('A`)と歯車の都のようです

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 20:59:53.49 ID:Vv3Ute080
灰色の空、都中に溢れかえる濃霧。
歯車を主軸に独自の発展を遂げてきた都は、いつもと変わらない様子だった。
都の中心に重々しくそびえ立つ城、都中から絶え間なく聞こえてくる歯車の軋む音。

都の商店街の賑やかさもなかなかのものだが、裏の商店街も独自の賑やかさがある。
表では食料品などを取り扱っているのに対して、裏では銃、麻薬、人などの非合法の商品を取り扱っている。
対極になる存在同志が同じ一つの都で共存しているのは、この都の王の政治手腕によるもの、ではない。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:00:40.77 ID:Vv3Ute080
王は黙認こそしているが、この都の商売等には一切干渉していない。
では、誰がそういった部分を統治しているかと言えば、裏の世界の首領達だ。
複数の派閥が存在し、互いにいがみ合うこともあるが、ここ最近は派手な抗争もない。

―――五年前、裏の世界で"戦争"が起きた。
裏の世界でも指折りの"クールノーファミリー"と"水平線会"の抗争だ。
発端は些細なものだったのだが、いつしか死者が4桁になるまでに至った。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:02:05.16 ID:Vv3Ute080
血で血を洗う戦争に終止符を打ったのは、裏の世界でトップに君臨する派閥。
"ロマネスク一家"は第三者として、冷静な判断と意見と武力でこの抗争を止めた。

裏の世界で仕事をするためには、どこかの派閥に組するのが常識だが。
中には分け隔てなく多くの仕事を受けるため、フリーの者もいた。
フリーで生き残るためには何が必要か、それは頭脳戦を得意とする知力、何者にも負けない腕力のいずれかだ。

銃の腕が優れている者には殺しの依頼、頭脳戦を得意とする者には策謀の依頼がくる。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:03:08.56 ID:Vv3Ute080
そんな裏の世界の吹きだまりから、この物語は始まる。

( 'A`)と歯車の都のようです

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:04:15.05 ID:Vv3Ute080
日中の太陽の光さえ遮るほどの濃霧は、都の名物と言い換えても過言ではなかった。
しかし、今の状況で、いつもより濃い濃霧が出てくることはドクオの予想を裏切った。

(;'A`)

いつもなら腕を伸ばしたら手先が見えなくなる程なのだが、今回は肘から先が完全に見えなくなっていた。
他の仕事ならどうにかなるのだが、今回の仕事はどうにもならない。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:05:05.96 ID:Vv3Ute080
裏の世界でフリーの何でも屋として働いているドクオの元に来た仕事は、対象者の身辺調査だ。
依頼を受け、尾行を開始した直後に、この濃霧が発生した。

相手の姿の代わりに、コツコツと足音が路地裏に響き渡っていた。
その音を頼りにして尾行を続行したのだが、途中で足音が消えた。
濃霧で姿が見えないだけではなく、頼みの綱の足音が消え、ドクオは途方に暮れていた。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:06:07.34 ID:Vv3Ute080
信頼と実績こそが明暗を分けるフリーの仕事で、失敗は信頼を大きく削ぐものだ。
しかも、今回の依頼人は"ロマネスク一家"。
失敗しようものなら、その日のうちに市場でひき肉として売られること請け合いだ。
ロマネスク一家の首領、ロマネスクは"魔王"と名乗り、その名に恥じない冷酷さを持ち合わせている。

(;'A`)「この石畳の上を足音を消して歩くには靴を脱ぐしかない。
    かといって、靴を脱げば足の裏に怪我をすることは必至」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:07:05.76 ID:Vv3Ute080
冷静に状況を一つ一つ解析し、足もとに目をやる。
薄汚れた石畳の上には、ガラスの破片、薬莢、注射針、刃物の破片などが散乱している。
確かにこれでは靴下を履いていてもすぐに怪我をするだろう。
運が悪ければ切り口から細菌が入り込んで、死ぬこともある。

(;'A`)「だとすると… どこかに隠れ潜んだか…?」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:08:03.34 ID:Vv3Ute080
周囲を見渡しても濃霧のせいで、隠れ潜む場所など皆目見当もつかない。
路地裏にはまるで迷路のように狭い道が張り巡らされ、素人が一度場所を見失うと一週間後ぐらいには犬の餌になっている。
ドクオはその光景を想像をし、小さく身震いした。
さながら犬に犯されているように自らの腸を食いちぎられ、手足の肉を…

そこまで想像したことを後悔した。
濃霧の中でもはっきりと分かるぎらついた目の光、低く響く唸り声。
今まさに、そこらの路地裏から飛び出して来たような野犬がドクオの目の前に現れたのだ。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/09/08(月) 21:09:35.18 ID:Vv3Ute080
犬「WAN WAN!」

(;'A`)「ワイルドドッグだ! ワイルドドッグが現れた!」

咄嗟に、腰に付けたナイフを両手に構え、野犬を迎え撃とうとする。
ドクオの所持しているナイフは普通のナイフではない。
匠の技ほどの精巧さを持ち合わせてはいない。
逆に、悪魔的発想というには無骨で、あまりにも醜い。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:10:55.13 ID:Vv3Ute080
それは鉄塊というわけではなく、木の枝のように長短様々な刃があちこちから生えていた。
生き物のように刃が動いている錯覚さえ覚えるその形状は、見るもの全てに嫌悪感を植え付ける。
全部で10以上の刃が不気味に輝きを放ったその瞬間、濃霧から野生の塊が飛び出した。

( 'A`)「冗談じゃない、野犬の討伐はクエストの中に入ってないし、ペイも出ない!」

むせ返るような臭いをまき散らしながら飛びかかってきた野犬の眼前で、ドクオはナイフを大振りした。
隙だらけともとれるその行為をあざけ笑ったのか、野犬は口元を醜く歪め、ドクオに噛みつこうとして、本当に口元が醜くなった。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:12:21.74 ID:Vv3Ute080
(;'A`)「うわっ! 刃先がすっ飛んだ!」

醜い刃先が柄だけを残し、野犬の口内に突き刺さっている。
刃先を取ろうともがくが、それが事態を悪化させた。
刃先が口内を蹂躙し、もはや手のつけようのないほどにグロテスクな犬の顔が出来上がった。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:13:24.44 ID:Vv3Ute080
さらに、よほど手抜きの作品だったのだろうか、犬が口を閉じた瞬間、刃が砕け散った。
しかも、細かくなった刃は犬の口だけではなく、内部器官をずたずたに引き裂き、悶えた影響でより広く器官を蹂躙する。

その光景を見下ろしたドクオは、もう一方のナイフを見る。
相変わらず不気味な輝きを放つ醜いナイフを、なんの躊躇いもなく投げ捨てた。
それが壁に当たって跳ね返り、甲高い音を上げて砕けた。
その破片が悶えていた犬の体中に降り注ぐ。
勿論、眼も例外ではない。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:14:53.13 ID:Vv3Ute080
(;'A`)「やっちまったぜ…」

一瞬で得物を失ったドクオは、壁に手を当て、寄り掛かった。
そこで初めてドクオは気付いた。
小さいが確実に聞こえる音。
地面に散らばったガラス片などを踏みつける音に、この時初めて気づいた。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:15:35.10 ID:Vv3Ute080
それは偶然ではあったが、まず間違いなく対象者の足音だ。
と、言うのも、甲高い音を出すヒールの踵でガラス片を踏めば独特の音が聞こえるのと、この路地裏にヒールで来るような者はまずいない。
いかに足音を消す歩き方をしても、これだけは避けられない。

( 'A`)「行くか…」

そう言って、壁に手を掛けて立ち上がる。
聴覚だけに集中し、標的を追いかけはじめた。

そうしてどれくらい時間が経ったか、目の前から聞こえていた足音が消え、代わりに話し声が聞こえてきた。
周りに誰もいないと思っているのか、離れていてもはっきりと内容が聞き取れる。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:17:04.56 ID:Vv3Ute080
从'ー'从「うるさいネズミは撒いたから大丈夫、ダイジョーブ」

从'ー'从「えへへ〜、でも、情報1つでこんなに儲けられるなんてね〜」

その声の主は姿こそ見えないが、ドクオの尾行の対象者の渡辺であることは明白だった。
ロマネスクが危惧していたのは自身の情報の流出、つまり内部の裏切り者だ。
全神経を聴覚に集中する。
ロマネスクからは尾行以外に、渡辺が内部の情報を1つでも漏らした場合、すぐに口を封じるようにも依頼されていた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:18:03.12 ID:Vv3Ute080
先ほどの犬との戦闘で失ったお気に入りの得物の代わりに、ドクオは懐から拳銃を取り出した。
アメリカの特殊部隊が使用しているそれは、『ソーコム』と呼ばれている逸品だ。

从'ー'从「で、何の情報が欲しいの?」

どこか間の抜けた声で相手に語りかける渡辺は、周囲に気を配っている様子がない。
その渡辺の声に答えたのは対照的な、氷の刃のような声だった。

( ー )「そうね、まずはロマネスク―――"魔王"についての情報ね。
    彼は一体何が目的で―――を……」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:19:05.58 ID:Vv3Ute080
姿こそ見えないが、それが女の声であることは容易に聞き取れた。
次に渡辺が口を開いて、情報を口にすれば彼女の額におちょぼ口を作らなければならない。
ドクオの緊張が最高潮に達し、額から珠のような汗が噴き出てきた。

从'ー'从「あの男はね、"歯車王"を消して―――」

渡辺の口からそれ以上情報が紡がれることはなかった、渡辺の口から聞こえた小さな悲鳴と、何かが地面に倒れる音でドクオは理解した。
それと同時に路地裏に連続した発砲音が響く。
理解すると同時に壁から飛び出したドクオは、自分の耳元を銃弾が掠め飛んでいったのを冷静に確認し、目の前にいるであろう敵に向かって銃弾を撃ち込む。
先ほどの音から察するに、相手の女が渡辺を突き飛ばしてドクオから守ったのだろう。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:20:14.86 ID:Vv3Ute080
石畳を銃弾が抉り取る音と渡辺の悲鳴が、路地裏を賑やかにする。
悲鳴を頼りに、渡辺がいるであろう場所まで駆け寄ろうとするドクオを、銃弾の壁が塞ぐ。
発砲音の感覚からして女は自動小銃の二丁使い、技量はこの霧で互角だが、弾数ではドクオが不利である。

从>ワ<从「きゃーこーわーいのー」

それを知ってか、渡辺の悲鳴に余裕が聞いてとれる。

(;'A`)「この糞尼ァ! 邪魔するんじゃねぇ!」

( ー )「…糞? 誰が糞だ、この■■■野郎」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:21:26.25 ID:Vv3Ute080
空になった弾倉を排出して、予備弾倉を入れた瞬間、濃霧が嘘のように消し飛んだ。
周囲の建物、地面に落ちている薬莢、そして渡辺を庇うように立っている一人の女が露わになった。

(*゚ー゚)「私を怒らせた罪、高く付くわよ」

次の瞬間、魔法のようにドクオの目の前に現れた女が小さく笑ったのを確認するより早く、ドクオは両手を眼前で交差した。
構えた腕ごと背面回し蹴りで吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
ちょうど背後に窓ガラスが無ければ、ドクオの背骨は無慈悲にも折れたいただろう。
自らが割ったガラス片の上に倒れ込み、有り得ない方向に曲がった左手を凝視した

(;゚A゚)「あ、あが…!」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:22:30.26 ID:Vv3Ute080
間髪入れず、倒れたドクオの額に硬い銃口の感触が当たる。

(*゚ー゚)「このまま脳味噌をぶちまけるのは簡単だけど、その前に2、3話してもらうことがあるのだけれど」

悔しさと痛みで左手で握り拳を作ったドクオを、女は笑いもせずに見下ろしている。
ドクオが苦痛の声を上げている様子を、笑いながら見ていた渡部は早足でドクオの元に駆け寄った。

从'ー'从「ねぇねぇ、私ね〜」

从<●>ー<●>从「さっき、怖かったんですけど?」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:23:13.76 ID:Vv3Ute080
渡辺はゆっくりとドクオの左手を踏みつけ、そのまま足で抉るように回す。
ちょうど折れた位置を踏まれたため、ドクオに訪れた痛みは尋常ではない。
ドクオは文字通り、泣き叫んだ。

从<●>ー<●>从「ねぇ? 謝罪は? 誠意のこもった謝罪は〜?」

それを楽しむように見下ろす渡辺の肩を女が叩いた。

(*゚ー゚)「おい、これ以上やると何も喋れなくなる」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:24:07.65 ID:Vv3Ute080
女が渡辺の方に顔を向けた瞬間、ドクオの手に乗せていた渡辺の足が浮いた。
何が起きたか理解するより早く、ドクオは左手に掴んだ"ガラス片"を2人に投げつけた。
ちょうど目元に投げつけられたため、2人は反射的に目を瞑ってしまった。

(#'A`)「この売女!」

無事な右手に構えたソーコムで、ドクオは渡辺の額めがけて発砲する。
ほぼ同時に上がった音が、銃弾が脳漿をぶちまけた音なのか、渡辺の悲鳴だったのかは分からなかった。
そのまま隣の女を撃とうとして、ドクオは女がいないことに気づいた。

どうやらあの一瞬の間で逃げたらしい。
懐にソーコムをしまい込み、ドクオは空を見上げた。

(;'A`)「あー、疲れる…」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:24:38.74 ID:Vv3Ute080
――――――――――――――――――――

 一話「邂逅」
一話イメージ曲「ブラックホールバースデイ」THE BACK HORN

――――――――――――――――――――

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:25:42.66 ID:Vv3Ute080
渡辺を殺したその数日後、ドクオの元に一つの依頼が舞い込んできた。
それはクールノーファミリー、水平線会、ロマネスク一家が合同で依頼してきたものだ。
依頼内容は至極簡単、そして簡潔なものだった。

"歯車王の暗殺"

ただそれだけだった。
『労働は尊いものだぜ』
という漫画の台詞を思い出し、ドクオは2つ返事で引き受けた。
とは言うものの、滅多に外出することのない歯車王を暗殺するなど、到底不可能だ。

その事をロマネスクに言うと、彼は口元を少し緩めてこう言った。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:27:06.36 ID:Vv3Ute080
( ФωФ)『なぁに、腕利きの仲間も何人か一緒だ。
       心配事は何もない』

その言葉を信じてドクオは、ロマネスクのオフィスに出向くことにした。
それは仕事の詳細を話し合うのと、仲間の顔合わせを兼ねた会合だ。
これまで聞いた仲間の情報は、ドクオを含めた七人。

それぞれが各分野に特化したプロ中のプロ。
戦闘のプロから情報のプロまで揃っているとのことだ。
その中にドクオが入っているのは、長年に渡って培ってきた信頼の賜物だろう。
先日負傷した左腕の治療代も快く出してくれたのも、信頼あってのものだ。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:28:06.89 ID:Vv3Ute080
気がつけば、ドクオはロマネスクのオフィスの前に来ていた。
外から見たら普通のホテルだが、中は一般人が入れば失禁ぐらいしてしまうぐらいの緊張感と威圧感で満ちている。
しかし、ドクオにとってはなじみの場所だ。

二階に上がるための階段前で警備をしている二人組の男たちは、それぞれ左の懐が膨らんでいて、その手にはショットガンが握られている。
軽く挨拶をかわし、軽快に階段を上がって行く。
赤い絨毯の敷かれた建物の中を目まぐるしく移動し、一つの扉の前で立ち止まった。

『会合部屋』

そう書かれたプレートが扉の上に張り付いている。
そして、その下から陽炎のように影が揺らめき、ドクオの前に一人の男が現れた。
それが最新式のステルス迷彩を着た警備の者だと分かるのに、それほど時間は必要なかった。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:29:11.90 ID:Vv3Ute080
(・∀ ・)「ドクオ様、ですね?」

猫背のままドクオの顔を覗き込む男に、ドクオは微かな違和感を覚えた。
しかし、あまりに曖昧な違和感だったため、ドクオは考えるのはやめた。

( 'A`)「そうです」

その返事を聞き、警備員は扉を開き、再び陽炎のようにその風景に溶け込んだ。

(・∀ ・)「…どうぞ」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:30:03.59 ID:Vv3Ute080
部屋に入ると、ドクオは濃密な煙草の匂いに顔をしかめた。
すぐに後ろ手でドアを閉め、辺りを確認する。
天井から吊り下がっている暖色系のランプは六畳程の空間と円卓、そして円卓を囲むようにして立っている6つの人影をうっすらと照らしている。

口にくわえた煙草の火で口元の輪郭だけが見える。
わずかな間の後、影の一つが口を開いた。

(  ∀・)y-~~「……あんたも、今回の仕事に参加する奴かい?」

声からして50代前半だろうか、年相応に渋みのかかったその声にドクオは緊張まじりに答えた。

( 'A`)「あ、あぁ… あんたらもだな?」

その問いに答えたのは別の影だった。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:31:07.11 ID:Vv3Ute080
(  ω^)y-~~「おっおっお……
       この場所にいる連中が、最近話題のスイーツでも話しているように見えるのかお?」

続いて答えたのはハスキーボイスの女だ。

ξ 听)y-~~「はっ……! まるで豚の糞みたいな冗談ね」

(  ω^)y-~~「……軽い口だお。 手前の尻はさぞかし軽いはずだお」

ξ 听)ξy-~~「糞みたいな冗談を言うデブの口臭は豚の糞よりも臭いって聞いたけど。
        本当ね、おでぶちゃん」

(# ω゚)y-~~「手前! 口の聞き方には気をつけるお!」

声を荒げた男を制したのは対照的な澄んだ声だった。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:32:10.15 ID:Vv3Ute080
川  -゚)y-~~「落ち着け。 貴様がそうやって熱くなればなるほど、その女の思うつぼだ」

続けて聞こえた声は同じように澄んでいたが、辺りに響く声だった。

ノハ 听)y-~~「あはははは! 馬鹿みたい! 
      仕事の前から仲間割れ? こいつぁ傑作だ!」

よほど可笑しかったのか、ハスキーボイスの女が睨むのもかまわず笑い続ける。
すっかり置いていかれたドクオはどうにか口を開く。

( 'A`)「言い争うのは手前等の勝手だが、ここに集まってる理由は手前が一番分かってるだろ?
    何が得で、何が損か分からないような連中が集まってるとなると、ため息排出量世界一になっちまう」

ドクオの声が静かに部屋に響き、言い争いが止む。
それを待っていたかのように若々しい男の声が響き渡る。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:33:15.90 ID:Vv3Ute080
(  _ゝ`)y-~~「……さて、我々がここに来た理由は1つ。
       ロマネスクからの仕事の依頼を受けた、それだけだ」

その声に周りは無言で頷く。
それを確認し、若い声は続ける。

(  _ゝ`)y-~~「確認しよう。
       俺たちは歯車王の暗殺を…」

(  ω^)y-~~「何勝手に仕切ってるんだお?
       手前みたいな青二才が、この場を仕切るに値する器とはとても思えないお」

ノハ 听)y-~~「ガキはすっ込んでろ!」

次々に罵倒文句が投げつけられ、若者は戸惑いを隠しきれなかった。

(; _ゝ`)y-~~「うぐぅ…」

何とも言えない、まるでいじめをしているような空気が流れる。
実際そうなのだが―――

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:34:04.66 ID:Vv3Ute080
そして、その瞬間は訪れた。
ゆっくりと、確実に開かれた扉からその男は現れた。
両目上を負傷し、視力が無いはずなのだが、不思議と男―――、ロマネスクは右手に持った杖を机にも椅子にも当てることなく上座に歩んだ。

( ФωФ)「あー、揃ってるようだな。
       仕事の内容は諸君も知ってるように、歯車王の暗殺だ。
       暗でなくてもいい、殺せばそれでいい」

ただでさえ微妙な空気だった室内が、より微妙になった。
しかし、次にロマネスクが口にした言葉はその空気を変えた。

( ФωФ)「で、詳しい話の前にまず各人の自己紹介をしてもらおう。
       私はこう見えても人見知りが激しくてね」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:35:06.72 ID:Vv3Ute080
それにいち早く答えたのは、先ほどいじめられていた若者だ。

( ´_ゝ`)「おーけー、俺から自己紹介しよう。
      おい、凡人ども、俺の話を耳の穴かっぽじってよーく聞けよ」

体つきは筋肉質とは正反対の、いわばガリガリに近い。
上等なスーツをしっかりと着ている辺り、出の良さが垣間見える。

( ´_ゝ`)「俺の名前は"流石兄者"
      最近名を上げてきた"流石カルテル"の幹部だ」

ノハ 听)y-~~「手前は何のプロだ?
       隙だらけだから戦闘専門ではないだろ」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:36:12.45 ID:Vv3Ute080
その質問に兄者は上機嫌で答えた。

( ´_ゝ`)「俺は頭脳担当だ、云わばお前らの参謀役だ」

ノハ# 听)y-~~「っ!」

露骨に舌打ちし、威嚇した女から兄者は二、三歩後ずさった。
次に手を挙げたのは渋い声の男だ。

(  ∀・)y-~~「俺はモララー、フリーの武器屋をやってる。
       今回の仕事の専門は武器担当だ」

兄者とは正反対な、しっかりとした体格。
そしてこれも対照的に、あまり上等とは言えないコートを羽織っている。
所々色があせ、長年着古した味が出ていた。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:37:05.99 ID:Vv3Ute080
モララーに続くように紹介を始めたのは一際目立つ、豪奢な金髪の巻き髪の女だ。
葉巻を持っていない方の手で巻き髪を弄びながら女は話し始めた。

ξ 听)ξy-~~「クールノー・ツンデレ、狙撃担当よ」

肩まで伸びた豪奢な金髪は、丁寧に巻かれ、ツンの美貌に引けを取らない美しさがある。
スカイブルーの色をした瞳は、興味なさ気に周囲を一瞥した。
たしなみ程度に化粧をしたその顔は、同性でさえ惹かれるほどだ。
赤いドレスを身に纏い、素性を知らなければ、どこかの令嬢と見間違えただろう。

ちなみに乳房は気の毒なAカップ(後日談)。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:38:02.88 ID:Vv3Ute080
しかし、ツンが名前を言った瞬間、一瞬だけその場が冷えた。
"クールノー"、その名前を冠する事ができるのはクールノーファミリーの中でも上位の五本指に入る幹部だけだ。

そして、一人だけ露骨に顔をしかめたのはツンと言い争っていた男だ。

(  ω゚)y-~~「クールノーの幹部だと…
       情報と―――がうお…」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:39:08.13 ID:Vv3Ute080
ボソボソと独り言を漏らす男を尻目に、透き通る声の女が静かに語り始めた。

川  -゚)y-~~「素直クール、専門は調査だ」

腰まで伸びた黒髪は、形のいい日本人形を彷彿とさせる。
しかし、その顔には化粧は一切施されていない。
それなのに、赤い瞳のその顔には、威圧感にも似た触れがたい美貌がある。
髪と同じく黒のスーツを着こなす姿は、誰が惹かれてもおかしくない。

ちなみに乳房の大きさは、推定Eカップだとか(後日談)。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:40:15.86 ID:Vv3Ute080
必要最低限の事を簡潔にまとめただけのそれに、おおよそ愛嬌と呼べるものは含まれていなかった。
それに続いてもう一人の女が威勢のいい声で話す。

ノハ 听)y-~~「素奈緒ヒート、強襲の担当だ」

肩まで伸ばした赤茶色の髪は、性格を反映しているのだろうか、元気に首元の辺りで横に跳ねている。
挑発的なまでに胸元が大きく開いた黒いスーツは、あまり着慣れていないためか、しわができていた。
体育会系とは違う、その活発な容姿は誰が見ても好意を抱かずにはいられない。

乳房の大きさ、脅威のHカップ(後日談)。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:41:30.80 ID:Vv3Ute080
二人の名前にどことなく違和感を覚えたドクオは、その違和感を質問することにした。

( 'A`)「二人とも名字が同じだが、姉妹か何かか?」

川  -゚)y-~~「生憎、読みは同じだが字が違う」

内心でため息をつきながらドクオは自己紹介をしようとして―――

(  ω゚)y-~~「内藤・ブーン・ホライゾン。
       専門は運び屋だお」

一見、太っているようにも見えるその体が、無駄なく鍛えられた肉体だと分かった者はこの中にはいただろうか。
黒いスーツの上にトレンチコートを羽織り、忌々しげに声を出すその姿はあまり気分のいいものではない。
手にした葉巻から紫煙がゆっくりと立ち上がり、ブーンの表情を分かりにくくした。

明らかにツンを凝視してブーンは続ける。

(  ω゚)y-~~「水平線会の用心棒をしてるお」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:42:29.86 ID:Vv3Ute080
水平線会の用心棒―――、"鉄壁ブーン"の名前が一同の脳裏をよぎった。
これまで警護して守り抜けなかった対象はいない、しかも自分は一発の銃弾を浴びることなく、だ。
水平線会以外の組の警護も請け負っている凄腕のガードだ。

そして、ばつが悪そうにドクオは口を開いた。

( 'A`)「ドクオ・タケシ。
    専門は…」

『I'm rock'n roll!!』

ドクオの説明を遮ったのは奇妙で、奇抜で奇怪な声だ。
その声は扉から聞こえてくるのだが、姿が見えない。
そういえばさっきの警備の人はどうしたのだろうか?
そう思った瞬間、扉の前に陽炎が立ちあがった。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:43:50.51 ID:Vv3Ute080
川;゚ -゚)「ステルス迷彩か!?」

クーの言葉とほぼ同時に、陽炎から何かがロマネスクに向けて投ぜられた。
それを手にした杖の一振りで全て払い落す。
甲高い音を立てて床に落ちたのは無数のナイフだ。

(;・∀・)「ハンドメイドの手投げナイフ…
     こいつは銃は持ってないが、ナイフの数はA級だぞ!」

己の仕事の経験上、知っていることを咄嗟に口にしたモララーの言葉は全員の耳に届いた。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:45:28.03 ID:Vv3Ute080
(;^ω^)「どうなってるんだお?!」

狼狽の声を上げるブーンにロマネスクはひどく落ち着いた声で告げた。

( ФωФ)「そうそう、言い忘れてたけどな…」

( ФωФ)「お前ら七人のうちの誰かが歯車王の可能性があるんだよ」

さらっととんでもないことを言ってくれる。
流石はロマネスクだ。 ドクオたちにできないことを平気でやってのける。
それだけを告げると、ロマネスク自身が陽炎の中に消え去った。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:46:39.37 ID:Vv3Ute080
(;´_ゝ`)「文句とかは後回しだ! 今はこのステルス野郎を…!」

咄嗟に机をひっくり返した兄者の行動は的確だった。
直後にナイフが机に突き刺さった嫌な音が響く。

ノハ#゚听)「姿が見えないんじゃぶちのめしようがない!
     銃は使うな、同志討ちになる!」

ヒートがいつのまにかに手にしたナイフが、投擲された物だと識別できる前に、ナイフはヒートの手から消えていた。
風を切り裂く暴力的な音と同時に、陽炎に向かって無数のナイフが迫る。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:47:28.34 ID:Vv3Ute080
『いーい、センスだ。
 だが、それだけだ』

ノハ;゚听)「っ?!」

その時、ヒートが横に飛んだのはほとんど反射的なものだ。
それが幸いした。
直前までヒートがいた空間を巨大な戦斧が通り抜けたのを横目で確認し、ヒートはさらにバックステップで距離を空ける。

『うーん、赤!』

ノハ;゚听)「なぁっ!?」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:49:06.89 ID:Vv3Ute080
ヒートが来ていた黒のスーツ、その下に着ている下着の色を言われ、ヒートは一瞬だけ陽炎から目を逸らしてしまった。
それが失態だと気付くのに、時間は必要なかった。
気がついた時にはヒートの目の前に陽炎が立っている。
そして宙に浮いて見える戦斧がゆっくりと持ち上げられ、ヒートの顔に向かって振り下ろされた。

ヒートの顔がグロテスクな肉塊になったのを誰もが幻視した。

しかし、それを打ち破ったのは陽炎に向かって突撃した一つの影だ。

( ^ω^)「おっおっお。
     獲物を前に舌なめずり、三流だお」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:50:09.73 ID:Vv3Ute080
誰もいないはずの床に銃口を向けているブーンの背中に、大きく切り裂かれた跡がある。
服だけ切り裂かれたため、血は流れていない。

『三流…か』

銃口を向けられているのにその声はひどく冷静だ。
次第に床の陽炎が消え、一人の男が姿を現した。

(・∀ ・)「いやー、まさかこうもあっさりやられるとはねー」

その男にドクオは見覚えがあった。
この部屋に入る時に扉を開けたあの男だ。
確かにこの男はステルス迷彩を使用していた。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:51:24.44 ID:Vv3Ute080
(;'A`)「まさかロマネスク一家から裏切り者が出るとは…」

( ・∀・)「…さて、その辺の事を踏まえていろいろ吐いてもらおうか?」

(・∀ ・)「言われたことしかできなくて三流。
    言われたことを上手にできてようやく二流。
    では、一流とは?」

( ・∀・)「は? 何を言って―――」

瞬間、モララーは自分の目を疑った。
それまで自分が持っていた拳銃が魔法のように消え―――、否、倒れていた男と立場が完全に逆転したのだ。
それまで男が倒れていた場所に自分が倒れていて、向けていたはずの拳銃が自分に向けられていた。

(;・∀・)「なっ?!」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:52:17.14 ID:Vv3Ute080
瞬間移動、それ以外の言葉では到底説明できない現象に一同は対応できずにいた。
正確にいえば、一部の者は反応出来たのだが、仲間が人質に捕られたことに対応できなかった。

(・∀ ・)「とりあえず全員動くな、ね?」

それは自分の死角から襲いかかろうとしていたツンに対して、隙あらば殺そうとしているその場の全員に投げかけられたものだ。
男が手にしているのはモララーが先ほどまで持っていた得物、デリンジャーだ。

二発しか打てないが、銃口の下に付けられたナイフは接近戦の際に実弾以上の威力を発揮する。
その改造はおそらく、モララーが独自に施したものだろう。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:53:09.12 ID:Vv3Ute080
ξ;゚听)ξ「あんた、何者?
      ステルス迷彩だけじゃなく、瞬間移動まがいの事をするなんて、普通じゃない」

ステルス迷彩は一着だけで戦車三台と交換してもお釣りがくるほどの高級品だ、それを惜しげもなく使用してくるとなると、確かに普通ではない。
まして、瞬間移動なんて芸当、この場の全員が聞いたこともなかった。

最新の軍事事情に精通しているクーでさえ、理解できていない。
どの国でもそんな物を開発しているという情報はないし、そんなものが作れる技術も聞いたことがない。

川 ゚ -゚)「とりあえず、この場の全員に勝てると思ってるのか?
     騒ぎを聞いたロマネスクの部下がやって来るぞ?」

それを聞いた男は心底可笑しそうに笑った後、デリンジャーの撃鉄を下ろした。
後は引き金を引き、発砲された弾丸が誰かの体に傷を負わせるか、命を奪うだけである。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:54:06.35 ID:Vv3Ute080
(・∀ ・)「下の連中は来ない。
    何故なら、もういないからだ。
    ハッピーエンドさ。だろう?」

何か薬でもやっているのだろうか、次第に言葉が意味を失っていく。
そして、男の指にゆっくりと力が込められ―――


悲鳴と絶叫と破裂音と、薬莢が床に落ちる乾いた音が部屋に響いた。


まだ銃口から煙の上がるソーコムを手に、ドクオは床でのたうち回る男の足に容赦なく銃弾を撃ち込む。
先ほど放たれた一発は、正確に男の手の甲を打ち抜き、モララーを緊張から解放した。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:55:10.38 ID:Vv3Ute080
( 'A`)「俺の好きな台詞を並べやがって、覚悟はいいか?」

(・∀ ・;)「生憎、精神(こころ)は壊れちゃったみた…いやあああ!」

男の言葉が終るより早く、ヒートの足が男の急所を容赦なく踏み潰す。

ノハ ゚听)「本当に壊してやろうか? あぁん?」

それからヒートが始めたのは、見ていて痛々しい拷問だった。
爪の間にネジを差し込み、それをドライバーで回したり、目の上から塩水を垂らしたりだ。

(・∀ ・;)「喋ります、喋りますから!」

あまりに滑稽なその姿に、ツンは笑いを抑えられなかった。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:56:07.88 ID:Vv3Ute080
ξ ^竸)y-~~ξ「あははははははははははははははははははははははははははは!」

そして、手にした煙草の灰を男の目に容赦なく落とす。 笑いながら。
もがく男の額に煙草の火種を押しつけたところで、ようやくツンの笑いは収まった。
代わりに、ツンの顔には笑顔が一片も無くなり、圧倒的な威圧感がにじみ出てきた。

ξ  )ξ「さっさと喋りなさい」

(・∀ ・;)「Oui!」

それから、男は恐る恐る口を開いた。

(・∀ ・)「俺の名前は斉藤またんき、歯車王様の私兵だ」

( ・∀・)「じゃあ手っ取り早い、歯車王はこの中の誰だ?」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:57:21.60 ID:Vv3Ute080
(・∀ ・)「はははっ、それを俺が言うとでも?







                    お思いか?」

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 21:58:53.24 ID:Vv3Ute080
次の瞬間、大きな音を立てて部屋の扉が開いた。
息を切らせながら部屋に入って来たのは、ロマネスクの部下だ。

(;´∀`)「いったい何が起き―――」

全員がそれの気を取られた一瞬、その一瞬で十分だった。

(・∀ ・)「アデュー、諸君!」

直後に投じられた閃光弾と煙幕弾と催涙弾は、またんきを視界から完全に消してしまった。

この時ドクオは気付けなかった、自分たちが巨大な歯車に巻き込まれたことに―――
この時は、まだ…

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 22:00:03.17 ID:Vv3Ute080
――――――――――――――――――――

ガチリ
   ガキン

ガチャン


甲高い金属音が幾つも鳴り響くこの部屋には、光源が一つも無い。
金属音が一定の規則に従って、一定のリズムで響いているだけだ。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 22:00:42.50 ID:Vv3Ute080
ガチリ
   ガキン

ガチャン

    ガチリ
 ガキン

     ガチャン

―――――――――ガゴン

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 22:01:26.10 ID:Vv3Ute080
それまでとは違う音が響いた瞬間、光源の無い部屋に、7人の姿が浮かび上がった。

(´・ω・`)

一人の男は特徴的な形の眉をしており、時折、手にしたジッポライターをカチカチと開閉している。


( ゚∋゚)

一人の男は体に岩が―――、否、岩のような筋肉が体全体を覆っている。
薄暗い中でも、その筋肉が心臓のように脈打っているのが分かる。

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 22:02:54.72 ID:Vv3Ute080
\(^0^)/

一人の男は猫背の姿勢で両手を上に上げたまま、薄気味悪い笑みを浮かべている。


(*゚ー゚)

一人の女の後ろには、幾つもの影が揺らめいている。

( ∵)∵)∵)∵)∵)

それらは全て同じ顔、同じ表情で、生気が感じられない。

从 ー 从

その中に混じって、一体だけ形の違うのが立っている。
胸部の膨らみから、それが女形だと見て取れる。

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 22:04:22.74 ID:Vv3Ute080
( <●><●>)><)

2人の男が肩を並べて立っている。
体型は同じだが、目の大きさが対称的に違う。


(´<_` )

そして、どこか憂いを帯びた表情で俯いている男が一人。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 22:05:21.99 ID:Vv3Ute080
ガチリ
   ガキン

ガチャン

   ガチリ
          ガキン

ガチャン

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 22:06:41.99 ID:Vv3Ute080
(´・ω・`)「■■王様の■■■も■■■■だな」

(*゚ー゚)「仕方ないわ、■■が■■王様の■■だもの」

( <●><●>)「そんなことはわか■■■す」

( ><)「わ■■■■です!」

(´<_` )「帰■■■」

\(^0^)/「■■タ」

(´・ω・`)「とにかく■■■■■を■■■■は■■■る」

( ゚∋゚)「■■■■■は■■■■に任せて■■■■■■す」

(´・ω・`)「よろしい■■■■で、■■■■■■■■■」

(´・ω・`)「■■」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/09/08(月) 22:07:42.84 ID:Vv3Ute080
ガチリ
   ガキン

ガチャン


―――――――――ガゴン


次の瞬間、先ほどまでいた人は一人もいなくなり、規則的な金属音だけが部屋を満たした。

この瞬間、歯車は動きだした。
あまりにも巨大な、陰謀の歯車は、静かに動き出した―――



一話 了


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