ミセ*゚ー゚)リ変な森のようです

3 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:14:09.84 ID:PccjFctRO


 それはオレのなんだから、勝手に遊ぶなよ。

 なあ、おい。


 壊すなよ、それはオレのおもちゃなんだ。

 なあ、オマエら。



 それは、オレのだ。


6 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:17:22.59 ID:PccjFctRO


 【ミセ*゚ー゚)リ 変な森のようです】


  第四話 『ひよわいもの。』 後編

   (閲覧注意)



 良いよ、ならオマエらも壊してやる。



7 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:20:22.52 ID:PccjFctRO


 小さな集落に現れた、アヒャ族の群れ。
 それを見て、呆然とするミセリ達。

 そして、アヒャ族に叩き潰される、森の妖精。


 それは先程まで存在していた和やかな空気ではなく、ただただ、阿鼻叫喚。

 逃げ惑う森の妖精に投げ付けられる刃物。
 千切れ飛ぶ、小さな体。

 緑と茶色の地面が、血のどす黒さに染められて行く。
 溢れんばかりの生臭さと濁った悲鳴、甲高い笑い声。


 これはいったい、何なのだろう。

 これは、いったい、


9 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:23:18.31 ID:PccjFctRO

 目の前で次々と壊されて行く小さな命。

 それを目の当たりにしたミセリは声も出せず、動く事も出来ず、
 ただ、涙を浮かべて肩を震わせていた。


(  ゚∀゚ )「アヒャヒャヒャ!!」

「ゴェェ!」 「ゴェッ」 「ゴブッ……ェ」


 ぐちゃり、ごしゃり。

 壊れて行く小さな生き物、悲しいくらいに小さな断末魔。

 アヒャ族は楽しそうに、意味をなさない虐殺を繰り返す。


 それを呆然と見つめていたニダーが、
 ぎりりと奥歯を噛み締め、ネーヨの背中に飛び乗った。

 そして、その手には猟銃。


10 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:26:10.30 ID:PccjFctRO

 がしゃり。弾をこめた猟銃を構えて、
 たぁん、 と思ったよりも軽い音をさせながら、吐き出される弾丸。


<#ヽ`Д´>「いっ……いい加減にするニダ! ビコーズたちが何をしたニダ!?」

( ´−`)「……無駄だヨ、アイツらは森の妖精、殺したいから殺してるんだヨ」

<#ヽ`Д´>「なっ! ふっ……ざけるなニダ!!」

( ´−`)「…………落ちるなヨ」


 あまりにも理不尽なアヒャ族の行為に、怒りをあらわにするニダー。
 その手は素早い動きで銃の弾を詰め直していて。

 ニダーを背中に乗せたまま、ネーヨがぐるりと体を回し


 どすんっ

(  ∀ )「アギャッ!!」


 アヒャ族の一人を、ぐちゃり、と踏み潰した。


14 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:29:33.57 ID:PccjFctRO

(  − )「……俺は、守るタメに、……殺すヨ」

<ヽ`Д´>「ネーヨ…………ミセリ、ノーネ……ウリも、ネーヨと同じニダ」

(;ノAヽ)「ぇ、あ、ぅ……の、ノーネ……」

ミセ − )リ

(;ノAヽ)「み……ミセリぃ……」

ミセ − )リ「……ミセリ、人、いっぱい殺すかも知んない
     …………ノーネは、それ……怒る?」

(;ノAヽ)「お、怒らない! ノーネ!」
  _,,
ミセ#゚−゚)リ「ならっ……ミセリ、守るんだからッ!!」

(;ノAヽ)「ミセリっ!」

<#ヽ`Д´>「ノーネ、危ないからどくニダ!」

(;ノAヽ)「あ、あぅ……」


15 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:32:19.26 ID:PccjFctRO

 ネーヨから離れて、マントを脱ぎ捨てたミセリが走り出した。
 そしてその勢いで、ビコーズを握り潰そうとしていたアヒャへ

  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「っりゃああああぁぁあぁあっ!!」

(; ∀ )「アギャうっ!」


 見事、顔面に決まったドロップキック。

 アヒャの手から離れたビコーズを掬い上げて、ミセリは踵を返す。

  _,,
ミセ#゚−゚)リ「ノーネ、パス! ビコーズたちお願い!」

(;ノAヽ)「あ、あわっ、わっ! は、把握なノーネ!」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「待てお前らぁあっ!!」

<#ヽ`Д´>「ノーネしゃがむニダ!」

(;ノAヽ)「のぎゃあっ!」

(#´−`)「チビ、そこに居ると踏むヨ!」

(;ノAヽ)「のぎゃーっ!!」


18 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:35:23.67 ID:PccjFctRO

 尾や炎でアヒャ族を下がらせるネーヨ、その背中で的確な射撃をするニダー。
 主に蹴っ飛ばして、アヒャ族から森の妖精を助けるミセリ。

 そして、


   ( ∵)
  ( ∴)( ∵)
三(;∩ノAヽ)つ( ∵)


 そこらに転がる、無事な森の妖精を広い集めて回る、ノーネ。

 戦う事も守る事も出来ないなら、自分は助けよう。
 そう口に出した訳でも、しっかり思った訳でもない。

 けれど必死に森の妖精を守ろうとする三人を見ていたら、
 体が勝手に動き出し、生きている森の妖精を拾い始めた。

 時折アヒャ族に狙われながらも、せっせと森の妖精を拾うノーネ。


 その背後に忍び寄るのは、赤い影。


19 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:38:14.98 ID:PccjFctRO

 草むらに頭を突っ込むビコーズを拾い上げたその時、
 ノーネを狙って鈍く光る刃物が振り上げられ


     ゴゥッ 从 从
       ,;⌒ミ彡~″シ从
(#´凵M),τ彡  彡ミ∀ )そ「アギャッ」
      ヾミ~⌒ミ彡从
       , 从 ⌒,ミ从
         '⌒″ミ从


 た、ところで
 小さな火の玉ではなく、大きな炎を吐き出したネーヨ。

 蛋白質が焦げる嫌な臭いと、短いアヒャの断末魔が集落に広がる。

 自分の背後に突然吐き出された炎に、ノーネはビコーズを抱きながら
 目を白黒させて、その炎を見つめていた。


(;ノAヽ)「の、のぎゃっ!?」

(#´凵M)「アブネーヨ! こっち来い!!」

(;ノAヽ)「わわわ、分かったノーネ! あ、あありがとなノーネ!」


21 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:41:08.68 ID:PccjFctRO

  _,,
ミセ#゚−゚)リ「もぉっ、何なのこいつら!?
     ナイフとか持ってるからあんまり近づけねー!!」

<#ヽ`Д´>「ミセリ、ムチャは良くないニダ!」
  _,,
ミセ#゚−゚)リ「たしょーの無茶しないとどーにもなんないでしょ!」

(#´−`)「けどケガはしないよ、いでっ!」

(;ノAヽ)「のぎゃっ! しっしっ! アヒャしっしっ!!」


 十数のアヒャ族とミセリ達四人。
 ミセリとネーヨの体は大きいが、これは流石に多勢に無勢。

 次々に命を奪われて行く森の妖精、少しずつ怪我をするミセリ達。
 それに比べてアヒャ達は、まだ半数以上がぴんぴんしていた。


23 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:44:17.48 ID:PccjFctRO

 ニダーに撃ち抜かれて死に、ネーヨに踏み潰され、焼き殺されても
 アヒャ族の数はなかなか減らず、変わらず森の妖精を捻り潰そうと手を伸ばす。

 ただでさえ、自分の後ろに生きている森の妖精を避難させたネーヨは
 森の妖精を潰さないようにと大きな動きが出来ず、炎を吐く壁の状態。

 ニダーもまた、いくら素早い動作で弾を詰め直しても
 動き回るアヒャに狙いを定めているのでは、どうしても撃つのは遅くなる。


 逃げ惑いながら森の妖精を助けようと探すノーネは
 それに手がいっぱいで、アヒャを相手にする余裕は無いに等しくて。


(  ゚∀゚ )「アヒャッ! アヒャヒャヒャヒャッ!!」
  _,,
ミセ#゚−゚)リ「るっせぇこんなろぉっ!! ちょーし乗んなあっ!!」

(  ゚∀゚ )「アヒャァッ!!」
  _,,
ミセ#゚−゚)リ「うわっ! っぶねぇなあっ!! ズルいだろそのナイフ!!」


27 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:47:24.74 ID:PccjFctRO

 自分の腰にも存在する小さなナイフ。
 それを使わないように、出来るだけ殺さないようにと走るミセリ。

 何とか自分の体だけで、アヒャ族を退けたい。
 その思いが強いのは、きっとあのアヒャを思い出すから。

 断末魔なんて聞きたくない、血を見るのは本当は嫌。

 けれど大きなアクションで、森の妖精を狙うアヒャの動きを止めていると
 体勢を崩して、アヒャが持つナイフに、体が当たる事もある。
 顔面から転んで、擦り傷をめいっぱい作る事もある。

 それでも、それでも、


 そうミセリは眉を寄せながら、ひたすら森の妖精を守ろうと走り回る。


(  ゚∀゚ )「アヒャヒャッ!」

( ∵)「ゴェッ!」
  _,,
ミセ#゚−゚)リ「てめぇ何してやがるっ! ビコーズ離せぇっ!!」

(  ∀ )「アビャッ!」


29 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:50:22.91 ID:PccjFctRO

 アヒャが森の妖精、ビコーズの首を、ぐいと掴む。

 ビコーズの苦しそうな悲鳴を聞いたミセリは、今までと同じ様に
 駆け寄ってから地面を蹴って、アヒャの顔面を蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされた拍子にビコーズを手放したアヒャ。

 ぽん、と投げ出されたビコーズを両手でキャッチし、
 ミセリはほっ、と小さく安堵の息を吐いた。


ミセ;゚ー゚)リ「良かった、大丈夫?」

( ∵)「ゴェッ」

ミセ;゚ー゚)リ「うっし、んじゃノーネに……」

<;ヽ`Д´>「ミセリ! 危ないニダ!!」

ミセ;゚−゚)リ「ぇ?」



 ざし。


32 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:53:59.07 ID:PccjFctRO
 背中を駆け抜けた、叩かれた様な撫でられた様な、不思議な感覚。

 その感覚が去ってから、少しの間を置いて訪れた物は、
 背中全体に広がる、焼ける様な痛みだった。


ミセ; Д )リ「あっ……が、っ……!!」


 びりびりとした激しい痛みは熱によく似ていて、
 背中、右肩から左の腰にかけてが熱い。

 まるで熱湯でもかけられたような熱い痛みに、ミセリは一瞬、言葉も忘れ
 すぐに両目を見開いて、奥歯をぎりぎり噛み締めなる。

 震える手の上のビコーズを潰さないように、加減をしながら胸に抱き
 目をかたく瞑って、背中で暴れまわる謎の痛みに耐えていた。


 どくん、どくん。

 背中に広がる痛みが、熱を帯びて脈打っている。
 その脈動に合わせる様に、どんどん背中が濡れて行くのが分かった。

 誰かの悲鳴が、少しだけ遠く聞こえる。


35 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 21:57:32.18 ID:PccjFctRO

ミセ; − )リ「ぐっぅ……ぃ、ぎっ…………づ、ぅっ!」

( ∵)「ゴェ! ゴェェ!」


 心配そうなビコーズの声。

 必死に声を殺しながら、ミセリは痛みに叫びたい衝動を抑え込む。
 びりびりした痛みは、次第にずくずくと水っぽい痛みへと変わっていた。

 まるで膿が溜まっている様な、熱い痛み。
 背中からすぐ近い頭へ駆け上る痛みと熱に、ミセリの目に涙が浮かんだ。


 白いブラウスの背中が斜めに大きく裂け、
 ぱっくりと、薄い背中の皮膚が口を開けている。


 痛みに耐えるミセリの耳に、ぼんやりと何かの音と小さな悲鳴が届く。
 けれどそれに反応する余裕はなくて、ただただ体を小刻みに震わせていた。


 ミセリの後ろには、頭を撃ち抜かれて肉片を撒き散らかすアヒャの死体。

 そして、青ざめた三人の姿。


37 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:00:17.37 ID:PccjFctRO

 ビコーズを助け出したミセリの背後に迫っていたのは、アヒャのナイフ。

 それを見たニダーが声を荒らげるも、ミセリは反応が追い付かず
 ぎらりと光るナイフに、背中をずぱりと切り裂かれた。

 その光景に、ひとかたまりになっている三人が上げた悲鳴。
 青ざめるより早く、ミセリが致命傷を負わない様にと引かれた引き金。

 崩れ落ちるアヒャの血と、
 ミセリの背中からどくどく流れる血が、地面で混ざりあっていた。


(;ノAヽ)「ミセリーっ!!」

(;´−`)「ばっ、チビは行くんじゃネーヨ!」

(;ノAヽ)「だってミセリ! ミセリがケガしたノーネ!!」

(;´−`)「オマエがここ離れたらすぐ死んじまうヨ! ミセリこっち来いヨ!!」

<;ヽ`Д´>「ミセリ早く! ええいウリが行くニダ!」

(;´−`)「オマエもアブネーヨ! 死ぬ気かヨ!?」

(#ノAヽ)「ミセリほっとけって言うノーネ!? はくじょーもん!!」

(#´凵M)「オマエはアホかヨ! つうかアホだヨ!!」


39 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:03:13.80 ID:PccjFctRO

(#ノAヽ)「じゃーどうしろってノーネ!!」

<;ヽ`Д´>「仲間割れは後ニダ! 今はミセリを助けるのが第一ニダ!!」

(;´凵M)「あっ、ばっ! 先走んなヨ!!」

(#ノAヽ)「ノーネが行くノーネ! どけデカブツ!!」

(#´凵M)「オマエらはヨォ!!」

<;ヽ`Д´>「ニダッ!? ネーヨ離すニダ!!」

(#ノAヽ)「むぎー! 離せなノーネ!! このオタンコナス!!」

(#´凵M)「じゃあ俺が行くからオマエらこいつら守っとけヨ!!」

(;ノAヽ)「うっ……」

<;ヽ`Д´>「でもウリが居なくても何とかなるニダ! だからっ!!」

ミセ; ー )リ「い、良いからっ! ミセリへーきだし!!」

(;ノAヽ)「へーきなワケないノーネ!! 血ぃ出てるノーネ!!」

ミセ; ー )リ「へーきだからっ! だから、来んな!! そこ居て!!」

<;ヽ`Д´>「ミセリ……っ!」

41 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:06:14.92 ID:PccjFctRO

 自分の背後でもめる声を聞いたミセリが、背中を向けたまま声を上げる。

 ノーネやニダーの気持ちは嬉しいが、
 ネーヨの言う通り、二人がネーヨから離れるのは危険すぎる。

 狩りなどに慣れているとは言え、アヒャ達の前に出るのはニダーには危ない。
 ノーネに至っては自分の身すらしっかりと守れない。

 そんな二人がネーヨから離れて自分の元に来れば、
 あっという間にアヒャの餌食となってしまいかねない。


 そう考えれば、自分の傷は命には関わらない。
 ただ痛いだけ、皮膚と肉を切られただけで、命には別状はない。

 だから、とミセリは無理矢理に笑ってみせる。

 自分は大丈夫だと言えば大丈夫、来るなったら来るな。
 そう強気に言い放ち、いつの間にか地面についていた膝を上げ
 ゆっくり体を持ち上げて


(  ゚∀゚ )「アヒャアヒャヒャヒャヒャッ!!」


 立ち上がろうとしたミセリに、地面を蹴ったアヒャが飛び掛かった。


43 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:09:14.47 ID:PccjFctRO

(;´凵M)「ミセリ避けろーッ!!」

<;ヽ`Д´>「後ろに下がるニダーっ!!」


ミセ;゚−゚)リ「へ、ぇ? ぁ────」


 ぐちゃり。


 背中の次に訪れた痛みは、両手のひら。

 重みと鈍い痛みが、手のひらから手首へ腕へとゆっくり昇って行く。


(  ゚∀゚ )「アヒャッ! ヒャヒャヒャアヒャ!!」


 甲高い、狂った様な笑い声が、頭上から響いた。


46 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:12:10.46 ID:PccjFctRO

 突然、手のひらに叩きつけられた重力。
 手のひらの重みに負けたミセリが、地面にどさりと俯せに倒れ込んだ。

 倒れた時にぶつけた顔や胸、腹が鈍く痛み、ミセリは眉を寄せる。

 俯せていた顔をのろのろ持ち上げると、目の前には赤があった。


 赤。

 両手を踏みにじる、アヒャの赤い足。
 地面に叩きつけられて、赤くなった自分の手。

 そして、アヒャの足の下から覗く何か。


 赤い何かをだらだらと垂れ流す何かは温かく、ミセリの手を汚していた。


51 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:15:15.82 ID:PccjFctRO

 ミセリは倒れたまま、目を見開いて痛む手を凝視する。

 赤い小さな足がどけられて、赤い何かが糸を引いて更にミセリの手を汚す。


 手のひらに残った物は、赤。
 ミセリの大きくはない手のひら。
 その上に広がる物は、潰れた何か。


 水気の多い果物の様に潰れ、その中身をだらりと広げる何か。
 それは少しだけ、ほんの少しだけ、森の妖精の顔を残していて。

 悲しいほどに脆く、小魚の骨みたいに砕けた手足。
 もう動く事が無いにも拘わらず、それらは温かく、ミセリの手を塗らす。


 ミセリががくがくと体を震わせながら身を起こし、地面にへたり込む。

 ぴったりと合わせていた手の側面。

 そっと手と手を離してみれば、
 手の上に広がっていた何かが、地面にべちゃりとこぼれおちた。


54 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:18:13.62 ID:PccjFctRO

ミセ; − )リ「ぁ、あ……ああぁ…………っ」


 喉をひきつらせて、堪えていた涙がぼろりと溢れた。
 頬を塗らす温かい物は血ではなくて、透明な体液。


 ミセリは赤く染まった手をぎゅうと握り締め、
 涙を隠す様に、自分の顔に押し付けた。

 涙と血が混ざりあい、唾液や鼻水もいっしょくたにしてミセリの顔を塗らす。

 顔をくしゃくしゃにして、血まみれの背中を震わせて。
 ひぐ、ひぐ、と嗚咽を洩らしながら、しゃくりあげる。

 もう涙を堪える事は出来なくて、ただただ子供らしい動作で泣くばかり。

  _,,
ミセ ;Д;)リ「あっ、ぁ……あ゙あぁああああッ! うぁ゙あ゙あぁぁああぁあッ!!!!」


55 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:21:17.04 ID:PccjFctRO

(;ノAヽ)「ミセ、リ……」

( ´−`)「今は黙ってろヨ。それより、」

<ヽ Д >「分かってるニダ」

( ´−`)「…………」


 たぁん。軽い音。
 頭を弾き飛ばされ、絶命したのは三匹目。

 銃を持つニダーの手が震えているのは、恐怖か怒りか悲しみか。

 それを何となく察するネーヨは、何も言わずに近付くアヒャをはね飛ばすだけ。
 そんなネーヨにしがみつき、生きている森の妖精と身を縮めて震えるノーネ。


 そして、声を上げて泣きじゃくるミセリ。
 小さな手も背中も顔も真っ赤に染めて、痛みや悲しみに泣き叫ぶ。


 守れない、守れないよ、こんなに小さな命すら守れないよ。


57 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:24:09.89 ID:PccjFctRO

 俯いてしゃくりあげていたミセリが、ようやく顔を上げる。
 そして震える膝を叱咤しながら立ち上がり、ぐしゃぐしゃな顔で辺りを見回す。

 視線の先には、アヒャの群れ。
 奥歯をぎりぎり噛み締めながら、血まみれの拳を強く握り

 アヒャ達目掛けて、走り出す。

  _,,
ミセ ;Д;)リ「ぁあああああぁあぁぁあああっ!!!!」


 涙も止まらないままに走るミセリ。
 それにアヒャが気付いた頃、ミセリは無我夢中で拳を振り上げていた。


 めぎ。とぶつかる拳。
 こちらを振り返ったアヒャの顔にめり込んだ拳は、
 いとも容易く、体の小さなアヒャを宙に舞わせる。

 アギャ、と濁った悲鳴を上げたアヒャは殴られた衝撃で、
 向こう側にあった木に、背中から叩き付けられた。

 それに追い討ちをかける様に振り回される、ミセリの赤くなった拳。


60 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:27:08.34 ID:PccjFctRO

 まるで駄々をこねる子供の様に、どこかを狙うわけでもなく
 ただただ感情に任せて、両の拳を振り回すばかり。

 そんなミセリの攻撃とも言えない様な、幼稚な攻撃。
 けれども殴られているアヒャにしてみれば、ニンゲンの拳はあまりにも痛い。

 自分よりも力が強く、自分よりも大きなニンゲンによる攻撃は
 固くて強くて痛くて、アヒャの体が、少しずつ破壊されて行く。


 へし折られた肋骨に、叩き潰される内臓。

 拳を避けようと腕で顔を覆っても、まるで自棄になったかの様なミセリ
 その拳は、顔を覆う腕ごと顔を殴り飛ばす。

 腫れた顔に、内臓を潰されて吐き出す血と胃液。
 手足はおかしな方向にねじ曲がっていて、腹部からは折れた肋骨が飛び出ていた。


 ゆっくりと殴り殺されるのは、相当な苦痛なのだろう。
 アヒャはその痛み等に絶叫しては血を吐き、抵抗をしようともがいていた。

 けれどミセリはそんな事には気もつかずに、ただ怒りに任せてアヒャを殴り続ける。


61 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:30:12.30 ID:PccjFctRO

 何も考えず、思考を捨てたかの様な顔で拳を振るう。
 その顔は未だに流れる涙に濡れ、怒りに頬を赤くし、悲しみに眉を寄せていた。

 背中が痛む、手も痛む。
 でもそんな痛みはどうでも良い、ただ何かにこの気持ちをぶつけたくて。


(  ゚∀゚ )「アヒャッ!」

(  ゚∀゚ )「アヒャアッ!!」
  _,,
ミセ ;−;)リ「っ!?」


 気持ちをぶつける事に意識を向けていたミセリは、
 すぐ後ろまで迫っていた複数のアヒャの存在に気付くのが、遅かった。


 慌てて後ろを向いた頃には、もうミセリの腹に小さな足が叩き込まれていた。


65 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:33:11.26 ID:PccjFctRO
  _,,
ミセ; Д )リ「ぐっ、ぇ……げほっ……!」

(  ゚∀゚ )「アヒャヒャッ!」
  _,,
ミセ; Д )リ「離、し……っなに……っ!?」

(  ゚∀゚ )「アヒャヒャヒャヒャッ!!」


 腹を蹴飛ばされ、苦しそうに呻きながら膝をつく。

 痛む腹を押さえる左腕を、一匹のアヒャがぐいと引っ張り
 もう一匹のアヒャが、ミセリの体に乗って押さえ付けた。


 息苦しさと、自分の体を拘束すアヒャに抱いた恐怖。

 驚いて顔をあげれば、そこには刃物を構えたまま、地面から足を離すアヒャ。
 地を蹴って高く跳ね、ぴんと伸ばされたミセリの細い腕を狙って。


 だん、と。
 アヒャの一匹が、重力に任せて降り立った。


70 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:36:09.91 ID:PccjFctRO

 一瞬、何が起きたのか分からなくて、ミセリは目を瞬く。

 腕を引っ張られる感覚が無くなって、少しだけ体が傾いた。

 背中に乗るアヒャがするりと降りて、狂った様に笑っている。
 腕を押さえていたアヒャも、ジャンプしたアヒャも、笑い転げる。

 少し離れた場所では、三人の悲鳴ばかり。


 いったい何がおかしいのだろう、何があったのだろう、と
 ゆっくり自分の左腕に、視線をやると。


 そこには、何も無かった。


 腕を押さえていたアヒャが、笑いながら何かを投げ捨てる。
 地面に叩きつけられ、少しだけバウンドしてだらりと転がった物。


 それは、細くて白い、少女の左腕。


75 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:39:24.77 ID:PccjFctRO

 最初に訪れた物は、不思議な喪失感。
 その次には、気が狂いそうな、痛み。

 どくんどくん、左の二の腕が激しく脈打ち、ぶしゅりと血を吐き出した。
 どろどろと溢れ出す血と、逆流する様に腕から肩へと駆け巡る痛みと熱。

 やっとその痛みに気付いた様に、ミセリは白い喉をさらして、大きくのけ反る。

  _,,
ミセ ;Д;)リ「あっ、あぁっ、ぁあぁぁあっ! うわぁああぁあああああっ!!
     ミセリのっ、ああっ! やぁあああああああぁあぁぁあっ!!!!」


 細い喉から発せられる、血を吐くような絶叫。
 まるでバターを切るように、するりと切り落とされた左腕。

 その痛みは今まで感じた事の無い物で、
 ミセリは左腕の断面を右手で掴み、体を丸めて泣き叫んだ。

 どくり、どくり、溢れ出す血の熱さ。
 ミセリの白いブラウスは、もう白が見当たらない程に汚れ果てていた。


78 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:42:24.17 ID:PccjFctRO
  _,,
ミセ ;Д;)リ「でっ……ミセっの……腕っ……!!
     あ゙っあぁああああああっ!! いだっ、い、……っいだいっよぉおっ!!!!」


 体をびくんびくんと跳ねさせて、ミセリは地面に額を擦り付けながら叫ぶ。

 その姿を嘲笑うアヒャ達は、さも可笑しそうに
 げたげたと、苦しそうに笑い転げていた。


 流石に、もう我慢出来ない。
 その辺に落ちていた棒っ切れを片手に、ノーネはネーヨの影から飛び出した。

 それに続いて、ネーヨの上から飛び降りるニダー。
 手には相変わらず猟銃が握られていたが、
 その握り方は撃つ為ではなく、殴る為の握り方で。


(#ノAヽ)「でぇええりゃあああっ!!」

<#ヽ`Д´>「うらぁあああああああっ!!」


79 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:44:19.64 ID:PccjFctRO

 アヒャ達に向かって走るノーネとニダー。

 今まで遠くに居た奴等が突然襲いかかって来た事に驚き、
 アヒャ達はすぐには動けなくて。
 振り上げられた棒っ切れと猟銃で、頭を強か殴られる。

 一度殴らなければ、いや、本当は殺したいほど。
 それくらいをしなければ、腹の虫が収まらない。

 ミセリの悲鳴と、離れていても感じる鉄臭さ。
 信じたくない現実が、その場を覆っていた。


( ´−`)「…………」

( ∵)「ゴェ……」

( ´ー`)「……大丈夫、だヨ……オマエらは、俺が守るんだヨ……」


81 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:46:07.81 ID:PccjFctRO

 その場から離れる事が出来ない、歯痒さ。

 自分が動けばすぐにけりが付くのだろうが、
 動いてしまえば、自分の後ろに避難させた森の妖精に被害が及ぶ。


 自分と言う壁が無くなれば、アヒャ達に狙われる。
 それに、この大きな体を振り回せば、小さな森の妖精を踏み潰す。


 そう考えると、ネーヨは全く動けない。
 傷だらけで泣き叫ぶミセリを、助けてやる事も出来ない。
 必死になってアヒャ達と戦おうとするノーネとニダーと、戦う事も。


(  − )「…………」

( ∵)「……ゴェェ」

(  ー )「俺は、平気だヨ……きにすんなヨ……」

( ∵)「……ゴ、ェ……」


83 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:48:19.61 ID:PccjFctRO

(  ゚∀゚ )「アヒャッ!!」

(メ;ノAヽ)「のぎゃっ!?」

<;ヽ`Д(#>「ノーネっ! 大じょ、っニダ!?」

(  ゚∀゚ )「アヒャヒャッ!!」

(メ ノAヽ)「っ、ううう……ニダー、だいじょぶなノーネ……」

<ヽ`Д(#>「ぐっ、ぅ……やっぱり肉弾戦は苦手ニダ……」


 不意打ちで殴りかかったとは言え、所詮は力の弱いノーネと狩人のニダー。
 普通の相手ならまだしも、このアヒャ達が相手では太刀打ちは出来なくて。

 カウンターで殴り飛ばされるニダーと、刃物が頬を掠めたノーネは
 どさりとその場に転んでしまい、痛そうに顔の傷を撫でていた。

 二人の視線の先にはアヒャではなく、痛みにのたうつミセリの姿。

 早く手当てをしなければいけない。
 けれどアヒャが居ては、手当てなんて出来はしない。


 そうニダーが歯軋りをしていると、
 一匹のアヒャが、木の上に避難しているビコーズを見付けた。


84 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:50:23.22 ID:PccjFctRO

(  ゚∀゚ )「アヒャッ」

($∵)「ゴェ!?」

(  ゚∀゚ )「アヒャヒャヒャヒャ!!」

($∵)「ゴェ! ゴェェ!」


 赤いリボンを巻いたビコーズが乗る木を、がさがさと揺らすアヒャ。
 小さな体を木から落とそうとするその揺れに、必死に耐えるビコーズ。

 木を掴んで笑いながら揺らす、その背中。


 それを歪んだ視界でとらえるミセリが、右手を左腕から離し、地面につける。
 ぐ、と右腕に力を込めて、頭がおかしくなりそうな痛みの中、
 血でぬめる手を支えに、ゆっくりと体を持ち上げた。


(  ゚∀゚ )「アヒャッ! ヒャヒャヒャ!!」

($∵)「ゴェェェェ!!」


 ぐらり、投げ出された小さな体。


86 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:53:12.47 ID:PccjFctRO

 木にしがみついていた手がついに外れて、宙へ投げ出されたビコーズ。
 落ちてくるビコーズを狙って構えられる、アヒャのナイフ。

 ゆっくりと落ちて行くビコーズが、アヒャのナイフの範囲に入ろうとした時、
 ミセリがやっと立ち上がり、地を蹴って走り出していた。


 ミセリの右手が腰へと動き、アヒャの元に近付いて行く。
 そして、右手が何かを掴んで、引き抜く。

 アヒャのナイフがビコーズを貫くよりも早く、辿り着いたのは
 片腕を失い、小さなナイフを振り上げたミセリ。


($∵)「ゴェェェ!」

(  ゚∀゚ )「アヒャッ!! ヒャヒャ、アギャッ!!?」


 楽しそうに笑うアヒャへ、ざくり。
 首の後ろを、斜め上から下へ向けて切り裂かれたアヒャは
 地面に叩き付けられる様に、倒れ伏した。


90 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:55:24.92 ID:PccjFctRO

($∵)「ゴェ!?」

ミセ; − )リ「ビ、コ……だい、じょ……ぶ?」

($∵)「ゴェ!! ゴェェ!!」

ミセ; ー )リ「は、あは……元気、みたい……ね」


 すんでのところで助け出せたビコーズは、ミセリの頭の上へと落ちた。
 首を切られて血を噴き出させるアヒャ。それを浴びながら、ミセリは俯く。

 頭から肩へ降り、肩から右手へと移動するビコーズ。
 心配そうにミセリを見上げる小さな生き物に、腕の痛みを少しだけ忘れられた。

 ふらふら、とその足でネーヨの元に移動し、
 ごく普通の小学生には見えない姿で、そっとネーヨにビコーズを差し出す。

 ナイフを持ったままの手に乗っていたビコーズは、
 ひょいとネーヨの頭に飛び移る。


 頭にビコーズを乗せたネーヨは、ミセリを見上げて無言のまま。
 ミセリもまた、何も言わなかった。


91 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 22:58:13.32 ID:PccjFctRO

(メ´−`)「…………」

ミセ − )リ「……」

(メ´−`)「……ごめん、ヨ」

ミセ − )リ「なん、で……謝ってんの、ネーヨ……みんな、守ってるじゃん」

(メ´−`)「…………ミセリを、守れて、ないヨ」

ミセ − )リ「……ありが、と……」


 ふいとネーヨに背を向けて、ミセリは無くなった左腕を押さえる。

 泣き叫んでその場をのたうち回りたい、そんな衝動を抑え込み
 濁った目をしたまま、残ったアヒャ達の元へ、足を動かした。


 が、血を多く流したミセリの体はぐらりと揺れ
 どたん、とその場に崩れ落ちてしまった。

 異様に、視界が歪む。
 後頭部の辺りが冷たく感じるし、体には倦怠感がまとわりつく。

 左腕の痛みは激しいけれど、何故か少しだけマシに感じる。
 不思議だな、何故だろう、体を起こす事が苦痛で億劫で、どうしようもない。


94 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:00:55.92 ID:PccjFctRO

 ノーネとニダーは、あっさりとアヒャ達に反撃され、馬乗りにまでなられる始末。
 もともと力の強くはない二人は、アヒャを退かす事も出来ない。


 いつの間にか、ずいぶんと数の減ったアヒャ達。
 残るは四匹、二匹はノーネとニダーを抑え込み、一匹はネーヨの近くに。

 そしてもう一匹は、倒れたミセリの側に。


(メ#ノAヽ)「どけなノーネ! いーかげんにしろなノーネ!!」

<#ヽ`Д(#>「んぎぎぎっ、アイゴー! 離せニダ!!」>

(  ゚∀゚ )「アヒャッ!!」

(  ゚∀゚ )「アヒャヒャヒャ!!」


(メ´−`)「…………こいつ、ウゼーヨ」

(  ゚∀゚ )「アヒャヒャ!!」


95 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:03:07.75 ID:PccjFctRO

ミセ − )リ


 ノーネとニダーを助けなきゃ、ネーヨが動けるようにしなきゃ。

 でも、でも、体がうまく動かない。
 少しだけ寒いし、痛いし、動きたくない。

 頭がぼんやりして、靄がかかった様な視界。


 でも早く動かなきゃ、みんな危ない、危ないよ。
 ミセリが起きなきゃノーネもニダーもネーヨも、ビコーズ達もみんな死んじゃう。

 なのにどうしてだろう、動きたくない。


 動けないよ、動けないよ。
 守りたいのに、膝ががくがくしてる。怖いんだ。


 どうしよう、みんな死んじゃうよ。

 誰か、誰か、助けてよ。
 ミセリ、もう、



96 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:05:05.53 ID:PccjFctRO

 二人に馬乗りになるアヒャ達が、ナイフを掲げる。
 首を押さえられたネーヨに、突き付けられたナイフ。

 倒れたまま動けないミセリにもまた、ナイフがあてがわれていて。

 これが絶体絶命なんだな、と、ミセリはぼんやり笑った。
 もはや、ちゃんと考える事も出来なくなっている。


 刃物を握るアヒャ達の手に力がこもり、今にも全員に刃を突き刺そうとした

 その時。



 がさり。

 入り口代わりの草むらが、揺れた。


99 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:07:11.20 ID:PccjFctRO

(メ;ノAヽ)「!?」


 その音に、ノーネが顔を向ける。
 それにつられて、ほぼ全員がそちらへと視線をやった。

 すると、そこには


(  ∀ )


 深く深く俯いた、一匹のアヒャ。

 四人が一瞬だけ抱いた期待は脆くも崩れ去り、再び絶望が襲う。

 ああ、四匹から五匹になってしまった。
 もう傷だらけの弱い自分達には、勝ち目がない。


 そう半ば諦めた様な顔の四人とは正反対に、嬉しそうに笑うアヒャ達。

 仲間が来た、これでもっと楽しめる。
 げたげたと喜び笑うアヒャの胸に、ずん、と刃物が突き刺さった。


103 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:09:34.19 ID:PccjFctRO

(; ゚∀゚ )「……ア、ヒャ?」

(  ∀ )「─────ヒャヒャッ」


 口許だけの笑みは、不思議と楽しそうには見えなかった。

 突然、仲間に胸を刺されたアヒャは、ノーネの上から崩れ落ちる。
 続けざまに、ざくり。
 今度はニダーに乗っていたアヒャの首が、くぱりと口を開く。

 のんびりと、安定した足取りの俯くアヒャ。

 次はお前だと言わんばかりに、ネーヨの首を押さえる同胞の筈のアヒャ
 その前まで足を運び、きょとんとする顔に刃物を突き刺した。

 固い筈の骨を見事に貫き、上から下へ撫で下ろす。
 顔を真っ二つに引き裂かれたアヒャが、地面に転がった。

 あっという間に、アヒャは最後の一匹になる。
 残るはミセリを狙う、左腕を切り落とした張本人。


(; ゚∀゚ )「ァ、アヒャ……」

(  ∀ )「アヒャッ♪」


105 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:12:30.80 ID:PccjFctRO

 しゃがんでミセリの首に刃を当てていたアヒャは、よろよろ立ち上がって後退る。
 口許に浮かべた笑みは同じなのに、この俯くアヒャは何かが違う。

 後退っていたアヒャが、バランスを崩して尻餅をつく。
 俯くアヒャはそれを見逃さずに、にたりと笑みを浮かべて
 その、仲間の細い首を掴んで、地面に叩き付けた。


 ギャッと呻いたアヒャの口を、目を、耳を、大振りの刃物で引き裂いて行く。
 顔をズタズタにしてから、腹を裂いて内臓を全て引きずり出す。

 それでも押さえられたアヒャは、ギリギリのところで生きていて。

 俯いたアヒャは満足そうに頷いて、同胞の左腕を切り落としてから、
 ずぱん、と引っ掛かりもせずに、綺麗に頭を刎ね飛ばした。


(  ∀ )「ヒャヒャッ♪」


 曲げていた腰を伸ばしながら、アヒャはため息混じりに笑う。

 そして、倒れるミセリに近付いて、つんつん、と額をつつく。


107 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:14:29.96 ID:PccjFctRO

ミセ − )リ「ぅ、……あ…………?」

(  ∀ )「ヒャッ♪」

ミセ − )リ「あ……助けて、くれた…………の?」

(  ∀ )「アヒャッヒャ♪」

ミセ − )リ「? …………あん、た……?」


 何とか顔をあげたミセリと、ミセリの前でしゃがむアヒャ。

 言葉らしい言葉を発さないアヒャに首を傾げ、
 ミセリはぼやける視界の中、その小さくて赤い姿に目を細める。

 少しだけはっきりとした視界には、アヒャの顔。
 その顔は、



(  ゚∀メ)「アヒャッ♪」


 失った、左目。
 生々しいその傷跡には、見覚えがあった。


109 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:16:18.91 ID:PccjFctRO

ミセ − )リ「もしか、して…………」

(  ゚∀メ)「アヒャヒャッヒャッ♪」


 ミセリを前にすると、ひどく楽しそうな声に変わった片目のアヒャ。

 きゃっきゃとはしゃぐ様に笑うその姿は、
 まるで、お気に入りのおもちゃを見付けた子供。


 けれどやっと見付けたおもちゃは、仲間によってボロボロにされていて
 これでは楽しく遊べない、なおるまで遊ぶのはお預けだ。

 アヒャは、おもちゃを横取りしようとした仲間を皆殺し
 にっこりと幸せそうに笑って立ち上がり、ミセリに背中を向けて歩き出した。


 動かないおもちゃはつまらないから、ちゃんと動く様になるまで待とう。
 やっと自分に気付いたみたいだし、これであれは自分のモノ。

 ひどくひどく楽しそうな笑顔のアヒャは、
 跳び跳ねる様に軽い足取りで、草むらを通って集落を後にした。


112 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:18:12.38 ID:PccjFctRO

 残された物は、大量の死体。
 アヒャ達に殺された森の妖精、ミセリ達と仲間に殺されたアヒャ達。

 むわ、と噎せ返る様な血の臭い。


 余りの事に呆然としていた全員が、はっと我に返って動き始める。
 全員が全員、大慌てでミセリの元へと走った。

 ネーヨが尾と首でミセリを抱き起こし、
 真っ白になったその頬をニダーが優しく叩く。


<;ヽ`Д(#>「ミセリ! ミセリ!!」

(;メ´−`)「ミセリ大丈夫かヨ!?」

ミセ − )リ「あ、ぅ…………」

($∵)「ゴェェ!」


114 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:20:21.92 ID:PccjFctRO

 ごそりと動いたミセリに、少しだけ安堵する。
 けれどミセリが受けた傷はひどく、左腕の断面からは、まだ血が流れていた。

 ニダーは止血をしようと何か紐を探すが、自分の荷物は遠い。

 慌てて荷物を取りに行こうとすると、
 ビコーズが自分に付けられたリボンを外し、差し出した。

 一つ頷き、リボンを受け取って、左腕の断面の少し上をきつく縛る。


 応急処置にもならないだろうが、何もしないよりはマシ。
 けれどミセリの体から流れ出た血は多くて、顔色は真っ白。

 このままでは、下手をすると命すら落としかねない。


 少し遅れてミセリの元にやって来たノーネ。
 その手には、ニダーの荷物と、ミセリの左腕。

 悔しそうな顔でニダーに荷物を渡して、ノーネは腕を強く抱く。


117 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:22:30.77 ID:PccjFctRO

(メ;ノAヽ)「ミセリ……」

ミセ − )リ「ノ……ネ、」

<;ヽ`Д(#>「あんまり喋っちゃだめニダ!」

(;メ´−`)「黙ってろヨ、オマエ傷だらけなんだからヨ」

ミセ − )リ「ミセリ、へーき……へーき、だよ……」


 右手に握ったままだったナイフを鞘に仕舞い、ぼやりとした目で辺りを見回す。

 そこらじゅうに溢れる血肉、死体。
 ミセリは唇を噛んで、ネーヨの肩に、顔を押し付けた。

 涙がぼろり、溢れて、ミセリの顔とネーヨの肩を塗らす。
 肩を小刻みに震わせ、力の入らない右手を握る。


118 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:24:20.24 ID:PccjFctRO
  _,,
ミセ − )リ「っ……う、ぅ……」

(メ ノAヽ)「ミセリ……」
  _,,
ミセ − )リ「ミセリ、ミセリ……っ、守れなか、た……っ!」

<ヽ`Д(#>「そんな事無いニダ! ミセリ、自分がボロボロになって!」
  _,,
ミセ#;−;)リ「それでもっ、こんなに死んだ……ミセリ、守るって言ったのにっ!」

(メ ノAヽ)「…………」
  _,,
ミセ#;−;)リ「ひ、ぃぐっ、……ぇぐっ……ミセリが…………ミセリがっ」

<ヽ`Д(#>「でもミセリは何もワルくないニダ、これだけは胸を張って言えるニダ」
  _,,
ミセ#;−;)リ「でもっ……っでもぉ!!」

(メ ノAヽ)「じゃあ、どーするノーネ?」
  _,,
ミセ#;−;)リ「…………強く、な、る……?」

(メ ノAヽ)「んじゃワメいてないで、とっとと傷を治すノーネ」
  _,,
ミセ#;−;)リ「う、ん……うんっ……」


119 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:26:16.07 ID:PccjFctRO

 ミセリを諭すのに、どこか手慣れた様子のノーネ。
 さらりと言い放ち、あっさりとミセリの気持ちを違う方向へと向けさせる。

 あのままだったらずっと自己嫌悪に泣き続けていたかも知れないミセリ。
 そんなミセリの腕に、荷物から取り出した薬草を貼り付け
 リボンを外してから布を巻き、しっかりとした紐で布が外れない様に固定する。


 ろくに森の妖精を守れなかった悔しさと、傷の痛みによる涙は止まらない。
 半数以上が殺された、森の妖精。

 少しは気持ちがマシになったとは言え、死体が目に入れば、
 悔しさや申し訳なさが、ミセリの涙を誘い出す。


 眉を寄せて嗚咽を堪えるミセリの髪を、小さな手が軽く引いた。
 自分の右肩に感じる重みへ目を向けると、そこにはあのビコーズが、乗っていて。

      _,,
( ∵)っ゙ミセ#;−;)リ

  _,,
ミセ#;−;)リ「な、に……ビコーズ……」


121 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:28:21.42 ID:PccjFctRO

( ∵)「ゴェ」
  _,,
ミセっ−;)リ?

(メ´ー`)「ありがとう、だってヨ」

<ヽ`Д(#>「分かる、ニダ?」

(メ´ー`)「恐竜、ナメんじゃネーヨ、オマエらより、森に近いんだヨ」

(メ ノAヽ)「……だから、森のコトバがわかるノーネ?」

(メ´ー`)「おう、ヨ、多少だけどヨ」

( ∵)「ゴェェ」
  _,,
ミセっ−;)リ「なん、て?」

(メ´ー`)「ケガさせてゴメン、だってヨ」


123 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:30:31.69 ID:PccjFctRO
  _,,
ミセっ−;)リ「……守れなかった、もん……謝るの、ミセリだよ……」

( ∵)「ゴェゴェェ」

(メ´ー`)「俺たちが居なかったら、もっと、死んでた、ってヨ」
  _,,
ミセっ−;)リ「…………」

( ∵)「ゴェェ」

(メ´ー`)「俺たちは、恩人、らしいヨ」

(メ ノAヽ)「……んなコト、ナイノーネ」


 ネーヨと言う通訳を挟んだ、ビコーズとの会話。
 ビコーズはありがとう、と感謝の気持ちばかりを伝える。

 それは嬉しい事でもあるが、悔しい事でもある。
 みんなは守れなかった、それは事実なのだから。


125 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:32:18.83 ID:PccjFctRO

ミセ − )リ「ミセリ、もっと……ちゃんと、守れるよ……に……」

(メ ノAヽ)「…………ミセリ、?」

ミセ − )リ

<ヽ`Д(#>「ミセリ、ミセ……ッ!?」

(メ;ノAヽ)「ど、どーしたノーネ!?」

<ヽ`Д(#>「熱が出始めてるニダ、このままじゃ夜には高熱になるニダ!」

(;メ´−`)「お、おい、ヤバイんじゃないのかヨ!?」

(メ;ノAヽ)「い、医者……ああどうするノーネ!?
      ここでは無理だし、村なんてどこにあるか分からんノーネ!!」

<ヽ`Д(#>「ウリも応急措置しか出来ないし……うううう」

ミセ − )リ「…………か……」

(メ;ノAヽ)「んあ!? ミセリ、何なノーネ!?」

ミセ − )リ「おは、か……つくん……なきゃ…………」

(メ;ノAヽ)「なっ、あ、アホなノーネ!? 今はそんなヨユーないノーネ!!」


134 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:47:28.70 ID:PccjFctRO

 ネーヨに抱き起こされたまま、ぐったりして動かなくなったミセリ。
 その口からは、譫言の様に繰り返す「お墓を作らなきゃ」と言う言葉。


 ミセリの気持ちは分かるが、今はそれよりも傷の手当てをしなければ。

 しかしここは森の妖精の集落。
 森の人が住む村も近くにはなく、あったとしても場所が分からない。


 怪我の反動で上がった体温、身体中についた傷の脈動が、激しくなる。
 このままではいけないと分かっているが、どうすれば良いか分からない。

 軽い擦り傷などならまだしも、
 ミセリの怪我は大きすぎて、どう治療をすれば良いか、見当もつかなくて。


 狼狽える三人を見て、ビコーズが生き残った仲間達の側まで移動し
 周りからは何を言っているのか分からない言葉で、会話をする。


137 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:50:29.79 ID:PccjFctRO

( ∵)「ゴェ、ゴェェェ」

( ∴)「……」

( ∵)「ゴェェ」

( ∴)「ゴゥェ、ゴェェ」

( ∵)゙ コクリ

( ∴)「ゴェェェェ、ゴェェ?」

( ∵)「ゴェ」

( ∴)

( ∵)

( ∴)゙ コクコク

( ∵)「……ゴェ、ゴェェ!!」


 仲間との話が終わったらしく、ビコーズがミセリ達の元へと戻る。

 そして、ネーヨの背中によじ登り、入り口の草むらを指差した。


140 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:53:32.34 ID:PccjFctRO

(メ ノAヽ)?

<ヽ`Д(#>「どうしたニダ? ビコーズ」

( ∵)「ゴェェェェ」

(メ´−`)「! 本当かヨ!?」

(メ ノAヽ)「何なノーネ? どうしたノーネ?」

(メ´−`)「怪我を治すヤツがいるとこ、知ってるってヨ!」

(メ ノAヽ)<ヽ`Д(#>!!

( ∵)「ゴェ、ゴェェェ」

(メ´−`)「えと、魔女って言われてるけどイイヤツで?
      タイガイの怪我を治す、森の人いるから、案内する?」

(メ ノAヽ)「んじゃさっそく行くノーネ! 急ぐノーネ!」

(メ´ー`)「おうヨ! 急ぐヨ!」

<ヽ`Д(#>「…………」


142 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:56:39.38 ID:PccjFctRO

 急いでミセリを背中に乗せ、ネーヨとノーネが出発の準備をする。

 しかしニダーは身支度こそしたものの、その場から動こうとはしなくて。


(メ ノAヽ)「ニダー?」

(メ´−`)「早く行くヨ!」

<ヽ`Д(#>「……ウリは、残るニダ……ミセリが言う様に、お墓つくるニダ」

(メ ノAヽ)「あ……」

<ヽ`Д(#>「だから、みんなは先に……」

( ∴)っ)`Д(#> モギ


<;ヽ`Д(#>「ぇ、え?」

( ∵)「ゴェェェェ!!」

<;ヽ`Д(#>゙ ビクッ


145 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/05(日) 23:59:36.01 ID:PccjFctRO

( ∵)「ゴェゴェェェ」

(メ´−`)「……森の妖精は、死んで少ししたら、消えるらしいヨ
      だから墓は良いし、アヒャは自分達で何とかする、だってヨ」

<ヽ`Д(#>「ぁ……」

(メ´−`)「今は、好意に甘えろヨ
      ミセリの怪我が治ったら、みんなでまたここに来ようヨ」

<ヽ`Д(#>「……分かったニダ、急ぐニダ!」

(メ´−`)「おうヨ! ビコゼア、また来るからヨ!」

(メ ノAヽ)「今度、もっとちゃんといらなくてもお墓をつくるノーネ!」



  ( ∴)ノシ ( ∴)ノシ
( ∵)ノシ ( ∵)ノシ ( ∵)ノシ


148 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/06(月) 00:02:19.92 ID:QNl342jhO

 手を振る森の妖精は、ミセリ達にだけではなく、
 旅立つ仲間へと向けた、見送りの意味でもあった。


(ぼく、あのひとたちといっしょにいきたいんだ)
(…………)

(やっぱりだめなのかな)

(そんなに、いきたいんだ)
(うん)

(どんなにたいへんでつらくても、くじけないってやくそくする?)

(やくそくするよ)

(……)

(……)

(いってらっしゃい)

(……ありがとう、いってきます!)



151 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/06(月) 00:05:17.95 ID:QNl342jhO

 仲間達の死体は、時間の流れによって透明になり、
 ゆっくりと、血から何から、その姿を霧の様に消して行く。


 ずいぶんと減った仲間達。
 けれどあの四人のお陰で、被害は少ない方だ。

 小さくて殺しやすいからと言う理由で、アヒャ達に狙われる森の妖精。
 それでもこの集落から出ようとする者は、一人も居なかった。

 そんな中、訪れた四人。
 そんな彼らに、出会った親友。

 彼らはひどく良い人で、自分がどんなに傷付いても人の事ばかり考えて。
 特にあの少女は、あんな姿になっても守ろうとして、悔しくて泣いて。


 しょうがないよなあ
 彼が行かなかったら、自分がついて行ったかも知れないんだから

 寂しいけど、しょうがないよなあ


155 名前: ◆tYDPzDQgtA 投稿日:2009/04/06(月) 00:08:32.39 ID:QNl342jhO

 濁った声、普通のヒトには伝わらない言葉。

 そんな言葉をぽつりと呟き、
 ゼアフォーは血を吸ってどす黒くなったリボンを、自分に巻き付けた。


 誰もしようとしなかった事をした彼に。

 自分達を見つけてくれた彼らに。

 自分達を、身を呈して助けてくれた彼らに。

 自分達に、ヒトの力強さを教えてくれた彼らに。



  (いってらっしゃい)



四話、おわり。


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