( ^ω^)蝿の王のようです('A`)

4 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 19:04:30.42 ID:dFu5FnN8O


第八話「異端の中の凡庸なる異端」



5 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 19:07:07.21 ID:dFu5FnN8O
(´<_` )「さて……と、受け取れ兄者」

( ´_ゝ`)「あいよ」

弟者が懐から内藤を刺した物と同じ型のナイフを二本取り出し、その内一本を兄者に投げ渡した。

( ゚ω゚)「そんな玩具が二度も通用すると思っているのかお?」

(´<_` )「一度は効いた、ならば無意味では無い筈だ」

( ´_ゝ`)「何もせずにくたばるぐらいなら危険承知でここまで来ないさ」

('A`)「危険を予知していた……?」

何故だ?
確かに呼び出しの時間帯などを考えると不自然だったかもしれない。
だが尻尾を掴まれるような発言は一度もしなかった筈だぞ?

(´<_` )「不思議そうな顔をしてるなドクオ君」

(* ´_ゝ`)「隠してたつもりみたいだったけどバレバレユカイなのよねーん」

7 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 19:19:05.67 ID:dFu5FnN8O
(´<_` )「まず一つ、君はこんな時間に先輩を呼び出すような常識の無い人間ではない、まだ一日の付き合いだがそれぐらいは分かる」

ナイフを手の中で弄びながら弟者が言う。
だがその視線は常に内藤に向けられている。
そう簡単に隙は見せないつもりだな。

( ´_ゝ`)「二つ目、一つ目の理由を踏まえるとこの呼び出しは単にお前の私情によるものじゃあ無い事が分かる」

なるほどな。
この短い間にこの二人はここまで俺の人間性を見ていたのか。

(´<_` )「とりあえずこの二つの理由から俺は護身用にナイフを持ち込む決断をした」

( ´_ゝ`)「俺がミリタリーマニアで良かったよ、普段は観賞用でしかないこのナイフのお陰で一人の友達を救えるんだ」

8 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 19:22:04.60 ID:dFu5FnN8O
('A`)「納得出来ませんね」

(´<_` )「それはそうだろうな、だが三つ目の理由は内藤ホライゾンだ。これで少しは同意出来るだろう?」

どういう事だ?
この二人と内藤が接触したのは学校での一回きりじゃないか。

ん?……まさか……

('A`)「……っ!」

(´<_` )「気付いたみたいだな」

( ´_ゝ`)「俺達は兄弟だ。ソイツが俺達二人にとった態度が違う事ぐらい同じ屋根の下にいるんだから話しはするさ」

(´<_` )「さらに俺が見た時のソイツはかなり嫌な雰囲気を醸し出していたからな。君からの呼び出しを聞いて、まず内藤ホライゾンの顔が浮かんだよ」

('A`)「そこまで分かっていて何故来たんですか?」

俺にとってこの二人の存在はかなり大きい。
だがこの二人から見て俺は大勢の中の一人じゃないのか?

9 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 19:25:04.74 ID:dFu5FnN8O
(´<_` )「それが四つ目の理由だ。言え兄者」

(; ´_ゝ`)「俺が言うの!? 恥ずかしいからお前が言えよ!」

何やら二人がむず痒そうな表情をしている。
四つ目の理由とは何なんだ?

( ´_ゝ`)「まぁいいや、良く聞けよ。俺達はお前が抱える懸案事項を解決する為に来た。一先輩として……」

(´<_` )「大事な友人としてな」

('A`)「………」

本当に良い人なんだなこの二人は。
眩しい、眩し過ぎるよ。
そして今俺はこの二人を殺そうとしているのか……

( ゚ω゚)「下らねーお」

たった一声。
獣が唸るようなそれは一気にこの空間を支配した。

( ゚ω゚)「大事な友人? お前を救う? ちゃんちゃらおかしいお」

内藤の声は俺の中に芽生えつつあった希望を容赦無く駆逐していく。

10 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 19:28:36.21 ID:dFu5FnN8O
( ゚ω゚)「ドクオは優秀な僕の手駒だお。お前達如きに籠絡されてたまるかお」

(´<_` #)「貴様っ!」

( ゚ω゚)「第一お前達に何が分かる? ドクオは今まで人に絶望し、人と距離を置いて生きてきたお」

( ゚ω゚)「お前達には可愛い後輩に見えるかもしれないお。だけどドクオは既に間接的に人を殺したお」

( ゚ω゚)「コイツは僕と同じ人間脱退者……もう僕とドクオは元に戻れない所にいるんだお!」

俺の心を的確に踏みにじる内藤の言葉。
だがコイツが言っている事は全て真実なんだ。
(´<_` )「戻すさ」

( ゚ω゚)「その発言がみにじる内藤の言葉。
だがコイツが言っている事は全て真実なんだ。
(´<_` )「戻すさ」

( ゚ω゚)「その発言がお前達のエゴだと分からないのかお!? 偽りの希望なんか見せられても辛いだけだお!!」

13 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 19:31:09.56 ID:dFu5FnN8O
(´<_` )「偽りなどではない、ここで証明してみせるさ!」

弟者は言い終えると同時に腰を低く構え、直線的に内藤目掛けて突っ込んでゆく。
両手で握りしめられたナイフが今にも標的を貫こうとしている。

(´<_` #)「はっ!!」

銀色の刃が的確に内藤の左胸を貫いた。

( ゚ω゚)「甘いお」

刺されて箇所が蝿に変わり、ブレてゆく。
全身が蝿に変わり、弟者が勢いあまってすり抜けると同時に再び内藤の姿が再構築された。

:.:^ω^)「魔王の力……甘く見て貰っちゃあ困るお」

そう、内藤にはこれがある。
刺突、爆発、腐敗と最強に近い攻撃力も充分な脅威だが、何よりも恐ろしいのがこの蝿の鉄壁だ。

(; ´_ゝ`)「何だありゃっ!?」

(´<_` )「ほう、何かからくりがあるようだな」

15 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 19:34:08.02 ID:dFu5FnN8O
取り乱す兄者とは対照的に冷静な様子の弟者。
やはり先陣切って内藤に仕掛けていくだけのことはあるな。

( ^ω^)「考える暇なんて与えないお」

(´<_` )「っ!」

一本の黒い槍が形成され、弟者に襲い掛かる。
内藤と弟者の間に距離は殆ど無い……あれは。

('A`)(当たるぞ……!)

(´<_` ;)「なんのっ!」

弟者は握っていたナイフを盾にして槍を防いだ。
槍とナイフが攻めぎあっているのがこっちからでも分かる。

( ^ω^)「爆ぜろ」

(´<_` ;)「くっ!」

内藤の口は無情にも今の弟者にとって最悪の言葉を紡いだ。

(´<_`;メ)「ぐわぁぁぁぁぁああっ!?」

(; ´_ゝ`)「弟者っ!?」

蝿の爆発は弟者の顔面を焼いた。
内藤の野郎、最初から手加減無しだな。

17 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 19:37:58.91 ID:dFu5FnN8O
(# ´_ゝ`)「内藤ぉぉぉっ!!」

兄者が雄叫びを上げ、駆け出そうとする。

だが……

('A`)「やらせはしませんよ」

(; ´_ゝ`)「くっ! 離せドクオっ!」

そいつぁ無理な相談だ。
この手を離せば俺は間違いなく内藤に殺されるだろう。
アンタ達には本当に感謝している。
だがそれでもまだ俺は自分の命が大切なんだ。

('A`)「今の俺は先輩達の敵ですよ?」

俺は兄者の腕をさらに強く握る。
骨の軋むような音が伝わり、兄者の顔が一瞬苦痛で歪むのが分かった。

(; ´_ゝ`)「俺はお前を傷つけたくないっ! 頼むから大人しくしていてくれ」

('A`)「俺は自分を傷つけたくない。だから先輩を止めます。大人しくするのはそっちの方ですよ?」

19 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 19:40:15.60 ID:dFu5FnN8O
(´<_`;メ)「落ち着け兄者」

(; ´_ゝ`)「弟者っ!? 大丈夫か?」

(´<_` メ)「これを見て大丈夫だと思うか? 頭がじくじく痛みやがる」

表情、言動こそ淡々としているが弟者が負った傷はかなり痛々しい。
顔の左半分が焼かれ、耳は跡形も無く吹き飛んでいる。

( ^ω^)「その傷を負ってまだそんな余裕な態度を取れるのかお? 人間離れも良いところだお」

(´<_` メ)「この傷の代償に分かった事があるからな。むしろ大喜びではしゃぎたい気分だよ」

( ^ω^)「ほう、話してみろお」

(´<_` メ)「お前が最初に放った球体のの爆発と今の槍の爆発、この二つの規模の違いが俺に勝機をくれた」

なるほどな。
確かに頭では分かる、だが実行出来るのはアンタ達ぐらいなもんだぞ?

22 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 19:47:54.72 ID:dFu5FnN8O
すみませんがしばしの間保守をお願いしてもよろしいでしょうか?

25 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 19:55:17.37 ID:dFu5FnN8O
>>10の訂正だけ

( ゚ω゚)「ドクオは優秀な僕の手駒だお。お前達如きに籠絡されてたまるかお」

(´<_` #)「貴様っ!」

( ゚ω゚)「第一お前達に何が分かる? ドクオは今まで人に絶望し、人と距離を置いて生きてきたお」

( ゚ω゚)「お前達には可愛い後輩に見えるかもしれないお。だけどドクオは既に間接的に人を殺したお」

( ゚ω゚)「コイツは僕と同じ人間脱退者……もう僕とドクオは元に戻れない所にいるんだお!」

俺の心を的確に踏みにじる内藤の言葉。
だがコイツが言っている事は全て真実なんだ。
(´<_` )「戻すさ」

( ゚ω゚)「その発言がお前達のエゴだと分からないのかお!? 偽りの希望なんか見せられても辛いだけだお!!」

32 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 21:11:50.63 ID:dFu5FnN8O
(´<_` メ)「お前の蝿の力は刺突、爆発の二つの性質を持っている」

( ^ω^)「大体正解だお」

(´<_` メ)「球体の爆発の規模はかなり大きかったが槍の爆発は俺の頭も吹っ飛ばせないような規模だ。つまりお前の力の全体の要領を十とする」

ここまで聞いた時には俺は弟者が何をしようとしているのかをほぼ理解しつつあった。

(´<_` メ)「お前はその十の中で刺突を三、爆発を七、というように力の性質の割合を変える事によって蝿達の形状を変化させている。違うか?」

( ^ω^)「どうだろうかお」

(´<_` )「肯定の意味と取る。そうなれば後は簡単だ。お前が作り出す蝿達の形状に合わせて致命傷となり得る攻撃だけ避ければお前の攻撃など取るに足らないさ」

33 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 21:14:16.51 ID:dFu5FnN8O
完璧だ。
弟者はこの僅かな間に内藤の力の本質を丸裸にした。
だがそれだけじゃない。
まだ内藤は腐敗の力を見せていないし、弟者の言う通り致命傷だけを避けるにしても常人の反射神経では至難の技だ。

( ^ω^)「ならばこれならどうだお」

内藤が大きく後ろに下がり、右手を翳す。
すると蝿達がその上空に集ってゆき、一つの形を成した。

('A`)「あれは……」

( ^ω^)「ブリューナク『貫く者』……」

津出 麗子にとどめをさした凶刃。
あの時よりもそのフォルムは洗練されていて、刺突のみに特化しているのが分かる。

( ^ω^)「爆発ゼロパーセント、刺突百パーセント、お前にこの槍が避けれるのかお?」

35 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 21:17:14.18 ID:dFu5FnN8O
(; ´_ゝ`)「弟者っ!」

(´<_` メ)「案ずるな兄者、俺は大丈夫さ」

そんな訳ないだろうが。
刺突百パーセント……
内藤のこの言葉が本当なら人間が避けられる筈が無い。
津出 麗子を殺したあの一撃でさえ目で追えるレベルじゃなかった。
もし弟者が避けようとするならそれこそ一貫の終わりだ。

( ^ω^)「ならば受けてみろお」

内藤の視線が真直ぐ弟者を射抜く。
その瞬間、辺りがしんと静まり返ったような気がした。

(´<_` メ)「っ!!」

弟者が内藤目掛けて突っ込んでゆく。
おいおい、そりゃ一番の悪手だろう。

( ^ω^)「死ねお」

内藤の右手がゆっくりと弟者へと向けられた。
弟者は未だに突っ込んでゆく動作を止めようとはしない。

36 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 21:20:06.84 ID:dFu5FnN8O
(´<_`#メ)「はっ!!」

瞬きした時には既に槍は放たれていた。
だがそれ以上に俺が驚いたのは……

( ´_ゝ`)「っ!」

('A`)「……嘘だろ」

(; ^ω^)「そんな……馬鹿な」

弟者が持つナイフの切っ先が槍の先端を寸分の狂い無く捉えていた事だ。
内藤と弟者の間にある距離はほんの僅か。
その状況であの刺突百パーセントのブリューナクを見切ったのか?

(´<_` メ)「おらぁっ!」

ナイフと槍の均衡は弟者の駄目押しによって崩れ、槍は跡形も無く消え去った。

(;'A`)「馬鹿なっ! 人間が出来る芸当じゃないっ!!」

(; ^ω^)「その目は……何を見ているのかお?」

(´<_` メ)「お前が俺に跪く様さ」

本当に人間なのかコイツは?

37 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 21:23:06.66 ID:dFu5FnN8O
( ´_ゝ`)「悪いな」

直後に後頭部に衝撃、身体が言う事を聞かなくなり、俺は地に膝をつくハメになった。

(;'A`)「ぐっ……兄者先輩……」

油断した……!
必死に手を伸ばすがもう遅い、兄者は内藤の元へ駆けてゆく。

(#'A`)「逃がしてたまるかよっ!」

脳の揺れと痛みを気力で振り切り、俺は兄者の後を追った。

(# ´_ゝ`)「内藤ぉぉぉっ!!」

( ^ω^)「っ!」

兄者が放つ一撃が内藤の腹部を捉える……がその部分は蝿に変わり防がれる。

(´<_` メ)「コイツはどうだ?」

一方弟者が反対側でナイフを振りかぶる。
そしてガラ空きの内藤の右目を……

( メω゚)「ぐぁぁぁああっ!!」

捉えた……。

銀の刃は的確に内藤の目を射抜き、脳に届かんばかりに深々と刺さっている。

39 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 21:26:10.68 ID:dFu5FnN8O
( メω゚)「あぁぁぁぁああ゛っ!! 目がぁぁっ! 僕の目がぁぁぁっ!!」

(´<_` メ)「っ! 離れろ兄者!!」

( ´_ゝ`)「合点っ!」

蝿達が瞬時に内藤の周囲に散らばる。
それを見た二人は危険を察知したのだろう、弟者の呼び掛けと同時にその場を離れようとする。

だが……

(;'A`)「させるかよっ!」

俺は瞬時に兄者の背後に駆け寄り、低い姿勢から足払いをかける。
そして蹴りの勢いを殺さぬまま軸足を入れ替え、空中で間抜けな体勢になっている兄者の背中に渾身の回し蹴りを放った。

(; ´_ゝ`)「ぐっ!?」

(´<_`;メ)「兄者っ!?」

( メω゚)「ふおぉぉぉおおっ!!」

腹の底にまで響くような雄叫び。
それと同時に蝿達は爆発してゆく。

40 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 21:29:04.72 ID:dFu5FnN8O
(; ´_ゝ`)「あぁぁぁぁああ゛っ」

完全に意識の外から放たれた攻撃に耐えられるはずもなく、兄者はそのまま爆発に巻き込まれた。
その一部始終を見ていた俺は間近で爆ぜる肉片に対し、言いようの無い嫌悪感を覚えた。

(メ ´_ゝメ)「ぐっ……かはっ…」

酷い有様だ。
もう助からないというわけではなさそうだがそれでも重傷である事には変わりない。
これ以上やるというなら確実に命は無いだろう。

('A`)「少し威力が強いんじゃないのか? 自分が持ち出した条件を忘れたわけじゃないだろうな」

( メω゚)「黙れお」

純粋な悪意のみが込められた視線。
何も知らない人間が見たら失禁モノであろうそれは兄者でもなく、弟者でもなく、俺だけを捉えていた。

41 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 21:32:59.40 ID:dFu5FnN8O
(´<_`#メ)「歯痒いが同意だ。黙っていてもらおうか、ドクオ君」

(メ ´_ゝメ)「まだ戦いは終わってないからな、お前にゃ俺達全員が生き残ったら話がある」

背後から二つの気配を感じ、振り返ってみればボロボロになりながらもなおその瞳に闘う意志を宿す二人がいた。

(´<_` メ)「兄者、無理はするなよ。どちらかが死んだら勝てる勝負も勝てなくなる」

(メ ´_ゝメ)「馬鹿言うんじゃねーですよ。こんな半端で引き下がっちゃあ明日の飯も不味いってもんさ」

( メω゚)「お前達に明日なんか来ないお」

内藤は右目に刺さったナイフを躊いもなく引き抜く。

何故だ、何でなんだ。
内藤は元より、この兄弟もまともな神経じゃない。
ショック死してもおかしくない傷を負ってなぜこうも立ち上がれるんだ?

42 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 21:35:13.16 ID:dFu5FnN8O
内藤はその身に純粋なる異端の力を宿した魔王。
流石兄弟はその身に純粋なる鉄の意志を宿す人間。

各々の力のベクトルに違いはあれど、それは凡庸な一般人が持てる力じゃない。

異端者

じゃあ俺は?
この状況を打破出来る力も無ければ強い意志がある訳でもない。
ただ自分の命の為に、恐怖から逃げる為に、ただ戸惑い焦る常人じゃないか。

三つの異端、一つの常軌。

('A`)「ははっ……そうか」

この中でイレギュラーなのは俺だ。
ようやく理解出来た。
内藤が俺を駒として認めた理由、そして俺が今ここにいる理由。

('A`)「内藤」

( メω゚)「なんだお」

('A`)「頭に血は昇ってないか? 周りはちゃんと見えてるか?」

( メω゚)「僕を舐めているのかお?」

43 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 21:39:44.83 ID:dFu5FnN8O
('A`)「舐められたくないか? もしそうなら俺が教えた計画通りに動けっ!」

(# メω゚)「貴様……っ!」

内藤の殺気が増幅するのが分かる。
だが関係無い、これでコイツが動かなけりゃ遅かれ早かれいつか破綻する運命だ。

('A`)「兄者先輩、取り敢えず俺の相手をしてもらいますよ」

(メ ´_ゝメ)「……良いだろう」

(´<_`;メ)「よせ兄者っ! コイツは何か仕掛けている……ただでさえボロボロなのに自滅するような真似をするなっ!」

(メ ´_ゝメ)「このナイフはお前が持っとけ」

そう言って兄者はナイフを放り投げる。
放物線を描く銀色の光が月明かりに照らされる。

(´<_`;メ)「兄者っ!」

弟者の制止を無視して兄者は一歩前に出る。
これで良い、取り敢えずは計画通りの軌道に乗せられそうだ。

44 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 21:43:24.96 ID:dFu5FnN8O
俺は兄者を誘導するように後退していき、ある場所で立ち止まった。

('A`)「内藤っ! そのナイフをよこせ!!」

( メω^)「……」

内藤は無言で手に持っていた血塗れのナイフを投げる。
ナイフは直線的な軌道を描き、俺の足元に突き刺さった。

('A`)「始めましょうか」

血の滴るナイフを拾い上げ、その切っ先を兄者に向ける。

(メ ´_ゝメ)「……」

俺の呼び掛けに応じて、兄者はゆっくり歩を進める。

(´<_`;メ)「くっ……待て!」

( メω^)「行かせはしないお」

兄者と弟者の間に内藤が割り込む。
どうやら頭は冷えたみたいだな、それでこそこの計画は成り立つってもんだ。

('A`)「さて……」

(メ ´_ゝメ)「……」

最後の懸案事項、どうやってコイツを罠に嵌めるかだな。

45 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 21:46:21.24 ID:dFu5FnN8O
('A`)「……」

ちらりと内藤の方へ目をやる。

(´<_`;メ)「くっ……」

( メω^)「……」

片目から夥しい量の血を流しながら不敵な笑みを浮かべる内藤と、それとは対照的に苦悶の表情を浮かべる弟者が向かい合っている。
弟者の介入に関しては心配無さそうだな。

(メ ´_ゝメ)「……っ!」

('A`)「はっ!!」

顔面を切りつける素早い一撃。
だが俺の右手は兄者の元に届く前に停止する。

(メ ´_ゝメ)「正面から挑んだって俺には勝てんさ」

兄者は俺の腕を握る力をさらに込める。
骨の軋む不快な感触が痛みと共に走った。

(;'A`)「くっ……!」

ナイフを故意に手放し、空中で落下運動を始めているそれを逆の手で掴み、再び兄者の顔面目掛けて切りつける。

46 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 21:49:05.87 ID:dFu5FnN8O
(メ;´_ゝメ)「くっ……」

咄嗟に後ろへ飛び退く兄者。
だが休む暇など与えてたまるか!
俺は目に傷を負い死角になっている兄者の右側へと追い込みをかけ、さらにまた顔面に一撃を放つ。

('A`)「くっ……」

(メ ´_ゝメ)「ぐぬ…ぬ……」

再び咄嗟の反応で止められる。
兄者の手はナイフの刃をがっしりと掴んでいる。
兄者の手からナイフを伝い、血が俺の腕を流れてゆく。
込められた力に躊いなどなく、俺は丸腰の兄者の力に押されつつあった。

だが……

(メ ´_ゝメ)「……っ!?」

俺はナイフから手を離す。
兄者は今まで込めていた力を抑えられず、そのまま前のめりに揺らいだ。

('A`)「ここだっ!!」

俺は全身全霊の力を込めて、低い姿勢から兄者のみぞおち目掛けてタックルをかます。

47 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2009/12/16(水) 21:52:24.77 ID:dFu5FnN8O
(メ ´_ゝメ)「ぐぁっ!?」

そのまま兄者は後方へ吹っ飛んでゆき、地面に叩きつけられた。

(´<_`;メ)「兄者ぁぁぁっ!!」

( メω^)「おっおっおっ! 素晴らしいお」

内藤と弟者の声が聞こえるが今は知ったこっちゃねぇ……あと三メートルだっ!

('A`)「おらぁっ!」

地面に倒れこむ兄者の胸倉を掴んで引き摺り起こし、間髪入れずに顔面にストレートを叩き込む。

('A`)「っしゃあ!!」

胸倉を掴んでいた左手で兄者を突き飛ばし、右手を大きく振りかぶる。

(メ;´_ゝメ)「ぐぅっ!!」

渾身のストレートが兄者の頬に炸裂する。
そのまま兄者は後方へと力無く飛ばされてゆき……地面と接触したところで

(´<_`;メ)「兄者っ!?」

( メω^)「っ!」

('A`)「……」

俺達の視界から消えた。


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