( ^ω^)蝿の王のようです('A`)

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:00:18.08 ID:hADlD7/JO


第五話「奇天烈兄弟」



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:02:21.48 ID:hADlD7/JO
( ´∀`)「今日は美化委員の清掃活動があるから、該当する生徒は放課後中庭に集合するように」

モナー教師が教卓で喋っている。
ご苦労な事だ。
何が悲しくてほっといても気にならないような学校の清掃活動などせにゃならんのだ。
該当する生徒も好き好んでなった訳じゃないだろう。
全く、気の毒なもんだ。

今の時刻は八時五十分。
モナー教師の発言から、察する事は容易いだろう。
今、俺が所属するこのクラスでは朝のホームルーム活動を行なっている。

(-A-)「眠い……」

今このような平凡な生活に身を置いてこんな府抜けた言葉を吐けるのも、全ては俺の血を吐くような勢いの全力疾走の賜物だろう。
今となっては無傷でいられた事を神様に感謝するばかりだがな。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:05:33.78 ID:hADlD7/JO
('A`)「………」

ちらりと俺が全力疾走する羽目になった原因である男を見る。

( ^ω^)「……」

いつものニヤけ面がやけに神経に触る。
夢中で机に落書きをしている様で、描いては消し、描いては消しの反復作業を行なっているのが腕の動きから分かる。

俺も人の事は言えないが、コイツも負けず劣らず呑気なモンだ。
コイツが魔王の力を持っているなんて言っても誰も信用しないだろうな。
かく言う俺も今まで見せつけられた非現実的な状況が無ければ信用しないだろう。

モナー教師の話も聞くに値しない世間話になってきた。
やる事事も無いので俺が『ポセイドン』(内藤命名)から命からがら逃げ延びた時の回想でもするとしよう。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:08:07.83 ID:hADlD7/JO
(;'A`)「どうすんだよこれっ!?」

( ^ω^)「どうもこうも、走って逃げるしかないお」

さいですか。
それよりこの津波は何処まで襲ってきやがるんだ?
今はまだ木々が茂った獣道だが道路まで来てみろ。
俺の家から最短距離にあるコンビニが潰される可能性だってある。
そうなったら毎週楽しみにしているヤンマガの購読もままならなくなるんじゃないか?

( ^ω^)「僕はヤンマガよりヤンジャン派だお」

そこ、心を読むな。

(;'A`)「お前の趣味はどうでも良い! そんな事よりこの津波は何処まで追って来るんだっ!?」

( ^ω^)「僕はヤンマガよりヤンジャン派だお」

そこ、心を読むな。

(;'A`)「お前の趣味はどうでも良い! そんな事よりこの津波は何処まで追って来るんだっ!?」

( ^ω^)「目測で丁度この道を抜けるくらいだお」

それを聞いて俺は前方を見据える。
それなら丁度あと二百メートルってところか…

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:11:10.22 ID:hADlD7/JO
それなら服は汚れるだろうが死ぬ事は無いだろう。
ここはその場で波に備えた方が……

( ^ω^)「言い忘れてたけど……」

(;'A`)「あっ?」

俺が足を止めかけていると、不意に内藤が話しかけてきた。

( ^ω^)「その波に呑まれてただで済むと思うなお。これは言わば腐敗の波、普通の水とはわけが違うお」

言い終えて内藤は口の端を上向きに歪める。
それを聞いた俺はと言うと……

(#゚A゚)「ああぁぁああぁああっ!!」

疾走。
今までの五割増しのスピードで駆け抜ける。
体中から吹き出る汗、いやもうここまで来ると汁だろう。
俺は吉野屋の牛丼つゆだくにも負けず劣らずの量の汁を撒き散らして駆け抜けた。

(#゚A゚)「のっぴきならねえぇぇっ!! 目覚めろぉおっ! 俺の潜在能力うぅぅううっ!!」

( ^ω^)「おっおっおっww」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:15:12.13 ID:hADlD7/JO
(#゚A゚)「うおぉぉぉおおおっ!!」

獣道を抜ける数歩手前で俺は空中ヘッドスライディングを決めた。

(#゚A゚)「ぉおおおおっ!!」

僅かな滞空時間は地面との接触で終わりを告げ、俺の身体に衝撃が走る。

(;'A`)「波はっ!?」

不格好な着地を終えて息をつく間も取らずに俺は後ろを振り返った。

( ^ω^)「これはちょっと僕の足じゃ逃げ切れそうもないお」

丁度俺の立ち位置から百メートル程の場所で内藤が立ち止まっている。

(;'A`)「おいっ!!」

( ^ω^)「まぁ見てろお」

俺の怒号を制して内藤は右手を上げた。
すると例の如く蝿達が内藤の元に集ってゆく。
何をする気なんだ?

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:18:03.93 ID:hADlD7/JO
( ^ω^)「僕を守れお」

その言葉と共に蝿達が内藤の周囲を取り囲む様に集まってゆく。

('A`)「えっ?」

丁度蝿達がドーム状の形を成したと同時に波は内藤を飲み込んだ。

俺はただその光景を呆然と眺める。
アイツ俺と一緒に走って逃げてたよな?
『どうもこうも、走って逃げるしかないお』とか言ってなかったか?

俺があらゆる疑問を解決しようと考えていると俺の足元の一メートル手前で波がひいていくのが見えた。
それを見て俺は我に帰る。

(;'A`)「内藤っ!!」

俺の叫びを聞いたからか、波に呑まれた後なおも残っていた蝿のドームは消えるように崩れ落ちた。

( ^ω^)「呼んだかお?」

(#'A`)「おい」

そりゃねぇぜ内藤よ。
さっきまでの死ぬような思いは何だったんだよ。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:21:03.10 ID:hADlD7/JO
('A`)「一つ二つお前に聞きたい事がある」

( ^ω^)「なんだお? 同志の無様なヘッドスライディングが見られて気分が良いから何でも答えてあげるお」

コイツは俺の神経を逆撫でるのが趣味らしいな。
そんなけったいな趣味を持つのはどこぞのしょぼくれ眉毛だけで良いってのに。

('A`)「先ず一つ目、お前は何故『どうもこうも、走って逃げるしかないお』なんて言いやがった?」

( ^ω^)「気分」

即答だなおい。

('A`)「二つ目、何で俺を同じ方法で守ろうとしなかった?」

( ^ω^)「気分」

もう駄目だ。
俺の脳内で怒りメーターが振り切って一回転するのが分かる。
これは俺が何をしてもバチは当たらないだろう。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:24:04.19 ID:hADlD7/JO
('A`)「内藤、ちょっと来い」

( ^ω^)「おっおっ」

ニヤけ面を絶やさないまま、俺の元へ歩み寄ってくる。
コイツは微塵の悪意も感じずにあんな事をやってのけたのか?
まぁ良い、俺がやる事は一つだけだ。

(#゚A゚)「お前の気紛れで俺を振り回すんじゃねぇぇええっ!!」

右の拳を固く握り、振りかぶる。
範囲俺の前方一メートル弱、対象内藤ホライゾンの顔面。
俺はその拳を薄汚いニヤけ面に向かって走らせた。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:26:27.52 ID:hADlD7/JO
('A`)「以上、回想終わりっと…」

( ´∀`)「鬱田、今何か言ったモナ?」

おっと…
口に出てしまったみたいだな。

('A`)「何でもないですよ」

普段は俺みたいな生徒に関心など持たないくせにこんな時だけ聞いてやがるのな。

結果から言うと俺の拳が内藤に届く事は無かった。
お得意の蝿達の妨害さえ無ければ俺のストレスと怒りも少しは晴らされただろうに、八百万の神々は一体全体何をしているのだろうか。
ベルゼブブを野放しにするまでは一万歩譲って許してやろう。
だがそのせいで内藤に振り回される俺のストレスの捌け口まで奪う事は無いんじゃないか?

全く……

('A`)「神も仏もあったモンじゃねぇな」

( ´∀`)「そう思うなら寝ないで授業を受けるモナ。神様が何とかしてくれる程世間は甘くないモナよ?」

おー べりーしっと…

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:30:24.66 ID:hADlD7/JO
それからというもの。
俺はモナー教師の言葉をいつもの二割増し神妙に受け止め、今日くらいは真面目に授業を受けるかなどと思うがその志は二限目の半ばでへし折られ、例の如く昼休みに目覚めのであった。

('A`)「内藤の野郎め…」

(´・ω・`)「内藤がどうかしたのかい? 今日はやけに独り言が多いね」

俺は今これまた例の如く、しょぼくれ眉毛と共に昼食をとっている。
いつもと違うといったら弁当のオカズに唐揚げが乗っている事ぐらいか。

(´・ω・`)「最初はあんなに毛嫌いしてたのに内藤に対する見方が変わったみたいだね」

そりゃそうだ。
お前も俺と同じ状況に陥ってみろ。
そうすりゃ俺の気持ちも少しは分かるだろうよ。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:33:14.29 ID:hADlD7/JO
('A`)「まぁ否定はしねーがな」

そう言うと俺は教室の隅でモララーとビロードにサッカーボールにされている内藤に視線を移した。

( ・∀・)「おらっ! ボールなんだからちゃんと吹っ飛べよwww」

( ><)「wwwww」

( ;ω;)「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

色んな意味で下らねーな。

まぁこんな状況を作り出した内藤の言動にも慣れてきた。
殺人とは無縁の環境で過ごしていた少し前の俺が今の俺を見たら何て言うんだろうな。

('A`)「内藤も色々と思う事があるんだろうよ。それをないがしろにして邪険に扱うのもどうかと思ってな」

(´・ω・`)「でもこの現状から内藤を助ける事はしない、と」

('A`)「ったりめーだ」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:36:32.18 ID:hADlD7/JO
最後に残しておいた唐揚げを箸で転がしながら俺はぶっきらぼうに答えた。

(´・ω・`)「まぁ君が下らないいじめに同調しなくなるのは僕としても喜ばしい事だよ」

後が怖いからな。
しかしきっかけはどうあれ俺が内藤に慣れ、邪険に扱う事をしなくなったのは事実だ。
俺はとっておいた最後の一個である唐揚げをしょぼくれの弁当箱に移す。

('A`)「やるよ」

(´・ω・`)「こりゃ驚きだ。人情の欠片も無い君が僕にオカズをくれるなんて」

天地がひっくり返っても内藤に慣れる事は無いと思ってたがそうでもないらしいからな。
初めて内藤の力を見た日の朝、俺の中で勝手に定めた賭けだったがまぁ良いだろう。

('A`)「その人情の欠片も無い俺がくれてやった唐揚げだ。時価数億円と思って食いやがれ」

(´・ω・`)「はいはい」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:38:44.42 ID:hADlD7/JO
そうこうしている間に昼休みは終わりを迎えた。
俺はというと食後の睡魔と格闘する事を諦め、五限目の半ばには机に突っ伏して眠っていた。

(´・ω・`)「起きろっ!」

(;'A`)「うおっと!」

しょぼくれの拳骨で俺は目を覚ました。
時計なんざ見る必要も無い。
どうせ帰りのホームルームも終わってるんだろ?

(´・ω・`)「何悟ったような顔をしてるんだい? またまたお客さんだよ」

('A`)「ぁんだって?」

津出 麗子の時と違って今回は全く身に覚えがない。
何処のどいつだ? わざわざ俺に接触したがるような物好きはこのしょぼくれと内藤だけで充分なんだがな。

( ´_ゝ`)「うぃーっす」

そこには学校指定のブレザーをだらしなく着崩した長身ロン毛の男子生徒がいた。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:41:05.30 ID:hADlD7/JO
('A`)「誰だ?」

(´・ω・`)「さぁ? 君の知り合いじゃないのかい」

俺にはこんなだらしのない知り合いはいないがな。
まぁ本人に聞くのが良策だろう。

('A`)「どちらさん?」

( ´_ゝ`)「おぅ、いきなりで悪かったな。俺は三年の流石 兄者ってもんだ」

やけに馴々しく話す奴だな。
この手の人間は扱いを間違えると面倒な事になりかねない。
ここは無難な返答だけしておこう。

('A`)「で、その流石先輩が俺に何のようですか? 恨みを買うような事をした記憶は無いんですけど…」

(; ´_ゝ`)「やけにツンケンしてんな。別に喧嘩売りに来たわけじゃないんだから肩の力抜けよ」

('A`)「そりゃ失礼。上級生と話す事なんて滅多にないからちょっと緊張してたみたいです」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:44:04.01 ID:hADlD7/JO
( ´_ゝ`)「そりゃ悪かったな。んじゃ話を戻すがお前委員会の仕事、二年になってから一回も参加してないだろ?」

('A`)「委員会?」

何のことやらさっぱりだ。
わざわざ放課後に活動するような面倒な委員会に参加した覚えはないぞ?

(;´・ω・`)「あっ!」

隣りにいたしょぼくれが間抜けな声をあげる。
いきなりどうしたんだこいつは。

('A`)「どうしたんだ?」

(;´・ω・`)「君が丁度休んでた時だ。誰もやりたがらないからモナー先生が消去法で君を美化委員に選んでたよ」

('A`)「はぁ?」

( ´_ゝ`)「そゆこと。んでお前が一回も活動に参加しないから委員長がついに痺れをきらして俺に連れてくるよう命令したんだ」

何で俺の知らないところでこんな話が進んでるんだ。
これはモナー教師に直談判願うしかないんじゃないか?

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:47:29.24 ID:hADlD7/JO
('A`)「見逃してくれません? 明日にでもモナー先生に言っときますから」

( ´_ゝ`)「そりゃ無理な相談だ。弟者をこれ以上待たせると後が怖いからな」

('A`)「弟者?」

( ´_ゝ`)「あぁ、俺の双子の弟でね。美化委員長は弟者がやってるんだ」

双子という単語を聞いて思い出した。
そういやこの兄弟はこの学校じゃ有名だったな。
まさかあの『奇天烈流石兄弟』の片割れと会話する事になるとはな。
まぁ珍妙なのは今俺の目の前にいる兄者だけで、弟者の方は文武両道を兼ねたパーフェクト超人だという話を小耳に挟んだ気がするが……

('A`)「先輩があの『流石兄弟』の片割れだったとは……」

(* ´_ゝ`)「なになに? 俺ってそんなに有名なの? 裏で女の子達にキャーキャー言われちゃってる感じ?」

残念、そりゃ流石 弟者の方だ。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:50:05.34 ID:hADlD7/JO
(´・ω・`)「じゃあ僕は失礼するよ」

(;'A`)「待てっ! こうなったらお前も道連れだ!!」

俺はしょぼくれの肩を掴みにかかるがそれはものの見事に躱された。

(´・ω・`)「そっちの人があの流石 兄者さんって事は色々と面倒な事になりそうだ。今度この詫びはするよ」

しょぼくれはそれだけ言うと足早に去っていった。

( ´_ゝ`)「何だ…俺がいたら何か起こるのか?」

起こるから逃げたんだろうが。
噂によればこの男、一時期ありとあらゆる部活動に参加していたらしいな。
それだけならまだ良い。
問題は流石 兄者が参加した全ての部活が活動の一時停止を余儀なくされたって事だ。
詳しい事情は知らないがこれから俺に起こる事を考えると胃が痛くなる。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:53:03.91 ID:hADlD7/JO
('A`)「起こるんじゃないですか? 流石先輩の変な噂は多いし」

( ´_ゝ`)「兄者で良いよ。それにしても失礼なやつだったな。今度会ったら俺が通信空手で極めた必殺パワーボムをお見舞いしてやろう」

そんなプロレスの大技を教える空手の流派があるなら是非俺もご教示願いたいね。
天龍同盟創始者、天龍 源一郎も真っ青だ。

('A`)「はぁ……もうそろそろ行きませんか?」

( ´_ゝ`)「? 何でそんなに落ち込んでんの? 悩みがあるならお義母さんに話してごらんなさい」

('A`)「貴方に生んでもらった記憶はございません。これ以上無駄な会話を続けるなら俺も帰らせてもらいますよ?」

( ´_ゝ`)「つれないやつだな。そんなんで生きてて楽しいか? 俺だったら絶対楽しくないね」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:56:08.28 ID:hADlD7/JO
('A`)「先輩ほど楽しそうに生きてる人も少ないと思いますよ」

(´<_` )「そりゃそうだ。こいつは自分にとって都合の悪いものは全て視界から外して生きてるからな」

(* ´_ゝ`)「わーい褒められちった。たまには弟者も良い事言うじゃないか……って!」

(; ´_ゝ`)「弟者っ!?」

(´<_` )「相変わらず喜んだり驚いたり忙しいやつだな。ちなみに俺はお前を褒めた記憶は無いぞ?」

いつの間にか兄者の後ろで会話に混じっていた男が顔を出す。
それにしても顔は元より髪型や身長まで似通ってやがるな。

('A`)「えっと……流石 弟者さんですか?」

(´<_` )「正解。状況から察するに君が鬱田 毒男君だね?」

兄の方の馴々しさとは違った、まぁ良く言えばフレンドリーな声色だ。
なるほど、同じ顔なのに何故こっちの方が人気度が高いのが理解出来る。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 22:59:03.75 ID:hADlD7/JO
( ´_ゝ`)「なんで弟者がこんなとこにいるんだ?」

横から会話に割って入る兄者。
その表情は随分納得のいかなそうなものだ。

(´<_` )「じゃあ逆に聞こうかクソ兄者。お前こそなんでこんなとこにいるんだ?」

(; ´_ゝ`)「えーっと……たしか俺の下駄箱の中にラブレターが入ってて…」

(´<_`# )「妄想と現実を混同させるな。素直に謝ってけば良いものを…」

(; )%_ゝ`)「ぎゃああぁぁっ!! ごめんなさあぁぁいっ!!」

(´<_`# )「もう遅いわ! 食らえっ母者仕込みのキーロックウゥゥッ!!」

兄弟仲のよろしいことで……
俺はそれから十分間ほど続く流石 弟者による流石 兄者の為の一方的な私刑を遠目に眺めていた。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 23:02:07.38 ID:hADlD7/JO
弟者の一方的私刑は兄者の『弟者あかん! それパイルドライバーやないでエメラルドフロウジョンやっ!』という悲痛の叫びにより幕を閉じた。

(´<_` )「さてドクオ君。委員会活動の事で要件があるんだが…」

('A`)「兄者先輩から聞きました。とりあえず今日は参加しときます」

委員長自らお出ましとなりゃ下らない言い訳が無意味なのは火を見るより明らかだしな。

(´<_` )「なんだ。要件は伝えてたのか。それならそうと早く言えばいいものを……」

( ⊃_ゝメ)「私もうお婿にいけないっ!うっぐすっぐす」

俺の半径一メートル以内に入って欲しくない人種だが遠目に見ていてこれほど飽きないやつはそうそういないな。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 23:05:43.00 ID:hADlD7/JO
('A`)「まぁこの人はほっといても問題無いと思いますよ。そろそろ行きましょうか」

(´<_` )「違いないな。こんな珍獣はほっとくとしよう」

そこまで言うと俺達はボロ雑巾のようになって床に突っ伏している兄者を踏み越えて教室から出ていく。

(# ;_ゝ;)「俺が何をしたっていうんだっ! 何この扱い!? もしかして俺って生まれた事自体が罪だった!?」

なにやら後ろから悲鳴に近いような叫びが聞こえるがまぁ気にする事でもないだろう。

(´<_` )「まぁ全て兄者が悪いというわけでは無いがあの立ち振る舞いを見ていると無性にブン殴りたくなるんだよな」

振り向きもせずに弟者が呟く。
まぁ気持ちは分からんでもないよ。
アンタとは何故か分からないが上手くやっていけそうな気がする。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 23:08:10.55 ID:hADlD7/JO
兄者の悲痛の叫びが聞こえなくなった辺りで俺は今一番会いたくない人物に出会ってしまった。

( ^ω^)「………」

('A`)「内藤……」

(´<_` )「なんだ友達か?」

俺の呟きを聞き逃すことなく弟者が尋ねてきた。

('A`)「まぁそんなとこです」

友達というより『王将』と『歩』みたいな関係だがな。
弟者は俺の返答に対して、そうか…とだけ返し、内藤に歩みよっていった。

(´<_` )「三年の流石 弟者だ。ドクオ君の友人である君とも後々顔を合わせる機会があるかもしれん。よろしく頼むぞ」

高校生がするような挨拶とはかけ離れた言葉を吐き終えると弟者が手を差し出した。
握手を求めてるってとこだろう。

一方内藤はというと、白けた表情で弟者を一瞥すると、差し出された手に応える事なくぼんやりと前を見据えていた。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/25(水) 23:12:31.73 ID:hADlD7/JO
(´<_`; )「まぁ良いだろう。とりあえずドクオ君は借りていくよ」

( ^ω^)「勝手にしろお」

俺も人の事言えたもんじゃないがそりゃ無いんじゃないのか?

(;'A`)「なにイラついてんだよ」

( ^ω^)「別に……」

なんだ、らしくねぇな。
俺達の言葉などとうに耳に入ってはいないようで、内藤はひたすら俺達が歩いてきた方向を見据えている。

(´<_`; )「俺何か気に障るような事をしたか?」

弟者が内藤に聞こえないように耳打ちしてくる。
俺にも何がなにやらさっぱり理解出来ん。
俺が肩をすくめて溜め息をつくと、弟者はそれを見て俺の心中を察したらしく、身を引いた。

('A`)「じゃあな」

( ^ω^)「………」

なんだか嫌な予感しかしないな。
頼むから俺の心労を増やす事はしないでくれよ?


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