( ^ω^)蝿の王のようです('A`)

5 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 21:51:05.40 ID:nFErjOvxO
(;'A`)「内藤カムバーック!!」

叫ぶものの、その声に応えて欲しい人間はもう居ない。
やはりこういう時、現実とは往々にして上手くいかないわけで、逆に反応して欲しくない人間が今、俺の目の前で指の骨をバキバキと鳴らしているわけだが…

(#,'3 )「この糞餓鬼め…どうしてくれようか」

(;'A`)「それはもしかして僕に言ってるのでしょうかお巡りさん?」

俺の方こそこの状況、一体全体どうしてくれようか。
内藤は俺の事を天才だと言った。
周囲の状況を即座に判断し、それに応じた策を練る才。
どうやら俺はその能力が常人と比べてずば抜けて高いらしい。

一流の策士。

こう言ってしまえば些か誇張し過ぎのような気がするが、多分こういう事なんだろう。

じゃあ一流の定義とは?
一流と二流の差を作る壁とは何なのだろうか。

8 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 21:55:04.82 ID:nFErjOvxO
身の丈に合わない無謀な策を練るようなら三流、身の丈に合うが効力の薄い策を練るようなら二流。
一流は身の丈に合い、絶大な効果を持つ策を練る。
ならば俺は…

('A`)「超一流になってやろうじゃねぇか…」

決して悟られぬよう呟く。

( ,'3 )「どうした? 次はどんな風に俺達をおちょくる気だぁ?」

まぁ反抗したところでこの包囲を掻い潜れるわけないけどな、と付け加えて男は笑った。

まぁ見てな。その卑しい笑い顔をビリジアンに変えてやるよ。

('A`)ノ「止めだ」

俺は両の手を上げ、始めに囲まれた時のように降伏の意を示す。

( ,'3 )「はぁ!?」

初老の男は素頓狂な声を出し、目を丸くして俺を見た。

('A`)「止めだって言ってるんですよ、年のせいで耳が遠くなってるんですか?」

( ,'3 )「止めって…やけにあっさりしているじゃないか」

9 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 21:57:41.74 ID:nFErjOvxO
('A`)「そりゃそうですよ、俺はアイツらとは違う。アンタらの持ってるその銃があれば一分保たずに肉塊になる自信があるね」

('A`)「それとも何ですか? こんな目茶苦茶な学園異能バトルに巻き込まれた善良な市民を降伏も許さずに打ち殺す気ですか?」

(;,'3 )「ぐっ…」

('A`)「まだあるぜ。アンタは内藤の不意打ちを喰らってそれを俺のせいにした。濡れ衣を着せられたこっちの身にもなって下さいよ」

そして最後にもう一つ。
はっきり言ってこれは蛇足だが言わないとな。
全面降伏して蔑まれて黙ってられるほど俺は人間出来ていない。

('∀`)「パワハラって知ってます? 警察だからって傲慢な態度取ってると痛い目見ますよ、悪徳刑事さん」

してやったりだ。
さぞかし腹が立っているだろうよ。
まぁその分俺の心はスペイン辺りの青空のように晴れ渡っているがな。

10 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 21:59:44.29 ID:nFErjOvxO
('A`)「そうなるとアイツらはともかく俺を拘束するなら任意同行になるんじゃないのか?」

(;,'3 )「このガキ…」

('A`)「だったらそれなりの態度を取って貰おうか。俺とアンタは友達じゃない、その舐めた口の聞き方は頂けねぇな」

男の顔がみるみるうちに赤くなる。
そして乱暴に俺の胸倉を掴み顔を近づけてきた。

(#,'3 )「ふざけんじゃねぇぞ糞ガキ! テメェは自分の立場が分かってねぇのか!?」

('A`)「……ーんだよ」

(#,'3 )「あァ!?」

('A`)「うぜーんだよオッサン。臭い息を吹き掛けるな、汚い手で触るな、さっきから小物臭が凄いぜ?」

(#,゚3 )「…っあぁぁぁぁああ゛っ」

男は白目を剥いて俺に殴りかかってきた。
拳が俺の元に届くまでの一瞬の間で、俺はその怒りに身を任せた直線的な攻撃を見切った。
だが俺はそれを……

11 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:02:38.05 ID:nFErjOvxO
(;'A`)「ぐっ…!」

甘んじて受けた。
殴られた衝撃で倒れそうになるが、俺の胸倉を掴む手がそれを許さない。

(#,'3 )「ちったぁ目が覚めたか!? 俺の半分も生きてないガキが大人に舐めた口聞くんじゃねぇぞ!」

( A )「ふふ……」

頬が痺れるように痛む。
口の中は鉄の味と匂いでいっぱいになる。
そんな状態でも俺は笑わずにはいられなかった。

(#,'3 )「何がおかしいんだ!?」

このシチュエーションで俺が笑う理由が分からないとは、日本の警察には尊厳も糞もあったもんじゃないな。

('A`)「目ぇ覚ますのはアンタの方だろうが。百歩譲って俺が犯罪者だとしても、降伏した相手を痛めつけるのは明らかに越権行為だろう?」

(;,'3 )「…っ!」

('A`)「一時間だ、それだけで良い。それだけ待ってくれるんなら大人しく拘束されてやるぞ? 勿論、俺が負ったこの怪我も不慮の事故って事にしてやる」

12 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:05:05.47 ID:nFErjOvxO
( ,'3 )「……」

男の顔の怒りの色が薄れてゆくのが目に見えて分かる。

('A`)「断れねぇよな? 自分の地位が大事だもんな? 分かったらこの手をさっさと離せ…………っ!?」

自分の勝利を確信し、俺の胸倉を掴む男の手を払おうとする。
だがそれは敵わず、俺はその腕の力で地面に叩きつけられた。

(;'A`)「ぐっ……何のつもりだ?」

( ,'3 )「テメェは何にも分かっちゃいねぇ。ここでテメェを打ち殺せばその口は何も言えねぇだろうが!」

後頭部に冷たいモノが当てられる。
俯せの状態なので視覚する事は出来ないが、それが銃だという事は直ぐに分かった。

絶対的な死の恐怖。
俺にはその銃が処刑台のギロチンのように思えた。

13 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:07:45.48 ID:nFErjOvxO
だが。

('A`)「足りねぇ……」

(#,'3 )「あ?」

確かにコイツがこの銃を打てるのなら俺の命を奪う事など赤子の手を捻るようなものだろう。
それでも怖くない。
俺はこうなる前から……内藤と組んだ時から今に至るまで、死神の鎌を首に突き付けられているんだからな。
こんなチープで陳腐な子供騙しの恐怖で手折られてたまるかよ。

('A`)「全然足りねぇぞ? 俺をビビらせたいなら核弾頭でも持ってこいよ」

(#,'3 )「貴様ぁぁぁっ!!」

('A`)「おっと言い忘れてた」

(#,'3 )「一応聞いてやろう」

('A`)「俺を殺した後、アンタはここにいる全員の口塞げんのか?」

がしゃり

何とも間抜けな音を立て、銃は地面に落ちた。
武力という名の恐怖は淡い夢の様に儚く崩れ落ちる。

15 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:10:04.98 ID:nFErjOvxO
(;,'3 )「な…何を……」

('A`)「別に、ただちょいと疑問に思っただけさ」

背中越しに男の慌てふためく様が手に取るように分かる。

('A`)「アンタはお世辞にも良く出来た人間とは思えねぇからな。かと言って力でここにいる奴等を抑え込める程の権力を持っているようにも見えない」

('A`)「言うなれば支配者気取りの三下ってヤツだ。そうだろ?」

俺を拘束しているこの男だけではなく、この場所にいる全員に問い掛けた。
頭だけ起こし、辺りを見渡すとそこには冷ややかな目線をこちらに向けて来る若い警官達。
それを視覚すると俺は再び俯き、笑った。

( ∀ )「くっくっくっ……結構な事だ」

(;,'3 )「な……何がおかしいっ!?」

これが笑わずにいられるか。
ここで笑わないと俺はこの先どんな喜劇を見ても眉一つ動かさない自信があるね。

18 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:11:20.79 ID:nFErjOvxO
すみません煙草刷ってたら髪の毛焦げたのでちょっと洗ってきます

19 名前: ◆4KLmqjbvG6[再開] 投稿日:2010/03/05(金) 22:20:03.53 ID:nFErjOvxO
('∀`)「ここにいるアンタ以外の人間……皆良い顔してるぜ?」

冷ややかな目線の奥の奥。
そこにある感情が俺には手に取るように分かる。
俺はこの感情を常に抱きながら今まで生きてきたんだからな。

('∀`)「狩人を欺く狐の目だ。ここにいる奴等全員、たとえアンタが俺を殺しても誰も咎めやしないだろう」

この場ではな、とつけ加える。

('∀`)「だがアンタを押し退けて昇格を試みる人間がこの中に何人いるんだろうなぁ? それでも俺を殺すってんなら殺れよ。俺はアンタが破綻していく様を肴に地獄で晩酌を楽しむとするさ」

(;,'3 )「くっ……」

俺を抑えつける力が離れてゆく。
身体の自由が利くってのは素晴らしい事だな。

('A`)「さて……俺の要求を飲むと判断して良いのか?」

(;,'3 )「一時間だ! それ以上はどうあっても認めんぞ!」

21 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:23:28.80 ID:nFErjOvxO
('A`)「利口な判断だ」

さて、何とか一時間という制限付きで警察を無力化出来たが、ここからどうしたものだろうか。
恐らくこの間に俺の情報は洗いざらい調べ上げられている筈だ。
学校指定のブレザーに顔、俺の指紋がベッタリ付いたナイフまである。
どの道警察を相手取る事になるのは時間の問題だろう。

俺には警察を一人で相手取る程の力は無い。
どの道内藤を見つけなければ話にならないわけだ。

('A`)「あそこか……」

林の奥、ここから約三百メートル地点で新たに爆発が起きたのが見えた。
俺はいち早く内藤と合流する為、駆け出した。

( ,'3 )「待て」

だがそれは不意に後ろからかけられた声によって遮られる。

('A`)「まだ何かあんのか?」

( ,'3 )「俺も着いていく」

24 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:27:24.30 ID:nFErjOvxO
(;'A`)「はぁ!?」

いきなり何を言いやがりますことよ、このオッサンは。
さっき内藤と猟犬を見ていた筈だろうに命が惜しくはないのだろうか。

( ,'3 )「確かに俺はお前の言う通り、よく出来た人間じゃないがだからと言ってここで退いたら警官として終いだろうが!」

('A`)「……」

馬鹿馬鹿しい。
こんな下らないプライドにどれ程の価値があるのだろうか。
俺から見ればこんなモノ、蟻の糞ほどの価値も無い。
そんなモノの為にこの男は命を危険に晒すのか?

('A`)「……勝手にしてくれ」

まぁ精々内藤の攻撃の余波を防ぐ盾にはなるだろう。
死んだ時は死んだ時だ。
俺の知ったところではない。

('A`)「行くぞ!」

俺は今度こそ内藤の元へと駆け出した。

25 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:29:39.19 ID:nFErjOvxO

−−
−−−

(;'A`)「はっ…はっ……」

(;,゚3 )「ぜっ…ひゅー…ぜっ……ひゅー…」

駆け抜けること十分。
最初に目指した距離から五百メートル程離れた地点を俺達は走っている。
ぼちぼち追いかけていれば捕まるだろうと思っていた十分前の俺を殴ってやりたい気持ちでいっぱいだ。
一人は羽を生やした蝿の王、もう一人は鋭角を媒体に瞬間移動出来る猟犬。
この二人を相手に生身で鬼ごっこをしようと思ったのが間違いだった。

(;゚A゚)「今度…は…何処に言った……」

(;,゚3 )「あばばばあばばっあばばあばっ」

疲労感に押し潰される様に膝を折る。
だがその直後に爆音と共に地面が揺れた。

(;゚A゚)「あっちか……!」

(;,゚3 )「−−−−っ」

足を止めるわけにはいかない。
俺は一度大きく深呼吸をして、よろよろと駆け出した。

26 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:34:07.33 ID:nFErjOvxO
(;゚A゚)「はっ…はっ…はっ……」

走るうちにオッサンは口を開かなくなった。
ちらりと様子を伺うが、足取りはおぼつかないし呼吸を忘れているようにも見える。俺は再び前へと向き直り言う。

(;'A`)「おいおい…いくら年だからってへばり過ぎだろ」

;;,゚3 )「」

('A`)「返事する気力も無いってか?」

;;;゚3 )「」

('A`)「仕方ないな、三分だけ休憩しようか」

;;;;3;)「」

('A`)「しっかりしてくれよ、アンタも警官だろうが…………って!?」

;゙。;;゙)「」

返事が無い事を疑問に感じ、振り返るがもう遅い。
名も知らぬ初老の警官はもの言わぬ肉塊になっていた。

('A`)「…………っ!」

死体を確認して直ぐに電流が走るような直感が冴え渡った。
この肉の崩れ具合、強烈な腐乱臭。

('A`)「…………」

27 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:36:34.42 ID:nFErjOvxO
('A`)「出て来い」

( メω^)「はいお」

最初から気付いておけば良かった。
この根っからの捻くれ者が素直に俺の意を汲んでくれる筈がない。
大方最初に目指した地点に到着した辺りから気付いていたのだろう。

( メω^)「よく分かったおね?」

('A`)「はっ笑えねー冗談だ。こんなエゲツない殺し方が出来るのは世界中捜してもお前しか居ないだろうよ」

(* メω^)「照れるお」

褒めてない!

('A`)「……っと、そんな事はどうでも良い。あのクソワンコは始末したのか?」

まぁしたんだろうな。
そうでなければ今こんな風に飄々と現れる筈もない。
コイツには悪いが警察の方も直ぐになんとかして貰わないとな。

( メω^)「あー……その事なんだけど」

('A`)「ん?」

また何か厄介事を残して来たのだろうか。
やけに奥歯に物が引っ掛かったような口振りだな。

29 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:42:20.03 ID:nFErjOvxO
('A`)「……? 何だよらしくねーな。いつもならニヤニヤ顔でとんでもない問題を押し付けてくんのに。多少の事なら何も言わねーから言ってみろ」

(; メω^)「あー……うん、その…何と言いますか…」

おかしい。
何かある事は確定的に明らかだろう。
だがコイツはそんな事でしどろもどろになるような人間じゃない。
(;'A`)「お前……まさか…!」

それらを踏まえて考えていると、ある最悪の答えが浮かび上がってしまった。

(;'A`)「取り逃がしたのか!?」

(; メω^)「いやぁ、申し訳無いお」

あっさり肯定しやがった。

('A`)「どうすんだよ……あんなの野放しにしてたらそれこそ大惨事になるぞ」

アレに兄者だった頃の理性はまるで感じられない。
放っておけば間違いなく一般人を巻き込んでしまう。

31 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:44:15.80 ID:nFErjOvxO
(;'A`)「勘弁してくれよ……俺ん家、ここからかなり近いんだぞ」

両親の顔が脳裏をよぎる。
そういえばここ最近顔も合わせてなかったな。
大した思い入れも無いがそれでも戸籍上は俺の親だ。
俺達が引き起こしたこの不測の事態で死んで貰っては胸糞悪いことこの上ない。

ここで俺が死ぬのも親不孝だろうが、間接的に親を殺すのもそれはそれで親不孝な話だ。
出来る事ならそれだけは避けたい。

だがどうする?

正攻法で追いかけたところで相手は瞬間移動という鬼ごっこにおいてチート級の力を発揮する能力を持っているんだぞ?

('A`)「万事休す……か」

(; メω^)「…………」

内藤の無言が俺の焦りを助長させる。
そんな気がした。

('A`)「笑えねー冗談だ……」

34 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:47:05.33 ID:nFErjOvxO
( メω^)「今回ばかりは概ね同意だお」

そう言って内藤は自身の背中に生えた羽を撫でる。
しかし物々しい羽だな。
いつの間にこんな物騒なモンを出せるようになったんだ?

('A`)「それ……いつから出せるようになったをだ? 最初からじゃねぇよな」

( メω^)「ツンを殺した時からだお」

なるほどね。
あれは力を高める為の、言わばレベル上げってヤツだったんだな。
理屈や原理はさっぱり解りはしないが、つまりはそういう事なんだろう。

('A`)「その羽でバビューンと追跡……ってなわけにもいかねぇよな」

( メω^)「今の今までそれをしていたところだお」

だろうな。
それでも捕まらないっていうんだから逆に笑えてくる。
他にコイツの力で役に立つ能力と言えば何があるだろうか。

36 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:49:00.54 ID:nFErjOvxO
爆発、刺突、腐食、どれもこれも物騒な能力ばかりだなぁおい。
やはりコイツは専ら戦闘向きの戦闘狂ということだろうか。

('A`)「ん……?」

下唇を噛み締めつつ、思案を巡らせていると一つだけ忘れていた能力がある事に気付いた。
しかも鬼ごっこに向いた能力だ。

('A`)「蝿の探知能力は使えないのか?」

( メω^)「駄目だお」

即答。

我ながら良い案、というよりこの案以外に使えそうな案は無いと思うがな。

('A`)「何が問題なんだ?」

( メω^)「ティンダロスの猟犬が居る場所は多分それで把握出来るお。でもそこまで悟られずに近寄る術が無いんお」

('A`)「なるほどねぇ……」

言われてみれば確かにそうだ。
飯はあるのに箸が無い。
煙草はあるのにライターが無い。
そんな感覚だ。

( メω^)「むず痒いお」

('A`)「むず痒いな」

37 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:51:04.91 ID:nFErjOvxO
どうしようもない懸念事項に手を焼いているよりも別の懸念事項を解消した方が良いな。

('A`)「仕方ない。猟犬は後回しとして、警察の方はどうするんだ?」

( メω^)「皆殺しだお」

抑揚の無い、平坦な口調でさらりと言ってのける。

やれやれだな。
出来る事なら無駄な死体は作りたくなかったんだが。
滞りなく事を進めるにはやはり避けられないか。

('A`)「発砲許可が出てるみたいだが大丈夫か?」

( メω^)「誰に言ってるんだお?」

('A`)「ナイフ一本で半殺しにされたお前にだよ」

そう、ベルゼブブの力は最強の戦闘能力を持っているように見えるがその本質は欠陥品。
爆発や刺突は威力に伴って蝿の形成に時間がかかる。
腐敗の力は対象が五体満足なら悟られた時点で躱されるだろう。

38 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:53:21.40 ID:nFErjOvxO
そして防御面。
自身を蝿に分解する事であらゆる力を無力化する絶対防御。
それも流石兄弟によって破られている。
これはあくまで憶測の域を出ないが、内藤はこの防御法を自分の反応速度を上回る速さで使う事は出来ない。
だとすれば俺が最初に内藤と接触した時に放った拳が通用しなかったのに、今その内藤が傷を負って俺の前に居るのも説明がつく。
……となると。

('A`)「そんな力を持ってしまえば普通の人間を見下すのも無理は無いと思う。だがその驕り……間違いなくお前を殺すぞ?」

( メω^)「…………」

だんまり。
いつもの飄々とした態度で軽くあしらうでもなく。
狂気に満ちた瞳で俺を睨み付けるでもなく。
内藤は俯き、ただ黙った。
子供が悪戯して母親に怒られた時のように。

39 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:55:02.12 ID:nFErjOvxO
( メω^)「……あるお」

短い沈黙の後に内藤がぼそぼそと呟いた。

('A`)「あ?」

(; メω^)「一つだけあるお。この林に居る警官達とティンダロスの猟犬を纏めて消し飛ばす方法が」

内藤は重々しく、そしてたどたどしく言葉を紡ぐ。
言葉だけ聞けば内藤の言葉はまさに僥倖、この窮地に光を差す希望の言葉に聞こえるだろうが今は素直に喜べない。

(;'A`)「…………」

なんせこの天上天下唯我独尊男の内藤が俯いて震えてるんだからな。

恐らくその方法を取ってしまえば俺達、特に内藤にもかなりの被害が及ぶのだろう。
内藤と僅かな期間付き合ってきた俺の身体が本能で警鐘を鳴らしている。
だが……

(;'A`)「言ってみろ」

(; メω^)「…………」

重々しく開いた内藤の口から紡がれた言葉は俺が今まで培ってきた非常識に対する常識を打ち砕くものだった。

41 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/03/05(金) 22:56:52.98 ID:nFErjOvxO


第十一話「破滅の音色」



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