケラ

('A`)「おい、なんで笑う。ただしいことだろうが、本当に正真正銘なことだろうが…っ!」

 荒げたくなる声をなんとか堪え、僕は小さく口の端で舌打ちを打つ。
 なんだっていうんだ、本当に。どうして僕はこんなことになってしまったんだ。

( ^ω^)「まあまあ。冗談だお、冗談。そうだおね、そろそろ天界にも帰っていいんだけどお……」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 18:53:36.80 ID:ZUtYKA1F0
 うーんと背伸びをし、今だその歩みを止めずに男は言う。

( ^ω^)「……天界には天使に、というか手駒に、やらなければならない色々と用件は伝えてきたから」

 僕という『神様』がするべき仕事は特にないお。と、さらっと呟いた。

('A`)「……そうか、うん。わかった」

 僕はとりあえず、頷いて返した。返すしかなかったと言った方が良かったのかもしれない。

 ───ああ、何度も何度も聞き返したくなるのだが、コイツは神様なのだ。

 人知を超えた知識を持つ者であり、命ある全ての人類の創造者。

 生を受け持った者の幸せを常に願い、永遠と言えるほどに永く人を見守り続け、そして、これから先も存在し続ける。

( ^ω^)
 
 神。内藤ホライゾン───

('A`)(……に見えないよなぁ。本当に)

 一見只のふとったおっさんにしか見えないのだけれど、これでも立派な神様だと言うことは自分自身がわかっていた。
 だってそれを証明するだけのことは、あらん限りと見せられたのだから。色々と強烈過ぎて、もはや昨日のことのように思い返される。

('A`)(いや、昨日のことだけど)

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 18:55:18.74 ID:ZUtYKA1F0
 と。セルフ突っ込みをしてみるが、実に本当に昨日のことだから困ってしまう。
 この男が神様だと言う証明、それがどのようなことなのかと───

( ^ω^)「おっおー……なんということだお! 
       今どきの高校生は、このような下着を履くことが習慣づけられているのかおっ」

 そして今まさに、また不可思議な現象としてこの男は白昼堂々、わりかし近くを歩いていた女子高生のスカートを覗いていた。
 だが、その犯罪行為を咎める人物はいまだに現れない。覗かれている女子高生も、男の様子を気にとめるような仕草もなかった。

('A`)(おい、やめろ。男子高校生として女子高生は希望にあふれたアイドルなんだよ)

( ^ω^)「なんという無様……人間、知ってるかお? 今の世の中、女子高生が純潔を守っているのは数値で言うと───」

(゚A゚)

( ^ω^)「──わりかしいるお、うん……ごめん」

 それでいいんだ、神様。言っていいことと悪いことがあるってことがわかってくれれば、それでいい。
 というかわりかしって、なんとなくわかっちゃうじゃん答え…

( ^ω^)「未来に希望を持つことは素晴らしいお。だけど、現実に希望を持つことは何とも言えないお」

 おい、神様。
 そこは色々と神として、見栄を張ってくれ。お前が作った人類だろうが。

( ^ω^)「えー……いくらぼくでも人間が馬鹿だって知ってるお?」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 19:04:23.03 ID:ZUtYKA1F0
 パンツを覗く神様に言われたくないな。と僕は心の中で口答えをすました。
 ……いやはや、それとなくやってのけていることだけど。僕が実際に声に出していることではなく。
 この神様が僕の心の声を聞いて、返事を返しているのだ。しかも神様の声は周りに聞こえていないのだから、神様って凄い。

( ^ω^)「もっと褒めるんだお。それ、人間」

 調子に乗りやすいのがダメなところだけど。

( ^ω^)「ダメっていうなお…神様だお…」

('A`)「さて」

 気を取り直し、僕は息を深く大きく吐いた。
 白い息が空に発射され、塵のように風に流されていく。それを一瞬、確認した後。

('A`)「……人々を幸福に、させに行きますか」

 そっと、その言葉を僕はつぶやいた。

( ^ω^)「おっ! ヤル気なんだお?」

 やる気なんかじゃない。これは致し方ないことなんだ。

( ^ω^)「面倒くさい言い方は、神様は嫌いだお」

 お前が言うな。

( ^ω^)「ごもっとも」 

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 19:12:21.09 ID:ZUtYKA1F0
 じゃあ行くか、と。僕はきもそぞろだった歩みに力を込めた。
 それだけで何も変わることはないけれども、それでも気分は変わるのだ。

('A`)「ふぅー……」

 何度か目のため息。
 癖になっていた息を吐く仕草は、これはもう、いつも通りの癖へと元に戻っていた。

('A`)「……幸せに、か」

 怠慢と慢性的な日常が、ひとつの『幸福』という要点を増やして。
 そっとながら、ゆっくりと始まろうとしていた。

…………
……


昨日 毒男家

 何だか足取りが重かった。
 それは気のせいではなく、精神的なのではなく。本当に肩にかけて体中が重く感じていた。

('A`)「…………」

 気のせいだって思いたいのはやまやまなのだけど。
 それでもそれが気の迷いではないってことは、視界に映るとあるものでわかってしまうからだった。

( ^ω^) すいっ

('A`)「……おい。僕の肩に留まるなよ」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 19:20:33.63 ID:ZUtYKA1F0
 ガチャリと自分の部屋のドアあけて、そっと閉めて。
 隣にいる数年引きこもったままの妹に気配を悟られずに、僕は声を出した。

( ^ω^)「突っ込むのが遅いお、人間」

 今だに僕の肩に、腕を組みすらっと立つ男は。
 顔の上部を天井にめり込ませながら切り返してきた。どうなってんだ、透けてんのかそれ。

('A`)「…帰り道に独り言を呟く奴がいたら、恐いだろうが。そして僕はそんなふうに見られたくわない」

 色々と不可思議なことを全部無視し、僕はため息を吐いた。
 もうなんだっていい、何が起ころうとも僕は僕でいることを先ほどに決めさせてもらった。

( ^ω^)「良い判断だお。それは神様に対する冒瀆でもあるけどお」

 勝手に言っておけ。僕は信者でもないのだから。

('A`)「……ま、でもさ。その状態じゃ話しにくいだろ、降りてきてもいいじゃないか」

( ^ω^)「お? たしかにそうだおね、よいしょっと」ぴゅん!

 そう言いつつ、男は飛び降りるのではなく姿形を一瞬にして掻き消した。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 19:28:13.60 ID:ZUtYKA1F0
( ^ω^)「ふぅ」

 そして目の前にあった勉強机の上へと、その姿を表す。
 無駄に神様的な証明を好むやつだ、目立ちたがりなのか神様って。

( ^ω^)「何を言ってるんだお。元来、神様は皆目立ちたがりだお。
       求めてもいないのに勝手に表れ助言し人間を苦悩させ」
 
 ───真なる助けを求める者には、けっして現れない。それが神だお。

('A`)「……ふーん」

 色々と突っ込みたかったが、神様が言うのならそれが正しいのだろうど納得してみる。
 
( ^ω^)「おっおっおっ」

 笑ってごまかすな。

('A`)「さて、神様よ。お前には色々と聞きたいことがあるんだが……」

( ^ω^)「? 説明するべきことは全部いったはずだお?」

 とぼけるように首を傾げる神様。
 あらいやだ、殴るぞ。本当に、このひ弱な拳で。

( ^ω^)「自身の弱さを弁えているのは良いことだけどお、それはなんというか……」

('A`)「惨めでもなんとでも思うがいいよ。それよか……ああ、もう!
   僕から質問していくから、それに答えろ神様!」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 19:37:13.07 ID:ZUtYKA1F0
 途中でめんどくさくなる展開が読めて、ここはもう僕から話しを切り出すことにした。

('A`)「お前がさっき僕に言ったあの言葉、憶えているか?」

( ^ω^)「憶えているもなにも、それで全部だお」

('A`)「はじめから揚げ足を取るな。話が進まない」

( ^ω^)「はいはいお。ぼくが入った言葉は単純でそれだけだお、人間?」

 こつこつと、指先で机を叩く神様は僕に話の続きを促してきた。
 素直に僕は、それに応じる。

('A`)「……ああ、これから先。僕が生きていく上で、会う人ほとんどの人間を幸せにしなくちゃいけないんだろう」

 これが僕が神様から言われた、言葉だった。言われ巻き込まれたといっても過言じゃない。

( ^ω^)「おっお。そして君もまた、幸せになることが決められてるんだお」
 
 そしてもう、君は『幸福』を手に入れたんだお。ぴっと叩いていた指先を僕へと向ける。

('A`)「……そう、それをもっと詳しく聞きたいんだ。神様よ」

 その『幸福』とやらを。僕は詳しく聞きたいんだ。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 19:45:06.08 ID:ZUtYKA1F0
 周りを幸せにすることを決め付けられた僕。
 その僕が神から直に授かった『幸福』とやらを、詳しく聞きたい。

( ^ω^)「だからそれも言ったとおりだお、人間。
       君は僕が創りだした方程式に組み込まれた選ばれた存在なのだから───」

('A`)「それはわかったから、詳細を話せよ。神様」

( ^ω^)「素直じゃないおね。形として見えないが意識できる『幸福』なんて、そうそう無いというのにお」

('A`)「現在を持ってしても、まったくもって僕には見えてないんだけど…?」

( ^ω^)「事情が事情だお。君がその『幸福』を経験するためには、少しばかり手間と時間がかかるお」

 手間がかかる幸福ってなんだよ…

( ^ω^)「よくもまあ贅沢をいう人間だお。こりゃまいったねー」

('A`)「…」

( ^ω^)「冗談だお。真に受けるなお」

 はてさて、と。男であり神様でありウザい奴は、仕方ないといった感じに体制を整え視線をこちらへと向けた。

( ^ω^)「人間、君にはひとつの『幸福』をあげたんだお」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 19:52:59.66 ID:ZUtYKA1F0
 ああ、知っている。さっき言われたよ…

( ^ω^)「お。その通りであり、それだけでもあるお、答えはもう既に出てしまっているお」

('A`)「……絶対に、」

( ^ω^)「人間と」

(;'A`)「い、イチャイチャできる…?」

( ^ω^)「する、幸福だお。間違えるなお」

(;'A`)「…………」

( ^ω^)「どうしたんだお? なにか顔がひどいことになってるお?」

(;'A`)ゞ「……やっぱり、聞き間違いじゃなかったのか」

 頭が痛くなってきた。なんだそれ、それがお前が……神様が僕にくれた『幸福』なんだろうか。

( ^ω^)「そうだお、そしてそれは君が求める『幸福』でもあったはずだお」

(;'A`)「い、いやっ……僕それほど人とイチャイチャとか求めてたりとかしてないんだけど…」

( ^ω^)「嘘言っちゃ困るおー………告白魔の毒男?」

(;'A`)そ「な、なぜそれをっ!? って……当たり前、か」

 神様だったコイツ。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 20:03:49.88 ID:ZUtYKA1F0
 その噂の名前を知ってても何らおかしくないのだ。おかしくないことがおかしいかもしれないが。

( ^ω^)「それだというのなら、事情を詳しくないものでも一瞬にして理解は可能だお。
       ……コイツ、女の子とイチャイチャするのに飢えているのだと」

(;ゞA゚)ゞ「う、うぁあああー!」

( ^ω^)「なに急に恥ずかしがってるんだお。そもそもそんな風に噂されている時点で、そうとうな程に
       恥ずかしい人生を送ってるって思うお、神様も」

(;'A`)「くッ……そう、だけどッ…そうだけどさ!なんか違うだろ!? 意識的に求めてる感じと、
    無意識的に求めてる感じじゃ…っ!?」

( ^ω^)「何を言ってるんだお。有意識が無意識に叶うわけないお?
       そもそも誰かれ構わず告白しまくる要因に、無意識が関わってないとでも思ってるのかお?」

 じゃあなんだ、神様。僕は本当にただ、女の子とイチャイチャしたいだけの煩悩丸出しの奴とでも…?

( ^ω^)「当たり前、なんて当たり前的な言葉を使いたくないほどに当たり前だお」

('A`)「…」

( ^ω^)「…それともなんだお? 自分はただ、告白自体に特に意味はなく、それは一種の生活のシステムとでも思ってたのかお?」

 笑わせるお、人間。いやはや、なんとも面白いものだお。
 なんて言いながら笑いやがった。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 20:12:49.87 ID:ZUtYKA1F0
('A`)「じゃあ、今まで僕が告白してきた意味っていうのは……」

( ^ω^)「この『幸福』で証明されたも当然だお。君はね、人間」

 ───絶対に人間とイチャイチャしたいと、常日頃から願っているからなのだお。

('A`)「……。なんか中学生みたいだな、僕」

( ^ω^)「神様に人間の年月はよくわからんお」

('A`)「子どもっぽい、で受け取ってくれ……ああ、そうだよ…僕はガキだったんだなぁ……うん…」

 なんだかとてつもなくショックだった。
 何度と幾度と振られ続けた時でも、泣くことはなかったのに。それでも泣いちゃいそうだった。

( ^ω^)「惨めだおwwwwww」

 いや、なんだか怒りたくなってきた。

( ^ω^)「冗談だお、本気にするなお」

 ふぅと、目の端に浮かんだ涙を拭きとる神様。もう、いい、それすらも見なかったことにしてやろう。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 20:17:50.65 ID:ZUtYKA1F0
('A`)「……で、だ。僕はその『幸福』を手に入れたとして、だ」

( ^ω^)「おっ?」

('A`)「ともかくその『絶対に人間とイチャイチャする幸福』といったので……」

 ……僕はこれから、人を幸せにしていくのか?

( ^ω^)「そうだお。君はこれからの人生をその『幸福』に捧げ───」

('A`)「……」

( ^ω^)「───生命の一生を、この神様の都合として散るがいいお」

 なんともまあ。
 身勝手な話で、突拍子も無いことなんだろう。

('A`)「……」

( ^ω^)「おっお」

 それが如何に今まで歩んできた日常からかけ離れたものだったとわかっていても。
 どうにもこうにも、僕の頭は無事に判断を終えていて。

('A`)「……わかった」

 それが神様の言葉だからだという強制的な意味合いを持っていたとしても。
 
('A`)「これから、僕は……この『幸福』でよう」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 20:26:06.75 ID:ZUtYKA1F0
 ───今から宣言する言葉は、誰からの強制もされてないものだと人に伝えたい。

('A`)「……人々を、僕が幸せにしてやろうじゃあないか。ええ?」

 だから。だから。
 僕は眼の前にいる神へと告げる。

('A`)「だから、神様よ。僕はお前に言いたいんだ───」
 
 ご都合主義で話を進めて、なんら僕の葛藤を無しとしやがって。
 なにが幸せにしろだ、もっともっと僕に悩ませろ。苦悩させろ、考えさせろ。
 僕は僕という存在なのだ、たとえ神であっても僕は僕で生きて死にたいんだ。
 
 ……なんて言葉はもう金輪際言わないでおくと決めて。

('A`)「───僕はこれから、人々と絶対にイチャイチャしながら幸せにしてみせるぜ!!!」

 のってやろうじゃねえか。おい、神様。お前の願いにさ。

( ^ω^)「お」

(#'A`)「いいぜ、受けてたってやる。今だになにか隠している様子でもあるしな、それも暴いてやるぞ神様!!」

 だから、どうかこんな僕を許して欲しいんだ神様よ。
 
 僕はお前の願いを聞き入れる。だけどお前の願い通りに叶えるとは思ってやらない。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 20:33:16.02 ID:ZUtYKA1F0
('A`)「……後悔しろよ、そして人間に恐れを覚えろ」

 この『幸福』を僕に与えたことに、人間に勝手ながら無駄な『幸福』を与えたことに。

( ^ω^)「…」

('A`)「神様よ、お前はいつか失敗するぞ?」

 そうやってただ、人間だと見くびっていると。これから先、絶対に。

( ^ω^)「…ふむ。いきなりどうしたんだお、人間。突然啖呵を切りはじめて、頭がおかしくなったのかと思ったお」

('A`)「言っとけ、神。僕は覚悟を決めたんだ。ほら、知っているんだろ? 覚悟を決めた人間は、運命を変えれることを」

( ^ω^)「知ってるお。だから言ってるんだお、人間」

 君みたいなちっぽけな人間に、なにができるんだお。

('A`)「できるさ」

 ───だってお前が選んだ、僕なのだから。

( ^ω^)「なるほど。僕の自身を逆手にとったか、こりゃ一本取られたお」

 つまらなく曲がった正確だと思っていれば、それなりに笑いも取れるんだおね。
 と、神は面白くなさそうに笑う。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 20:41:43.36 ID:ZUtYKA1F0
 いじけたか。いいね、さっそくながら神を負かせてやったぞ僕。

('A`)「……お前がなぜ、僕を選んだのかはわからない。だけど、それならそれなりにやらせてもらうって訳だ」

( ^ω^)「ただただ神様の言う通りのように。指を差され選ばれたものを選ばず、他のはずれに従うと?」

('A`)「んなもん勝手に決めるな。従いたい時は、勝手に従わせてもらうよ」

 バカ言え。神が選んだものを誰が見過ごすか。

( ^ω^)「…本当に勝手だお。実に素晴らしいほどに強欲な人間だお」

 お褒めの言葉、どうもありがとう。

( ^ω^)「ふむ、なんとまあ。僕も大した人間を選んでしまったようだお」

 おっおっおっ。と、なんら困った様子もなく笑う神様。
 
(*'A`)「お? さっそく人間様に後悔したか? へっへっへ……ざまーみろ!」

( ^ω^)「そうだおねー……だけど、そういった予測不可なモノも。
       神様はただ、見守り続けるだけだお」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 20:49:32.02 ID:ZUtYKA1F0
 そうやって世界は回ってきた。
 変わることなくあってみせ、変わることもあってみせ。だけど結局は答えは同じ。

( ^ω^)「人間ごときにできる事はたかが知れているお。
       ……それでも、君は僕の願いを素直に受け入れるつもりは?」

('A`)「ない」

( ^ω^)「よろしいお、気持ちの良く気分の悪い返事。内藤ホライゾン、しかと聞き入れたお」

 はてさて。と、神は勉強机の上へと立ち上がり、僕を実際的に見下ろしてくる。

( ^ω^)「人間。今日は帰るお、色々としなくちゃいけないことがあるんだお」

('A`)「ああ、帰れよ。晩御飯は僕と妹の分しかないからな」

( ^ω^)「それも知っているお」

 つぅか御飯いらないし、ぼく。

('A`)「そっか。だけど、まぁ、いつかは食べに来いよ。作ってやっから」

( ^ω^)「え、なに、やめろお」

('A`)「おい、素直に引くなよ。傷つくだろうが」

 冗談だおー。
 そんなつぶやきを残しながら、神様はなんら前兆も見せずに姿を消した。 

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 20:56:45.89 ID:ZUtYKA1F0
 しばし、その掻き消えた場所を見つめる僕。

( A )「────……はぁ〜…」

 そして、大きくため息を吐いた。
 
('A`)「……なに、言ってるだろう。僕」

 いくらか見えを張っていったところもあった。実は全部全て見えだったのかも知れない。

('A`)「だけど……後悔はしてない、よな?」

 我が身に相談してみるが、返ってくるのは心臓の高なりと。
 手のひらを湿らせる酷い汗。

('A`)「………」

 なにもあそこで粋なり啖呵切らなくても良かったなかなって思いながらも。
 
('∀`)「へへっ…」

 やっぱり正直に言ってよかったなって思った自分がいて。とても安心できたのだった。

…………
……


回想終 vip東校玄関

('A`)「…………」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 21:02:29.70 ID:ZUtYKA1F0
 玄関にはいってから、冬の寒さもだいぶ落ち着いたような気がしてくるが気のせいなのだろう。

('A`)「さぶっ…」

 閉ざされた空間というのは、それだけで気分を大きく弊害をもたらしてくる。
 だから気分が害されただけで、感じる寒さが変わったわけじゃない。

('A`)「ま、寒いよりか気分がわるいほうが嫌だけど、っと」ぽさっ

 下駄箱に入った上履きを取り出し、地面へと放りなげる。
 ぞんざいにつま先をつっこみ、踵を調整すると、革靴を下駄箱にれて閉じる。

('A`)「…行きますか、教室」

 ぶるりと身体を震わせ、一歩前へと踏み出す。
 これから数時間とかけて強制収容されに行くのだ。なんとも耐え難いものだよ本当に───

ばさり

('A`)「……へ?」

ξ )ξ「あっ……」

 なにかに、ぶつかった。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 21:09:00.92 ID:ZUtYKA1F0
 気付く暇などなかった。
 だって下を見てたいのだから、前に人が急に通りかかっては無理な相談だ。

('A`)(あれ、これなんだかデジャヴ───)

 ぱたり。と、なにかが落ちる音がして、だけどそれに反応する暇もなく。

ξ 听)ξ「………」

('A`)「………」

 ───目の前に居る彼女に、視線を奪われてしまった。

('A`)「ツン、さん……」

ξ 听)ξ" ピクン…

(;'A`)そ「はっ!?」

 しまった、思わず名前をよんでしまったぞ僕。
 昨日今日というのに、ここはひとまずごめんなさいをして無言で立ち去らないといけないのに───あれ?

('A`)「………あ、あれ…ツン、さん…?」

ξ ;听)ξ「っ───……ッ!!」

('A`)(泣いて、いる……?)

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 21:15:29.07 ID:ZUtYKA1F0
 即座に隠されてしまったが、確かに一瞬見えたその瞳。

(;'A`)「……」

ξ )ξ「……なに、告白魔。今日もまたあたしに告白しに来たの」

(;'A`)「あっ、いえっ、そうじゃなくてですね……はい…」

ξ )ξ「……。あっそう、じゃあ退いてくれないかしら? そこ、あたしの下駄箱だから」

(;'A`)「あ、はいっ……!!」

 ばっと飛び退ける。彼女が言うのなら、仕方ない。
 たとえ僕が電柱だったとしても、そう言われたのなら退くと覚悟はある。

ξ )ξ

(;'A`)「……?」

 しかしながら僕が退いた後に、なかなか彼女は下駄箱に手を伸ばそうとはしなかった。

(;'A`)「ツン、さん……あの、どうかしたの?」

ξ )ξ「っ……な、なんでもないわよッ! というか何時までそこにいんのよ!
      早くどっか行きなさいよッ! また殴るわよっ!!」

(;'A`)「は、はいっ……!!」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 21:21:04.39 ID:ZUtYKA1F0
 ぶつ切り言われた暴言に僕の体は無意識に飛び跳ねた。
 その勢いに乗せて、僕の足は一歩一歩と先へと進んでいく。

('A`)「…………」すたすた…

 下駄箱が見えなくなるまで進んでいくと、僕は人知れず歩みを止めた。

('A`)「……本当に、どうしたんだろう。ツンさん」

 やっぱりあの涙が気になる。気になりすぎて、どうしようもなくなってくる。

('A`)「やっぱり、ちょっと話しかけにいくべきか……」

 ごちゃごちゃと思考が定まらない。
 だからこういった時は、もう。素直な気持ちで行動するのがベストだ。

('A`)「……うん」たったった…

 くるりと、視界をまわして。来た道を戻って行く。
 数歩でついた下駄箱に、僕はそっと覗き見る様にしてさっきまでの所を見つめる。

('A`)「あ、あれ…?」

 だけどそこには、彼女の姿は無く。
 見落としたわけじゃないことは、彼女の教室に向かうはずの廊下で立ち止まっていたからであって。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 21:26:44.03 ID:ZUtYKA1F0
('A`)(帰ったの、か…?)

 まさか登校してすぐさまに帰って行ったのだろうか。
 いやでもまさか。だがしかし、あの目だつ容姿と姿もどこにも見当たらなかった。

('A`)「………ツン、さん」

 半開きになっていたツンさんの下駄箱のふたを閉めて、僕はしばらくたたずんでみる。

('A`)「……ん?」

 すると視界の端に、何かを見つけた。近寄りそれを手に取ってみる。

('A`)「……イチゴ柄の、ハンカチ?」

 所々が土汚れで汚くなっているが、触った感じとてもいい生地を使われているようだった。
 思わず値札を確認したくなるぐらいに。

('A`)「いやいや、まずはそうじゃなくて……」

 これは誰かの落としものなのだろうか。
 しかしこの時間的に誰の物なのかは少し判断がつきにくかった。

('A`)「仕方ない。事務室にでもいって落としもの扱いに───」

 そう呟き、ポケットにそれをしまおうとした瞬間。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 21:32:52.91 ID:ZUtYKA1F0
('A`)「………───この、匂い…」

 ───ふわり、と。ただよってきた甘い匂い。

('A`)「これって……」

(;'A`)そ「あっ……!?」

 思い出してきた。
 あれだそうそう、あの時だ。ツンさんとぶつかりそうになった時、なにかが落ちたような音がした気がする。

(;'A`)「いや、まさか……でも、この匂いは確かに」

 そう、このハンカチについた匂い。
 香水のようなコロンのような、きつくなくほんのりと漂うイチゴの匂い。

(;'A`)「ツン、さんが付けてる奴と同じだ……」

 するとこれは、やっぱりツンさんの……落としものなのか?

(;'A`)「それに……」

 ───ひとつ、思い返される要因がある。

(;'A`)「まさか、もうはじまっているのか……?」

 とてつもなく、急激に。
 とてつもなく、緩慢に。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 21:42:02.85 ID:ZUtYKA1F0
 ひとつの方程式が≠ソゃくちゃくと。
 僕の周りに蔓延り、絡まり、つながって行ってるのだろうか。

(;'A`)「へへっ……なるほどねぇー……確かに、これからつながりそうだ」

 僕はそっとハンカチを握りしめる。
 なんというベタで王道で、しまりの悪い始まり方だろうか。

(;'A`)「だけど、それがベスト」

 なにごとも、全てはつながりがあってこその始まりだ。
 そしてそれを僕は、無事に手に入れた。

(;'A`)「……」

 噴き出る汗が止まらない。
 たったハンカチを拾っただけだとわかっていても。頭の中で鳴り響く予感の鐘はとまることはなく。

(;'A`)「僕が、人を幸せにするための第一歩が彼女……か」

 嬉しくもあり、怖くもあった。
 だけど、だけど───その奥の感情よりも大きく膨れ上がるのは、ただひとつ。

(;'∀`)「へへっ……」

 そう、ただひとつなのだ。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 21:51:21.06 ID:ZUtYKA1F0
(*'∀`)「彼女と……ツンさんとっ! いちゃいちゃできるってことじゃん!? これって!?」

 きゃほぉー! まじ嬉しい! なんだこれ、こんなときだけだけど神様ありががとう!

ヾ(*'∀`*)ゞ ヤホォイッ

 思わず小躍りがしたくなってきた! いや、もうしてるけどね!

(*'∀`)「まじかてー……まじかー! 本当にこれって僕の『幸福』から来てるって……信じてもいいんだよね!?」

 くっそー! あれだけ神様に言いまくったけど、すっげー感謝してるわ。今からでも信者なれるかな? 無理かな?

(*'∀`)「ま、いいやんなこと。うほー! 本当にどうしよっかなぁ〜……明日にこれを返して、それからぁ〜…」

 妄想は含まるばかり。
 なんてたって、これから彼女とつながりを持てることはもちろんのこと。

(*'∀`)(イチャイチャ出来るってことは確定事項だしな…っ!)

 確かに、神様の言葉を真っ向から信じているわけじゃない。だってなにかと胡散臭そうだったし、でもでも。

(*'A`)「……この『幸福』へと向かう感じ。これは僕が感じる確かなものだ」

 ──まるで未来予知のようなもの。
 今何時? と聞かれた時、予測ながら答えられると同じように。
 明日何するの? と聞かれた時、予測ながら答えられると同じように。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 21:57:23.74 ID:ZUtYKA1F0
 今のちゃんと時間がわからなくても、勘と空の様子で予測はできる。
 明日の自分は本当に何をするのかわからないけれど、それでも予測はできる。

(*'A`)「っ………」

 そんなふうに、ツンさんとこれから先でイチャイチャできることは高確率だとなぜか予想ができるのだ。

(*'A`)「楽しみ、すぎるだろ……っ」

 もうわけが分らない。脳から分泌液が大量に漏れ出している、凄いことになってしまった。

(*'A`)「とりあえず、教室にいこっとー……」ふらふら…

 頼りない歩みで、僕はゆっくりと教室へと向かった。
 幸せがあるって、こんなにも嬉しいものなのか。なんて、今この瞬間をかみしめて。

(*'A`)「うふふっ、ふふっ……」

(*'∀`)「うふふふふふふふっ……」

 僕は足を一歩、前へと踏み出したのだった。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 22:04:15.07 ID:ZUtYKA1F0
( ^ω^)「………」


 ───それを眺めている者が一人、気づかずに。


( ^ω^)「甘い」


 ───それが万物を司る神であったとも知らずに。


( ^ω^)「だが、それが人間らしさだ」


 ───それが嘲笑と親愛の表情を浮かべてることも分からずに。


( ^ω^)「どうか人間よ」

 
 ───僕は、ただ、歩き出す。


( ^ω^)「この神、内藤ホライゾンを失望させるなお!」

 
 ───僕は、ただ、この青々しい道を歩き出していった。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/17(金) 22:04:54.34 ID:ZUtYKA1F0
第二話『アオミチ』終

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