- 310 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:25:23 ID:JTcUQUDQ0
- 第9章
反乱
ξ;゚听)ξ「……ね、ねぇ、ブーン?まだいるのよね?」
( ^ω^)「はいはい、まだおりますお」
ξ;゚听)ξ「うぅ……」
謎の二人組についてフィレンクトへ報告をしようと急いでいた途中でツン姫に捕まったブーンは、
未だ彼女から逃れられずにいた。
寝るまでというが、もともと寝られずに城内をうろついていた上に恐怖が加わったとなれば、
おそらく睡魔が近寄って来ることなどないだろう。
(;^ω^)(はぁ、こんなことしてる場合なのかお?)
あの怪しい二人組が何かを企てているのは、きっと間違いないだろう。何か考えなくてはいけない。
しかしブーンは窓から漏れる僅かな月の光の中、ベッドの脇に座って寝られない姫君の相手をしている。
まるで物語の中の恋に落ちた姫と騎士そのままの様であるが、彼はそんなことを
気にしていられないだろうし、姫のほうは動く死体の恐怖から逃れることに必死でそんな余裕は無い。
部屋は静かで、呼吸音やシーツが擦れる音がたまに聞こえる程度。
周囲も暗く、想像力を働かせるには悪い環境ではないだろう。
- 311 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:26:29 ID:JTcUQUDQ0
- ( ^ω^)(まぁ、大人しくなるまで待つかお……その間にも色々考えておけるし)
ξ;‐−‐)ξ「……」
( ^ω^)「……」
ξ;゚−゚)ξ「……」
( ^ω^)「……」
ξ;゚听)ξ「……ブーン」
( ^ω^)「はい?」
ξ;゚听)ξ「何か話しなさい。こうも静かだったら余計怖……寝られないわ」
(;^ω^)「話、ですかお……うーん……」
急にそう言われても、とブーンは懸命に何か考えるが、やはり思いつかなかった。
ジョルジュあたりならばいくらでも出てくるのだろうが、彼にそんな才能は無い。
そうして彼が黙っている間にも姫の想像力は働き、益々恐怖に追われているようだ。
ξ;゚听)ξ「何でもいいから……小さい頃の話でも、何でも」
( ^ω^)「そうですおね……」
- 312 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:27:36 ID:JTcUQUDQ0
- それならば特に面白い話でもないが、と前置きして話し始めた。
( ^ω^)「僕と爺ちゃんは血が繋がっていなくて、赤ん坊の頃に母さんから預けられたらしいんですお」
ξ;゚听)ξ「……」
( ^ω^)「母さんはどうしてか僕を連れて彷徨っていたみたいで、あの村で出会った後、爺ちゃんに
僕を託した後に死んでしまったみたいですお。
あ、いや、重い話では無いんですお。母さんの記憶は無いけど、爺ちゃんがいたから」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「それに、村の皆もよくしてくれましたお。姫も会いましたけど、ドクオの母さんとか。
どうしていいか分からなくてアタフタする爺ちゃんに、ドクオもいるからと色々助けてくれて」
ξ゚听)ξ「いい人だったわね、あの人の作るクッキーも美味しかったし」
( ^ω^)「おっお、僕もよく食べさせてもらいましたお。あとはジョルジュの父さんとかにもよく遊んでもらいましたおね。
物心ついたぐらいには、爺ちゃんに鍛えられ始めましたお。何でかは教えられなかったですけど、
爺ちゃんはこの国で軍人をやっていたみたいですおね。理由はそれかもしれませんお」
- 313 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:28:20 ID:JTcUQUDQ0
- ξ゚听)ξ「父上も覚えていたみたい。フィレンクトに負けず劣らず厳しかったらしいわ」
(;^ω^)「僕もよく怒られましたお。その内に同い年だったドクオとジョルジュも面白がって混じってきて、
爺ちゃんは最初迷惑そうだったけど、僕はうれしかったですお。
それからは十年近く、爺ちゃんが死ぬまで三人一緒に鍛えられましたお。
自警団も小さい頃の僕らと爺ちゃんが初期団員で、そこで山賊相手に実戦を知ったんですお」
ξ゚听)ξ「そう。だからあんなに仲がいいのね……」
ツン姫は、ほんの少しだけ、寂しそうにそう言った。
暗さのため表情は分からないが、雰囲気から読み取ることはできる。
( ^ω^)「……どうかしましたかお?」
ξ゚听)ξ「いえ……」
( ^ω^)「何かあれば言ってくださいお。話がつまらないのであれば、他の話を考えますお」
ξ;゚听)ξ「違うわよ、大体私がなんでもいいって言ったじゃない」
ξ゚听)ξ「……仲がいい友人がいて、少しだけ羨ましいなって」
( ^ω^)「……姫には、そういう友人はいないんですかお?」
ξ゚听)ξ「いないわよ。普通に考えたらそうじゃない、お姫さまなんてそんなもんよ、きっと」
( ^ω^)「……」
- 314 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:29:35 ID:JTcUQUDQ0
- ξ゚听)ξ「たまに会う同じ年頃の貴族の子供なんかも、私が王の子だからって取り入ろうとしてくるだけ。
まぁ私と仲良くなったら便宜を図ってもらえるかもしれないし、箔もつくわね。
結婚なんてしたら、一気に王様よ。
……だから嫌いなのよね、貴族って。」
(;^ω^)「……そうなんですかお。だから、普通の宿に泊まったり……」
ξ゚−゚)ξ「めんどくさいじゃない。前に、少しいざこざもあったしね……
アニジャとかモララーは砕けた感じで接してくるけど、あくまで臣下として線は引いてるし
城下の人達だってよく声を掛けてくれるけどね、やっぱり私は姫なのよ」
いつもの調子はなりを潜め、話している様子はますます寂しそうに見える。
彼女は、友人というものに酷く憧れを抱いていたのではないだろうか。
兵にくっついて出かけたり、城内をうろつくのも、それを紛らわすためだったのではないか。
目の前にいる、ただの少女の姿を見て、ブーンはそう感じた。
( ^ω^)「……それでしたら、僕で宜しければ友人にならせて頂ますお」
ξ゚听)ξ「え?」
(;^ω^)「お、もちろん許していただけるのであれば、ですお」
ξ゚听)ξ「……でも、あなたは一応、臣下じゃないの。どうせアニジャ達と変わらな……」
( ^ω^)「恐れながら、僕は田舎者で姫の御尊顔を拝したこともなく、最初はただの同年代の少女だと思いましたお。
正直な話、僕の報告を聞いて寝られなくなっている今の姿を見ても、そうですおね」
ξ#゚听)ξ「そっ、そんな理由で、ね、寝られないわけじゃ……」
- 315 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:30:19 ID:JTcUQUDQ0
- 冗談めかして話すブーンに、雰囲気を一変させてツン姫は怒りかけるが、図星なだけに尻すぼみに終わる。
ああ、やはりこちらの方が姫らしい、とブーンは思う。
適当で、少し怒りやすく、周囲を振り回す彼女の方が『らしい』のだ。
( ^ω^)「おっおっお。それはさておき、僕だけで足りないのならドクオとジョルジュも居ますお。
ドクオのほうは少し戸惑うかもしれないけど、それでも気のいい奴らだから、
きっとすぐに慣れてしまうはずですお。
そういえば、ハインさんなんか最初から気にしていない様でしたおね」
ξ゚听)ξ「……でも」
( ^ω^)「でも、じゃあいけないですお。忠告させていただくなら、そう言っているうちは
きっと友人なんて出来やしませんお。
友人というのは、自分から心を開いて、受け入れてもらわなければ。」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「どうでしょうかお?」
ξ*゚听)ξ「……ぶ、ブーン」
( ^ω^)「はい」
ξ*゚听)ξ「と、友達に……なってくれる?」
- 316 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:31:05 ID:JTcUQUDQ0
- ( ^ω^)「ええ、もちろんですお!」
ξ*゚听)ξ「……」
ξ*゚ー゚)ξ「……ふふ」
(*^ω^)「……おっ」
ツン姫は、今日ブーンが会ってから、初めて笑った。
その嬉しそうな雰囲気を感じ、ブーンも自然と笑顔になる。
彼の胸の奥に生じた小さな何かには、まだ気付いていないようだが。
( ^ω^)「……さて、もう大丈夫でしょう。寝られますおね?」
ξ*゚听)ξ「あら、ブーン。言っていることが違うようだけど」
( ^ω^)「お?」
ξ*゚听)ξ「もう私達は『友達』でしょう?」
(;^ω^)「え、ええ。そのつもりですお」
ξ*゚听)ξ「……同年代の『友達』なら、敬語はないんじゃないかしら?」
(;^ω^)「え、あ、いや、これは」
- 317 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:31:52 ID:JTcUQUDQ0
- ξ )ξ「……ああ、やっぱり私に友達なんて、出来っこないのねっ……」
(;^ω^)「……ええい! もういいお。もう寝られるんだおね、ツン姫?」
ξ*゚听)ξ「姫、もいらない。ツンでいいわ」
(;^ω^)「……」
ξ*゚ー゚)ξ「お休みなさい、ブーン」
(;^ω^)「……お休みだお、ツン」
ξ*゚ー゚)ξ「それでよし。今度、フィレンクトに怒鳴られておきなさい」
(;^ω^)「……お」
正直、失敗したか。フィレンクト将軍のことを考えると頭が痛いが、
薄暗い中でもはっきりと分かったツンの笑顔は、そんなことはどうでもよいという気にさせた。
- 318 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:32:36 ID:JTcUQUDQ0
- ※
一方、ブーンと別れたドクオとジョルジュは、フィレンクトの元へ向かっていた。
雑談を交わしながらも、報告のため廊下を急ぎ足で進んでいた。
_
( ゚∀゚)「っかー、ブーンは姫と二人でいるのに、俺らはこれからオッサンと話し合いか」
(;'A`)「聴いてたら拳骨されんぞ」
_
( ゚∀゚)「あー……そういやモララーのあれ見たとき、師匠思い出したよなー……」
('A`)「あぁ、確かに」
_
( ゚∀゚)「なっつかしいぜ。最初は楽しそうに見えたのになー」
('A`)「やってみりゃあ、地獄も地獄。よくガキができてたよ」
_
( ゚∀゚)「ま、お陰で俺ら田舎者が騎士見習いみたいなもんになれてんだけどな」
('A`)「普通考えられんよな」
_
( ゚∀゚)「くくく、この調子で功績あげて、ゆくゆくは英雄。昇進して将軍になってもいいな」
('A`)「……はぁ、また調子乗り始めたし」
_
( ゚∀゚)「何だよー、本気だぜ?男なら野望はでっかく持たなきゃいけねぇ。
ここだけはブーンとお前にも譲らんからな……っと、ここか」
- 319 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:33:37 ID:JTcUQUDQ0
- 二人はフィレンクトの私室の前にたどり着いた。
時刻は真夜中であり寝ている可能性が高いが、いち早く報告すべき事柄であろう。
怒鳴られることぐらいは覚悟しなければいけないが。
_
( ゚∀゚)「……じゃーんけーん」
('A`)「あ?」
_
( ゚∀゚)「ポン……うっし、俺の勝ち!!つーことで、お前が行って」
(;'A`)「てめ、俺の癖知ってるくせに……ちっ、しょうがないか」
文句は言いながらも、ドクオはドアの前に立つ。
覚悟を決めて、少し強めにドアをノックした。
('A`)「夜分遅くに失礼します!!
団員のドクオです!!至急お耳に入れたいことがあって参りました!!」
しかし、静寂。
言い終わる前に怒声が飛んでくるぐらいは覚悟していたのだが、返事は無い。
('A`)「……あれ?」
_
( ゚∀゚)「もういっかいやってみろよ。起きてないかもしれねーし」
今度はもう少し強くノックしたが、結果は同じ。
ただ廊下の壁に反響するドクオの声が聞こえるだけだ。
- 320 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:34:33 ID:JTcUQUDQ0
- _
(;゚∀゚)「おいおい、倒れてるとかねーよな」
(;'A`)「まさか」
_
(;゚∀゚)「いや、まぁまぁ年いってるし、もしかしたらってことも……」
(;'A`)「……将軍!!失礼します、開けますよ!!」
慌ててドアを開けてみる。
意外と鍵は掛かっておらず、簡単に開いた。
(;'A`)「……将軍?」
_
( ゚∀゚)「ありゃ……居ない?」
彼らの予想に反して、室内には病に倒れているフィレンクトの姿などは無い。
きちんと整えられたベッドや、埃一つない床が見えるだけだ。
_
( ゚∀゚)「飲みにでもいってんのかな」
('A`)「それこそまさかだ。任務、じゃないよな?」
_
( ゚∀゚)「オトジャさんもいないし、将軍ぐらいはさすがに居るはずだけどな」
- 321 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:35:47 ID:JTcUQUDQ0
- ('A`)「!……静かに。何か聞こえないか」
その時、途端に城内が騒がしくなった。
警備の兵の声だろうか、よく聞こえないが、驚いているような雰囲気を感じる。
次第に、その範囲も広がっているようである。
('A`)「……何が起こった?」
_
( ゚∀゚)「はぁ、あの二人組が現れたあとに起こった騒ぎ。
まったく、きなくせぇったらありゃしねぇな。
……あんたらもそう思うだろ?」
「!?」
ドクオとジョルジュは、既に武器を手に取っている。
闇に隠れていた男達は、次の行動を起こす前に切られ、貫かれた。
二人が廊下に躍り出ると、両側には数人づつの男。もちろんそれぞれが武装している。
「「……」」「「……」」
('A`)「とりあえずどうなってるか把握したいな」
- 322 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:36:28 ID:JTcUQUDQ0
- _
( ゚∀゚)「先にブーンと合流だ。姫サマもいる」
('A`)「そうだな。モララーとかハインさんとか、兵舎の方も心配だが。
……騒ぎを起こすには、人が少ない今がチャンスか」
_
( ゚∀゚)「はっ、可哀想に。俺らがいたのが運のツキってやつだな、アンタら。
さぁ、とにかくここを抜けんぞドクオ!!」
('A`)「ああ、分かった」
ジョルジュが道を切り開き、ドクオも後ろに続いて駆け出した。
目指すは一番ここから近い姫の私室。そこにブーンも居るはずだった。
二人は正体が分からない男達に追われながらも、全力で走っていった。
('A`)(……しかし、アニジャさんもオトジャさんもどういうつもりなんだ。
将軍がいるとは言っても、城内の守りを薄くするほど外に人を派遣するなんて愚の骨頂だ。
王や姫の命も危うい。全員皆殺しの危険まである。
叛乱の情報ぐらい掴んでいなかったのか?そんなところに俺らは仕えちまったのか。
……くそっ、考えてもまだ分からん。とにかくここを切り抜けなきゃいけねぇ)
- 323 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:37:28 ID:JTcUQUDQ0
- ※
( ^ω^)「ひ……ツンはこれからやっと御就寝だお。邪魔しないでいただけるとありがたいお」
「……」「……」「……」
部屋を出たブーンの前にも、闇に隠れるように黒いローブを着た、武装した男達がやって来ていた。
既に彼の足元には一人、斧で切り捨てられた男が倒れ付している。
問答無用に、有無を言わさず襲い掛かってきた男を、ブーンは冷静に対処した。
男達から漏れる殺気は、ドアを開ける前から感じ取ることができるほどだったのだ。
( ^ω^)「しかし、随分な人数でいらっしゃったおね……」
城内のあちこちからは、兵達が応戦しているらしい声や音が聞こえてくる。
ブーンの前にいる男達の人数は、ドクオとジョルジュの元にやってきた男達の倍以上は居るだろうか。
ここにやってきたからには、狙いは姫の暗殺かなにかだろう。
それにしても随分な念の入れようではある、とブーンは感じた。
彼らはしばらく睨み合っていたが、暗殺者の一人が動いたことを契機として
後ろのドアを死守するためのブーンの防衛戦が始まった。
( ^ω^)「おっ……らぁ!!」
右方から襲い掛かった男を振りぬいた斧で払いのけ、ほぼ同時に左方から横薙ぎされた剣を
しゃがみつつ避け、男の腹部を蹴り飛ばした。
正面からは、右腕にナイフを持った男が詰めてきている。
- 324 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:38:12 ID:JTcUQUDQ0
- (#^ω^)「っ……!!」
鋭く動かされた男の右腕を、左手で押さえ込んだ。
それを力任せに引っ張り足を引っ掛けて転ばせ、仰向けに倒れたところで腹部を思い切り踏み抜く。
「カハッ……!!」
あとは頭を蹴り飛ばしでもすれば、しばらくは動くことは難しいだろう。
襲い掛かってくる後続の男達も、ブーンに傷を付けることなく戦闘不能に陥っていく。
ツンと話したことで幾らか毒気を抜かれたとは言っても、つい先程の戦闘に対しての怒りによる
テンションは、未だ下がりきってはいない。
まだ身体の疲れは抜けきっていないが、精神の方の体調は万全だった。
( ^ω^)「さぁ、まだ来るかお?」
「……」「……」
一向に数が減った気のしない暗殺者達を前にしても、ブーンの志気は下がらない。
この程度の相手であれば、このまま全員を倒しきることができるだろう。
しかし、一つのことがきっかけで戦況が傾くことは、往々にしてあるものだ。
│听)ξ「……ブーン?何が……」
(;^ω^)「姫っ、出てきたらいけな…………くぅっ!!」
ξ;゚听)ξ「えっ!?」
(;^ω^)「くっ、くそ、うぁっ!!」
- 325 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:38:59 ID:JTcUQUDQ0
- 姫のほうに気が向いた隙を突いて、残りの暗殺者達は襲い掛かる。
ブーンは慌ててそちらに対応するも、一瞬の遅れは身の危険に繋がる。
周りの攻撃に防戦一方となってしまい、反撃することができない。
(; ω )「がっ!!!!」
ξ;゚听)ξ「きゃあっ!?」
体制を崩したブーンは暗殺者に蹴り飛ばされ、ドアを開けたまま目の前の光景に呆然としていた姫
にぶつかり倒れこんでしまう。
守るもののいなくなった入り口からは、続々と男達が入り込んできた。
(;^ω^)「くっ!!……すいませんお、姫!!」
ξ;゚听)ξ「え、ええ……何なの、こいつら……」
ブーンはすぐさま起き上がり、ツンを後ろに隠し斧を構えて目の前の敵を牽制する。
しかし既に主導権は相手に渡ってしまっている。
暗殺者達も無闇に仕掛けることはせず、周りを囲みながら徐々に追い詰めていった。
(;^ω^)「わかりませんお……今は、ここを切り抜けなくては」
ブーンは必死に思考したが、ツンを守りながらこの人数を相手に切り抜ける方法が思いつかない。
何も浮かばないまま、遂にツンの背中が壁に着いた。
(;^ω^)(糞、どうすりゃいいお……)
ξ;゚听)ξ「……」
- 326 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:40:01 ID:JTcUQUDQ0
- もうどうすることもできない。
そう判断したのか、ブーンとツンを囲む男達は一斉に武器を振りかぶった。
(;^ω^)「ちっ――――――――…!?」
ξ;><)ξ「……」
しかし、その武器が振り下ろされることはなかった。
「ったく、成長したとは言っても、まだまだ俺には及ばないということか」
「それが何日も前から考えていたという、後から登場して言うカッコいい台詞か?」
(;^ω^)「えっ、何で……」
ξ;>听)ξ「……?」
(;´_ゝ`)「おいおい弟者よ、そういうことは言うもんじゃない」
(´<_` )「すまない兄者、少しイラッとしたものでな」
周囲を囲んでいた男達が血を流しながら一斉に倒れ、その後ろから現れたのは城内に居ないはずのサスガ兄弟。
二人はいつものように会話をしながら、並んでそこに立っていた。
_
( ゚∀゚)「はっはっはぁ!!ジョルジュ様参じょ……ってぇ!?」
(;'A`)「お前それ気に入って……ってアニジャさんとオトジャさん!?」
- 327 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:41:03 ID:JTcUQUDQ0
- ( ´_ゝ`)「いいタイミングだな。ちょうどいい」
(;^ω^)「それより説明してくださいお!!なんでここに!?」
(´<_` )「お前達より先に、だ……」
アニジャとオトジャはブーンが立っているほうに近づいていくと、ツンの前に跪く。
ツンは事態が飲み込めず、混乱しているようだ。
(´<_` )「姫、このような危険にその御身を晒したこと、誠に申し訳ございませんでした。
この事態は全て、我々に責が御座います」
( ´_ゝ`)「収拾がついた後、我らどのような責め苦、処分も受ける所存に御座います。
しかし今は釈明に割く時間が勿体無い。
何卒、この場は一先ずの謝罪でお許し頂きたく」
ξ;゚听)ξ「え、ええ」
その言葉は芝居やおふざけ等ではなく、真に本気だとすぐに分かる。
王との謁見の時のようなものではない。
ツンも見たことのないような二人の態度に完全に呑まれているようだ。
(´<_` )「有難う御座います。それでは、我らといち早く安全な場所へと避難しましょう」
( ´_ゝ`)「護衛は我らとこの三人が務めます。髪の毛一本触れさせないことを約束しましょう」
_
(;゚∀゚)「ちょ、ちょっと待った、まだ説明がねーよ」
(;^ω^)「全然分からないんですお、何でここに……」
( ´_ゝ`)「……だから、そんなに時間がないんだってば。全部終わったら説明……」
- 328 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:42:10 ID:JTcUQUDQ0
- アニジャの言葉を遮ってドクオは前へ出た。
怒っている、というわけではないが、彼は勢いよく捲くし立てた。
(;'A`)「納得できねぇんだって!!あんたらは任務に行っていたはずだろ!!
大体それからしておかしいんだ、此処の守備が薄すぎた。いくら戦時中じゃないからって甘すぎる。
まずこんなでかい暴動の動きを察知してなかったのかよ!!全部が分かってねぇんだって!!」
( ´_ゝ`)「……」
(´<_` )「……お前の意見は判る、しかし今は姫の避難が先……」
( ´_ゝ`)「いいよ弟者、話そう。ただし移動しながらだ。その間警戒は怠るなよ。
姫も一応聞いておいて下さい」
(;'A`)「……わかった、わかりました」
_
(;゚∀゚)「ところで、何処だよ、その安全な場所は」
(´<_` )「謁見の間だ。その奥の隠し部屋に王も避難しているはずだ、将軍と一緒にな
正門の方にも奴らは大勢いて出られないが、そこに行けば外への抜け道もある」
(;^ω^)「……」
- 329 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:42:54 ID:JTcUQUDQ0
- ※
一向は城内の廊下を、ツンを中心に置く布陣で急いでいた。
姫は万が一のときのため、といってライブの杖を持ってきている。
急いでいるとはいってもアニジャの言のとおり周囲の警戒を怠ってはいなかったが。
時折、城内に侵入している男達がこちらを発見して襲い掛かってくるが、
この人数、そして顔ぶれならば恐れるほどのものではない。
彼らを一蹴しながら、サスガ兄弟の釈明、もとい説明は行われた。
( ´_ゝ`)「まず、だ。俺らは任務には出向いていない」
(´<_` )「そう見せかけて潜んでいただけだ。この暴動を誘発させるために」
(;'A`)「何でそんな……」
( ´_ゝ`)「早く解決する必要があったのさ、この問題を」
_
( ゚∀゚)「何でなんすか」
(´<_` )「……それこそ説明の時間が足りない。今は勘弁してくれ。
とにかく、この反乱の首謀者はわかっている。」
('A`)「誰ですか?」
( ´_ゝ`)「ゼアフォー伯爵だ。奴は姫に対して恨みを抱いていた。
まぁそれだけが原因では無いのだが……」
ξ;゚听)ξ「……っ」
- 330 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:43:41 ID:JTcUQUDQ0
- 警戒しながら進んでいた彼らは、エントランスにたどり着いた。
謁見の間まであと少しだが、廊下とは違い開けているここでは、誰かが潜んでいる確立は高い。
警戒を強めるべきである場所で、今まで話を黙って聞いていたブーンは急に立ち止まった。
( ^ω^)「……アニジャさん」
( ´_ゝ`)「……何だ、ブーン」
( ^ω^)「これが起こると分かっていたのなら、姫の下に影ながらにでも護衛が居なかったのは
何故ですかお」
(´<_` )(…………)
(#^ω^)「……姫を危険にさらして、囮に使ったということですかお!!
姫だけじゃない、今通ってきた道にも、多くの同僚が居ましたお……
彼らは、無くてもいい犠牲だったのではないのですかお!!」
( ´_ゝ`)「……兵達は、そうかもしれない。
しかし、どこに伯爵と通じている者がいたかも分からない状況だったんだ。
俺自身が連れてきたお前達でさえも、正直迷った」
(#^ω^)「ならッ、ツンは!!」
_
( ゚∀゚)「待てブーン、落ち着いとけ」
ξ;゚听)ξ「いいのよブーン、私は無事なんだから」
( ´_ゝ`)「……それに関しても、幾ら謝罪してもしたりないと思う。
俺たちが守る筈だったが途中で足止めを食らったこともあって、遅れてしまった。
……お前に尻拭いさせて悪かった。本当に助かった……」
- 331 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:44:30 ID:JTcUQUDQ0
- アニジャはブーン、そしてその隣に立っていたツンに向かって、深く深く頭を下げた。
その直前にみせた表情には懺悔、そして感謝の意が深く刻まれていた。
いつものアニジャからは、全く考えられない顔だった。
(;^ω^)「っ……」
ξ;゚听)ξ「……顔を上げてよ、アニジャ」
( ´_ゝ`)「……許していただけますか」
ξ゚听)ξ「……いいわよ、そんなことなんて」
(;^ω^)「僕も……すいませんでしたお、好き勝手言って……」
( ´_ゝ`)「……お前の言っていることは間違っていない。
悪いのは、これを立案した俺だ」
(´<_` )「俺にも責任はあるさ、共謀していたわけだしな」
ξ゚听)ξ「だからいいの。ただし後で……」
謝罪を続ける二人に近づき、姫は顔を上げさせる。
そして、顎に手をやりながら微笑んで、言った。
ξ゚ー゚)ξ「……そうね、父上にも貰えない様な、高価な宝石でも買ってもらおうかしら。
それが無理なら、私のわがままをずっと聞くことね」
( ´_ゝ`)「……ははっ、厳しい処罰だな」
(´<_` )「仰せのままに」
- 332 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:45:30 ID:JTcUQUDQ0
- ξ゚听)ξ「……そして、ブーンも」
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「……敬語、使っていたわね」
(;^ω^)「や、いや、咄嗟にはしょうがないお!!」
_
( ゚∀゚)「んお、そういやツン、って呼んでなかったか……?」
(;'A`)「おいおい、ブーンさんよ……」
(;^ω^)「違うお!!そういうことじゃなく……あとで説明するお!!」
( ´_ゝ`)「ふむ、俺は応援せんこともないが」
(´<_`;)「……障害は多いぞ」
(;^ω^)「だから!!」
「あれ!!やっぱり報告どおりサスガ兄弟がいるんだよ!!
だけど何か騒がしいんだよ!!こいつら緊張感の欠片もないよ!!」
「……お前も変わらん……こういう時は……黙って近づくべきだ……」
( ^ω^)「!!」
( ´_ゝ`)「!!」(´<_` )
- 333 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:46:18 ID:JTcUQUDQ0
- エントランスから続く廊下、その暗闇から二人分の声が聞こえてきた。
現れたのは、ブーンたちにはあまり馴染みの無い、しかし最近見たばかりの顔。
アニジャとオトジャにとっては、何回か顔を合わせている相手。
('(゚∀゚∩「悪いけど、ここから先には行かさないんだよ!!」
( ・−・ )「……ツン姫を……渡してもらおうか……」
('A`)「……こいつら、確か」
_
( ゚∀゚)「ゼアフォーにくっついてた奴らか?」
(´<_` )「やぁ、ナオルヨ殿にシーン殿。こんな夜更けにどうしたのかな。眠れないか?」
( ´_ゝ`)「そうなら俺も使っている質の良い枕を持ってこさせよう。ホットミルクも必要か?」
('(゚∀゚∩「心遣い痛み入るよ!!」
( ・−・ )「……だが結構だ……眠りにつくのは……貴様らの方だからな……」
シーンとナオルヨ、二人の騎士は腰の鞘から剣を抜き、こちらに向かって歩いてきた。
後ろには幾人かの部下を引き連れてはいたが、動かす様子は微塵も無い。
二人だけで相手取るつもりのようだ。
_
( ゚∀゚)「はっ、嘗めてやがんな」
('A`)「……俺らが止めます。アニジャさん達は姫と先に」
- 334 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:47:01 ID:JTcUQUDQ0
- ( ´_ゝ`)「お前らじゃまだ無理だ。奴らは強い」
(´<_` )「俺達がここで止める。三人で姫を送り届けてくれ」
(;^ω^)「な、そんな」
('(゚∀゚∩「何話してるのかな!!」
( ・−・ )「……残念だが……行かせん……」
( ´_ゝ`)「っく!!」
戸惑う三人を尻目にシーンの仕掛けてきた一撃を、アニジャは一人前に出て受け止める。
(´<_` )「さぁ、早く行くんだ!!」
(;^ω^)「……ツン、こっちに!!」
ξ;゚听)ξ「え、ええ」
オトジャに強く言われて、ようやく三人は動き出した。
ブーンがツンの手を取り、謁見の間へと抜けるため走り出す。
- 335 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:47:57 ID:JTcUQUDQ0
- ('(゚∀゚∩「だから行かせないんだよ!!」
('A`)(アニジャさんにはあぁ言われたが……
一発止めてカウンターでも入れてや……!?)
(;'A`)「……くぁっ!!」
当然それを止めるために、未だ自由なナオルヨが襲い掛かる。
ドクオが応対するが、受ける直前になぜか危険を感じた。
まともに受け止めはせず、すばやく跳躍することでその剣閃から逃れた。
(;'A`)(なんつー鋭さ……捨て身でもあんなに体重乗らねぇぞ……)
('(゚∀゚∩「あれ、よくかわしたね!!でもまだだよ!!」
(´<_` )「お前の相手は俺だ」
('(゚∀゚∩「!!」
逃げる四人に追い討ちを掛けようとしているナオルヨへ、オトジャが背後から剣を振り下ろす。
ナオルヨは反転し、ドクオを両断しようとしていた剣でそれを受け止める。
(´<_` )「行け!!姫は任せたぞ!!」
(;'A`)「……すんません!!」
( ^ω^)「ツン!!急ぐお!!」
ξ;゚听)ξ「ええ!」
- 336 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:48:41 ID:JTcUQUDQ0
- _
(#゚∀゚)「だっらぁぁ!!」
「……」
('(゚∀゚;∩「! 何ぼさっとしてるんだよ!!早く追うんだよ!!」
ジョルジュが出口付近に留まっていたシーンたちの部下を威嚇し、彼らはその間を通り抜けていく。
突っ立っていた男達は無事に逃げていったブーン達を追い、エントランスに残されたのは四人。
廊下に続く出口周辺にはナオルヨとオトジャ、中心辺りにはシーンとアニジャが
手に武器を構え、それぞれ向かい合っていた。
('(゚∀゚∩「あーあ、行っちゃったよ……まったく、あれらは命令しないと動かないし……
君達のせいで怒られてしまうんだよ」
(´<_` )「それは済まなかった。一緒に謝りに行こうか?」
('(゚∀゚∩「ありがたいけど、でもそんな迷惑は掛けられないんだよ
……だから一緒に行くのは首だけで結構だよ!!」
(´<_` )「それはできない相談だ、なッ!!!!」
ナオルヨとオトジャはお互いに剣を打ち合わせる。
銀色に光る鉄の塊がぶつかりあい、甲高い音が壁に大きく反響した。
- 337 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:49:26 ID:JTcUQUDQ0
- ( ・−・ )「……ナオルヨめ……行かせたか……」
( ´_ゝ`)「おいおい、余所見してていいのかい!!」
( ・−・ )「ふん……そんなもの関係ない……」
(;´_ゝ`)「っ!?」
( ・−・ )「……お前ら二人が……揃うと面倒だ……離れてもらう……」
(;´_ゝ`)「っく、うぉ……ちっ」
好機と見てシーンに襲い掛かったアニジャの槍による一突きは、シーンに軽く避けられてしまった。
カウンター気味に振られた刃を間一髪でアニジャはかわしたが、シーンは間合いを詰めながら攻撃を続ける。
アニジャは反撃の機会を見出せず後退を強いられてしまい、二組の距離は離れていった。
- 338 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:50:31 ID:JTcUQUDQ0
- ※
('A`)「アニジャさんとオトジャさん、大丈夫かな……」
_
( ゚∀゚)「心配ねぇさ」
( ^ω^)「そうだお。きっと二人はすぐ追いついてくれるお」
('A`)「……だけど、あのナオルヨって奴、相当だったと思う。
もう一人も同じぐらいだと見ていいだろうし……」
ξ゚听)ξ「……何を心配してるのよ」
( ^ω^)「ツン?」
ξ゚听)ξ「あの二人に限って負けるなんてこと、あるはずないわ。
オトジャは今まで鍛錬を怠ったことは一度も無いし……
アニジャはあんなだけど……大事には何でもこなしてくれる男よ」
(;'A`)「……でも、戻って助太刀したほうが」
ξ‐凵])ξー3「……アニジャなら何様だっていうかもね」
(;'A`)「っ……」
ξ゚听)ξ「大人しく先輩を信頼しなさい。
それにね……」
ξ゚ー゚)ξ「あの二人は、流石なのよ」
- 339 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:51:14 ID:JTcUQUDQ0
- ※
( ・−・ )「……ふん」
(;´_ゝ`)「ぐっ!!」
アニジャはシーンの一撃を何とか避けきり、次なる攻撃に備える。
予想通りの軌跡を描いてきた刃を受け止めるが、しっかりと体重の乗ったそれを完全には止められず
槍が大きく弾かれてしまい、体勢を整えるために素早く飛びのいた
( ・−・ )「……ふん……他愛も無い……」
(;´_ゝ`)「なぁに、まだまださ」
( ・−・ )「……噂通りだな……」
( ´_ゝ`)「ん?酒場の娘たちが騒いでるのか?それとも貴族のお嬢さんかな?
キャー、騎士のアニジャさんって素敵よね!!カッコいい!!ってか」
( ・−・ )「……全く口が減らん……ナオルヨ以上だな……」
( ´_ゝ`)「それが取り柄でな、よく褒められる」
アニジャは戦闘の場であるにも関わらず、その口を閉じるようなことはしなかった。
シーンはそれを呆れ顔で受け流し、しかし今までとは違って急に口を開く回数が多くなった。
( ・−・ )「……頭でっかちへ垂れの赤騎士……臆病騎士は前線知らず……」
( ´_ゝ`)「……」
( ・−・ )「……双子の弟に先越され……仕事をサボって遊ぶだけ……」
( ´_ゝ`)「えぇ……そんなこと言われてんの俺……」
- 340 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:52:01 ID:JTcUQUDQ0
- ( ・−・ )「……情けない男だ……これが兄なら……弟も程が知れる……」
シーンの言葉に、アニジャの表情が俄かに変わった。
( ´_ゝ`)「何だと……?」
( ・−・ )「……この国もこの国だ……こんな男が幹部に据わっているとは……
……やはり我らが君主……ゼアフォー様こそが……国を治めるべきだ……」
( ´_ゝ`)「……へぇーえ、勘違いしちゃってるな。アンタ」
( ・−・ )「……?」
( ´_ゝ`)「いいよ。俺は寛大だから、俺の悪口は聞き流そう。
……ただ、この国と、俺の弟に対する暴言は看過するわけにいかん」
(;・−・ )「……!?」
今まで圧倒していたシーンは、アニジャから感じられる威圧感が急激に増したと感じた。
ポーカーフェイスが信条の彼ではあったが、流れ出る冷や汗を止めることは出来ない。
そしてアニジャはシーンに向けて、はっきりと言い放った。
( ´_ゝ`)「宣言しよう、お前はあと十合打ち合う間に、地に臥している」
- 341 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:52:45 ID:JTcUQUDQ0
- ※
(´<_` )「はっ!!」
('(゚∀゚∩「おっ!!凄いね!!じゃあこう……だよっ!!」
オトジャの振るう剣をナオルヨは軽やかにかわし、すぐさま反撃に移るもオトジャは簡単に受け止める。
何度か繰り返されたその切り合いの間にも、ナオルヨの声が止むことは無かった。
(´<_` )「……ふぅ、なかなか煩いな。アニジャには及ばんが」
('(゚∀゚∩「ショックだよ!!煩さには自信あったのに!!」
(´<_` )「誇るところでは無いな」
('(゚∀゚∩「だけど驚いたよ!!噂より全然強いんだよ!!」
(´<_` )「ほぉ、こんな俺でも噂になるのか」
('(゚∀゚∩「知らないの!?せっかくだから教えてあげるよ!!」
いったん距離をとったナオルヨは剣を下ろし、謡うように話し始める。
オトジャはその振る舞いに呆れてその気が起こらないのか、追撃をしようとはしなかった。
('(゚∀゚∩「真面目が取り柄の愚鈍な緑!!事務仕事しか能が無い!!
隊長職を務めるにゃ、出涸らし男じゃ役不足!!」
(´<_` )「……ふむ」
- 342 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:53:27 ID:JTcUQUDQ0
- ('(゚∀゚∩「でも安心していいよ!!僕はそんなことないって分かったから!!
僕はどっちかっていうと、こっちの方が好きだな!!
清廉実直緑の俊英!!ニューソクを守る双将の一!!」
(´<_` )「そりゃどうも」
('(゚∀゚∩「一部じゃ君のお兄さんが上だとか、その内すぐに階級が入れ替わるとか言われてるけどね!!
何回か見てるけどあの男、そんな器じゃないようだよ!!
あんなバカ男じゃあすぐにシーンにやられるのがオチだよ!!」
(´<_` )「……」
ナオルヨはオトジャを褒めているはずなのだが、オトジャの表情はどこか険しく見える。
それをみて、ナオルヨは首を傾げてオトジャに問いかけた。
('(゚∀゚∩「あれ!?どうかしたの!?」
(´<_` )「まぁ、俺のことは大体あってるかな」
('(゚∀゚∩「そう!?でも君も意外とやるもんだよ!!」
(´<_` )「……だが、お前自身の見る目は無いようだ」
('(゚∀゚;∩「え!?」
(´<_` )「俺の兄に対する評価は改めてもらおうか……力づくでも」
- 343 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:54:08 ID:JTcUQUDQ0
- ※
時を十年ほど遡る。
アニジャとオトジャは、貴族や富裕層の子弟のための学校に通っており、勉学に励んでいた
アニジャはその建物の廊下を、頬に傷を作り、土に汚れた服を着て歩いていた。
(メ´_ゝ`)「……」
(´<_`;)「そのケガはどうした兄者!!誰にやられた!!」
たまたま向かいから歩いてきたオトジャが、頬の傷に気付いて駆け寄ってきた。
彼は服の汚れを払ってやり、心配そうにアニジャに問いかけた。
(メ´_ゝ`)「何、同級のジャンヌがなかなか美しくなってきてな。見とれて躓いてしまった」
(´<_`;)「そんな嘘を……またあの馬鹿どもか」
当時、アニジャは優秀だった。
すべての科目で素晴らしい成績を収め、教師達からも将来を期待されていた。
オトジャも同じく優秀といえば優秀であったが、その評価は真面目さ故のもの、あくまで平凡の域は出ない。
またよくアニジャに比べられたため、いまいち注目はされなかった。
しかし何時の時代も、出る杭は打たれるものだ。
アニジャを僻んだ貴族の息子達が、よくアニジャにちょっかいをだしてはケガをさせていた。
大きな問題にはならなかったが、その頃は少しだけそれがエスカレートしていた。
しかしアニジャは全く顔に出さず、周りの誰にも相談するようなことは無かった。
- 344 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:54:52 ID:JTcUQUDQ0
- (メ´_ゝ`)「なんの話だ?」
(´<_`;)「……もう腹に据えかねる。俺が行って話をつけてくる」
(メ´_ゝ`)「……だから弟者、何の話だと」
(´<_`#)「アニジャもアニジャだ!!そこまでやられて、何故黙っている!!」
痛めつけられて黙っているアニジャを情けなく思ったのか、オトジャの怒りは兄に向いた。
激しく詰め寄り、アニジャの胸倉に手を掛けた。
(メ´_ゝ`)「……」
(´<_` )「俺はもう、我慢できん。奴らに身の程を分からせてやる」
(メ´_ゝ`)「弟者、やめろ」
(´<_` )「何だ、静止は聞かんぞ」
(メ´_ゝ`)「違う。俺も奴らには、そりゃ少しは腹も立つさ」
(´<_`#)「……なら何故黙っているんだ」
- 345 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:55:34 ID:JTcUQUDQ0
- (メ´_ゝ`)「だが、あんな奴らに構っているぐらいなら、自分の鍛錬に時間を費やす。
大きな怪我でもしてしまったら武芸にも支障が出る。この程度なら何でもないさ」
(´<_`#)「だが、誇りの問題だ!!馬鹿にされっぱなしでは」
(メ´_ゝ`)「誇りが何だ。あの程度の、僻みしか能が無い連中に自分の力を見せ付けるのが、我らの誇りか」
(´<_` )「……」
(メ´_ゝ`)「気にしないで行こうじゃないか。俺らの行く道には、きっと障害も多い。
いちいち相手するには、俺らの人生は短すぎるさ。
それに構ってる時間があるなら、酒場で看板娘を口説くよ」
(´<_` )「……アニジャの口説きが成功するまでに、その短い人生でたりるとは思えんがな」
(メ;´_ゝ`)「何だと!!それならば今から見せようじゃないか、さぁ町に出るぞ!!」
(´<_`;)「は?今からか?」
(メ´_ゝ`)「おうとも。よく見て俺のテクニックを一つでも盗むがいい、弟よ」
(´<_` )「……その時間があるならば鍛錬した方が……まぁ、いいか」
(メ´_ゝ`)「では行くぞ!!ついてこい弟よ!!」
(´<_` )「はいはい」
- 346 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:56:15 ID:JTcUQUDQ0
- ※
――――本当は、ほとんど口から出任せだった。
ただ、俺のために、こんな兄の為にあそこまで怒ってくれるオトジャが嬉しくて。
そんな弟に情けない俺の尻拭いなんてさせられないと思って、必死で言い訳を考えた。
そして、コイツが誇れる兄になり、他人の問題まで抱え込むコイツを支えようと、その時そう決めた。
(;・−・ )(何故……一撃も当たらない……それに……やつの攻撃が避けきれない……
……まさか……全ての動きが読まれているとでも……)
( ´_ゝ`)「七」
(;・−・ )「うぐぁっ!!」
アニジャが七回目に突き出した槍によって、シーンの脇腹は貫かれた。
槍が引き抜かれた傷口からは血がとめどなく溢れ、内臓も零れ出ている。
シーンは立っていようと懸命に踏ん張るも、もう限界だった。
崩れ落ち、前向きに倒れこんだ。
( ´_ゝ`)「っと……なんだ、七回で足りたのか。見込み違いだったな」
(;・−・ )「ぐっ……何故だ」
( ´_ゝ`)「ん?」
(;・−・ )「……何故……こんな者に敗れる……
策略しか能の無い……こんなふざけた男に……」
息も絶え絶えに、シーンは尋ねる。
アニジャは槍を肩に抱え、口元に笑みを浮かべて言った。
( ´_ゝ`)「そりゃ簡単さ。なんてったって……」
- 347 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:57:15 ID:JTcUQUDQ0
- ※
――――あの時、兄者の話が殆ど出任せだったってのは、もちろん気付いていた。
引き下がったのは、兄者が俺を心配して言ったのがひしひしと伝わったからだ。
なんの才能も無い、真面目しか取り柄が無い俺を、こんなにも考えてくれる兄が、とても大きく思えた。
だから、この大きい兄を、何時までも守れるぐらい強くなろうと、その時そう決めた。
('(゚∀゚;∩(何で……!!急に一撃が重く……もう手の感覚が……!!)
(´<_` )「せぁっ!!」
('(゚∀゚;∩「うぁっ!?」
先程からオトジャの凄まじい一振り一振りを、ナオルヨは必死で受け止めていた。
剣には刃こぼれが見え、手には既に半分感覚が無い。
しかしオトジャの気迫の篭もった次の一閃で、ナオルヨの手からは剣が離れ飛んでいってしまった。
('(゚∀゚;∩「……何で、こんなni……」
(´<_` )「……腕相撲だけは、アニジャにも負けたことが無いんだ」
('(゚∀゚;∩「な、なんなんだよ!!あの事務仕事しか脳の無い、真面目が取り柄の緑騎士が!!
なんでそんな強いんだよ!!」
武器が手元に無いナオルヨに、出来る抵抗は口を動かすことだけ。
止めを刺すためオトジャは剣を振りかぶり、それを振り下ろしながら言った。
(´<_` )「それは決まっているさ。何故なら……」
- 348 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:58:00 ID:JTcUQUDQ0
( ´_ゝ`)『俺達は流石だからな』(´<_` )
- 349 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/06(火) 20:58:51 ID:JTcUQUDQ0
( ´_ゝ`)「……こちらもちょうど終わっていたか、流石だな」
(´<_` )「おお、そちらも終わったか。シーンは相当な手錬だったはずだが。
やはり流石だな、兄者」
( ´_ゝ`)「……と、立ち話している暇は無い。早くあいつ等を追いかけねば」
(´<_` )「そうだな、恐らくこの先には、ゼアフォーがいるのだろう」
( ´_ゝ`)「姫と王、一網打尽が狙いか……得体が知れん相手も手を貸しているようだ。
急ごう、弟者」
第9章 終
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