- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:04:32.62 ID:XkOcTEsD0
- 俺の仕事場はヴィップ・シティーの北部にある、小さな事務所だ。
自宅から車で三十分。道中で強盗に襲われなければの話だ。
デスクとパソコンとソファーと電話機と灰皿が置いてある部屋が一つ、トイレとシャワーもついている。
粗末で小さいけど、キッチンらしきものも備え付けてある。
それだけあれば充分だ。文句は言えない。
事務所は看板も何も出していないが、問題はない。
この街の人間でまともに文字が読める人間がそれほどいるとも思わない。
堅気の人間よりドラッグの売人の方が多いような街だ。
ペンより拳銃の方が需要がある。そういうことだ。
(゚、゚トソン「遅刻ですよ、ギコさん」
事務所の扉を開けてソファーに座るより早く、経理の女の子が俺に言った。
彼女はデスクに座って、書類を揃えている最中だった。
俺は苦笑いしながら煙草を取り出し、火をつけた。
(゚、゚トソン「いつも出勤時間を守ってる私が馬鹿みたいです」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:07:49.61 ID:XkOcTEsD0
- (,,゚Д゚)「悪いとは思うよ、トソンちゃん。けどさ、今回は事情があるんだ」
(゚、゚トソン「また環境省からのお誘いですか?相変わらずモテモテですね」
(゚、゚トソン「邪険にしてないで、一度くらいお茶してみてもいいのでは?」
(,,゚Д゚)「御免だね。俺はスーツをきっちり着たやつが大嫌いなんだ」
(゚、゚トソン「そうですか。どうでもいいですけど、仕事はちゃんとやってくださいよ。依頼が何件か入ってます」
俺は機嫌を取るように何度か頷いて見せ、それから腕時計に目をやった。
一時間の遅刻だった。寝坊よりはマシな遅れだ。
(,,゚Д゚)「ところであのスケコマシ野郎は遅刻かな?」
(゚、゚トソン「とうの昔に出勤して、仕事に行きましたよ。ギコさんと一緒にしないように」
(,,゚Д゚)「今日は一段と厳しいね………トソンちゃん」
(゚、゚トソン「そう?気のせいだと思いますけど」
煙草を消して立ち上がる。
仕方ない、仕事をしよう。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:10:39.67 ID:XkOcTEsD0
- (,,゚Д゚)「それで…依頼の内容は?」
(゚、゚トソン「この書類です。読み終わったら消去しておいてください」
経理の女の子から文書を受け取る。
文字は英語で書かれていた。
相手はおそらく異邦人組織だろう。
(,,゚Д゚)「どれどれ………」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:11:43.15 ID:XkOcTEsD0
Chapter 2 Chinese Bookie
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:14:32.16 ID:XkOcTEsD0
- 依頼主はごく最近この国にやってきた中国系のマフィアだった。
なんでも、中国にしかない特殊な麻薬を持ち込んで儲けようとしたところ、すでに先を行かれていたらしい。
それほど大量のストックがあるわけでもないので、彼らの言い値では誰も取引に応じない。
がっくりと肩を落として母国へ帰ろうとしたら、トラブルが起きた。
続きはWebへ、というわけにはいかないので是非こちらの指定する場所へ来てほしい。
詳しい説明と、それなりの歓迎を用意して待っている。
そういう話だ。
(,,゚Д゚)「………ふざけた話だな。信用していいのかい?」
(゚、゚トソン「組織の名前は“チャイニーズ・ブッキー”。トップの名前はシナー。新参者です、信用なんてありませんよ」
(,,゚Д゚)「“チャイニーズ・ブッキー”………連中、頭がおかしいのかね?おれ、大丈夫かなあ」
(゚、゚トソン「多いですよ、最近。こういう連中は」
(,,゚Д゚)「二、三日前にも、ドラッグがらみで暴力団がひとつ潰れたばかりだろう」
(゚、゚トソン「そうですね。たった一人の襲撃者に、あの山口組が手も足も出なかったとか」
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:16:55.17 ID:XkOcTEsD0
- 山口組といえば、軍部にも繋がりのあるこの街の古参組織だ。
そこの本部が崩壊したせいで、ヴィップ・シティーはさらなる混沌に陥っている。
新規参入を目論む厄介者たちが流れ込んできて、勢力図が書き換えられていくだろう。
中立を保って仕事を続けるのも難しくなってくる。
まあ、金さえ入ればそれでいいのだが。
(゚、゚トソン「アポは取ってあります。『いつでもお越しに』だそうで」
(,,゚Д゚)「……まあ、いきなり取って食われるようなことはないだろう」
(,,゚Д゚)「そんじゃ、行ってくるよ」
(゚、゚トソン「何かあったら」
(,,゚Д゚)「すぐに連絡を………だろ。分かってるよ」
経理の女の子に手を振り、事務所を後にする。
空は相変わらず濁っていて、重苦しい空気を地上にもたらしていた。
この街がまともになるには、後何年かかるのだろうか。
いや、もう手遅れだろうな。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:18:42.99 ID:XkOcTEsD0
( `ハ´)「ようこそいらっしゃいました。歓迎しますよ」
ヴィップ・シティーの中心街にある高級ホテルの一室。
顔に傷のある男二人に付き添われ、俺はそのやけに暗い部屋に連れ込まれた。
目の前のソファーに、マフィアのボスと思われる男が座っている。
それほど派手ななりをしているわけじゃない。
しかし、やはりというかなんというか、マフィア特有のセンスが俺の嫌悪感を刺激した。
お国柄なんて関係ない、なぜこいつらは揃いも揃ってダサいのだろう?
( `ハ´)「私の名前はシナーといいます」
(,,゚Д゚)「初めまして。ラウンジ事務所のギコです」
( `ハ´)「そう堅くならないでください。紅茶かコーヒーでも?」
(,,゚Д゚)「いえ、結構です。腹の調子が悪くて」
( `ハ´)「それはいけませんね………仕事に支障はありませんか?」
(,,゚Д゚)「それはもう」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:22:15.86 ID:XkOcTEsD0
- (,,゚Д゚)「それより、実に流暢な日本語だ。以前この国にいたことが?」
( `ハ´)「なに、古くからの友人にあなたと同郷の者がいてね」
( `ハ´)「少し学んだだけです。語学など簡単なものですよ。国は違えど、考えることは同じですから」
ああ、そう。
( `ハ´)「ここはいい国ですよ………ただ少し、警察が身の程をわきまえていないようにも見えますがね」
(,,゚Д゚)「同感です」
俺たちの周囲は、武装したマフィアの手下たちで固められている。
部下の数はこの部屋だけで20人はいるだろう。
広いはずのスイート・ルームがやけに息苦しい。
出て行ってくれないかな。
無理か。
( `ハ´)「本題に入りましょう」
シナーが合図するまでもなく、後ろに控えていた部下の一人が、前に進み出た。
高そうなガラスのテーブルの上に、数枚の写真が置かれる。
一番上の写真に写っているのは、ある一束の草だった。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:24:46.82 ID:XkOcTEsD0
- (,,゚Д゚)「………これが、例の特殊な麻薬ってやつで?」
( `ハ´)「ええ。私の故郷にしか自生していないブツでして………これがまた実に珍しい効力を持っているのですよ」
(,,゚Д゚)「“ストラッヂ”ですね」
俺がそう言うと、シナーは目を細めた。
連中がこう言う目をする時は、決まって説明を求める時だ。
もしくは、銃を突きつけた相手に最後の言葉を吐かせる時。
今はとにかく、前者であることを祈ろう。
( `ハ´)「…よくご存じで。この国にはごく最近出回ったばかりだと聞いているのですが」
(,,゚Д゚)「この街に住んでいれば、自然と耳に入ってきますよ。でなきゃ、やってられない」
煙草を咥えて、今朝手に入れたジッポで火をつける。
シナーに当たらないよう、気をつけて煙を吐き出した。
( `ハ´)「ふうむ…私たちは田舎者ですね」
(,,゚Д゚)「まあね、中国人なんてのは大抵がそうですよ」
( `ハ´)「…」
(,,゚Д゚)「連中はこの国を舐めきっている。警察の話もそうですが、身の程をわきまえていない。
自信満々で乗り込んできた井の中の蛙どもが、ますますこの街を汚染していくんです。手前の血でね」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:27:21.94 ID:XkOcTEsD0
- < `-´> 「谨慎言词」
部下の一人が拳銃を取り出し、俺に向けた。
額に青筋が浮かんでいる。
他の男たちも同様に、俺に対してあからさまな敵意を放っていた。
< `-´>「可以你以外」
何を言っているか分からんが、なんとなく察しはついた。
怒っているのだ、こいつらは。
怖い怖い。
( `ハ´)「住手。他能帮助我们」
< `-´>「可是………」
言いかけた部下の額に、シナーは銃口を向けた。
部下が反応するより早く、引き金が引かれる。
乾いた銃声が響き、部下は脳髄をまき散らせながら上等なカーペットの上に崩れ落ちた。
悪くない動きだった。
素早くて、正確だ。
( `ハ´)「申し訳ない、ギコさん。無礼を詫びます」
(,,゚Д゚)「謝罪も血もいりません。俺が欲しいのは情報と報酬だ」
(,,゚Д゚)「話の続きを」
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:30:48.53 ID:XkOcTEsD0
- 事態は俺が予想していたより込み入ったものだった。
彼らが持ち込んだ“ストラッヂ”は、売りさばくには少量だった。
今回は様子見というところだったらしい。
この国で“チャイニーズ・ブッキー”が受け入れられるようなら、本国から追加で取り寄せるつもりだった。
つまるところ、素人で甘ちゃんだったということだ。
( `ハ´)「私たちは失敗しました。今後、別の形でこの国へ再挑戦しようと思ったのです。
その準備をするため、私たちは荷物をまとめて中国へ帰ろうとしました」
(,,゚Д゚)「そこで問題が?」
( `ハ´)「そうです」
( `ハ´)「私が連れてきた、関係者の一人がその…“ストラッヂ”をね」
シナーはテーブルの上の写真の一枚を取り上げ、俺に手渡した。
慎重にそれを受け取り、目の前にかざして眺める。
(,,゚Д゚)「なるほど………これは」
そこに映っていたのは、一人の少女だった。
治安の良い上品な都市の通りで、数人の学友とおしゃべりをしながら歩いているような、ごく普通の女の子だ。
髪は手入れが行き届いていて、口元には綺麗な笑みが浮かんでいる。
傍らに、シナーが似合わない笑顔を並べて立っていた。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:34:01.22 ID:XkOcTEsD0
- ( `ハ´)「私の娘なのです。お転婆で、幼い………愛おしい一人娘だ」
改めて見直してみる。
本当にこの父親の遺伝子を受け継いでいるのか疑ってしまうほど、端正な顔立ちをしている少女だ。
歳は十五、六といったところか。
俺は当然の疑問をぶつけた。
(,,゚Д゚)「なぜ彼女をこの国へ?子供に見せてはいけない仕事のはずだ」
( `ハ´)「その通り。私は娘の願いを跳ね付けてでも、故郷に置いてくるべきだったのです」
( `ハ´)「しかし娘はついてきてしまった。彼女は前々から、この国に深い関心を抱いていたのです」
しぃ、というのが名前だそうだ。
憧れの地を踏みしめた彼女は、それはそれは大はしゃぎだった。
父親が仕事で悪戦苦闘している間、彼女は存分にこの国を堪能した。
銃声が自動車のクラクションのようにそこら中に鳴り響く街だが、そんなものには慣れっこだった。
お土産を両腕で抱えきれないほどに買い込み、いよいよ帰国することになった直前。
全ての根源は生まれてしまった。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:35:57.33 ID:XkOcTEsD0
- 取引の商品を保管している倉庫の奥に、彼女が座り込んでいた。
( `ハ´)『しぃ、そんなところで何してる?』
(* ー )『………』
( `ハ´)『ここには入ってはいけないと言っておいただろう。まったく、荷造りも途中で放ったままで』
(* ー )『……パパ?』
( `ハ´)『さあ、はやくここから出なさい。ここはパパ達がお仕事で使う――――』
(* ー )『これ………全部……』
( `ハ´)『?』
(* ー )『わたしにちょうだい』
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:39:29.16 ID:XkOcTEsD0
- ( `ハ´)「気づいた時には、娘は倉庫から消えていました」
(,,゚Д゚)「……娘さんは“ストラッヂ”を……」
( `ハ´)「ええ、吸引してしまったのでしょう。嘆かわしいことです」
( `ハ´)「娘は残りの“ストラッヂ”、そしていくつかの重火器を持って、夜の街へ彷徨い出てしまった」
まったくもって、反吐の出るような話だ。
ただでさえ不味い煙草が、いよいよ救いようのない味に感じられた。
気取ったデザインの灰皿に煙草を押し込むと、俺は朝から変わらず痛み続けている頭を押さえた。
(,,゚Д゚)「つまり依頼内容は、“ストラッヂ”、そして娘さんの身柄の確保………そんなところですか?」
( `ハ´)「………少し、違います」
「聞くところによると」
とシナーは前置いて、それから俺の目を見つめた。
何か信用のならないものを、じっくりと品定めするような目つきだった。
( `ハ´)「あなたは過去、消去士として働いていたそうで」
(,,゚Д゚)「………それで?」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:42:18.28 ID:XkOcTEsD0
- ( `ハ´)「娘が吸引してしまった“ストラッヂ”の成分を、彼女の身体から消去していただきたい」
( `ハ´)「残りの“ストラッヂ”も同様です。私はもうあれを扱う気はない」
( `ハ´)「どうかお願いいたします。報酬は前金で2万、成功報酬として倍額お支払いたします」
(,,゚Д゚)「大切な愛娘と商売道具にかける金としちゃあ、ちょっと少なくはありませんかね?」
俺がそう言うと、シナーはざわつく部下たちを手で制し、言い訳がましく首を振った。
( `ハ´)「申し訳ありませんが、今の私どもでは、これで手いっぱいなのです」
(,,゚Д゚)「ふうん………」
まあいいだろう。こちらも、仕事など選り好みしている余裕はないのだ。
何よりもまず、この部屋から出てしまいたい。
俺はしぶしぶ頷いて、喜ぶチャイニーズ・マフィア共を尻目に次の話へと移った。
(,,゚Д゚)「支払は現金で?」
( `ハ´)「はい。前金はここに」
部下の一人が、テーブルの上に札束を投げ出した。
ケースも封筒もない、丸裸の金を目の前に、俺はため息をついた。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:45:26.55 ID:XkOcTEsD0
- やっぱり分かってないよ、この猿ども。
日本人がどれだけ包みという物を重視しているのか、まるで分かってない。
さっさと終わらせて、早急にジャングルへ帰っていただこう。
期限は三日、それ以上は待てないとのことだ。
それだけ聞くと俺は前金を苦労してポケットに突っ込み、ソファーから立ち上がった。
(,,゚Д゚)「それでは今からでも仕事を始めます。娘さんに関する詳細な情報は、後でまとめて事務所に送ってください」
( `ハ´)「ありがとうございます。いやあ、実に頼もしい。この恩は忘れません」
( `ハ´)「中国を訪れることがあったら、是非ご連絡ください。丁重に御もてなしさせていただきます」
(,,゚Д゚)「いえ、結構です」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:48:04.24 ID:XkOcTEsD0
部屋を出る間際、シナーは俺の背中に向けて言った。
それは上辺だけの敬意などではない、もっと聞き慣れた、血生臭い声だった。
( `ハ´)「私の依頼が踏みにじられた場合」
( `ハ´)「私は必ずあなたを地獄へ送ります。いいですね?」
それでいいんだよ。
最初から、それで。
( `ハ´)「再见」
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:50:23.08 ID:XkOcTEsD0
事務所に戻って、いつものソファーに腰を下ろし、煙草に火をつける。
これからの事を考えながら煙を吐きだしていると、経理の女の子がトイレから出てきた。
彼女が俺を見たとき、微かに舌打ちの声が聞こえた気がしたが、まあ、気のせいだろう。
(゚、゚トソン 「戻ってたんですか」
(,,゚Д゚)「今さっきね」
(゚、゚トソン 「なんだかいかがわしい資料が届いていますよ」
経理の女の子は数枚の書類の束を俺に渡した。
シナーの娘の資料だろう。
相変わらず英語で書かれている。
この国の言葉をあれだけ流暢に話していたくせに、文字は書けないのかよ。
(,,゚Д゚)「予想通り、胡散臭い話だったよ」
(゚、゚トソン 「でも信用はできるんでしょう?」
(,,゚Д゚)「まあね。ありそうだけどなさそうで、でも実はありそうな内容だ」
(゚、゚トソン 「コーヒー飲みます?」
(,,゚Д゚)「頼むよ。ブラックで」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:52:54.47 ID:XkOcTEsD0
- 資料の1枚目には、少女の顔写真が数枚プリントされていた。
あの息苦しい部屋で見た時と同じだ。
活発そうな女の子が、こちらに向かって笑いかけている。
(゚、゚トソン「どうぞ」
(,,゚Д゚)「ありがとう………ところでトソンちゃん」
ブラックで頼んだはずなのだが、渡されたコーヒーはなぜか茶色く濁っていた。
少し口に含むと、吐き気がするほどの甘味が舌を覆った。
いじめだろうか。いや、気のせいだろう。
(,,゚Д゚)「山口組についての資料はあっただろうか」
(゚、゚トソン 「ありますよ。創設当初の記録から、最新の壊滅情報まで」
(,,゚Д゚)「見たいんだけど、いいかな?」
(゚、゚トソン 「もちろん。少し待っていてくださいね」
(,,゚Д゚)「トソンちゃん、喉渇いてない?これ飲む?」
(゚、゚トソン 「いりませんよ、そんな甘ったるいコーヒー。そんなの飲む人は、馬鹿か阿呆です」
(,,゚Д゚)「………」
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:55:11.58 ID:XkOcTEsD0
このようにして、俺の1日は暮れていく。
元・消去士としてのプライドなど、微塵も残ってはいない。
陽が落ちれば酒を飲み、朝が来ればパンツ1枚でベッドから這い上がる。
そんなものだ。
立派な考えを持った賢者だろうが、車とスケボーの違いすら分からない脳無しだろうが、皆等しく人間だ。
誰にも否定することなんかできやしない。
決して、誰にも。
俺が唯一すべきなのは、寝覚めの良い朝がやってくることを祈る事。それだけだ。
この世界のどこかで酔っ払って、小便を垂れ流している神様に向って。
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/11(日) 18:57:15.25 ID:XkOcTEsD0
Chapter 2 End
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