('A`)幸福方程式のようです

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 19:52:53.09 ID:Boqh8InV0
 何も見えない夜に怯えるアタシは、とても臆病者なのだろうか。
 瞳を閉じるとは違って、感じるもの、記憶があるものが見えなくなることに。

 幾万の星が輝く星空。それは一日の終わりを告げ、また次の日の始まりを告げる『光』だ。
 億万年後年前から発せられる光は、今だに終わりなく地球を照らし続けていて。 

 終わりなく、壊れることなく、その光を絶やさず輝き続ける。
 
 それが私には、とてつもなく羨ましい。
 夜を怖がるアタシにとって、闇を怖がるアタシにとって。
 
 その暗闇をはねのけ続ける、星たちが『私』は羨ましかった。

 
第三話『シンジツ』

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 19:54:13.80 ID:Boqh8InV0
('A`)「………」

 はてさて、と。
 僕は昨日拾ったハンカチをどのように使うか早速ながら迷っていた。

('A`)「ふーむ……」

 場所は屋上、学校側では立入禁止とされているところだったけれど、今の僕にはまったくもって関係ない校則だった。
 なんせ今は僕にとっては一大イベント進行中な訳であって、いや、そもそもそんなことがあっても僕は、

( ^ω^)「君は生徒を守るべきその校則を元から守っていなかったお」

 ……僕の言葉を代弁するんじゃない。

( ^ω^)「おっお」

 しかも生徒を守るべき、なんて言葉を付け加えるな。
 気分が悪くなるじゃないか。

( ^ω^)「狙いはそれだお」

 最低な神様だ。それでも神様か。

( ^ω^)「それが神様だお」

 ですよね、わかってました。昨日から。

('A`)「というかお前と会話している暇なんて無いんだよ……つか、また現れたのか」

 今の今まで姿を消していたくせに。 

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 19:55:35.08 ID:Boqh8InV0
( ^ω^)「不思議がるに決まってるお、そんなもんどうすんだお?」

('A`)「おいおい…それでも『幸福』を語る神様かよ。
   これがどのような素晴らしいほどに貴重なものなのかわかんないのか?」

( ^ω^)「うんお」

('A`)「………」

 ───仕方ねえな、へへ。んじゃちょっと語ってやっから待ってろよ。

( ^ω^)「うざいお…」

('A`)「正直者は嫌われるぞ。まーそういうなって、神様。ちょっとは人間の戯言にも付き合えよ」

 一度息を吐いて、気を取り直す。
 コイツとしゃべっていると、すぐさま話が脱線する可能性があるために、僕は気を強く持ってかかるとしよう。

('A`)「このハンカチはだな、あのツンさんが落としたものなんだよ」

( ^ω^)「ふーん。それで? それを君が拾ったのかお」

('A`)「そうだ、そしてそれを知っているのは僕だけしかいない」

 それはつまりだ、ツンさんはハンカチを落としたことをいずれ気づくだろう。
 そしてそれが学校であるという可能性にかけ、このvip東高校の人間に聞いて回るに違いない。

('A`)「だが、それは徒労に終わる。だって僕が持っているんだもの」

6 名前:>>5入れ替え 投稿日:2012/02/21(火) 19:56:49.46 ID:Boqh8InV0

 今の時間は昼休み。今朝にツンさんと出会ってから、少なくとも四時間は立っていた。
 それでも今だにツンさんの姿は学校にはなく、元から同じクラスのために存在有無は確認済みだった。

( ^ω^)「今更だけど、同じクラスの子に告白したのかお」

 大した障害じゃない。そんなことを考え始めたら、僕はどのクラスにいても気まずいよ。

( ^ω^)「流石は告白魔ドクオだお」

 ありがとう、僕の自己紹介でありアイデンティティを語ってくれて。

( ^ω^)「てへへ」

 褒めてないから。

('A`)「まぁそんなことより。神様よ、ほら一歩前進したぜ」

 そう言いつつ、手に持っていたハンカチを視界に表せる。
 全体的にピンクの染色に、散りばめられたイチゴのがらは、とってもキュートで可愛らしい。

( ^ω^)「ふむ、で?」

('A`)「で?」

( ^ω^)「これがなんだっていうんだお。きたないハンカチを見せて」

 待って。なんで不思議がるんだ、神様。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 19:59:14.54 ID:Boqh8InV0
( ^ω^)「最低な人間だお。そんなにも人を苦しめて楽しいかお」
 
 返すわ! それにお前がそんなこと言うなよ、本当に。

('A`)「…つまりだ! その返すことに意味があるんだよ!」

 くるっと視界回転させて、僕は屋上から見えるグラウンドへを見下ろした。

('A`)「数ある可能性が、このハンカチに宿っているんだ。彼女へとつながる運命という糸が、
   この一枚の落としたハンカチから伸びている。それを、僕はとても大事にしなければならない」

 ただえさえ、嫌われている状況からのスタートなのだから。
 なんとしてもこの繋がりは、タイセツに保持していきたい。

( ^ω^)「ちょっとまってくれお」

 なんだよ、まだ聞きたいことがあんのか。

( ^ω^)「君が言いたいことはわかったお。
       確かにその汚いハンカチは彼女と関わるために大切なモノだと分かったお」

 わかってるじゃないか。僕が言いたいことはそれだけだよ。

( ^ω^)「だろうお。これが君が第一歩にしようとしている人を幸せにする行為、だということもわかってるお」

 でも、と神様は続けて。

( ^ω^)「つか、なんであの娘から『幸福』にしようとおもったんだお?
       ほかにもいっぱいいるじゃないかお」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:00:06.12 ID:Boqh8InV0
 ───人類なんて、掃き捨てるほどにいる。言い換えるなら星の数ほどに。
 君が出会う人間の数がそれの僅かひとにぎりだったとしても、君が全て認識できるほどに少ないわけじゃない。

( ^ω^)「つまりはぼくが言いたいのはだお」

('A`)「…わかってるよ、つまりはなんで一番難しいやつから『幸福』しようって思ったのか、だろ」

( ^ω^)「うんお」

 君はあれなのかお、マゾなのかお。
 なんて真顔で言いやがったが、それはなんとか無視し切った。

('A`)「んなの簡単なことだよ、今更語ることでもない」

 ───好きだからに決まってるじゃん、言わせんな恥ずかしい。

( ^ω^)「…」

('A`)「こら、引くなよ。人間が愛を語ったんだ、神らしく肯けよ」

( ^ω^)「ごめん、ちょっと神様他の人選に行ってくるお」

 さらっと僕の解雇宣言しやがった!

( ^ω^)「冗談だお。流石に『幸福方程式』を組み替えるのは苦労するんだお」

 苦労ですむのなら、いつかは本当にされそうだ…。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:01:30.66 ID:Boqh8InV0
('A`)「とにかく、僕はこのハンカチをつかってツンさんに近づく。
   ……そして、彼女を僕の『幸福』によって」

 『幸福』にさせるんだ。決まった、これで決まり。
 他の人を幸せにしようとか、そんなことは今はどうだっていいんだ。

( ^ω^)「神様はそんな事許さないけどお」

 わかってるよ、とりあえずは彼女を『幸福』にしようって訳だ。

( ^ω^)「…でも、どうするんだお人間。君は簡単に『幸福』という言葉を使ってるけれど」

 君が言う『幸福』ってなんだお。
 さらっと確信に迫ったセリフをいう神様。ああ、そうだね。確かにそれは大切なことだ。

('A`)「…まぁな。確かにそれはどうなのかって話だよ、正直な話」

( ^ω^)「なんだお、ノープランなのかお」

('A`)「ノープランっていうか……そもそも、僕ができることが限られすぎてるからなぁ」

 その先に待っている『幸福』だなんて。
 本当にひとにぎりしか無いような気がするんだが。

( ^ω^)「それは自分の願いを恨むお。神様悪くない悪くない」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:03:08.36 ID:Boqh8InV0
 こんなことに巻き込んでいる自体が悪いって思ったけれど、一応人間として神様を気遣っておく。

( ^ω^)「無事ぼくの耳に届いてるお」

 うん、知ってた。

('A`)「なんというか『絶対に人間とイチャイチャする』……これが彼女へと出来る『幸福』だから」

 これで出来る『幸福』を彼女に与えるしか無いんだ。
 つまりは、そう、これはだね。

(*'A`)「僕とツンさんが付き合って……ラブラブになることにより、『幸福』へと昇華させるんだよ」

 やべぇ、ニヤケ面がとまらねぇ。あはは!

( ^ω^)「…」

(*'A`)「くっふふ! 引いても落ち込まねえよ? こればっかりは正直な想いだからさ」

 綻ぶ頬。緩み伸びる口元はまるでモチのように引き伸ばされて。
 自然とそれは笑みと呼ばれる表情となった。

(*'∀`)「くぁー! どうすんだよこれ!? マジかよ! やっべー想像するだけで幸せだ…」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:04:41.49 ID:Boqh8InV0
 このハンカチを拾ってから様々な想像成らぬ妄想が脳内ではびこっていた。
 流石に昼休みには落ち着いてると思っていたけれど、今だにその興奮は維持されたままだったようだ。

(*'∀`)「とにかくだ! ありがたい気遣い感謝するが、僕が彼女から『幸福』にするつもりだっ」

 この想いは既に停止することを、停止していた。
 ノンストップのチカラに溢れた希望の列車、いまいっきまーす!

( ^ω^)「…お。とりあえず君がやる気になってることは良いことだお」

 巻き込んだ身としては、その思いは当然として受け取っておくお。
 って言ったてるが。まてまて、それって何ら悪く思ってないじゃん神様。

(*'A`)「ま! いいけどな! 今の僕はとても機嫌がいい!
    んな頭悪いこと言っても許そうじゃないか!」

( ^ω^)「…」

(*'A`)「うふふ…!」

 ───あー、素晴らしきかな。この溢れる思いはたしかに『幸福』だ。
 この神様が言ったとおり、僅かな手順と時間をかければ手に入れられたものだった。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:06:37.39 ID:Boqh8InV0
 今だに手に取ることはかなってない。
 今だに目に見えることはかなってない。
 
 でもこの身体から滲み出るチカラの根本は未来へとつながるものとなるだろう。

(*'A`)「神様よ、お前は家に帰ってあぐらでもかいて待っていろ。
    時間は取らせない、ぱぱっと彼女に近づき『幸福』をもたらしてやるから」

( ^ω^)「お。なんだお、えらく自信があるようだお?」

 当たり前だろう。もう、未来は未来へとなくなりつつあるのだから。

( ^ω^)「深い言葉だお。つまりはもう、今は未来だと?」

 そうだ、今はもう未来。お前が望んだ未来へと一直線となっているんだ。

( ^ω^)「一直線かお。早く辿りついてほしいお」

 んだから待ってろって。心配しなくても、僕ならすぐさま近づいてやるから。

( ^ω^)「ん、わかったお人間。大した自信だお、見なおしたお」

 ああ、どんどん見なおせ。それがお前が頼った人間様なのだから。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:08:20.77 ID:Boqh8InV0
 未来はすぐそこにある。届かない希望の雫なんかじゃないんだ。
 見えなくて、すぐ消えてほどけてしまう程に幻想なんかじゃない。

(*'A`)「この手にッ…! この僕の手にッ…!」

 伸ばせば届く、その距離に。
 僕が描く『幸福』はあるのだから。

( ^ω^)「人間」
 
 なんだ、神様。僕は今、とっても気分がイイんだ。邪魔しないでくれよ。

( ^ω^)「さっきと言ってることが違ってるお。ま、それいいとしてお」

('A`)「…なんだよ、なにかまた言いたいことでもあんの?」

( ^ω^)「ハンカチ」

('A`)「え…?」

( ^ω^)「ハンカチ、飛んでってるお」

 何言っているだよ、この神様……

(;゚A゚)そ「って、ああああー!!!?」

 すっごい飛んでってる! この屋上から風邪に流されて、気持ちよさそうに空を飛んでってる!

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/21(火) 20:10:08.12 ID:Boqh8InV0
 なにやってるんだよ神様! はやくいってくれよ!

( ^ω^)「邪魔しないでって言ってたお?」

 言ってない! その時はまだ僕は素直ないい子だった!

( ^ω^)「自分でいうなお」

(;'A`)「と、とにかくっ…! あれを拾わないとッ…! 神様! お前取ってきてくれよっ!」

( ^ω^)「えー…」

 えーじゃなくて! あれどこまで飛んで行くかわかったもんじゃないから!

( ^ω^)つ「ま、でもお。これは意地悪したくて言ってるんじゃないお」

 モノは試しだおね、なんて神はつぶやいて。
 今だに風に流されていくハンカチになぞって、伸ばした指先を左右に降った。

バギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ

('A`)「───……え?」

───空が割れた。
 と、勘違いしそうになるどに爆音が鳴り響き、空が暗黒へと染まり、紫の閃光がまたたき。

('A`)「………」

 そして何事もなかったかのように空にはハンカチが舞い、空は青く遠くまで伸びていた。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/21(火) 20:12:04.10 ID:Boqh8InV0
 それは一瞬の出来事だった。
 走馬灯の様に曖昧だったような気もするし。
 写真をじっくり見つめた後のように確かな記憶もあった。

( ^ω^)「…ふむ、やっぱり駄目お。これもまた運命なのかお、やっぱり」ボソッ

(;'A`)「お、おい……いまの…は?」

( ^ω^)「運命だお。この世の運命がぼくを否定したお」

 ま、まってくれ。サラっと言うな、なんか一瞬だけど暗黒世界みたいになってたぞ景色!

( ^ω^)「そうだおね、とっても怖かったおね。でも、とりあえず、」

 今のぼくはあのハンカチを拾うことは叶わないお。
 と、なんら思いを込めずに言った。

(;'A`)「な、なんというか……その、運命ってなんだよ…?」

( ^ω^)「……そうだおねー。簡単に言うのならお、頑固親父?」

(;'A`)「は、はぁ?……とりあえず、わけがわからなけど。今のお前は…」

( ^ω^)「役立たず、って言っておくお。悲しくも」

 微笑みながら言うんじゃない!

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:13:12.79 ID:Boqh8InV0
(;'A`)「くそッ……なんだっていうんだよ…っ!」

 ともかくコイツにかまっている暇なんてなかった。すぐさまにもあのハンカチを拾いに行かなくては!

( ^ω^)「気をつけるおー」

(;'A`)「うるさい名ばかり神様ッ!」

 勢い良く屋上のドアを開け放ち、僕は階段へと飛びついていく。
 身体の危険なんて考慮していることすら、今は邪魔でしかない。
 脳も体も階段を最速で降りるために全て使用していかなければ!

( ^ω^)「………───」

(;'A`)(ん……?)

 後ろのほうでなにか、言われたような気がしたが気にしている場合じゃなかった。
 僕は落ちるようにして一階へと降りていった。

〜〜〜〜〜〜

 吐き出す息が耳に確認できた時、僕はやっとその足を止めた。

(;'A`)「はぁっ…はぁっ…!」

 真冬だというの溢れ出す汗は止まらず、長袖の制服の中で滝のように流れていた。
 密封された服の中は汗が乾くことなく、気持ちの悪い感触だけが肌に残っていく。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:15:26.74 ID:Boqh8InV0
('A`)「はぁー…………」
 
 肺の奥底から息を吐き、動悸を整える。
 座り込みたかったが、わりかし人影が伺える道路だったためそれは叶わなかった。

('A`)「でも」

 ───握りしめていた手のひらを、そっと開く。
 その手には空へと登っていたハンカチが握られていた。

(; A )「よかったぁ〜〜………マジでよかったぁ〜〜……」

 心底安堵した。これほどまでこの言葉がある瞬間が、今まであっただろうか。
 いや、思い返してもそんな記憶はこれっぽっちもない。

(;'A`)「本当によかった……一時はどうなるかと思ったぜ…」

 空を舞うハンカチを追い続けながら、何度も何度も諦めそうになった。
 時には塀を登り、時には大橋を駆け、時には車をヒッチハイクし。

(;'A`)「なんつぅーか……ここまで来ちまったよ」

 一体全体、ここはどこなんだ。
 軽くあたりを見渡してみるが、これっぽっちも見覚えのある景色はなかった。

(;'A`)「……っあれ? これってもしかして……」

 ……いや、待て。それは何でも即決すぎるだろう僕。
 まさか、高校生になってそんなことに陥るなんてあり得るわけ。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:16:43.05 ID:Boqh8InV0
(;'A`)「…………」

 あっ、迷子だこれ。

(;'A`)「……マジか、そうなのか…」

 どうしようもなくこれは迷子だった。しかも今の姿は制服姿。
 この時間帯に歩いて回っては、補導対象にもなり得る可能性もあった。

(; A )(最悪じゃねえええかぁー!)

 見知らぬ街に、見知らぬ通行人。
 そもそも見知った街に見知った通行人なんて居ないのだけれど、ここはやっぱり僕がしる場所ではなく。

(;'A`)「どうしよう…」

 きょろきょろとあたりを見渡してみるが、やっぱり見たこともない場所だ。
 なんとも人がいるだけは良かったが、この姿で聞いて回るのはどうかって思ってしまう。

(;'A`)「………」
 
 ちらりと、手のひらに握られたハンカチを見つめる。
 ───これのせいか、なんて怒ったりはしない。これを拾えたことは、何事にも替えられない程に幸福だ。

(;'A`)「しかたない、電柱探して…ゆっくり、はだめか。ともかく急いで帰ろう…」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:17:24.90 ID:Boqh8InV0
 駆け出す一歩。今の今まで爆走して疲れはててしまっているが、それでも急いで帰らないといけない。

(;'A`)(もしも、もしも……ツンさんが学校に午後から来てしまっていたら───)

 そのタイミングはどうしても逃したくなかった。
 どうして、なぜ。なんて思う人がいるなら僕は断然、こう答えるだろう。

(;'A`)(ツンさんがハンカチがなくて困った状況になるのは、あまり見たくない!)

 当たり前の判断だった。彼女はいろいろな人に聞いて回るに決まっていた。
 そんなの僕は可哀想過ぎて、みたくはないのだ。

(;'A`)「ツンさんっ……!」

 僕は彼女の名前をつぶやき、心と身体に元気を与える。
 ……大丈夫、いける。この体は彼女のために疾走させることは可能だった。

(;'A`)「まっててくれよ………ツンさんっ!!」

「───何度も何度も私の名前を呼ばないでよ、告白魔」

 駆け出した二歩。
 その瞬間に、どこかで声が聞こえた。

「───買い物から帰ろうと思えば、なにやってんのよここで」

ξ ゚听)ξ「アンタ見たいな庶民がいるような地区じゃないわよ、早く帰りなさい」

 振り返れば、そこには天使がいた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:18:50.29 ID:Boqh8InV0
 だけどれそれは、ツンさんだった。

(;'A`)「つ、つんたん!!」

ξ ゚听)ξ「不快な呼び名で、この私を呼ばないで。耳が穢れる、腐る、滅びる」

 なんて酷い言葉を息するように言うのだろう!

(;'A`)「す、すみません…」

ξ ゚听)ξ「…はぁ。それで、なんでアンタがこんなところに居るのよ」

 学校はどうしたのよ。
 彼女は買い物袋らしき袋を持ちかえながら、僕に話しかけてきた。

('A`)「……」

ξ ゚听)ξ「…何? 目を潰すわよ」

 さらっと怖いことを言われたが、気にしないようにする。

('A`)「…いや、なんかその……僕のこと心配してくれてるの?」

ξ;゚听)ξ「は、はぁっ? な、なんでそんなことになんのよ…っ!」

('A`)「え、あ、いやだってさ……ツンさんがそんなにも僕に話しかけてくるって、
   なんだか不思議な感じで…」
 
 それで思いついたのが、僕がこんなところにいることが心配なのかなって思ってしまった。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:19:31.03 ID:Boqh8InV0
ξ;゚听)ξ「や、やめなさいよ! その勘違い…この私がアンタのこと心配するわけないじゃないっ」

('A`)「うん、まあそうなんだけどさ……」

 それは認める。だけど、元から気になることがあった。

('A`)「だったらさ、僕のことなんて無視して先に行けばよかったのに」

 そもそも僕は彼女に嫌われている。それはわかっていた。
 だから彼女も僕の姿を見た瞬間、嫌なやつを見たと黙って通り道でもすればいい。
 なのに彼女は僕に話しかけてきた。しかもここから駆けだそうとした僕を。

ξ;゚听)ξ「っ……ち、違うわよ! ただ、私はここを通った方が早かっただけでっ。
      わざわざアンタのために遠回りするのが嫌だっただけ!」

('A`)「あー……なるほど、ツンさんらしいね」

 らしくない。なるほど、それほどまであの告白は嫌われ要因にはなってなかったか。

ξ ゚听)ξ「…そ、そうよ。ほんっとにアンタってウザいわね、死ねばいいのに」

 ここはツンさんらしかった。正直泣きたい。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:20:55.58 ID:Boqh8InV0
 ──しかしこれは良い流れだ、勢いに任せて話を続けよう。

('A`)「……まあ、それはいいとして。ツンさんこそ、どうしたの」

ξ ゚听)ξ「…なによ」

('A`)「ほら、学校で今朝さ。玄関でばったりあったじゃないか」

 流れる様に話を口から放り出していく。
 明らかに彼女は僕に話しかけたことを後悔している雰囲気があった。
 逃がしはしない、今この時にある『幸福』を手安く逃したりはしない。

ξ ゚听)ξ「それがどうしたのよ、ばったり出会った。それでなに?」

('A`)「うん、それでさー……急にツンさん帰っちゃったじゃない?
   それが僕、とても気になって気になってしょうがないんだよ」

ξ ゚听)ξ「…アンタには関係ないでしょう。やめてよ、気持ち悪い」

 せめてキモイって言ってほしかった、精神的に。

('A`)「あはは…ごめん、でも急にいなくなったら心配するよ。
    僕に限った話でもないしさ」

ξ ゚听)ξ「いいのよ、別に……どうせ学校で習ってることなんて、とっくに家庭教師で習ってるし」

 情報ゲット、ツンさんには家庭教師がいある。貴重な私生活情報だ。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:21:24.88 ID:Boqh8InV0
('A`)「へぇ〜そうなんだ、でもさ。習ったって言ってもさ、やっぱり学校は出ようよ」

ξ ゚听)ξ「どうしてアンタにそんなこと言われなくちゃいけないの。
      関係ないでしょ、本当に」

('A`)「関係なくは無いよ? だってクラスメイトじゃないか。同じ教室で勉学や行事なんかを
   一緒にするんだからさ、休んでばっかだとやっぱり……」

 ───そこまで言いかけて、僕の言葉は閉ざされた。

ξ  )ξ

('A`)「え」

 ───がっつりとつかまれる、首元。襟などではなく、身体の首。

ξ  )ξ「黙りなさい」

(;'A`)「がっ…く、はっ……!?」

 僕の首をつかむのは、それは彼女の手であり。
 小さく細い五本の指は、力のこめられた紐のように肌に食い込んでいく。
 離せない。彼女の突然の迫力に恐れをなしたのではなく、根本的に力で負けていた。

ξ ゚ )ξ「その口、閉ざさないと首をへし折る」

(;'A`)「……っ……」

 決まった脅し文句なんかじゃない。答えとして首に閉まる指は、万力のような力強さを感じる。
 今一瞬でも間違ったことを言えば、本当に首を折られそうだ。折るまでに至らなくても、それに近い未来がまってそうだ。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:22:40.67 ID:Boqh8InV0
(;'A`)「っ…!」

 ゆらゆらと揺れる視界。空気が吸えなく、脳が異常を来している。なんだよこのチカラ、女の子がしていい力じゃない!
 その視界にころころと転がるイチゴが見えて、それが彼女が落とした買い物袋から転がり出たものと判断。

ξ ゚ )ξ「ひとつだけ言葉を許してあげる。わかるわよね? どんな言葉を言えばいいか」

 彼女が救済処置を施してくれた。ああ、なるほど。やっぱり僕は嫌われてなんかいないらしい。
 こんなにも彼女が僕に優しいなんて、なんたる『幸福』だろうか。 

ξ ゚ )ξ「三秒数える。ゼロになった時、その言葉を言いなさい」

 彼女は片眼を髪に隠し、片方の瞳で僕を震え上がら焦る。
 正直の話、ここで言うべき言葉はもう決まっていた。

 ごめんなさい。もう近づきません。話しかけてごめん。素直に帰ります。

ξ ゚ )ξ「三、二……一」

 ────なんて言葉は、ああ、なんてつまらないのだろう。

ξ ゚ )ξ 「ゼロ」

(;'A`)「──ツンさんッ……!」

ξ ゚ )ξ「なに」

 聞かせてやれ、彼女にその言葉。

(;'A`)「イチゴ、好きなの……ッ?」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:23:47.65 ID:Boqh8InV0
 ぽそっと呟いた、その言葉。
 この場にある空気と雰囲気をぶち壊す、正解でもなんでもない不正解すぎる答え。

ξ ゚ )ξ「…」

(;'A`)「…ど、どうかなっ? あ、はは…!」

ξ ゚ )ξ「わかったわ。どうやら本当に首を折られたようね、今するから待ってて」

(;'A`)「ま、まって…!これこれ! これ見てよツンさん…ッ!」

 首元が一気に狭まった時、僕は慌てて───今まで後ろに隠していたモノを取り出した。

(;'A`)「ほ、ほらこれっ! ちゃんと見てよ! これってツンさんのものじゃない…っ?」

 二人の視界が交わる真ん中で、その手に持ったモノを左右に振る。
 それは彼女が落としたピンク色のハンカチだった。

ξ ゚ )ξ「……」

 彼女が視線がそれにとどまる。そして首の負担もぴたりとやんだ。

(;'A`)「……ち、違うかな?」

ξ ゚ )ξ「…とりあえず、それを私に渡しなさい」

(;'A`)「え、でもとりあえず手を……」

ξ ゚听)ξ「はやくっ!」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:25:06.85 ID:Boqh8InV0
 は、はい! 僕は持っていたハンカチを彼女に渡す。
 奪い取られるようにして彼女に渡ったハンカチを、彼女はじっくりと眺める。

ξ ゚听)ξ「…確かに、これは私のハンカチ」

(;'A`)「で、でしょっ……? あ、あはは…頑張ってよかったよ…!」

ξ ゚听)ξ「はぁ?」
 
 疑問に満ちた表情をする彼女。
 ああ、わからないだろうね、まあそれは別にいいんだ。

(;'A`)「あはは……」

 そんなことよりも、はやく、はやく、あの言葉を言ってくれればそれでいい。

ξ ゚听)ξ「ともかく、アンタ……これを何処で拾ったのよ」

(;'A`)「げ、玄関でっ……学校の下駄箱周辺に落ちてたよっ…!」

ξ ゚听)ξ「ちっ───そう、それで。これで最後の質問だけど」

ξ ゚听)ξ「どうしてこれが私のだって分かったのよ」

 ────きた。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:25:40.06 ID:Boqh8InV0
(; A )「………」

 まっていた、まっていたんだその言葉。

ξ ゚听)ξ「…?」

(; ∀ )

 このハンカチを拾ってからずっと、その言葉だけを待っていた。

ξ ゚听)ξ「なに、わらって───」

(;'A`)「───それはね、ツンさん」

 彼女の言葉を遮り、僕は話出していく。

(;'A`)「そのハンカチから──香ってくるイチゴの匂い、それって…
    …ツンさんが付けてるコロンじゃないかな?」

ξ ゚听)ξ「…そうね、だから気付いたってワケ? だとしたら、とても───」

(;'A`)「───そうだね、当てずっぽうすぎるよね」

ξ ゚听)ξ「…」

(;'A`)「そのコロンって、前からはやってる市販の奴でしょ?
    何で知ってるかは今は言えないけど、それでも……」

(;'A`)「ツンさんがそのハンカチ≠持ってきている時だけ、そのコロンを付けているじゃない?」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:26:27.37 ID:Boqh8InV0
 僕はそのことを知っていた。
 学校では沢山の人がそのイチゴの匂いのコロンを付けていた。
 だけど、彼女はそれを極まれにつけていた。

(;'A`)「他の奴は薔薇とか、なんだか高そうなコロンをつけてるみたいだけど……でも、
    そのハンカチを持ってきている時だけは、その安いイチゴの匂いのコロンだったから」

 とても、とても。僕はそれを覚えていたんだ、ちゃんとね。

ξ ゚听)ξ「……」

(;'A`)「……」

 ──言い切った、やっと言い切ったこの言葉。
 ハンカチを拾い、その時からずっと考えていたひとつの───告白=B
 それは遠からずとも、また僕が彼女へと向けた『好きだ』という思いでもあり。

(;'A`)「あはは…」

 彼女へとぶつける二度目の告白でもある、その言葉を。

ξ ゚听)ξ「……」

 あとは、どう転ぶかだ。
 気持ち悪い奴だと思われれば、それでおしまい。だけど────

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:27:34.41 ID:Boqh8InV0
 ───僕はその数パーセントの『幸福』に、全てを賭けるんだ。

ξ  )ξ「──……よく、しってるわね。そのこと」

 ゆっくりと、首にかかった拘束がほどけて行く。
 少し浮いていた身体が確かな地面を感じて安堵を覚える。

ξ  )ξ「誰にも言ったことないのに、なに、アンタは一人で気付いたって言うの?」

 彼女は俯き、両方に並んだ二つの結わわれた髪の束が、彼女の表情を隠した。

('A`)「…うん、そうだよ。僕は知っていた」

 人知れず、なにかを思っている彼女に良く聞こえるよう。
 僕ははっきりと言葉を口にする。

('A`)「だって、何時も見ていたから。君のことを、ずっと」

ξ  )ξ「……ずっと?」

('A`)「そうだよ、ずっと。でも、まぁ、僕はどうしようもない奴だしさ…」

 君の見れない部分も沢山あるってのは認める。

('A`)「でもね? 僕はそれでいいんだって思うんだ、だってさ」

('A`)「これから、もっと君のことを知れるチャンスがいっぱいあるってことじゃないか」

 そう、僕は彼女に伝えた。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:28:51.26 ID:Boqh8InV0
ξ  )ξ「…なにそれ、また告白?」

('A`)「どうだろうね、好きに受け取っても良いよ」

ξ  )ξ「キモイ」

('A`)「知ってるよ、でも好きだって気持ちはキモイ奴でもきもくない奴でも一緒だよ」

 ぶつける思いは、安易的でも重要的でも構わない。
 好きだっていう気持ちには、重さは関係ないのだから。

('A`)「好きだっていう気持ちを強く受け止める奴だっている。
   好きだっていう気持ちを軽く受け止める奴だっているよ」

 例えるなら僕は後者だ。好きな気持ちは黙って一人で膨らまし、強くさせて行くもんじゃない。

('A`)「僕は好きだと決めたのなら、とことん突っ込んでいく。昨日もダメだった、じゃあだめだ。
    なんて諦めたりはしない、だから僕は」

 こうやってまた、君に好きだっていえた。

ξ  )ξ「…それじゃあなに、もしかしてまた告白したくて。このハンカチを拾ったわけなの?」

('A`)「そうだよ、偶然だったけど。僕は嬉しかった」

 それにすがって、君にまた思いを伝えたかった。それだけはいつまでも変わらない。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:30:36.31 ID:Boqh8InV0
ξ  )ξ「……ほんっとアンタってしつこいわね、嫌われるわよその性格」

('A`)「ツンさんに嫌われてないのなら、誇るよこの性格」

ξ  )ξ「嫌いよ、アンタなんて」

('A`)「そっか。嫌いでも、最後まで僕の言葉を聞いてくれてありがとう」

 少し首を傾け、感謝を述べる。
 ────ふぅ、何とか最後まで噛まずに言えた。すげえ緊張した。
 
 だが、これからが勝負だ。

('A`)(……言いたいことは言えた。ハンカチも無事に返した、そして次───)

 ───そう、この次。
 これを終えたことにより、僕は次の段階へと足を踏み出さなければならないのだから。

('A`)「…ねえ、ツンさん」

ξ ゚听)ξ「……。なによ、まだ言いたいことあるの」

('A`)「うん、ちょっとね……ま、しょうもなくてどうでもいいことなんだけどさ」

 ぽりぽりと頬をかき、いやーまいったなぁ。なんてとぼけながら、僕は言う。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:31:59.18 ID:Boqh8InV0
('A`)「ツンさんのこと好きなんだ、僕」

ξ ゚听)ξ「そう、でもあたしはアンタのこと嫌いよ」

 だよねーと、僕は口から零す。

ξ ゚听)ξ「なに突然いい雰囲気にしてるのよ、虫唾が走るわ。本当に」

('A`)「……すみませんでした」

ξ ゚听)ξ「そんなことしても、あたしがあんたに感じてる不快感はなくならないし、
      どんなに思いが強かろうと、あたしはあんたの思いにこたえる気は」

ξ ゚听)ξ「コレっぽっちもないッ!」

 綺麗に断言された。

('A`)「あ、あはは……」

ξ ゚听)ξ-3「……ふぅ。すっきりした」

 しかもすっきりされた。

('A`)「……ま、そんな感じです。いきなり語ってごめんね、ツンさん」

ξ ゚听)ξ「…べっつにいいわよ。ちょっとした暇つぶしになったわ」

 うん、まぁ、それは認めてあげなくもない。なんて嬉しい呟きが聞こえたような気がしないでもない。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:33:00.78 ID:Boqh8InV0
ξ ゚听)ξ「ともかく……このハンカチ、拾ってくれてありがと」

('A`)「えっ……」

ξ*゚听)ξ「な、なによっ…! あたし変なこと言った…っ!?」

 言った。でもおかしなことじゃない。

('A`)「変じゃないよ、ぜんぜん変じゃない」

ξ*゚听)ξ「で、でしょっ…? もう、だったらなによそのムカつく表情はっ…!」

('A`)「あはは…」

 僕は笑ってごまかし、そしてゆっくりと歩き出す。

('A`)「とりあえず、落ちたもの拾おうよ。食べ物もあるみたいだし、潰されないようにしなきゃさ」

ξ ゚听)ξ「え、あ、そうだったわ……」

 僕の言葉に改めて周りの状況に目が行ったのか、慌てて転がった買い物を拾っていく。
 僕もそれに倣い、近くに落ちていたモノを一つ一つ拾っていく。

ξ ゚听)ξ「あ、それちょっと優しく持ちなさいよ!」

('A`)「ご、ごめん…」

 ゆっくりと、ゆっくりと僕はワザと緩やかに拾っていく。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:34:55.72 ID:Boqh8InV0
ξ ゚听)ξ「アンタ拾うの遅い! もっとしゃきしゃきと動きなさいよ!」

('A`)「えーむりー」

 無理言うな! なんて彼女の心地い罵声を聞き入れながら。

('A`)(……あたし、か)

 この今の瞬間が一時でも続くように、僕は騒ぎながら彼女と会話をつづけいった。

〜〜〜〜〜〜〜

( ^ω^)「ぶらぼーだお」

 空高く上空から見つめる神は、そっと呟く。

( ^ω^)「見事に『幸福方程式』の言うとおりに動いてくれてるおね、人間」

 背中から映える二つの翼は、ぴくりとも動くことなく風に揺れ。

( ^ω^)「そうだお、人間にできることはなにもないお。だから『幸福方程式』に従うべきだお」

 無慈悲な言葉を地に向けて発し続ける。

( ^ω^)「知ってるかお、人間が感じる抵抗、葛藤……その全ての感情は全部『運命』だお」

 この世の真実を、命なき空に語る。

( ^ω^)「残留される歴史、紡がれる未来、不動の現実」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:35:54.02 ID:Boqh8InV0
( ^ω^)「それらすべては『不確定事項』ではく『確定事項』なのだお」

( ^ω^)「神はそれを知っているお、だけども人間?」

( ^ω^)「お前はこの世に何を見る? お前はこの世に何を聞く?」

( ^ω^)「それらは全て、決定された『運命』。誰にも変えることはできないのだから」

( ^ω^)「……だったら、『運命』に惑わされるぐらいなら。このぼくが作った『方程式』に───」

 ──躍らされる方が、マシじゃあないかお?

( ^ω^)「頑丈な『運命』に流されゆく人生、救ってくれた神に感謝するんだお」

 ──幸せそうに、『運命』から勝ち取った『幸福』を噛み締める人間を見下ろして。

( ^ω^)「君が望んだ『幸福』はいずれ、『運命』を破壊する」

 ──ああ、なんとも気持ちのいいものだお。

( ^ω^)「ありがとう、感謝する。だけど、これだけじゃない」

( ^ω^)「……君が『運命』に対抗するためには、もっともっと」

( ^ω^)「ぼくに従って、『幸福方程式』にしたがって」

( ^ω^)「『運命』を打ち壊せお」

 おっおっおっおっおっお!

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/02/21(火) 20:37:48.07 ID:Boqh8InV0
第三話『シンジツ』終


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