( ^ω^)蝿の王のようです('A`)

3 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 20:37:06.15 ID:GpS7WW5rO

第十八話「最強墜つ」


4 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 20:38:09.90 ID:GpS7WW5rO
俺達はただ立ち尽くす。
対峙する敵を咀嚼するように、推し量るように。
俗に言うなら「見」の姿勢だ。
風が靡き、名も知らぬ鳥が囀る。
だが俺達の身体は、時の流れから切り取られてしまったかのように動かない。

虚無とも清閑とも呼べる時間が数分ほど流れる。
その中で最初に動いたのは、俺だった。

(#'A`)「らあああああっ!」

力任せに叫び、力任せに駆けた。
両手でがっしりと包丁の柄を握り、狙いを定める。
その刹那にモララーの表情が卑しい笑みに変わるのが見えた。
だが関係無い。迎撃など最初から予測済みだ!

( ・∀・)「はっはー!!」

気持ち良いほどに高らかな笑い声と共に、炎が俺に立ち塞がるようにして地より吹き上がる。

5 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 20:39:34.75 ID:GpS7WW5rO
それでも俺は動きを止めない。止まらない。
蝿の大群が視覚出来るかも危ういほどの速度で俺の脇をすり抜けてゆく。
振り返る必要も無いし、指示を出す必要も無い。
同じ殺戮を共有した内藤だからこそ、内藤は俺の意を汲んでくれる。
禍々しい黒が禍々しい赤を塗り潰し、かき消してゆく。

('A`)「はっ!」

両足に力を込めて跳躍し、黒き壁を突き抜ける。
宙から見下ろした視線の先にはニヤけ面を保ったまま、右腕に炎を纏わせたモララーが居た。

('A`)「内藤!」

( ω^)「合点!」

モララーの右手から放たれた炎と、その炎の壁を打ち破った蝿が俺の眼前で衝突する。
今度は落下という形で蝿の壁を突き破った。
包丁の刃をモララーに向け、落下の力を加えてそれを突き刺した。

6 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 20:40:43.35 ID:GpS7WW5rO
(; ・∀・)「ぐっ……!」

心臓を狙った一突きは、咄嗟に身体を反らしたモララーの肩に深々と刺さった。
そしてそのまま振り抜くが……。

(;'A`)「なっ……?」

深々と刺さった包丁はモララーの肉に阻まれ、ぴくりとも動かない。

(  ∀ )「へへ……つーかまーえた!」

モララーの手が俺の手を握る。
俺は動かない。動けない。

(; A )「あああああああっ!!」

紅蓮の炎が俺の右腕を焼いた。
遠慮無く、躊躇無く、舐めるように俺の腕を炎が這いずる。
激痛は一瞬だけ。
針の筵に抱かれたかのような痛みの後にあった感覚は無だった。

( ω^)「調子に乗んなお!」

真上から内藤が降りてくる。いや、落ちてくると言った方が正しいだろうか。
禍々しい異形の腕を振り下ろしながら、内藤は吠える。

10 名前: ◆4KLmqjbvG6[>>9まとめ漏れ中です] 投稿日:2010/07/21(水) 20:45:52.81 ID:GpS7WW5rO
即座にモララーはその場を離れようとするがそれは敵わない。俺が許さない。
俺はまだ機能する健全な左手でモララーの腕を掴み、縛りつける。

(#'A`)「持ってけ泥棒!」

(; ・∀・)「おい! おいおいおいおいっ!?」

モララーは身体を捩らせ、全力で抵抗する。
健全なモララーと片腕をやられた俺とでは力の差は歴然だ。だが行動を起こすには少しばかり遅かったようだな。

(# ∀ )「ふざけんなああああああっ!!」

内藤の異形の腕は、俺の両腕とモララーの左肩から先の肉を、根こそぎ食らった。

(; A )「……っ!」

自分で課した拘束から開放され、俺はのけ反るようにその場を離れた。
激痛で声を上げる事すらままならない。
世界が終わってしまいそうな錯覚に陥る。

12 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 20:47:58.38 ID:GpS7WW5rO
嫌な汗が全身から噴き出る。
油断すれば胃ごと吐き出してしまいそうな吐気が俺を襲う。
そして激痛、激痛、激痛!

(; A )「あああああああっ!!」

喉が潰れるかと思った。
それでも叫ばずにはいられなかった。
内藤に傷口を触られても、蝿達が傷口を浸蝕しても、何も変わらないかの如くひたすらに叫ぶ。

(; ω^)「落ち着けお! 傷はもう大丈夫だお!」

覚悟があれば耐えられると思っていた。
例え両腕がもげても、事前の覚悟と備えがあれば乗り越えられる。
――そんな考えは幻想だった。
俺の両腕を犠牲にしてモララーの片腕を奪い、俺の腕の怪我は即座に内藤が治癒する。
そんな、言葉では簡単に言える単純明快な策に、俺の精神は耐えられなかった。

13 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 20:49:16.84 ID:GpS7WW5rO
(; A )「あがっ……あ……」

痛みの波は既に無くなっていた。
身体を起こそうとするが、無い両腕を使おうとしてしまい、顔から地面に突っ込んでしまう。

(; ω^)「大丈夫かお?」

後ろから内藤が俺の身体を抱え起こす。
そこで俺はようやく、片腕を失ったモララーを視界に映した。

(; ∀ )「ぁ……が……」

身体をびくびくと痙攣させながら、モララーは芋虫のように身体を這いずらせていた。
血が傷口から溢れ出て、這った跡を生々しく残す。

( A )「……内藤、とどめを……」

( ω^)「……分かったお」

掠れる喉から無理矢理振り絞った言葉に、内藤は呟くように答えた。
内藤は俺から手を離し、ゆっくりとモララーに歩み寄ってゆく。
支えを失った俺はそのまま倒れこみそうになるが、足に力を込めて踏みとどまる。

15 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 20:51:21.67 ID:GpS7WW5rO
(  ∀ )「だらあああああああっ!!」

内藤が俺の元を離れたのとほぼ同時のタイミングで、モララーは怒号を上げながら立ち上がり、駆け出した。

( ω^)「っ!?」

(;'A`)「っ!」

モララーが駆けた先は内藤でも俺でもなく、燃え盛る校舎だった。

(  ∀ )「あああああああっ!!」

断末魔にも似た悲鳴を上げながら、モララーは燃え盛る橙の炎の中に身を投じた。
放っておけばそのまま死んでもおかしくない自分の身体にとどめを刺すかの如く。

(; ω^)「とち狂ったのかお?」

(;'A`)「……いや」

傍から見れば俺達の勝利は確固たるものだろう。
だがどうにも腑に落ちない。
疑問というのも憚られるような曖昧模糊とした感覚が胸を過ぎる。

17 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 20:52:43.92 ID:GpS7WW5rO
モララーの姿は完全に炎の中に消えてしまった。
不穏な静寂が辺りを包み、一陣の風が煤けた俺の髪を撫でる。

('A`)「…………」

腕の痛みは内藤の処置によって完全に消え失せた。
ならば考えろ。疑問を払拭しろ。思考しろ。
この胸の蟠りは何だ?

( ω^)「何はともあれ……」

不意に内藤の声が聞こえた。

( ω^)「君の両腕を引き換えに無事勝利を掴むことが出来たお。被害を考慮しても結果は十全、君は胸を張って良いお」

俺の事などまるで省みない辛辣な賞讃さえ、俺の思考を止めるには至らなかった。
ぐるぐる回る。
思考のピースと歯車が縦横無尽、ところ狭しと頭の中を駆け巡る。

(;'A`)「っ!」

がちり

思考の歯車が噛み合い、一つの結論を導き出した。

18 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 20:54:18.33 ID:GpS7WW5rO
(#'A`)「内藤っ!!」

なりふり構っていられなかった。
叫びは裏返った声色で間抜けなものになるが、そんな事はどうでも良い。

(; ^ω^)「おっ?」

(#'A`)「今すぐだ! 今すぐ校舎の屋上を吹っ飛ばせ!」

怪訝な表情を浮かべる内藤の返事を待たず、俺は更に叫ぶ。

(#'A`)「モララーはまだ生きている!」

否――。

(#'A`)「モララーはあの校舎に! あの炎の中に入って生き返るつもりだ!」

それからの内藤の行動は速かった。
背中に生えた翼を使い、一気に校舎の上まで飛び上がる。
そして蝿の球を何百と形成し、一斉に校舎の屋上目掛けて飛ばした。

(;'A`)「うわっ!?」

強烈な揺れが辺りを襲う。
コンクリートの塊があちらこちらに飛び散り、校舎の向こう側から盛大な悲鳴が聞こえる。

19 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 20:55:55.65 ID:GpS7WW5rO
(#'A`)「床を全部ぶち抜け! そして貯水タンクをぶっ壊すんだ!!」

続けて指示を出す。
内藤は俺の言葉の通りに動いてくれた。
雨の如く降り注ぐ黒色が、校舎を打ち崩してゆく。
瓦礫が辺りに飛散し、粉塵がまき起こる。

そして――。

(# ω^)「おっ!!」

一際大きな掛け声と共に、粉塵の向こうから爆破音が聞こえた。
校舎を燃やしていた炎が貯水タンクから吹き出る水にかき消されてゆく。

(;'A`)「間に合ったか……?」

轟音と共に倒壊した校舎に目をやる。
その更に向こう側から数多くの悲鳴が聞こえるが、今はそんな事は気にしている場合ではない。

(;'A`)「頼む……頼むぞ」

他力本願な悲痛の叫びにも似た嘆願。
だが今は祈るしか無い。
俺が想定する最悪のパターンが確定されない事を。

20 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 20:57:22.27 ID:GpS7WW5rO
だが――。

(;'A`)「っ!?」

瓦礫を吹き飛ばす轟音と共に、赤い炎が巻き起こった。
粉塵はあっさりと吹き飛ばされ、視界がクリアになる。
そこにいたのは――。

(メメ゚∀メ)「どーくおくうぅんっ!」

腕をもがれ、炎の中に身を投じ、既に人としての形を保っていないモノがいた。

(;'A`)「…………」

恐怖で声が出せない。
モララーの髪の毛は殆ど焼け落ち、ケロイド状の皮膚が片目を覆っている。
残った片目も焦点が合っておらず、おぼつかない足取りで歩み寄って来るそれはゾンビのように思えた。

(;'A`)「来るな! 来るなよ!」

両腕をもがれている為、その辺の小さな瓦礫をモララーに向かって蹴ってやる。
だがそれはモララーには届かず、ピンポイントに地面から噴き出す炎に遮られてゆく。

21 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 20:59:20.49 ID:GpS7WW5rO
(;'A`)「うわっ……」

気が動転していたのか、尻餅をついてしまう。
両腕が無い為上手く立ち上がれない。
それでも――。

(;'A`)「あ……」

尻餅をついた拍子に空を見ると、希望の黒が目に入った。

( ω^)「死に損ないはさっさとくたばれお!」

ブリューナクを左手で持ち、振りかぶるような動作をしている内藤がいた。
最速の槍。
最強の槍が。
異形の腕によって放たれた。

(メメ゚∀メ)「あははははははははははははははははははははははっ!!」

その刹那にモララーの身体から炎が吹き出る。
それはモララーを守るようにブリューナクを防ぐ盾となった。

23 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 21:01:09.39 ID:GpS7WW5rO
最強の黒き槍に対して、最強の炎の盾。
目では追えないその衝突の結果、打ち勝ったのは。

(;'A`)「え……?」

炎の盾だった。
最強の槍を破った最強の盾。
その強さには何の矛盾も無く、それは炎の矛となって俺に襲い来る。

視界が熱で歪み、俺は目を閉じかけてしまう。
だがいっそ閉じてしまった方が楽だったのだろうか。
スローに動く世界を見つめ、襲い来る「死」を傍観していると、そんな気持ちになってしまう。

( ω^)「――っ!」

内藤が何かを叫んでいるようだがよく聞こえない。
死ぬような思いはここ最近で死にたくなる程経験した。
だが今のこの状況はその中でもとびっきりだ。
考えなくてもわかる。
数秒先の俺の未来。
咎人の末路。

('A`)(これ……死ぬわ)

24 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 21:02:27.73 ID:GpS7WW5rO
(メメ゚∀メ)「あははははっ!!」

耳を劈くような奇声を上げ、モララーが倒れた。
炎の矛は僅かに俺の鼻先を掠めて、消えた。

(;'A`)「えっ?」

死を覚悟した。
諦めを受け入れた。
だが――。

最強を打ち破った最強のモララーが倒れ、俺は生きている。

(;'A`)「くっ……」

考えるよりも先に身体が動いていた。
両腕を失った身体を足だけで起こし、モララーの元へ急ぐ。

(メメ゚∀メ)「…………」

俺は覗き込むようにモララーの顔を見た。
息はあるようだが、目はもう死んでいる。
恐らくもう後数分も持たないだろう。

(メメ゚∀メ)「……っ……!」

僅かに唇が動いている事に気付き、俺は膝をつき、モララーの口元に耳を寄せた。

25 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 21:04:02.14 ID:GpS7WW5rO
('A`)「…………」

弱々しく紡がれたその言葉を最後に、モララーの身体は動かなくなった。

( ω^)「ドクオ」

モララーの口元に落としたままの俺の頭を、内藤が引っ張り上げた。
その表情は安堵と疲労が混じった、何とも内藤らしくないものだった。

('A`)「なぁ……」

( ω^)「おっ?」

モララーは死んだ。
俺にたった一つの頼みをして。

('A`)「モララーの供養、俺にやらせてくれよ」

モララーのその願いに答える事は出来ない。
だがせめてもの手向けとして、こいつをきちんと埋葬してやろう。
どうせ俺達はこれから警察に追われる身になるのだから、もう死体を隠蔽する必要など無いのだ。

( ω^)「……分かったお」

内藤は俺の意を汲んでくれたのか、それだけ言って後は一言も喋らなかった。

27 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 21:06:14.09 ID:GpS7WW5rO

――

(;'A`)「ふぅ……こんなもんか」

俺達は今、学校から数キロ離れた山の中腹に居る。
両腕を失ったせいで穴を掘るのに時間が掛かったが、何とかモララーの埋葬は終わった。

(-A-)「…………」

数分程黙祷する。
その間に俺の頭を駆け巡った感情が何だったのかは、分からない。
黙祷を終え、木の枝に吊るしたズボンを履くのに苦戦していると後ろから肩を叩かれた。

( ω^)「手伝うお」

('A`)「……悪いな」

この年にして要介護状態。
しかも介護するのが美人のヘルパーさんではなく、人間を止めた化け物だというのだから泣けてくる。

28 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 21:07:41.33 ID:GpS7WW5rO
('A`)「はぁ……」

ズボンを履き、素肌の上からブレザーを羽織ると、俺はどっかり地面に腰を下ろして溜め息をついた。

( ω^)「一回座ったら立ち上がるのが大変じゃないかお?」

(;'A`)「げっ……」

出来れば数秒前に言って欲しかった。
と、そんな事はさておき……。

('A`)「なぁ、これからどうすんだよ」

( ω^)「どうする、というと?」

('A`)「惚けるなよ。あんだけどんちゃん騒ぎ起こしたんだ。これからは警察やら何やらが出張ってくるぞ?」

懸案事項が尽きる事は無い。
自分から話を振っておきながら俺は生い茂る木々を一瞥して、そんな現実から少しだけ逃避してみる。

30 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 21:08:57.09 ID:GpS7WW5rO
( ω^)「……取り敢えずは身を隠せる場所を見つけるお。此所じゃあ学校から近過ぎるし、見つかるのも時間の問題だお」

('A`)「その辺はお前に任せるよ。今の俺じゃあ街中を歩くには目立ち過ぎる。食料や衣類の確保もついでに頼むぞ」

ちらりと自分の肩口を見る。
ほんの数時間前までは存在していた俺の両腕はもう無い。

(; ω^)「……全部僕にやらせる気かお?」

('A`)「ったりめーだ。怪我人に肉体労働させる気かよ」

よくよく考えてみれば、俺の腕を奪った内藤の攻撃。
あれはもう少しモララー寄りに狙っていれば片腕くらいは残ったんじゃないだろうか。
モララーだけを狙うには、俺の拘束だけでは頼りないものだったが……。

31 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 21:11:02.14 ID:GpS7WW5rO
(; ω^)「あうあう……買ってきてあげるから好き嫌いだけはするんじゃねーお」

('A`)「好き嫌いはしねーけど麺類とか買ってきやがったらぶっ飛ばすからな」

ここはかなり重要。
出来る事ならこいつに飯を食べさせてもらうという気色悪い状況は避けたいからな。

('A`)「まだ問題はあるぞ。これから適応者探しはどうすんだよ?」

( ω^)「…………」

俺の言葉はずばり核心を突いたらしく、内藤はやや伏し目がちに俯いて黙った。

('A`)「津出 麗子、流石兄弟、モララー、もう四人か。なぁ内藤……」

内藤が少しだけ落ち込んでいるようにも見えた。
だが俺は構わず続ける。

('A`)「俺達は一体、後何人殺せば良いんだ?」

32 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 21:12:43.04 ID:GpS7WW5rO
その問いに内藤は答えなかった。

( ω^)「疲れたからもう寝るお。君があの時焦ってた理由とか、聞きたい事は色々あるけどそれはまた夜中に聞くから……」

少しの沈黙の後に内藤はそれだけ言って木々の向こうに消えて行った。

('A`)「…………」

俺はそれに対して言及しなかった。
一度だけ溜め息をつき、夕焼けに染まった空を見上げる。

('A`)「悪いなモララー。悲しかっただろう」

そして死んでしまった「最強」を思い浮かべる。
絶対的なカリスマと力を持ち合わせていたがゆえに、絶対的な孤立を強いられてしまった哀れな最強。
あいつが最後に俺に言った言葉は、皮肉にも内藤の殺しの条件を満たしてしまうものだった。

34 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 21:14:09.10 ID:GpS7WW5rO



「俺のともだちに、なってくれよ」




35 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 21:16:49.34 ID:GpS7WW5rO

――。

太陽が沈んでから数時間が経った。
俺は今、眠りから覚めた内藤が買って来た夜食を前にして、いまだかつて無い憤りを感じている。

(#゚A゚)「言ったよなぁ!! 俺は言ったよなぁ!? 麺類だけは止めろって!! 何で俺の目の前には、ざる蕎麦があるのかなぁ!? 内藤くん!!」

(# ω゚)「ふざけんじゃねーお! 深夜二時のコンビニにバリエーションを求めるお前は馬鹿かお!? 食品コーナーにざる蕎麦しか無かった時の僕の絶望を少しは察しろお!!」

(#゚A゚)「あるある!! コンビニってのはこの時間は品揃えが悪いもんな!! あぁそうだよ! 取り敢えず死ねよお前!!」

取り敢えず言おう。

ふざくんな世界。

37 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/07/21(水) 21:19:37.71 ID:GpS7WW5rO
(#゚A゚)「大体何でジャンプなんて買ってんだよ!! 立ち読みで済ませろよ! それどころじゃねーだろうが!!」

(# ω゚)「ビニール貼ってたんだから読めるわけねーお!! めだかちゃんおもしれーだろーが!!」

(#゚A゚)「ああ面白いよ!! 楽し過ぎて狂っちまいそうだ!! だがあれはもう―一三組なんてやっちまったせいで収拾つかなくなってんだよ!!」

(# ω゚)「あああああああっ!! いらんこと言った! もう嫌だ! 絶望した!!」

(#゚A゚)「大体何でオムツなんて買ってんだよ!! 必要ねーだろうが!!」

( ω^)「えっ? 君の下の世話だけど……」

(#゚A゚)「…………」

(;゚A゚)

(;;゚A゚)

(;;;゚A゚)


……死にたい。



戻る 次へ

inserted by FC2 system