- 2 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 16:39:37.76 ID:F6y2FoON0
- 三話 壊れる幸せ
幸せはあるはずだった。
そうだ。あったんだ。
(,,゚Д゚)「…」
暗い道路。
左右が林に囲まれた道路は夜の暗さをさらに引き立てている。
少し真っ直ぐ進んだらそこは右折しかできない急カーブ。
その外側には危険運転で落ちるのを防止するためのガードレールがある。
俺は前へと進む。そして先のガードレールに両手を掛け、寄りかかった。
ガードレールの下は崖で、危険というより落ちたら即死というものだった。
しかし、そこから見えるのはネオン輝く綺麗な夜景。
地方都市独特の光景だ。
(,,-Д-)「ふう…」
俺は一息、ゆっくりと深呼吸をし、目を閉じる。
…しばしの間、感傷に浸ろうか。
- 4 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 16:41:23.82 ID:F6y2FoON0
- 俺は小さい頃に両親を事故で亡くした。
それは偶然の。いや、偶然の必然とでも言っておこう。
その後の俺は親戚中を文字通り、たらい回し。
短くて一週間。長くて半年の有様だった。
それでも俺は我慢した。
俺は中学を卒業した後逃げるように上京。
だが、いわゆる中卒な俺はろくな就職もできずに、つらい土木工事をするようになった。
これでも俺は我慢した。
そこで出会ったのがあいつ。
まあここからは紆余曲折あったのだが、そこは省略しておく。
とりあえず、彼女は俺と結婚した。
はずだった。
- 5 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 16:44:00.55 ID:F6y2FoON0
- 一ヶ月、二ヶ月と日が過ぎるごとに徐々に態度が冷たくなってきた。
どうしたことだ?
そして、その疑問を一気に吹き飛ばす事件が起きた。
子供が出来た。
まあ当然といったら当然かもしれないが、重要なことがある。
お解かりだろう。
まだ一度もセックスをしていないのだ。
当の彼女は俺に隠しているようだが、そんなのはバレバレだ。
すぐさま産婦人科に行って資料などを貰ってくる。
夫なので案の定。たやすく渡してくれた。
血液型。
決定打となったそれは、俺の心を揺さぶるのには大きすぎた。
探偵を雇い、彼女を尾行。ここから俺は狂い始めたのかもしれない。
- 6 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 16:46:01.56 ID:F6y2FoON0
- そしてその決定となる写真は探偵の手から俺の手に届く。
俺は揺さぶられていた心が砕けた。
幸せじゃなかったのかよ…?
なんだったんだよ…!?
(,,゚Д゚)「…なにやってるんだろうな。俺」
結局貧乏くじは俺に回ってくるのか。
目を開いた俺は精悍に夜景を見つめる。
幸せってなんなんだろうな。
いつか俺は幸福になるんだろうか?
(,,゚Д゚)「帰るか…俺らしくもない」
身を翻す。
- 8 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 16:48:36.28 ID:F6y2FoON0
- その時だった。
大きな足音。暗闇から出てきたそれは俺の身にぶつかった。
(,,゚Д゚)「な…なに!」
俺の身は腰ほどまでにしかないガードレールを飛び越えたようだった。
…お前は確か…
ちょっと待て、俺は死ぬのか?
死ぬのか?え?死ぬのか?
おい…冗談だろ…?
なんでだよ…
俺は強烈に打った頭をもって、…意識が無くなった…………
- 10 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 16:51:01.46 ID:F6y2FoON0
- ――うわああああああ!!!!
(,,゚Д゚)「…ここは?」
落ちている間のままの奇声。
ここは薄暗い土道。数メートル前は見えない。
とりあえず。と、激痛がした頭を抱えながら俺は立った。
何故俺に意識があるのだろう。ここはあの世なのか?
考えつつも俺は進む。進まなきゃいけない気がしたから。
…しばらく進むと前後の等間隔の間が取られた、左右の台座が見えてくる。
その上には蝋燭。全然なくなっていない新品のようだ。
と、俺はいつの間にか着いたようだ。
なぜ着いた? それは行き止まりだったから。
数十メートル前には大きな門。それが道を終わらせていた。
俺は門に見入っていたが、よくみるとその門下に人がいるみたいだ。
ただ立ち尽くす俺は声が聞える距離で、その動向を伺う。
( ^ω^)「まったく疲れるお。ここは」
恐らく男。誰かと話している文脈だったので、もう一度辺りを見回す。
よく見ると会話をしているもう一人が居るみたいだ。
- 11 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 16:54:52.46 ID:F6y2FoON0
- ( ・∀・)「じゃあとっとと行ってくださいよ。
ここに居ても疲れるだけですよ?」
( ^ω^)「でも居たいお」
( ・∀・)「これだから…」
その二人の男のうち、一人は石に座っているので、
もう一人の男は視線を見下すようにしやれやれと両手を挙げる。
そして、その男はその体勢を崩さずに言った。
( ・∀・)「そろそろ出てきたらどうですか?お客さん」
どうやら俺に言っているようだ。
俺は内心驚きながらも二人の男に向かって歩き出した。
( ^ω^)「おっお」
( ・∀・)「いや〜最近は多いですねえ」
(,,゚Д゚)「ここは?」
俺はこちらに向きなおしたもう一人の男に向かって問いを投げかける。
すると待っていたかのように男は即答した。
- 13 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 16:57:33.06 ID:F6y2FoON0
- ( ・∀・)「おお、盗み見していたのにいきなりそれですか。
まあ答えない理由もないし、答えましょう」
「前置きはいいから」その言葉に男はまたしてもやれやれをし、
深いため息をつく。
( ・∀・)「最近多いんですよ。お客さん。
…と、失礼。ここは門前とでも言っておきましょう。
ほら…そこの大きな門を見てください」
男は俺の顔から、後ろの大きな門に顔を向けた。
( ・∀・)「あれはあなたの今後の人生を左右する門です。
あなたはここに来たときからあの門をくぐる権利、
ある意味義務があります」
男は顔を門から俺の顔へと戻す。思った通り、その口は止まらない。
( ・∀・)「さて、そのことですがあなたには門をくぐるときに選択肢
を決めなければなりません」
(,,゚Д゚)「ちょっと待て…一気に説明されても混乱するんだがな…
まあ少しでもゆっくりさせてくれよ」
俺はやってられずに口を突っ込んだ。
- 15 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 17:00:42.51 ID:F6y2FoON0
- ( ・∀・)「あ〜失礼」
と、男は後ろに歩き出し、もう一人の男が座っている石に座る。
俺はその隣に座ることにした。
( ・∀・)「私の名前はモララーです」
(,,゚Д゚)「名前なんかきいちゃいねえけど」
( ・∀・)「ですよねー」
( ^ω^)「僕はブーンだお」
中心に座っているモララーの上に身を乗り出し、名前を挙げるもう一人の男。
(,,゚Д゚)「あ〜はいはい。よろしく。俺はギコ」
( ・∀・)(まー、そのパターンですよねー)
( ・∀・)「ともかくどうですか?整理つきましたか?」
つまり…俺は死んだのか…
( ・∀・)「はい」
知らずのうちに声に出していたようだ。
モララーは俺への返答とともに口を続けた。
- 16 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 17:03:59.12 ID:F6y2FoON0
- ( ・∀・)「おや?冷静ですね?
少なくとも誰かさんと違って泣いて縋るマネはしないですよね」
( ^ω^)「言うなお…」
昔の俺なら文字通り泣いて縋ってたかもしれない。
しかし今は違う。そう…
(,,゚Д゚)「いささか、狂っているからな」
とまあ、いかにも厨臭い言葉を言う。
だがそこから帰ってきたのはいたって真面目な声だった。
( ・∀・)「ここには狂った人も来ますからねえ。
…おっと。そういえばここに来た理由、なんですか?」
- 18 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 17:06:30.62 ID:F6y2FoON0
- (,,゚Д゚)「知るかよ…」
( ・∀・)「ここにくるのは強い憎しみを持った人のみです」
その言葉を聞いて、俺は死んだという感情より激怒した。
怒りの矛先は俺で。
俺は人を激しく憎んでいたのかと思うと、今にも反芻しそうになった。
( ・∀・)「ま、深くは追求しませんよ」
膝と肘を当てた両手を後ろに下げ、背中を伸ばすモララー。
逆に俺はなにも考えていないのに、考えてるようにうつむいた。
( ・∀・)「それでは整理してくださいよ。
まだ説明は完了してませんからね」
そう言ってモララーは立つ。
残っているのはブーンと名乗った男と俺だけだった。
- 19 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 17:10:51.72 ID:F6y2FoON0
- ――ちゃんと整理してみよう。
まず、俺は死んだ。
死んだからといって意識は無くなったわけでなくここに来た。
その理由は深い憎しみを持っていたから。
そしてあの門。
あの門をくぐるときに選択することがあるという。
まだ良くわからないが、何らかの救済措置と考えていいだろう。
そしてこの門前は不思議なことが何でも可能らしい…?
とまあ簡単な整理だなっと。
俺には難しすぎるんだがな。
( ・∀・)「よいしょっと」
(,,゚Д゚)「…?」
突然光りだす空中。
よく見るとそれは空間に出来た割れ目のようだった。
それに入っていくモララー。
そして片足が割れ目に入ったところでモララーは顔だけ振り向き、こういった。
( ・∀・)「ちょっと出かけてきます。少ししたら戻ってくるので、
お留守番でもお願いしますよ」
…とのことだ。まったく持って不順だな。
詳しい説明は残ったこいつから聞こうか。
- 22 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 17:13:22.98 ID:F6y2FoON0
- (,,゚Д゚)「…選択肢ってなんだ?」
もちろん、待ってたかのように返事は返ってきた。
( ^ω^)「おっお。やっぱそうくるかお。
選択肢は三つだお。一回しか言わないからよく聞くお。
まず、『転生をする』これは他人としてやりなおすってことだお」
俺はあくまで適当に相槌を打つが、
自分でもわかるぐらいに真剣に聞いていたようだ。
( ^ω^)「次に『地上に幽霊として出没する』まあ文字通りだお。
地上でいう亡霊だとかその類だお。
……そして最後の一つは恐ろしいお。聞くかお?」
(,,゚Д゚)「無論…な」
そしてその男は少々のためらいが入りながらも言った。
その言葉は予想の救済措置とは遠くかけ離れたものだった。
( ^ω^)「『地上の人を一人殺し、自分は地獄へ行く』だお。
あと地獄のことは聞かないでくれお」
- 23 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 17:16:09.36 ID:F6y2FoON0
- ――あれから如何ほどの時間が過ぎただろうか。
俺は文字通り頭を抱えたまま、息すらするのを忘れてしまいそうだった。
( ・∀・)「ただいま」
いつの間にかモララーの声がする。
顔を上げると、俺の正面にそいつは見下すように立っていた。
( ・∀・)「どうですか?多分ブーンから聞いたと思いますが、
選択肢は決まりましたか?」
もちろん、
(,,゚Д゚)「…まだだ」
するとモララーは待っていたかのように喋りだす。
その言葉はまたしても驚きのものだった。と言うほかないだろう。
( ・∀・)「幽霊として現世を少し見てきましょうか。
そのまま幽霊になることもないですしねえ」
…こいつの口は簡単にものすごいことだすな。
もちろん俺は是非を問うまでもなく小さく、「ああ」と答えた。
その瞬間に俺は蝋燭という小さな光があった道から、まったく光がない暗闇へと誘われたのだった。
- 24 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 17:19:31.31 ID:F6y2FoON0
- ――ここは…
( ・∀・)「そうです。あなたが突き落とされた場所です」
俺の目に広がるのは、死ぬ前に最後に見た景色だった。
俺の家に真っ直ぐ続く道、そして下が崖の急激なカーブ。
今も相変わらずの夜。そして崖の下で輝くネオンはまったくあの時から変わっていない。
(,,゚Д゚)「ちょっと待てよ?何故俺が突き落とされたって知ってるんだ?」
( ・∀・)「なんでもお見通し。ですよ」
そういってモララーはカーブに足を進め、あの時の俺のように両手をつけ、
ガードレールに寄りかかった。
( ・∀・)「いい景色ですねえ。
こんなところで死ねたら最高だと思いますよ?」
(,,゚Д゚)「字面通り受け取っとくよ」
そして俺はモララーの背中にいるだけでなく、進み、寄りかかった。
予想外に下から吹く風が強く、モララーの髪がなびいているのが見えた。
- 25 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 17:22:01.78 ID:F6y2FoON0
- ( ・∀・)「風も強いですねえ。
こんなんではせっかくの花も台無しになってしまいますよ」
モララーはそう言うと隣の俺に顔を向け、にっこりと微笑んだ。
その手には花びらが少しずつ散っている真っ白い花の束があった。
(,,゚Д゚)「…」
そしてモララーは俺に花束を手渡すとしゃがんだ。
( ・∀・)「あなたの死を彼岸花も気づいていたようですね」
俺の足元のモララーがなでるように手を動かす。
その手元にあるのは真っ赤な、それでいて一つしか咲いていない彼岸花。
俺はただただ、手元の花と彼岸花を交互に見るだけだった。
( ・∀・)「彼岸花については私もとっくに忘れてしまいましたよ。
もっとも白い花束は最近見たばっかりですけど」
(,,゚Д゚)「…これは誰が」
と、俺が言い終わる前に暗い空間に俺等は包まれてしまった。
- 28 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 17:26:09.41 ID:F6y2FoON0
- ――家。か
( ・∀・)「さてさて。どう思いますか?」
まったく変わってない俺の家。
もちろん、俺は「何が?」と答える。
( ・∀・)「なにか変わったことは?」
(,,゚Д゚)「さあ?」
事実だからしょうがない。
するとモララーは窓に近寄り、下にある写真立てを持つ。
額の中の写真は俺とあいつが結婚したときのものだった。
( ・∀・)「なぜこれがあるのかはご想像にお任せします」
ひらひらと写真を見せ付けるように額を振る。
そして、そっと置いた。
(,,゚Д゚)「…そうだな」
俺はあえて考えなかった。
- 30 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 17:29:13.64 ID:F6y2FoON0
- ――目の前には大きな門
威圧感あふれるその門は今にも動き出そうな絵柄が描かれている。
( ・∀・)「さてと。決める気になりましたか?」
(,,゚Д゚)「ああ」
決まってるさ。その心は折れない。
( ・∀・)「では、あなたは何を選びますか?」
(,,゚Д゚)「あいつ…俺の妻を殺す」
( ・∀・)「では、行ってください」
大きな門は地獄への幕開け。
第三話 終
『俺が幸せをかすみとれないなら、
幸せなやつの幸せを奪ってやるさ』
byギコ
- 35 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 17:31:44.18 ID:F6y2FoON0
- サイドストーリー 三話
暗い一室に、女は居た。
「どうして?どうして…?」
目から涙。
女の顔は何時間も泣きはらしたように赤かった。
彼女は道端で俗に言うレイプをされた。
それからかもしれない。
彼に顔向けできなくて冷たく態度をとってしまったのは。
彼女はそれによってあろうことかそれによって妊娠してしまった。
彼女は彼に適当に隠したものの、
レイプをした当本人は「別れて俺と結婚しろ」と写真をだして脅し始めた。
そして最後には彼を殺した。
「ギコ君…会いたいよ…」
- 38 名前: ◆JhoOOEkz6w 投稿日:2008/03/14(金) 17:35:00.18 ID:F6y2FoON0
- ふと鏡をみる彼女。
後ろに移っていたのは、
「ギコ…君!?」
とっさに後ろを振り返る。
「ギコ君!会いたかったよお!!!」
(,,゚Д゚)「…」
その目は暗く、冷たかった。
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