- 62 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:30:25.78 ID:08JH9kTSO
第十四話「炎獄」
- 65 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:32:17.01 ID:08JH9kTSO
- 秀松モララー、職業高校生。
趣味は単車弄り、スポーツ全般。
やや非行が目立つがそれ以外は真っ当な高校生(自称)である俺は……
(; ∀ )「いてぇ……いてぇぞ畜生……!」
クラスに一人は居るような影の薄い同級生にボコボコにのされちまった挙げ句、俺がいつもおちょくっていた根暗な同級生にわけの判らない力を打っ放されちまった。
( ∀ )「はは……ははは……」
お陰で身体の節々がいてーし、背中は火傷しちまった様で痺れるような痛みがある。
それでも俺はこの状況を楽しんでいた。
(; ∀ )「退屈しねーなぁ……愉快過ぎんぜ」
あの二人はこの痛みと引き換えに、俺に最高に楽しそうな非日常ってやつを提供してくれた。
そう考えると傷の痛みは薄れ、心が奮い立つ気がした。
- 67 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:33:04.65 ID:08JH9kTSO
- 身体の中から湧き上がる狂気が俺に語りかけているような気がする。
( ∀ )「何だぁ? てめーは」
実際に誰かが声をかけているわけではない。
そんな事は分かってる。
だが脳みそからアドレナリンがビンビン流れていて、とてもじゃないがそんな白けた事言ってられねぇ。
( ∀ )「…………」
しかし返事が返ってくる事はない。
だが確かに聞こえた。
俺の中でふつふつと湧き上がる得も知れぬモノが……
或いは俺の中でひっそりと佇む得も知れぬ者が……
「我が名を叫べ」
と、語り掛けてきたんだ。
- 68 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:34:05.49 ID:08JH9kTSO
- (; ´∀`)「鬱田! 内藤! その怪我はどうしたモナ!?」
勢い良く開かれた戸の先にはモナー教師が居た。
モナーは俺達の顔に出来た痣を見て、直ぐさま俺達を労る。
('A`)「…………」
( ω^)「…………」
俺がちらりと内藤に目配せすると、内藤は俺の意を汲み取ってくれた様で、浅く頷いた。
('A`)「モララーにやられたんです」
(; ´∀`)「秀松が!? 何でまたこんな事に……」
俺が事を起こした張本人の名を告げると、モナーの表情が更に青褪めた。
('A`)「アイツがここで煙草を吸っていたから俺が注意したんです。そしたらいきなり殴ってきて……気が付いた内藤が止めに入ったけどコイツも巻き込まれて……」
(; ´∀`)「モナ……」
- 69 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:35:20.33 ID:08JH9kTSO
- 流石にモナーに本当の事を言うわけにはいかない。
既に忘れつつあったが、内藤と交わした制約の中に『この件については他言するな』という取り決めがあったしな。
( ´∀`)「内藤のその包帯はそれから自分で処置したのかモナ?」
('A`)「あー……あれは」
( ω^)「これは一昨日の怪我ですお」
俺が何と言うべきか考えていると、内藤がぴしゃりとフォローを入れる。
( ´∀`)「それで昨日休んでたモナ? 次からはきちんと連絡して欲しいモナ」
( ω^)「気をつけますお」
モナーと内藤の事務的やり取りが俺には何故かとてもおかしく感じた。
いや、何故か……と言うのは間違いだな。
コイツがこうして普通の高校生をやっているのを見て、俺は三流の喜劇を見ているような感覚に陥ったのだ。
- 70 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:37:09.08 ID:08JH9kTSO
- ('A`)「じゃあ掃除してから教室に戻るんで……」
( ´∀`)「それは先生方に任せておくモナ」
掃除ロッカーへ駆け寄る俺をモナーが引き止める。
( ´∀`)「それより君達は怪我の手当てをして貰うモナ。血が出てるのに放ったらかすのは良くないモナよ?」
モナーは俺の頬から頭にかけて優しく撫でた。
まぁ悪い気はしない。
流石兄弟と会う前、というよりこの件に巻き込まれる前の俺ならその手を一秒と待たずに払っていただろうが……
自分がこういう状況に置かれて初めて人の気遣いを有り難く思えるようになってきた気がする。
('A`)「じゃあ折角だから診て貰います」
( ω^)「僕も頼みますお」
うん。
レッツエンジョイ『健全な高校生活』
- 72 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:39:11.38 ID:08JH9kTSO
- ( ´∀`)「これで良し……と」
痣になっているところにガーゼやら絆創膏やらを貼って貰う。
内藤の朝の傷もモララーのせいにする事が出来たが、内藤はあちらこちらに包帯を巻かれていてミイラ男みたいになっていた。
( ω^)「有り難うございますお」
( ´∀`)「モナ、内藤は教室に戻っていいモナ」
モナーの言葉を聞いて内藤は立ち上がる。
だが俺はどうなるんだろうか?
('A`)「え……? 俺は」
( ´∀`)「君は昨日休んだ理由を話してもらうモナ。場合によっては指導の対象になるモナよ?」
モナーの発言に俺は言葉を失った。
出て行く内藤がちらりとこちらを見て、卑しく微笑んだのが見えた。
(;'A`)「…………」
それから俺が一時間の間、生徒指導室でこっぴどく説教を食らったのは言うまでもないだろう。
- 75 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:41:31.89 ID:08JH9kTSO
- 普段は心地良く感じる風が今は傷に染みる。
( ∀ )「…………」
咥えた煙草の灰が静かに地面に落ちる。
このまま学校に戻っても耳が痛くなるような説教を受けた挙げ句、停学処分が下されるのは目に見えている。
だからこうして何処へ行くでもなく、最寄りの公園のベンチに腰掛けて時間を潰しているんだが……
( ∀ )「ぐっ……またか」
あれから定期的にやってくる頭痛の波が俺を悩ませている。
( ∀ )「何なんだぁ? これは……」
頭の中に直接響くような声。
それは確かに頭痛の波が大きくなるにつれて鮮明に聞こえてくる気がする。
( ∀ )「テメェなんか知るかよ。呼んで欲しいなら自分から名乗りやがれ」
一人呟いても頭に響く声は変わらず訴え続ける。
ただ一言……
『我が名を叫べ』と。
- 76 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:42:45.18 ID:08JH9kTSO
- (; ∀ )「つっ!……やってらんねぇなぁおい」
激しい痛みと空を飛んでいるような浮遊感が相俟って、とてもじゃないが何かするような気分にはなれない。
( ∀ )「だがあの二人にゃきっちり借りを返さねぇとなぁ……」
ドクオと内藤の顔を思い浮かべようとする。
だがそれは一段と強くなった頭痛の波によってかき消された。
(; ∀ )「あがっ……」
あの二人の顔を思い浮かべようとすればするほど痛みは激しくなってくる。
それと同じように大きくなる『我が名を叫べ』という声。
( ∀ )「んだよこりゃあ!…………いてぇ……洒落になんねぇぞこらっ……!」
それでも痛みは治まらない。
それどころかどんどん強くなってきている。
- 77 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:43:32.81 ID:08JH9kTSO
- 強烈な痛みと謎の声の間で、か細い声が聞こえた。
『わ……は…ア……ン…』
(; ∀ )「あんだって……?」
頭に響くこの声が耳を澄ませば聞き取りやすくなる筈がないのは分かってる。
それでも俺はそうせずにはいられなかった。
その声がとても重要で、俺の人生を左右しちまうモノに思えたから。
『わがな…はア…ン…』
(; ∀ )「…………」
徐々に鮮明に、力強く声が聞こえてくる。
『我が名はア……ン』
もっと……もっとだ!
俺に伝えたい事があるならもっと腹の底から叫びやがれ!
『我が名はアモン!』
( ∀ )「っ!!」
頭の中の歯車が噛み合って回り出すイメージ。
胸の内のガラスの曇りが拭き取られるイメージ。
胸のつっかえが取れるような感覚が俺の身体を支配した。
- 79 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:45:24.87 ID:08JH9kTSO
- ( ∀ )「はは……ははは……」
脳からアドレナリンが流れ出るのが分かる。
自慢の単車を転がす。
強いヤツとの喧嘩。
極上のビッチとのセックス。
俺が今まで生きてきた人生の中で感じた快感全てがちっぽけに思えるほどの快楽がそこにあった。
『我が名を叫べ』
その声は未だに俺の頭の中で木霊し続けるが、痛みは不思議と消え失せた。
( ∀ )「そう急かすなよ……挿入前の淫乱ビッチかぁ?」
自然と軽口がこぼれる。
( ∀ )「夢でも見てるみたいだぜ……テメェの名前を呼んだらもっとブッ飛んだ快感ってヤツを味わえんのか?」
( ∀ )「だったらこの俺が呼んでやる。刮目しろ! そして聞きやがれ!!」
まだ知らない世界へ俺を導いてくれる魔法の名。
( ・∀・)「『アモン』!!」
- 82 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:47:25.18 ID:08JH9kTSO
- (; ∀ )「がっ……は……」
その名を叫んだ瞬間、今まで感じたことのないような苦痛と快感が俺を襲う。
咳き込みと共に口から血が零れた。
( ・∀・)「……良いね良いねぇ!! イッちまいそうだよ糞ったれがぁ……!!」
『アモン』
ソロモン72柱の悪魔の一人。
強靱なる悪魔の公爵。
あらゆる知識が俺の中に流れ込んでくる。
そしてこの力の使い方も……
( ・∀・)「焼き尽くせ」
両手を地面に押し当てる。
それと同時に巻き起こる炎の嵐。
踊り狂うそれは草木、公園の遊具、その場に在った物を全て焼き尽くす。
( ・∀・)「あっちぃぃぃぃいい!!! 良いぜぇ……待ってろよ糞共が!!」
ゆっくりと歩を進め、公園の敷地から一歩外に出る。
それと同時に炎はより一層強く燃え上がり、公園だった場所は焦土と化した。
- 85 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:49:25.54 ID:08JH9kTSO
- (´・ω・`)「はは、それは災難だったね」
('A`)「笑い事じゃねーぞボケ」
時刻は十二時過ぎ。
例によって俺はいつも通りしょぼくれと机を並べ、昼食を摂っている。
だが周りの俺を見る目は、この顔中にベタベタと貼られた絆創膏やらも相俟って、より冷たいモノになっている。
(´・ω・`)「なんだか……食べづらいね。僕まで変人を見る目で見られてるみたいだ」
みたい、じゃなくてそうなんだがな。
('A`)「モララーにボコボコにされるよりかはマシだろ」
(´・ω・`)「どっちもどっちだよ。全く……らしくないじゃないか、君がこんな厄介事を持ち込むなんて」
厳密には周りの行動が原因で俺が四苦八苦してるだけなんだがな。
まぁ、ある程度大事な部分は暈して説明しているからしょぼくれがそう勘違いするのも無理はない。
- 87 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:50:54.44 ID:08JH9kTSO
- 苛めの主犯が居ない時までこうも邪険にする必要はないだろう?
俺も少し前までは人の事言えた義理じゃなかったが……
お前達が内藤を煙たがる理由なんて今はこれっぽっちも無いんだよ。
そうだろ? 内藤よ……
('A`)「そんなとこで辛気臭く飯食ってねぇでこっち来い」
周りの空気がざわめく。
ちらりとしょぼくれを見ると、やれやれといった表情で苦笑いを浮かべている。
内藤は手ぶらのままで席を立ち、憮然とした態度で俺達の前に歩み寄り、言った。
( ω^)「なんだお?」
全く……下らない事に頭は回るくせに、こういう空気を読むスキルはからっきしなんだなお前は。
俺は慣れない笑顔を作る事に努めて、言ってやる。
('∀`)「たまには一緒に飯食おうぜ」
- 88 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:52:15.97 ID:08JH9kTSO
- 俺のこの行為も傍から見れば偽善にしか見えないだろう。
だが構わない、それで良いんだ。
こうして平和な日常を過ごせる時間もこれからは少なくなっていくだろう。
だからこそ貴重なこの時間に下らないしがらみは持ち込みたくない、そう思っただけだから。
( ω^)「笑顔が気持ち悪いお」
(´・ω・`)「なに善人ぶってんのこの人」
だからこの二人のあまりにも辛疎な言葉も甘んじて受け止めよう。
(# A )「と思ったが……」
だがそれを実行するには俺の心のキャパシティーはあまりにも小さ過ぎたようだ。
心の内から怒りがふつふつと湧き上がるのが分かる。
(#'A`)「言っていい事と悪い事があんだろうがお前らあぁぁぁっ!!」
俺はしょぼくれのまだ中身が入った弁当箱をひったくり、高らかと投げた。
- 89 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:53:41.68 ID:08JH9kTSO
- (´・ω・`)「まったく……今日の君は本当にらしくないよ。もっと落ち着きなって、be coolだよ、ね?」
('A`)「お前は相変わらず胸糞わりーヤツだがな」
結局、俺が投げた弁当箱は物理法則に逆らうことなく床に落ち、辺りに米やら玉子焼きやらをブチ撒けた。
それによってしょぼくれの至高のランチタイムは終了した、という事でもなく、内藤と二人で質素なコンビニ弁当を二人で啄んでいる。
二人ともざまぁみろってやつだ。
折角俺が感動の空気を作ったというのにそれをこの二人は心無い一言によって打ち砕いた。
それくらいの罰が当たってもおかしくはないだろうよ。
(´・ω・`)「内藤、君が居たお陰で助かったよ。ありがとう」
(* ω^)「おっ!」
- 90 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:55:26.52 ID:08JH9kTSO
- 内藤はらしくないほどの満面の笑みを浮かべている。
そこにいつもの様な薄気味悪さは微塵も感じられない。
こんな日常が続けば良い。
この願いが叶うのならばモララーとも内藤とも、あのいけ好かない腰巾着のビロードとも仲良くやっていっても良い。
心からそう思う。
('A`)「こんな時間も良いもんだな、内藤よ」
俺は目の前の内藤と、極端に捻ねた考えを持っていた過去の俺に対して言ってやった。
( ω^)「おっ? 何か言ったかお?」
('A`)「妄言だ。気にするな」
弁当を掻き込むフリをして顔を隠す。
こんな感情を周りに悟られるなんて、拷問に近いものがあるからな。
それでも俺がこんならしくない感情を、いつか素直に周りに打ち明けられる日が来る事を、今は楽しみにしておこう。
- 91 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:56:30.60 ID:08JH9kTSO
- ―
――
―――
その炎は全てを喰らい尽くし……
その炎は踊り狂い、揺らめき……
その炎は鈍く、妖しく輝き……
その炎はそこに在る。
- 92 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:57:47.22 ID:08JH9kTSO
- (;'A`)「っ!?」
( ω^)「っ!」
(;´・ω・`)「うわっ!?」
俺達が談笑している時、突然非常用ベルがけたたましい音を立てた。
先程まで俺達の様子を見てどよめいていた他の生徒達の声が、それと違ったどよめきに変わる。
(;´・ω・`)「火事かな……?」
('A`)「内藤……」
( ω^)「……」
しょぼくれが何やら不安げな表情を浮かべているのを余所に、俺は内藤に目で問い掛ける。
この騒ぎの正体があの件絡みであるか否かを。
内藤はそれに対して無言で頷いた。
それが意味する事。
これからこの学校で、悪魔同士の殺し合いが始まる。
(;'A`)(くそっ……! どうしてこうなった?)
やはりあの時、力ずくでもモララーを捕まえておくべきだったか。
それともモララーの問いに正直に答えておくべきだったか。
- 93 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 01:59:42.18 ID:08JH9kTSO
- 過ぎてしまった事に思案を巡らせていると、モナーが青褪めた表情で教室に駆け入ってきた。
(; ´∀`)「火事が起きたモナ! 直ぐに放送があるから指示に従って避難するモナ!!」
それだけ言うとモナーは直ぐに出ていった。
モナーのこの言葉に教室内は更にざわめく。
( ω^)「ドクオ」
(;'A`)「なんだよっ!?」
内藤が平坦に俺の名を呼ぶ。
その表情、声色から焦りは感じられない。
恐らくこの騒ぎの中でコイツが一番冷静なんだろうな。
( ω^)「君の慎ましい学校生活。多分今日で完璧に終わったお」
その言葉を聞いて、俺の視界はぼんやりと歪んでいった。
- 95 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 02:00:49.32 ID:08JH9kTSO
- (; ∀ )「はは……笑えねー……冗談だ」
放送を知らせるチャイムが鳴り、教職員が指示を出しているのが聞こえた。
他にも生徒のざわめき、廊下を人が駆ける音が耳に入るが、頭がその情報を受け取らない。
(;´・ω・`)「君達が何を言ってるのか全然分からないよ! 一体何が起きてるんだい!?」
( ω^)「いずれ解る事だお。それより君はさっさと避難した方が良いお」
内藤が手であっちへ行け、と合図するのを見てしょぼくれはちらりと俺の方を見てきた。
疑るような、刺すような目線が突き刺さる。
なぁおい。ほんとに笑えねーよ。
こんな時にどんな顔をすれば良いんだ?
どんな言葉を吐けば正解なんだ?
常に考えてきただろうがよ……
答えろよ俺!!
- 96 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 02:02:41.38 ID:08JH9kTSO
- (#'A`)「あぁぁぁぁああ゛っ!!」
(;´・ω・`)「っ!?」
( ω^)「おっおっおっ」
自分で聞いていて五月蠅く思えるほどの咆哮。
いや、奇声と言ったほうが正しいか……
しょぼくれ、逃げ惑う生徒達の視線が痛々しく突き刺さる。
唯一内藤だけが、俺の奇行を見て満面の笑みを浮かべていた。
(#'A`)「どっせえぇぇいっ!!」
手頃な位置にあった椅子を持ち上げて教室の窓ガラスに向けて投げる。
気持ち良いほどに高らかな音を立ててガラスは砕け、グラウンドに直通した穴が出来た。
( ω^)「Welcome to Underground」
青褪めた表情でその場を一目散に離れてゆくしょぼくれを余所に、内藤はニヤけ面のまま拍手していた。
( ω^)「改めて、こちら側の世界にようこそ」
内藤が大袈裟に紳士気取りなお辞儀をする。
- 97 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 02:03:50.93 ID:08JH9kTSO
- ('A`)「そりゃどんな反応をして欲しいんだ?」
( ω^)「特に意味も無いし反応が欲しいわけでもないお。死闘の前の景気づけってヤツだお」
いちいちドヤ顔になるところが妙に気に障る。
だがまぁこいつの行動にわざわざいきり立っていると一日で神経を摩耗しきってしまうのは分かっている。
今はそんな事よりも……
('A`)「飛ぶぞ」
( ω^)「あいお」
もう少しだけ早く取り除くべき懸案事項だったもの。
今となっては大きな厄災と成り果てたもの。
悪魔をその身に宿したモララーを討つ事が先だ。
ぽっかりと穴が空いた窓ガラスの縁に足をかけ、そのまま地上に飛び立つ。
('A`)「……っ!」
浮遊感と恐怖が相俟って思わず息を飲む。
グラウンドに避難している生徒達が俺を見て悲鳴を上げているのが分かった。
- 98 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 02:05:27.86 ID:08JH9kTSO
- 地面に衝突する一歩手前で身体ががくりと揺れた。
落ちゆく俺の身体を掴み上げた者がいるからだ。
その正体は見なくても分かる。
( ω^)「勢いつけ過ぎだお」
('A`)「そいつぁすまねーな」
内藤が俺の身体を両手で掴み、そのまま背中に生えた羽をはためかせ浮上してゆく。
グラウンドに居る生徒達を見ると、これまた大きな悲鳴を上げている。
まぁ無理はないだろうな。
俺だって何も知らなかったら同じような反応をしていただろうよ。
('A`)「で、モララーは何処にいるんだ?」
俺は内藤が着けているベルトに手首を通し、そのまま落ちないように固定しながら尋ねた。
( ω^)「この校舎の丁度真裏だお」
('A`)「よし、行くか」
( ω^)「何で君が主導権握ってるんだお?」
- 99 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 02:07:01.44 ID:08JH9kTSO
- 内藤のある意味的確な突っ込みを華麗にスルーし、俺は視界に飛び込んできた惨状に目を向けた。
(;'A`)「……っ!」
(; ω^)「おっ……」
丁度俺達の教室から見て真裏に位置する棟は燃えていた。
血の様に真っ赤な炎が踊り狂い、そこにある命全てを刈り取らんとしている。
(;'A`)「明らかに異質だな」
( ω^)「…………」
遠目に見てもその炎が普通の自然現象で起こったものではないことが分かる。
かといって普通の人間が人為的に引き起こしたものでもない。
異常なまでに赤いこの炎は確実に悪魔の力によるものだ。
('A`)「モララー……」
逃げも隠れもせず、それを引き起こした張本人はそこに居た。
揺らめく炎を見つめ、上空にいる俺達にも聞こえるほどに高らかに笑っていた。
- 100 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 02:10:00.76 ID:08JH9kTSO
- ( ・∀・)「ぎゃっはははははははっ!! 良いねぇ……最高に気持ち良いぜっ!!」
モララーは俺達の存在に気付いていないようで、未だその笑いを止めない。
('A`)「内藤」
( ω^)「あいお」
一言呼び掛けただけで内藤は俺の意を汲んでくれた。
内藤が翳した手に蝿が集い、槍が形成される。
刺突の力を集結させた、内藤が持ち得る攻撃手段の中でも最高の攻撃力を誇る力。
ブリューナク。
視覚することもままならないこの槍を意識の外から打ち込まれるとなれば、いくら悪魔の力を持つ者といえどただでは済まない筈だ。
( ω^)「行くお」
内藤は頭上に手を翳し、ゆっくりとモララーに向けて振り降ろした。
- 101 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/09(金) 02:11:34.63 ID:08JH9kTSO
- その瞬間。
モララーがこちらに振り返った。
眉を吊り上げ、目を細めているのが見える。
やつが歪ませた口元からある単語が見えた。
聞こえるのではなく、俺がはっきりと視覚して感じ取った言葉はシンプルで解りやすいものだった。
『みーつけた』
(;'A`)「……っ!!」
俺がそれに気付いた時にはもうブリューナクは放たれていた。
だがそれはモララーに届かず、それに対抗する力によって焼かれ、打ち消された。
( ・∀・)「ヒャッハーッ!!」
ブリューナクはモララーの一寸手前の位置で燃えカスとなって崩れ落ちた。
モララーはそれを満足げに見つめると、両手を広げて狂ったように笑い声を上げた。
(;'A`)「なるほど……ね」
今回も一筋縄ではいかないんだろうな。
まぁ最初から分かってはいたんだが……
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