ミセ*゚ー゚)リ変な森のようです

2 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 21:36:10.98 ID:p8yt9Mo9O

 その体はあまりにも小さくて。
 その力はあまりにも弱々しくて。

 ぼくらは自分で、自分を守る事すら出来ないほどに脆弱だ。


 けれどぼくらは悲観しない。


 この小さな体が踏み潰されても。
 ぼくらの仲間が命を無くしても。
 幾度となく握り潰されたとしても。


 それが森の流れと言うなら、ぼくらはそれを受け入れるんだ。


4 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 21:39:11.19 ID:p8yt9Mo9O

 (それはどうして?)

 それが森の流れなら、ぼくはそれに流される。

 (それはどうして?)

 だってぼくらは森そのもの。

 (それはどうして?)

 だってぼくらは森に生きる。

 (それはどうして?)

 だってここから離れちゃいけないから。

 (それはどうして?)

 だって、だって、だって




 あれ、どうして、だろう。


6 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 21:42:07.42 ID:p8yt9Mo9O


 【ミセ*゚ー゚)リ 変な森のようです】


  第四話 『ひよわいもの。』 前編



 誰か教えて誰か助けて誰か見つけて、ぼくらはここに居るんだよ。



8 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 21:45:04.00 ID:p8yt9Mo9O

 ちゃぷん。
 朝の早く、川の底に沈めてあった数本の瓶を、静かに引き上げる小さな手。

 蓋を外して中の様子を見てから、納得したように頷いて
 そっと蓋を元に戻して、寝ぼけ眼の二人に差し出した。


ミセ*゚ー゚)リ「……ん? 何?」

( ノAヽ)「ぎゅーにゅーなノーネ?」

<ヽ`∀´>「バター作るニダ、ウリはご飯の準備するからお願いするニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「バター? 出来るのっ?」

<ヽ`∀´>「出来るニダ」

( ノAヽ)「……もしかして」

<ヽ`∀´>「ん、めっちゃ振るニダ」

(;ノAヽ)「あー……疲れるノーネこれ……」


11 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 21:49:55.82 ID:p8yt9Mo9O

ミセ*゚ー゚)リ「振るの?」

<ヽ`∀´>「振るニダ」

( ノAヽ)「振るノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「こう……ビンを、上下に?」

<ヽ`∀´>「上下にニダ」

( ノAヽ)「振りまくるノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「……よっしゃやるぞ!!」

( ノAヽ)「んあー……だるーなノーネ……」

<ヽ`∀´>「よろしくニダ、ウリはソーセージ焼くニダー」

ミセ*゚ー゚)リ「朝飯のためだよノーネ! バターだよ! パンにつけると美味しいよ!」

( ノAヽ)「あー……はいはいなノーネ……」

ミセ*゚ヮ゚)リ「振るぞー!!」


12 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 21:52:05.10 ID:p8yt9Mo9O

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ

ミセ*゚ー゚)リ

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ

( ノAヽ)

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ

ミセ;゚−゚)リ

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ

( ノAヽ)

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ
  _,
ミセ;゚−゚)リ

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ

( ノAヽ)

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ
  _,,
ミセ;゚−゚)リ


13 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 21:54:09.88 ID:p8yt9Mo9O

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ

( ノAヽ)

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ
  _,,
ミセ;゚−゚)リ「……ノーネ、これ……どんだけ振るの……?」

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ

( ノAヽ)「ノーネたちのチカラだと十分くらいなノーネ」

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ
  _,,
ミセ;゚−゚)リ「……あの、手が…………だるいたい……」

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ

( ノAヽ)「だから言ったノーネ……だるーって……」

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ
  _,,
ミセ;゚听)リ「ぬおおおおおお……」

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ


15 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 21:56:19.36 ID:p8yt9Mo9O

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ
  _,,
ミセ;゚皿゚)リ「んぎぎぎぎぎぎ」

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ
  _,,
(#ノ皿ヽ)「うぎぎぎぎぎぎ」

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ
  _,,
ミセ#゚皿゚)リ「んぬるぁああああああああ!!!!」

 ばしゃばしゃばしゃばしゃ
  _,,
(#ノ皿ヽ)「おうりゃあああああああああ!!!!」




        チーン
ハヒハヒ :ミセ; )リ: :(; A ): ゼヒゼヒ


16 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 21:58:12.08 ID:p8yt9Mo9O

<ヽ`∀´>「あ、出来たニダ? お疲れ様ニダ」

ミセ; )リ「し……しむ……」

(; A )「うで……しむ……」

<ヽ`∀´>「でもこれでバターが出来たニダ、塩を混ぜるニダ」

ミセ; )リ「はひゅっ……ひゅっ……」

(; A )「へひゅっ……ひゅっ……」

<ヽ`∀´>「ネーヨは出来たニダ? おぉ、たっぷり出来てるニダ」

( ´ー`)「ん、余裕だヨ」

ミセ ゚听)リ

( ノAヽ)

( ´ー`)?

ミセ ゚听)リ「……どう、やったの? ネーヨ……」

( ´ー`)「しっぽで持って、振っただけだヨ」


18 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:00:37.64 ID:p8yt9Mo9O

ミセ ゚听)リ ( ノAヽ)

<ヽ`∀´>「ご飯出来たニダー……どうしたニダ?」

ミセ ゚听)リ

ミセ ゚听)リ「ネーヨ、バター係」

( ´ー`)そ

( ノAヽ)「更ににもつもち」
    て
( ´ー`)そ

ミセ ゚听)リ「たまに乗っけて」

( ´ー`)「良いけどヨ……」

ミセ*゚ー゚)リ「朝ごはーん! お腹すいたー!」

<ヽ`∀´>「先に顔洗いなさいニダー」

( ´ω`)

( ノAヽ)「ネーヨ別人になってるノーネ」

( ´ー`)パッ

21 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:03:09.96 ID:p8yt9Mo9O

 焼いたソーセージに固いパンに木の実、使いきった牛乳の代わりに暖かいお茶。
 固いパンは焼いて、あっさりした手作りバターを付ければ
 少しだけ柔らかくなり、香ばしさが食欲をそそる。

 そんな簡単な朝食を終え、身支度をして再び歩き出す四人。

 取り敢えず、集落や村を探してそこで情報を得よう。
 話し合いの末に辿り着いたその結果を、皆で頷き納得し合った。

 ミセリの事情をなんとなく察していたニダーと、初めて知ったネーヨ。
 ネーヨは少しだけ驚いて、まあ良いや、と適当に頷いた。

 どうやら森の生き物は、そういった事に関しては適当らしい。


 ミセリもまた、適当に様々な事を受け入れている。
 普通ならば戸惑う事も簡単に受け入れられるのは、子供だからか。
 この旅を、過酷だと思った事は一度もなかった。

 それは子供特有の柔らかさと、運動神経が良く、体力もある方だからだろう。

 最も、誰もそれには気付いてはいないのだが。


22 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:05:12.64 ID:p8yt9Mo9O

 しかし、ネーヨよりは小さいが、森の人よりも大きな体のミセリ。
 そんなミセリには、ニダーの作る食事は少しばかり物足りない。

 多めによそってはくれるものの、やはり量が足りない。

 ネーヨは顎が強く、岩場と違って多く実る固い木の実なんかを食べられる
 そのお陰でネーヨの腹は満たされるが、ミセリの場合は、そうはいかなくて。


ミセ*゚ー゚)リ グーキュルル

ミセ*゚ー゚)リ「……お腹たんないや」

( ノAヽ)「何か食うノーネ?」

<ヽ`∀´>「んー……ミセリが食べられる柔らかい木の実がないニダ……」

ミセ*゚ー゚)リ「ノーネ達は歯が強いもんねー……こんな事なら鍛えとくんだった」

( ノAヽ)「鍛えれるノーネ?」

ミセ*゚ー゚)リ「わかんない」

(;ノAヽ)

( )´〜`))


24 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:07:14.11 ID:p8yt9Mo9O

ミセ*゚ー゚)リ「あ、そだ! でぃにもらったクッキー残ってるから……」

ミセ*゚ー゚)リ「あり?」

( ノAヽ)?

<ヽ`∀´>?

( )´〜`))

ミセ*゚−゚)リ「……ね、でぃのクッキー……知らない?」

( ノAヽ)「しらんノーネ、ミセリにもらった一個しか食ってないノーネ」

<ヽ`∀´>「ウリも知らないニダ、どっかいったニダ?」

ミセ*゚−゚)リ「うん……あれ、おかしいな……大事に食べてたのに……」


( )´〜`)) ( ノAヽ)

( )´〜`)) (ノAヽ )

( )´〜`)) (ノAヽ;)


25 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:09:04.89 ID:p8yt9Mo9O

(;ノAヽ)(ニダー……ちょっと……)

<ヽ`∀´>(どうしたニダ? 声ちっさくして)

(;ノAヽ)(……ネーヨがモグモグしてるの、なんなノーネ……?)

<ヽ`∀´>(え)


( )´〜`)) <`∀´r>

( )´〜`)) <`∀´r;>


<;ヽ`∀´>(……いや、きっと……木の実、ニダ)

(;ノAヽ)(…………)


ミセ;゚−゚)リ「あれー……ない、落としたのかな……」

ミセ;゚−゚)リ「ねぇネーヨ、そっちの荷物に」


( )´〜`)) セ(゚−゚;リミ

( )´〜`)) セ( − リミ そ


27 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:11:28.14 ID:p8yt9Mo9O

ミセ − )リ「…………ネーヨ、ちょっと……口、あけよっか……」

( )´〜`))
  _,,
ミセ#゚д゚)リ「開けんかいっ!!」
        _,,
(;)´Д`>⊂セ(゚д゚#リミ
  ポロッ γ 。


(;ノAヽ)「あ」

<;ヽ`∀´>「……クッキーの、かけらニダ……」

  _,,
ミセ#゚ー゚)リ「……ネーヨ……いいわけ、聞くよ?」

(;´ー`)「…………ゴメンナサイ」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「ゴメンで済んだら警察いらんわぁああああっ!!」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ=つ);#)Д`)そ「ネバダッ!!」


30 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:13:27.68 ID:p8yt9Mo9O

<;ヽ`∀´>「ま、まあまあ落ち着くニダ!」

(;ノAヽ)「ほら、まだイチマイ…………も、残ってないノーネ……」

<;ヽ´Д`>「ネーヨ……」

(;#)ー`)「わ、悪かったヨ……つい……」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「ついじゃねー! でぃがくれたのにーっ!!」

(;#)ー`)「で……でぃの味が……その……」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「知らん! 歯ーくいしばれー!!」

(;#)Д`)「ご、ゴメンヨっ、悪かったヨ!」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「ミセリの右手が光って唸る!!
     ネーヨを殴れとかがやき叫ぶーッ!!!!」

(;#)Д`)「ヤコブッ!!」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「しゃあぁああああああいにんぐぅっ!!」

(;ノAヽ)「ミセリ! すとーっ! すとーっぴ!!」

<;ヽ´Д`>「ミセリそれくらいにニダーっ!!」


32 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:15:22.37 ID:p8yt9Mo9O

  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「ふぃんがっ」


  すいません、ちょっと通りますよ

       /⌒ヽ
      /´_ゝ`)
      |   /
      |/| |
      // ||
     U  U


  _,,
ミセ#゚Д゚)リ

  _,,
ミセ;゚Д゚)リ!?


35 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:17:31.87 ID:p8yt9Mo9O
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「…………なに……いまの……?」

<ヽ`∀´>「ぬるコぽっぷニダ?」

( ノAヽ)「ゼンリツセンの中の人なノーネ?」

( ´ー`)「ちょっと通りますよかヨ?」
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「あれぇ名前いっぱい!?」

<ヽ`∀´>「突然あらわれて、通って消えてくニダ」

( ノAヽ)「森のちんじゅーのいっぴきなノーネ」

( ´ー`)「たまに居座るヨ」
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「あ……ゆ、有名なんだ…………ひさびさに驚いた……意味不明で」

( ´ー`)
  _,,
ミセ ゚Д゚)リ

(;´ー`)

ミセ ゚−゚)リ

(;´ー`)?


36 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:19:10.03 ID:p8yt9Mo9O

ミセ*゚ー゚)リ「……なんか、どーでも良くなっちゃった」

(;´ー`)「……良いのか、ヨ?」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、どうせ食べたらなくなっちゃうし……ネーヨなら、まあ」

(;´ー`)「……ゴメンヨ」


( ノAヽ)(ゼンリツセンの中の人ナイスなノーネ)

<ヽ`∀´>(ぬるコぽっぷナイスニダ)


ミセ*゚ー゚)リ「そーいやノーネの村にあんな顔の居なかった?」

( ノAヽ)「ふれるなふれるなノーネ」

<ヽ`∀´>「…………あぁ……」


39 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:21:09.98 ID:p8yt9Mo9O

 またも大喧嘩が始まるのかと思いきや、
 森の珍獣のお陰で、何とかその場は収まった。

 ある意味1頭身の珍獣が、草むらから出てきて四人の前を通り
 向こう側の草むらに消えて行ったのを確認してから、四人は再び歩き出す。


 けれどクッキーを勝手に食べた罰、とミセリはネーヨの背中に乗って、
 悠々と楽をしながら進んで行く。


ミセ*゚ー゚)リ「ね、森のちんじゅーって他に何がいるの?」

<ヽ`∀´>「いろいろいるニダ、大きいのから小さいのまで」

( ノAヽ)「ノーネたちからすれば、ミセリがちんじゅーなノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「んだとこんなろ」

<ヽ`∀´>「まあまあ、ニンゲンは珍しいからしょうがないニダ」

( ´ー`)「恐竜もちんじゅーだヨ」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、そうなの?」


40 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:23:29.06 ID:p8yt9Mo9O

<ヽ`∀´>「さっきのや恐竜、小さいのでは森の妖精もいるニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「妖精っ!? かわいいのっ!?」

<ヽ`∀´>「ウリは見た事はないニダ……でもきっとかわいいニダ!」

( ノAヽ)「あー」

ミセ*゚ー゚)リ「ん?」

( ノAヽ)「……アヒャ族も、ちんじゅーみたいなもんなノーネ」

ミセ;゚ー゚)リ「あー……」

( ´ー`)「あと、クラゲ」

ミセ;゚ー゚)リ「くらげ!?」

<ヽ`∀´>「マルタスニム、ニダ?」

( ´ー`)「おうヨ」

ミセ;゚ー゚)リ「ま、まるにた……な、何? 言いにくいよ?」

( ノAヽ)「まーホマホマいいながら歩いてるだけなノーネ、害はないノーネ」

ミセ;゚ー゚)リ「おぉう……見てぇ……」


44 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:26:30.98 ID:p8yt9Mo9O
<ヽ`∀´>「でもマルタスニムもあまり見なくなったニダ」

( ´ー`)「ちんじゅーはそんなモンだヨ」

( ノAヽ)「それもそーなノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「ちんじゅーかー……見たいなー……」

( ´ー`)

ミセ*゚ー゚)リ「色々ね、色々」

( ´凵M) =@ ボッ
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「あぎゃっ!?」

( ´ー`)
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「な、何で吐いた!? いま何で火ぃ吐いた!?」

( ´ー`)「シラネーヨ」
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「こんなろうっ! わざわざ頭持ち上げてミセリ狙いやがって!!」


46 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:28:35.66 ID:p8yt9Mo9O

 きゃいきゃいと騒がしく、それでも楽しげに森を歩く四人。
 時折小さく言い争い、地面を焦がすも楽しそうに笑い合う。

 そして、それを後ろから見つめる、目。

 ぎらりと光るように、ミセリ達の背中を見る。
 それは手の中の物を強く握って、草むらの中から笑って見せた。


  『アヒャッ』


ミセ*゚ー゚)リ「…………ん?」

( ノAヽ)「んー?」

<ヽ`∀´>「どしたニダ?」

ミセ*゚ー゚)リ「ん……なんか、視線? 感じた」


47 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:30:07.91 ID:p8yt9Mo9O

<ヽ`∀´>「視線ニダ?」

( ノAヽ)「なんかいるノーネ?」

( ´ー`)「…………特に、イネーみたいだヨ」

ミセ*゚ー゚)リ「気のせいかな……」


 背中に感じる視線。
 視線の主は草むらに隠れたまま、にたにたと笑う。

 それをなんとなく察したのか、ミセリはぶるりと肩を震わせて身を抱いた。

 辺りを見回してもそれらしいものは見つからず、不思議そうに首を傾げて、
 風邪でも引いたのかな? と、背筋に走る冷たいものを振り払う。


 それらをじとりと見つめていた何かは、するりと森の中へと消えていった。

 木々の隙間から差し込む光が、刃物をぎらり、光らせて。


50 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:32:08.18 ID:p8yt9Mo9O


ミセ;゚−゚)リ(……なーんか、気になるなぁ……)

ミセ;゚−゚)リ(あの感じ、なんか前にもあったような……)

ミセ;゚−゚)リ(……気にしない気にしない)


 ふるふる、と頭を左右に振って、奇妙な感覚を払い除ける。
 けれど心のどこかに引っ掛かる感じが、どうにも離れなくて。

 ぼんやりとした不安に似た何かを抱えたまま、
 ミセリはネーヨの首に、ぎゅうとしがみついた。


 ぐぇ、と小さく悲鳴をあげるも、
 ネーヨもミセリの抱く違和感と同じものを、こっそり抱えていて。

 ミセリの腕を振り払うでも文句を言うでもなく、ただ静かに歩くだけ。



( ´ー`)(あれは……殺気?)

( ´ー`)(…………まあ、気にしたら負けだヨ)


52 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:34:08.13 ID:p8yt9Mo9O

 てっこらてっこら、緑の足が森を歩く。
 小さな森の人の足と、大きな恐竜の四本足。

 赤い靴を履いた足は、恐竜の上でぶらぶらと暇そうに揺れている。

 枯れ木を踏んで、草むらを踏んで、時折生えるキノコ等を目で追い
 八つの足は、てっこらてっこら森を行く。


 ノーネは手ぶらで、肩から小さな袋を下げて。
 ニダーは帽子にマントを身に付けて、猟銃と弾薬を手離さず。

 ミセリはマントに襟巻き、小さなナイフ。
 腰から下げた水筒はそのままで、ネーヨの背中に寝転がる。

 ミセリを乗せるネーヨの背中は、調達した食料や毛布が腰に乗せられ
 それらがネーヨから落ちないように、ロープでしっかと固定済み。


 一人だけ荷物が多くても、ミセリを乗せて歩いても、ネーヨは不満を口にしない。

 体の大きさと力を考えれば当たり前、体力も三人に比べれば桁違い。
 それを理解しているから、ネーヨは何も言わずにのんびり歩く。


54 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:36:13.14 ID:p8yt9Mo9O

 それに、


ミセ*゚ー゚)リ「ネーヨ、あーん」

( ´凵M)

ミセ*゚ー゚)リ「ん、美味しい?」

( )´〜`))゙ コク


 ちょくちょく、こうしてミセリに、木の実なんかを食べさせて貰える。

 それはミセリなりの気遣いでもあり、
 ネーヨの満たされにくい腹には、とても有難い事。

 そう考えると、物を乗せて歩くのも悪くない。


 何か仕事があると言う事は、自分が求められていると言う事。
 それもまた、ネーヨにすれば嬉しい事。

 無駄飯食らいじゃない事に、ネーヨは少しばかり充実していた。


56 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:38:04.74 ID:p8yt9Mo9O

 今の四人は、役割分担がしっかりと決まっている。

 ネーヨは荷物を運び、高い所の物を取ったり、薪に火を点けられる。

 ニダーは独り暮らしが長かった事もあり、料理が上手くて狩りも出来、博識。

 ミセリとノーネはどちらかと言うと、決まった仕事のない雑用状態。

 けれど森の人たるノーネの知識は、何が食べられて何が毒か等がある程度分かる。
 森の人よりは大きなミセリは、知識は無いが薪や木の実を多く運べる。

 そう考えると、チームワークは悪くない。


 同行して、さして時間の経っていないネーヨもうまく馴染めており
 もう、四人は中の誰が欠けてもいけない状態。

 あっと言う間に、四人で行動する事が当たり前になっていた。


 けれどその中でも、少し不安な事はある。


57 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:40:07.16 ID:p8yt9Mo9O

 それは、何かに襲われた時。

 ネーヨはきちんとした攻撃の術を持つ。
 鋭い爪や牙こそ無いが、火も吐けるし尾を振るって攻撃する事が出来る。

 ニダーも猟銃を扱えるので、速さは無いが確実な攻撃が出来る。
 ミセリは使いなれていない小さなナイフ、けれどノーネには、攻撃の術が無い。

 そういったミセリとノーネの弱さもあるのだが、
 一番の問題は、誰もが戦いを知らない事。

 狩りこそしても、身を守る事こそしても、
 自分から、戦う為に攻撃をした事がある者は、一人もいない。


 それは、思いの外、由々しき事。

 もし何かに襲われたら、下手をすれば全滅する事もあり得る。


 それは四人の内、全員が思っている事。
 けれどそんな物騒な事、と誰も口に出せないでいる事。

 まだ誰も、なんとか自分の身を守る程度の力しか持たない。


59 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:42:10.81 ID:p8yt9Mo9O

( ´ー`)

( ノAヽ)「……」

( ´ー`)「…………何だヨ」

( ノAヽ)「あ、ぇ、あぁ……な、なんでもナイノーネ……」

( ´ー`)「……」

( ノAヽ)「……」

( ´ー`)「オイ、お前らも乗れヨ」

( ノAヽ)!

<ヽ`∀´>「ん? ウリもニダ?」

( ´ー`)「そうだヨ」

<ヽ`∀´>「んー…………でも、みんな乗るのは申し訳ないニダ」

( ´ー`)


61 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:44:06.14 ID:p8yt9Mo9O

( ´ー`) ⌒<ヽ`∀´> ヒョイ

<ヽ`∀´>「…………あれ?」

( ´ー`)「チビも乗れヨ」

(#ノAヽ)「んなっ」

<ヽ`∀´>「……なんか勝手に乗ったニダ……」

ミセ*゚ー゚)リ「ネーヨのしっぽて便利だよねー」

( ´ー`)「乗らネーのかヨ、チビ」

(#ノAヽ)「チビっ……二回も言ったノーネ……!」

<ヽ`∀´>「ああ、ウリはしっぽで強制的に……」

ミセ*゚ー゚)リ「良いじゃん良いじゃん、好意はもっちり受け取るもんよ?」

( ´ー`)「乗らネーならイイヨ」

(#ノAヽ)「の……乗ってやらないコトもナイノーネ!」

<ヽ`∀´>「……それもそうニダ、今回は好意に甘えるニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「そーそー、そんかわりネーヨの晩御飯は多めにしたげよね」


62 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:46:02.78 ID:p8yt9Mo9O

( ´ー`)「ハイハイヨ」

(#ノAヽ)「ヌー……」

<ヽ`∀´>「じゃあ晩御飯は何か狩るニダ!」

ミセ*゚ー゚)リ「お、今日はゴーカなご飯だね!」

(#ノAヽ)「ミセリダッコ!」

ミセ;゚ー゚)リ「おぉっ!?」

(#ノAヽ)「ナッコ!!」

<;ヽ`∀´>「キャラ違うキャラ違うニダ」

( ´ー`)「オマエら暴れんなヨ」

(#ノAヽ)「ヌヌヌー……」

ミセ;゚ー゚)リ「ノーネなに拗ねてんのー? もー」

<;ヽ`∀´>「どうしたニダ?」

(#ノAヽ)「オマエらヒトの会話をまったく聞いてないノーネ……」


63 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:48:10.78 ID:p8yt9Mo9O

ミセ*゚ー゚)リ「もー、よちよち。ところでネーヨ、どしたの?」

( ´ー`)「何がだヨ」

ミセ*゚ー゚)リ「珍しいじゃん、みんな乗っけるの」

( ´ー`)「あー」

( ´ー`)

ミセ*゚ー゚)リ

( ´凵M)゙ パカッ

ミセ;゚ー゚)リ「すぐ火ぃ吐こうとすんのやめなさいよ」

( ´ー`)゙ カパッ

<ヽ`∀´>「で、どうしたニダ?」

( ´ー`)「近いからだヨ」

ミセ*゚ー゚)リ「ちかい?」

( ´ー`)「ん」

( ノAヽ)「会話になっとらんノーネ」


66 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:50:05.86 ID:p8yt9Mo9O

( ´ー`)「近いんだヨ、集落」

ミセ*゚ヮ゚)リ「近いのっ!?」

( ´ー`)「ん」

<ヽ`∀´>「でも、こんなとこに集落があるニダ?」

( ノAヽ)「森のドマンナカで、ヒトの気配もナイノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「あー……確かに、集落とかあるなら、この辺りにも生活感あるよね」

<ヽ`∀´>「狩りのコンセキも無いし、キノコも山盛りニダ……」

( ノAヽ)「毒ナシキノコだから……普通は取って食うノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「んんー……声とかもしないし……
     ホントにここら辺に、人が住んでるの? 」

<ヽ`∀´>「ヒトが住んでる様には……」

( ノAヽ)「見えんノーネ」

( ´ー`)「まあヒトでは無いから、しょーがネーヨ」


67 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:52:21.54 ID:p8yt9Mo9O

ミセ*゚ー゚)リ

( ノAヽ)

<ヽ`∀´>


ミセ;゚ー゚)リ (;ノAヽ) <;ヽ`∀´>「はい?」

( ´ー`)「んあ?」

ミセ;゚ー゚)リ「ひ……人じゃない、集落?」

( ´ー`)「ん」

<;ヽ`∀´>「じゃ……じゃあ何の集落ニダ?」

( ´ー`)「んー」

(;ノAヽ)「まさかヘンなのの集落じゃないノーネ?」

( ´ー`)「あー……る意味、ヘンかもヨ」


70 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:54:05.75 ID:p8yt9Mo9O

ミセ;゚ー゚)リ「え、ちょ、ま……こ、怖かったりしない? しない? 襲わない?」

<;ヽ`∀´>「きがいはくわえないニダ? 大丈夫ニダ?」

( ノAヽ)モゲァァァァァ

ミセ;゚ー゚)リ「ノーネ、さくせん ニアおなか しずかに」

(;ノAヽ)「無理言うなノーネ……」

( ´ー`)「まー……たぶん大丈夫だヨ」

<;ヽ`∀´>「だ……大丈夫なら……」

(;ノAヽ)「コンキョコンキョ、コンキョを言えなノーネ」

( ´ー`)

( ´ー`)「恐竜だから?」

(;ノAヽ)「コンキョ!?」

<;ヽ`∀´>「不安いっぱいニダ!!」

ミセ*゚ヮ゚)リ「恐竜すげー!!」

(;ノAヽ)<;ヽ´Д`>「おぉういっ!?」


72 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:56:12.95 ID:p8yt9Mo9O

ミセ*゚ー゚)リ「まあ行ってみなきゃ分かんないしさ、
     ここは取り敢えずネーヨに任せてみようよ」

(;ノAヽ)「バカがせーろんを……」

<;ヽ´Д`>「た、確かに……ここはネーヨを信じるニダ……」

(;ノAヽ)「信じてウラギられたらノーネ怒るノーネ……」

( ´ー`)「なんとかなるヨ」

(;ノAヽ)「テメェ」

ミセ*゚ー゚)リ「何も怖いのって決まったわけじゃないし!」

<;ヽ´Д`>「怖くないのって決まったワケでもないニダ……」

ミセ*゚ー゚)リ「マイナス思考いっくなーい! プラスにプラスにっ!」

(;ノAヽ)「またムチャを…言うノーネ…」

( ´ー`)〜♪


73 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 22:58:16.09 ID:p8yt9Mo9O

 珍しく、三人を背中にのせたネーヨがのちのち歩く。
 川沿いの道から少し外れて、奥へと足を踏み入れて。

 どこか不安そうな顔のノーネとニダーと、逆に楽しそうなミセリの顔。
 そんな面々を乗せるネーヨは、のんびりとした顔で草むらを掻き分けて進む。


 そうして暫く歩いた頃。
 ゆっくりと歩いていたネーヨの足が、ぴたり、止まる。

 揺れが止まり、ミセリ達は少しだけ表情を強張らせた。


ミセ*゚ー゚)リ「……ついた、の?」

( ´ー`)「ん」

<ヽ`∀´>「でも……」

( ノAヽ)「……集落、あるよーには見えないノーネ……」

<ヽ`∀´>「ただの草むら、ニダ?」

( ´ー`)「入れば分かるヨ」


76 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:00:03.27 ID:p8yt9Mo9O

 ネーヨが止まったのは、背の高い草むらの前。

 そこは、ミセリの頭ほどまである高さの草が生い茂り、
 部外者の侵入を拒んで居るようにも見える。

 けれど集落がある様には、見えない。
 人の声も気配も感じず、物音もろくにしない。

 しかしネーヨがあると言うのなら、きっとあるの、だろう。


 ネーヨの背中からするりと降りたミセリは、スカートの裾を撫で付けて
 マントをしっかと握りしめながら、その草むらへと向き直る。

 そして、三人に目配せをしてから一つ頷き、手を伸ばして


 がさり。

 そっとそっと、カーテンの様な草むらを、両手で左右に開いた。


79 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:02:03.05 ID:p8yt9Mo9O


((( ∵)

(∴ )))

 ( ∵)っ゙( ∵)

 ( ∵) (∵ )

⊂( ∵) (∵ )

 (∵ ) (∵ )

  ( ∵)

((( ∴)  (ノ∵)ノ


  _,,
ミセ;゚Д゚)リ!?


81 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:04:05.65 ID:p8yt9Mo9O

 がさり。
 開いていた草むらから手を離し、戻す。

  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「ななななな何じゃありゃあ!?」

(;ノAヽ)「な……なんか、わらわらいた気がするノーネ……」

<;ヽ`∀´>「…………白くて、小さい……なにか、ニダ?」
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「ねねネーヨっ、あれ何!?」

( ´ー`)「森の妖精」
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「ほわっつ!?」

(;ノAヽ)「あー……コダm」

<;ヽ`∀´>「言っちゃ駄目ニダ言っちゃ駄目ニダ」

  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「……」


 がさり。
 もう一度開く。


82 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:06:08.42 ID:p8yt9Mo9O

 _,,
|;゚−゚)リ コソッ

 _,,
|;゚−゚)リ(∵ )

 _,,て
|; − )リ(∵ )

  _,,
ミセ; Д )リ「あみ゙ゃああああぁぁあぁああっ!!!?」

(∵ )そ

(;ノAヽ)「どどどどうしたノーネ!?」

<;ヽ`∀´>「ななな何かあったニダ!?」
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「ビックリした! ビックリしたあ!!」

( ´ー`)「ウルセーヨ」
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「無理なくない!?」


85 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:08:12.77 ID:p8yt9Mo9O

  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「だだだだだだって今! いまぁっ!!」

( ´ー`)「大声出すとおびえるヨ、ほら」


   ( ∵)
  ( ∵)( ∵)
( ∵)( ∵)( ∵) ギチッ

  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「アレおびえてんの!?」

(;ノAヽ)「ごんずいだま……?」

<;ヽ`∀´>「お、おぉう……かたまってるニダ……」
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「てゆうか何!? アレ何!?」

( ´ー`)「だから森の妖精だヨ」
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「なっとくできっかー!!」


87 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:10:09.35 ID:p8yt9Mo9O


 一頻り騒いでから、少しだけ落ち着きを取り戻したミセリ達。

 ネーヨに率いられて草むらの向こうに入ると、
 そこは、本当に小さな小さな集落があった。

 少しだけ開けた空間に、木のウロや根っこの下に存在する、小さな家。
 キノコを机に、並べられた更に小さな食器の様な物。

 まるでオモチャの様な、小さな集落。
 それらは森の人のそれよりも、はるかに小さくて。

 ミセリがつつけば壊れてしまいそうな、そんな脆くて儚い集落だった。


 小さいとは言え、四人がのんびりと座れるだけの空間は存在する。
 ミセリ達はそこに、申し訳なさそうにちょこんと座っていた。


 森の人よりも小さい、森の妖精。
 それは二種類の姿を持っていて、色は白に近い緑と青。

 ネーヨ曰く、緑がビコーズ、青がゼアフォーと言われる種族らしい。


88 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:12:07.44 ID:p8yt9Mo9O

 森の妖精は数が少なく、個体もミセリの手のひらほどの大きさと、小さい。
 それ故に、このごく小さな集落に、森の妖精のほとんどが住んでいるらしい。

 と言う事は、ここに居る森の妖精が、全て。
 この小さな空間にかたまって存在するから、他所では滅多に見る事が出来ないらしい。

 しかし森の人より数も少なく、なかなか見付けられないため
 この森の妖精には謎が多くて、まだ解明されてない事が多い。

 例えばどうやって増えるのか。
 森の妖精には性別がないため、繁殖の方法が森の人とは違う筈。

 しかしそれを調べる術はなく、言葉も分からないので、当人達に聞く事も出来ない。


ミセ*゚ー゚)リ「ほへー……よく知ってんねー……」

<ヽ`∀´>「ウリは勉強不足ニダ……、初めて知ったコトばかりニダ」

( ´ー`)「無理ネーヨ、コイツら見つからネーんだからヨ」

( ノAヽ)づ( ∵))゙


90 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:14:27.50 ID:p8yt9Mo9O

( ∵)

ミセ*゚ー゚)リ

  ( ∵)( ∴)

ミセ*゚ー゚)リ「……驚かせてゴメンね、えっと……ビコーズ? と、ゼアフォー?」

( ∴)

ミセ*゚ー゚)リ

( ∵)っ゙ミセ*゚ー゚)リ チョイチョイ

ミセ*゚ー゚)リ「ん? なーに?」

( ∵)

( ∵)「ゴェェェ」

ミセ;゚ー゚)リ!?


92 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:16:07.54 ID:p8yt9Mo9O

ミセ;゚ー゚)リ「え、え? 何?」

( ´ー`)「歓迎してるみてーだヨ」

ミセ;゚ー゚)リ「あ、そ、そうなの?
     ……言葉がわかんないって、こーゆー事か……」

( ∵)「ゴェェ」

ミセ*゚ー゚)リ「ん? な、何? えと……ビコーズ」

( ∵)゙ コク

ミセ*゚ー゚)リ「よっしゃ合ってた!」

 ( ∴)
<∩`∀´>

( ノAヽ)っ゙(∵ ))゙

 ( ∵)( ∴)゙
( ´ー`)つ


ミセ;゚ー゚)リ「まんきつしてんなー……」


94 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:18:06.83 ID:p8yt9Mo9O

 数十と居る森の妖精が、物珍しそうに四人を囲んでちょっかいを出す。

 食べろと言わんばかりに木の実やキノコを差し出され、
 それらが食べられる物だと確認してから、口へと運ぶ。

 そしてまたちょっかいを出されて、それに応える様に森の妖精を優しくつつく。

 そんな事を何度も繰り返している内に、
 いつの間にか四人は、その場にすっかり馴染んでいた。


 森の妖精は、どうやら人懐こいらしい。

 初めて見たであろう人間にも、突然現れた恐竜や森の人にも大して驚かず
 少しの時間が経てば、警戒を解いて不思議そうにちょっかいを出してくる。

 黒い丸が三つ、三角にならぶだけの、森の妖精の顔。

 その顔を最初に見た時はひどく驚いたが、
 慣れてくると、無表情でもどんな気分か、何を考えているかが少し分かる。

 まるで、無垢な子供の様。
 そんな雰囲気を、森の妖精は持っている。


96 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:20:06.81 ID:p8yt9Mo9O

ミセ*゚ー゚)リ「ビコー?」

( ∵)「ゴェ」

ミセ*゚ー゚)リ「ビコの一番の友達はどれ?」

( ∵)っ    ( ∴)

ミセ*゚ー゚)リ「お、あのゼアフォー?」

( ∵)゙

ミセ*゚ー゚)リ「へー……おいでゼアフォー」

        (∴ )

ミセ*゚ー゚)リ (∴ )))

ミセ*゚ー゚)リ「思ったよりかわいいな、これ……」


98 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:22:22.08 ID:p8yt9Mo9O

  ( ∵)(∴ )

ミセ*゚ー゚)リ「……」

  ゙( ∵)(∴ )゙

ミセ*゚ー゚)リ「見分けつかなくなるよね、これ……」

( ノAヽ)「なるノーネ」

<ヽ`∀´>「見分けは……まだ、つかないニダ……」

=( ∴) )ー`)そ モギョ

<;ヽ`∀´>「ネーヨ……」

ミセ*゚ー゚)リ「なんか目印つけよー、なんかあの子ら気に入った」

( ノAヽ)「めじるし?」


100 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:24:18.01 ID:p8yt9Mo9O

ミセ*゚ー゚)リ「んー……」

ミセ*゚ー゚)リっ($∵) チョイ

ミセ*゚ー゚)リ (∵$)

ミセ*゚ー゚)リ「似合ってるよ、リボン」

($∵)「ゴェ」

<ヽ`∀´>「なんか嬉しそうニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、リボン一個しか持ってないや……まいったな」

( ノAヽ)「しかもそれ、服のリボンなノーネ……」

ミセ*゚ー゚)リ「いーのっ、どーせ胸の飾りとか今はいらないし」

( ノAヽ)「そりゃそうだけど……」

ミセ*゚ー゚)リ「ごめんねゼアフォー、付けてあげられるの無いや」

( ∴)゙ フルル


102 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:26:27.90 ID:p8yt9Mo9O

 ( ∵)
 ( ∴)
<ヽ`∀´>

( ノAヽ)っ゙( ∵))っ゙( ∵))゙

  ( ∴)
 ( ∵)( ∵)
( ´ー`)つ

ミセ*゚ー゚)リ「すげー図」


 森の妖精を乗せたり乗られたりしながら、
 和気あいあいとした、穏やかな時がゆるやかに過ぎて行く。

 ここに来た本来の目的である、
 「元の世界に戻るための情報収集」を忘れながら、四人は今を満喫していて。


 森の妖精との穏やかな時間。
 和やかで、気持ちが落ち着く、優しい時間。


104 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:28:12.70 ID:p8yt9Mo9O

 けれど、


:($∵): ブルッ

ミセ*゚ー゚)リ「ん……どしたの? ビコ」

:($∵):

ミセ*゚ー゚)リ「……ビコ?」

($∵)「ゴェェェェ!!」

ミセ;゚−゚)リ「っ!? え、え、何? 何?」

<ヽ`Д´>「? ……ビコーズ達が、隠れ出したニダ……?」

( ノAヽ)「どーしたノーネ? みんな、いきなり逃げ始めたノーネ」

( ´ー`)「…………」

ミセ;゚−゚)リ「ネーヨ、わかる? ビコ達どしたの?」

( ´ー`)「…………静かに、し」

  _,,
( ´−`)!!


106 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:30:21.94 ID:p8yt9Mo9O

 突然、ミセリ達から離れて木のウロや影に隠れ始めた、森の妖精。

 いきなりそんな行動を取る森の妖精に、
 ミセリやノーネは目を丸くして、どうしたのかと戸惑いを隠せずに居た。

 そして、それらを見つめていたネーヨの顔が険しくなり、
 のそりと寝かせていた大きな体を起こして、自分達が入ってきた草むらを、睨む。


 穏やかで、和やかで、優しくて、あたたかくて
 そんな、そんな、楽しい時間。

 その楽しい時間は、またも打ち崩される。



  (  ゚∀゚ )「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!!!!」



 甲高く、狂気を孕んだ、複数の笑い声によって。


111 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/03/28(土) 23:32:31.93 ID:p8yt9Mo9O

 草むらから飛び出してきたのは、アヒャ族の、群れ。

 赤い森の人であるアヒャ族は、各々の手に鋭利な刃物が握られている。
 それらは光を反射して、ギラギラと生きているかの様に輝いた。


 集落の奥へ逃げようと走る、森の妖精達。
 草むらから現れた、十数人のアヒャ族。

 そして、それらを呆然と見つめる、ミセリ達。


 肩を震わせるミセリは、アヒャ族に敵意を向けるネーヨにしがみつき
 目尻に涙を浮かべながら、首をゆるく、頼りなく、左右に振った。



  「嘘、でしょ…………?」



四話 前編、おわり。


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